曝露システム
肺とエーロゾル化薬剤との間の相互作用を研究又は予測するためのシステム及び方法。このシステムは、曝露装置に気密接続されたエーロゾル発生器(10)を備え、曝露装置は、エーロゾル発生器(10)のエーロゾル保持チャンバから流れ接合部へと向かう移送エーロゾル流と、曝露器官に分配するために流れ接合部から呼吸能力を有する曝露器官へと向かう曝露エーロゾル流とを形成するようになっており、これにより、流れ接合部から遠ざかる方向に移送される残留エーロゾル流が供給される。曝露装置は、流れ接合部の上流に配置された、移送エーロゾル流を監視するための流量監視装置と、流量監視装置の下流に配置された、エーロゾル粒子濃度を測定するための装置と、任意に、移送エーロゾル流を制御するための流れ制御機能部とをさらに備える。このシステムを肺とエーロゾル化薬剤との間の相互作用を予測するために用いることによって、薬剤の損失を最小にすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エーロゾル化された薬効物質の肺における取り込みを研究するため、又はその研究を支援するための、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸入可能にエーロゾル化された吸入用薬剤は、一般に、静脈投与や皮下又は筋肉注射のような、注射その他の種類の薬剤投与システムに対する代替法として考慮できる手法と考えられている。例えば、インスリンは、患者が服薬を順守し易くするために、エーロゾル化された形態での吸入による投与が望ましい。しかしながら、吸入可能なエーロゾルに関する一般的な問題点は、投与される量が注射と比べて不正確であること、及び、多くの場合、投与のために必要な正確な量が投与ごとに厳密に計量されないことである。全身的な薬剤投与、及び、肺モデルを用いたエーロゾルによる薬物ふるい分け(スクリーニング)の両方にとって、安全な治療のため、又は実り多いふるい分けモデルのために適切に用いるには、精度が低レベルであるということは欠点である。
【0003】
臨床の殆どの部分においては、所定用量の薬剤を可能な限り短い曝露時間で、好ましくは一呼吸の吸入操作で、適切に制御されたエーロゾル薬剤の集塊を高濃度で気道に供給することが望ましい。従って、可能な限り妥当なデータを収集するためには、薬剤開発の初期プロセスにおいてもこの曝露ストラテジーに倣うようにすることが同様に望ましい。しかしながら、大部分のエーロゾル発生器技術及び投与システムにおける技術上の限界のために、このことはほとんど達成されていない。利用可能な発生器技術のほとんどは、大量の物質を消費する連続的放出を用いている。本発明の意図は、この限界を克服し、初期薬剤開発においても、呼吸用エーロゾルにおける集塊型の曝露を可能にすることである。
【0004】
米国特許第6,003,512号明細書(特許文献1)は、ダストガン方式のエーロゾル発生器と、粉末をエーロゾル化して供給する方法とを記載する。この装置は、少量の粉末から高度の反復可能な特性で吸入可能なエーロゾルを生成する。この装置は、凝集解離力が高いので、希釈剤及び賦形剤の使用を避けることができ、高度の反復可能性をもって、適切な濃度にされた、均一な粒径の薬剤エーロゾルを、少量の凝集性粉末からでさえも発生させることができる。従って、ダストガン方式のエーロゾル発生器は、肺におけるディーゼル煤の堆積を研究したP.Gerde他、Inhalation Toxicology、2004年、第16巻、p.45−52(非特許文献1)に開示されているように、切り離されて、通気され、灌流されたげっ歯類の肺(IPL)と組み合わせるのに有用なツールであることが実証されている。米国特許第5,887,586号明細書(Dahlbaeck他)(特許文献2)は、エーロゾル化された薬剤から動物が吸入した薬剤量を測定するための方法及びシステムを開示する。このシステムは、吸入された薬剤量をより正確に測定するための手段を備える。しかしながら、このシステムには、エーロゾル発生器と動物との間の距離が幾分長くなり、これがデッドスペースとなるため、システム内において、エーロゾル化薬剤に有意の損失を生じ、比較的大量の薬剤が動物の肺まで到達しないという難点がある。薬剤が装置内に堆積することによる損失は、非常に望ましくないものであり、特に薬剤候補のふるい分けにおける初期ステージでは、経済的な理由から非常に望ましくないことである。米国特許第6,269,810号明細書(特許文献3)は、厳密に治療目的のための、肺投薬システム及びその作動方法を記載する。このシステムは、較正についてはフィルタにのみ依存するものであり、これは、例えば薬剤候補の性能を評価する場合に必要とされる、エーロゾル発生器から曝露標的までの間のエーロゾルの損失に関して、投与量に対する堆積量を正確に推定するには不十分である。
【0005】
薬剤物質候補を用いた吸入曝露の際に、研究対象物質が肺の標的領域内に堆積することは所望のプロセスであるが、このプロセスには、研究対象物質が投与装置内及び気道の非標的領域内に堆積することによる、望ましくない損失が常に付随する。吸入投与が意図されている薬剤の開発プロセスの初期において、物質の損失は、吸入により行う、決定のための初期試験にとって妨害となることが多い、重大な因子である。2つの主要な機構、すなわち空気力学的損失及び静電気的損失が、エーロゾルがダクトを通って流れる際の、粒子の壁への堆積をもたらす。空気力学的損失は、粒子の拡散、沈降、密着及び遮断によるものであり、主として研究対象エーロゾルの空気力学的粒子径質量中央値(MMAD)、及び研究対象ダクトシステムの流体力学的形状によって影響される。空気力学的損失は、理論的モデルによって合理的かつ満足に予測することができる。静電気的損失は、空気力学的損失に重ね合わされ、これは、研究対象粉末及びダクトシステムの壁の物質的性質に強く依存する。静電気的損失は、より不規則であり、予測が難しく、研究対象エーロゾルの支配的な堆積機構となる。粉末エーロゾルのこの予測できない挙動は、エーロゾル発生装置と曝露システムの容器壁、及び気道の非標的領域における物質の損失をもたらすだけでなく、研究対象物における標的曝露を達成するために必要な曝露パラメータを調節する際にも、物質の損失をもたらす。本発明は、これらの両方の問題に対処することを意図するものである。
【0006】
集塊形態の吸入曝露に付随する特有の問題は、エーロゾルの濃度と吸入気体内に存在するエーロゾルの持続時間の両方を制御することである。理想的な状況においては、エーロゾルは、曝露対象物の呼吸パターンによって決定されるオン時間とオフ時間との間、吸入される気体の中に所定濃度で存在する。エーロゾル濃度は、終端部で分散したり、だれたりすることのない方形波で表されるべきである。しかしながら、これは、達成するのが困難であり、エーロゾル集塊の典型的な濃度曲線は不均一であり、徐々に濃度が減少する長い終端部分を含む。濃密なエーロゾルのエーロゾル集塊に影響を与える1つの基本的な機構は、雲状沈降現象である(NA Fuchs著、「The Mechanics of Aerosols」、 Pergamon Press、英国オックスフォード、1964年(非特許文献2))。周囲の空気よりも僅かに高い平均密度を有する濃密なエーロゾルは、分離した雲として移動する傾向にあり、この雲は、それらの周囲の気体マトリクスに対して、個々の粒子よりも相対的に速く移動する(WC Hinds他、Aerosol Science and Technology、第36巻、p.1128−1138、2002年参照(非特許文献3))。雲状沈降は、特にエーロゾル曝露の終端においてエーロゾル集塊が分散するのを増大させる主因子となる。このような分散は、意図されたエーロゾル投与量のうちの大部分が気道の標的領域に到達するのを妨げ、すなわち、換言すると、エーロゾル投与量のうちの大部分を通常は曝露装置内に堆積させるものとなるか、若しくは、所定の時間ウインドウ外で標的領域内に到達させるものとなる。
【0007】
上記のダストガン又はExubera(登録商標)(Pfizer Inc.)のような間欠的なバースト方式のエーロゾル発生器は、エーロゾルの雲煙をある程度停滞した媒体の中に噴出する。バーストの凝集を解離させる運動エネルギーは急速に散逸し、特徴的な雲煙が形成される。その後、雲煙は拡散力、対流力、及び重力の影響を受け、それらの力が雲煙のエーロゾルを分散させ、希釈する。吸入曝露のためには、非常に多くの場合、バースト状の雲煙を、曝露対象物によって一回又は数回の呼吸で吸入されるエーロゾル集塊に変換することが望まれる。エーロゾル集塊は、エーロゾル濃度がゼロから一定レベルまで上昇し、そのレベルが維持される段階と、濃度が平均濃度からゼロまで減少することによって集塊が終了する段階とを呈する。理想的には、集塊の平均濃度は、装填されエーロゾル化された物質の量を集塊の体積で割ったものとなるべきである。
【0008】
従って、所定投与量のエーロゾル化薬剤を、装置内での物質の損失を最小にして、正確かつ予測可能に投与し、組織又は動物に対する距離測定を伴う曝露を行うことなく目標投与量に到達させることが求められている。エーロゾル化可能な薬剤候補を、少量の物質しか入手できない非常に初期の段階で正確に試験することを可能にするシステムもまた求められている。これらの目的に対処するために、エーロゾル発生器を、灌流された摘出肺又は無傷の動物の気道にマニホールド装置を通じて接続することによって、曝露システムを組み立てた。ダストガン式エーロゾル発生器を含む上記の曝露システムは、新規薬剤候補を肺内での局所的作用又は肺投与を通じた全身的な取り込みに関してふるい分けし、評価する場合に、効率的に利用できることが明らかである。特に、ダストガン・システムを装置及び方法の一部とすることができるので、これにより、合成薬剤の量および前処理が大幅に低減され、ふるい分けプロセスが簡素化されると同時に、実験動物を含めた生物学的材料の利用が削減される。以下において説明される本発明は、このような要件を満たすものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,003,512号明細書
【特許文献2】米国特許第5,887,586号明細書
【特許文献3】米国特許第6,269,810号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】P.Gerde他、Inhalation Toxicology、2004年、第16巻、p.45−52
【非特許文献2】NA Fuchs著、「The Mechanics of Aerosols」、 Pergamon Press、英国オックスフォード、1964年
【非特許文献3】WC Hinds他、Aerosol Science and Technology、第36巻、p.1128−1138、2002年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1の目的は、その後の薬剤開発のための候補物質が、肺投与の後に、どのように堆積し、吸収され、代謝されるかを予測することを支援するモデルを提供することである。
本発明のさらなる目的は、組織に保持される物質の割合を測定することができない場合にエーロゾルの堆積された投与量を推定若しくは予測するため、又は組織若しくは実験動物について薬剤動態学的にさらにモデル化するために、等しく有用なシステムを提供することである。
本発明のさらなる目的は、供給されたエーロゾル化薬剤の投与量が曝露対象物の外側の装置内で失われる損失を最小にすること、及び、一連の曝露の後で、装置に堆積した材料の回収を可能にすることである。
本発明の別の重要な目的は、その性能がエーロゾル曝露に向いているかもしれない薬剤候補を少量の物質を用いてふるい分けするとともに、関与する生物学的組織及び実験動物を削減できるような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、一般的に曝露装置と組み合わされたエーロゾル発生器に関する本発明のシステム、及び該システム内でエーロゾル粒子を収集することによって、肺に投与された投与量を求める方法によって達成される。
【0013】
一般的に言えば、本発明は、肺とエーロゾル化薬剤との間の相互作用を研究し、又は予測するのに適したシステムに関し、このシステムは、曝露装置に気密接続されたエーロゾル発生器を含む。このシステムは、間欠的エーロゾル発生器から周期的に発生されるエーロゾルの一部を適切なエーロゾル保持チャンバ内に収集し、次いで、エーロゾル発生器のエーロゾル保持チャンバから流れ接合部に向けて移送エーロゾル流を形成し、曝露器官に分配するために、該流れ接合部から呼吸能力を有する曝露器官に向けて曝露エーロゾルを形成するようになっている。そして、残留エーロゾル流は、流れ接合部から遠ざかる方向に送られる。曝露装置は、送られるエーロゾル流を制御するための流れ制御機能部も含んでおり、これは、この説明においては、所定量の流れを発生させるための手段と、流れの方向を制御するための手段の両方を含む機能部を意味する。曝露装置は、さらに、移送エーロゾル流を監視するために流れ接合部の上流に配置された流量監視装置と、エーロゾル粒子濃度を測定するために流量監視装置の下流に配置された装置とを含む。さらに一般的な意味で、本システムは、エーロゾル化薬剤と、これとは異なる大きさの肺との間の相互作用を研究し又は予測するのに適合させることができる。その場合、エーロゾル保持チャンバの容積は、下記の3つの曝露シナリオのうちの1つに合致するように、曝露器官の推定肺容積に適合される。
【0014】
本システムは、発生器から曝露器官へのエーロゾルの気密移送に適合した多数の流路を含むことを理解されたい。この場合、不必要な延長部、ポケット、その他の粒子トラップによるエーロゾルの損失を最小にするように、流路を選択し、組み立てることを、当業者は理解するであろう。
【0015】
システム及びその種々の部分又は構成要素を説明する場合に、「遠位」及び「近位」という用語が本明細書において用いられる。システムの遠位端とは、エーロゾルが発生する部分であり、近位端とは、エーロゾルと堆積を生じる器官との間の相互作用が研究される部分であることを理解すべきである。従って、遠位及び近位という用語は、上記の2つの機能部分との関係でシステム内の位置を定義するために用いられる。
【0016】
「エーロゾル」という用語は、液滴の霧を指すことが多いが、本明細書で用いられる場合のこの用語は、気流内における固体粒子の懸濁物を指す。従って、「エーロゾル」という用語は、調合物の懸濁粒子を含む空気の容積を指す「エーロゾル集塊」を意味する場合もある。空気容積は、例として、約3mlから約4リットル未満までの間で変化することができ、粒子は、好ましくは約0.1から10ミクロンまでの直径を有するものとすることができる。「エーロゾル」、「粒子」、「エーロゾル粒子」、「エーロゾル化調合物」及び同様の用語は、本明細書においては、互換性があるものとして用いられ、エーロゾル投与のための形成された、薬学的に活性の薬剤と担体とから成る調合物の粒子を指す。
【0017】
堆積器官は、エーロゾル粒子がそこに又はその中に堆積し、エーロゾルと相互作用する器官、すなわち、投与されたエーロゾルの総投与量のうちの一部が相互作用する器官として、広く定義される。本発明の記載において、堆積を生じる器官は、切り離され、通気され、灌流された肺、鼻用マスク若しくは気管内カテーテルを用いてシステムに接続された実験動物の肺、又はエーロゾルと相互作用するようになった吸入フィルタとすることができる。「曝露標的」又は「曝露器官」という用語もまた本発明の記載において用いられており、「堆積器官」と同様の一般的意味、すなわち、本発明のシステム及び方法によるエーロゾル投与のための標的という意味を有するものとみなされるべきである。
【0018】
一実施形態において、本発明は、切り離され、通気され、灌流された肺内、又は実験動物の肺内に堆積するエーロゾル化薬剤の投与量を予測するようにされた、上述のシステムに関する。この実施形態によれば、曝露エーロゾル流は、接合部から曝露器官に気密状態で送られるようにされており、該曝露器官は、曝露器官への制御されたエーロゾル曝露を確立するように構成されたハウジング内に設けられた吸入フィルタを含む。この吸入フィルタは、実験動物の呼吸パターンを実行するように構成された呼吸シミュレータに接続される。システムを、どのようにして種々異なる呼吸容量に容易に適合させることができるかについては、後述する。さらにこの実施形態において、流れ制御機能部は、制御された流量の移送エーロゾル流をエーロゾル保持チャンバと接合点との間に形成するものであって、1つの好ましい態様においては、この流れ制御機能部は、流れ接合部の下流に配置された真空源である。特定の環境においては、この流れ制御機能部は、移送流の方向が正確であることを保証するために、1つ又は複数の流れ方向制御装置を含むことが好ましい。さらにまた、この実施形態によるシステムは、エーロゾル入口装置と、フィルタ装置とを有し、該エーロゾル入口装置は、ハウジングの蓋部分に気密に接続され、送られるエーロゾルを流れ接合部に分配するためのほぼ管状のチャネルが設けられており、フィルタ装置には、残留エーロゾル流を受け入れるように流れ接合部に接続されたほぼ管状のチャネルと、エーロゾル残留物フィルタのための着脱可能なフィルタホルダを備えた下流フィルタチャンバとが設けられている。好ましくは、エーロゾル入口装置の管状チャネルは、その上に残留エーロゾル粒子が堆積し、重力によって保持される残留物フィルタの本質的に水平な面から45度を越えない角度で延びる。この構成は、粒子が、厚くコーティングされたフィルタから重力によって失われることを防ぐ。システムの吸入フィルタは、ハウジングの蓋に対する接続手段に取り付け可能な遠位部と、堆積フィルタを含む取り外し可能なフィルタホルダに接続される近位部とを有する。フィルタ流路が、近位部と遠位部との間に延びており、その延長部は、流れ接合部と曝露対象物との間の流路の延長部に実質的に対応する。フィルタ流路とエーロゾル入口装置の管状チャネルとは、約45度の角度で配置されることが好ましい。流れ制御機能部が、フィルタ装置の下流に配置された真空源であることもまた好ましい。
【0019】
ここで論じられている実施形態の1つの態様において、システムは、送られるエーロゾル流が呼吸シミュレータによって発生される呼気流容量を上回る状態にして作動される。これはまた、小さい肺容量を有する実験動物を用いる場合にも一般的である。
【0020】
ここで論じられている実施形態の別の態様において、システムは、送られるエーロゾル流を超える呼気流容量で作動され、これは中程度の大きさの肺を持つ実験動物の場合に適用される。この場合、流れ制御機能部は、流れ監視装置の上流に配置された一方向弁を含むことが好ましい。さらに、送られるエーロゾル流を、流れ監視装置の上流に配置された換気バルーンによって支援することができる。
【0021】
上記の2つの態様は、小さいか又は中程度の大きさの肺が対象とされる条件に関するものであるが、ここで論じられている実施形態のシステムは、大きい(すなわち、犬のような、より大きな動物の)肺の条件に適合させることもできる。このような場合には、呼吸シミュレータは、エーロゾル保持チャンバの容積より大きい一回換気量で作動し、流れ制御機能部は、少なくとも2つの一方向弁を含む。大きい呼吸容量は、エーロゾルの残留流量を低減させるので、システムは、流れ接合部に接続されるフィルタ装置が存在しない状態でも作動させることができる。それに代えて、呼吸の間にエーロゾルが失われないことを確実にするために、流れ接合部の下流の残留流の中に一方向弁が配置される。別の一方向弁を監視デバイスの上流に配置することが好ましく、前述の機能を有する換気バルーンを、一方向弁と流れ監視装置との間に配置することができる。
【0022】
以上、エーロゾルが堆積器官とどのように相互作用するかを予測するように構成された本発明の実施形態について説明してきたが、このシステムは、上記の特徴と本質的に同じ特徴により、本質的に同じ条件下で、IPL又は実験動物を用いて容易に作動させることができる。しかしながら、上記の吸入フィルタの代わりに、システムは、この場合、流れ接合部から、ハウジング内のIPL、又は実験動物の鼻用マスク若しくは気管内カテーテルに接続される。
【0023】
従って、エーロゾル保持チャンバの容積よりも少ない一回換気量を発生させる呼吸能力を有する肺との相互作用を研究するためには、システムには、曝露エーロゾル流が接合部から気密状態で送られるように構成されており、エーロゾル保持チャンバと接合部との間に制御された流量でエーロゾル流を供給する流れ制御機能部が設けられる。流れ制御機能部は、流れ接合部の下流に配置された真空源であることが好ましい。この場合、本システムは、残留エーロゾル流を受け入れるように流れ接合部に接続されたほぼ管状のチャネルと、エーロゾル堆積フィルタのための脱着可能なフィルタホルダを備えた下流フィルタチャンバとが設けられた、フィルタ装置をさらに含むことができる。
【0024】
堆積を生じる器官がIPLである場合には、これは、曝露エーロゾル流を流れ接合部から気密状態で受け入れるようになったハウジング内に収容される。好ましくは、該IPLは、エーロゾルによる曝露サイクルの間、灌流流体で灌流され、この目的のために、ハウジングは、灌流流体の流れを受け入れるようになっており、かつ、例えば、流体用フラクションコレクタ及び適切な分析装置に接続されることよって、分析及び研究のために灌流流体を繰り返し収集する手段を備える。これらの部分は、一般に曝露システムの一部とみなすことができるが、これらは本発明の一部とはならないので、これらについては、この記載ではさらなる説明は行わないものとする。
【0025】
堆積器官が実験動物の肺である場合、システムは、前述と同様の方法で、肺の大きさ、すなわち動物の呼吸能力に適合される。動物は、鼻用マスク又は同様の装置を通じて曝露流を受け入れるように、接合点に気密接続される。送られるエーロゾル流を超える呼気流容量を有する動物の場合には、流れ制御機能部はさらに、流れ監視装置の上流に配置された流れ方向制限装置を含む。好ましくは、流れ方向制限装置は、一方向弁であり、流れ制御機能部は、移送エーロゾル流を増強する能力を有する換気バルーンをさらに含むことができる。エーロゾル保持チャンバの容積よりも大きい一回換気量を発生させる呼吸容量を有する大きい実験動物の場合には、流れ方向制御装置は、流れ監視装置の上流に配置された第1の一方向弁と、残留流の方向を制御するように流れ接合部の下流に配置された第2の一方向弁とを含み、移送エーロゾル流を増強する能力を有する換気バルーンを、好ましくは、上流の一方向弁と流れ監視装置との間に配置することができる。
【0026】
システムのエーロゾル発生器は、急速に膨張する加圧気体を使用することが好ましく、この加圧気体は、封入された投与粉末と混合され、粉末粒子を凝集解離させて、エーロゾル保持チャンバに供給可能なエーロゾルにする。そのような適切なエーロゾル発生器は、上述の特許文献1に開示されており、このエーロゾル発生器は、粉末をエーロゾル化して供給するために、圧力チャンバと、出口ノズルのところで常圧に対して開口した、少なくとも1つの実質的に直線状の噴出流路と、加圧気体を充填して粉末を混合するための封入粉末チャンバと、圧力チャンバと粉末チャンバとを接続する少なくとも1つの圧力流路とを含む。この実施形態において、実質的に円形の出口ノズルは、実質的に均一な断面の開口部を有し、噴出流路は好ましくはシリンダを含む。
【0027】
本発明の重要な実施形態において、システム設計は、チャンバ及び流路内でのエーロゾルの損失を最小限にするために、雲状沈降現象に適合するものとされている。雲状沈降現象を用いる意図は、(1)間欠的に発生されるエーロゾルのバーストの初期濃度をできるだけ一定に維持するため、(2)発生されたエーロゾル集塊を、該集塊の先端部又は終端部における分散又は逆混合を最小にしながら、一部ずつ又は全体として、曝露対象物に供給するため、及び、(3)エーロゾル装置の容器壁で失われるエーロゾルを最小にし、装置に堆積した材料の回収を可能にするためである。この目的のために、上記システムは、下部と上部との間を垂直に延びる、ほぼ円錐形のエーロゾル保持チャンバを含むことができる。上部が下部よりも大きい断面積を有し、これによって、ほぼ倒立した円錐形状の保持チャンバが構成され、エーロゾル発生器から出るほぼ円錐形状のエーロゾル・バーストは、バースト雲の下方境界がエーロゾル発生器に沿うように形成される。保持チャンバの下部は、エーロゾル発生器から上向きに送られたエーロゾル集塊のバーストを受け入れるようになったエーロゾル入口を有する。さらに、保持チャンバは、その下部に、エーロゾルを曝露標的に向けて下流側に送るための出口流路を含む。出口流路は、下方に向けられていることが好ましい。出口流路は、システム内でのエーロゾルのさらなる移送を支援するために、流路を長さ方向に対称に切断する面が水平面に対して約30度の角度となるように、下向きの方向を有することが適切である。エーロゾル保持チャンバの上部には、導入されたエーロゾルの上に清浄空気層を導入するための、エーロゾル粒子を含まない流入空気用のディフューザを設けることができる。
【0028】
本発明はまた、エーロゾルを、エーロゾル集塊の形で、均等な濃度及び最小限の損失で曝露標的に送るための新規な方法に関する。この方法は、一般に、エーロゾル発生器から上向きに送られたエーロゾルのバーストを、倒立円錐形状を有する概ね垂直方向の保持チャンバの下部に導入し、該保持チャンバ内で重力によってエーロゾルを雲状に沈降させて密度を高め、より軽い清浄空気層をより濃密なエーロゾル雲の上に導入し、エーロゾルの流れを、曝露標的に移送するために、保持チャンバの下向きの出口流路に受け入れるステップを含む。この方法は、エーロゾルと清浄空気との不安定な混合を防止しながら行われることが好ましい。好ましくは、エーロゾルは、重力の影響下で、保持チャンバ内で沈降することが可能であり、その間に、発生器から出たバーストの初期運動エネルギーが散逸するようにする。この行程の間に、エーロゾル雲は、上方に層として導入された、より軽い清浄空気の方に向かって安定な境界に到達するようにすることが好ましい。エーロゾルは、沈降している間に密度が増大し、本発明の目的に適合する移送のために到達する密度としては、0.1%(wt)程度に増大した臨界密度が適切である。保持チャンバの下部に配置された出口流路が、標的へのその後の移送を行うためにエーロゾルを受け入れる。一例において、この移送は、システムにおける下向きの重力によって行われる。この移送方法が実行されるとき、清浄空気は、エーロゾル雲に対して圧力を及ぼすように作用して、保持チャンバからのエーロゾル雲の排出を支援することができる。
【0029】
上記の移送方法に対処するために、エーロゾル・バーストを収容し、エーロゾルを曝露標的に移送するためのエーロゾル保持チャンバは、上部と下部との間に延びる本質的に垂直なチャンバを備え、上部が下部よりも大きい断面積を有するように構成される。これによって、チャンバは、エーロゾル発生器から上向きに送られたエーロゾル集塊のバーストを受け入れるようになったエーロゾル入口と、エーロゾルを曝露標的に移送するために受け入れるエーロゾル出口流路とが下部に設けられた、概ね倒立円錐の構造となる。チャンバは、出口流路を移送のために開放する弁機能を備えるように構成することができ、出口流路は下向きに方向付けられることが好ましい。さらに、チャンバは、粒子を含まない清浄な空気をより濃密なエーロゾルの上に安定な層として導入するために、上部にディフューザを備えるように構成される。
【0030】
エーロゾル移送のための上記の方法及び構成は、理想的な方形波形状からのずれを最小にし、かつ材料の損失を可能な限り少なくした状態で、エーロゾル発生器のバーストを所望の濃度のエーロゾル集塊に変換することを可能にする。この目的のために、保持チャンバ及び曝露流路は、おそらくは雲状沈降現象又はレイリー・テイラー不安定性と、空気力学的及び静電気的機構の両方によって生じる、間欠的なエーロゾル集塊の分散又はにじみを最小にするように設計されている。エーロゾルが濃密であるほど、分散を生じさせる最も重要な機構は雲状沈降現象となる。
【0031】
本発明は、雲状沈降によって生じる分散を軽減することを意図している。エーロゾル発生器から出た濃密なエーロゾル・バーストは、エーロゾル集塊の前縁のところで濃度に明確な段が生じるようにするために、可能な限り迅速に安定な構造になるように重力によって沈降しなければならない。発生器から出た円錐形バーストの場合には、バースト雲の下方の境界に沿って、同様の形状の倒立円錐部を配置することが提唱される。バーストの運動エネルギーが散逸するとすぐに、エーロゾルは急速に沈降して円錐形の保持チャンバ内で安定な集塊となり、保持チャンバから出ると、エーロゾルはすばやく一定の高濃度を得ることになる。集塊の後縁における分散を最小にするために、より濃密なエーロゾル集塊の上に、エーロゾルを含まない、より軽い気体の層を形成することによって、エーロゾル集塊を変位させる。曝露流路の下向きの傾斜を曝露対象物にできるだけ近いところに維持することもまた有利である。その結果、終端部に向かって分散する傾向が少ない、輪郭が明確な集塊として、濃密なエーロゾルが保持チャンバから抽出される。粒子を含まない空気を上に層状に形成するためにディフューザ方式の装置が用いられる場合、曝露ストリーム内における高いエーロゾル濃度の持続時間は、保持チャンバ内における該ストリームの消滅時間に近いものとなり、エーロゾル濃度は、エーロゾル発生器から噴出された粉末の量を保持チャンバの容積で割ったものに近い値となる。レイリー・テイラー不安定性は、エーロゾル濃度が高いほど、かつ、システムを通る流量が低いほど、分散の増大に寄与することが一般に観察されている。要約すると、エーロゾル移送における上記の改善によって、材料の損失を驚くほど低減させるとともに、エーロゾルに曝露される標的が受け取ることになる、発生されたエーロゾルの輪郭を明確なものにすることができる。これらの知見は、例として挙げたような、投薬量の不正確さが問題となっていた多くの用途に対する顕著な改善を表すものであるが、治療におけるエーロゾル薬剤投与に限定されるものではない。
【0032】
他の実施形態において、本発明のシステムは、IPLを用いたテストモデルにおいて肺によって吸収される薬剤の量を求めるために、IPLが灌流流体を用いてシングルパスモードで灌流され、曝露シーケンスの間に所定の持続時間でIPLの下流側で灌流液がサンプリングされるようになった、エーロゾル投与を用いる曝露サイクルが実行される方法に使用することができる。各サンプルを秤量し、灌流液の流量を求めることによって、肺における溶質の吸収量を計算する。肺内での灌流液の静水圧が一定に保持されると仮定すると、測定流量を診断用因子として用いて、本発明の曝露システムにおいて吸入曝露した後の、肺循環における抵抗に対する吸入された種々異なる薬効物質又は薬剤の効果を測定することができる。
【0033】
他の実施形態において、本発明は、好ましくは、エーロゾル曝露系に吸入フィルタを備える前述のシステムを利用することによって、IPLに対する肺投与量(又は「活性物質の予測堆積量」)を予測するための方法に関する。この方法は、投与される粉末形成薬効物質からエーロゾル発生器によってエーロゾルを生成し、このエーロゾルを、曝露装置を用いて、所定の一回換気量の呼吸シミュレータに接続された吸入フィルタに移送することを含む。この方法において、エーロゾル単位の空気力学的粒子径質量中央値(MMAD)の値、残留フィルタ上に堆積したエーロゾル粒子の質量値(Mres)、及び吸入フィルタ内のフィルタ上に堆積したエーロゾルの質量値(Minh)が求められる。空気力学的粒子径質量中央値(MMAD)は、例えば、カスケードインパクタ装置によって測定することができる。これらの値から、予測肺投与薬剤量(Mdep)を計算することができる。この方法は、さらに、エーロゾル入口装置内におけるエーロゾル粒子濃度を、例えば、流動するエーロゾル粒子からの光の反射及び/又は散乱を測定する計器を用いて求めること、及び、流れ接合部からの残留流れを受ける残留フィルタ上に堆積したエーロゾル粒子の質量値(Mres)を求めることを含むことができる。Mresの値から、フィルタ係数補正エーロゾル粒子濃度(Ccorr)を求めることができる。次に、予測肺投与薬剤量(Mdep)も、曝露装置の呼吸パターンから、フィルタ係数で補正されたエーロゾル粒子濃度(Ccorr)、呼吸シミュレータの一回換気量(TV)、及び測定された空気力学的粒子径中央値(MMAD)の場合の堆積エーロゾル分割合を用いることによって、求めることができる。本発明の方法のさらなる特徴は、曝露装置の入口においてエーロゾル流量を監視する機能、及び、一定の、又は実質的に一定のエーロゾル移送流量をもたらすことである。排出された曝露雰囲気が再度呼吸されることを回避するために、曝露流量は、呼吸シミュレータの換気量の少なくとも3倍とすることが好ましい。
【0034】
特に重要な実施形態において、本発明は、薬剤候補を肺との相互作用特性に基づいてふるい分けする方法に関する。第1に、投与される薬剤候補の粉末化された物質を、予測される肺堆積量(Mdep)を求めるように構成された上記のシステムを用いて、組織又は動物を用いずに前述の手順に従ってエーロゾル化する。第2に、薬剤候補がどのように肺組織と相互作用するかを判定するために、今度は、その粉末薬剤の予測された堆積量を用いてシステムを作動させて、肺を同じエーロゾルに曝露することができる。換言すると、肺内に堆積する投与量との比率で投与量を決定することによって、前述のように、試験対象物を用いたその後の試験の際に、最適化された曝露時間及び他の動作条件の下でシステムを作動させることができるようになるので、試験材料が少量しか入手できない場合に、条件を大幅に最適化することができる。ここで、肺は、IPL又は実験動物の肺のどちらであってもよい。送られるエーロゾル流は、本質的に同じに保持することが好ましい。mgスケールの、例えば100mg未満といった少量の薬剤を用いることが好ましく、かつ有利である。この方法の概略に従うことによって、高価な材料を最適化された量で用いて作動するというこのシステムの全般的な利点がさらに高められ、様々な薬剤候補間の迅速で信頼性の高い識別を初期の前臨床段階で効果的に行うことができる。この方法が利用可能である相互作用の研究は、薬剤候補の吸収についての研究を含むだけでなく、肺組織内において、又は肺組織を通じて及ぼされる薬剤活性を含む多くの生理学的効果の研究、例えば、治療作用の開始を含む、代謝、薬理学的及び毒物学的応答の研究、並びに生物学的利用能及び薬剤動態学的局面の研究することを同様に可能にする。本発明のシステム及びこのシステムを用いた方法は、薬剤開発における発見段階及び前臨床段階を短く簡便化し、市場に受け入れられる新規な独自製品を見出そうと企図する際の責務の増大に悩まされる産業において、コストを引き下げるという、顕著な利点がある。上記のシステム及び方法は、診断用途においても同様に有用であり、上記の方法は、薬剤に関しての、肺での堆積の判定、及び気道の感受性の判定に適用することができる。診断用途についても、低投与量及び試験精度に関して同じ利点が明らかである。
【0035】
本発明の別の重要な態様は、保持チャンバ及び管路におけるエーロゾルの損失を、エーロゾルが重力勾配によって曝露対象物に向かって流れ下るようにさせるだけで最小にする方法にある。重力勾配による流れは、エーロゾル集塊の不必要な逆混合又は分散を引き起こすレイリー・テイラー不安定性を防止する。物質の損失を最小にする別の方法は、保持チャンバ容器壁からの粉末の回収を可能にすることである。壁に堆積した粉末は、粉末チャンバの蓋の上にゴムのシーリングを備え、カラムの上部にゴムで覆われたシールを備えた粉末チャンバを取り付けることによって、保持チャンバの壁から回収することができる。同じ材料による一連の曝露シリーズの最後に、急勾配に傾斜した保持チャンバの壁を、適切な装置によって振動させて、粉末が粉末チャンバの蓋の上に置かれた小さい金属箔のパンの中に重力で滑り落ちるようにさせる。金属パンは、曝露の後で簡単に取り出すことができ、粉末が回収される。
【0036】
以下の詳細な説明は、本発明のシステム及びその動作の多くの例を示すが、これは添付の特許請求の範囲によって規定される権利保護の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明によるシステムの概要を示す。
【図2a】フィルタ装置、エーロゾル入口装置、及びエーロゾル接続手段を備えたハウジングの蓋の側面図を示す。
【図2b】図2Aの線AAに沿った断面図を示す。
【図3】吸入フィルタの断面図を示す。
【図4a】3つの主要曝露構造の概略図の1つを示す。
【図4b】3つの主要曝露構造の概略図の1つを示す。
【図4c】3つの主要曝露構造の概略図の1つを示す。
【図5】本発明による保持チャンバの断面図を示す。
【図6】出口流路を備えた保持チャンバを示す。
【図7】ホースラディッシュペルオキシダーゼを用いた、曝露システムの実験から得られたグラフを示す。
【図8】2つの異なるIPLの曝露から得られた灌流液中のHRPの量を示す。
【図9】HRPの、灌流期間の総時間にわたる累積量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
曝露システム及び作業サイクルの説明
ここで図1を参照して、曝露システムの作業サイクルを説明する。図1は、300mlの保持チャンバ、曝露の持続時間の調節を制御するための曝露マニホールド装置、並びに曝露の自動化及び制御のためのコンピュータ化された制御システムと統合されたエーロゾル発生器(10)を含む。エーロゾル発生器は、3つの主構成要素(図示せず)、すなわち、定容積の粉末チャンバ、可変容積の圧力チャンバ、及び高速開放弁から成る。エーロゾル発生器のさらなる詳細及びその支持装置については、参照文献として組み入れられた非特許文献1にも記載されている。新たに発生されたエーロゾルを受け入れるために、粉末チャンバは、保持チャンバに接続される。エーロゾルは、曝露ハウジング(70)内に収容された曝露対象物(20)に、図1においてV1、V2、V3及びV4で示される空気作動式ピンチ弁を備えた特注の曝露マニホールド、及び曝露対象物を通って導かれる曝露ライン(ラットの摘出及び灌流された肺(IPL)の気管カニューレ)によって、送られる。エーロゾルの曝露流を、曝露対象物を通るように駆動する負圧は、精密に制御された真空源(30)を用いることによって得られる。エーロゾル雲は、精密に制御された真空源によって、保持チャンバから引き出され、エーロゾル入口装置(図示せず)と、そのすぐ下流の残留フィルタ(50)(Waltham GF/A、英国)に向けて送られる。残留フィルタ(50)は、バイパスしたエーロゾル、又は肺によって排気されたエーロゾルのいずれも、全て収集する。本質的に水平の残留フィルタ上に堆積した粒子は、重力によって保持される。この曝露システムは、エーロゾル化された乾燥粉末の集塊に対する曝露を、およそ1−2分間にわたって維持することができる。曝露ハウジングは、IPLを灌流するための灌流装置を含み、IPLとエーロゾルとの間の相互作用をさらに研究するために、フラクションコレクタ(40)に接続される。システムは、ラップトップコンピュータ上のLabViewソフトウェアパッケージ(60)を用いて、完全にコンピュータ制御される。このシステムは、制御システムにおいて使用するために、圧力チャンバ内の圧力、曝露ラインへの流入流量、粒子濃度、及び全ての灌流された試料の重量及び持続時間を監視し、記録する。圧力チャンバ内の圧力は、エーロゾルの発生中に、WIKA Microtronic圧力変換器を用いて監視される。圧力の読み取り値を用いて、圧力チャンバ内が選択された残存圧力になったときに主弁がリセットされる。この機能は、発生されるエーロゾルが少ししか残っていない後期の減圧段階の間に、保持チャンバに加えられる駆動気体の容積を低減させる。圧力の記録は、粉末チャンバからの出口流路の詰まりの検出にも役立つ。曝露ラインの入口における流量は、フライシュ型呼吸タコグラフ及びValidyne圧力変換器を用いて監視される。記録は、真空源よってもたらされる一定流量成分と、それに重ね合わされたIPLの呼吸パターンの両方を示す。曝露制御機能部は、曝露の間、呼吸している肺の一回換気量を計算し、記録する。粒子濃度は、実時間で、曝露マニホールド出口のところで、Casella Microdust Pro光分散計器によって測定される。この記録を用いて、出て行くエーロゾル集塊が詳細に研究され、エーロゾル曝露を出て行く集塊の一部に制限することが可能になる。さらに、発生されたエーロゾルの粒径分布は、Marpleカスケードインパクタによって求められ、質量分布が約0.5−12マイクロメートルのサイズ間隔で求められる。カスケードインパクタは、ハウジングのフロー接合部の位置に設置される。保持チャンバから第1のインパクタ・ステージまでの距離は、曝露の際の保持チャンバから肺の主分岐部までの距離にほぼ等しいものとされる。このシステムによるエーロゾル曝露の準備段階は、20−160barに圧縮された約100mlの空気を用いてエーロゾルを発生させることを含む。0.1mgから5mgの量の粉末を、粉末チャンバに手動で装入する。曝露流量を所望の容量に調節し、バイパスラインに通す。全曝露サイクルの事象は、LabView装置によって制御される。圧力チャンバは、先ず切換弁V5をオンにし、その後、直ちにオフにすることによって加圧される。エーロゾル発生器は、エーロゾル発生器の主弁を開放することによって始動される。エーロゾルの発生はすぐに始まり、エーロゾル雲が保持チャンバ内に収集される。主弁は、圧力チャンバ内が残存超過圧力に達したときにリセットすることができる。これにより、発生されるエーロゾルが少ししか残っていない後期の減圧段階の間に、保持チャンバに加えられる駆動気体の容積を低減させる。高圧弁を始動した後の調節可能な遅延時間において、同時に弁V1及びV3を開放し、弁V2及びV4を閉鎖することによって、曝露流が、バイパス分岐部から曝露分岐部の方向に向けられる。曝露の持続時間は、所望の長さに調節することができる。適切なガイダンス値は、保持チャンバの容積を曝露流量で割ったものである。この数を大幅に超過した値となる時点で、エーロゾルの全容積がシステムから流出したことになる。所定の曝露段階が終了したときに、曝露流は、バイパス分岐に再び切り換えられる。弁V1及びV3が閉鎖されるとともに、弁V2及びV4が開放され、曝露サイクルは完了する。曝露サイクルのエーロゾル発生段階の間、圧力チャンバ内の圧力は、連続的に監視され、ソフトウェアの前面パネル上に表示される。圧力の記録を、さらなる分析のためにデータファイルとして保存することができる。
【0039】
このシステムは、多くの直接的な利点をもたらす。大きな凝集体を除去するための予備インパクタは必要とされない。物質はほとんどの場合、純粋な形態で用いることができ、呼吸用エーロゾルの肺への投与量を増やすための賦形剤又は希釈剤を含む必要はない。従って、吸入による高い標的投与量を短時間で達成することができる。
【0040】
予測肺堆積、エーロゾル収率、及び粒径分布の説明
新規の研究材料を用いた吸入曝露の最初の手順は、発生させたエーロゾルの粒径分布を求めることである。Marpleカスケードインパクタを発生器のエーロゾル出口に接続する。曝露用に計画している量と同量の材料を粉末チャンバ内に入れ、インパクタの下流の真空源に向かうバイパスラインに2L/分の一定流量を通す。エーロゾルを発生させ、インパクタを通過させる。発生の後、インパクタのステージ上の堆積を重力的に測定し、そのエーロゾルについてのMMAD及びGSDを計算する。粒径分布が求められると、用いられる肺の種類及び換気パターンについての理論堆積割合は、既刊の多数のモデルのいずれかによって計算することができる。
【0041】
次いで、生きた動物を用いた距離測定を伴う曝露と貴重な研究材料の浪費とを避けるために、吸入フィルタ・セットアップを用いて、特に静電的エーロゾルの肺堆積量を直接予測する。ダストガン・エーロゾルシステムが、曝露の際にセットアップされる。生きた動物又は灌流された摘出肺の代わりに、吸入フィルタを、肺曝露の管路系を本質的に模倣する管システムの端部の、曝露エーロゾルが試験対象物の呼吸器系に入る位置の下流に配置する。吸入フィルタは、エーロゾル曝露の持続時間の間の試験対象物の換気パターンをシミュレートする機械式換気装置に接続される。2つの一方向弁を備えたループを用いることによって、吸入されたエーロゾルのみがフィルタを通るようにする。呼出された排気は、粒子がフィルタから再懸濁することを防ぐために、フィルタをバイパスさせる。吸入フィルタ上の重量の増加は、曝露中に試験対象物が吸入する材料の量に対応する。堆積分の割合を掛けると、より正確な肺堆積投与量の推定量を得ることができる。堆積分の割合は、肺における静電的エーロゾルの堆積の増大に関して調整することができる。同時に、残留フィルタ上の堆積Mresを測定し、これを用いて、Casella計器によって記録されたエーロゾル濃度を補正する。また、各試験曝露について、Minh/Mresの比を計算する。
【0042】
【表1】
【0043】
対象物の曝露について、2つの異なる堆積された投与量の推定値を計算することができる。
I.堆積は、堆積分の割合と一回換気量と補正エーロゾル濃度とを掛け合わせたものを、曝露の全ての呼吸について合計することによって計算される。
Mdep=ΣFdep×TV×Ccorr
II.堆積量は、予備曝露試験の際の吸入/残留フィルタ重量と、曝露の際の残留フィルタ重量と、堆積分率とを掛け合わせることによって計算される。
Mdep= (Minh/Mres)test×Mresexp×Fdep
(なお、下付け文字testは試験を、expは暴露をそれぞれ示す。)
両方の推定量が計算され、比較される。正確な曝露推定量を得ることは、特に、曝露対象物における研究対象物質の総物質収支を、全ての組織及び抽出物内の研究対象物質の定量によって得ることが不可能な場合には、重要である。
【0044】
実施形態の説明
図2Aは、エーロゾル入口装置と全フィルタ装置とが一体化された構造体100を概略的に示すものであり、この構造体は、曝露器官を収容するハウジングの蓋部分150に気密に取り付けられ、管180に接続される。図2Bは、図2AにおけるAAに沿った構造体100の断面図であり、図1に記載されたシステムのエーロゾル発生器から出たエーロゾル流を受け入れるほぼ管状のチャネルを備えたエーロゾル入口装置を示す。全体が130で示されるノズルが、中央に位置する脱着可能な蓋部分155の中に配置されており、このノズルは、管180に接続され、該管180は、カテーテル又は同様の装置によって曝露器官(図示せず)に接続することができる。曝露器官は、例として、ハウジング(図示せず)内に収容された、切り離され、通気され、灌流された摘出肺であり、エーロゾル入口装置110からノズル130を通してエーロゾル流を吸入し、また呼吸も行う。ノズル130を通して消費されなかったエーロゾルは、残留エーロゾル流を受け入れる管状チャネルと下流フィルタチャンバ125とが設けられたフィルタ装置120に入ることになる。フィルタチャンバ125には、残留フィルタ127のための脱着可能なフィルタホルダ126と出口流路128とが設けられ、出口流路128は、フィルタチャンバを通る制御された流れを発生させることができる上流真空源(図示せず)に接続される。フィルタチャンバ125及び入口デバイスは、一般に、エーロゾル粒子の損失を回避する条件を生じさせるように配置される。この目的のために、管状チャネルは、残留フィルタの平面から45度の角度で延びており、残留フィルタの表面は、堆積された粒子を重力によって保持するように、本質的に水平にされる。
【0045】
図3は、特別に構成された吸入フィルタ300の断面を示し、これは、図2Aの中央部に位置する脱着可能な蓋部分155とノズルとの構成を置き換えたものとして設計されている。吸入フィルタは、近位部と遠位部との間で中央に配置された流路350を有し、図2Aに示された入口装置からエーロゾルを受け入れる入口340と近位部との間に、堆積フィルタ(図示せず)に接続するための手段360が設けられる。接合点とフィルタとの間の流路の長さは、実験動物を用いてシステムを作動させる場合の構成における接合点と肺との間の長さを表すようになっている。吸入装置の流路と図2Aの入口装置の管状チャネルとは、流れ条件を最適化し、エーロゾル粒子の損失を最小にするために、45度の角度で配置される。
【0046】
図4Aから図4Cまでは、肺に投与されるエーロゾルの量を正確に把握するための、本発明のシステムを作動させる3つの異なる様式を概略的に示す。図4Aから図4Cまでのシステムは、エーロゾル保持チャンバを備えたダストガン式エーロゾル発生器を有しており、これは、エーロゾルの発生後に開放され、エーロゾル流を曝露ラインに供給する。システムは、呼吸タコメータを曝露流ラインの開始部分に有し、流れライン内の下流の接合点の前にCasella計器が配置されており、その接合点のところから、残留流を残して、曝露流が移送流から取り出され、呼吸シミュレータ(図示せず)に連結された吸入フィルタへと送られる。図4Aは、最大換気流Qventが曝露流ライン内の移送エーロゾル流Qexpよりも少ない、小さい肺に適合したシステムを示す。この場合、呼吸シミュレータは、保持チャンバの容積Vchamberよりも少ない一回換気量(TV)を与え、移送流は真空源によって生成される。吸入フィルタには残留流れライン内のフィルタに比べて相対的に少量のエーロゾル粒子が堆積することになる。図4Bは、Qventが流れライン内の曝露流(Qexp)を上回るが、一回換気量は保持チャンバの容積よりも少ない、中間サイズの肺の研究に適合したシステム構成を示す。正しい流量を確保し、システムからエーロゾルが失われないようにするために、この構成には、曝露流ライン内の呼吸タコメータの上流に、一方向弁及び換気バルーンが配置されている。図4Cは、一回換気量がエーロゾル保持チャンバの容積を超える、大きい肺の研究のために構成されたシステムを示す。この実施形態においては、エーロゾルの大部分が動物によって消費されることが意図されており、そのため、図4Bの構成と比べて、残留流内にフィルタ装置を設けていないが、大量の呼気及び吸気を考慮して、第2の一方向弁を残留流内の下流に配置して、その結果、正しい流れをシステム内に維持することができるようにしている。
【0047】
図5は、エーロゾル・バーストを収容し、エーロゾルを曝露標的(図示せず)に移送するようになった、入口502及び出口流路504を有するエーロゾル保持チャンバ500の概略的な断面図を示す。入口502は、エーロゾル発生器(図1において10で示される)に接続されて、エーロゾル発生器10から出たエーロゾル・バーストを受け入れるようになっている。出口流路504は、曝露エーロゾル流を曝露器官(図示せず)に分配するようになっている。エーロゾル保持チャンバ500は、入口502を下向きにして、垂直に設置されるようになっている。さらに、エーロゾル保持チャンバ500の上部には、エーロゾル保持チャンバ500を固定するためのガイド516が設けられる。出口流路504は、水平面から30度下向きの角度に延びている。エーロゾル保持チャンバ500は、ほぼ円錐形であり、上部は下部よりも大きい断面積を有する。エーロゾル保持チャンバ500は、下部区画506と上部区画508とに分割され、これらは互いに気密ではあるが取り外し可能に接続されており、下部区画506は入口502及び出口流路504を含む。さらに、フィルタ付き又はフィルタなしの多孔スクリーン又はメッシュを含む上部区画508は、粒子を含まない清浄な空気をより濃密なエーロゾルの上に安定層として導入するようになった、ディフィーザ512を含む。ディフューザ512は、上部区画508の上に配置されており、清浄空気入口514及び多孔スクリーン/ディスクを含む。しかしながら、当業者には、他のいかなる適切なディフューザも上記のようにして用いられることが理解されるであろう。
【0048】
図6は、入口502及び出口流路504(両方とも図5に示される)が設けられた、エーロゾル保持チャンバ500の底部の概略的な断面図を示す。入口502は、エーロゾル発生器(図1において10で示される)に接続され、エーロゾル発生器10から出たエーロゾル・バーストを受け入れるようになっている。エーロゾル発生器10には、入口502との間で気密接続を形成するためのパッキングリング602が設けられる。保持チャンバ500から出て曝露対象物に向かうエーロゾルは、2つのピンチ弁及びバイパスライン606によって制御される。曝露系においては、曝露対象物は、出口流路504及び管上の604において作用する開放されたピンチ弁を通じて、エーロゾルに曝露される。次いで、曝露対象物にT字継手606を通じてエーロゾルを含まない空気を供給するバイパスライン608が、図示されていないピンチ弁で閉鎖される。バイパス系においては、曝露対象物は、ピンチ弁が開放されたバイパスライン608を通じてエーロゾルを含まない空気に曝露され、このとき曝露ラインのピンチ弁は604において閉鎖される。この例示的な実施形態においては、ピンチ弁が用いられているが、当業者には、他のいかなる適切な弁も上記のようにして用いられることが理解されるであろう。
【0049】
ホルダ610には、エーロゾル測定計器を保持するようになったキャビティ612が設けられ、この計器が、エーロゾルと新鮮な空気との混合物のエーロゾル濃度を測定する。ホルダ610にはさらに、エーロゾルと新鮮な空気との混合物を呼吸管614を通じて曝露器官616に移送するようになった、出口が設けられる。
【0050】
図7は、微粉化された乾燥ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)を用いた3つの異なる試験を示すものであり、図1に示され、上で説明されたシステムによって、2.21mg、2.65mg及び2.68mgの量のエーロゾル化HRPを用いて、IPLの曝露を行った。図7は、Casella計器で測定された、1秒間当たり100回記録されたエーロゾル粒子濃度を示す曲線(e1からe3)を示す。曲線D1ないしD3は、これらの容積から、IPLの一回換気量(呼吸特性)を考慮した場合に見込まれる吸入薬剤量を示す。異なる曲線は、異なる曝露間で優れた相関を示す。
【0051】
図8は、一方は高レベル、もう一方は低レベルのHRPを用いた、2つの異なるIPLの曝露から得られた灌流液中のHRPの量を示すものである。灌流液の画分は、40秒ごとに収集された。図9は、図8に示されたHRPの、灌流期間の総時間にわたる累積量を示す。これらの結果から、このシステムによれば、エーロゾル化された試験化合物を少量用いた場合であっても、異なる曝露間での変動が少なくなることが明らかである。
【符号の説明】
【0052】
10 エーロゾル発生器; 20 曝露対象物; 30 真空源;
40 フラクションコレクタ; 50 残留フィルタ;
60 ソフトウェアパッケージ; 70 曝露ハウジング; 100 一体化構造体; 110 エーロゾル入口装置; 120 フィルタ装置;
125 下流フィルタチャンバ; 126 フィルタホルダ;
127 残留フィルタ; 128 出口流路; 130 ノズル; 150 蓋部分;
155 脱着可能なふた部分; 180 管; 300 吸入フィルタ;
340 入口; 350 流路; 360 堆積フィルタ接続手段;
500 エーロゾル保持チャンバ; 502 入口; 504 出口流路;
506 下部区画; 508 上部区画; 512 ディフューザ;
514 清浄空気入口。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エーロゾル化された薬効物質の肺における取り込みを研究するため、又はその研究を支援するための、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸入可能にエーロゾル化された吸入用薬剤は、一般に、静脈投与や皮下又は筋肉注射のような、注射その他の種類の薬剤投与システムに対する代替法として考慮できる手法と考えられている。例えば、インスリンは、患者が服薬を順守し易くするために、エーロゾル化された形態での吸入による投与が望ましい。しかしながら、吸入可能なエーロゾルに関する一般的な問題点は、投与される量が注射と比べて不正確であること、及び、多くの場合、投与のために必要な正確な量が投与ごとに厳密に計量されないことである。全身的な薬剤投与、及び、肺モデルを用いたエーロゾルによる薬物ふるい分け(スクリーニング)の両方にとって、安全な治療のため、又は実り多いふるい分けモデルのために適切に用いるには、精度が低レベルであるということは欠点である。
【0003】
臨床の殆どの部分においては、所定用量の薬剤を可能な限り短い曝露時間で、好ましくは一呼吸の吸入操作で、適切に制御されたエーロゾル薬剤の集塊を高濃度で気道に供給することが望ましい。従って、可能な限り妥当なデータを収集するためには、薬剤開発の初期プロセスにおいてもこの曝露ストラテジーに倣うようにすることが同様に望ましい。しかしながら、大部分のエーロゾル発生器技術及び投与システムにおける技術上の限界のために、このことはほとんど達成されていない。利用可能な発生器技術のほとんどは、大量の物質を消費する連続的放出を用いている。本発明の意図は、この限界を克服し、初期薬剤開発においても、呼吸用エーロゾルにおける集塊型の曝露を可能にすることである。
【0004】
米国特許第6,003,512号明細書(特許文献1)は、ダストガン方式のエーロゾル発生器と、粉末をエーロゾル化して供給する方法とを記載する。この装置は、少量の粉末から高度の反復可能な特性で吸入可能なエーロゾルを生成する。この装置は、凝集解離力が高いので、希釈剤及び賦形剤の使用を避けることができ、高度の反復可能性をもって、適切な濃度にされた、均一な粒径の薬剤エーロゾルを、少量の凝集性粉末からでさえも発生させることができる。従って、ダストガン方式のエーロゾル発生器は、肺におけるディーゼル煤の堆積を研究したP.Gerde他、Inhalation Toxicology、2004年、第16巻、p.45−52(非特許文献1)に開示されているように、切り離されて、通気され、灌流されたげっ歯類の肺(IPL)と組み合わせるのに有用なツールであることが実証されている。米国特許第5,887,586号明細書(Dahlbaeck他)(特許文献2)は、エーロゾル化された薬剤から動物が吸入した薬剤量を測定するための方法及びシステムを開示する。このシステムは、吸入された薬剤量をより正確に測定するための手段を備える。しかしながら、このシステムには、エーロゾル発生器と動物との間の距離が幾分長くなり、これがデッドスペースとなるため、システム内において、エーロゾル化薬剤に有意の損失を生じ、比較的大量の薬剤が動物の肺まで到達しないという難点がある。薬剤が装置内に堆積することによる損失は、非常に望ましくないものであり、特に薬剤候補のふるい分けにおける初期ステージでは、経済的な理由から非常に望ましくないことである。米国特許第6,269,810号明細書(特許文献3)は、厳密に治療目的のための、肺投薬システム及びその作動方法を記載する。このシステムは、較正についてはフィルタにのみ依存するものであり、これは、例えば薬剤候補の性能を評価する場合に必要とされる、エーロゾル発生器から曝露標的までの間のエーロゾルの損失に関して、投与量に対する堆積量を正確に推定するには不十分である。
【0005】
薬剤物質候補を用いた吸入曝露の際に、研究対象物質が肺の標的領域内に堆積することは所望のプロセスであるが、このプロセスには、研究対象物質が投与装置内及び気道の非標的領域内に堆積することによる、望ましくない損失が常に付随する。吸入投与が意図されている薬剤の開発プロセスの初期において、物質の損失は、吸入により行う、決定のための初期試験にとって妨害となることが多い、重大な因子である。2つの主要な機構、すなわち空気力学的損失及び静電気的損失が、エーロゾルがダクトを通って流れる際の、粒子の壁への堆積をもたらす。空気力学的損失は、粒子の拡散、沈降、密着及び遮断によるものであり、主として研究対象エーロゾルの空気力学的粒子径質量中央値(MMAD)、及び研究対象ダクトシステムの流体力学的形状によって影響される。空気力学的損失は、理論的モデルによって合理的かつ満足に予測することができる。静電気的損失は、空気力学的損失に重ね合わされ、これは、研究対象粉末及びダクトシステムの壁の物質的性質に強く依存する。静電気的損失は、より不規則であり、予測が難しく、研究対象エーロゾルの支配的な堆積機構となる。粉末エーロゾルのこの予測できない挙動は、エーロゾル発生装置と曝露システムの容器壁、及び気道の非標的領域における物質の損失をもたらすだけでなく、研究対象物における標的曝露を達成するために必要な曝露パラメータを調節する際にも、物質の損失をもたらす。本発明は、これらの両方の問題に対処することを意図するものである。
【0006】
集塊形態の吸入曝露に付随する特有の問題は、エーロゾルの濃度と吸入気体内に存在するエーロゾルの持続時間の両方を制御することである。理想的な状況においては、エーロゾルは、曝露対象物の呼吸パターンによって決定されるオン時間とオフ時間との間、吸入される気体の中に所定濃度で存在する。エーロゾル濃度は、終端部で分散したり、だれたりすることのない方形波で表されるべきである。しかしながら、これは、達成するのが困難であり、エーロゾル集塊の典型的な濃度曲線は不均一であり、徐々に濃度が減少する長い終端部分を含む。濃密なエーロゾルのエーロゾル集塊に影響を与える1つの基本的な機構は、雲状沈降現象である(NA Fuchs著、「The Mechanics of Aerosols」、 Pergamon Press、英国オックスフォード、1964年(非特許文献2))。周囲の空気よりも僅かに高い平均密度を有する濃密なエーロゾルは、分離した雲として移動する傾向にあり、この雲は、それらの周囲の気体マトリクスに対して、個々の粒子よりも相対的に速く移動する(WC Hinds他、Aerosol Science and Technology、第36巻、p.1128−1138、2002年参照(非特許文献3))。雲状沈降は、特にエーロゾル曝露の終端においてエーロゾル集塊が分散するのを増大させる主因子となる。このような分散は、意図されたエーロゾル投与量のうちの大部分が気道の標的領域に到達するのを妨げ、すなわち、換言すると、エーロゾル投与量のうちの大部分を通常は曝露装置内に堆積させるものとなるか、若しくは、所定の時間ウインドウ外で標的領域内に到達させるものとなる。
【0007】
上記のダストガン又はExubera(登録商標)(Pfizer Inc.)のような間欠的なバースト方式のエーロゾル発生器は、エーロゾルの雲煙をある程度停滞した媒体の中に噴出する。バーストの凝集を解離させる運動エネルギーは急速に散逸し、特徴的な雲煙が形成される。その後、雲煙は拡散力、対流力、及び重力の影響を受け、それらの力が雲煙のエーロゾルを分散させ、希釈する。吸入曝露のためには、非常に多くの場合、バースト状の雲煙を、曝露対象物によって一回又は数回の呼吸で吸入されるエーロゾル集塊に変換することが望まれる。エーロゾル集塊は、エーロゾル濃度がゼロから一定レベルまで上昇し、そのレベルが維持される段階と、濃度が平均濃度からゼロまで減少することによって集塊が終了する段階とを呈する。理想的には、集塊の平均濃度は、装填されエーロゾル化された物質の量を集塊の体積で割ったものとなるべきである。
【0008】
従って、所定投与量のエーロゾル化薬剤を、装置内での物質の損失を最小にして、正確かつ予測可能に投与し、組織又は動物に対する距離測定を伴う曝露を行うことなく目標投与量に到達させることが求められている。エーロゾル化可能な薬剤候補を、少量の物質しか入手できない非常に初期の段階で正確に試験することを可能にするシステムもまた求められている。これらの目的に対処するために、エーロゾル発生器を、灌流された摘出肺又は無傷の動物の気道にマニホールド装置を通じて接続することによって、曝露システムを組み立てた。ダストガン式エーロゾル発生器を含む上記の曝露システムは、新規薬剤候補を肺内での局所的作用又は肺投与を通じた全身的な取り込みに関してふるい分けし、評価する場合に、効率的に利用できることが明らかである。特に、ダストガン・システムを装置及び方法の一部とすることができるので、これにより、合成薬剤の量および前処理が大幅に低減され、ふるい分けプロセスが簡素化されると同時に、実験動物を含めた生物学的材料の利用が削減される。以下において説明される本発明は、このような要件を満たすものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,003,512号明細書
【特許文献2】米国特許第5,887,586号明細書
【特許文献3】米国特許第6,269,810号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】P.Gerde他、Inhalation Toxicology、2004年、第16巻、p.45−52
【非特許文献2】NA Fuchs著、「The Mechanics of Aerosols」、 Pergamon Press、英国オックスフォード、1964年
【非特許文献3】WC Hinds他、Aerosol Science and Technology、第36巻、p.1128−1138、2002年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1の目的は、その後の薬剤開発のための候補物質が、肺投与の後に、どのように堆積し、吸収され、代謝されるかを予測することを支援するモデルを提供することである。
本発明のさらなる目的は、組織に保持される物質の割合を測定することができない場合にエーロゾルの堆積された投与量を推定若しくは予測するため、又は組織若しくは実験動物について薬剤動態学的にさらにモデル化するために、等しく有用なシステムを提供することである。
本発明のさらなる目的は、供給されたエーロゾル化薬剤の投与量が曝露対象物の外側の装置内で失われる損失を最小にすること、及び、一連の曝露の後で、装置に堆積した材料の回収を可能にすることである。
本発明の別の重要な目的は、その性能がエーロゾル曝露に向いているかもしれない薬剤候補を少量の物質を用いてふるい分けするとともに、関与する生物学的組織及び実験動物を削減できるような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、一般的に曝露装置と組み合わされたエーロゾル発生器に関する本発明のシステム、及び該システム内でエーロゾル粒子を収集することによって、肺に投与された投与量を求める方法によって達成される。
【0013】
一般的に言えば、本発明は、肺とエーロゾル化薬剤との間の相互作用を研究し、又は予測するのに適したシステムに関し、このシステムは、曝露装置に気密接続されたエーロゾル発生器を含む。このシステムは、間欠的エーロゾル発生器から周期的に発生されるエーロゾルの一部を適切なエーロゾル保持チャンバ内に収集し、次いで、エーロゾル発生器のエーロゾル保持チャンバから流れ接合部に向けて移送エーロゾル流を形成し、曝露器官に分配するために、該流れ接合部から呼吸能力を有する曝露器官に向けて曝露エーロゾルを形成するようになっている。そして、残留エーロゾル流は、流れ接合部から遠ざかる方向に送られる。曝露装置は、送られるエーロゾル流を制御するための流れ制御機能部も含んでおり、これは、この説明においては、所定量の流れを発生させるための手段と、流れの方向を制御するための手段の両方を含む機能部を意味する。曝露装置は、さらに、移送エーロゾル流を監視するために流れ接合部の上流に配置された流量監視装置と、エーロゾル粒子濃度を測定するために流量監視装置の下流に配置された装置とを含む。さらに一般的な意味で、本システムは、エーロゾル化薬剤と、これとは異なる大きさの肺との間の相互作用を研究し又は予測するのに適合させることができる。その場合、エーロゾル保持チャンバの容積は、下記の3つの曝露シナリオのうちの1つに合致するように、曝露器官の推定肺容積に適合される。
【0014】
本システムは、発生器から曝露器官へのエーロゾルの気密移送に適合した多数の流路を含むことを理解されたい。この場合、不必要な延長部、ポケット、その他の粒子トラップによるエーロゾルの損失を最小にするように、流路を選択し、組み立てることを、当業者は理解するであろう。
【0015】
システム及びその種々の部分又は構成要素を説明する場合に、「遠位」及び「近位」という用語が本明細書において用いられる。システムの遠位端とは、エーロゾルが発生する部分であり、近位端とは、エーロゾルと堆積を生じる器官との間の相互作用が研究される部分であることを理解すべきである。従って、遠位及び近位という用語は、上記の2つの機能部分との関係でシステム内の位置を定義するために用いられる。
【0016】
「エーロゾル」という用語は、液滴の霧を指すことが多いが、本明細書で用いられる場合のこの用語は、気流内における固体粒子の懸濁物を指す。従って、「エーロゾル」という用語は、調合物の懸濁粒子を含む空気の容積を指す「エーロゾル集塊」を意味する場合もある。空気容積は、例として、約3mlから約4リットル未満までの間で変化することができ、粒子は、好ましくは約0.1から10ミクロンまでの直径を有するものとすることができる。「エーロゾル」、「粒子」、「エーロゾル粒子」、「エーロゾル化調合物」及び同様の用語は、本明細書においては、互換性があるものとして用いられ、エーロゾル投与のための形成された、薬学的に活性の薬剤と担体とから成る調合物の粒子を指す。
【0017】
堆積器官は、エーロゾル粒子がそこに又はその中に堆積し、エーロゾルと相互作用する器官、すなわち、投与されたエーロゾルの総投与量のうちの一部が相互作用する器官として、広く定義される。本発明の記載において、堆積を生じる器官は、切り離され、通気され、灌流された肺、鼻用マスク若しくは気管内カテーテルを用いてシステムに接続された実験動物の肺、又はエーロゾルと相互作用するようになった吸入フィルタとすることができる。「曝露標的」又は「曝露器官」という用語もまた本発明の記載において用いられており、「堆積器官」と同様の一般的意味、すなわち、本発明のシステム及び方法によるエーロゾル投与のための標的という意味を有するものとみなされるべきである。
【0018】
一実施形態において、本発明は、切り離され、通気され、灌流された肺内、又は実験動物の肺内に堆積するエーロゾル化薬剤の投与量を予測するようにされた、上述のシステムに関する。この実施形態によれば、曝露エーロゾル流は、接合部から曝露器官に気密状態で送られるようにされており、該曝露器官は、曝露器官への制御されたエーロゾル曝露を確立するように構成されたハウジング内に設けられた吸入フィルタを含む。この吸入フィルタは、実験動物の呼吸パターンを実行するように構成された呼吸シミュレータに接続される。システムを、どのようにして種々異なる呼吸容量に容易に適合させることができるかについては、後述する。さらにこの実施形態において、流れ制御機能部は、制御された流量の移送エーロゾル流をエーロゾル保持チャンバと接合点との間に形成するものであって、1つの好ましい態様においては、この流れ制御機能部は、流れ接合部の下流に配置された真空源である。特定の環境においては、この流れ制御機能部は、移送流の方向が正確であることを保証するために、1つ又は複数の流れ方向制御装置を含むことが好ましい。さらにまた、この実施形態によるシステムは、エーロゾル入口装置と、フィルタ装置とを有し、該エーロゾル入口装置は、ハウジングの蓋部分に気密に接続され、送られるエーロゾルを流れ接合部に分配するためのほぼ管状のチャネルが設けられており、フィルタ装置には、残留エーロゾル流を受け入れるように流れ接合部に接続されたほぼ管状のチャネルと、エーロゾル残留物フィルタのための着脱可能なフィルタホルダを備えた下流フィルタチャンバとが設けられている。好ましくは、エーロゾル入口装置の管状チャネルは、その上に残留エーロゾル粒子が堆積し、重力によって保持される残留物フィルタの本質的に水平な面から45度を越えない角度で延びる。この構成は、粒子が、厚くコーティングされたフィルタから重力によって失われることを防ぐ。システムの吸入フィルタは、ハウジングの蓋に対する接続手段に取り付け可能な遠位部と、堆積フィルタを含む取り外し可能なフィルタホルダに接続される近位部とを有する。フィルタ流路が、近位部と遠位部との間に延びており、その延長部は、流れ接合部と曝露対象物との間の流路の延長部に実質的に対応する。フィルタ流路とエーロゾル入口装置の管状チャネルとは、約45度の角度で配置されることが好ましい。流れ制御機能部が、フィルタ装置の下流に配置された真空源であることもまた好ましい。
【0019】
ここで論じられている実施形態の1つの態様において、システムは、送られるエーロゾル流が呼吸シミュレータによって発生される呼気流容量を上回る状態にして作動される。これはまた、小さい肺容量を有する実験動物を用いる場合にも一般的である。
【0020】
ここで論じられている実施形態の別の態様において、システムは、送られるエーロゾル流を超える呼気流容量で作動され、これは中程度の大きさの肺を持つ実験動物の場合に適用される。この場合、流れ制御機能部は、流れ監視装置の上流に配置された一方向弁を含むことが好ましい。さらに、送られるエーロゾル流を、流れ監視装置の上流に配置された換気バルーンによって支援することができる。
【0021】
上記の2つの態様は、小さいか又は中程度の大きさの肺が対象とされる条件に関するものであるが、ここで論じられている実施形態のシステムは、大きい(すなわち、犬のような、より大きな動物の)肺の条件に適合させることもできる。このような場合には、呼吸シミュレータは、エーロゾル保持チャンバの容積より大きい一回換気量で作動し、流れ制御機能部は、少なくとも2つの一方向弁を含む。大きい呼吸容量は、エーロゾルの残留流量を低減させるので、システムは、流れ接合部に接続されるフィルタ装置が存在しない状態でも作動させることができる。それに代えて、呼吸の間にエーロゾルが失われないことを確実にするために、流れ接合部の下流の残留流の中に一方向弁が配置される。別の一方向弁を監視デバイスの上流に配置することが好ましく、前述の機能を有する換気バルーンを、一方向弁と流れ監視装置との間に配置することができる。
【0022】
以上、エーロゾルが堆積器官とどのように相互作用するかを予測するように構成された本発明の実施形態について説明してきたが、このシステムは、上記の特徴と本質的に同じ特徴により、本質的に同じ条件下で、IPL又は実験動物を用いて容易に作動させることができる。しかしながら、上記の吸入フィルタの代わりに、システムは、この場合、流れ接合部から、ハウジング内のIPL、又は実験動物の鼻用マスク若しくは気管内カテーテルに接続される。
【0023】
従って、エーロゾル保持チャンバの容積よりも少ない一回換気量を発生させる呼吸能力を有する肺との相互作用を研究するためには、システムには、曝露エーロゾル流が接合部から気密状態で送られるように構成されており、エーロゾル保持チャンバと接合部との間に制御された流量でエーロゾル流を供給する流れ制御機能部が設けられる。流れ制御機能部は、流れ接合部の下流に配置された真空源であることが好ましい。この場合、本システムは、残留エーロゾル流を受け入れるように流れ接合部に接続されたほぼ管状のチャネルと、エーロゾル堆積フィルタのための脱着可能なフィルタホルダを備えた下流フィルタチャンバとが設けられた、フィルタ装置をさらに含むことができる。
【0024】
堆積を生じる器官がIPLである場合には、これは、曝露エーロゾル流を流れ接合部から気密状態で受け入れるようになったハウジング内に収容される。好ましくは、該IPLは、エーロゾルによる曝露サイクルの間、灌流流体で灌流され、この目的のために、ハウジングは、灌流流体の流れを受け入れるようになっており、かつ、例えば、流体用フラクションコレクタ及び適切な分析装置に接続されることよって、分析及び研究のために灌流流体を繰り返し収集する手段を備える。これらの部分は、一般に曝露システムの一部とみなすことができるが、これらは本発明の一部とはならないので、これらについては、この記載ではさらなる説明は行わないものとする。
【0025】
堆積器官が実験動物の肺である場合、システムは、前述と同様の方法で、肺の大きさ、すなわち動物の呼吸能力に適合される。動物は、鼻用マスク又は同様の装置を通じて曝露流を受け入れるように、接合点に気密接続される。送られるエーロゾル流を超える呼気流容量を有する動物の場合には、流れ制御機能部はさらに、流れ監視装置の上流に配置された流れ方向制限装置を含む。好ましくは、流れ方向制限装置は、一方向弁であり、流れ制御機能部は、移送エーロゾル流を増強する能力を有する換気バルーンをさらに含むことができる。エーロゾル保持チャンバの容積よりも大きい一回換気量を発生させる呼吸容量を有する大きい実験動物の場合には、流れ方向制御装置は、流れ監視装置の上流に配置された第1の一方向弁と、残留流の方向を制御するように流れ接合部の下流に配置された第2の一方向弁とを含み、移送エーロゾル流を増強する能力を有する換気バルーンを、好ましくは、上流の一方向弁と流れ監視装置との間に配置することができる。
【0026】
システムのエーロゾル発生器は、急速に膨張する加圧気体を使用することが好ましく、この加圧気体は、封入された投与粉末と混合され、粉末粒子を凝集解離させて、エーロゾル保持チャンバに供給可能なエーロゾルにする。そのような適切なエーロゾル発生器は、上述の特許文献1に開示されており、このエーロゾル発生器は、粉末をエーロゾル化して供給するために、圧力チャンバと、出口ノズルのところで常圧に対して開口した、少なくとも1つの実質的に直線状の噴出流路と、加圧気体を充填して粉末を混合するための封入粉末チャンバと、圧力チャンバと粉末チャンバとを接続する少なくとも1つの圧力流路とを含む。この実施形態において、実質的に円形の出口ノズルは、実質的に均一な断面の開口部を有し、噴出流路は好ましくはシリンダを含む。
【0027】
本発明の重要な実施形態において、システム設計は、チャンバ及び流路内でのエーロゾルの損失を最小限にするために、雲状沈降現象に適合するものとされている。雲状沈降現象を用いる意図は、(1)間欠的に発生されるエーロゾルのバーストの初期濃度をできるだけ一定に維持するため、(2)発生されたエーロゾル集塊を、該集塊の先端部又は終端部における分散又は逆混合を最小にしながら、一部ずつ又は全体として、曝露対象物に供給するため、及び、(3)エーロゾル装置の容器壁で失われるエーロゾルを最小にし、装置に堆積した材料の回収を可能にするためである。この目的のために、上記システムは、下部と上部との間を垂直に延びる、ほぼ円錐形のエーロゾル保持チャンバを含むことができる。上部が下部よりも大きい断面積を有し、これによって、ほぼ倒立した円錐形状の保持チャンバが構成され、エーロゾル発生器から出るほぼ円錐形状のエーロゾル・バーストは、バースト雲の下方境界がエーロゾル発生器に沿うように形成される。保持チャンバの下部は、エーロゾル発生器から上向きに送られたエーロゾル集塊のバーストを受け入れるようになったエーロゾル入口を有する。さらに、保持チャンバは、その下部に、エーロゾルを曝露標的に向けて下流側に送るための出口流路を含む。出口流路は、下方に向けられていることが好ましい。出口流路は、システム内でのエーロゾルのさらなる移送を支援するために、流路を長さ方向に対称に切断する面が水平面に対して約30度の角度となるように、下向きの方向を有することが適切である。エーロゾル保持チャンバの上部には、導入されたエーロゾルの上に清浄空気層を導入するための、エーロゾル粒子を含まない流入空気用のディフューザを設けることができる。
【0028】
本発明はまた、エーロゾルを、エーロゾル集塊の形で、均等な濃度及び最小限の損失で曝露標的に送るための新規な方法に関する。この方法は、一般に、エーロゾル発生器から上向きに送られたエーロゾルのバーストを、倒立円錐形状を有する概ね垂直方向の保持チャンバの下部に導入し、該保持チャンバ内で重力によってエーロゾルを雲状に沈降させて密度を高め、より軽い清浄空気層をより濃密なエーロゾル雲の上に導入し、エーロゾルの流れを、曝露標的に移送するために、保持チャンバの下向きの出口流路に受け入れるステップを含む。この方法は、エーロゾルと清浄空気との不安定な混合を防止しながら行われることが好ましい。好ましくは、エーロゾルは、重力の影響下で、保持チャンバ内で沈降することが可能であり、その間に、発生器から出たバーストの初期運動エネルギーが散逸するようにする。この行程の間に、エーロゾル雲は、上方に層として導入された、より軽い清浄空気の方に向かって安定な境界に到達するようにすることが好ましい。エーロゾルは、沈降している間に密度が増大し、本発明の目的に適合する移送のために到達する密度としては、0.1%(wt)程度に増大した臨界密度が適切である。保持チャンバの下部に配置された出口流路が、標的へのその後の移送を行うためにエーロゾルを受け入れる。一例において、この移送は、システムにおける下向きの重力によって行われる。この移送方法が実行されるとき、清浄空気は、エーロゾル雲に対して圧力を及ぼすように作用して、保持チャンバからのエーロゾル雲の排出を支援することができる。
【0029】
上記の移送方法に対処するために、エーロゾル・バーストを収容し、エーロゾルを曝露標的に移送するためのエーロゾル保持チャンバは、上部と下部との間に延びる本質的に垂直なチャンバを備え、上部が下部よりも大きい断面積を有するように構成される。これによって、チャンバは、エーロゾル発生器から上向きに送られたエーロゾル集塊のバーストを受け入れるようになったエーロゾル入口と、エーロゾルを曝露標的に移送するために受け入れるエーロゾル出口流路とが下部に設けられた、概ね倒立円錐の構造となる。チャンバは、出口流路を移送のために開放する弁機能を備えるように構成することができ、出口流路は下向きに方向付けられることが好ましい。さらに、チャンバは、粒子を含まない清浄な空気をより濃密なエーロゾルの上に安定な層として導入するために、上部にディフューザを備えるように構成される。
【0030】
エーロゾル移送のための上記の方法及び構成は、理想的な方形波形状からのずれを最小にし、かつ材料の損失を可能な限り少なくした状態で、エーロゾル発生器のバーストを所望の濃度のエーロゾル集塊に変換することを可能にする。この目的のために、保持チャンバ及び曝露流路は、おそらくは雲状沈降現象又はレイリー・テイラー不安定性と、空気力学的及び静電気的機構の両方によって生じる、間欠的なエーロゾル集塊の分散又はにじみを最小にするように設計されている。エーロゾルが濃密であるほど、分散を生じさせる最も重要な機構は雲状沈降現象となる。
【0031】
本発明は、雲状沈降によって生じる分散を軽減することを意図している。エーロゾル発生器から出た濃密なエーロゾル・バーストは、エーロゾル集塊の前縁のところで濃度に明確な段が生じるようにするために、可能な限り迅速に安定な構造になるように重力によって沈降しなければならない。発生器から出た円錐形バーストの場合には、バースト雲の下方の境界に沿って、同様の形状の倒立円錐部を配置することが提唱される。バーストの運動エネルギーが散逸するとすぐに、エーロゾルは急速に沈降して円錐形の保持チャンバ内で安定な集塊となり、保持チャンバから出ると、エーロゾルはすばやく一定の高濃度を得ることになる。集塊の後縁における分散を最小にするために、より濃密なエーロゾル集塊の上に、エーロゾルを含まない、より軽い気体の層を形成することによって、エーロゾル集塊を変位させる。曝露流路の下向きの傾斜を曝露対象物にできるだけ近いところに維持することもまた有利である。その結果、終端部に向かって分散する傾向が少ない、輪郭が明確な集塊として、濃密なエーロゾルが保持チャンバから抽出される。粒子を含まない空気を上に層状に形成するためにディフューザ方式の装置が用いられる場合、曝露ストリーム内における高いエーロゾル濃度の持続時間は、保持チャンバ内における該ストリームの消滅時間に近いものとなり、エーロゾル濃度は、エーロゾル発生器から噴出された粉末の量を保持チャンバの容積で割ったものに近い値となる。レイリー・テイラー不安定性は、エーロゾル濃度が高いほど、かつ、システムを通る流量が低いほど、分散の増大に寄与することが一般に観察されている。要約すると、エーロゾル移送における上記の改善によって、材料の損失を驚くほど低減させるとともに、エーロゾルに曝露される標的が受け取ることになる、発生されたエーロゾルの輪郭を明確なものにすることができる。これらの知見は、例として挙げたような、投薬量の不正確さが問題となっていた多くの用途に対する顕著な改善を表すものであるが、治療におけるエーロゾル薬剤投与に限定されるものではない。
【0032】
他の実施形態において、本発明のシステムは、IPLを用いたテストモデルにおいて肺によって吸収される薬剤の量を求めるために、IPLが灌流流体を用いてシングルパスモードで灌流され、曝露シーケンスの間に所定の持続時間でIPLの下流側で灌流液がサンプリングされるようになった、エーロゾル投与を用いる曝露サイクルが実行される方法に使用することができる。各サンプルを秤量し、灌流液の流量を求めることによって、肺における溶質の吸収量を計算する。肺内での灌流液の静水圧が一定に保持されると仮定すると、測定流量を診断用因子として用いて、本発明の曝露システムにおいて吸入曝露した後の、肺循環における抵抗に対する吸入された種々異なる薬効物質又は薬剤の効果を測定することができる。
【0033】
他の実施形態において、本発明は、好ましくは、エーロゾル曝露系に吸入フィルタを備える前述のシステムを利用することによって、IPLに対する肺投与量(又は「活性物質の予測堆積量」)を予測するための方法に関する。この方法は、投与される粉末形成薬効物質からエーロゾル発生器によってエーロゾルを生成し、このエーロゾルを、曝露装置を用いて、所定の一回換気量の呼吸シミュレータに接続された吸入フィルタに移送することを含む。この方法において、エーロゾル単位の空気力学的粒子径質量中央値(MMAD)の値、残留フィルタ上に堆積したエーロゾル粒子の質量値(Mres)、及び吸入フィルタ内のフィルタ上に堆積したエーロゾルの質量値(Minh)が求められる。空気力学的粒子径質量中央値(MMAD)は、例えば、カスケードインパクタ装置によって測定することができる。これらの値から、予測肺投与薬剤量(Mdep)を計算することができる。この方法は、さらに、エーロゾル入口装置内におけるエーロゾル粒子濃度を、例えば、流動するエーロゾル粒子からの光の反射及び/又は散乱を測定する計器を用いて求めること、及び、流れ接合部からの残留流れを受ける残留フィルタ上に堆積したエーロゾル粒子の質量値(Mres)を求めることを含むことができる。Mresの値から、フィルタ係数補正エーロゾル粒子濃度(Ccorr)を求めることができる。次に、予測肺投与薬剤量(Mdep)も、曝露装置の呼吸パターンから、フィルタ係数で補正されたエーロゾル粒子濃度(Ccorr)、呼吸シミュレータの一回換気量(TV)、及び測定された空気力学的粒子径中央値(MMAD)の場合の堆積エーロゾル分割合を用いることによって、求めることができる。本発明の方法のさらなる特徴は、曝露装置の入口においてエーロゾル流量を監視する機能、及び、一定の、又は実質的に一定のエーロゾル移送流量をもたらすことである。排出された曝露雰囲気が再度呼吸されることを回避するために、曝露流量は、呼吸シミュレータの換気量の少なくとも3倍とすることが好ましい。
【0034】
特に重要な実施形態において、本発明は、薬剤候補を肺との相互作用特性に基づいてふるい分けする方法に関する。第1に、投与される薬剤候補の粉末化された物質を、予測される肺堆積量(Mdep)を求めるように構成された上記のシステムを用いて、組織又は動物を用いずに前述の手順に従ってエーロゾル化する。第2に、薬剤候補がどのように肺組織と相互作用するかを判定するために、今度は、その粉末薬剤の予測された堆積量を用いてシステムを作動させて、肺を同じエーロゾルに曝露することができる。換言すると、肺内に堆積する投与量との比率で投与量を決定することによって、前述のように、試験対象物を用いたその後の試験の際に、最適化された曝露時間及び他の動作条件の下でシステムを作動させることができるようになるので、試験材料が少量しか入手できない場合に、条件を大幅に最適化することができる。ここで、肺は、IPL又は実験動物の肺のどちらであってもよい。送られるエーロゾル流は、本質的に同じに保持することが好ましい。mgスケールの、例えば100mg未満といった少量の薬剤を用いることが好ましく、かつ有利である。この方法の概略に従うことによって、高価な材料を最適化された量で用いて作動するというこのシステムの全般的な利点がさらに高められ、様々な薬剤候補間の迅速で信頼性の高い識別を初期の前臨床段階で効果的に行うことができる。この方法が利用可能である相互作用の研究は、薬剤候補の吸収についての研究を含むだけでなく、肺組織内において、又は肺組織を通じて及ぼされる薬剤活性を含む多くの生理学的効果の研究、例えば、治療作用の開始を含む、代謝、薬理学的及び毒物学的応答の研究、並びに生物学的利用能及び薬剤動態学的局面の研究することを同様に可能にする。本発明のシステム及びこのシステムを用いた方法は、薬剤開発における発見段階及び前臨床段階を短く簡便化し、市場に受け入れられる新規な独自製品を見出そうと企図する際の責務の増大に悩まされる産業において、コストを引き下げるという、顕著な利点がある。上記のシステム及び方法は、診断用途においても同様に有用であり、上記の方法は、薬剤に関しての、肺での堆積の判定、及び気道の感受性の判定に適用することができる。診断用途についても、低投与量及び試験精度に関して同じ利点が明らかである。
【0035】
本発明の別の重要な態様は、保持チャンバ及び管路におけるエーロゾルの損失を、エーロゾルが重力勾配によって曝露対象物に向かって流れ下るようにさせるだけで最小にする方法にある。重力勾配による流れは、エーロゾル集塊の不必要な逆混合又は分散を引き起こすレイリー・テイラー不安定性を防止する。物質の損失を最小にする別の方法は、保持チャンバ容器壁からの粉末の回収を可能にすることである。壁に堆積した粉末は、粉末チャンバの蓋の上にゴムのシーリングを備え、カラムの上部にゴムで覆われたシールを備えた粉末チャンバを取り付けることによって、保持チャンバの壁から回収することができる。同じ材料による一連の曝露シリーズの最後に、急勾配に傾斜した保持チャンバの壁を、適切な装置によって振動させて、粉末が粉末チャンバの蓋の上に置かれた小さい金属箔のパンの中に重力で滑り落ちるようにさせる。金属パンは、曝露の後で簡単に取り出すことができ、粉末が回収される。
【0036】
以下の詳細な説明は、本発明のシステム及びその動作の多くの例を示すが、これは添付の特許請求の範囲によって規定される権利保護の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明によるシステムの概要を示す。
【図2a】フィルタ装置、エーロゾル入口装置、及びエーロゾル接続手段を備えたハウジングの蓋の側面図を示す。
【図2b】図2Aの線AAに沿った断面図を示す。
【図3】吸入フィルタの断面図を示す。
【図4a】3つの主要曝露構造の概略図の1つを示す。
【図4b】3つの主要曝露構造の概略図の1つを示す。
【図4c】3つの主要曝露構造の概略図の1つを示す。
【図5】本発明による保持チャンバの断面図を示す。
【図6】出口流路を備えた保持チャンバを示す。
【図7】ホースラディッシュペルオキシダーゼを用いた、曝露システムの実験から得られたグラフを示す。
【図8】2つの異なるIPLの曝露から得られた灌流液中のHRPの量を示す。
【図9】HRPの、灌流期間の総時間にわたる累積量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
曝露システム及び作業サイクルの説明
ここで図1を参照して、曝露システムの作業サイクルを説明する。図1は、300mlの保持チャンバ、曝露の持続時間の調節を制御するための曝露マニホールド装置、並びに曝露の自動化及び制御のためのコンピュータ化された制御システムと統合されたエーロゾル発生器(10)を含む。エーロゾル発生器は、3つの主構成要素(図示せず)、すなわち、定容積の粉末チャンバ、可変容積の圧力チャンバ、及び高速開放弁から成る。エーロゾル発生器のさらなる詳細及びその支持装置については、参照文献として組み入れられた非特許文献1にも記載されている。新たに発生されたエーロゾルを受け入れるために、粉末チャンバは、保持チャンバに接続される。エーロゾルは、曝露ハウジング(70)内に収容された曝露対象物(20)に、図1においてV1、V2、V3及びV4で示される空気作動式ピンチ弁を備えた特注の曝露マニホールド、及び曝露対象物を通って導かれる曝露ライン(ラットの摘出及び灌流された肺(IPL)の気管カニューレ)によって、送られる。エーロゾルの曝露流を、曝露対象物を通るように駆動する負圧は、精密に制御された真空源(30)を用いることによって得られる。エーロゾル雲は、精密に制御された真空源によって、保持チャンバから引き出され、エーロゾル入口装置(図示せず)と、そのすぐ下流の残留フィルタ(50)(Waltham GF/A、英国)に向けて送られる。残留フィルタ(50)は、バイパスしたエーロゾル、又は肺によって排気されたエーロゾルのいずれも、全て収集する。本質的に水平の残留フィルタ上に堆積した粒子は、重力によって保持される。この曝露システムは、エーロゾル化された乾燥粉末の集塊に対する曝露を、およそ1−2分間にわたって維持することができる。曝露ハウジングは、IPLを灌流するための灌流装置を含み、IPLとエーロゾルとの間の相互作用をさらに研究するために、フラクションコレクタ(40)に接続される。システムは、ラップトップコンピュータ上のLabViewソフトウェアパッケージ(60)を用いて、完全にコンピュータ制御される。このシステムは、制御システムにおいて使用するために、圧力チャンバ内の圧力、曝露ラインへの流入流量、粒子濃度、及び全ての灌流された試料の重量及び持続時間を監視し、記録する。圧力チャンバ内の圧力は、エーロゾルの発生中に、WIKA Microtronic圧力変換器を用いて監視される。圧力の読み取り値を用いて、圧力チャンバ内が選択された残存圧力になったときに主弁がリセットされる。この機能は、発生されるエーロゾルが少ししか残っていない後期の減圧段階の間に、保持チャンバに加えられる駆動気体の容積を低減させる。圧力の記録は、粉末チャンバからの出口流路の詰まりの検出にも役立つ。曝露ラインの入口における流量は、フライシュ型呼吸タコグラフ及びValidyne圧力変換器を用いて監視される。記録は、真空源よってもたらされる一定流量成分と、それに重ね合わされたIPLの呼吸パターンの両方を示す。曝露制御機能部は、曝露の間、呼吸している肺の一回換気量を計算し、記録する。粒子濃度は、実時間で、曝露マニホールド出口のところで、Casella Microdust Pro光分散計器によって測定される。この記録を用いて、出て行くエーロゾル集塊が詳細に研究され、エーロゾル曝露を出て行く集塊の一部に制限することが可能になる。さらに、発生されたエーロゾルの粒径分布は、Marpleカスケードインパクタによって求められ、質量分布が約0.5−12マイクロメートルのサイズ間隔で求められる。カスケードインパクタは、ハウジングのフロー接合部の位置に設置される。保持チャンバから第1のインパクタ・ステージまでの距離は、曝露の際の保持チャンバから肺の主分岐部までの距離にほぼ等しいものとされる。このシステムによるエーロゾル曝露の準備段階は、20−160barに圧縮された約100mlの空気を用いてエーロゾルを発生させることを含む。0.1mgから5mgの量の粉末を、粉末チャンバに手動で装入する。曝露流量を所望の容量に調節し、バイパスラインに通す。全曝露サイクルの事象は、LabView装置によって制御される。圧力チャンバは、先ず切換弁V5をオンにし、その後、直ちにオフにすることによって加圧される。エーロゾル発生器は、エーロゾル発生器の主弁を開放することによって始動される。エーロゾルの発生はすぐに始まり、エーロゾル雲が保持チャンバ内に収集される。主弁は、圧力チャンバ内が残存超過圧力に達したときにリセットすることができる。これにより、発生されるエーロゾルが少ししか残っていない後期の減圧段階の間に、保持チャンバに加えられる駆動気体の容積を低減させる。高圧弁を始動した後の調節可能な遅延時間において、同時に弁V1及びV3を開放し、弁V2及びV4を閉鎖することによって、曝露流が、バイパス分岐部から曝露分岐部の方向に向けられる。曝露の持続時間は、所望の長さに調節することができる。適切なガイダンス値は、保持チャンバの容積を曝露流量で割ったものである。この数を大幅に超過した値となる時点で、エーロゾルの全容積がシステムから流出したことになる。所定の曝露段階が終了したときに、曝露流は、バイパス分岐に再び切り換えられる。弁V1及びV3が閉鎖されるとともに、弁V2及びV4が開放され、曝露サイクルは完了する。曝露サイクルのエーロゾル発生段階の間、圧力チャンバ内の圧力は、連続的に監視され、ソフトウェアの前面パネル上に表示される。圧力の記録を、さらなる分析のためにデータファイルとして保存することができる。
【0039】
このシステムは、多くの直接的な利点をもたらす。大きな凝集体を除去するための予備インパクタは必要とされない。物質はほとんどの場合、純粋な形態で用いることができ、呼吸用エーロゾルの肺への投与量を増やすための賦形剤又は希釈剤を含む必要はない。従って、吸入による高い標的投与量を短時間で達成することができる。
【0040】
予測肺堆積、エーロゾル収率、及び粒径分布の説明
新規の研究材料を用いた吸入曝露の最初の手順は、発生させたエーロゾルの粒径分布を求めることである。Marpleカスケードインパクタを発生器のエーロゾル出口に接続する。曝露用に計画している量と同量の材料を粉末チャンバ内に入れ、インパクタの下流の真空源に向かうバイパスラインに2L/分の一定流量を通す。エーロゾルを発生させ、インパクタを通過させる。発生の後、インパクタのステージ上の堆積を重力的に測定し、そのエーロゾルについてのMMAD及びGSDを計算する。粒径分布が求められると、用いられる肺の種類及び換気パターンについての理論堆積割合は、既刊の多数のモデルのいずれかによって計算することができる。
【0041】
次いで、生きた動物を用いた距離測定を伴う曝露と貴重な研究材料の浪費とを避けるために、吸入フィルタ・セットアップを用いて、特に静電的エーロゾルの肺堆積量を直接予測する。ダストガン・エーロゾルシステムが、曝露の際にセットアップされる。生きた動物又は灌流された摘出肺の代わりに、吸入フィルタを、肺曝露の管路系を本質的に模倣する管システムの端部の、曝露エーロゾルが試験対象物の呼吸器系に入る位置の下流に配置する。吸入フィルタは、エーロゾル曝露の持続時間の間の試験対象物の換気パターンをシミュレートする機械式換気装置に接続される。2つの一方向弁を備えたループを用いることによって、吸入されたエーロゾルのみがフィルタを通るようにする。呼出された排気は、粒子がフィルタから再懸濁することを防ぐために、フィルタをバイパスさせる。吸入フィルタ上の重量の増加は、曝露中に試験対象物が吸入する材料の量に対応する。堆積分の割合を掛けると、より正確な肺堆積投与量の推定量を得ることができる。堆積分の割合は、肺における静電的エーロゾルの堆積の増大に関して調整することができる。同時に、残留フィルタ上の堆積Mresを測定し、これを用いて、Casella計器によって記録されたエーロゾル濃度を補正する。また、各試験曝露について、Minh/Mresの比を計算する。
【0042】
【表1】
【0043】
対象物の曝露について、2つの異なる堆積された投与量の推定値を計算することができる。
I.堆積は、堆積分の割合と一回換気量と補正エーロゾル濃度とを掛け合わせたものを、曝露の全ての呼吸について合計することによって計算される。
Mdep=ΣFdep×TV×Ccorr
II.堆積量は、予備曝露試験の際の吸入/残留フィルタ重量と、曝露の際の残留フィルタ重量と、堆積分率とを掛け合わせることによって計算される。
Mdep= (Minh/Mres)test×Mresexp×Fdep
(なお、下付け文字testは試験を、expは暴露をそれぞれ示す。)
両方の推定量が計算され、比較される。正確な曝露推定量を得ることは、特に、曝露対象物における研究対象物質の総物質収支を、全ての組織及び抽出物内の研究対象物質の定量によって得ることが不可能な場合には、重要である。
【0044】
実施形態の説明
図2Aは、エーロゾル入口装置と全フィルタ装置とが一体化された構造体100を概略的に示すものであり、この構造体は、曝露器官を収容するハウジングの蓋部分150に気密に取り付けられ、管180に接続される。図2Bは、図2AにおけるAAに沿った構造体100の断面図であり、図1に記載されたシステムのエーロゾル発生器から出たエーロゾル流を受け入れるほぼ管状のチャネルを備えたエーロゾル入口装置を示す。全体が130で示されるノズルが、中央に位置する脱着可能な蓋部分155の中に配置されており、このノズルは、管180に接続され、該管180は、カテーテル又は同様の装置によって曝露器官(図示せず)に接続することができる。曝露器官は、例として、ハウジング(図示せず)内に収容された、切り離され、通気され、灌流された摘出肺であり、エーロゾル入口装置110からノズル130を通してエーロゾル流を吸入し、また呼吸も行う。ノズル130を通して消費されなかったエーロゾルは、残留エーロゾル流を受け入れる管状チャネルと下流フィルタチャンバ125とが設けられたフィルタ装置120に入ることになる。フィルタチャンバ125には、残留フィルタ127のための脱着可能なフィルタホルダ126と出口流路128とが設けられ、出口流路128は、フィルタチャンバを通る制御された流れを発生させることができる上流真空源(図示せず)に接続される。フィルタチャンバ125及び入口デバイスは、一般に、エーロゾル粒子の損失を回避する条件を生じさせるように配置される。この目的のために、管状チャネルは、残留フィルタの平面から45度の角度で延びており、残留フィルタの表面は、堆積された粒子を重力によって保持するように、本質的に水平にされる。
【0045】
図3は、特別に構成された吸入フィルタ300の断面を示し、これは、図2Aの中央部に位置する脱着可能な蓋部分155とノズルとの構成を置き換えたものとして設計されている。吸入フィルタは、近位部と遠位部との間で中央に配置された流路350を有し、図2Aに示された入口装置からエーロゾルを受け入れる入口340と近位部との間に、堆積フィルタ(図示せず)に接続するための手段360が設けられる。接合点とフィルタとの間の流路の長さは、実験動物を用いてシステムを作動させる場合の構成における接合点と肺との間の長さを表すようになっている。吸入装置の流路と図2Aの入口装置の管状チャネルとは、流れ条件を最適化し、エーロゾル粒子の損失を最小にするために、45度の角度で配置される。
【0046】
図4Aから図4Cまでは、肺に投与されるエーロゾルの量を正確に把握するための、本発明のシステムを作動させる3つの異なる様式を概略的に示す。図4Aから図4Cまでのシステムは、エーロゾル保持チャンバを備えたダストガン式エーロゾル発生器を有しており、これは、エーロゾルの発生後に開放され、エーロゾル流を曝露ラインに供給する。システムは、呼吸タコメータを曝露流ラインの開始部分に有し、流れライン内の下流の接合点の前にCasella計器が配置されており、その接合点のところから、残留流を残して、曝露流が移送流から取り出され、呼吸シミュレータ(図示せず)に連結された吸入フィルタへと送られる。図4Aは、最大換気流Qventが曝露流ライン内の移送エーロゾル流Qexpよりも少ない、小さい肺に適合したシステムを示す。この場合、呼吸シミュレータは、保持チャンバの容積Vchamberよりも少ない一回換気量(TV)を与え、移送流は真空源によって生成される。吸入フィルタには残留流れライン内のフィルタに比べて相対的に少量のエーロゾル粒子が堆積することになる。図4Bは、Qventが流れライン内の曝露流(Qexp)を上回るが、一回換気量は保持チャンバの容積よりも少ない、中間サイズの肺の研究に適合したシステム構成を示す。正しい流量を確保し、システムからエーロゾルが失われないようにするために、この構成には、曝露流ライン内の呼吸タコメータの上流に、一方向弁及び換気バルーンが配置されている。図4Cは、一回換気量がエーロゾル保持チャンバの容積を超える、大きい肺の研究のために構成されたシステムを示す。この実施形態においては、エーロゾルの大部分が動物によって消費されることが意図されており、そのため、図4Bの構成と比べて、残留流内にフィルタ装置を設けていないが、大量の呼気及び吸気を考慮して、第2の一方向弁を残留流内の下流に配置して、その結果、正しい流れをシステム内に維持することができるようにしている。
【0047】
図5は、エーロゾル・バーストを収容し、エーロゾルを曝露標的(図示せず)に移送するようになった、入口502及び出口流路504を有するエーロゾル保持チャンバ500の概略的な断面図を示す。入口502は、エーロゾル発生器(図1において10で示される)に接続されて、エーロゾル発生器10から出たエーロゾル・バーストを受け入れるようになっている。出口流路504は、曝露エーロゾル流を曝露器官(図示せず)に分配するようになっている。エーロゾル保持チャンバ500は、入口502を下向きにして、垂直に設置されるようになっている。さらに、エーロゾル保持チャンバ500の上部には、エーロゾル保持チャンバ500を固定するためのガイド516が設けられる。出口流路504は、水平面から30度下向きの角度に延びている。エーロゾル保持チャンバ500は、ほぼ円錐形であり、上部は下部よりも大きい断面積を有する。エーロゾル保持チャンバ500は、下部区画506と上部区画508とに分割され、これらは互いに気密ではあるが取り外し可能に接続されており、下部区画506は入口502及び出口流路504を含む。さらに、フィルタ付き又はフィルタなしの多孔スクリーン又はメッシュを含む上部区画508は、粒子を含まない清浄な空気をより濃密なエーロゾルの上に安定層として導入するようになった、ディフィーザ512を含む。ディフューザ512は、上部区画508の上に配置されており、清浄空気入口514及び多孔スクリーン/ディスクを含む。しかしながら、当業者には、他のいかなる適切なディフューザも上記のようにして用いられることが理解されるであろう。
【0048】
図6は、入口502及び出口流路504(両方とも図5に示される)が設けられた、エーロゾル保持チャンバ500の底部の概略的な断面図を示す。入口502は、エーロゾル発生器(図1において10で示される)に接続され、エーロゾル発生器10から出たエーロゾル・バーストを受け入れるようになっている。エーロゾル発生器10には、入口502との間で気密接続を形成するためのパッキングリング602が設けられる。保持チャンバ500から出て曝露対象物に向かうエーロゾルは、2つのピンチ弁及びバイパスライン606によって制御される。曝露系においては、曝露対象物は、出口流路504及び管上の604において作用する開放されたピンチ弁を通じて、エーロゾルに曝露される。次いで、曝露対象物にT字継手606を通じてエーロゾルを含まない空気を供給するバイパスライン608が、図示されていないピンチ弁で閉鎖される。バイパス系においては、曝露対象物は、ピンチ弁が開放されたバイパスライン608を通じてエーロゾルを含まない空気に曝露され、このとき曝露ラインのピンチ弁は604において閉鎖される。この例示的な実施形態においては、ピンチ弁が用いられているが、当業者には、他のいかなる適切な弁も上記のようにして用いられることが理解されるであろう。
【0049】
ホルダ610には、エーロゾル測定計器を保持するようになったキャビティ612が設けられ、この計器が、エーロゾルと新鮮な空気との混合物のエーロゾル濃度を測定する。ホルダ610にはさらに、エーロゾルと新鮮な空気との混合物を呼吸管614を通じて曝露器官616に移送するようになった、出口が設けられる。
【0050】
図7は、微粉化された乾燥ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)を用いた3つの異なる試験を示すものであり、図1に示され、上で説明されたシステムによって、2.21mg、2.65mg及び2.68mgの量のエーロゾル化HRPを用いて、IPLの曝露を行った。図7は、Casella計器で測定された、1秒間当たり100回記録されたエーロゾル粒子濃度を示す曲線(e1からe3)を示す。曲線D1ないしD3は、これらの容積から、IPLの一回換気量(呼吸特性)を考慮した場合に見込まれる吸入薬剤量を示す。異なる曲線は、異なる曝露間で優れた相関を示す。
【0051】
図8は、一方は高レベル、もう一方は低レベルのHRPを用いた、2つの異なるIPLの曝露から得られた灌流液中のHRPの量を示すものである。灌流液の画分は、40秒ごとに収集された。図9は、図8に示されたHRPの、灌流期間の総時間にわたる累積量を示す。これらの結果から、このシステムによれば、エーロゾル化された試験化合物を少量用いた場合であっても、異なる曝露間での変動が少なくなることが明らかである。
【符号の説明】
【0052】
10 エーロゾル発生器; 20 曝露対象物; 30 真空源;
40 フラクションコレクタ; 50 残留フィルタ;
60 ソフトウェアパッケージ; 70 曝露ハウジング; 100 一体化構造体; 110 エーロゾル入口装置; 120 フィルタ装置;
125 下流フィルタチャンバ; 126 フィルタホルダ;
127 残留フィルタ; 128 出口流路; 130 ノズル; 150 蓋部分;
155 脱着可能なふた部分; 180 管; 300 吸入フィルタ;
340 入口; 350 流路; 360 堆積フィルタ接続手段;
500 エーロゾル保持チャンバ; 502 入口; 504 出口流路;
506 下部区画; 508 上部区画; 512 ディフューザ;
514 清浄空気入口。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺とエーロゾル化薬剤との間の相互作用の研究又は予測に適しており、曝露装置に気密接続されたエーロゾル発生器を備えるシステムであって、前記曝露装置は、
前記エーロゾル発生器のエーロゾル保持チャンバから流れ接合部へと向かう移送エーロゾル流と、
曝露器官への分配のために前記流れ接合部から呼吸能力を有する曝露器官へと向かう曝露エーロゾル流と
を形成し、残留エーロゾル流が前記流れ接合部から遠ざかる方向に移送されるようになっており、
前記曝露装置は、
前記流れ接合部の上流に配置された、前記移送エーロゾル流を監視するための流量監視装置と、
前記流量監視装置の下流に配置された、エーロゾル粒子濃度を測定するための装置と、
任意に、前記移送エーロゾル流を制御するための流れ制御機能部と
をさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記エーロゾル保持チャンバの容積が、前記曝露器官の推定肺容積に適合されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
切り離され、通気され、灌流された肺内に、又は実験動物の肺内に堆積するエーロゾル化薬剤の投与量を予測するようにされたシステムであって、前記曝露エーロゾル流が、前記接合部からハウジング内に設けられた前記曝露器官へ向けて気密状態で送られ、前記ハウジングが、前記エーロゾルへの該曝露器官の制御された曝露を確立するようになっており、該曝露器官が、呼吸シミュレータに接続された吸入フィルタを含むことを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記流れ制御機能部が、前記エーロゾル保持チャンバと前記接合部との間に、制御された量の前記移送エーロゾル流を供給することを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記流れ制御機能部が、前記流れ接合部の下流に配置された真空源を含むことを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記流れ制御機能部が、1つ又は複数の流れ方向制御装置を含むことを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
ハウジングの蓋部分に気密に接続され、前記移送エーロゾルを前記流れ接合部に分配するためのほぼ管状のチャネルが設けられた、エーロゾル入口装置と、
残留エーロゾル流を受け入れるように前記流れ接合部に接続されたほぼ管状のチャネルと、エーロゾル残留フィルタのための脱着可能なフィルタホルダを備えた下流フィルタチャンバとが設けられた、フィルタ装置と
を含むことを特徴とする、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記エーロゾル入口装置の前記管状チャネルは、残留エーロゾル粒子が堆積し、重力によって保持されるようになった前記残留フィルタの本質的に水平な面から45度を超えない角度で延びることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記吸入フィルタが、前記ハウジングの蓋の接続手段に取り付け可能な遠位部と、堆積フィルタを含む取り外し可能なフィルタホルダに接続される近位部とを有することを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項10】
前記吸入フィルタが、前記近位部と前記遠位部との間に延びるフィルタ流路を含み、前記フィルタ流路が、前記流れ接合部と前記曝露対象物との間の流路の延長部に実質的に対応する延長部を有することを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記流路と前記エーロゾル入口装置の前記管状チャネルとが、約45度の角度で配置されることを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記流れ制御機能部が、前記フィルタ装置の下流に配置された真空源であることを特徴とする、請求項6から請求項10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記移送エーロゾル流が、前記呼吸シミュレータによって発生される呼気流容量を上回ることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記呼気流の量が、前記移送エーロゾル流を超えることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記流れ制御機能部が、前記流れ監視装置の上流に配置された一方向弁をさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記呼吸シミュレータが、前記エーロゾル保持チャンバの容積を超える一回換気量で作動し、前記流れ制御機能部が、少なくとも2つの一方向弁を含むことを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項17】
前記一方向弁の1つが前記流れ監視装置の上流に配置され、前記一方向弁の1つが前記流れ接合部の下流に配置されることを特徴とする、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記エーロゾル保持チャンバの容積よりも少ない一回換気量を発生させる呼吸能力を有する肺との間の相互作用を研究するようにされたシステムであって、前記曝露エーロゾル流が、前記接合部から気密状態で送られ、前記流れ制御機能部が、前記エーロゾル保持チャンバと前記接合部との間に、制御された流量の移送エーロゾル流を供給することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項19】
前記流れ制御機能部が、前記流れ接合部の下流に配置された真空源を含むことを特徴とする、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
残留エーロゾル流を受け入れるように前記流れ接合部に接続されたほぼ管状のチャネルと、エーロゾル粒子堆積フィルタのための脱着可能なフィルタホルダを備えた下流フィルタチャンバとが設けられたフィルタ装置を備えることを特徴とする、請求項18又は請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記堆積器官が、前記曝露エーロゾル流を気密状態で受け入れるようになったハウジング内に収容された、切り離され、通気され、灌流された肺であることを特徴とする、請求項18から請求項20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記堆積器官が、前記曝露エーロゾル流に気密接続された実験動物の肺であり、前記実験動物が、前記移送エーロゾル流を超える呼気流容量を有し、前記流れ制御機能部が、前記流れ監視装置の上流に配置された流れ方向制限装置をさらに含むことを特徴とする、請求項18から請求項20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
前記流れ方向制限装置が、一方向弁であることを特徴とする、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記流れ制御機能部が、前記移送エーロゾル流を増強する能力を有する換気バルーンをさらに含むことを特徴とする、請求項22又は請求項23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記エーロゾル保持チャンバの容積よりも大きい一回換気量を発生させる呼吸能力を有する実験動物の肺との間の相互作用を研究するようにされたシステムであって、
前記曝露エーロゾル流が、前記接合部から前記実験動物に向かって気密状態で送られ、
前記流れ制御機能部が、1つ又は複数の流れ方向制御装置を含む
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項26】
前記流れ方向制御装置が、前記流れ監視装置の上流に配置された第1の一方向弁と、前記残留流の方向を制御するように前記流れ接合部の下流に配置された第2の一方向弁とを含むことを特徴とする、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記流れ制御機能部が、前記移送エーロゾル流を増強する能力を有する換気バルーンを含むことを特徴とする、請求項25又は請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記エーロゾル発生器が、投与される封入された粉末と混合され、前記粉末粒子を凝集解離させて、前記エーロゾル保持チャンバに供給可能なエーロゾルにするために、急速に膨張する加圧気体を使用することを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項29】
前記エーロゾル発生器が、粉末をエーロゾル化して供給するために、圧力チャンバと、出口ノズルのところで常圧に対して開口した少なくとも1つの実質的に直線状の噴出流路と、加圧気体を充填して粉末を混合するための封入粉末チャンバと、前記圧力チャンバと前記粉末チャンバとを接続する少なくとも1つの圧力流路とを備えることを特徴とする、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記噴出流路が実質的に直線であり、前記出口ノズルのところで実質的に均一な断面の開口部を有し、前記噴出流路は好ましくはシリンダを含むことを特徴とする、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
下部と、前記下部よりも大きい断面積を有する上部との間で垂直に延びる、ほぼ円錐形のエーロゾル保持チャンバを備え、前記下部が、前記エーロゾル発生器から上向きに送られたエーロゾル集塊のバーストを受け入れるエーロゾル入口を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項32】
前記エーロゾル保持チャンバの前記下部に、前記エーロゾルを前記曝露標的に向けて下流に移送するための出口流路を備えることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記出口流路が、下向きに方向付けられることを特徴とする、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記エーロゾル保持チャンバの上部に、導入されたエーロゾルの上に清浄空気層を導入するための、エーロゾル粒子を含まない入口空気用のディフューザが設けられたことを特徴とする、請求項31から請求項33のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項35】
エーロゾル集塊をエーロゾル発生器から曝露標的に送る送り方法であって、
(a)前記エーロゾル発生器から上向きに送られたエーロゾルのバーストを、バーストされたエーロゾルの容積を収容するようになった形状を有するほぼ垂直方向の保持チャンバの下部に導入し、
(b)前記保持チャンバ内で、前記エーロゾルを重力によって沈降させて雲として収集し、
(c)より軽い清浄空気層をより濃密な前記エーロゾル雲の上に導入し、
(d)エーロゾルのストリームを、曝露標的に送るために、前記保持チャンバの下向きの出口流路内に受け入れる
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
前記保持チャンバが、倒立円錐形状を有することを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
曝露作動の間の前記エーロゾルと前記清浄空気との不安定な混合を防止するステップを含むことを特徴とする、請求項35又は請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記出口流路が、前記保持チャンバの下部に配置されることを特徴とする、請求項35に記載の送り方法。
【請求項39】
前記保持チャンバから前記曝露標的に前記エーロゾルを送る動作が、重力によって行われることを特徴とする、請求項35に記載の送り方法。
【請求項40】
より濃密なエーロゾルを前記保持チャンバ内で雲として沈降させて、上方のより軽い清浄空気との間に安定な境界が形成されるようにするステップを含むことを特徴とする、請求項35から請求項39のいずれか1項に記載の送り方法。
【請求項41】
前記清浄空気が前記エーロゾル雲に対して圧力を及ぼすことによって、該エーロゾル雲の前記保持チャンバからの排出を支援することを特徴とする、請求項35から請求項40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
請求項1から請求項34のいずれか1項に記載の曝露システムにおける、請求項35に記載の送り方法。
【請求項43】
エーロゾル・バーストを収容し、エーロゾルを曝露標的に移送するためのエーロゾル保持チャンバであって、前記エーロゾル保持チャンバの上部と該エーロゾル保持チャンバの下部との間に本質的に垂直に延びており、前記上部が前記下部よりも大きい断面積を有しることによって該チャンバがほぼ倒立円錐の構造に構成され、該下部が、
(i)エーロゾル発生器から上向きに送られたエーロゾル集塊のバーストを受け入れるようになったエーロゾル入口と、
(ii)前記エーロゾルを前記曝露標的に送るために受け入れるエーロゾル出口流路と
を有することを特徴とする、エーロゾル保持チャンバ。
【請求項44】
前記出口流路を移送のために開放する弁機能を含むことを特徴とする、請求項43に記載のエーロゾル保持チャンバ。
【請求項45】
前記出口流路が、下向きに方向付けられることを特徴とする、請求項43又は請求項44に記載のエーロゾル保持チャンバ。
【請求項46】
粒子を含まない清浄な空気を、より濃密なエーロゾルの上に安定な層として導入するために、上部に配置されたディフューザを有することを特徴とする、請求項43から請求項45のいずれか1項に記載のエーロゾル保持チャンバ。
【請求項47】
前記エーロゾル保持チャンバが、互いに気密ではあるが取り外し可能に接続された下部区画と上部区画とを含み、下部区画に前記エーロゾル入口と前記エーロゾル出口流路とが設けられることを特徴とする、請求項41から請求項46のいずれか1項に記載のエーロゾル保持チャンバ。
【請求項48】
IPLを用いたテストモデルにおいて、肺によって吸収される薬剤の量を求めるための方法であって、
前記薬剤のエーロゾル化された調合物を準備し、
灌流流体を用いて前記IPLをシングルパスモードで灌流しながら、IPL曝露に適合された請求項1から請求項34のいずれか1項に記載のシステムを使用して、該IPLをエーロゾル化された薬剤に曝露し、
曝露シーケンスの間に所定の持続時間で前記IPLの下流において前記灌流流体をサンプリングして、各サンプル内の前記薬剤の量を分析し、
前記灌流液の流量を求めて、肺からの溶質の吸収を計算する
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
前記灌流流体の各サンプルの質量を秤量によって求め、前記質量をサンプリング間隔の持続時間で割ることによって前記灌流液流量を計算するステップを含むことを特徴とする、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記肺内における前記灌流液の静水圧を一定に維持しながら該肺を前記薬剤に曝露した後で、前記灌流液流量を計算することによって、肺循環の抵抗に対する吸入された前記薬剤の効果を診断することを特徴とする、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
IPL又は実験動物の肺に対する薬剤肺投与量を予測する方法であって、
エーロゾルを粉末形成薬剤からエーロゾル発生器によって生成して、移送されるエーロゾル流を形成し、
曝露流を、流れ接合部から、所定の一回換気量を発生させる呼吸シミュレータに接続された吸入フィルタに供給し、
前記エーロゾル移送流内の前記エーロゾル粒子の質量分布の値を求め、
前記吸入フィルタ内のフィルタ上に析出したエーロゾルの質量値(Minh)、及び求められたMMADの場合のエーロゾルの堆積分割合(Fdep)を求め、
前記で求められた値から、予測肺投与量(Mdep)を求める
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項52】
前記質量分布値が空気力学的粒子径質量中央値(MMAD)であることを特徴とする、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記MMADが、カスケードインパクタによって求められることを特徴とする、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
送られる前記エーロゾル流内のエーロゾル粒子の濃度を求めるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項51から請求項53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記エーロゾル粒子濃度を求める前記ステップが、流動するエーロゾル粒子からの光の反射若しくは光の散乱又は光の反射と散乱との組合せを測定する計器によって行われることを特徴とする、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記流れ接合部の下流に、前記曝露流から除外された残留エーロゾル流を受け入れるようになったフィルタ装置を設け、
前記フィルタ内に堆積したエーロゾル粒子の質量値(Mres)を求める
ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項51から請求項55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記Mresの値からフィルタ補正係数を求め、特定の曝露シーケンスについてのフィルタ係数補正エーロゾル粒子濃度(Ccorr)特性を計算するステップを含むことを特徴とする、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記予測肺投与量(Mdep)を、曝露装置の呼吸パターンから、前記フィルタ係数補正エーロゾル粒子濃度(Ccorr)、前記呼吸シミュレータの前記一回換気量(TV)、及び前記空気力学的粒子径質量中央値(MMAD)の場合の前記堆積エーロゾル分割合を用いることによって計算するステップを含むことを特徴とする、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記エーロゾルを一定流量で送るステップを含むことを特徴とする、請求項51から請求項58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記流量を、前記呼吸シミュレータの換気速度の少なくとも3倍に設定するステップを含むことを特徴とする、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
請求項1から請求項34のいずれか1項に記載のシステムを使用する、請求項51から請求項60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
薬剤候補を、肺との相互作用特性に基づいてふるい分けする方法であって、
(a)候補となる粉末化された薬剤をエーロゾル化のために準備し、
(b)請求項51から請求項61のいずれか1項に記載の方法に従って前記候補薬剤のエーロゾルの予測肺堆積量(Mdep)を求めるようにされた、請求項1から請求項34のいずれか1項に記載のシステムを使用し、
(c)IPL又は実験動物の肺を用いて請求項1から請求項34のいずれか1項によるシステムを作動させる際に、前記肺と前記エーロゾルとの間の曝露時間、及び前記粉末化された薬剤を、前記ステップのMdepの値に適合させ、
(d)前記IPL又は前記実験動物の肺内に堆積された前記候補薬剤との相互作用を求める
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項63】
送られる前記エーロゾル流が、前記システムにおける前記ステップ(b)及び前記ステップ(c)において本質的に同じであることを特徴とする、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ステップ(a)における粉末薬剤の累積量が、100mg未満であることを特徴とする、請求項62又は請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記ステップ(d)が、前記候補薬剤が前記IPL又は前記実験動物の肺によってどのように吸収されるかを研究することを伴うことを特徴とする、請求項60から請求項62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
肺とエーロゾル化薬剤との間の相互作用の研究又は予測に適しており、曝露装置に気密接続されたエーロゾル発生器を備えるシステムであって、前記曝露装置は、
前記エーロゾル発生器のエーロゾル保持チャンバから流れ接合部へと向かう移送エーロゾル流と、
曝露器官への分配のために前記流れ接合部から呼吸能力を有する曝露器官へと向かう曝露エーロゾル流と
を形成し、残留エーロゾル流が前記流れ接合部から遠ざかる方向に移送されるようになっており、
前記曝露装置は、
前記流れ接合部の上流に配置された、前記移送エーロゾル流を監視するための流量監視装置と、
前記流量監視装置の下流に配置された、エーロゾル粒子濃度を測定するための装置と、
任意に、前記移送エーロゾル流を制御するための流れ制御機能部と
をさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記エーロゾル保持チャンバの容積が、前記曝露器官の推定肺容積に適合されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
切り離され、通気され、灌流された肺内に、又は実験動物の肺内に堆積するエーロゾル化薬剤の投与量を予測するようにされたシステムであって、前記曝露エーロゾル流が、前記接合部からハウジング内に設けられた前記曝露器官へ向けて気密状態で送られ、前記ハウジングが、前記エーロゾルへの該曝露器官の制御された曝露を確立するようになっており、該曝露器官が、呼吸シミュレータに接続された吸入フィルタを含むことを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記流れ制御機能部が、前記エーロゾル保持チャンバと前記接合部との間に、制御された量の前記移送エーロゾル流を供給することを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記流れ制御機能部が、前記流れ接合部の下流に配置された真空源を含むことを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記流れ制御機能部が、1つ又は複数の流れ方向制御装置を含むことを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
ハウジングの蓋部分に気密に接続され、前記移送エーロゾルを前記流れ接合部に分配するためのほぼ管状のチャネルが設けられた、エーロゾル入口装置と、
残留エーロゾル流を受け入れるように前記流れ接合部に接続されたほぼ管状のチャネルと、エーロゾル残留フィルタのための脱着可能なフィルタホルダを備えた下流フィルタチャンバとが設けられた、フィルタ装置と
を含むことを特徴とする、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記エーロゾル入口装置の前記管状チャネルは、残留エーロゾル粒子が堆積し、重力によって保持されるようになった前記残留フィルタの本質的に水平な面から45度を超えない角度で延びることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記吸入フィルタが、前記ハウジングの蓋の接続手段に取り付け可能な遠位部と、堆積フィルタを含む取り外し可能なフィルタホルダに接続される近位部とを有することを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項10】
前記吸入フィルタが、前記近位部と前記遠位部との間に延びるフィルタ流路を含み、前記フィルタ流路が、前記流れ接合部と前記曝露対象物との間の流路の延長部に実質的に対応する延長部を有することを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記流路と前記エーロゾル入口装置の前記管状チャネルとが、約45度の角度で配置されることを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記流れ制御機能部が、前記フィルタ装置の下流に配置された真空源であることを特徴とする、請求項6から請求項10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記移送エーロゾル流が、前記呼吸シミュレータによって発生される呼気流容量を上回ることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記呼気流の量が、前記移送エーロゾル流を超えることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記流れ制御機能部が、前記流れ監視装置の上流に配置された一方向弁をさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記呼吸シミュレータが、前記エーロゾル保持チャンバの容積を超える一回換気量で作動し、前記流れ制御機能部が、少なくとも2つの一方向弁を含むことを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項17】
前記一方向弁の1つが前記流れ監視装置の上流に配置され、前記一方向弁の1つが前記流れ接合部の下流に配置されることを特徴とする、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記エーロゾル保持チャンバの容積よりも少ない一回換気量を発生させる呼吸能力を有する肺との間の相互作用を研究するようにされたシステムであって、前記曝露エーロゾル流が、前記接合部から気密状態で送られ、前記流れ制御機能部が、前記エーロゾル保持チャンバと前記接合部との間に、制御された流量の移送エーロゾル流を供給することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項19】
前記流れ制御機能部が、前記流れ接合部の下流に配置された真空源を含むことを特徴とする、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
残留エーロゾル流を受け入れるように前記流れ接合部に接続されたほぼ管状のチャネルと、エーロゾル粒子堆積フィルタのための脱着可能なフィルタホルダを備えた下流フィルタチャンバとが設けられたフィルタ装置を備えることを特徴とする、請求項18又は請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記堆積器官が、前記曝露エーロゾル流を気密状態で受け入れるようになったハウジング内に収容された、切り離され、通気され、灌流された肺であることを特徴とする、請求項18から請求項20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記堆積器官が、前記曝露エーロゾル流に気密接続された実験動物の肺であり、前記実験動物が、前記移送エーロゾル流を超える呼気流容量を有し、前記流れ制御機能部が、前記流れ監視装置の上流に配置された流れ方向制限装置をさらに含むことを特徴とする、請求項18から請求項20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
前記流れ方向制限装置が、一方向弁であることを特徴とする、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記流れ制御機能部が、前記移送エーロゾル流を増強する能力を有する換気バルーンをさらに含むことを特徴とする、請求項22又は請求項23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記エーロゾル保持チャンバの容積よりも大きい一回換気量を発生させる呼吸能力を有する実験動物の肺との間の相互作用を研究するようにされたシステムであって、
前記曝露エーロゾル流が、前記接合部から前記実験動物に向かって気密状態で送られ、
前記流れ制御機能部が、1つ又は複数の流れ方向制御装置を含む
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項26】
前記流れ方向制御装置が、前記流れ監視装置の上流に配置された第1の一方向弁と、前記残留流の方向を制御するように前記流れ接合部の下流に配置された第2の一方向弁とを含むことを特徴とする、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記流れ制御機能部が、前記移送エーロゾル流を増強する能力を有する換気バルーンを含むことを特徴とする、請求項25又は請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記エーロゾル発生器が、投与される封入された粉末と混合され、前記粉末粒子を凝集解離させて、前記エーロゾル保持チャンバに供給可能なエーロゾルにするために、急速に膨張する加圧気体を使用することを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項29】
前記エーロゾル発生器が、粉末をエーロゾル化して供給するために、圧力チャンバと、出口ノズルのところで常圧に対して開口した少なくとも1つの実質的に直線状の噴出流路と、加圧気体を充填して粉末を混合するための封入粉末チャンバと、前記圧力チャンバと前記粉末チャンバとを接続する少なくとも1つの圧力流路とを備えることを特徴とする、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記噴出流路が実質的に直線であり、前記出口ノズルのところで実質的に均一な断面の開口部を有し、前記噴出流路は好ましくはシリンダを含むことを特徴とする、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
下部と、前記下部よりも大きい断面積を有する上部との間で垂直に延びる、ほぼ円錐形のエーロゾル保持チャンバを備え、前記下部が、前記エーロゾル発生器から上向きに送られたエーロゾル集塊のバーストを受け入れるエーロゾル入口を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項32】
前記エーロゾル保持チャンバの前記下部に、前記エーロゾルを前記曝露標的に向けて下流に移送するための出口流路を備えることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記出口流路が、下向きに方向付けられることを特徴とする、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記エーロゾル保持チャンバの上部に、導入されたエーロゾルの上に清浄空気層を導入するための、エーロゾル粒子を含まない入口空気用のディフューザが設けられたことを特徴とする、請求項31から請求項33のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項35】
エーロゾル集塊をエーロゾル発生器から曝露標的に送る送り方法であって、
(a)前記エーロゾル発生器から上向きに送られたエーロゾルのバーストを、バーストされたエーロゾルの容積を収容するようになった形状を有するほぼ垂直方向の保持チャンバの下部に導入し、
(b)前記保持チャンバ内で、前記エーロゾルを重力によって沈降させて雲として収集し、
(c)より軽い清浄空気層をより濃密な前記エーロゾル雲の上に導入し、
(d)エーロゾルのストリームを、曝露標的に送るために、前記保持チャンバの下向きの出口流路内に受け入れる
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
前記保持チャンバが、倒立円錐形状を有することを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
曝露作動の間の前記エーロゾルと前記清浄空気との不安定な混合を防止するステップを含むことを特徴とする、請求項35又は請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記出口流路が、前記保持チャンバの下部に配置されることを特徴とする、請求項35に記載の送り方法。
【請求項39】
前記保持チャンバから前記曝露標的に前記エーロゾルを送る動作が、重力によって行われることを特徴とする、請求項35に記載の送り方法。
【請求項40】
より濃密なエーロゾルを前記保持チャンバ内で雲として沈降させて、上方のより軽い清浄空気との間に安定な境界が形成されるようにするステップを含むことを特徴とする、請求項35から請求項39のいずれか1項に記載の送り方法。
【請求項41】
前記清浄空気が前記エーロゾル雲に対して圧力を及ぼすことによって、該エーロゾル雲の前記保持チャンバからの排出を支援することを特徴とする、請求項35から請求項40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
請求項1から請求項34のいずれか1項に記載の曝露システムにおける、請求項35に記載の送り方法。
【請求項43】
エーロゾル・バーストを収容し、エーロゾルを曝露標的に移送するためのエーロゾル保持チャンバであって、前記エーロゾル保持チャンバの上部と該エーロゾル保持チャンバの下部との間に本質的に垂直に延びており、前記上部が前記下部よりも大きい断面積を有しることによって該チャンバがほぼ倒立円錐の構造に構成され、該下部が、
(i)エーロゾル発生器から上向きに送られたエーロゾル集塊のバーストを受け入れるようになったエーロゾル入口と、
(ii)前記エーロゾルを前記曝露標的に送るために受け入れるエーロゾル出口流路と
を有することを特徴とする、エーロゾル保持チャンバ。
【請求項44】
前記出口流路を移送のために開放する弁機能を含むことを特徴とする、請求項43に記載のエーロゾル保持チャンバ。
【請求項45】
前記出口流路が、下向きに方向付けられることを特徴とする、請求項43又は請求項44に記載のエーロゾル保持チャンバ。
【請求項46】
粒子を含まない清浄な空気を、より濃密なエーロゾルの上に安定な層として導入するために、上部に配置されたディフューザを有することを特徴とする、請求項43から請求項45のいずれか1項に記載のエーロゾル保持チャンバ。
【請求項47】
前記エーロゾル保持チャンバが、互いに気密ではあるが取り外し可能に接続された下部区画と上部区画とを含み、下部区画に前記エーロゾル入口と前記エーロゾル出口流路とが設けられることを特徴とする、請求項41から請求項46のいずれか1項に記載のエーロゾル保持チャンバ。
【請求項48】
IPLを用いたテストモデルにおいて、肺によって吸収される薬剤の量を求めるための方法であって、
前記薬剤のエーロゾル化された調合物を準備し、
灌流流体を用いて前記IPLをシングルパスモードで灌流しながら、IPL曝露に適合された請求項1から請求項34のいずれか1項に記載のシステムを使用して、該IPLをエーロゾル化された薬剤に曝露し、
曝露シーケンスの間に所定の持続時間で前記IPLの下流において前記灌流流体をサンプリングして、各サンプル内の前記薬剤の量を分析し、
前記灌流液の流量を求めて、肺からの溶質の吸収を計算する
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
前記灌流流体の各サンプルの質量を秤量によって求め、前記質量をサンプリング間隔の持続時間で割ることによって前記灌流液流量を計算するステップを含むことを特徴とする、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記肺内における前記灌流液の静水圧を一定に維持しながら該肺を前記薬剤に曝露した後で、前記灌流液流量を計算することによって、肺循環の抵抗に対する吸入された前記薬剤の効果を診断することを特徴とする、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
IPL又は実験動物の肺に対する薬剤肺投与量を予測する方法であって、
エーロゾルを粉末形成薬剤からエーロゾル発生器によって生成して、移送されるエーロゾル流を形成し、
曝露流を、流れ接合部から、所定の一回換気量を発生させる呼吸シミュレータに接続された吸入フィルタに供給し、
前記エーロゾル移送流内の前記エーロゾル粒子の質量分布の値を求め、
前記吸入フィルタ内のフィルタ上に析出したエーロゾルの質量値(Minh)、及び求められたMMADの場合のエーロゾルの堆積分割合(Fdep)を求め、
前記で求められた値から、予測肺投与量(Mdep)を求める
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項52】
前記質量分布値が空気力学的粒子径質量中央値(MMAD)であることを特徴とする、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記MMADが、カスケードインパクタによって求められることを特徴とする、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
送られる前記エーロゾル流内のエーロゾル粒子の濃度を求めるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項51から請求項53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記エーロゾル粒子濃度を求める前記ステップが、流動するエーロゾル粒子からの光の反射若しくは光の散乱又は光の反射と散乱との組合せを測定する計器によって行われることを特徴とする、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記流れ接合部の下流に、前記曝露流から除外された残留エーロゾル流を受け入れるようになったフィルタ装置を設け、
前記フィルタ内に堆積したエーロゾル粒子の質量値(Mres)を求める
ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項51から請求項55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記Mresの値からフィルタ補正係数を求め、特定の曝露シーケンスについてのフィルタ係数補正エーロゾル粒子濃度(Ccorr)特性を計算するステップを含むことを特徴とする、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記予測肺投与量(Mdep)を、曝露装置の呼吸パターンから、前記フィルタ係数補正エーロゾル粒子濃度(Ccorr)、前記呼吸シミュレータの前記一回換気量(TV)、及び前記空気力学的粒子径質量中央値(MMAD)の場合の前記堆積エーロゾル分割合を用いることによって計算するステップを含むことを特徴とする、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記エーロゾルを一定流量で送るステップを含むことを特徴とする、請求項51から請求項58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記流量を、前記呼吸シミュレータの換気速度の少なくとも3倍に設定するステップを含むことを特徴とする、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
請求項1から請求項34のいずれか1項に記載のシステムを使用する、請求項51から請求項60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
薬剤候補を、肺との相互作用特性に基づいてふるい分けする方法であって、
(a)候補となる粉末化された薬剤をエーロゾル化のために準備し、
(b)請求項51から請求項61のいずれか1項に記載の方法に従って前記候補薬剤のエーロゾルの予測肺堆積量(Mdep)を求めるようにされた、請求項1から請求項34のいずれか1項に記載のシステムを使用し、
(c)IPL又は実験動物の肺を用いて請求項1から請求項34のいずれか1項によるシステムを作動させる際に、前記肺と前記エーロゾルとの間の曝露時間、及び前記粉末化された薬剤を、前記ステップのMdepの値に適合させ、
(d)前記IPL又は前記実験動物の肺内に堆積された前記候補薬剤との相互作用を求める
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項63】
送られる前記エーロゾル流が、前記システムにおける前記ステップ(b)及び前記ステップ(c)において本質的に同じであることを特徴とする、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ステップ(a)における粉末薬剤の累積量が、100mg未満であることを特徴とする、請求項62又は請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記ステップ(d)が、前記候補薬剤が前記IPL又は前記実験動物の肺によってどのように吸収されるかを研究することを伴うことを特徴とする、請求項60から請求項62のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2010−531201(P2010−531201A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514696(P2010−514696)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050788
【国際公開番号】WO2009/002267
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(510003564)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050788
【国際公開番号】WO2009/002267
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(510003564)
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