説明

時計用文字板および時計

【課題】立体感に溢れる外観を呈する時計用文字板を提供すること、また、前記時計用文字板を備えた時計を提供すること。
【解決手段】本発明の時計用文字板は、平面視した際に複数個のマイクロレンズ111が規則的に配置されたマイクロレンズ層11と、複数個の構成単位を有する繰り返し模様を備えた装飾層12とを備え、平面視した際に、マイクロレンズ層11と装飾層12とが重なり合うものであり、装飾層12は、隣り合う構成単位間のピッチが互いに異なる領域を有するものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用文字板および時計に関する。
【背景技術】
【0002】
時計、時計用文字板は、実用品としての機能が求められるとともに、装飾品としての装飾性(美的外観)が求められる。
従来、時計用文字板としては、高級感のある外観を得るために、一般に、金属材料で構成されたものが用いられてきたが、従来の時計用文字板では、表現することのできる外観の範囲が限られており、需要者のニーズに十分に対応することができなかった。
例えば、立体感のある外観を呈する文字板を備えた時計に対するニーズは大きく、模様等のパターンと透明塗膜とを交互に複数形成して積層化した時計用文字板が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このような時計用文字板では、時計用文字板の厚み以上の立体感を表現することができず、また、厚さの制限から、時計用文字板自体の厚さを極端に大きくすることも困難であるため、上記のようなニーズに十分に応えることができなかった。特に、腕時計のような携帯時計に適用される文字板では、特に、時計全体としての厚みについての制約が大きく、立体感に溢れた外観の実現が極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−306188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、立体感に溢れる外観を呈する時計用文字板を提供すること、また、前記時計用文字板を備えた時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は下記の本発明により達成される。
本発明の時計用文字板は、平面視した際に複数個のマイクロレンズが規則的に配置されたマイクロレンズ層と、
複数個の構成単位を有する繰り返し模様を備えた装飾層とを備え、
平面視した際に、前記マイクロレンズ層と前記装飾層とが重なり合うものであり、
前記装飾層は、隣り合う前記構成単位間のピッチが互いに異なる領域を有するものであることを特徴とする。
これにより、立体感に溢れる外観を呈する時計用文字板を提供することができる。
【0007】
本発明の時計用文字板では、前記繰り返し模様の前記構成単位は、前記マイクロレンズと同種の配置、および/または、前記装飾層の面内の所定方向に圧縮または延伸した配置を有するものであることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用文字板では、当該時計用文字板を平面視した際の隣り合う前記マイクロレンズの中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の正三角形が規則的に配置されたものとなり、
当該時計用文字板を平面視した際の隣り合う前記繰り返し模様の中心を直線で結んだ場合に、当該直線によって複数個の三角形が配置されたものとなることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0008】
本発明の時計用文字板では、当該時計用文字板を平面視した際の隣り合う前記マイクロレンズの中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の正方形が規則的に配置されたものとなり、
当該時計用文字板を平面視した際の隣り合う前記繰り返し模様の中心を直線で結んだ場合に、当該直線によって複数個の台形が配置されたものとなることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0009】
本発明の時計用文字板では、前記マイクロレンズのピッチをPML[μm]、前記繰り返し模様の構成単位のピッチをP[μm]としたとき、当該時計用文字板を平面視した際に、当該時計用文字板の中心から外周部に向かってPML−Pの値が漸増する領域を有していることが好ましい。
これにより、時計用文字板の中心から外周部に向かって奥行きが増しているように観察者に視認させることができる(例えば、ドーム型の形状を有するものとして視認させることができる)。
【0010】
本発明の時計用文字板では、前記マイクロレンズのピッチをPML[μm]、前記繰り返し模様の構成単位のピッチをP[μm]としたとき、当該時計用文字板を平面視した際に、当該時計用文字板の中心から外周部に向かってPML−Pの値が漸減する領域を有していることが好ましい。
これにより、時計用文字板の外周部から中心に向かって奥行きが増しているように観察者に視認させることができる(例えば、すり鉢状の形状を有するものとして視認させることができる)。
【0011】
本発明の時計用文字板では、当該時計用文字板を平面視した際に、時字が設けられていない部分の少なくとも一部に、前記装飾層の前記繰り返し模様および前記マイクロレンズ層の前記マイクロレンズが設けられており、時字が設けられている部分には、前記装飾層の前記繰り返し模様および/または前記マイクロレンズ層の前記マイクロレンズが設けられていないことが好ましい。
これにより、時刻の視認性を特に優れたものとしつつ、時計用文字板の外観を特に優れたものとすることができ、実用品としての実用性と、装飾品としての美的外観とを、より高いレベルで両立することができる。
【0012】
本発明の時計は、本発明の時計用文字板を備えたことを特徴とする。
これにより、立体感に溢れる外観を呈する時計用文字板を備えた時計を提供することができる。
本発明によれば、立体感に溢れる外観を呈する時計用文字板を提供すること、また、前記時計用文字板を備えた時計を提供することができる。
時計用文字板を備えた時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の時計用文字板の第1実施形態を示す平面図(マイクロレンズ層を構成するマイクロレンズと装飾層を構成する繰り返し模様との配置の関係を説明するための平面図)である。
【図2】図1に示す時計用文字板の断面図である。
【図3】本発明の時計用文字板の第2実施形態を示す平面図(マイクロレンズ層を構成するマイクロレンズと装飾層を構成する繰り返し模様との配置の関係を説明するための平面図)である。
【図4】本発明の時計(携帯時計)の好適な実施形態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明の時計用文字板の好適な実施形態について説明する。
<時計用文字板>
(第1実施形態)
図1は、本発明の時計用文字板の第1実施形態を示す平面図(マイクロレンズ層を構成するマイクロレンズと装飾層を構成する繰り返し模様との配置の関係を説明するための平面図)、図2は、図1に示す時計用文字板の断面図である。図1(後述する図3も同様)中、上側が時計用文字板の中心部側であり、下側が時計用文字板の外周側であるものとする。なお、本明細書で参照する図面は、構成の一部を誇張して示したものであり、実際の寸法等を正確に反映したものではない。
【0015】
図に示すように、時計用文字板1は、マイクロレンズ層11と、装飾層12とを備えている。マイクロレンズ層11は、複数個のマイクロレンズ111を備えるものであり、当該マイクロレンズ111は、時計用文字板1(マイクロレンズ層11)を平面視した際に規則的に配置されたものである。装飾層12は、複数個の構成単位を有する繰り返し模様121を有するものである。時計用文字板1を平面視した際に、マイクロレンズ層11と装飾層12とが重なり合うものである。そして、装飾層12は、隣り合う構成単位(繰り返し模様121の構成単位)間のピッチが互いに異なる領域を有するものである。なお、本発明において、隣り合う構成単位間のピッチとは、隣り合う構成単位について、時計用文字板を平面視した際のそれぞれの中心点を結ぶ距離のことをいう。
【0016】
時計用文字板の構成をこのようなものとすることにより、光の干渉(モアレ)を視覚的に使用し、立体感に溢れる外観を呈する時計用文字板を提供することができること、特に、観察者の錯覚を利用するにより、時計用文字板の厚みを、現実の厚み以上のものとして、観察者に認識させることができる時計用文字板を提供することができることを、本発明者は鋭意研究の結果見出した。また、装飾層を、隣り合う構成単位間のピッチが互いに異なる領域を有するものとすることにより、観察者に、時計用文字板が奥行き感の異なる領域を有するものと認識させることができ、時計用文字板の立体感が特に優れたものであると認識させることができる。
時計用文字板1は、マイクロレンズ層11が装飾層よりも観察者側(外表面側)に配されるようにして用いられるものである。
【0017】
[マイクロレンズ層]
マイクロレンズ層11は、複数個のマイクロレンズ111が規則的に配置されたものである。
図1に示す構成では、時計用文字板1を平面視した際の隣り合うマイクロレンズ111の中心を直線で結んだ場合に、当該直線によって複数個の三角形が規則的に配置されたものとなるように、複数個のマイクロレンズ111が配置されている。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
特に、本実施形態では、前記三角形が正三角形である。これにより、時計用文字板1の美的外観をさらに優れたものとすることができる。
【0018】
マイクロレンズ111の焦点距離は、100μm以上1000μm以下であるのが好ましく、150μm以上500μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。なお、焦点は、図中にPで示した。
マイクロレンズ111のピッチ(時計用文字板1を平面視した際のピッチ)PMLは、50μm以上500μm以下であるのが好ましく、60μm以上300μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。なお、本発明において、マイクロレンズのピッチとは、隣り合うマイクロレンズについて、時計用文字板を平面視した際のそれぞれの中心点を結ぶ距離のことをいう。
【0019】
マイクロレンズ層11は、光透過性を有する材料で構成されたものである。本発明において、「光透過性を有する」とは、可視光領域(380〜780nmの波長領域)の光の少なくとも一部を透過する性質を有することを指し、好ましくは可視光領域の光の透過率が50%以上であり、より好ましくは可視光領域の光の透過率が60%以上である。このような光の透過率は、例えば、光源として、白色蛍光灯(東芝社製、検査用蛍光灯 FL20S−D65)を用い、1000ルクス下で、測定対象の部材(または時計用文字板)と同一形状のソーラーセル(太陽電池)のみで発電した際の電流値(X)に対する、当該ソーラーセルの光源側の面に測定対象である部材(または時計用文字板)を載せた以外は前記と同一の状態で発電した際の電流値(Y)の比率((Y/X)×100[%])を、採用することができる。以下、本明細書中において、特に断りのない限り、「光の透過率」とは、このような条件で求められる値のことを指す。
【0020】
マイクロレンズ層11を構成する材料としては、例えば、各種プラスチック材料、各種ガラス材料等が挙げられるが、マイクロレンズ層11は、主としてプラスチック材料で構成されたものであるのが好ましい。プラスチック材料は、一般に、成形性(成形の自由度)に優れており、種々の形状の時計用文字板1の製造に好適に適用することができる。また、マイクロレンズ層11がプラスチック材料で構成されたものであると、時計用文字板1の製造コスト低減に有利である。また、プラスチック材料は、一般に、光(可視光)の透過性に優れるとともに、電波の透過性にも優れているため、マイクロレンズ層11がプラスチック材料で構成されたものであると、時計用文字板1を、ソーラー時計(太陽電池を備えた時計)、電波時計に好適に適用することができる。以下の説明では、マイクロレンズ層11が主としてプラスチック材料で構成された例を、中心に説明する。なお、本発明では、「主として」とは、対象としている部位(部材)を構成する材料のうち最も含有量の多い成分を指し、その含有量は特に限定されないが、対象としている部位(部材)を構成する材料の60wt%以上であることが好ましく、80wt%以上であることがより好ましく、90wt%以上であることがさらに好ましい。
【0021】
マイクロレンズ層11を構成するプラスチック材料としては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂等が挙げられ、例えば、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−ブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等として)用いることができる。特に、マイクロレンズ層11は、主として、ポリカーボネートで構成されたものであるのが好ましい。これにより、マイクロレンズ111をより透明性の高いものとすることができるとともに、マイクロレンズ111の屈折率を最適なものとすることができるため、時計用文字板1全体としての美的外観を特に優れたものとすることができる。また、時計用文字板1全体としての強度を特に優れたものとすることができるとともに、マイクロレンズ111の寸法精度をより高いものとすることができ、また、マイクロレンズ111の不本意な変形等をより確実に防止することができるため、時計用文字板1の信頼性を特に優れたものとすることができる。また、マイクロレンズ層11が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂で構成されたものである場合、印刷法(特に、インクジェット法のような液滴吐出法)によるマイクロレンズ111の形成をより好適に行うことができる。
【0022】
なお、マイクロレンズ層11は、プラスチック材料以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、着色剤(各種発色剤、蛍光物質、りん光物質等を含む)、光沢剤、フィラー等が挙げられる。例えば、マイクロレンズ層11が着色剤を含む材料で構成されたものであると、時計用文字板1の色のバリエーションを広げることができる。
【0023】
マイクロレンズ層11は、各部位でその組成が実質的に均一な組成を有するものであってもよいし、部位によって組成の異なるものであってもよい。
マイクロレンズ層11の屈折率(絶対屈折率)は、1.500以上1.650以下であるのが好ましく、1.550以上1.600以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
なお、図示の構成では、マイクロレンズ111は、略半球状をなすものであり、平面視した際の形状が円形をなす球面レンズであるが、マイクロレンズ111の形状は、特に限定されるものでなく、例えば、平面視した際の形状が俵型形状(略楕円形状、長円形状)や、略三角形状、略四角形状、略六角形状等をなすものであってもよい。
【0024】
また、マイクロレンズ基板(マイクロレンズ層)11の形状、大きさは、特に限定されず、通常、製造すべき時計用文字板1の形状、大きさに基づいて決定される。なお、図示の構成では、マイクロレンズ基板11は、平板状をなすものであるが、例えば、湾曲板状等をなすものであってもよい。
また、マイクロレンズ基板11は、いかなる方法で成形されたものであってもよいが、マイクロレンズ基板11の製造方法としては、例えば、圧縮成形、押出成形、射出成形、光造形、2P法等が挙げられる。また、マイクロレンズ基板11は、例えば、マイクロレンズ111を有していない板状部材に、インクジェット法等の液滴吐出法により、マイクロレンズ111の構成材料を含む液状材料を吐出することにより、マイクロレンズ111を形成して得られたものであってもよい。また、マイクロレンズ111は、オフセット印刷、グラビア印刷等の各種印刷法を用いて形成されたものであってもよい。印刷法を用いてマイクロレンズを形成した場合、マイクロレンズ基板11の生産コストを抑制することができる点で有利である。なお、本発明では、マイクロレンズ基板が有するマイクロレンズのうち少なくとも一部は平面視した際の形状が円形状のものでなくてもよく、例えば、楕円形状をなすものであってもよい。また、複数のマイクロレンズは、それぞれが独立したものであっても、隣り合うもの同士がつながったものであってもよい。
【0025】
[装飾層]
装飾層12は、複数個の構成単位を有する繰り返し模様121を備えたものである。
このような装飾層12をマイクロレンズ層11とともに有することにより、光の干渉(モアレ)を視覚的に使用し、立体感に溢れる外観を呈する時計用文字板1を提供することができる。特に、観察者の錯覚を利用するにより、時計用文字板1の厚みを、現実の厚み以上のものとして、観察者に認識させることができることができる。
なお、繰り返し模様121のピッチの方がマイクロレンズ111のピッチよりも小さい場合には模様が沈んで見え、一方、繰り返し模様121のピッチの方がマイクロレンズ111のピッチよりも大きい場合には模様が浮かんで見える。
【0026】
また、装飾層12は、隣り合う構成単位間のピッチが互いに異なる領域を有するものである。すなわち、第1の領域A1と、隣り合う構成単位間のピッチが第1の領域A1でのピッチとは異なる第2の領域A2とを有するものである。このように、装飾層12が、隣り合う構成単位間のピッチが互いに異なる領域を有するものであることにより、観察者に、時計用文字板1が奥行き感の異なる領域を有するものと認識させることができ、時計用文字板1の立体感が特に優れたものであると認識させることができる。
繰り返し模様121の構成単位は、マイクロレンズ111と同種の配置、および/または、装飾層12の面内の所定方向に圧縮または延伸した配置を有するものである。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0027】
図1に示す構成では、時計用文字板1を平面視した際の隣り合うマイクロレンズ111の中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の正三角形が規則的に配置されたものであるとともに、時計用文字板1を平面視した際の隣り合う繰り返し模様121の中心を直線で結んだ場合に、当該直線によって複数個の三角形が配置されたものとなるものである。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0028】
本実施形態では、マイクロレンズ111のピッチをPML[μm]、繰り返し模様121の構成単位のピッチをP[μm]としたとき、時計用文字板1を平面視した際に、時計用文字板1の中心から外周部に向かってPML−Pの値が漸増する領域A3を有している。これにより、時計用文字板1の中心から外周部に向かって奥行きが増しているように観察者に視認させることができる(例えば、ドーム型の形状を有するものとして視認させることができる)。
【0029】
繰り返し模様121の隣り合う構成単位のピッチ(時計用文字板1を平面視した際のピッチ)Pは、40μm以上550μm以下であるのが好ましく、50μm以上350μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。なお、本発明の時計用文字板では、装飾層は、隣り合う構成単位間のピッチが互いに異なる領域を有するものであるが、有効領域(時計用文字板を平面視した際にマイクロレンズ層と装飾層とが重なり合う領域)の全体について、隣り合う構成単位のピッチが上記範囲内に含まれるものであるのが好ましい。
【0030】
マイクロレンズ111のピッチをPML[μm]、繰り返し模様121の構成単位のピッチをP[μm]としたとき、0.5≦P/PML≦1.5の関係を満足するのが好ましく、0.7≦P/PML≦1.3の関係を満足するのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。なお、本発明の時計用文字板では、装飾層は、隣り合う構成単位間のピッチが互いに異なる領域を有するものであるが、有効領域(時計用文字板を平面視した際にマイクロレンズ層と装飾層とが重なり合う領域)の全体について、上記のような関係を満足するのが好ましい。
【0031】
繰り返し模様121の構成単位は、図示の構成では円形状をなすものであるが、いかなる形状のものであってもよく、例えば、多角形状、楕円形状、星型形状、アルファベット等の文字のほか、漫画のキャラクター等のより複雑な形状をなすものであってもよい。
繰り返し模様121は、いかなる材料で構成されたものであってもよく、例えば、各種顔料、各種染料等の着色剤や、金属材料を含む材料で構成されたものであってもよい。また、繰り返し模様121は、樹脂材料を含む材料で構成されたものであってもよい。これにより、繰り返し模様121のマイクロレンズ基板11に対する密着性を特に優れたものとすることができる。
また、図示の構成では、マイクロレンズ層(マイクロレンズ基板)11と装飾層12とが密着している。これにより、マイクロレンズ111と繰り返し模様121との距離を一定に保つことができ、時計用文字板1の外観を安定的に優れたものとすることができる。
【0032】
繰り返し模様121は、いかなる方法で形成されたものであってもよく、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、タコ印刷法、インクジェット法等の各種印刷法を用いて形成されたものであってもよい。これにより、マイクロレンズ層(マイクロレンズ基板)11と装飾層12とをより確実に密着させることができ、その結果、より確実に、マイクロレンズ111と繰り返し模様121との距離を一定に保つことができ、時計用文字板1の外観を安定的に優れたものとすることができる。
【0033】
各種印刷法の中でも、インクジェット法が特に好ましい。インクジェット法を適用することにより、上述した効果がより顕著に発揮されるとともに、微細な繰り返し模様であっても、好適に形成することができる。
また、基板上に形成された膜に対してエッチング処理を施し、残存した部分を、繰り返し模様としてもよい。
【0034】
マイクロレンズ111のレンズ面(図2中の上側の面)から後述する装飾層12の表面(図2中の上側の面)までの距離は、100μm以上1000μm以下であるのが好ましく、150μm以上500μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0035】
特に、本実施形態のように、時計用文字板1を平面視した際の隣り合うマイクロレンズ111の中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の三角形が規則的に配置されたものとなるように、複数個のマイクロレンズ111が配置されている場合、マイクロレンズ111のレンズ面(図2中の上側の面)から装飾層12の表面(図2中の上側の面)までの距離は、150μm以上500μm以下であるのが好ましく、150μm以上300μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0036】
マイクロレンズ111の焦点距離をL[μm]、マイクロレンズ111のレンズ面から装飾層12の表面までの距離をL[μm]としたとき、0.5≦L/L≦1.5の関係を満足するのが好ましく、0.6≦L/L≦1.4の関係を満足するのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
また、装飾層12の形状、大きさは、特に限定されず、通常、製造すべき時計用文字板1の形状、大きさに基づいて決定される。なお、図示の構成では、装飾層12は、平板状をなすものであるが、例えば、湾曲板状等をなすものであってもよい。
【0037】
時計用文字板1は、時計用文字板1を平面視した際に、時字が設けられていない部分の少なくとも一部に、繰り返し模様121およびマイクロレンズ111が設けられており、時字が設けられている部分には、繰り返し模様121および/またはマイクロレンズ111が設けられていないものであるのが好ましい。これにより、時刻の視認性を特に優れたものとしつつ、時計用文字板1の外観を特に優れたものとすることができ、実用品としての実用性と、装飾品としての美的外観とを、より高いレベルで両立することができる。
【0038】
また、時計用文字板1は、携帯時計(例えば、腕時計)に適用されるものであるのが好ましい。携帯時計は、各種時計の中でも、特に、薄型化が要求されるものであるが、本発明によれば、時計用文字板の厚さを十分に薄いものとしつつ、時計用文字板の立体感を十分に優れたものとすることができる。すなわち、本発明の時計用文字板が携帯時計に適用された場合、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0039】
(第2実施形態)
図3は、本発明の時計用文字板の第2実施形態を示す平面図(マイクロレンズ層を構成するマイクロレンズと装飾層を構成する繰り返し模様との配置の関係を説明するための平面図)である。以下、第2実施形態の時計用文字板について、前記実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明は省略する。
本実施形態の時計用文字板1では、時計用文字板1を平面視した際の隣り合うマイクロレンズ111の中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の正方形が規則的に配置されたものとなっており、時計用文字板1を平面視した際の隣り合う繰り返し模様121の中心を直線で結んだ場合に、当該直線によって複数個の台形が配置されたものとなっている。このように、本発明においては、マイクロレンズおよび繰り返し模様の配置パターンは、第1実施形態で説明したようなものに限定されず、本実施形態のような配置パターンであっても、前述したのと同様な効果が得られる。また、本実施形態のような配置パターンであると、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0040】
特に、本実施形態のように、時計用文字板1を平面視した際の隣り合うマイクロレンズ111の中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の正方形が規則的に配置されたものとなるように、複数個のマイクロレンズ111が配置されている場合、マイクロレンズ111のレンズ面(図2中の上側の面)から装飾層12の表面(図2中の上側の面)までの距離は、100μm以上1000μm以下であるのが好ましく、250μm以上600μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0041】
また、本実施形態では、マイクロレンズ111のピッチをPML[μm]、繰り返し模様121の構成単位のピッチをP[μm]としたとき、時計用文字板1を平面視した際に、時計用文字板1の中心から外周部に向かってPML−Pの値が漸減する領域A4を有している。これにより、時計用文字板1の外周部から中心に向かって奥行きが増しているように観察者に視認させることができる(例えば、すり鉢状の形状を有するものとして視認させることができる)。
【0042】
<時計>
次に、上述したような本発明の時計用文字板を備えた本発明の時計について説明する。
本発明の時計は、上述したような本発明の時計用文字板を有するものである。上述したように、本発明の時計用文字板は、立体感に溢れる外観を呈するものであり、特に、観察者の錯覚を利用するにより、時計用文字板の厚みを、現実の厚み以上のものとして、観察者に認識させることができるものであり、装飾性(美的外観)に優れたものである。また、装飾層12等の材料の選択等により、上記のような優れた外観を確保しつつ、時計用文字板1全体としての光透過性を優れたものとすることができる。このため、このような時計用文字板を備えた本発明の時計は、ソーラー時計としての求められる要件を十分に満足することができる。なお、本発明の時計を構成する時計用文字板(本発明の時計用文字板)以外の部品としては、公知のものを用いることができるが、以下に、本発明の時計の構成の一例について説明する。
【0043】
図4は、本発明の時計(腕時計)の好適な実施形態を示す断面図である。
図4に示すように、本実施形態の腕時計(携帯時計)100は、胴(ケース)82と、裏蓋83と、ベゼル(縁)84と、ガラス板(カバーガラス)85とを備えている。また、ケース82内には、前述したような本発明の時計用文字板1と、太陽電池94と、ムーブメント81とが収納されており、さらに、図示しない針(指針)等が収納されている。時計用文字板1は、太陽電池94と、ガラス板(カバーガラス)85との間に設けられており、マイクロレンズ層11が、ガラス板(カバーガラス)85側を向くように配置されている。
【0044】
ガラス板85は、通常、透明性の高い透明ガラスやサファイア等で構成されている。これにより、本発明の時計用文字板1の審美性を十分に発揮させることができるとともに、太陽電池94に十分な光量の光を入射させることができる。
ムーブメント81は、太陽電池94の起電力を利用して、指針を駆動する。
図4中では省略しているが、ムーブメント81内には、例えば、太陽電池94の起電力を貯蔵する電気二重層コンデンサー、リチウムイオン二次電池や、時間基準源として水晶振動子や、水晶振動子の発振周波数をもとに時計を駆動する駆動パルスを発生する半導体集積回路や、この駆動パルスを受けて1秒毎に指針を駆動するステップモーターや、ステップモーターの動きを指針に伝達する輪列機構等を備えている。
また、ムーブメント81は、図示しない電波受信用のアンテナを備えている。そして、受信した電波を用いて時刻調整等を行う機能を有している。
【0045】
太陽電池94は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。そして、太陽電池94で変換された電気エネルギーは、ムーブメントの駆動等に利用される。
太陽電池94は、例えば、非単結晶シリコン薄膜にp型の不純物とn型の不純物とが選択的に導入され、さらにp型の非単結晶シリコン薄膜とn型の非単結晶シリコン薄膜との間に不純物濃度の低いi型の非単結晶シリコン薄膜を備えたpin構造を有している。
【0046】
胴82には巻真パイプ86が嵌入・固定され、この巻真パイプ86内にはりゅうず87の軸部871が回転可能に挿入されている。
胴82とベゼル84とは、プラスチックパッキン88により固定され、ベゼル84とガラス板85とはプラスチックパッキン89により固定されている。
また、胴82に対し裏蓋83が嵌合(または螺合)されており、これらの接合部(シール部)93には、リング状のゴムパッキン(裏蓋パッキン)92が圧縮状態で介挿されている。この構成によりシール部93が液密に封止され、防水機能が得られる。
【0047】
りゅうず87の軸部871の途中の外周には溝872が形成され、この溝872内にはリング状のゴムパッキン(りゅうずパッキン)91が嵌合されている。ゴムパッキン91は巻真パイプ86の内周面に密着し、該内周面と溝872の内面との間で圧縮される。この構成により、りゅうず87と巻真パイプ86との間が液密に封止され防水機能が得られる。なお、りゅうず87を回転操作したとき、ゴムパッキン91は軸部871と共に回転し、巻真パイプ86の内周面に密着しながら周方向に摺動する。
【0048】
上記のような携帯時計(腕時計)は、各種時計の中でも特に、薄型化が求められるものであるため、時計用文字板の薄型化と優れた美的外観との両立を図ることができる本発明をより好適に適用することができる。
なお、上記の説明では、時計の一例として、ソーラー電波時計としての腕時計(携帯時計)を挙げて説明したが、本発明は、腕時計以外の携帯時計、置時計、掛け時計等の他の種類の時計にも同様に適用することができる。また、本発明は、ソーラー電波時計を除くソーラー時計や、ソーラー電波時計を除く電波時計等、いかなる時計にも適用することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記のようなものに限定されるものではない。
例えば、本発明の時計用文字板、時計では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。例えば、各種印刷法により形成された印刷部を有するものであってもよい。また、マイクロレンズ層および/または装飾層の表面には、少なくとも1つの層が設けられていてもよい。このような層は、例えば、時計用文字板の使用時等において除去されるものであってもよい。
【0050】
また、本発明において、マイクロレンズ層におけるマイクロレンズの配置パターンと、装飾層における繰り返し模様の配置パターンとの組み合わせは、前述した実施形態で例示したものに限定されるものではない。
また、前述した実施形態では、マイクロレンズ層には、同一のパターンで(一定のピッチで)マイクロレンズが設けられている場合について代表的に説明したが、マイクロレンズ層は、マイクロレンズの配置パターンの異なる複数の領域を有するものであってもよい。また、装飾層は、繰り返し模様の構成単位の形状が異なる複数の領域を有するものであってもよい。また、隣り合うマイクロレンズのピッチ、配置等は連続的に変化するものであってもよい。
【0051】
また、前述した実施形態では、時計用文字板を平面視した際に、時字が設けられている部分には、繰り返し模様および/またはマイクロレンズが設けられていない場合について中心的に説明したが時計用文字板を平面視した際に、時字が設けられている部分に、繰り返し模様およびマイクロレンズが設けられていてもよい。
また、前述した実施形態では、マイクロレンズ層が、マイクロレンズとして凸レンズを備えるものである場合について代表的に説明したが、マイクロレンズは、装飾層の設けられた面側で焦点を結ぶものであればよく、凹レンズであってもよい。
【0052】
また、前述した実施形態では、マイクロレンズを備えるマイクロレンズ層と、繰り返し模様を備える装飾層とが、密着した構成である場合について代表的に説明したが、マイクロレンズ層と装飾層とは、密着していなくてもよい。例えば、時計用文字板は、マイクロレンズ基板と、装飾層が設けられた基板とを備え、これらが所定距離だけ離間したものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…時計用文字板 11…マイクロレンズ層(マイクロレンズ基板) 111…マイクロレンズ 12…装飾層 121…繰り返し模様 A1…第1の領域 A2…第2の領域 A3…領域 A4…領域 81…ムーブメント 82…胴(ケース) 83…裏蓋 84…ベゼル(縁) 85…ガラス板(カバーガラス) 86…巻真パイプ 87…りゅうず 871…軸部 872…溝 88…プラスチックパッキン 89…プラスチックパッキン 91…ゴムパッキン(りゅうずパッキン) 92…ゴムパッキン(裏蓋パッキン) 93…接合部(シール部) 94…太陽電池 100…腕時計(携帯時計) PML…ピッチ P…ピッチ P…焦点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視した際に複数個のマイクロレンズが規則的に配置されたマイクロレンズ層と、
複数個の構成単位を有する繰り返し模様を備えた装飾層とを備え、
平面視した際に、前記マイクロレンズ層と前記装飾層とが重なり合うものであり、
前記装飾層は、隣り合う前記構成単位間のピッチが互いに異なる領域を有するものであることを特徴とする時計用文字板。
【請求項2】
前記繰り返し模様の前記構成単位は、前記マイクロレンズと同種の配置、および/または、前記装飾層の面内の所定方向に圧縮または延伸した配置を有するものである請求項1に記載の時計用文字板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の時計用文字板において、
当該時計用文字板を平面視した際の隣り合う前記マイクロレンズの中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の正三角形が規則的に配置されたものとなり、
当該時計用文字板を平面視した際の隣り合う前記繰り返し模様の中心を直線で結んだ場合に、当該直線によって複数個の三角形が配置されたものとなる時計用文字板。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の時計用文字板において、
当該時計用文字板を平面視した際の隣り合う前記マイクロレンズの中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の正方形が規則的に配置されたものとなり、
当該時計用文字板を平面視した際の隣り合う前記繰り返し模様の中心を直線で結んだ場合に、当該直線によって複数個の台形が配置されたものとなる時計用文字板。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の時計用文字板において、
前記マイクロレンズのピッチをPML[μm]、前記繰り返し模様の構成単位のピッチをP[μm]としたとき、当該時計用文字板を平面視した際に、当該時計用文字板の中心から外周部に向かってPML−Pの値が漸増する領域を有している時計用文字板。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の時計用文字板において、
前記マイクロレンズのピッチをPML[μm]、前記繰り返し模様の構成単位のピッチをP[μm]としたとき、当該時計用文字板を平面視した際に、当該時計用文字板の中心から外周部に向かってPML−Pの値が漸減する領域を有している時計用文字板。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の時計用文字板において、
当該時計用文字板を平面視した際に、時字が設けられていない部分の少なくとも一部に、前記装飾層の前記繰り返し模様および前記マイクロレンズ層の前記マイクロレンズが設けられており、時字が設けられている部分には、前記装飾層の前記繰り返し模様および/または前記マイクロレンズ層の前記マイクロレンズが設けられていない時計用文字板。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の時計用文字板を備えたことを特徴とする時計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−57558(P2013−57558A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195120(P2011−195120)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)