説明

時間温度指標の状態を測定する方法及びシステム

腐敗しやすい対象物がそのサプライライン上を進行する間、対象物に対応する時間温度指標(TTI)の状態をモニタすることによって対象物の品質を管理するのに使用するための装置を提供する。装置は、所定の刺激に対するTTIの応答を検出し、それを表してTTIの状態を示す計測データを生成するための感知アセンブリを含み、それにより、TTI、ひいてはTTIが取り付けられ、較正された腐食しやすい商品の残存貯蔵寿命の測定を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に感知技術の分野にあり、時間温度指標(TTI)の状態を測定するためのシステム及び方法に関する。
【0002】
発明の背景
食品、薬、ワクチン及び血液のような多くの腐敗しやすい商品の安全性及び品質は、主に、流通及び貯蔵の際の適切な取り扱いに依存する。ガス組成、相対湿度及び温度のような様々な要因が腐敗しやすい商品の有効寿命に影響する。すべての貯蔵の局面のうち、温度誤用が、多様な物理的、化学的、酵素的又は微生物的工程に基づく、もっとも頻繁に認められる劣化要因である。
【0003】
時間温度指標(「時間温度インテグレータ」とも呼ばれる)は、温度及び時間に比例する速度で変化しうる観測可能な物理的性質を有する装置(通常はラベル)であり、したがって、それらのごく身近な環境の全時間温度履歴の指示を提供する。腐敗しやすい商品に取り付けられると、TTI(適切に設計及び較正されたもの)は、その時間温度履歴をモニタし、その鮮度状態の簡単な、通常は視覚的な指示を提供する。
【0004】
TTIの一例が米国特許第4,737,463号に開示されている。もう一つの例は、本発明の一発明者によって部分的に開発され、WO99/39197に記載されているTTIである。
【0005】
米国特許第6,009,400号は、腐敗性を生じさせる要因を受けて変化する性質を有するバーコードを使用して、腐敗した物品を購入しないよう顧客に警告する方法及び装置を開示している。この技術は、小売り店舗の顧客が、少なくとも一つの所定の要因を受けて悪影響を受けているおそれのある腐敗しやすい物品を知らずに購入することを防ぐことを目的とする。これは、識別対象物、たとえばラベル、タグ又は包装材に対し、その識別対象物が所定の要因を受けた場合にそのスキャン性が少なくともひどく損なわれるような特性の、はじめに機械でスキャン可能なバーコードを設けることによって達成される。識別対象物は、それぞれの物品に固着されて、それらの両方がのちに同じ条件にさらされて、購入時に起こるバーコードのスキャンの失敗が、購入されようとしている物品に悪影響を及ぼす可能性を有する所定の要因の状態の間、以前の発生を顧客に警告するようになっている。別の態様では、読み取り不可能なバーコードが所定の要因にさらされることによって読み取り可能になり、それによって顧客に警告する。
【0006】
発明の概要
簡単なYes/Noの視覚的読み出しではなく、サプライチェーンの全体でより定量的な鮮度評価を可能にする新規な装置及び方法を提供することにより、製品の鮮度状態の測定を容易にすることが当該技術で要望されている。サプライチェーンの様々な要所で、特に商品に対する責任の持ち手が変わるとき、製品の残存貯蔵寿命のより定量的な評価が望まれる。
【0007】
本発明は、TTIの性質を利用して、さらなるデータ検査を要しない効果的で「明確な」回答を提供する。これは、リアルタイムの意志決定及び行動が重要視される場合に理想的である。
【0008】
本発明は、サプライチェーン上を進行している間にTTIの状態、ひいては前記TTIが対応する対象物の状態を管理することを考慮している。本発明の技術はまた、受動時間温度インテグレータ装置を効果的かつ定量的に読むことができ、それにより、TTI状態の連続的な管理を可能にし、腐敗しやすい商品の残存貯蔵寿命をそのサプライチェーンの工程で評価する簡単で廉価な装置を提供する。
【0009】
本発明の一つの広義な態様にしたがって、腐敗しやすい対象物がそのサプライライン上を進行する間、その対象物に対応する時間温度指標(TTI)の状態をモニタすることによってその対象物の品質を管理するのに使用するための装置であって、所定の刺激に対するTTIの応答を検出し、それを表す計測データ(TTIの状態を示す)を生成するための感知アセンブリを含み、それにより、TTI、ひいてはTTIが取り付けられ、較正された腐食しやすい商品の残存貯蔵寿命の測定を可能にする装置が提供される。
【0010】
本明細書で使用する「管理」とは、モニタ及び追跡のような機能の少なくとも一つをも意味することが理解されるべきである。「刺激」は、TTIの活性領域に適用されると、TTIの状態を示す活性領域の検出可能な応答を生じさせる外部フィールドを意味する。
【0011】
好ましくは、所定の入射光に対するTTIの光応答が検出される。光応答は、スペクトル分解及び/又は非分解データ、戻り、吸収及び/又は伝送された光の強さ及び/又は強さの変化、屈折率、ルミネセンスもしくは特定の彩度の変化又はTTI中の活性物質の電子応答に関連する他の計測可能な数量の形式である場合がある。光応答は、入射光の反射及び/又は入射光によって励起された光の放出をTTIの被照射領域から収集することによって検出されるか、TTIを透過した光を収集することによって検出される。刺激(たとえば入射光)は、TTIのタイプにしたがって予め決められており、たとえば、UV、可視又はIRスペクトル範囲であることができる。
【0012】
したがって、感知アセンブリは、刺激フィールドのソース(たとえば、所定の入射光を発する光源)及び検出器アセンブリ(たとえば光検出器)を含み、制御ユニットをその構成部品として含むこともできるし、ワイヤ又はワイヤレス信号通信を介して独立型制御ユニットに接続されていることもできる。
【0013】
本発明のもう一つの広義な態様にしたがって、時間温度指標(TTI)の状態を測定するための光学プローブであって、所定の入射光に対するTTIの光応答を検出し、それを表す計測データを生成するための光学感知アセンブリと、前記データを、電気、光学、RF及び音響信号の少なくとも一つの形態の、TTIの状態を測定するために処理される出力信号に変換するための通信ユーティリティとを含み、それにより、TTIの残存貯蔵寿命を管理及び/又はモニタ及び/又は追跡することを可能にするプローブが提供される。
【0014】
本発明のさらに別の広義な態様にしたがって、時間温度指標(TTI)に対応する対象物がサプライライン上を進行する間、その対象物を管理するためのシステムであって、
所定の刺激に対するTTIの応答を検出し、それを表してTTIの状態を示す計測データを生成するための感知アセンブリと、
前記データを、TTI、ひいては前記TTIが対応する対象物の残存貯蔵寿命を示すTTIの計測状態に対応する値に変換するための、前記感知アセンブリに接続可能であり、計測データに応答するように予めプログラムされた制御ユニットと
を含むシステムが提供される。
【0015】
腐敗しやすい商品の鮮度状態は、所与の温度におけるその残存寿命として表すことができる。このデータは、サプライライン規則及びそのような規則の施行で有用であることができ、また、規則から規則の特定のセグメントまでの逸脱をたとえば簡単な検査プロトコルを使用して是正するために有用であることができる。このような検査プロトコルは、通常のTTIで実施することができる。サプライチェーンの全体(すなわちサプライチェーンノードのそれぞれ又はいくつか)で、上記装置を使用してTTIの読み出しが定量的又は半定量的に実施され、チェーンの終点で、最終顧客がTTIを目視で検査してYES/NO決定を下すことができる。代替的及び/又は追加的に、TTI状態は、他の対象物関連データをも含む機械読み取り可能なコード(たとえばバーコード)に少なくとも一つのTTIを組み込むことにより、サプライチェーンの全体で管理することもできる。これは、サプライチェーン上を進行する対象物の状態を連続的又は定期的にモニタすることを可能にする。本発明は、最終顧客に対してYES/NO回答を出すように設計されたTTI読み取り装置から定量的な値を抽出することを可能にする。
【0016】
本発明の装置は、少なくとも一つのパターン化フィーチャをTTIの形式で有するパターンを読み取るためのバーコードリーダの形式とすることができる。パターンは、以下「ラベル」と呼ぶ、ラベル、タグ又は包装材に設けることができる。
【0017】
本発明は、そのさらに別の態様にしたがって、時間温度指標(TTI)として設計されたパターンの少なくとも一つのフィーチャを有する機械読み取り可能なパターンを含むラベル、タグ又は包装材であって、前記パターンがTTIの時間温度変動にしたがって所定の刺激に対して時間温度可変的に応答するものであるラベル、タグ又は包装材を提供する。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、時間温度指標(TTI)として設計されたパターンの少なくとも一つのフィーチャを含む機械読み取り可能なパターンを担持する対象物であって、前記パターンがTTIの時間温度変動にしたがって所定の刺激に対して時間温度可変的に応答するものである対象物を提供する。
【0019】
本発明はまた、時間温度指標(TTI)に対応する対象物がサプライチェーン上を進行する間、その対象物を管理するのに使用する方法であって、
サプライチェーンのノードで、所定の刺激に対するTTIの応答を検出し、それを表す計測データを生成することと、
前記計測データを処理してTTIの状態を測定し、それによって前記TTIの残存貯蔵寿命の測定を可能にし、ひいてはサプライチェーンのさらなるノードへの対象物進行の決定を可能にすることと
を含む方法を提供する。
【0020】
サプライチェーンは標準温度を有するべきであるが、それは、様々な理由から決して維持されない。本発明は、ハンドシェイクプロトコルを使用して、冷蔵チェーンサプライラインに関与するすべての当事者に対して規則を遵守するよう強要することを考慮している。商品を保持する持ち手の変更がある各ポイント(サプライチェーンのノード)及び所望のポイントで、TTIが検査され、TTIからの読み出しが、標準貯蔵温度に応じた残存貯蔵寿命を提供する。したがって、受け取り当事者は、十分な残存貯蔵寿命がない場合、腐敗しやすい商品を受け取れない場合がある。
【0021】
プリセットされたハンドシェイクプロトコルは、たとえば、製品が持ち手を変えるポイントごとに、公称(プラス最小及び最大)色条件を決定することもできる。したがって、サプライラインのポイントごとに、実際のTTI状態と所定の状態との間で検出される差が所与の温度における残存貯蔵寿命の指示を与える。
【0022】
したがって、本発明は、腐食しやすい商品の残存貯蔵寿命を評価することを考慮している。この技術は、変色性TTI、たとえばLifelines製のもの又は本発明の一発明者によって部分的に開発され、WO99/39197で開示されているものを較正することに依存する。商品のサプライチェーン上の選択されたポイント及び/又は任意のポイント、具体的にはサプライチェーン上で商品に対する責任の持ち手が変わるポイントで、本発明の技術を使用して、腐敗しやすい商品に取り付けられたTTIの色状態を分析する。そして、TTIの色状態を使用して、TTIの具体的な較正曲線を基に、所与の温度における残存有効貯蔵寿命を評価するための手段を提供して、腐敗しやすい商品の状態、たとえば鮮度状態を評価する。
【0023】
本発明を理解し、本発明を実施する方法を理解してもらうため、以下、添付図面を参照しながら好ましい実施態様を非限定的な例として説明する。
【0024】
発明の詳細な説明
図1を参照すると、時間温度指標(TTI)12の状態を測定する際に使用する本発明の一つの実施態様の装置10のブロック図が示されている。装置10は、所定の入射光(外部フィールド又は刺激を構成する)に対するTTIの応答(この例では光応答)を検出し、それを表す計測データMDを生成するように設計されている。この計測データは、TTIの状態を示し、ひいては、TTIが対応する対象物(図示せず)の状態を示す。
【0025】
装置10は、光源14及び光検出器16を含む。制御ユニット18が設けられ、検出器の出力に接続可能であり、また、好ましくは、光源を作動させるために光源にも接続可能である。光源及び検出器は、入射光を、入射光がTTIの活性点(活性領域)を均一に照らすような方法で適切に拡散させるように設計され、活性点から出て収集された光応答を検出器に向けて送るように設計されたチャンバ15に収容されている。検出器16は、TTIの応答(たとえば、入射光、励起光又はTTIを透過した光の反射)を収集するように収容されている。光源14は、TTIのタイプにしたがって所定のスペクトル範囲の入射光を発するようなものである。たとえば、可視スペクトルで作動するフラッシュランプであってもよい。入射光線及び収集光のスペクトル性が相互接続ケーブル(又はワイヤレス伝送)を介して制御ユニット18に電子的に転送される。
【0026】
制御ユニット18は、とりわけメモリユーティリティ、データ処理解析ユーティリティ及びデータ表示ユーティリティ(たとえばディスプレー、インジケータ)を含む電子モジュールである。メモリユーティリティは、特定の参照データ、とりわけスペクトルデータ及び較正温度時間色プロファイルを含むデータを記憶する。参照データは、種々なタイプのTTIに関する情報を含むことができる。データ処理解析ユーティリティは、計測されたデータに応答してTTIの活性点の光学的性質を測定し、ひいてはTTIの状態を測定し、それを示す出力信号を発するように予めプログラムされている。そして、この出力信号が適切にフォーマットされて、データ表示ユーティリティ(1個以上の出力ポートを含む)を介してユーザに表示される。
【0027】
装置10を作動させるために必要な装置エネルギーは、バッテリ又は他の電気供給源であってもよいエネルギー源(図示せず)によって供給されることが理解されよう。
【0028】
また、本発明の技術は、特定のタイプのTTIに限定されず、いかなるTTIの状態をも自動的にモニタするために使用できることが理解できよう。刺激のタイプ及び作動パラメータはTTIのタイプにしたがって選択される。
【0029】
本発明の装置で使用することができる光活性化TTIの一例は、米国特許第4,737,463号で開示されている、Lifelines製のTTIである。この特許によると、熱不活性ジアセチレン塩(又はそのような塩の混合物)を、ポリマーマトリックス中、露光すると酸を生成する物質と混合する。光励起が熱活性遊離ジアセチレン酸の形成を生じさせる。この活性化工程に続き、漸進的な発色が、温度とともに増大する速度で起こる。もう一つの例は、本発明の一発明者によって部分的に開発され、WO99/39197に記載されているTTIである。この技術によると、マトリックス及びその中に埋め込まれた少なくとも一つの可逆性指標からなる平面的な時間温度インテグレータが基材の区域に配置されている。指標は、転移反応に基づく光発色性を有する。これらの性質に基づき、指標は光誘発的に発色し、時間依存的かつ温度依存的な変色が起こる。時間関連又は温度関連の変色の程度が計測され、それから製品品質が推論される。
【0030】
図2は、本発明のもう一つの例の装置100を示す。理解を容易にするため、図1の例と図2の例とで類似している構成要素を特定する場合には同じ参照番号を使用する。この例では、装置100は、光源14、光検出器16、バッテリ17及び通信ユーティリティ20を含む手持ち式の光学プローブの形式である。通信ユーティリティ20は、TTIの検出光応答を表す計測データMDを受けるための光検出器の出力に接続され、計測データを、独立型制御ユニット118にワイヤレス伝送されるようなものの出力信号に変換するよう適切に設計されている。この出力信号は、RF、IR又は音響信号であることができる。したがって、制御ユニット118は、装置100と通信するための適当な通信ユーティリティを備えている。
【0031】
次に、対象物関連の情報を表し、TTI24の形式の少なくとも一つのフィーチャを有するように設計されている光学的に読み取り可能なパターン22(たとえばバーコード)を示す図3を参照する。このパターン22は、ラベル、タグ又は包装材であってもよいし、対象物そのものであってもよい基材200にプリントされる。
【0032】
このように、パターン22は、所与の温度における対象物の残存貯蔵寿命を示すデータをはじめとする対象物関連のデータを表す。パターン22の光応答の収集(たとえばパターンをスキャンすることによる)が、対象物関連の情報の読み取り及びTTIの状態の検出、ひいては対象物の鮮度状態の検出を可能にする。この場合、適当なバーコードリーダは、先に説明し、図1及び2で例示した本発明のセンサ装置を含むことができる。センサ装置(又はセンサ装置と関連する独立型制御ユニット)は、TTIの応答から、このTTIの残存貯蔵寿命を測定し、それを示す出力信号を発し、ひいては製品を受け取り又は拒絶することを可能にする特定のプロトコルで適切に予めプログラムされている。
【0033】
図4は、対象物がサプライライン上を進行する間に対象物の状態をモニタするために本発明を使用する方法を示す。腐敗しやすい商品の鮮度状態は、所与の温度におけるその残存貯蔵寿命として表すことができる。このデータは、サプライライン規制で有用であり、また、規則から規則の特定のセグメントまでの逸脱を是正するために有用である場合がある。図4は、サプライチェーン300上を進行する対象物30を概略的に示す。対象物30は、TTI又はTTI関連のパターンフィーチャを含むパターン22(機械読み取り可能なコード)を担持する。TTI又はTTIを有するパターンは、対象物又は対象物に取り付けられたラベル/タグ又は対象物包装材にプリントされている。サプライチェーン300は、それぞれがノードに到着時のTTI状態(ひいては対象物の状態)を検出するために本発明のTTI/パターン読み取り装置(たとえば先に例示した装置10又は100)を使用する、一般に32で示すいくつかノードを含む。
【0034】
所定のTTI状態は、冷蔵チェーンサプライラインのポイントごとに異なり、プリセットしたハンドシェイクプロトコルにしたがってモニタすることができる。このプロトコルは、製品が持ち手を変えるポイント(ノード)ごとに、公称(プラス最小及び最大)色条件を決定することができる。したがって、サプライラインのポイントごとに、検出されるTTIの現在状態が所与の温度におけるTTIの残存貯蔵寿命の指示を与える。
【0035】
図5Aは、「Fresh Check」TTI(Lifelines製)の、4℃での時間応答を示す。TTIの活性マトリックスは、4℃で185時間を要する工程で、その色を淡い色から濃い色に変える。図5Aのグラフのポイントは、TTIをその貯蔵温度から4℃にした、ひいては「ゼロ時」をセットした時点から出発して、異なる時間間隔でTTIから得られた読み値に対応する値を表す。TTIの寿命に沿って、TTI活性マトリックスの色は、時間の関数として予測可能なふうに進行する。
【0036】
図5Bは、もう一つのタイプのTTI(本発明の一発明者によって部分的に開発され、WO99/39197で開示されている)の、2℃での時間応答を示す。TTIの活性マトリックスは、2℃で500時間を要する工程で、その色を濃い青から白に変える。グラフのポイントは、UV光を使用してTTIをチャージした、ひいては「ゼロ時」をセットした後、異なる時間間隔でのTTI応答の読み値を表す。TTIの寿命に沿って、この特定のTTIの活性マトリックスの色は、時間の関数として予測可能なふうに進行する。
【0037】
図6は、このTTIの時間温度挙動(365nm入射放射線に対するTTI応答として感知)をより具体的に示す。位置a〜dは、それぞれ2℃、5℃、7℃及び20℃の温度条件下で13日間のTTI変化に対応し、位置eは、緑のフィルタを使用して得られた位置bのTTI状態を示す。図示するように、TTI活性マトリックスの色は、時間及び温度の関数として予測可能なふうに濃い青から白に変化する。
【0038】
以下、サプライチェーン全体でTTI状態(すなわち対象物の状態)を管理するために本発明の冷蔵チェーンハンドシェイクプロトコルを使用した二つの具体的な、ただし非限定的な実施例を記す。
【0039】
実施例1
この実施例では、本発明のハンドシェイクプロトコルを使用して冷蔵チェーンのモニタ及び管理を実証するために使用したTTIは、Lifelines製の「Fresh Check」時間温度指標であった。このTTIの4℃での具体的な時間応答を図5Aに示す。
【0040】
冷蔵チェーン状態のシミュレーションにおいて、ある人(チェーンのノード)から別の人へと、TTIが受け取られた時点よりも前のTTIの時間温度履歴を誰も知ることができないように、TTIを受け渡しした。各参加者は、TTI(TTIフィーチャを含むパターン全体)を示すデータを読み取るための、特定のTTIに合わせて適切に較正された本発明の読み取り装置を備えていた。
【0041】
実験に関して測定した具体的な冷蔵チェーンの標準条件は以下のとおりであった。各当事者(チェーンの各ノードにおいて)は、残存標準貯蔵寿命(RSSL)が一定の最小値よりも短い場合、冷蔵チェーン上を輸送された商品の受け取りを拒否することができる。ここで、4℃での最小残存標準貯蔵寿命(MRSSL)を例示する表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
第一の実験
実験の最初から最後までTTI(TTIを備えた製品)を4℃の一定温度に維持した。
【0044】
サプライチェーンの出発ノードaで、ユーザA(製品の製造元を表す)が、TTIをその貯蔵温度から4℃の温度にし、ひいてはその「ゼロ時」をセットした。その瞬間、ユーザAは、先に記載した方法で、入射光に対するTTI応答(たとえばTTIの色)を計測して、それによってTTIの応答(色)が、4℃で180時間のMRSSLに相当する0.17OD未満であることを確認した。その後、TTIはサプライチェーン上をノードbまで進行した。
【0045】
ノードbでは、ユーザB(商品を製造元から第一の倉庫まで輸送する第一の輸送業者を表す)が、製造元(ノードa)から到着した製品の状態を管理する責任を負う。ユーザBは、ユーザAから商品を受け取ると、TTIの応答(色)を計測して、TTIの色が、160時間の最小値(4℃でのMRSSL)を表す0.20OD未満であることを検出した。
【0046】
その後、TTIを有する製品はノードcに渡された。ここで、ユーザC(倉庫を表す)が、ユーザBから商品を受け取ると、TTI応答(色)を計測して、TTIの色が、128時間の最小値(4℃でのMRSSL)を表す0.23OD未満であることを確認した。
【0047】
その後、TTIを有する製品はノードdに渡され、そこで、第二の輸送業者が、商品を倉庫からスーパーマーケットの貯蔵室に輸送する責任を負う。ユーザDが、ユーザCから商品を受け取ると、TTIの色を計測して、TTIの色が、4℃で109時間のMRSSLを表す0.26OD未満であることを確認した。
【0048】
さらに、TTIを有する製品は、スーパーマーケットの棚を表すノードeに渡された。ユーザEは、ノードdから商品を受け取ると、TTIの色を計測して、TTIの色が、4℃で83時間のMRSSLを表す0.30OD未満であることを確認した。
【0049】
第二の実験
かなりの期間、TTIを室温にさらされた倉庫を除き、実験の最初から最後までTTI(TTIを備えた製品)を4℃の一定温度に維持した。
【0050】
出発ノードaで、ユーザA(製品の製造元を表す)が、TTIをその貯蔵温度から4℃の温度にし、ひいてはその「ゼロ時」をセットした。その瞬間、ユーザAは、TTIの色を計測して、それが、4℃で180時間のMRSSLを表す0.17OD未満であることを確認した。
【0051】
その後、TTIを有する製品は、製品を製造元から第一の倉庫まで輸送する第一の輸送業者を表すノードbに渡された。ユーザBが、ノードaから商品を受け取ると、TTIの色を計測して、TTIの色が、4℃で160時間のMRSSLを表す0.20OD未満であることを確認した。
【0052】
その後、TTIを有する製品は、倉庫を表すノードcに渡された。ユーザCが、ノードbから商品を受け取ると、TTIの色を計測して、TTIの色が、4℃で128時間のMRSSLを表す0.23OD未満であることを確認した。このノードで、TTIは、かなりの期間、室温にさらされた。
【0053】
その後、TTIを有する製品は、商品を倉庫からスーパーマーケットの貯蔵室に輸送する第二の輸送業者を表すノードdに渡された。ユーザDが、会社cから商品を受け取ると、色が4℃で109時間のMRSSLを表す0.26OD未満であることを検出するのを期待しながらTTIの色を計測した。しかし、読み値は、4℃で109時間のMRSSLを表す0.29ODの色を示した。理由は、TTIが、かなりの期間、ノードcで生じた室温にさらされていたからであった。
【0054】
ここで、温度誤用を会社cと容易に関連づけることができる。理由は、この会社が、ノードcに達するまでは標準に準拠していたが、ノードcとdとの間のサプライチェーンで最大色を超えたことがわかった状態を有するTTIを有する製品を配達したからである。
【0055】
このように、このプロトコルは、受け取り当事者が、標準温度で測定される最小残存標準貯蔵寿命よりも短い残存標準貯蔵寿命を有する商品の受け取りを拒否することを可能にする。あるいはまた、プロトコルは、そのような冷蔵チェーンにおける障害ポイントを発見し、標準温度における最小残存標準貯蔵寿命に関して商品価格を決めるのに役立つことができる。
【0056】
実施例2
この実施例では、本発明のハンドシェイクプロトコルを使用して冷蔵チェーンのモニタ及び管理を実証するために使用したTTIは、本発明の一発明者によって部分的に開発され、WO99/39197で開示されている時間温度指標であった。このTTI応答の2℃での具体的な時間変化を図5Bに示す。
【0057】
冷蔵チェーン状態のシミュレーションにおいて、ある人(ノード)から別の人へと、TTIが特定のノードで受け取られた時点よりも前のTTIの時間温度履歴を誰も知ることができないように、TTIを受け渡しした。各参加者は、特定のTTIに合わせて較正された、本発明のTTI応答読み取り装置を備えていた。
【0058】
実験に関して測定した具体的な冷蔵チェーンの標準条件は以下のとおりであった。各当事者は、2℃での残存標準貯蔵寿命(2℃でのMRSSL)が表2に示す最小値よりも短い場合、冷蔵チェーン上を輸送された商品の受け取りを拒否することができる。
【0059】
【表2】

【0060】
第一の実験
実験の最初から最後までTTIを2℃の一定温度に維持した。
【0061】
出発ノードa(製品の製造元)で、製品に対応するTTIを2℃の温度でチャージし、その後、その「ゼロ時」をセットした。その瞬間、TTI応答(色)を計測して(本発明の装置を使用)、TTIの色が、2℃で500時間のMRSSLを表す49L*よりも高いことを確認した。その後、TTIは、商品を製造元から第一の倉庫まで輸送する第一の輸送業者を表すノードbに渡された。
【0062】
ノードbで、ノードaから商品を受け取ると、TTIの色を計測して、TTIの色が、2℃で458時間のMRSSLを表す57L*よりも高いことを確認した。その後、TTIは、倉庫を表すノードcに渡された。
【0063】
ノードcで、ノードbから商品を受け取ると、TTIの色を計測して、それが、2℃で412時間のMRSSLを表す64L*よりも低いことを確認した。その後、TTIは、商品を倉庫からスーパーマーケットの貯蔵室に輸送する第二の輸送業者を表すノードdに渡された。
【0064】
ノードdで、ノードcから商品を受け取ると、TTIの色を計測して、それが、2℃で335時間のMRSSLを表す72L*よりも低いことを確認した。その後、TTIは、スーパーマーケットの棚を表すノードeに渡された。
【0065】
ノードeで、ノードdから商品を受け取ると、TTIの色を計測して、それが、2℃で225時間のMRSSLを表す78L*よりも低いことを確認した。
【0066】
実施例1と実施例2との主な違いは、色の変化の方向にあることが理解されよう。実施例1では、TTIの色は、淡い色から濃い色へと変化するが、実施例2では、濃い色から淡い色に変化し、実施例2のTTIは、チャージ可能であり、望みどおりの正確な時刻にチャージすることができる。
【0067】
実施例2の第二の実験
かなりの期間、TTIが室温にさらされた倉庫を除き、実験の最初から最後までTTIを4℃の一定温度に維持した。
【0068】
ノードaで、TTI色を感知し、それが、2℃で500時間のMRSSLを表す49L*よりも高いことを確認した。その後、TTIは、商品を製造元から第一の倉庫まで輸送する第一の輸送業者を表すノードbに渡された。
【0069】
ノードaから商品を受け取ると、ノードbのユーザBがTTIの色を計測して、色が、2℃で458時間のMRSSLを表す57L*よりも高いことを確認した。その後、TTIを有する製品は、倉庫を表すノードcに渡された。
【0070】
倉庫(ノードc)で、ノードbから商品を受け取ると、TTIの色を計測して、色が、2℃で412時間のMRSSLを表す64L*よりも高いことを確認した。ここで、TTIは、かなりの期間、室温にさらされた。その後、TTIは、商品を倉庫からスーパーマーケットの貯蔵室に輸送する第二の輸送業者を表すノードdに渡された。
【0071】
ノードdで、ノードcから商品を受け取ると、TTIを検査して、その色が、2℃で335時間のMRSSLを表す72L*よりも高いかどうかを測定した。検査は、色が、2℃で155時間しかないMRSSLに相当する84L*であることを示した。理由は、ノードcで、TTIがかなりの期間、室温にさらされていたからであった。ここで、温度誤用を会社cと容易に関連づけることができる。理由は、この会社が、ノードcに達するまでは標準に準拠していたが、ノードdに達したとき最大色を超えていたことがわかったTTIを有する製品を配達したからである。したがって、ここでもまた、このプロトコルは、受け取り当事者が、標準温度で測定される最小残存標準貯蔵寿命よりも短い残存標準貯蔵寿命を有する商品の受け取りを拒否することを可能にし、あるいはまた、プロトコルは、そのような冷蔵チェーンにおける障害ポイントを発見したり、標準温度における最小残存標準貯蔵寿命に関して商品価格を決めたりするのに役立つことができる。
【0072】
本発明の技術のもう一つの例は、製品冷蔵チェーンサプライラインに関与する当事者にだけ利用可能である一つの基準スケールを特徴とする通常のTTIを使用することからなる。したがって、これらの当事者は、この基準スケールを使用してTTIの定量評価を実施することができる。最終顧客に関して、デジタルYES/NO基準スケールのみを得ることができる。冷蔵チェーンサプライラインの当事者に利用可能な基準スケールは、中央部の透明な領域又は穴を有し、手で一時的にTTIの上に配置して、冷蔵チェーンのノードで検査中に冷蔵チェーン基準スケールが顧客スケールを覆うようにすることができる。
【0073】
当業者は、請求の範囲によって定義される発明の範囲を逸することなく、これまで例示した本発明の実施態様に様々な改変及び変更を加えることができることを容易に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一つの実施態様の装置のブロック図である。
【図2】本発明のもう一つの実施態様の装置のブロック図である。
【図3】対象物に取り付けることができ、少なくとも一つのTTIを有するバーコード状パターンを担持するラベルの概略図である。
【図4】それぞれが到着時の対象物の状態を測定するために本発明の装置を使用する複数のノード(ポイント)を含む対象物のサプライチェーンを示す概略図である。
【図5A】標準温度条件におけるTTIからの応答の経時的変化の一例を示す。
【図5B】標準温度条件におけるTTIからの応答の経時的変化の一例を示す。
【図6】異なる温度におけるTTI状態の経時的変化をより具体的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐敗しやすい対象物がそのサプライチェーン上を進行する間、対象物に対応する時間温度指標(TTI)の状態をモニタすることによって対象物の品質を管理するのに使用するための装置であって、所定の刺激に対するTTIの応答を検出し、それを表してTTIの状態を示す計測データを生成するための感知アセンブリを含み、それにより、TTI、ひいてはTTIが取り付けられ、較正された腐食しやすい商品の残存貯蔵寿命の測定を可能にする装置。
【請求項2】
前記外部フィールドがTTIのタイプにしたがって予め決定されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
検出される応答が、所定の入射光に対するTTIの光応答を含む、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記光応答がスペクトルデータの形式である、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記光応答が特定の彩度の形式である、請求項3記載の装置。
【請求項6】
前記光応答が入射光の反射を含む、請求項3〜5のいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記光応答が、TTIを透過した光を含む、請求項3〜6のいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記入射光が可視スペクトル範囲にある、請求項3〜7のいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記感知アセンブリが、前記所定の入射光を発する光源及び光検出器を含む、請求項3〜8のいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記光源がフラッシュランプである、請求項9記載の装置。
【請求項11】
バーコードリーダである、請求項3〜10のいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
計測データを、電気、光学、RF及び音響信号の少なくとも一つの形式の、TTIの状態を測定するために処理される出力信号に変換するための通信ユーティリティを含み、それにより、TTIの残存貯蔵寿命を管理することを可能にする、請求項1〜11のいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記データを、TTI、ひいては前記TTIが対応する対象物の残存貯蔵寿命を示すTTIの計測状態に対応する値に変換するための、前記感知アセンブリに接続可能であり、計測データに応答するように予めプログラムされた制御ユニットを含む、請求項1〜12のいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
時間温度指標(TTI)の状態を測定するための光学プローブであって、所定の入射光に対するTTIの光応答を検出し、それを表す計測データを生成するための光学感知アセンブリと、前記データを、電気、光学、RF及び音響信号の少なくとも一つの形式の、TTIの状態を測定するために処理される出力信号に変換するための通信ユーティリティとを含み、それにより、TTIの残存貯蔵寿命を管理することを可能にするプローブ。
【請求項15】
時間温度指標(TTI)に対応する対象物がサプライライン上を進行する間、その対象物を管理するためのシステムであって、
所定の刺激に対するTTIの応答を検出し、それを表してTTIの状態を示す計測データを生成するための感知アセンブリと、
前記データを、TTI、ひいては前記TTIが対応する対象物の残存貯蔵寿命を示すTTIの計測状態に対応する値に変換するための、前記感知アセンブリに接続可能であり、計測データに応答するように予めプログラムされた制御ユニットと
を含むシステム。
【請求項16】
時間温度指標(TTI)として設計されたパターンの少なくとも一つのフィーチャを有する機械読み取り可能なパターンを含むラベル、タグ又は包装材であって、前記パターンがTTIの時間温度変動にしたがって所定の刺激に対して時間温度可変的に応答するものであるラベル、タグ又は包装材。
【請求項17】
前記機械読み取り可能なパターンからの読み取り可能なデータが、TTI状態の時間及び温度変動にしたがって時間及び温度とともに変化し、それにより、前記読み取り可能なデータがTTIの残存貯蔵寿命を示す、請求項16記載のラベル、タグ又は包装材。
【請求項18】
時間温度指標(TTI)として設計されたパターンの少なくとも一つのフィーチャを含む機械読み取り可能なパターンを担持する対象物であって、前記パターンがTTIの時間温度変動にしたがって所定の刺激に対して時間温度可変的に応答する対象物。
【請求項19】
前記機械読み取り可能なパターンからの読み取り可能なデータが、TTI状態の時間及び温度変動にしたがって時間及び温度とともに変化し、それにより、読み取り可能なデータがTTIの残存貯蔵寿命を示す、請求項18記載の対象物。
【請求項20】
時間温度指標(TTI)に対応する対象物がサプライチェーン上を進行する間、その対象物を管理するのに使用する方法であって、
サプライチェーンのノードで、所定の刺激に対するTTIの応答を検出し、それを表す計測データを生成することと、
前記計測データを処理してTTIの状態を測定し、それによって前記TTIの残存貯蔵寿命の測定を可能にし、ひいてはサプライチェーンのさらなるノードへの対象物進行の決定を可能にすることと
を含む方法。
【請求項21】
前記サプライラインが、製品が持ち手を変えるところの複数のノードを含み、前記処理が、前記ノードごとに、TTI状態の公称範囲を決定する所定のプロトコルを使用して、所与の温度における残存貯蔵寿命の指示を与える、請求項20記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−512526(P2007−512526A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540775(P2006−540775)
【出願日】平成16年11月21日(2004.11.21)
【国際出願番号】PCT/IL2004/001070
【国際公開番号】WO2005/050192
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(506173178)フレッシュポイント・ホールディングス・ソシエテ・アノニム (7)
【氏名又は名称原語表記】FRESHPOINT HOLDINGS S.A.
【Fターム(参考)】