説明

最適化タンパク質合成

本発明は、in vitro発現系またはin vivo発現系におけるタンパク質の最適化産生方法およびそれに好適な試薬に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、in vitro発現系またはin vivo発現系におけるタンパク質の最適化産生方法およびそれに好適な試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
Hannig, G. & Makrides, S.C. (1998) Tibtech Vol 16, pp 54-60には、E. coliにおける異種タンパク質発現を最適化するためのストラテジーが記載されている。これに関連する重要な因子は、特定のコドンの使用頻度が一定の役割を担う翻訳開始の効率である。たとえば、George et al. (1985) DNA Vol 4, pp 273-281には、E. coli遺伝子中で高頻度で利用される開始コドン後の領域のコドンを用いて異種遺伝子の発現を増大させうることが示されている。それは、主に、翻訳開始にとりわけ重要なmRNAの5'末端の構造エレメントである。Makrides (1996) Microbiol. Rev. Vol 60, pp 512-538には、T7ファージ遺伝子10リーダーに由来する配列およびE. coliのatpE遺伝子などのいくつかのmRNAの5'非翻訳領域に由来するUリッチ配列のようなさまざまな翻訳エンハンサー配列が記載されている。
【0003】
汎用的に使用可能な翻訳開始配列は、現在までのところ報告されていない。しかしながら、mRNAの5'末端における二次構造形成のポテンシャルを減少させるストラテジーは報告されている。とくに、リボソーム結合部位がアデニンおよびチミンのビルディングブロックで富化された。Stenstoem et al. (2001) Gene Vol. 263, pp 273-284には、強く発現されるE. coli遺伝子がとくに開始コドンに続く+2位のコドンに高含量のアデニンを有することが示されている。しかしながら、この規則には正の例外も負の例外も多数存在する。
【0004】
最後に、Pederson-Lane et al. (1997) Protein Expr. Purif. Vol. 10, pp 256-262には、開始コドンの直後における高GC含量が発現に対して負の効果を及ぼすこと、ならびに第3、第4、および第5コドンのプリン塩基をチミジン塩基に変換することにより、チミジル酸シンターゼ(thymidilate synthase)の発現が全タンパク質の25%まで増大されうることが示されている。
【0005】
30SリボソームサブユニットがメッセンジャーRNAに接近する能力は、これらの手段のいずれにおいても重要な役割を果たすと推定される。開始コドンの直前に位置するShineおよびDalgarnoにちなんで命名された配列に自由に接触することならびに開始コドン自体に接触することがとりわけ重要である。しかしながら、これらの配列エレメントが安定なRNA二次構造中に結合された場合、翻訳開始は非常に非効率的に進行する。Tessier et al. (1984) Nucl. Ac. Res. Vol 12, pp 7663-7675には、茎および輪に類似したこの形態の二次構造(いわゆる、ステムループまたはヘアピンループ)を標的化突然変異により破壊して翻訳の効率を顕著に増大させうることが体系的研究で示されている。翻訳に及ぼすこれらの二次構造の影響は、それらの熱力学パラメーターに基づいて計算することができる。たとえば、1.4kcal/molの安定化が起こると、発現は1/10に減少し(Gold (1988) Ann. Rev. Biochem., Vol 57, pp 199-233)、2.3kcal/molの安定化が起こると、リボソームの結合が1桁減少する(deSmit & van Duin (1994), J. Mol. Biol. Vol 244, pp 144-150)。
【0006】
Sprengart et al. (1996) EMBO Vol 15, pp 665-674には、リボソーム16S RNAとの相同性を有するT7遺伝子の開始コドンの直後の配列エレメントであるいわゆる「ダウンストリームボックス」が他の翻訳エンハンサーとして記載されている。2つの相同的塩基対の相互作用によりこのエレメントが30Sリボソームサブユニットの結合を増大させると推定される。しかしながら、このエレメントもまた、汎用的翻訳エンハンサーとして好適でない。
【0007】
公知の方法の欠点は、コドン使用頻度を最適化するためにまたはシャイン・ダルガルノ配列もしくは開始コドンに影響を及ぼすmRNAの望ましくない二次構造を回避するために、mRNAの5'領域(5'非翻訳領域または翻訳領域のいずれか)の最適化を行わなければならない点である。これには、通常、適切なプログラムを用いたRNA構造の労力のかかる解析が必要であり(たとえば、Mukund et al. (1999) Curr. Science Vol 76, pp 1486-1490、またはJaeger et al. (1990) Meth. Enzymol. Vol 183, pp 281-306)、さらにはいくつかのPCR増幅およびクローニングの工程が必要である。このようにして、たとえば、遺伝子バンクからの多数の遺伝子を発現させようとする場合、いずれの場合にも配列が正確にわかっていなければならない。このことが原因で、未知の遺伝子に対してこれらの方法を用いることができない。たとえ配列がわかったとしても、この方法は、汎用的に適用可能な方法よりもはるかに労力がかかるであろう。
【0008】
翻訳を促進する他の方法は、強く発現される遺伝子を汎用的翻訳エンハンサーとして使用し、そのC末端側に所望の遺伝子を配置して、融合タンパク質を形成させるようにする方法である。このストラテジーの成功例は、Butt et al. (1989) PNAS Vol 86, pp 2540-2544により行われたユビキチン遺伝子との融合である。
【0009】
しかしながら、この方法でさえも、任意の遺伝子の発現には容易に適用することができない。たとえば、融合タンパク質を用いる場合、より大きいサイズまたはより小さいサイズの融合体がタンパク質のN末端に結合され、融合パートナーのサイズおよび性質に起因して所望のタンパク質の機能が妨害される可能性がある。融合タンパク質またはその一部分に供すべく選択されるサイズが小さくなるほど、多くの場合、その翻訳促進効果は小さくなる。大きな融合タンパク質は、原核発現系において、次のようなさらなる欠点を呈する。すなわち、早期終止または内部開始により不完全な転写または翻訳の可能性が併行的に増大する。また、タンパク質分解の可能性が増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、先行技術の欠点が少なくとも部分的に回避されるタンパク質の最適化産生方法を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の内容は、タンパク質を産生する方法であって、以下の工程:
(a)該タンパク質をコードする核酸配列をその翻訳開始コドンの3'側に異種核酸配列が正しいリーディングフレームで挿入された形で提供する工程と、ここで、該核酸は、該翻訳開始コドンから3’側に6〜30ヌクレオチドの距離を隔てた位置にステムループ構造が形成されるように選択される、
(b)該タンパク質を発現するのに好適な発現系を提供する工程と、
(c)該タンパク質が合成されるような条件で(a)に記載の核酸配列を(b)に記載の発現系に導入する工程と、
を含む、上記方法である。
【0012】
汎用的に最適化された発現構築物を得るための本発明による解決策は、発現される遺伝子の開始コドンの直後に、好ましくは最大で201個の塩基対、とくに好ましくは最大で45個の塩基対を有する小さい異種DNA配列エレメントを挿入することを含み、このエレメントによりシャイン・ダルガルノ配列および開始コドンの領域における安定なステムループ構造の形成を実質的に防止して、翻訳開始の最適化およびタンパク質合成の最適化が行われるようにする。したがって、好ましくは最大で67個のアミノ酸、とくに好ましくは最大で15個のアミノ酸を有する小さいペプチドが所望のタンパク質に結合されているにすぎない融合タンパク質が形成される。
【0013】
異種DNA配列エレメントに課される重要な前提条件は、正しいリーディングフレームで挿入されること、すなわち、フレームが、発現される遺伝子とずれていないことである。異種DNA配列エレメントの他の重要な特性は、転写されたRNA中で開始コドンの後方に6〜30塩基、好ましくは12〜21塩基の距離を隔てた位置に安定なステムループ構造が形成可能であり、このステムループ構造中の塩基対形成が、挿入された配列により少なくとも部分的に引き起こされることである。このステムループ構造は、翻訳が開始された後、リボソームにより再び開放可能であり、翻訳の終止を生じないようなものでなければならない。発現構築物中に異種核酸配列を挿入することにより形成されるこのステムループ構造は、ほとんど任意の遺伝子中で同じように形成可能であるので、ループの前にある翻訳開始に重要な配列が遺伝子のコード配列と共に大きな二次構造を形成するのを防止することができる。このステムループ構造の直前かつ開始コドンの後の領域は、好ましくは二次構造を有していない配列であり、しかも5'非翻訳領域と共に二次構造を形成することもできない配列である。この領域では低GC含量を有する配列がとりわけ好ましい。なぜなら、そのような配列は、翻訳領域内の配列との安定な二次構造の形成を減少させるからである。
【0014】
異種核酸配列エレメントは、公知のクローニング法または/および増幅法を用いて、異種遺伝子を発現させるためのプラスミドベクターなどの標的配列に挿入することができる。たとえば、所望の遺伝子をクローニングするためのPCRプライマーにより、またはin vitroタンパク質発現用のDNA発現構築物の産生に使用しうるプライマーにより、この配列を構築することが可能性である。
【0015】
本発明に係る方法を用いれば、in vitro発現系でタンパク質を産生し場合により単離することができる。好適なin vitro発現系の例は、グラム陰性細菌(たとえばEscherichia coli)またはグラム陽性細菌(たとえばBacillus subtilis)の溶解物のような原核in vitro発現系、あるいは哺乳動物細胞(たとえば、ウサギ網状赤血球(rabbits, reticulocytes)、ヒト腫瘍細胞系、ハムスター細胞系)もしくは他の脊椎動物細胞(たとえば、サカナおよび両生動物の卵母細胞および卵)の溶解物、さらには昆虫細胞系、酵母細胞、藻類細胞の溶解物、または植物種子の抽出物のような真核in vitro発現系である。
【0016】
他の選択肢として、in vivo発現系でタンパク質を産生することができる。その場合、グラム陰性原核宿主細胞(とくにE. coli細胞)またはグラム陽性原核細胞(とくにBacillus subtilis細胞)などの原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または脊椎動物細胞(とくに、両生動物、サカナ、トリ、もしくは哺乳動物の細胞)などの真核宿主細胞、あるいは非ヒト真核宿主生物を発現系として使用することが可能性である。
【0017】
異種核酸配列は、分子生物学の標準的方法により、たとえば、制限切断もしくは/および連結のようなクローニング法により、組換え法により、または/ならびに核酸増幅法により、所望のタンパク質をコードする核酸中に導入することができる。核酸標的配列は、好適なベクター(たとえば、異種遺伝子を発現させるためのプラスミドベクター)またはin vitroタンパク質発現用の構築物に存在させうる。核酸増幅は、とくに好ましくは一段階以上で行われ、その際、好適なプライマーを選択することにより、所望のタンパク質をコードする核酸配列に異種核酸配列および場合により発現制御配列(たとえば、プロモーター、リボソーム結合部位、およびターミネーター)を結合させることができる。二段階PCRがとりわけ好ましく、その場合、第一段階では、異種核酸配列の少なくとも一部分が、所望のタンパク質をコードする核酸標的配列に結合され、第二段階では、発現制御配列が結合される。二段階PCRを行う好ましい実施形態は、実施例に示されている。
【0018】
翻訳開始コドンの3'側にステムループ構造を形成しうる異種核酸配列は、所望のタンパク質をコードする核酸配列中に、通常は第1 ATGコドンである翻訳開始コドンの3'側に正しいリーディングフレームで挿入される。好ましくは翻訳開始コドンから後方に6ヌクレオチドまでの距離を隔てた位置に、とくに好ましくは翻訳開始コドンの直後に挿入される。これに関連して、「正しいリーディングフレーム」で挿入されるとは、タンパク質をコードする核酸配列のリーディングフレームとのずれが存在しないことを意味する。これは、言い換えると、ヌクレオチド単位で測定される異種核酸配列の長さが3の倍数であることを意味する。その長さは、好ましくは6〜201ヌクレオチドの範囲内、とりわけ好ましくは12〜45ヌクレオチドの範囲内である。
【0019】
異種核酸配列は、翻訳コドンから3'側に好適な距離を隔てた位置にステムループ構造が形成されるように、タンパク質をコードする核酸配列中に挿入される。この距離(翻訳開始コドンの最後のヌクレオチドとステムの第1のヌクレオチドとの間の距離)は、有利には6〜30ヌクレオチド、とくに好ましくは12〜21ヌクレオチドである。異種核酸配列は、好ましくは、ステムループ構造を形成するために提供される配列の5'側にATリッチ領域(すなわち、>50%、とくに>60%のAT含量を有する領域)を含有する。
【0020】
ステムループ構造中のステムの長さは、好ましくは4〜12ヌクレオチド、とくに好ましくは5〜10ヌクレオチドの範囲内である。ステムループ構造のステムは、好ましくは、互いに完全に相補的な2つの領域を含有する。しかしながら、安定性を大きく低下させないかぎり、1つ以上の塩基のミスマッチが存在していてもよい。ステム中の塩基対は、AT塩基対およびGC塩基対ならびにそれらの組合せでありうる。GC塩基対の割合が>50%であることが好ましい。ループの長さは、好ましくは2〜8ヌクレオチドであるが、とりわけ重要であるわけではない。ステムループ構造の熱力学的安定性は、便宜上、シャイン・ダルガルノ配列を含む5'側の15ヌクレオチドと3'側の少なくとも5ヌクレオチドとよりなるATG開始コドンの領域における二次構造の形成を防止するのに十分な程度に高い。一方、ステムループ構造の熱力学的安定性は、mRNAに対するリボソームの処理を妨害するような大きさであってはならない。ステムループ構造の熱力学的安定性は、好ましくは-4〜-15kcal/molの範囲内である。
【0021】
所望のタンパク質を発現するために用いられる発現制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位(すなわち、原核発現系のシャイン・ダルガルノ配列または真核発現系のコザック配列)、エンハンサー、ターミネーター、ポリアデニル化配列などを含む。当業者であれば、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring HarborまたはAusubel et al. (1989) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York)などの分子生物学の標準的教科書からそのような発現制御配列がわかる。
【0022】
さらに、異種核酸配列は、精製ドメイン(たとえば、ポリHisドメイン、FLAGエピトープドメインなど)または/およびプロテイナーゼ認識ドメイン(たとえば、IgAプロテアーゼドメインもしくは第X因子ドメイン)をコードする領域をも含有しうる。精製ドメインを用いれば、in vitro翻訳調製物または宿主細胞または培養に用いられる培地などからの所望のタンパク質の単離を単純化することができる。異種ペプチド配列は、プロテアーゼ認識ドメイン内におけるプロテアーゼ切断により、所望のタンパク質から切断することができる。
【0023】
異種核酸配列または/および所望のタンパク質をコードする核酸配列は、有利には、さらに発現レベルを改善するために、それぞれの発現系に少なくとも部分的に適合化されたコドン使用頻度を有するように選択される。
【0024】
本発明の他の内容は、タンパク質を産生するための試薬であって、
(a)所望のタンパク質をコードする核酸配列に対して異種である核酸配列と、ここで、この異種である核酸配列は、該タンパク質をコードする核酸配列中に正しいリーディングフレームで挿入可能であり、かつその翻訳開始コドンから3’側に6〜30ヌクレオチドの距離を隔てた位置にステムループ構造を形成可能である、
(b)該タンパク質を産生するのに好適な発現系と、
を含む、上記試薬である。
【0025】
異種核酸配列は、完全な配列の形態またはいくつかの部分配列の形態で存在しうる。
【0026】
本発明に係る方法および試薬は、一般に用いられる発現ベクターと比較して成功率を増大させうるので、発現の困難な遺伝子のタンパク質を合成したり遺伝子バンクから出発してタンパク質を合成したりするために、とくに使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下の図および実施例により、本発明についてさらに説明する。
【実施例】
【0028】
実施例1: 二段階PCR
二段階PCRを用いることにより、発現される遺伝子を増幅し、かつT7プロモーター、T7遺伝子10リーダー(g10)、リボソーム結合部位(RBS)、およびT7ターミネーターのような適切な制御領域を該遺伝子に付与することができる。第一段階では、1対のプライマー(A,B)を利用して遺伝子を増幅する。これらのプライマーは、それぞれ、対応する遺伝子と15塩基の長さにわたり相補的であり、かつ第2のプライマー対(C,D)に相補的な15個の追加の塩基を含有する。第2のプライマー対は、重要な調節エレメントをすべて含有しており、したがって、これらは、第二段階のPCR増幅において遺伝子に結合される(図1参照)。Aプライマーは、遺伝子の5'領域に改変を導入すべく本方法で使用可能である。ヘアピンループ構築物の場合、このAプライマーを用いて、遺伝子配列の開始コドンの後方のさまざまな位置に異なる長さのヘアピンループステムを有するヘアピンループを挿入した。
【0029】

【0030】
反応条件
50μlのスケールでExpand High Fidelity Kit (Roche Applied Science)を用いて以下のスキームに従って慣例的にPCR反応を行った:
PCR 1:鋳型10ng/混合物;プライマーA 20pmol/混合物;プライマーB 20pmol/混合物
95℃5分間+20回(95℃1分間+55 1分間+72℃1分間)+4℃
PCR 2:2μl PCR 1;プライマーC 20pmol/混合物;プライマーD 20pmol/混合物
95℃5分間+30回(95℃1分間+50℃1分間+72℃1分間)+72℃10分間+4℃
アガロースゲル電気泳動法により両方のPCR反応をそれぞれチェックし、同時に、規定量のDNAを含有するDNA長さ標準を用いてLumi-Imager systemにより第二段階のPCRのPCR産物を定量した。得られたPCR産物をRTS発現混合物中の鋳型として直接使用した。
【0031】
実施例2: RTS in vitro発現系による発現
TS 100 HY kit (Roche Applied Science Co.)を用いてキット使用説明書に従って50μlのバッチで発現を行った。1つの反応混合物あたり0.25〜1μgのDNA量を使用した。一連の実験の結果を比較できるようにするために、常に、同一量の各鋳型を使用した。混合物を30℃で4時間インキュベートした。
【0032】
実施例3: ヘアピンループGFP構築物の発現
一例として、GFP(緑色蛍光タンパク質)を用いて、開始ATGの直後のmRNA中のヘアピンループ(ヘアピン形ループ)の効果を調べた。このために、さまざまなステム長さを有するヘアピンループ(HL)を形成するRNA配列を決定した。ヘアピンループのステムが長いほど、この構造は、エネルギー的に安定である。ヘアピンループの調製時、E. coli遺伝子中に高頻度で見いだされるコドンだけを使用するように注意した。さまざまなヘアピンループに対して決定された配列をmRNA二次構造分析にかけて、全構築物中におけるそれらの安定性を調べた。十分な安定性を有する配列に対するプライマーを調製し、これらを実施例1に記載の二段階PCRで使用した。
【0033】

【0034】
ヘアピンループGFP構築物のmRNA二次構造の概略図を図2に示す。
【0035】
RTS発現
実施例2に従ってRTSで発現を行った後、検証を行うべく、形成されたGFPの量を蛍光光度計により測定し、Lumi-Imagerを用いてCDP-Star検出および評価を行うことによりウェスタンブロットを定量的に分析した。結果を図3に示す。
【0036】
発現率がヘアピンループのステム長さによって異なることがはっきりとわかる。発現率は、5bpのステム長さまで比較的一定しており、その後、続いて減少する。8bpのステム長さでは、ほとんど発現を検出することができない。これらの検討により、以上で得られた結果が確証される。したがって、6bp超のステム長さ、もっと正確に言えば-7.8kcal/molの自由エネルギーを有するヘアピンループは、発現に著しい影響を及ぼす構造を表すものと言える。これについては、この構造が発現条件下で安定であるという事実、つまりその前方の開始ATGに自由に接近できないという事実により説明することができる。
【0037】
実施例4: 開始ATGからの最短距離の決定
次に、そのようなヘアピンループがどの程度の距離まで発現に対して効果を発揮するかを決定するために、8bpのステム長さ(エネルギー-11.8kcal/mol)のヘアピンループを開始ATGから3塩基ずつずらしてGFP配列中に導入した。このようにして得られたAプライマーの配列は、以下のとおりであった:
ステム長さ8bp、6塩基ずらしてGFP配列中に導入(配列番号10):

ステム長さ8bp、9塩基ずらしてGFP配列中に導入(配列番号11):

ステム長さ8bp、12塩基ずらしてGFP配列中に導入(配列番号12):

ステム長さ8bp、15塩基ずらしてGFP配列中に導入(配列番号13):

ステム長さ8bp、18塩基ずらしてGFP配列中に導入(配列番号14):

ステム長さ8bp、21塩基ずらしてGFP配列中に導入(配列番号15):

【0038】
また、先に記載したプライマーB、C、およびDを用いて、図4に示される二次構造を有するこれらのDNA構築物を二段階PCRにより合成し、PCR反応から得られたまま、発現調製物中の鋳型として使用した。DNA marker VIIによるアガロースゲル上における定量化処理およびLumi-Imagerによるこのゲルの評価を行うことにより、同一量の鋳型が使用されるようにした。ウェスタンブロットにより発現混合物を評価した。結果を図5に示す。
【0039】
発現からわかるように、開始ATGから9塩基超の距離を隔てた位置でmRNA翻訳が可能性である。依然としてヘアピンループの阻害作用が存在する。翻訳がほとんど阻害を受けずに進行するのは、距離が12塩基を超えてからである。したがって、これらの結果から、リボソームは開始ATGの後方に9〜11塩基の空間を必要とすると結論付けることができる。さらに、これらの結果から、開始ATGから12塩基以上離れたヘアピンループはmRNA二次構造に影響を及ぼすが、発現の開始には影響を及ぼさないと推定されよう。
【0040】
実施例5: 好ましくない二次構造を破壊するステムループ構造の導入
Rapid Translation System (Roche Applied Science)を用いた先の発現実験において、いくつかの遺伝子では、ごくわずかな発現が見られたかまたはまったく発現が見られないことさえあった。原因は、多くの場合、開始コドンまたはシャイン・ダルガルノ配列のいずれかが遺伝子配列と共に二次構造に関与して結合された形態で存在する好ましくないRNA二次構造にあると判断された。
【0041】
ヘアピンループを有しかつ開始コドンの後方に15塩基の距離を隔てた位置に7塩基のステム長さを有する異種核酸配列を、3種のこれらの遺伝子、すなわち、サバイビン、サイトメガロウイルスキャプシドタンパク質1049(1049)、およびクラスIIトランスアクチベーター(CIITA)の遺伝子に導入した。開始ATGを有していない野生型遺伝子(以下の*を参照されたい)をヘアピンループの直後に配置した。GCリッチ配列ほど安定な塩基対を形成することのできないATリッチ配列をヘアピンループの前に配置した。さらに、E. coliに対して低頻度のコドンを導入配列内で使用しないように注意した。
【0042】
一方では、安定な理想的ヘアピンループがすでに存在し、他方では、二次構造を形成する傾向を示さない配列が開始コドンの直後に続いているという事実に基づいて、小さいリボソームサブユニットとの開始複合体は、後続の遺伝子に依存せずにシャイン・ダルガルノ配列および開始ATGに自由に接近できるはずである。
【0043】
9種の異なるATリッチ配列をヘアピンループの前で使用し、野生型遺伝子*と比較した。同一のヘアピンループおよびATリッチ配列を有するGFP cycle 3タンパク質を、実施例1で述べた二段階PCRにより制御遺伝子として合成した。AおよびBのプライマーの配列を以下に示す。プライマー1中のプライマーCに対する相同領域に下線が付されている。ATリッチ配列は斜字体で示され、ヘアピンループは太字体で示され、そして野生型遺伝子配列は太字体で示されて下線が付されている。プライマーBでは、プライマーDに相同的な領域は下線が付され、そして野生型遺伝子に対して相同性を有する領域は太字体で示されている。実施例1と対比して、以下のプライマーをプライマーDとして使用した:

下線が付されている領域はプライマーCに相同的である。
【0044】
プライマーAの変異体:


下線部はプライマーDに相同的である。
【0045】
プライマーAの変異体:




PCRにより生成された突然変異体1および野生型に対する発現構築物の配列を以下に示す。野生型遺伝子配列は太字体で示されている。特異的抗体で検出できるように、Bプライマーを用いてヘキサヒスチジンタグ(下線部)を遺伝子の末端に挿入した。
【0046】






【0047】
図6〜9に示される発現からわかるように、ステムループ構造を用いて合成されたDNA鋳型は、いずれの場合においても、タンパク質合成を引き起こしたが、野生型遺伝子ではタンパク質合成が起こらなかった。ヘキサヒスチジン配列を有する突然変異体9の発現は、他のATリッチ配列のときほど良好ではないが、形成されたタンパク質をこの6ヒスチジン残基標識によりNi-NTAキレートカラムで精製しうるという利点を有する。いずれの場合においても十分に発現される遺伝子であるGFP遺伝子の場合でさえも、ステムループ構築物により収率が増大された。
【0048】
実施例6: ステムループ構造を除去することによるその機能の実証
ステムループ構造の効果と導入されたATリッチ配列の効果とを区別するために、ステムループ部を有していない2つの突然変異体のそれぞれの同等なPCRを生成して発現させ、ステムループ突然変異体と直接比較した。
【0049】
これらの実施例により、ステムループ構造の効果がはっきりとわかる。GFPの場合、ATリッチ配列は単独で発現を増大させるが、ステムループ配列は、発現が困難な遺伝子の場合、決定的な貢献をする。
【0050】
実施例7: ステムループ構造を改変することによるその機能の重要特性の決定
ステムループ構造内のGC塩基の効果を調べるために、その配列を、GCリッチステムループと同一の自由エネルギーを有するATリッチ配列と置き換えた。
【0051】
このために、サバイビン、CIITA、および1049の実施例について、配列CAG.ACA.AAT.AGA.TAT.TTG.TCT.GTA(G=-9.8kcal/molおよび9塩基対のステム長さ)を有する新しいステムループ(ループ')を、最初のステムループ配列CTG.CAC.GTG.ATC.GTG.CAG(G=-9.8kcal/molおよび7塩基対のステム長さ)の代わりに使用し、突然変異体1のATリッチ配列と組み合わせた。2つの構造を図12に示す。
【0052】
2つのステムループ変異体は、それぞれの野生型遺伝子と比較して著しく発現を増大させるかまたは初めて発現を可能にすることがわかる。GCリッチステムループ変異体のほうが、わずかに顕著な発現の増加を呈する。
【0053】
実施例8: in vivoタンパク質発現
サイトメガロウイルスキャプシドタンパク質1049の野生型遺伝子およびサバイビンの野生型遺伝子に対する発現構築物を有する実施例5から得られたPCR産物を、pBAD-TOPO (Invitrogen, Carlsbad, USA)ベクター中にクローン化した。サイトメガロウイルスキャプシドタンパク質1049の遺伝子およびサバイビンの遺伝子の突然変異体に対する発現構築物も、このベクター中にクローン化した。その後、プラスミドをB21 pLyS株(Stratagene, Amsterdam, Netherlands)にトランスフォームし、100μg/mlのカルベニシリンおよび34μg/mlのクロラムフェニコールを含有するLBプレート上に画線した。配列決定によりインサートを検査した。それぞれの3つのコロニーをin vivoタンパク質発現に供すべく単離し、37℃の4ml培地中で5時間増殖させた。細胞密度が108細胞/mlに到達した時、1mM IPTGを添加することにより発現を誘導し、さらに2時間インキュベートした。1mlの各細胞懸濁液を遠心分離し(14000rpmで3分間)、SDSサンプル緩衝液中、20分間、95℃、および1400rpmの条件で、thermoshakerにより沈殿を加熱した。10μlのアリコートをSDSゲルに適用し、実施例5に記載されているようにウェスタンブロットにより分析した。
【0054】
図14に示される発現から、試験した2つの遺伝子であるサイトメガロウイルスキャプシドタンパク質1049の遺伝子についてもサバイビンの遺伝子についてもステムループ構築物が野生型遺伝子よりもin vivoで実質的に高い発現を呈したことがわかる。このことから、in vitro発現の結果がin vivo発現にもあてはまりうることが実証される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、二段階PCRを行うのに必要な核酸配列エレメントの概略図を示している。
【図2−1】図2は、GFP発現構築物中への挿入に用いられる異種核酸配列中のさまざまな長さのステムループ構造の概略図を示している。
【図2−2】図2は、GFP発現構築物中への挿入に用いられる異種核酸配列中のさまざまな長さのステムループ構造の概略図を示している。
【図3】図3は、RTS発現系における図3のヘアピンループGFP構築物を用いたGFP発現の結果の評価を示している。1μlの各調製物(二重反復測定)をSDS-PAGEにかけて電気泳動により分離し、PVDF膜上にブロットした。DCP StarおよびLumi-Imagerにより検出を行った。
【図4−1】図4は、GFP発現構築物中に挿入するために用いられる異種核酸配列中のさまざまな位置におけるステムループ構造の概略図を示している。
【図4−2】図4は、GFP発現構築物中に挿入するために用いられる異種核酸配列中のさまざまな位置におけるステムループ構造の概略図を示している。
【図4−3】図4は、GFP発現構築物中に挿入するために用いられる異種核酸配列中のさまざまな位置におけるステムループ構造の概略図を示している。
【図5】図5は、図4に示される異種核酸配列を用いたGFPの発現を示している。図3の説明文に記載されているように実験を行って評価した。
【図6】図6は、ステムループ構造を有するさまざまな異種核酸配列を用いてCIITA遺伝子(野生型:レーン1;突然変異体レーン2〜10)の発現を行った結果の評価を示している。
【図7】図7は、ステムループ構造を有するさまざまな異種核酸配列を用いてCMVキャプシド(1049)遺伝子(野生型:レーン1;突然変異体レーン2〜10)の発現を行った結果の評価を示している。
【図8】図8は、ステムループ構造を有するさまざまな異種核酸配列を用いてサバイビン遺伝子(野生型:レーン10;突然変異体レーン1〜9)の発現を行った結果の評価を示している。
【図9】図9は、ステムループ構造を有するさまざまな異種核酸配列を用いてGFP遺伝子(野生型:レーン10;突然変異体レーン1〜9)の発現を行った結果の評価を示している。
【図10】図10は、ステムループ構造を有するおよび有していないさまざまな異種核酸配列を用いてGFP遺伝子および1049遺伝子の発現を行った結果の評価を示している。
【図11】図11は、ステムループ構造を有するおよび有していないさまざまな異種核酸配列を用いてCIITA遺伝子およびサバイビン遺伝子の発現を行った結果の評価を示している。
【図12】図12は、本発明に係る異種配列中の2つの異なるステムループ構造の概略図を示している。
【図13】図13は、図12に示されるステムループ構造を用いて得られた結果の評価を示している。
【図14】図14は、野生型遺伝子と比較してRNAステムループ構築物のin vivoタンパク質発現をウェスタンブロットで表現して示している。CMVキャプシドタンパク質1049のRNAステムループ突然変異体(レーン1〜3)およびCMVキャプシドタンパク質1049の野生型(レーン4〜6)の3つの独立したクローンの発現。サバイビンのRNAステムループ突然変異体(レーン7〜9)およびサバイビンの野生型(レーン10,11)の独立したクローンの発現。
【配列表】



















【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を産生する方法であって、以下の工程:
(a)該タンパク質をコードする核酸配列をその翻訳開始コドンの3'側に異種核酸配列が正しいリーディングフレームで挿入された形で提供する工程と、ここで、該異種核酸配列は、該翻訳開始コドンから3'側に6〜30ヌクレオチドの距離を隔てた位置にステムループ構造が形成されるように選択される、
(b)該タンパク質を発現するのに好適な発現系を提供する工程と、
(c)該タンパク質が合成されるような条件で(a)に記載の核酸配列を(b)に記載の発現系に導入する工程と、
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記タンパク質の単離をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
挿入された前記異種核酸配列が201ヌクレオチドまでの長さを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
挿入された前記異種核酸配列が45ヌクレオチドまでの長さを有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステムループ構造が前記開始コドンから3'側に12〜21ヌクレオチドの距離を隔てた位置に形成されることを特徴とする、請求項1〜4のうちの1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステムループ構造中のステムの長さが4〜12ヌクレオチドの範囲内にあることを特徴とする、請求項1〜5のうちの1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステムループ構造の5'側にある前記異種核酸配列の領域が、それ自体で二次構造を形成することはなく、かつ産生される前記タンパク質をコードする核酸配列の5'非翻訳領域と共に二次構造を形成することができないことを特徴とする、請求項1〜6のうちの1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステムループ構造の5'側かつATG開始コドンの3'側にある前記異種核酸配列の領域が、<50%のGC含量を有することを特徴とする、請求項1〜7のうちの1項に記載の方法。
【請求項9】
in vitro発現系が使用されることを特徴とする、請求項1〜8のうちの1項に記載の方法。
【請求項10】
原核in vitro発現系が使用されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記原核in vitro発現系がグラム陰性細菌(とくにEscherichia coli)の溶解物またはグラム陽性細菌(とくにBacillus subtilis)の溶解物を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
真核in vitro発現系が使用されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記真核in vitro発現系が、哺乳動物細胞(とくに、ウサギ網状赤血球(rabbits, reticulocytes)、ヒト腫瘍細胞系、ハムスター細胞系)もしくは他の脊椎動物細胞(とくに、サカナおよび両生動物の卵母細胞および卵)の溶解物、さらには昆虫細胞系、酵母細胞、藻類細胞の溶解物、または植物実生(plant seedlings)の抽出物を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
原核in vivo発現系が使用されることを特徴とする、請求項1〜8のうちの1項に記載の方法。
【請求項15】
原核宿主細胞が発現系として使用されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
グラム陰性原核宿主細胞(とくにE. coli細胞)またはグラム陽性原核宿主細胞(とくにBacillus subtilis細胞)が使用されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
真核宿主細胞が発現系として使用されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
酵母細胞、昆虫細胞、または脊椎動物細胞(とくに、両生動物、サカナ、トリ、もしくは哺乳動物の細胞)が使用されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
非ヒト真核宿主生物が発現系として使用されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記タンパク質をコードする核酸配列が、クローニング、組換え、または/および増幅により提供されることを特徴とする、請求項1〜19のうちの1項に記載の方法。
【請求項21】
前記提供が二段階PCRを含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
産生される前記タンパク質をコードする核酸配列または/および前記異種核酸配列が、それぞれの発現系に適合化されたコドン使用頻度を少なくとも部分的に有することを特徴とする、請求項1〜21のうちの1項に記載の方法。
【請求項23】
前記異種核酸配列が、精製ドメインをコードする領域または/およびプロテイナーゼ認識ドメインをコードする領域を含有することを特徴とする、請求項1〜22のうちの1項に記載の方法。
【請求項24】
タンパク質を産生するための試薬であって、
(a)該タンパク質をコードする核酸配列に対して異種である核酸配列と、ここで、この異種である核酸配列は、該タンパク質をコードする核酸配列中に正しいリーディングフレームで挿入可能であり、かつその翻訳開始コドンから3'側に6〜30ヌクレオチドの距離を隔てた位置にステムループ構造を形成可能である、
(b)該タンパク質を産生するのに好適な発現系と、
を含む、上記試薬。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を産生する方法であって、以下の工程:
(a)該タンパク質をコードする核酸配列をその翻訳開始コドンの3'側に異種核酸配列が正しいリーディングフレームで挿入された形で提供する工程と、ここで、該異種核酸配列は、該翻訳開始コドンから3'側に6〜30ヌクレオチドの距離を隔てた位置にステムループ構造が形成されるように選択される、
(b)該タンパク質を発現するのに好適な発現系を提供する工程と、
(c)ステムの長さが4〜12ヌクレオチドの範囲内にある該ステムループが形成されるような条件で(a)に記載の核酸配列を(b)に記載の発現系に導入する工程と、
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記タンパク質の単離をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
挿入された前記異種核酸配列が201ヌクレオチドまでの長さを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
挿入された前記異種核酸配列が45ヌクレオチドまでの長さを有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステムループ構造が前記開始コドンから3'側に12〜21ヌクレオチドの距離を隔てた位置に形成されることを特徴とする、請求項1〜4のうちの1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステムループ構造の5'側にある前記異種核酸配列の領域が、それ自体で二次構造を形成することはなく、かつ産生される前記タンパク質をコードする核酸配列の5'非翻訳領域と共に二次構造を形成することができないことを特徴とする、請求項1〜5のうちの1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステムループ構造の5'側かつATG開始コドンの3'側にある前記異種核酸配列の領域が、<50%のGC含量を有することを特徴とする、請求項1〜6のうちの1項に記載の方法。
【請求項8】
in vitro発現系が使用されることを特徴とする、請求項1〜7のうちの1項に記載の方法。
【請求項9】
原核in vitro発現系が使用されることを特徴とする、請求項1〜8のうちの1項に記載の方法。
【請求項10】
前記原核in vitro発現系がグラム陰性細菌(とくにEscherichia coli)の溶解物またはグラム陽性細菌(とくにBacillus subtilis)の溶解物を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
真核in vitro発現系が使用されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記真核in vitro発現系が、哺乳動物細胞(とくに、ウサギ網状赤血球(rabbits, reticulocytes)、ヒト腫瘍細胞系、ハムスター細胞系)もしくは他の脊椎動物細胞(とくに、サカナおよび両生動物の卵母細胞および卵)の溶解物、さらには昆虫細胞系、酵母細胞、藻類細胞の溶解物、または植物実生(plant seedlings)の抽出物を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
原核in vivo発現系が使用されることを特徴とする、請求項1〜7のうちの1項に記載の方法。
【請求項14】
原核宿主細胞が発現系として使用されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
グラム陰性原核宿主細胞(とくにE. coli細胞)またはグラム陽性原核宿主細胞(とくにBacillus subtilis細胞)が使用されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
真核宿主細胞が発現系として使用されることを特徴とする、請求項1〜7のうちの1項に記載の方法。
【請求項17】
酵母細胞、昆虫細胞、または脊椎動物細胞(とくに、両生動物、サカナ、トリ、もしくは哺乳動物の細胞)が使用されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
非ヒト真核宿主生物が発現系として使用されることを特徴とする、請求項1〜7のうちの1項に記載の方法。
【請求項19】
前記タンパク質をコードする核酸配列が、クローニング、組換え、または/および増幅により提供されることを特徴とする、請求項1〜18のうちの1項に記載の方法。
【請求項20】
前記提供が二段階PCRを含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
産生される前記タンパク質をコードする核酸配列または/および前記異種核酸配列が、それぞれの発現系に適合化されたコドン使用頻度を少なくとも部分的に有することを特徴とする、請求項1〜20のうちの1項に記載の方法。
【請求項22】
前記異種核酸配列が、精製ドメインをコードする領域または/およびプロテイナーゼ認識ドメインをコードする領域を含有することを特徴とする、請求項1〜21のうちの1項に記載の方法。
【請求項23】
タンパク質を産生するための試薬であって、
(a)該タンパク質をコードする核酸配列に対して異種である核酸配列と、ここで、この異種である核酸配列は、該タンパク質をコードする核酸配列中に正しいリーディングフレームで挿入可能であり、かつその翻訳開始コドンから3'側に6〜30ヌクレオチドの距離を隔てた位置にステムループ構造を形成可能である、
(b)該タンパク質を産生するのに好適な発現系と、
を含む、上記試薬。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2006−508672(P2006−508672A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558051(P2004−558051)
【出願日】平成15年12月9日(2003.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013964
【国際公開番号】WO2004/053053
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】