説明

時計用文字板および時計

【課題】立体感に溢れる外観を呈する時計用文字板を提供すること、また、前記時計用文字板を備えた時計を提供すること。
【解決手段】時計用文字板1は、平面視した際に複数個のマイクロレンズ111が規則的に配置されたマイクロレンズ層11と、模様121が設けられた装飾層12とを備え、平面視した際に、前記マイクロレンズ層11と前記装飾層12とが重なり合うものであり、前記装飾層12は、前記模様121が互いに異なる複数の領域を有するものであることを特徴とする。前記装飾層12は、前記模様121として、複数の線状の模様、および/または、前記マイクロレンズ111と同種の配置でかつ前記マイクロレンズ111とはピッチが異なる繰り返し模様を有するものであるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用文字板および時計に関する。
【背景技術】
【0002】
時計、時計用文字板は、実用品としての機能が求められるとともに、装飾品としての装飾性(美的外観)が求められる。
従来、時計用文字板としては、高級感のある外観を得るために、一般に、金属材料で構成されたものが用いられてきたが、従来の時計用文字板では、表現することのできる外観の範囲が限られており、需要者のニーズに十分に対応することができなかった。
【0003】
例えば、立体感のある外観を呈する文字板を備えた時計に対するニーズは大きく、模様等のパターンと透明塗膜とを交互に複数形成して積層化した時計用文字板が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、このような時計用文字板では、時計用文字板の厚み以上の立体感を表現することができず、また、厚さの制限から、時計用文字板自体の厚さを極端に大きくすることも困難であるため、上記のようなニーズに十分に応えることができなかった。特に、腕時計のような携帯時計に適用される文字板では、特に、時計全体としての厚みについての制約が大きく、立体感に溢れた外観の実現が極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−306188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、立体感に溢れる外観を呈する時計用文字板を提供すること、また、前記時計用文字板を備えた時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は下記の本発明により達成される。
本発明の時計用文字板は、平面視した際に複数個のマイクロレンズが規則的に配置されたマイクロレンズ層と、
模様が設けられた装飾層とを備え、
平面視した際に、前記マイクロレンズ層と前記装飾層とが重なり合うものであり、
前記装飾層は、前記模様が互いに異なる複数の領域を有するものであることを特徴とする。
これにより、立体感に溢れる外観を呈する時計用文字板を提供することができる。特に、本発明では、装飾層が模様の異なる複数の領域を有するものであることにより、時計用文字板全体としての立体感をより強調することができる。
【0007】
本発明の時計用文字板では、前記装飾層は、前記模様として、複数の線状の模様、および/または、前記マイクロレンズと同種の配置でかつ前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様を有するものであることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用文字板では、前記装飾層は、前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様が設けられたものであり、
前記複数の領域として、前記繰り返し模様のピッチが互いに異なる領域を有することが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができる。
【0008】
本発明の時計用文字板では、前記マイクロレンズのピッチをPML[μm]、前記繰り返し模様の構成単位のピッチをP[μm]としたとき、PML−Pが正の値である領域Aと、PML−Pの値が負であり、前記領域Aよりも時計用文字板の外周側に設けられた領域Bとを有することが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観、立体感をさらに優れたものとすることができるとともに、時刻の視認性(認識のしやすさ)を特に優れたものとすることができる。すなわち、実用品としての実用性と、装飾品としての美的外観とを、より高いレベルで両立することができる。
【0009】
本発明の時計用文字板では、前記装飾層は、前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様が設けられた領域Cと、複数の線状の模様が設けられた領域Dとを有するものであることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用文字板では、前記領域Dは、前記領域Cよりも時計用文字板の外周側に設けられたものであることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観、立体感をさらに優れたものとすることができるとともに、時刻の視認性(認識のしやすさ)を特に優れたものとすることができる。すなわち、実用品としての実用性と、装飾品としての美的外観とを、より高いレベルで両立することができる。
【0010】
本発明の時計用文字板では、時字として機能する領域Eと、当該領域E以外の領域としての領域Fとで、前記装飾層のパターンが異なることが好ましい。
これにより、時刻の視認性を十分に優れたものとしつつ、時計用文字板の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用文字板では、前記装飾層は、前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様が設けられたものであり、
前記領域Eは、前記領域Fよりも前記繰り返し模様の構成単位のピッチが小さいものであることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観、立体感をさらに優れたものとすることができるとともに、時刻の視認性(認識のしやすさ)を特に優れたものとすることができる。すなわち、実用品としての実用性と、装飾品としての美的外観とを、より高いレベルで両立することができる。
【0011】
本発明の時計用文字板では、前記装飾層は、前記複数の領域として、時刻を表示するための針の軸を中心に、放射状に延びた線により分割された領域を有するものであることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用文字板では、前記装飾層は、前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様が設けられたものであり、
前記マイクロレンズのピッチをPML[μm]、前記繰り返し模様の構成単位のピッチをP[μm]としたとき、PML−Pが正の値である領域と、PML−Pの値が負である領域とが、隣り合っていることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観、立体感をさらに優れたものとすることができる。
【0012】
本発明の時計用文字板では、前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様が設けられた領域と、複数の線状の模様が設けられた領域とが、隣り合っていることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができる。
本発明の時計用文字板では、前記装飾層は、前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様が設けられたものであり、
前記繰り返し模様の構成単位が数字であり、
これらの数字が、当該数字に対応する時刻を表示する領域に配置されていることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができるとともに、時刻の視認性(認識のしやすさ)を特に優れたものとすることができる。すなわち、実用品としての実用性と、装飾品としての美的外観とを、より高いレベルで両立することができる。
【0013】
本発明の時計用文字板では、前記装飾層は、前記放射状に延びた線により12個の領域に分割されており、これらの領域には、1から12の数字が配置されていることが好ましい。
これにより、時計用文字板の美的外観、立体感をさらに優れたものとすることができるとともに、時刻の視認性(認識のしやすさ)をさらに優れたものとすることができる。すなわち、実用品としての実用性と、装飾品としての美的外観とを、さらに高いレベルで両立することができる。
【0014】
本発明の時計は、本発明の時計用文字板を備えたことを特徴とする。
これにより、立体感に溢れる外観を呈する時計用文字板を備えた時計を提供することができる。特に、本発明では、装飾層が模様の異なる複数の領域を有するものであることにより、時計全体としての立体感をより強調することができる。
本発明によれば、立体感に溢れる外観を呈する時計用文字板を提供すること、また、前記時計用文字板を備えた時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の時計用文字板の好適な実施形態を示す断面図である。
【図2】マイクロレンズ層を構成するマイクロレンズと装飾層を構成する模様との関係を説明するための平面図である。
【図3】マイクロレンズ層を構成するマイクロレンズと装飾層を構成する模様との関係を説明するための平面図である。
【図4】マイクロレンズ層を構成するマイクロレンズと装飾層を構成する模様との関係を説明するための平面図である。
【図5】マイクロレンズ層を構成するマイクロレンズと装飾層を構成する模様との関係を説明するための平面図である。
【図6】装飾層を構成する複数の領域の配置を説明するための平面図である。
【図7】装飾層を構成する複数の領域の配置を説明するための平面図である。
【図8】装飾層を構成する複数の領域の配置を説明するための平面図である。
【図9】装飾層を構成する複数の領域の配置を説明するための平面図である。
【図10】本発明の時計(携帯時計)の好適な実施形態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明の時計用文字板の好適な実施形態について説明する。
<時計用文字板>
図1は、本発明の時計用文字板の好適な実施形態を示す断面図、図2〜図5は、マイクロレンズ層を構成するマイクロレンズと装飾層を構成する模様との関係を説明するための平面図、図6〜図9は、装飾層を構成する複数の領域の配置を説明するための平面図である。なお、本明細書で参照する図面は、構成の一部を誇張して示したものであり、実際の寸法等を正確に反映したものではない。また、図6〜図9中の斜線は、隣り合う領域を明確に区別するために用いたものである。
【0017】
図に示すように、時計用文字板1は、マイクロレンズ層11と、模様121が設けられた装飾層12とを備えている。
マイクロレンズ層11は、複数個のマイクロレンズ111を備えるものであり、当該マイクロレンズ111は、時計用文字板1(マイクロレンズ層11)を平面視した際に規則的に配置されたものである(図2〜図5参照)。
マイクロレンズ層11と装飾層12とは、時計用文字板1を平面視した際に重なり合うものである。
【0018】
そして、装飾層12は、模様121が互いに異なる複数の領域を有するものである(図6〜図9参照)。時計用文字板の構成をこのようなものとすることにより、光の干渉(モアレ)を視覚的に使用し、立体感に溢れる外観を呈する時計用文字板を提供することができることを、本発明者は鋭意研究の結果見出した。特に、観察者の錯覚を利用するにより、時計用文字板の厚みを、現実の厚み以上のものとして、観察者に認識させることができる時計用文字板を提供することができることを、本発明者は鋭意研究の結果見出した。特に、本発明では、装飾層が模様の異なる複数の領域を有するものであることにより、時計用文字板全体としての立体感をより強調することができる。
なお、時計用文字板1は、マイクロレンズ層11が装飾層12よりも観察者側(外表面側)に配されるようにして用いられるものである。
【0019】
≪マイクロレンズ層を構成するマイクロレンズと装飾層を構成する模様との関係≫
以下、マイクロレンズ層を構成するマイクロレンズと装飾層を構成する模様との関係について、具体的な組み合わせ例(図2〜図5参照)を挙げて説明する。
[マイクロレンズ層]
マイクロレンズ層11は、複数個のマイクロレンズ111が規則的に配置されたものである。
【0020】
図2〜図5に示す構成では、時計用文字板1を平面視した際の隣り合うマイクロレンズ111の中心を直線で結んだ場合に、当該直線によって複数個の四角形が規則的に配置されたものとなるように、複数個のマイクロレンズ111が配置されている。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
特に、図2〜図5に示す構成では、前記四角形が正方形である。これにより、時計用文字板1の美的外観をさらに優れたものとすることができる。
【0021】
マイクロレンズ111の焦点距離は、100μm以上1000μm以下であるのが好ましく、150μm以上500μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。なお、焦点は、図中にPで示した。
マイクロレンズ111のピッチ(時計用文字板1を平面視した際のピッチ)PMLは、50μm以上500μm以下であるのが好ましく、60μm以上300μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。なお、本発明において、マイクロレンズのピッチとは、隣り合うマイクロレンズについて、時計用文字板を平面視した際のそれぞれの中心点を結ぶ距離のことをいう。
【0022】
マイクロレンズ層11は、光透過性を有する材料で構成されたものである。本発明において、「光透過性を有する」とは、可視光領域(380〜780nmの波長領域)の光の少なくとも一部を透過する性質を有することを指し、好ましくは可視光領域の光の透過率が50%以上であり、より好ましくは可視光領域の光の透過率が60%以上である。このような光の透過率は、例えば、以下に述べるようにして求められる値を採用することができる。すなわち、光源として、白色蛍光灯(東芝社製、検査用蛍光灯 FL20S−D65)を用い、1000ルクス下で、測定対象の部材(または時計用文字板)と同一形状のソーラーセル(太陽電池)のみで発電した際の電流値(X)を求める。また、前記ソーラーセルの光源側の面に測定対象である部材(または時計用文字板)を載せた以外は、前記と同一の状態で発電した際の電流値(Y)を求める。そして、上記のようにして求められたYのXに対する比率((Y/X)×100[%])を、光の透過率として採用することができる。
【0023】
マイクロレンズ層11を構成する材料としては、例えば、各種プラスチック材料、各種ガラス材料等が挙げられるが、マイクロレンズ層11は、主としてプラスチック材料で構成されたものであるのが好ましい。プラスチック材料は、一般に、成形性(成形の自由度)に優れており、種々の形状の時計用文字板1の製造に好適に適用することができる。また、マイクロレンズ層11がプラスチック材料で構成されたものであると、時計用文字板1の製造コスト低減に有利である。また、プラスチック材料は、一般に、光(可視光)の透過性に優れるとともに、電波の透過性にも優れているため、マイクロレンズ層11がプラスチック材料で構成されたものであると、時計用文字板1を、ソーラー時計(太陽電池を備えた時計)、電波時計に好適に適用することができる。以下の説明では、マイクロレンズ層11が主としてプラスチック材料で構成された例を、中心に説明する。なお、本発明では、「主として」とは、対象としている部位(部材)を構成する材料のうち最も含有量の多い成分を指し、その含有量は特に限定されないが、対象としている部位(部材)を構成する材料の60wt%以上であることが好ましく、80wt%以上であることがより好ましく、90wt%以上であることがさらに好ましい。
【0024】
マイクロレンズ層11を構成するプラスチック材料としては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの具体例としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−ブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられる。そして、これらの材料は、1種または2種以上を組み合わせて(例えば、ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等として)用いることができる。特に、マイクロレンズ層11は、主として、ポリカーボネートで構成されたものであるのが好ましい。これにより、マイクロレンズ111をより透明性の高いものとすることができるとともに、マイクロレンズ111の屈折率を最適なものとすることができるため、時計用文字板1全体としての美的外観を特に優れたものとすることができる。また、時計用文字板1全体としての強度を特に優れたものとすることができるとともに、マイクロレンズ111の寸法精度をより高いものとすることができ、また、マイクロレンズ111の不本意な変形等をより確実に防止することができるため、時計用文字板1の信頼性を特に優れたものとすることができる。また、マイクロレンズ層11が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂で構成されたものである場合、印刷法(特に、インクジェット法のような液滴吐出法)によるマイクロレンズ111の形成をより好適に行うことができる。
【0025】
なお、マイクロレンズ層11は、プラスチック材料以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、着色剤(各種発色剤、蛍光物質、りん光物質等を含む)、光沢剤、フィラー等が挙げられる。例えば、マイクロレンズ層11が着色剤を含む材料で構成されたものであると、時計用文字板1の色のバリエーションを広げることができる。
【0026】
マイクロレンズ層11は、各部位でその組成が実質的に均一な組成を有するものであってもよいし、部位によって組成の異なるものであってもよい。
マイクロレンズ層11の屈折率(絶対屈折率)は、1.500以上1.650以下であるのが好ましく、1.550以上1.600以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0027】
なお、図示の構成では、マイクロレンズ111は、略半球状をなすものであり、平面視した際の形状が円形をなす球面レンズであるが、マイクロレンズ111の形状は、特に限定されるものでなく、例えば、平面視した際の形状が俵型形状(略楕円形状、長円形状)や、略三角形状、略四角形状、略六角形状等をなすものであってもよい。
また、マイクロレンズ基板(マイクロレンズ層)11の形状、大きさは、特に限定されず、通常、製造すべき時計用文字板1の形状、大きさに基づいて決定される。なお、図示の構成では、マイクロレンズ基板11は、平板状をなすものであるが、例えば、湾曲板状等をなすものであってもよい。
【0028】
また、マイクロレンズ基板11は、いかなる方法で成形されたものであってもよいが、マイクロレンズ基板11の製造方法としては、例えば、圧縮成形、押出成形、射出成形、光造形、2P法等が挙げられる。また、マイクロレンズ基板11は、例えば、マイクロレンズ111を有していない板状部材に、インクジェット法等の液滴吐出法により、マイクロレンズ111の構成材料を含む液状材料を吐出することにより、マイクロレンズ111を形成して得られたものであってもよい。また、マイクロレンズ111は、オフセット印刷、グラビア印刷等の各種印刷法を用いて形成されたものであってもよい。印刷法を用いてマイクロレンズを形成した場合、マイクロレンズ基板11の生産コストを抑制することができる点で有利である。なお、本発明では、マイクロレンズ基板が有するマイクロレンズのうち少なくとも一部は平面視した際の形状が円形状のものでなくてもよく、例えば、楕円形状をなすものであってもよい。また、複数のマイクロレンズは、それぞれが独立したものであっても、隣り合うもの同士がつながったものであってもよい。
【0029】
[装飾層]
装飾層12を構成する模様は、光の干渉(モアレ)を生じさせるものであればいかなるものであってもよいが、装飾層12は、模様121として、複数の線状の模様121B、および/または、マイクロレンズ111と同種の配置でかつマイクロレンズ111とはピッチが異なる繰り返し模様121Aを有するものであるのが好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができる。
【0030】
なお、本明細書において、「マイクロレンズ111と同種の配置」とは、マイクロレンズの配置と同一で大きさが異なるもの(相似の関係)のほか、装飾層12の面内の所定方向に圧縮または延伸した配置(例えば、時計用文字板1を平面視した際の隣り合うマイクロレンズ111の中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の正方形が規則的に配置されたものである場合においては、時計用文字板1を平面視した際の隣り合う繰り返し模様121Aの中心を直線で結んだ場合に、当該直線によって複数個の正方形以外の平行四辺形が配置されたものとなるような配置等)のことをいう。
【0031】
図2〜図4に示す構成では、装飾層12は、前記模様として、複数個の構成単位を有する繰り返し模様121Aを備えたものである。繰り返し模様121Aは、マイクロレンズ111と同種の配置で、かつ、マイクロレンズ111とはピッチが異なるものである。繰り返し模様121Aのピッチの方がマイクロレンズ111のピッチよりも小さい場合には模様が沈んで見え、一方、繰り返し模様121Aのピッチの方がマイクロレンズ111のピッチよりも大きい場合には模様が浮かんで見える。すなわち、図2に示すような構成では、模様が沈んで見え、図3に示すような構成では、模様が浮かんで見える。
【0032】
繰り返し模様121Aの隣り合う構成単位のピッチ(時計用文字板1を平面視した際のピッチ)Pは、40μm以上550μm以下であるのが好ましく、50μm以上350μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。また、装飾層において、隣り合う構成単位間のピッチが異なる部位を設けられている場合、有効領域(時計用文字板を平面視した際にマイクロレンズ層と装飾層とが重なり合う領域であり、かつ、時計用文字板の使用時に観察者が視認しうる領域)の全体について、隣り合う構成単位のピッチが上記範囲内に含まれるものであるのが好ましい。なお、本発明において、隣り合う構成単位のピッチとは、隣り合う構成単位について、時計用文字板を平面視した際のそれぞれの中心点を結ぶ距離のことをいう。
【0033】
マイクロレンズ111のピッチをPML[μm]、繰り返し模様121Aの構成単位のピッチをP[μm]としたとき、0.5≦P/PML≦1.5の関係を満足するのが好ましく、0.7≦P/PML≦1.3の関係を満足するのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。なお、装飾層において、隣り合う構成単位間のピッチが異なる部位を設けられている場合、有効領域(時計用文字板を平面視した際にマイクロレンズ層と装飾層とが重なり合う領域であり、かつ、時計用文字板の使用時に観察者が視認しうる領域)の全体について、上記のような関係を満足するのが好ましい。
【0034】
繰り返し模様121Aの構成単位は、図2、図3に示す構成では円形状をなすものであり、図4に示す構成では数字であるが、繰り返し模様121Aの構成単位の形状は、これらに限定されず、いかなるものであってもよい。繰り返し模様121Aの構成単位は、例えば、多角形状、楕円形状、星型形状、数字以外の文字のほか、漫画のキャラクター等のより複雑な形状をなすものであってもよい。また、図4に示す構成では、繰り返し模様121Aを構成する数字は、ローマ数字であるが、アラビア数字、漢数字等であってもよい。
【0035】
また、図5に示す構成では、装飾層12は、前記模様として、複数の線状の模様121Bを備えたものである。
特に、図示の構成では、隣り合う線状の模様121Bのピッチが、直線状の基準線120の長手方向に沿って変化するものである。これにより、時計用文字板1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。なお、図示の構成では、基準線120は、装飾層12を構成する複数の線状の模様121Bのうちの一つであるが、基準線120は、概念的なものであって、装飾層12を構成する線状の模様121Bでなくてもよい。
【0036】
また、基準線120の単位長さ(1cm)あたりの前記ピッチの変化量は、0.4μm以上16μm以下であるのが好ましく、0.5μm以上10μm以下であるのがより好ましい。すなわち、基準線120の単位長さ(1cm)あたりの前記ピッチの変化率は、0.20%以上4.5%以下であるのが好ましく、0.25%以上2.8%以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用文字板1の美的外観をさらに優れたものとすることができる。
【0037】
また、複数の線状の模様121Bは、直線状の基準線120の長手方向の各部位における基準線120の単位長さあたりの前記ピッチの変化率が、互いに等しいものであるのが好ましい。例えば、図中Sで示した基準線120上の点を通り、基準線120に垂直な線L上での隣り合う線状の模様121BのピッチPRA1[μm]、PRA2[μm]、PRA3[μm]、PRA4[μm]は、図中Sで示した基準線120上の点を通り、基準線120に垂直な線L上での隣り合う線状の模様121BのピッチPRB1[μm]、PRB2[μm]、PRB3[μm]、PRB4[μm]との間で、PRA1/PRB1=PRA2/PRB2=PRA3/PRB3=PRA4/PRB4の関係を満足する。これにより、時計用文字板1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用文字板1の美的外観をさらに優れたものとすることができる。
【0038】
なお、基準線120上の任意の点を通り、基準線120に垂直な線上での隣り合う線状の模様121Bのピッチ(例えば、PRA1、PRA2、PRA3およびPRA4)は、互いに異なるものであってもよいが、同一であるのが好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観をさらに優れたものとすることができる。
隣り合う線状の模様121Bのピッチ(時計用文字板1を平面視した際の基準線120に垂直な方向でのピッチ)Pは、40μm以上550μm以下であるのが好ましく、50μm以上350μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。図示の構成では、隣り合う線状の模様121Bのピッチが、直線状の基準線120の長手方向に沿って変化するものであるが、このような場合、時計用文字板1の領域の少なくとも一部で上記のような条件を満足するのが好ましく、時計用文字板1の全領域で上記の条件を満足するのがより好ましい。
【0039】
マイクロレンズ111のピッチをPML[μm]、隣り合う線状の模様121BのピッチをP[μm]としたとき、0.5≦P/PML≦1.5の関係を満足するのが好ましく、0.7≦P/PML≦1.3の関係を満足するのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。図示の構成では、隣り合う線状の模様121Bのピッチが、直線状の基準線120の長手方向に沿って変化するものであるが、このような場合、時計用文字板1の領域の少なくとも一部で上記のような条件を満足するのが好ましく、時計用文字板1の全領域で上記の条件を満足するのがより好ましい。
【0040】
なお、隣り合う線状の模様121Bのピッチの方がマイクロレンズ111のピッチよりも小さい場合には模様が沈んで見え、一方、隣り合う線状の模様121Bのピッチの方がマイクロレンズ111のピッチよりも大きい場合には模様が浮かんで見える。
マイクロレンズ111のレンズ面(図1中の上側の面)から装飾層12の表面(図1中の上側の面)までの距離は、100μm以上1000μm以下であるのが好ましく、150μm以上500μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0041】
特に、図示の構成のように、時計用文字板1を平面視した際の隣り合うマイクロレンズ111の中心を直線で結んだ場合に、当該直線により複数個の正方形が規則的に配置されたものとなるように、複数個のマイクロレンズ111が配置されている場合、マイクロレンズ111のレンズ面(図1中の上側の面)から装飾層12の表面(図1中の上側の面)までの距離は、100μm以上1000μm以下であるのが好ましく、250μm以上600μm以下であるのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0042】
マイクロレンズ111の焦点距離をL[μm]、マイクロレンズ111のレンズ面から装飾層12の表面までの距離をL[μm]としたとき、0.5≦L/L≦1.5の関係を満足するのが好ましく、0.6≦L/L≦1.4の関係を満足するのがより好ましい。これにより、時計用文字板1の外観をより立体感に溢れるものとすることができ、時計用文字板1の美的外観を特に優れたものとすることができる。
【0043】
また、装飾層12の形状、大きさは、特に限定されず、通常、製造すべき時計用文字板1の形状、大きさに基づいて決定される。なお、図示の構成では、装飾層12は、平板状をなすものであるが、例えば、湾曲板状等をなすものであってもよい。
また、図示の構成では、マイクロレンズ層(マイクロレンズ基板)11と装飾層12とが密着している。これにより、マイクロレンズ111と線状の模様121Bとの距離を一定に保つことができ、時計用文字板1の外観を安定的に優れたものとすることができる。
【0044】
装飾層12(模様)は、いかなる材料で構成されたものであってもよく、例えば、各種顔料、各種染料等の着色剤や、金属材料を含む材料で構成されたものであってもよい。また、装飾層12は、樹脂材料を含む材料で構成されたものであってもよい。これにより、装飾層12のマイクロレンズ基板11に対する密着性を特に優れたものとすることができる。
【0045】
装飾層12は、いかなる方法で形成されたものであってもよく、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、タコ印刷法、インクジェット法等の各種印刷法を用いて形成されたものであってもよい。これにより、マイクロレンズ層(マイクロレンズ基板)11と装飾層12とをより確実に密着させることができ、その結果、より確実に、マイクロレンズ111と装飾層12(模様)との距離を一定に保つことができ、時計用文字板1の外観を安定的に優れたものとすることができる。
【0046】
各種印刷法の中でも、インクジェット法が特に好ましい。インクジェット法を適用することにより、上述した効果がより顕著に発揮されるとともに、微細な模様であっても、好適に形成することができる。
また、基板上に形成された膜に対してエッチング処理を施し、残存した部分を、模様としてもよい。
【0047】
≪装飾層を構成する複数の領域の配置について≫
上述したように、本発明の時計用文字板において、装飾層は、模様が互いに異なる複数の領域を有するものである。これにより、観察者に、時計用文字板が奥行き感の異なる領域を有するものと認識させることができ、時計用文字板の立体感が特に優れたものであると認識させることができる。
【0048】
以下、装飾層を構成する複数の領域の配置について、詳細に説明する。
装飾層12は、マイクロレンズ111と同種の配置で、かつ、マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様が設けられたものであり、前記複数の領域として、繰り返し模様121Aのピッチが互いに異なる領域を有するものであってもよい。例えば、装飾層12は、図2に示すような領域と、図3に示すような領域とを有するものであってもよい。これにより、時計用文字板1の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができる。
【0049】
また、装飾層12は、マイクロレンズ111と同種の配置で、かつ、マイクロレンズ111とはピッチが異なる繰り返し模様121A(図2〜図4参照)が設けられた領域(領域C)と、複数の線状の模様(図5参照)が設けられた領域(領域D)とを有するものであってもよい。例えば、装飾層12は、図2および/または図3に示すような領域と、図5に示すような領域とを有するものであってもよい。これにより、時計用文字板1の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができる。
【0050】
次に、装飾層を構成する複数の領域の配置について、図面を参照しつつ、具体例を挙げてより詳細に説明する。
装飾層12は、平面視した際に、模様が互いに異なる複数の領域を有するものであればよいが、装飾層における前記領域の配置の具体例としては、図6〜図9に示すようなものが挙げられる。
【0051】
図6に示す構成では、装飾層12は、前記複数の領域として、時計用文字板1を平面視した際の中心付近の第1の領域123(時刻を表示するための針の軸(時針、分針、秒針)を取り囲む領域)と、第1の領域123の外周(第1の領域123よりも時計用文字板1の外周側)に設けられた第2の領域124とを有している。このように、時計用文字板1を平面視した際の中心付近の領域(第1の領域123)と、外周側の領域(第2の領域124)とで、装飾層の模様を異なるものとすることにより、時計用文字板の美的外観、立体感を優れたものとしつつ、時刻の視認性(認識のしやすさ)も優れたものとすることができる。すなわち、実用品としての実用性と、装飾品としての美的外観とを、高いレベルで両立することができる。
【0052】
図6に示すように、装飾層12が、前記複数の領域として、時計用文字板1を平面視した際の中心付近の領域(第1の領域123)と、外周側の領域(第2の領域124)とを有するものである場合、これらの領域に繰り返し模様121A(図2〜図4参照)が設けられており、マイクロレンズ111のピッチをPML[μm]、繰り返し模様121Aの構成単位のピッチをP[μm]としたとき、第1の領域(領域A)123においてPML−Pが正の値であり、第2の領域(領域B)124においてPML−Pの値が負であるのが好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観、立体感をさらに優れたものとすることができるとともに、時刻の視認性(認識のしやすさ)を特に優れたものとすることができる。すなわち、実用品としての実用性と、装飾品としての美的外観とを、より高いレベルで両立することができる。
【0053】
また、図6に示すように、装飾層12が、前記複数の領域として、時計用文字板1を平面視した際の中心付近の領域(第1の領域123)と、外周側の領域(第2の領域124)とを有するものである場合、第1の領域123が、マイクロレンズ111と同種の配置で、かつ、マイクロレンズ111とはピッチが異なる繰り返し模様121A(図2〜図4参照)が設けられた領域(領域C)であり、第2の領域124が、複数の線状の模様(図5参照)が設けられた領域(領域D)であるのが好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観、立体感をさらに優れたものとすることができるとともに、時刻の視認性(認識のしやすさ)を特に優れたものとすることができる。すなわち、実用品としての実用性と、装飾品としての美的外観とを、より高いレベルで両立することができる。
【0054】
図7に示す構成では、装飾層12は、前記複数の領域として、時字として機能する領域(領域E)125と、それ以外の領域(領域F)126とを有している。これにより、時刻の視認性を十分に優れたものとしつつ、時計用文字板1の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができる。
図7に示すように、装飾層12が、前記複数の領域として、時字として機能する領域(領域E)と、それ以外の領域(領域F)とを有するものである場合、これらの領域に繰り返し模様121A(図2〜図4参照)が設けられており、領域Eにおける前記繰り返し模様の構成単位のピッチが、領域Fにおける前記繰り返し模様の構成単位のピッチよりも小さいものであるのが好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観、立体感をさらに優れたものとすることができるとともに、時刻の視認性(認識のしやすさ)を特に優れたものとすることができる。すなわち、実用品としての実用性と、装飾品としての美的外観とを、より高いレベルで両立することができる。
【0055】
図8、図9に示す構成では、装飾層12は、前記複数の領域として、時刻を表示するための針の軸を中心に、放射状に延びた線により分割された領域を有している。すなわち、図8に示す構成では、放射状に延びた線により分割(等分割)された4個の領域を有しており、図9に示す構成では、放射状に延びた線により分割(等分割)された12個の領域を有している。このような構成にすることにより、時計用文字板1の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができる。
【0056】
図8、図9に示すように、装飾層12が、前記複数の領域として、時刻を表示するための針の軸を中心に放射状に延びた線により分割された領域を有するものである場合、これらの領域に繰り返し模様121A(図2〜図4参照)が設けられており、マイクロレンズ111のピッチをPML[μm]、繰り返し模様121Aの構成単位のピッチをP[μm]としたとき、PML−Pが正の値である領域と、PML−Pの値が負である領域とが、隣り合って設けられているのが好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観、立体感をさらに優れたものとすることができる。
【0057】
また、図8、図9に示すように、装飾層12が、前記複数の領域として、時刻を表示するための針の軸を中心に放射状に延びた線により分割された領域を有するものである場合、マイクロレンズ111と同種の配置で、かつ、マイクロレンズ111とはピッチが異なる繰り返し模様121A(図2〜図4参照)が設けられた領域と、複数の線状の模様121B(図5参照)が設けられた領域とが、隣り合っているのが好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができる。
【0058】
また、図8、図9に示すように、装飾層12が、前記複数の領域として、時刻を表示するための針の軸を中心に放射状に延びた線により分割された領域を有するものである場合、これらの領域に繰り返し模様121Aが設けられており、繰り返し模様121Aの構成単位が数字であり、これらの数字が、当該数字に対応する時刻を表示する領域に配置されているものであるのが好ましい(図4参照)。これにより、時計用文字板1の美的外観、立体感を特に優れたものとすることができるとともに、時刻の視認性(認識のしやすさ)を特に優れたものとすることができる。すなわち、実用品としての実用性と、装飾品としての美的外観とを、より高いレベルで両立することができる。
【0059】
また、図9に示すように、装飾層12が、前記複数の領域として、時刻を表示するための針の軸を中心に放射状に延びた線により分割された領域を12個有するものである場合、これらの領域には、1から12の数字が配置されているのが好ましい。これにより、時計用文字板1の美的外観、立体感をさらに優れたものとすることができるとともに、時刻の視認性(認識のしやすさ)をさらに優れたものとすることができる。すなわち、実用品としての実用性と、装飾品としての美的外観とを、さらに高いレベルで両立することができる。
【0060】
時計用文字板1は、携帯時計(例えば、腕時計)に適用されるものであるのが好ましい。携帯時計は、各種時計の中でも、特に、薄型化が要求されるものであるが、本発明によれば、時計用文字板の厚さを十分に薄いものとしつつ、時計用文字板の立体感を十分に優れたものとすることができる。すなわち、本発明の時計用文字板が携帯時計に適用された場合、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0061】
<時計>
次に、上述したような本発明の時計用文字板を備えた本発明の時計について説明する。
本発明の時計は、上述したような本発明の時計用文字板を有するものである。上述したように、本発明の時計用文字板は、立体感に溢れる外観を呈するものであり、特に、観察者の錯覚を利用するにより、時計用文字板の厚みを、現実の厚み以上のものとして、観察者に認識させることができるものであり、装飾性(美的外観)に優れたものである。特に、本発明では、装飾層が模様の異なる複数の領域を有するものであることにより、時計全体としての立体感をより強調することができる。また、装飾層12等の材料の選択等により、上記のような優れた外観を確保しつつ、時計用文字板1全体としての光透過性を優れたものとすることができる。このため、このような時計用文字板を備えた本発明の時計は、ソーラー時計としての求められる要件を十分に満足することができる。なお、本発明の時計を構成する時計用文字板(本発明の時計用文字板)以外の部品としては、公知のものを用いることができるが、以下に、本発明の時計の構成の一例について説明する。
【0062】
図10は、本発明の時計(腕時計)の好適な実施形態を示す断面図である。
図10に示すように、本実施形態の腕時計(携帯時計)100は、胴(ケース)82と、裏蓋83と、ベゼル(縁)84と、ガラス板(カバーガラス)85とを備えている。また、ケース82内には、前述したような本発明の時計用文字板1と、太陽電池94と、ムーブメント81とが収納されており、さらに、図示しない針(指針)等が収納されている。時計用文字板1は、太陽電池94と、ガラス板(カバーガラス)85との間に設けられており、マイクロレンズ層11が、ガラス板(カバーガラス)85側を向くように配置されている。
【0063】
ガラス板85は、通常、透明性の高い透明ガラスやサファイア等で構成されている。これにより、本発明の時計用文字板1の審美性を十分に発揮させることができるとともに、太陽電池94に十分な光量の光を入射させることができる。
ムーブメント81は、太陽電池94の起電力を利用して、指針を駆動する。
図10中では省略しているが、ムーブメント81内には、例えば、太陽電池94の起電力を貯蔵する電気二重層コンデンサー、リチウムイオン二次電池や、時間基準源として水晶振動子や、水晶振動子の発振周波数をもとに時計を駆動する駆動パルスを発生する半導体集積回路や、この駆動パルスを受けて1秒毎に指針を駆動するステップモーターや、ステップモーターの動きを指針に伝達する輪列機構等を備えている。
【0064】
また、ムーブメント81は、図示しない電波受信用のアンテナを備えている。そして、受信した電波を用いて時刻調整等を行う機能を有している。
太陽電池94は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。そして、太陽電池94で変換された電気エネルギーは、ムーブメントの駆動等に利用される。
太陽電池94は、例えば、非単結晶シリコン薄膜にp型の不純物とn型の不純物とが選択的に導入され、さらにp型の非単結晶シリコン薄膜とn型の非単結晶シリコン薄膜との間に不純物濃度の低いi型の非単結晶シリコン薄膜を備えたpin構造を有している。
【0065】
胴82には巻真パイプ86が嵌入・固定され、この巻真パイプ86内にはりゅうず87の軸部871が回転可能に挿入されている。
胴82とベゼル84とは、プラスチックパッキン88により固定され、ベゼル84とガラス板85とはプラスチックパッキン89により固定されている。
また、胴82に対し裏蓋83が嵌合(または螺合)されており、これらの接合部(シール部)93には、リング状のゴムパッキン(裏蓋パッキン)92が圧縮状態で介挿されている。この構成によりシール部93が液密に封止され、防水機能が得られる。
【0066】
りゅうず87の軸部871の途中の外周には溝872が形成され、この溝872内にはリング状のゴムパッキン(りゅうずパッキン)91が嵌合されている。ゴムパッキン91は巻真パイプ86の内周面に密着し、該内周面と溝872の内面との間で圧縮される。この構成により、りゅうず87と巻真パイプ86との間が液密に封止され防水機能が得られる。なお、りゅうず87を回転操作したとき、ゴムパッキン91は軸部871と共に回転し、巻真パイプ86の内周面に密着しながら周方向に摺動する。
【0067】
上記のような携帯時計(腕時計)は、各種時計の中でも特に、薄型化が求められるものであるため、時計用文字板の薄型化と優れた美的外観との両立を図ることができる本発明をより好適に適用することができる。
なお、上記の説明では、時計の一例として、ソーラー電波時計としての腕時計(携帯時計)を挙げて説明したが、本発明は、腕時計以外の携帯時計、置時計、掛け時計等の他の種類の時計にも同様に適用することができる。また、本発明は、ソーラー電波時計を除くソーラー時計や、ソーラー電波時計を除く電波時計等、いかなる時計にも適用することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記のようなものに限定されるものではない。
【0068】
例えば、本発明の時計用文字板、時計では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。例えば、各種印刷法により形成された印刷部を有するものであってもよい。また、マイクロレンズ層および/または装飾層の表面には、少なくとも1つの層が設けられていてもよい。このような層は、例えば、時計用文字板の使用時等において除去されるものであってもよい。
【0069】
また、前述した実施形態では、マイクロレンズ層において、時計用文字板を平面視した際の隣り合うマイクロレンズの中心を直線で結んだ場合に、当該直線によって複数個の四角形(特に正方形)が規則的に配置されたものとなるように、複数個のマイクロレンズが配置されている場合について代表的に説明したが、マイクロレンズの配置は、これに限定されず、例えば、前記直線によって複数個の三角形(例えば、正三角形)が規則的に配置されたものとなるように、複数個のマイクロレンズが配置されていてもよい。
【0070】
また、前述した実施形態では、装飾層の各領域を構成する模様として、複数の線状の模様、マイクロレンズと同種の配置でかつマイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様について代表的に説明したが、装飾層の各領域を構成する模様は、これらに限定されるものではない。
また、前述した実施形態では、装飾層が有する異なる複数の領域の組み合わせとして、複数の線状の模様を有する領域、と、マイクロレンズと同種の配置でかつマイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様を有する領域との組み合わせ、ピッチが異なる繰り返し模様を有する領域同士の組み合わせ、構成単位の形状が異なる繰り返し模様が設けられた領域同士の組み合わせ等について代表的に説明したが、異なる複数の領域の組み合わせは、これらに限定されるものではない。
【0071】
また、前述した実施形態では、装飾層が複数の線状の模様で構成された領域を有するものである場合、当該領域において、隣り合う線状の模様のピッチが、直線状の基準線の長手方向に沿って変化するものである場合について代表的に説明したが、複数の線状の模様は、平行に配されたものであってもよい。また、複数の線状の模様は、規則的に配されたものに限定されず、ランダムに配されたものであってもよい。
【0072】
また、図5に示す構成では、時計用文字板の中心(平面視した際の中心)から外周(3時および9時の方向)に向かって、隣り合う線状の模様のピッチが漸減するものであったが、例えば、時計用文字板の中心(平面視した際の中心)から外周(3時および9時の方向等)に向かって、隣り合う線状の模様のピッチが漸増するものであってもよい。
また、図5に示す構成では、装飾層が1本の直線状の基準線を基準とする一群の線群(複数の線状の模様)を有するものであったが、装飾層は複数の線群(例えば、第1の基準線を基準とする線群、および、第2の基準線を基準とする線群)を有するものであってもよい。
【0073】
また、図8、図9に示す構成では、装飾層が、時刻を表示するための針の軸を中心に放射状に延びた線により分割された領域を、4個または12個有するものであったが、放射状に延びた線により分割された領域は、それ以外の個数であってもよい。
また、図8、図9に示す構成では、装飾層は、放射状に延びた線により等分割(中心角が同一)されており、分割された領域は互いに等しい面積を有するものであったが、放射状に延びる線は等間隔のものに限定されず、分割された領域は面積の異なるものであってもよい。
【0074】
また、前述した実施形態では、マイクロレンズ層には、同一のパターンで(一定のピッチで)マイクロレンズが設けられている場合について代表的に説明したが、マイクロレンズ層は、マイクロレンズの配置パターンの異なる複数の領域を有するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、マイクロレンズ層が、マイクロレンズとして凸レンズを備えるものである場合について代表的に説明したが、マイクロレンズは、装飾層の設けられた面側で焦点を結ぶものであればよく、凹レンズであってもよい。
また、前述した実施形態では、マイクロレンズを備えるマイクロレンズ層と、装飾層とが、密着した構成である場合について代表的に説明したが、マイクロレンズ層と装飾層とは、密着していなくてもよい。例えば、時計用文字板は、マイクロレンズ基板と、装飾層が設けられた基板とを備え、これらが所定距離だけ離間したものであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…時計用文字板 11…マイクロレンズ層(マイクロレンズ基板) 111…マイクロレンズ 12…装飾層 120…基準線 121…模様 121A…繰り返し模様 121B…線状の模様(線状模様) 123…第1の領域 124…第2の領域 125…領域(領域E) 126…領域(領域F) 81…ムーブメント 82…胴(ケース) 83…裏蓋 84…ベゼル(縁) 85…ガラス板(カバーガラス) 86…巻真パイプ 87…りゅうず 871…軸部 872…溝 88…プラスチックパッキン 89…プラスチックパッキン 91…ゴムパッキン(りゅうずパッキン) 92…ゴムパッキン(裏蓋パッキン) 93…接合部(シール部) 94…太陽電池 100…腕時計(携帯時計) S…基準線上の点 S…基準線上の点 L…線 L…線 PML…ピッチ P…ピッチ PRA1…ピッチ PRA2…ピッチ PRA3…ピッチ PRA4…ピッチ PRB1…ピッチ PRB2…ピッチ PRB3…ピッチ PRB4…ピッチ P…焦点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視した際に複数個のマイクロレンズが規則的に配置されたマイクロレンズ層と、
模様が設けられた装飾層とを備え、
平面視した際に、前記マイクロレンズ層と前記装飾層とが重なり合うものであり、
前記装飾層は、前記模様が互いに異なる複数の領域を有するものであることを特徴とする時計用文字板。
【請求項2】
前記装飾層は、前記模様として、複数の線状の模様、および/または、前記マイクロレンズと同種の配置でかつ前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様を有するものである請求項1に記載の時計用文字板。
【請求項3】
前記装飾層は、前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様が設けられたものであり、
前記複数の領域として、前記繰り返し模様のピッチが互いに異なる領域を有する請求項1または2に記載の時計用文字板。
【請求項4】
前記マイクロレンズのピッチをPML[μm]、前記繰り返し模様の構成単位のピッチをP[μm]としたとき、PML−Pが正の値である領域Aと、PML−Pの値が負であり、前記領域Aよりも時計用文字板の外周側に設けられた領域Bとを有する請求項3に記載の時計用文字板。
【請求項5】
前記装飾層は、前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様が設けられた領域Cと、複数の線状の模様が設けられた領域Dとを有するものである請求項1ないし4のいずれかに記載の時計用文字板。
【請求項6】
前記領域Dは、前記領域Cよりも時計用文字板の外周側に設けられたものである請求項5に記載の時計用文字板。
【請求項7】
時字として機能する領域Eと、当該領域E以外の領域としての領域Fとで、前記装飾層のパターンが異なる請求項1ないし6のいずれかに記載の時計用文字板。
【請求項8】
前記装飾層は、前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様が設けられたものであり、
前記領域Eは、前記領域Fよりも前記繰り返し模様の構成単位のピッチが小さいものである請求項7に記載の時計用文字板。
【請求項9】
前記装飾層は、前記複数の領域として、時刻を表示するための針の軸を中心に、放射状に延びた線により分割された領域を有するものである請求項1ないし8のいずれかに記載の時計用文字板。
【請求項10】
前記装飾層は、前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様が設けられたものであり、
前記マイクロレンズのピッチをPML[μm]、前記繰り返し模様の構成単位のピッチをP[μm]としたとき、PML−Pが正の値である領域と、PML−Pの値が負である領域とが、隣り合っている請求項9に記載の時計用文字板。
【請求項11】
前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様が設けられた領域と、複数の線状の模様が設けられた領域とが、隣り合っている請求項9または10に記載の時計用文字板。
【請求項12】
前記装飾層は、前記マイクロレンズと同種の配置で、かつ、前記マイクロレンズとはピッチが異なる繰り返し模様が設けられたものであり、
前記繰り返し模様の構成単位が数字であり、
これらの数字が、当該数字に対応する時刻を表示する領域に配置されている請求項9ないし11のいずれかに記載の時計用文字板。
【請求項13】
前記装飾層は、前記放射状に延びた線により12個の領域に分割されており、これらの領域には、1から12の数字が配置されている請求項12に記載の時計用文字板。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の時計用文字板を備えたことを特徴とする時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−61190(P2013−61190A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198769(P2011−198769)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)