説明

曲面モデル

【課題】置物等として利用される曲面モデルに関し、保存、運搬に便利な曲面モデルを提案する。
【解決手段】本発明は、スリットSを用いて複数の第1の板状部材2a、2b、2c、……と複数の第2の板状部材3a、3b、3c、……とを格子状に組み合わせて曲面モデルとする。第1及び第2の板状部材2a、2b、2c、……及び3a、3b、3c、……の少なくとも1方を弾性を有する金属板材で作成し、スリットSが設けられた部位の変形を容易とする切込みMを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば置物として展示する3次元曲面形状等の曲面モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特開平7−334704号公報等に、自由曲面作成方法が種々に提案されている。これらに開示の方法では、コンピュータを使用してワイヤフレームモデル等により曲面を表現すると共に、このワイヤフレームモデルに対して視点等を設定してディスプレイで表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−334704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの種の曲面の形状を模型(以下、曲面モデルと呼ぶ)で表現すれば、一段と曲面の理解を深めることができ、便利であると考えられる。またこの種の曲面モデルは、装飾品としての価値を見出すことができ、これにより置物として使用することもできる。しかしながら例えば置物として使用する場合、この種の曲面モデルは、保存、運搬が困難になる恐れがある。特に詳細に形状を表現しようとすると、曲面モデルは大型になることを避け得ず、この場合には著しく保存、運搬が困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、置物等として使用する曲面モデルに関して、保存、運搬に便利な曲面モデルを提案することを目的とする。このため、本発明は、以下の技術的事項から構成される。
【0006】
(1)1方向に延長する複数の第1の板状部材と前記1方向と直交する方向に延長する複数の第2の板状部材とを格子状に組み合わせて、前記第1及び第2の板状部材の端面により3次元空間における曲面形状を表現する曲面モデルであって、前記第1及び第2の板状部材は、それぞれ一定のピッチでスリットが設けられ、前記第1の板状部材の前記スリットに前記第2の板状部材の前記スリットを噛み合わせて前記第1の板状部材の前記スリットに前記第2の板状部材を挿入することにより格子状に組み合わされ、前記第1及び第2の板状部材の少なくとも1方は、弾性を有する金属板材で作成され、前記スリットに当該スリットが設けられた部位の変形を容易とする切込みが設けられる。
【0007】
(2)前記切込みは、前記スリットの根元に設けられた、前記スリットと直交する方向に前記スリットから延長する細溝である請求項1に記載の曲面モデル。
【0008】
(1)の曲面モデルは、スリットが設けられた部位の変形を容易とする切込みが設けられることから、スリットが設けられた部位を容易に変形させ、第1及び第2の板状部材が重なりあうように、全体を押しつぶして保存、搬送することができる。また第1及び又は第2の板状部材が弾性を有する金属板材で作成されて、切り込みが設けられていることから、押しつぶして保存、運搬して、必要に応じて元の形状に戻すことができる。これにより保存、運搬に便利な曲面モデルを提供することができる。
【0009】
(2)の曲面モデルは、この切り込みがスリットと直交する方向にスリットから延長する細溝であることから、より具体的な構成により、保存、運搬に便利な曲面モデルを提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば置物として使用する曲面モデルに関して、保存、運搬に便利な曲面モデルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る置物の説明に供する図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る置物を示す斜視図である。
【図3】図2の置物の平面図である。
【図4】図2の置物の部品である第1の板状部材の図である。
【図5】他の第1の板状部材の図である。
【図6】図2の置物の部品である第2の板状部材の図である。
【図7】他の第2の板状部材の図である。
【図8】図2の置物を押しつぶした状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0013】
(1)実施の形態の構成
図2は、本発明の実施の形態に係る置物を示す斜視図である。この置物1は、いわゆる双曲放物面を表す曲面モデルである。この置物1は、図2との対比により図1に示すように、1方向に延長する複数の第1の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……と、この1方向と直交する方向に延長する複数の第2の板状部材3a、3b、3c、3d、3e……とを格子状に組み合わせて作成される。
【0014】
ここで第1及び第2の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……及び3a、3b、3c、3d、3e……は、それぞれ一定のピッチで、下方及び上方よりスリットSが設けられる。置物1は、第1の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……のスリットSに、対応する第2の板状部材3a、3b、3c、3d、3e……のスリットSを噛み合わせ、第1の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……のスリットSに第2の板状部材3a、3b、3c、3d、3e……を挿入することにより格子状に組み合わされる。なおこの実施の形態では、この第1及び第2の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……及び3a、3b、3c、3d、3e……は、枚数がそれぞれ19枚に設定される。
【0015】
置物1は、このように第1及び第2の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……及び3a、3b、3c、3d、3e……を格子状に組み合わせて、第1及び第2の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……及び3a、3b、3c、3d、3e……の下側端面が、例えばxy平面等の基準平面、又はこの基準平面と平行な面を表現するように設定される。さらに上側端面が3次元空間における曲面形状を表現するように設定される。より具体的には、これら第1及び第2の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……及び3a、3b、3c、3d、3e……の幅(図2においては、高さである)が曲面形状に応じて設定される。またこの高さの1/2が各スリットSの長さに設定される。
【0016】
上方より見て図3により示すように、この実施の形態において、置物1は、この基準平面上の矩形の領域又は基準平面と平行な面上の矩形の領域について曲面形状を表現するように設定され、この矩形形状の領域を斜め45度により横切る方向がそれぞれ第1及び第2の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……及び3a、3b、3c、3d、3e……の延長方向に設定される。
【0017】
第1及び第2の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……及び3a、3b、3c、3d、3e……は、それぞれ弾性を有するステンレス等の金属板材で作成され、図1において符号Aにより部分的に拡大して示すように、スリットSが設けられた部位の変形を容易とする切込みが各スリットSに設けられる。この実施の形態では、この切り込みが、スリットSの根元に設けられた、スリットSと直交する方向にスリットSから延長する細溝Mにより形成される。
【0018】
図4及び図5は、それぞれ符号2a及び2gにより示す第1の板状部材の正面図、平面図、右側面図、左側面図及び底面図である。この図4及び図5に示す第1の板状部材2a及び2gは、意匠として把握することもできる。なお第1の板状部材を意匠として把握した場合、意匠に係る物品の名称は、置物の部品であり、意匠に係る物品は、複数の物品から構成される組み立て式の置物の一の部品である。そして正面図で表されるこの物品の形状は、置物1によって表現される曲面形状に対応する曲線形状に上辺が設定された形状であって、他の部品である第2の板状部材を挿入するスリットSが、底辺側に、一定のピッチで、各部の高さの1/2の長さで設けられ、各スリットSの付け根には細溝Mが設けられる。また右側面図及び左側面図は、当該第1の板状部材2a及び2gの金属板材の板厚に対応する幅を有し、曲面形状に対応する高さを有する長方形形状により表される。また底面図は、この金属板材の板厚に対応する高さを有し、スリットSを見て取ることができる長方形形状により表される。また平面図は、金属板材の板厚に対応する高さを有する長方形形状により表される。なお背面図は、正面図と対象形状により表されることから省略する。
【0019】
また図6及び図7は、それぞれ符号3a及び3gにより示す第2の板状部材の正面図、平面図、右側面図、左側面図及び底面図である。この図6及び図7により示す第2の板状部材3a及び3gも、意匠として把握することもでき、意匠に係る物品の名称及び意匠に係る物品は、第1の板状部材2a、2gと同一である。そして正面図で表されるこの物品の形状は、置物1によって表現される曲面形状に対応する曲線形状に上辺が設定された形状であって、他の部品である第1の板状部材を挿入するスリットSが、上辺側に、一定のピッチで各部の高さの1/2の長さで設けられ、各スリットSの付け根には細溝Mが設けられる。また右側面図及び左側面図は、当該第2の板状部材3a及び3gの金属板材の板厚に対応する幅を有し、曲面形状に対応する高さを有する長方形形状により表される。また底面図は、この金属板材の板厚に対応する高さを有する長方形形状により表される。平面図は、金属板材の板厚に対応する高さを有し、スリットSを見て取ることができる長方形形状により表される。なお背面図は、正面図と対象形状により表されることから省略する。
【0020】
(2)実施の形態の動作
以上の構成において、この置物1では、下方より一定のピッチでスリットSが設けられている第1の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……に対して、上方より同様のスリットが設けられている第2の板状部材3a、3b、3c、3d、3e……を格子状に組み合わせて組み立てられ、これら第1及び第2の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……及び3a、3b、3c、3d、3e……の端面形状により所望の3次元曲面形状が表現される(図1)。これによりこの置物1では、曲面形状に応じてこれら第1及び第2の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……及び3a、3b、3c、3d、3e……の高さを種々に変更して、各種の曲面形状を表現することができる。これにより各種の曲面について理解を深めることができる。また装飾品としての価値を見出すことができ、これにより置物としの価値を見出すことができる。
【0021】
しかしながらこの置物1は、このままでは保存、運搬が困難になる。そこでこの置物1では(図1)、第1及び第2の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……及び3a、3b、3c、3d、3e……がそれぞれ弾性を有する金属板材で作成される。さらに第1及び第2の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……及び3a、3b、3c、3d、3e……は、各スリットSの付け根に細溝Mによる切込みが設けられ、この切込みによりスリットSを設けた部位が変形容易に設定される。
【0022】
これにより図1との対比により図8に示すように、置物1では、第1及び第2の板状部材2a、2b、2c、2d、2e、……及び3a、3b、3c、3d、3e……が重なりあうように、応力Fにより全体を押しつぶして保存、搬送することができる。また必要に応じて元の形状に戻すことができる。
【0023】
(3)実施の形態の効果
以上の構成によれば、スリットにより格子状に板状部材を組み合わせて曲面形状を表現するようにして、スリットが設けられた部位の変形を容易とする切込みを設けることにより、スリットが設けられた部位を容易に変形させ、第1及び第2の板状部材が重なりあうように、全体を押しつぶして保存、搬送することができる。また第1及び第2の板状部材が弾性を有する金属板材で作成されて、この切り込みが設けられていることから、押しつぶして保存、運搬して、必要に応じて元の形状に戻すことができる。これにより保存、運搬に便利な曲面モデルを提供することができる。
【0024】
またこの切り込みが、スリットと直交する方向にスリットから延長する細溝であることから、より具体的な構成により、保存、運搬に便利な曲面モデルを提供することができる。
【0025】
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態では、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明にあっては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施の形態の構成を種々に変更等することができる。
【0026】
すなわち上述の実施の形態においては、スリットの付け根に、スリットから横方向に延長する細溝により切込みを設ける場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これに代えて、又はこれに加えて、スリットの途中に細溝による切込みを1個又は複数個設けてもよい。またスリットの長さに応じて切込みの数を増減して、より具体的にはスリットの長さが長くなるに従って切込みの数を増大させ、局所的な応力集中を回避し、さらには一段と変形し易くしてもよい。
【0027】
また上述の実施の形態においては、切り込みの形状を細溝とする場合について述べたが、本発明はこれに限らず、切り込みの形状は、スリットが設けられた部位の変形を容易とする形状であればよく、種々の形状を広く適用することができる。従って切り込みを円形形状、三角形形状、四角形形状としてもよい。
【0028】
また上述の実施の形態においては、第1及び第2の板状部材の双方に切込みを設ける場合について述べたが、本発明はこれに限らず、実用上十分な場合には、1方の板状部材にのみ切込みを設けてもよく、さらには一部のスリットにのみ切込みを設けてもよい。
【0029】
また上述の実施の形態においては、第1及び第2の板状部材の双方を弾性を有する金属板材により作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、実用上十分な強度、復元力を確保できる場合には、第1及び第2の板状部材の1方のみを弾性を有する金属板材としてもよい。
【0030】
また上述の実施の形態においては、スリットの長さを高さの1/2とし、各板状部材の中央で、第1及び第2の板状部材によるスリットの根元がぶつかり合うように設定する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、このぶつかり合う部位をいずれかの側に偏らせるようにスリットの長さを設定してもよい。
【0031】
またさらに上述の実施の形態においては、単にスリットに板状部材を差し込んで保持する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばスリットに沿った部位に凸部、切り起し等を設け、この凸部、切り起こし等により板状部材の脱落防止機構を設けるようにしてもよい。なおこの場合に、図1におけるスリットと細溝とで作成される角部を曲げ加工して切り起しの部位とし、脱落防止機構としてもよい。
【0032】
またさらに上述の実施の形態においては、双曲放物面の曲面モデルに本発明を適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、各種曲面形状の曲面モデルに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 置物
2a〜2g 第1の板状部材
3a〜3g 第2の板状部材
S スリット
M 細溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1方向に延長する複数の第1の板状部材と前記1方向と直交する方向に延長する複数の第2の板状部材とを格子状に組み合わせて、前記第1及び第2の板状部材の端面により3次元空間における曲面形状を表現する曲面モデルであって、
前記第1及び第2の板状部材は、
それぞれ一定のピッチでスリットが設けられ、前記第1の板状部材の前記スリットに前記第2の板状部材の前記スリットを噛み合わせて前記第1の板状部材の前記スリットに前記第2の板状部材を挿入することにより格子状に組み合わされ、
前記第1及び第2の板状部材の少なくとも1方は、
弾性を有する金属板材で作成され、前記スリットに当該スリットが設けられた部位の変形を容易とする切込みが設けられた
曲面モデル。
【請求項2】
前記切込みは、
前記スリットの根元に設けられた、前記スリットと直交する方向に前記スリットから延長する細溝である
請求項1に記載の曲面モデル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−136546(P2011−136546A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25939(P2010−25939)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【分割の表示】特願2009−294847(P2009−294847)の分割
【原出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000149011)株式会社大橋製作所 (7)