説明

曳網状態制御装置およびこれを用いたトロール漁法

【課題】トロール網の開口部の形状を曳網条件が変化する場合においてほぼ一定に保持することができ、ワープに異常な張力が作用したときも迅速かつ適正に対処できる曳網状態制御装置及びこれを用いたトロール漁法を提供すること。
【解決手段】トロール網4の左右のワープ5L、5Rの繰出し巻上げを独立的に行なうトロールウインチ3と、各ワープの張力を検出する張力センサ16L、16Rと、各ワープの繰出し線長及び繰出し線速を検出する回転センサ17L、17Rとが内蔵されているワープセンサと、このワープセンサによって検出された各ワープの動作状態情報に応じて自動曳網運転時に前記トロール網の曳網状態を所定の設定状態に制御するように前記トロールウインチに対して左右のワープの張力を許容範囲内に保持し、左右のワープの長さ及び差を所定内に保持するように各ワープの繰出し巻上げを指令するウインチ制御器20とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曳網状態制御装置およびこれを用いたトロール漁法に係り、特にトロール網の開口の形状を安定させることに好適な曳網状態制御装置およびこれを用いたトロール漁法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トロール漁法は漁船から繰出した左右のワープに直接または拡網器具を介してトロール網の左右前端部を接続した状態で、漁船を所定速度で航行させてトロール網を曳網することにより行われている。
【0003】
近年においては、トロール漁法は単なる魚の漁獲目的のみならず、水産資源調査目的の魚類等の採取のためにも使用されている。この水産資源調査においては、魚類等の定量採取を行って採取データの精度の向上を図ることが要望されている。そのためには、トロール網の開口部の形状(開口面積)を一定にして曳網することが必要である。これは漁獲を目的とした通常のトロール漁法の操業における漁獲率の向上のためにも有効である。
【0004】
【特許文献1】特開平07−67501号公報
【特許文献2】特開昭63−222633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のトロール漁法においては、漁船が魚群の変化に応じて曳網方向を変更しようとすると、トロール網の開口部の形状が変化して開口面積が減少してしまい、魚類等の定量採取が不可能となり採取データの精度が劣るものとなったり、漁獲率が低下するという不都合があった。これは漁船が旋回する時に、旋回方向のワープの張力が他方のワープの張力より低下することにより、トロール網に作用する左右の張力のバランスが不均一となり、トロール網の開口部の形状が変化するためである。また、潮流が変化したり、船速が変化したり、種々の曳網条件が複合的に変化する場合にもトロール網の開口部の形状が変更する。
【0006】
更に、トロール網を海底に接して曳網する場合において、トロール網が海底部に引っかかるを等の何らかの原因によりワープに異常な張力が作用した場合に、これらの異常を検知して迅速かつ適正に対処することが難しかった。
【0007】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、トロール網の開口部の形状を曳網条件が変化する場合においてもほぼ一定に保持することができ、資源調査の精度を上げることができたり、漁獲率を向上させることができたり、ワープに異常な張力が作用したときにも迅速かつ適正に対処することのできる曳網状態制御装置およびこれを用いたトロール漁法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明の曳網状態制御装置は、トロール網の左右のワープの繰出し巻上げを独立的に行なうトロールウインチと、前記各ワープの動作状態を検出するための各ワープの張力を検出する張力センサと、各ワープの繰出し線長および繰出し線速を検出する回転センサとが内蔵されているワープセンサと、このワープセンサによって検出された各ワープの動作状態情報に応じて自動曳網運転時に前記トロール網の曳網状態を所定の設定状態に制御するように前記トロールウインチに対して左右のワープの張力を許容範囲内に保持させるとともに左右のワープの長さおよび差を所定内に保持させるように各ワープの繰出し巻上げを指令するウインチ制御器とを有することを特徴とする。本発明によれば、ウインチ制御器がワープセンサによって検出された各ワープの動作状態情報に応じて前記トロール網の曳網状態を設定状態に制御するように前記トロールウインチに対して各ワープの繰出し巻上げを指令し、この指令内容に応じて前記トロールウインチが左右のワープの繰出し巻上げを許容範囲行うことにより、左右のワープの張力が常に許容範囲内に保持されるとともに左右のワープの長さおよび差が許容範囲内に保持され、トロール網の曳網状態が所定の設定状態に保持される。これによりトロール網の開口部の形状が一定に保持される。
【0009】
請求項2に記載の本発明のトロール漁法は、トロール網の左右のワープの繰出し巻上げを独立的に行なうトロールウインチと、前記各ワープの動作状態を検出するための各ワープの張力を検出する張力センサと、各ワープの繰出し線長および繰出し線速を検出する回転センサとが内蔵されいるワープセンサと、このワープセンサによって検出された各ワープの動作状態情報に応じて自動曳網運転時に前記トロール網の曳網状態を設定状態に制御するように前記トロールウインチに対して左右のワープの張力を許容範囲内に保持させるとともに左右のワープの長さおよび差を所定内に保持させるように各ワープの繰出し巻上げを指令するウインチ制御器とを有する曳網状態制御装置を用いて前記トロール網を曳網するトロール漁法において、自動曳網運転時に前記ウインチ制御器により前記トロールウインチに対して左右のワープの張力を許容範囲内に保持させるとともに左右のワープの長さおよび差を許容範囲内に保持させるように指令を行って前記トロール網の曳網状態を設定状態に保持させるようにトロール網を曳網することを特徴とする。本発明によれば、請求項1と同様にトロール網の曳網状態が所定の設定状態に確実に保持され、トロール網の開口部の形状が一定に保持される。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明の曳網状態制御装置およびこれを用いたトロール漁法は構成されかつ作用するものであるから、トロール網の開口部の形状を曳網条件が変化する場合においてもほぼ一定に保持することができ、資源調査の精度を上げることができたり、漁獲率を向上させることができたり、ワープに異常な張力が作用したときにも迅速かつ適正に対処することのできる等の効果を奏する。
【0011】
更に説明すると、本願発明においては、トロールウインチと、ワープセンサと、ウインチ制御器とを設けるとともに、前記ワープセンサを各ワープの動作状態を検出するための各ワープの張力を検出する張力センサと、各ワープの繰出し線長および繰出し線速を検出する回転センサとを内蔵させて形成し、ウインチ制御器をワープセンサによって検出された各ワープの動作状態情報に応じて自動曳網運転時に前記トロール網の曳網状態を設定状態に制御するように前記トロールウインチに対して左右のワープの張力を許容範囲内に保持させるとともに左右のワープの長さおよび差を許容範囲内に保持させるように各ワープの繰出し巻上げを指令するように形成して、前記ウインチ制御器により自動曳網運転時に前記トロールウインチに対して左右のワープの張力を許容範囲内に保持させるとともに左右のワープの長さおよび差を許容範囲内に保持させるように指令を行って前記トロール網の曳網状態を設定状態に保持させるようにトロール網を曳網するものである。
【0012】
従って、本願発明においては、左右のワープの張力を許容範囲内に保持させるとともに左右のワープの長さおよび差を許容範囲内に保持させるように各ワープの繰出し巻上げを指令することにより、円滑な自動曳網運転を行なって漁獲効率の高いトロール操業を行なうことができる。具体的には、漁船が右もしくは左に旋回する時や、潮流が変化したり、船速が変化したり、種々の曳網条件が複合的に変化する場合においても、左右のワープの張力を許容範囲内に保持させるとともに左右のワープの長さおよび差を許容範囲内に保持させることができるので、どのような操業条件の場合においても本願発明によれば、トロール網の開口部の形状をほぼ一定に保持することができる。特に、トロール網を曳網する海中の層が中層と底層においては、トロール網に作用する抵抗力が相違するので、前記の許容範囲の大きさや、ワープの繰出し速度および巻上げ速度等の制御内容をそれぞれに合わせて適正な値に設定して、円滑な自動曳網運転を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1から図3について説明する。
【0014】
図1から図3は本発明の1実施形態を示している。
【0015】
図1は本発明を漁船1に適用した例を示しており、甲板2上にはトロールウインチ3が設置されている。このトロールウインチ3は、トロール網4の左右前端部に拡網器具(本例ではオッターボード)15L、15Rおよび手網4’L、4’Rを介して接続されている左右のワープ5L、5Rの繰出し巻上げを行う左右のドラム6L、6Rを同軸的に備えており、同調クラッチ7をONにすると左右のドラム6L、6Rが一体的に一緒に回転させられ、同調クラッチ7をOFFにすると左右のドラム6L、6Rが独立的に回転させられるように形成されている。本実施形態におけるトロールウインチ3は駆動源である油圧ポンプ8L、8Rから油圧流路9L、9Rを通して各ドラム6L、6R供給される油圧をもって駆動されるように形成されている。各油圧ポンプ8L、8Rは、本実施例では同一の電動機10により回転駆動されるようになっており、各油圧流路9L、9Rには各ドラム6L、6Rに付与される油圧量を調整する電磁リリーフ弁11L、11Rと、各油圧流路9L、9Rを開閉するための1個もしくは複数個の電磁弁12L、12Rと、ブレーキ弁13L、13Rとが設置されている。前記各ワープ5L、5Rは船尾に設けられているトップローラ14L、14Rを通して導出されており、トロール網4との接続部には拡網器具としてのオッターボード15L、15Rが設けられている。また、本実施形態においては、各ワープ5L、5Rの動作状態を検出するワープセンサとして、各トップローラ14L、14Rに各ワープの5L、5Rの大まかな張力を検出するロードセルからなる張力センサ16L、16Rと各ワープの5L、5Rの繰出し線長および繰出し線速を検出する回転センサ17L、17Rとが内蔵されており、各油圧ポンプ8L、8Rの負荷圧力を各油圧流路9L、9R部分において検出する圧力センサ18L、18Rと、各ドラム6L、6Rの微量回転の有無を検出するドラム回転センサ19L、19Rとが設けられている。これらのセンサは図2に示すようにそれぞれウインチ制御器20に検出データを出力するようにされている。このウインチ制御器20は、各センサによって検出された各ワープ5L、5Rの動作状態情報に応じて前記トロール網4の曳網状態を所定の設定状態に制御するように前記トロールウインチ3に対して各ワープ5L、5Rの繰出し巻上げを指令するように形成されている。具体的には、ウインチ制御器20から各油圧ポンプ8L、8R、各電磁リリーフ弁11L、11Rおよび各ブレーキ弁13L、13Rに指令が送られる。また、ウインチ制御器20には表示器21が接続されており、各種の情報が表示されるように形成されている。本実施形態においては、図2に示すように、ウインチ制御器20からは張力表示、線長表示、線速表示、基準曳網張力表示、異常警報表示、異常警報ブザーが発せられ、これを受けた表示器21が各内容を表示するようにされている。また、ウインチ制御器20には図示しない曳網スタート押釦、運転切り替え釦、キーボード等の各種の外部入力手段により指令が入力可能に形成されている。
【0016】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0017】
本実施形態におけるトロール漁法の原理は、左右のワープ5L、5Rに作用する張力をほぼ同等に保持することによりトロール網4の開口部の形状を変化させないように制御する。この左右のワープ5L、5Rに作用する張力をほぼ同等に保持するために、本実施形態においては、ワープセンサが検出する情報に基づいて左右のワープ5L、5Rに作用する張力の現在の状態を検出し、ウインチ制御器20によってトロールウインチ3の運転状態を調整して左右のワープ5L、5Rに作用する張力をほぼ同等に保持するようにさせる。具体的には、トロール網4を海中に投入し、1つの設定状態としての基準ワープ長さ、基準ワープ張力でトロール網4を曳網し、この時の基準ワープ張力を保持するように運転状態を制御する。そして、本実施形態においては、ワープ張力の保持はトロールウインチ3に供給する油圧力をほぼ一定に保持することにより行われるので、前記基準ワープ長さを得た時の基準油圧力を保持を電磁リリーフ弁11L、11Rの圧力の増減調節によって行うようにされている。また、圧力を基準としてワープ張力を保持する場合には、ワープ長さが変化することになるが、その変化を全く自由にさせることはできないので、ワープ長さを監視して、ワープ長さを許容範囲に保持するようにする。
【0018】
次に、本実施形態によるトロール漁法を図3により説明する。
【0019】
図3においては、左から右方向に時間が進行し、上半部にワープ張力を、下半部にワープ放出量(繰出し長さ、ワープ長さ)を線図として示している。
【0020】
1 トロール網4の投入(t0 時より前の動作)
最初に、トロール網4を海中に投入して基準状態とさせる。
【0021】
具体的には、トロールウインチ3の同調クラッチ7をONとさせた状態でトロール網4を投入して両ワープ5L、5Rを基準ワープ長さまで繰出させる。その後、ブレーキ弁13L、13RはONとされて両ドラム6L、6Rを停止させて、ワープ張力がほぼ基準張力となるように操船する。
【0022】
2 準備運転(t0 時より前の動作)
次に、同調クラッチ7をOFFとし、必要な場合に左右のワープ長さの微調整を行う。そして、電動機10を稼働させて両油圧ポンプ8L、8Rの運転を開始させる。
【0023】
3 自動曳網運転
t0時に自動曳網押釦がONされて、自動曳網運転が開始され、t1時までに基準ワープ張力、基準油圧力およびワープ長さが、ワープセンサである張力センサ16L、16R圧力センサ18L、18Rおよび回転センサ17L、17Rにより検出され、ウインチ制御器20に出力され記憶される。これらの基準データは微妙に変化するので、所定サンプリング時間内の平均値として計測される。自動曳網押釦がONされると、ブレーキ弁13、L13Rが自動的にOFFとされ、電磁弁12L、12RがONされ、両電磁リリーフ弁11L、11Rが最大流量とされて、各油圧流路9L、9Rを通して各ドラム6L、6R部に油圧が供給され両ドラム6L、6Rによって両ワープ5L、5Rを若干ずつ巻上げながら前記基準値が検出され、記憶される。
【0024】
t1時以後の自動曳網運転
基準値の記憶終了後は、ウインチ制御器20が各ウインチセンサからの現在値の入力を監視し、ワープ張力が許容値の範囲に保持されるように各電磁リリーフ弁11L、11Rの指令を発することにより、各ワープ5L、5Rの張力をほぼ同等にかつ均一となるように制御する。
【0025】
例えば、ワープ張力が許容範囲に保持されている場合であるt1〜t2、t3〜t4、t5〜t6、t7〜t8、t9以降においては、両ワープ5L、5Rの繰出し長さは不変とするようにされる。また、ワープ張力が増大する方向に変化する場合であるt2〜t3、t8〜t9においては、ワープ張力が増大しているワープ側(一方の場合と、両方の場合がある)のドラムを弛めてワープを繰出していってワープ張力を許容値に保持させる。また、ワープ張力が減少する方向に変化する場合であるt6〜t7においては、ワープ張力が減少しているワープ側(一方の場合と、両方の場合がある)のドラムを巻き上げてワープをまきあげていってワープ張力を許容値に保持させる。
【0026】
これにより両ワープ5L、5Rの張力が常に許容値に保持されることとなり、トロール網4の開口部の形状を曳網条件が変化する場合においてもほぼ一定に保持することができ、資源調査の精度を上げることができたり、漁獲率を向上させることができる。
【0027】
前記のようにワープ張力が許容範囲を外れようとする場合としては、漁船が右もしくは左に旋回する時や、潮流が変化したり、船速が変化したり、種々の曳網条件が複合的に変化する場合であるが、どのような場合においても本発明によれば、トロール網4の開口部の形状をほぼ一定に保持することができる。特に、トロール網4を曳網する海中の層が中層と底層においては、トロール網4に作用する抵抗力が相違するので、前記の許容範囲の大きさや、ワープの繰出し速度および巻上げ速度等の制御内容をそれぞれに合わせて適正な値に設定して、作業させるとよい。
【0028】
前記のようにワープ張力を調整した後や自動曳網開始後などにおいて、曳網途中の左右のワープ5L、5Rのワープ張力はほぼ同等であるが、ワープ長さにずれがある場合には、次のように操作するとよい。即ち、両ワープ5L、5Rとも張力が設定基準の±5%以内であって、ワープ長さも変化せずに3分以上経過した場合には、曳網開始時のワープ長から離れた側のワープを他方のワープの長さに強制同調させたり、また、ワープ長さの差が2m以内の場合にはそのままの状態で曳網を継続させる。
【0029】
t9時以後において自動曳網運転を終了させる場合には、自動曳網押釦をOFFとする。これによりブレーキ弁13L、13Rが自動的にOFFとなり、電動機10も自動的にOFFとなり、両油圧ポンプ8L、8Rも停止し、同調クラッチ7がONとなり、別に設置されている巻き上げ用駆動源によって両ドラム6L、が6R駆動されて両ワープ5L、5Rおよびトロール網4が巻き上げられる。
【0030】
また、次の場合には自動曳網運転が一時中断される。
【0031】
例えば、第1に曳網開始位置からワープ5L、5Rが50m以上ずれた時や、第2に左右のワープ5L、5Rの互いのずれが20mとなった時である。これらの場合自動曳網運転を一時中斬し、設定値のワープ張力以内においてワープ5L、5Rを曳網開始位置まで戻し、再び自動曳網を開始する。
【0032】
また、これらの場合、自動で補正を行う場合には、左右のワープ5L、5Rのうち曳網開始時のワープ長さからより大きく離れている方のワープを補正対象とし、巻上げ補正か、繰出し補正かを選択する。巻き上げ補正の場合には、電磁リリーフ弁の流量を上げてワープの巻上げを行い、両ワープ5L、5Rの長さがそろったところで巻上げを停止して、自動曳網に復帰する。繰出し補正の場合には、電磁リリーフ弁の流量を記憶流量以下にしてワープの繰出しを行い、両ワープ5L、5Rの長さがそろったところで繰出しを停止して、自動曳網に復帰する。その他の自動補正方法としては、いずれかのワープ長さを基準として、前記のt0〜t9までの自動曳網設定方法を再度行うとよい。
【0033】
また、これらの補正を手動で行う場合には、一時中断押釦をONとし、両電磁弁12L、12RをOFFとさせ、両ブレーキ弁13L、13RをONとさせ、両電磁リリーフ弁11L、11Rの流量を記憶流量以下にして両ワープ5L、5Rを曳網開始ワープ長さまで戻し、その後曳網続行押釦をONとし、両ブレーキ弁13L、13RをOFFとさせ、両電磁弁12L、12RをONとさせて、自動曳網運転を再開させる。
【0034】
また、次の場合には自動曳網運転が停止される。
【0035】
例えば、手動または自動投揚網で、ワープの繰出し長さを変えた時や、ワープずれ量が初期設定値を越えた時である。
【0036】
また、ワープの張力が異常張力の大きさになった場合には、自動曳網がただちに解除される。例えば、トロール網4が海底の障害物等に引っかけた場合には張力センサ16L、16Rや圧力センサ18L、18Rがこれを検知する。そして、本実施形態においては、異常張力(設定荷重以上)が10秒以上、またはワープの繰出し線速20m/分となった時に警報が発せられ、船速を停止し、自動曳網解除押釦が自動的にまたは人手によりONとされる。その後、異常張力の原因を取り除くことにより、ワープ5L、5Rに異常な張力が作用したときにも迅速かつ適正に対処することができ、トロール網4の破損等を防止することができる。
【0037】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の曳網状態制御装置の1実施形態を示す斜視図
【図2】本発明の曳網状態制御装置に用いるウインチ制御器の1例を示す正面図
【図3】本発明のトロール漁法の1例を示すタイムチャート図
【符号の説明】
【0039】
1 漁船
3 トロールウインチ
4 トロール網
5L、5R ワープ
6L、6R ドラム
8L、8R 油圧ポンプ
11L、11R 電磁リリーフ弁
16L、16R 張力センサ
17L、17R 回転センサ
18L、18R 圧力センサ
19L、19R ドラム回転センサ
20 ウインチ制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロール網の左右のワープの繰出し巻上げを独立的に行なうトロールウインチと、前記各ワープの動作状態を検出するための各ワープの張力を検出する張力センサと、各ワープの繰出し線長および繰出し線速を検出する回転センサとが内蔵されているワープセンサと、このワープセンサによって検出された各ワープの動作状態情報に応じて自動曳網運転時に前記トロール網の曳網状態を所定の設定状態に制御するように前記トロールウインチに対して左右のワープの張力を許容範囲内に保持させるとともに左右のワープの長さおよび差を許容範囲内に保持させるように各ワープの繰出し巻上げを指令するウインチ制御器とを有することを特徴とする曳網状態制御装置。
【請求項2】
トロール網の左右のワープの繰出し巻上げを独立的に行なうトロールウインチと、前記各ワープの動作状態を検出するための各ワープの張力を検出する張力センサと、各ワープの繰出し線長および繰出し線速を検出する回転センサとが内蔵されているワープセンサと、このワープセンサによって検出された各ワープの動作状態情報に応じて自動曳網運転時に前記トロール網の曳網状態を設定状態に制御するように前記トロールウインチに対して左右のワープの張力を許容範囲内に保持させるとともに左右のワープの長さおよび差を許容範囲内に保持させるように各ワープの繰出し巻上げを指令するウインチ制御器とを有する曳網状態制御装置を用いて前記トロール網を曳網するトロール漁法において、自動曳網運転時に前記ウインチ制御器により前記トロールウインチに対して左右のワープの張力を許容範囲内に保持させるとともに左右のワープの長さおよび差を許容範囲内に保持させるように指令を行って前記トロール網の曳網状態を設定状態に保持させるようにトロール網を曳網することを特徴とするトロール漁法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−244384(P2007−244384A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70608(P2007−70608)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【分割の表示】特願平11−8360の分割
【原出願日】平成11年1月14日(1999.1.14)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】