有価紙葉引抜防止装置
【課題】有価紙葉引抜防止装置の内部に収容される有価紙葉の引抜を確実に阻止する。
【解決手段】湾曲通路19の前方で搬送通路3に沿って配置される搬送装置2の前送ユニット31は、搬送通路3を通る有価紙葉を湾曲通路19に向って移動しかつ湾曲通路19を乗り越えさせ、糸又はテープ等の引抜手段が接続された有価紙葉が湾曲通路19を通過した後に、光学検出装置の発光素子は、山形部材の頂部を形成する湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線又は仮想接線の延長線を含む投影断面で光ビームを搬送通路3の幅方向に照射する。
【解決手段】湾曲通路19の前方で搬送通路3に沿って配置される搬送装置2の前送ユニット31は、搬送通路3を通る有価紙葉を湾曲通路19に向って移動しかつ湾曲通路19を乗り越えさせ、糸又はテープ等の引抜手段が接続された有価紙葉が湾曲通路19を通過した後に、光学検出装置の発光素子は、山形部材の頂部を形成する湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線又は仮想接線の延長線を含む投影断面で光ビームを搬送通路3の幅方向に照射する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
紙幣識別装置、クーポン受収装置等の有価紙葉取扱装置での有価紙葉の引き抜きを防止する有価紙葉引抜防止装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に示されるように、紙幣鑑別機内に収納される紙幣を不正に引抜く糸を検出する装置は、公知である。この糸検出装置は、紙幣を搬送する搬送通路の片側に配置した光源からプリズムを介して搬送通路の幅方向に光ビーム(6)を照射し、プリズムの反対側に配置された反射部材で光ビーム(6)を反射させて、プリズムを介して反射光を受光装置で受光する構造を備える。この装置では、搬送通路に糸が存在すると、受光装置で受光する光量が変化するため、糸を検出することができる。
【0003】
下記特許文献2は、紙幣鑑別機内に形成される紙幣通路の下方に発光ダイオードと受光トランジスタとを互いに離間してかつ背中合わせに配置して、発光ダイオードから照射される光を第1のプリズムにより紙幣通路内に横方向に照射し、紙幣通路を横断して進行する光を第2のプリズムにより受光した後に、第2のプリズムを通じて受光トランジスタに光を導き、受光トランジスタの出力により紙幣通路内の異物を検出する紙幣鑑別機を示す。
【0004】
引用文献3は、紙幣通路の片側に配置される光源から第1の偏光器を通じて紙幣通路内に幅方向に照射し、紙幣通路を通過する光を紙幣通路の反対側に配置される第2の偏光器を通じて光検出器で受光する糸検出装置を示す。この糸検出装置は、方向が変化する蛇行する紙幣通路を備え、詐欺行為中にセンサ領域内の紙幣通路の中央部分に確実に糸を配置して、検出装置から良好な信号を得ることができる。引用文献4は、引用文献3の対応米国特許である。
【0005】
下記特許文献5に示されるように、通路を通る貨幣に接続した糸を引張して、不正に貨幣を引き戻す糸を検出する糸検知センサは公知である。この糸検知センサは、赤外線発光器と、赤外線発光器から照射されて糸上で反射した光を検出する赤外線受光器とを備えている。
【0006】
下記特許文献6は、紙幣鑑別機の検出器を構成する基板の両側部にそれぞれ取り付けた発光ダイオードと受光器とを紙幣通路の両側に配置し、発光ダイオードから照射される光の量を受光器により受光することにより紙幣通路内の異物を検出する紙幣鑑別機を示す。
【0007】
特許文献7は、配線基板と、配線基板に固定されかつ搬送通路の一方の側に配置された発光ダイオード装置と、搬送通路の他方の側に配置されて発光ダイオード装置の光を受光しかつ搬送通路に向かって反射する光反射部材と、配線基板に固定されて光反射部材上で反射された光を受光して、受光する光の量に対応するレベルの電気信号を発生する光検出装置とを備え、紙幣鑑別機内に形成される搬送通路を通じて搬送される搬送通路内の紙幣又は異物を検出する紙幣鑑別機用光学式検出装置を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,441,891号公報 図3
【特許文献2】米国特許第5,988,345号公報 図7a
【特許文献3】特開2008−217023 図1
【特許文献4】米国特許第6,648,221号公報 図1
【特許文献5】米国特許第5,383,546号 図1
【特許文献6】米国特許第5,806,649号 図2
【特許文献7】特表2008−535236号公報 図10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の装置では、紙幣を引抜く糸が搬送通路の壁面に密着すると、光学検出装置で受光する光量が糸のない状態に対し殆ど変化しないため、確実に糸の存在を検出できない難点があった。
本発明は、受収した真正な有価紙葉の引抜を確実に阻止できる有価紙葉引抜防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の有価紙葉引抜防止装置は、有価紙葉を案内する搬送通路(3)の一部となる湾曲通路(19)を形成する通路形成体(1)と、搬送通路(3)の入口(11)と出口(12)との間で湾曲通路(19)を含む搬送通路(3)に沿って有価紙葉を搬送する搬送装置(2)と、搬送通路(3)の幅方向に光ビーム(6)を照射する発光素子(62)及び発光素子(62)から照射される光ビーム(6)を受光して光ビーム(6)の光量に対応する電気信号を発生する受光素子(63)を有する光学検出装置(7)とを備える。通路形成体(1)は、平坦な又は湾曲する前基面(42)及び平坦な又は湾曲する後基面(43)を形成する基板(13)と、基板(13)に固定されて、搬送通路(3)に沿う有価紙葉の搬送方向を変更する湾曲通路(19)を形成する山形部材(4)と、基板(13)の前基面(42)及び後基面(43)から一定間隔離間して配置されて搬送通路(3)を形成すると共に、山形部材(4)から一定間隔離間して配置されて湾曲通路(19)を形成する窪み(26)を有する蓋板(14)とを備える。山形部材(4)は、搬送通路(3)の幅方向にかつ全幅にわたり延伸しかつ少なくとも1つの頂部(17,28,57)を備え、搬送装置(2)は、湾曲通路(19)の前方で搬送通路(3)に沿って配置されて搬送通路(3)を通る有価紙葉を湾曲通路(19)に向って移動しかつ湾曲通路(19)を乗り越えさせる前送ユニット(31)を備える。糸又はテープ等の引抜手段(46)が接続された有価紙葉が湾曲通路(19)を通過した後に、光学検出装置(7)の発光素子(62)は、搬送通路(3)の幅方向に光ビーム(6)を照射し、光ビーム(6)の投影断面(29,59,60)は、山形部材(4)の頂部(17,28,57)を形成する湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線(27)又は仮想接線(27)の延長線を含むので、光ビーム(6)の投射断面内に引抜手段(46)の陰影を確実に投影して、有価紙葉に接続される引抜手段(46)の有無を光学的に確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
光学的に確実に引抜手段を検出できるので、有価紙葉引抜装置による引抜手段検出性能が向上すると同時に、防盗性を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による有価紙葉引抜防止装置を取り付けた紙幣鑑別装置を示す図3のI−I線に沿う断面図
【図2】図1の紙幣鑑別装置の搬送通路を示す平面図
【図3】図1のIII−III線に沿う紙幣鑑別装置の断面図
【図4】図1の紙幣鑑別装置の他の縦方向断面図
【図5】本発明の第1の実施の形態による有価紙葉引抜防止装置の湾曲通路を示す断面図
【図6】図5の湾曲通路に照射される光ビームの投射断面を示す断面図
【図7】図5の湾曲通路に形成される仮想接線により分割される第1の間隙と第2の間隙を示す断面図
【図8】糸が延伸する図6の湾曲通路を示す断面図
【図9】本発明の第2の他の実施の形態による有価紙葉引抜防止装置の湾曲通路を示す断面図
【図10】湾曲通路の幅方向に光ビームを照射する状態を示す断面図
【図11】糸が延伸する図9の湾曲通路を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
紙幣鑑別装置に適用した本発明による有価紙葉引抜防止装置の実施の形態を図1〜図11について以下説明する。これらの図面では、同一の部分には、同一の符号を付する。
【0014】
図1〜図5に示すように、本発明の実施の形態による有価紙葉引抜防止装置は、紙幣鑑別装置(50)内に取り付けられる。紙幣鑑別装置(50)は、移動する有価紙葉である紙幣を案内する搬送通路(3)の一部となる湾曲通路(19)を形成する通路形成体(1)と、搬送通路(3)の入口(11)と出口(12)との間で湾曲通路(19)を含む搬送通路(3)に沿って紙幣を搬送する搬送装置(2)と、図2、図10及び図12に示すように、搬送通路(3)の幅方向に光ビーム(光束又は光線)(6)を照射しかつ受光して、受光する光ビーム(6)の光量に対応する電気信号を発生する光学検出装置(7)とを備える。入口(11)に挿入される有価紙葉を検出して、検出信号を発生する図示しない入口センサが入口(11)に隣接して配置され、入口センサの検出信号を受信する図示しない制御装置は、搬送装置(2)の前送ユニット(31)を駆動する。また、搬送通路(3)に沿って前送ユニット(31)の前方に配置される鑑別センサ(5)は、紙幣の光学パターン及び糸(46)の陰影を検出して制御装置に検出信号を送出するイメージセンサを備える。
【0015】
図6に示すように、通路形成体(1)は、前基面(42)及び後基面(43)を形成する基板(13)と、基板(13)に固定されて、搬送通路(3)に沿う有価紙葉の搬送方向を変更する湾曲通路(19)を形成する山形部材(4)と、基板(13)の前基面(42)及び後基面(43)から一定間隔離間して配置されて搬送通路(3)を形成すると共に、山形部材(4)から一定間隔離間して配置されて湾曲通路(19)を形成する窪み(26)を有する蓋板(14)とを備える。湾曲通路(19)は、山形部材(4)と蓋板(14)の窪み(26)とにより形成され、山形部材(4)は、前基斜面(40)、前基斜面(40)に接続される単一又は複数の頂部(17,28)及び後基斜面(41)を形成し、窪み(26)は、前基斜面(40)に対向する前蓋斜面(50)、前蓋斜面(50)に接続される湾曲窪み面又は平坦窪み面及び後基斜面(41)に対向する後蓋斜面(51)を形成する。山形部材(4)の前基斜面(40)に円滑に連絡して、紙幣の搬送を案内する平坦な前基面(42)が設けられ、山形部材(4)の後基斜面(41)に円滑に連絡して、紙幣の搬送を案内する後基面(43)が設けられる。前基面(42)と後基面(43)は、それぞれ湾曲する断面形状を備えてもよい。
【0016】
図6に示す例では、山形部材(4)は、基板(13)の凹部(13a)に嵌合され、固定されるが、基板(13)と一体に山形部材(4)を形成することもできる。基板(13)、山形部材(4)及び蓋板(14)は、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン、アクリル樹脂若しくはこれらのコンパウンド等の透明、半透明又は不透明な樹脂材料により形成されるが、金属材料により山形部材(4)を形成することもできる。
【0017】
山形部材(4)は、図1及び図6に示す紙幣の搬送方向(D)に対して横に、即ち、図2に示すように、搬送方向(D)に対してほぼ直角又は搬送通路(3)の幅方向にかつ全幅にわたり延伸する第1の隆起部(15)と、紙幣の搬送方向に第1の隆起部(15)から離間して、第1の隆起部(15)に並行にかつ搬送通路(3)の全幅にわたり延伸する第2の隆起部(25)と、第1の隆起部(15)と第2の隆起部(25)との間に形成される谷部(16)とを備える。第1の隆起部(15)は、基板(13)から最大距離で突出する頂部(17)を備え、谷部(16)は、山形部材(4)のうち基板(13)から最小距離で窪む底部(18)を備え、第2の隆起部(25)は、基板(13)の外側に突出する頂部(28)を備える。2つの頂部(17)と(28)の高さは、同一でよいが、必ずしも同一である必要はなく、頂部(17)と(28)との間に光ビーム(6)の所望の大きさの投影断面が谷部(16)と蓋板(14)との間に形成される高さであれば、頂部(17)と(28)とは、異なる高さでもよい。
【0018】
本明細書では、「頂部(17)」は、基板(13)の表面又はこの表面を延長した仮想表面から直角方向に最も遠い部位をいい、「底部(18)」は、基板(13)の表面又はこの表面を延長した仮想表面から直角方向に谷部(16)の最も近い部位をいう。また、「有価紙葉」は、紙幣、クーポン、株券、銀行券、代用紙幣、臨時紙幣(スクリプト)、搭乗券、乗車券等の経済的価値を有する全ての書面又はカードをいう。「引抜手段」は、糸、テープ、針金、平坦で細長い板等を含み不正に有価紙葉を引抜くために使用される手段をいう。
【0019】
第1の隆起部(15)と、谷部(16)と、第2の隆起部(25)とを備える山形部材(4)は、図3に示すように、搬送通路(3)の幅方向に延伸しかつ搬送ベルト(30)を跨越して、基板(13)に固定される。即ち、搬送ベルト(30)が通過する開口部(44)が山形部材(4)の下方に形成される。図5に示すように、搬送装置(2)は、紙幣の搬送方向で第1の隆起部(15)の前方と後方とに延伸する搬送ベルト(30)と、搬送ベルト(30)に当接する前送ユニット(31)及び中送ユニット(32)を備える。前送ユニット(31)は、湾曲通路(19)の前方で搬送通路(3)に沿って配置されて搬送通路(3)を通る有価紙葉を湾曲通路(19)に向って移動しかつ湾曲通路(19)を乗り越えさせ、湾曲通路(19)の後方に搬送通路(3)に沿って配置される中送ユニット(32)は、湾曲通路(19)を通過した有価紙葉を把持しかつ更に出口(12)に向って奥に搬送する。前送ユニット(31)と中送ユニット(32)との間隔は、有価紙葉の長さより短い。前送ユニット(31)と中送ユニット(32)は、それぞれ搬送ベルト、搬送ローラ又は搬送ベルトと搬送ローラとの組合せにより構成されるが、図示の例では、搬送ベルト(30)とピンチローラ(33,34)との組合せとして構成される。山形部材(4)の底部(18)は、搬送ベルト(30)と同一のレベル又は搬送ベルト(30)より基板(13)から外側に離間して形成される。1対のピンチローラ(33,34)は、紙幣の長さより短い間隔で配置されるため、搬送ベルト(30)により搬送通路(3)を移動する紙幣の一端が、ピンチローラ(33,34)の一方を通過した後に、両端が両ピンチローラ(33,34)に把持された後に、ピンチローラ(33,34)を通過する。また、搬送通路(3)を形成する窪み(26)が第1の隆起部(15)と第2の隆起部(25)に対向して蓋板(14)に設けられ、図示の例では、窪み(26)は、搬送通路(3)の高さ分又はそれ以上の距離で第1の隆起部(15)及び第2の隆起部(25)より上方に湾曲する。本発明の別の実施の形態では、基板(13)と蓋板(14)とを逆に配置して、搬送通路(3)を下方に湾曲させてもよい。図7に示す実施の形態では、第1の隆起部(15)の頂部(17)と第2の隆起部(25)の頂部(28)とを接続する仮想接線(27)と谷部(18)との間及び仮想接線(27)と蓋板(14)との間に第1の間隙(21)と第2の間隙(22)とがそれぞれ形成される。
【0020】
図3に示すように、光学検出装置(7)の光送受信装置(8)は、搬送通路(3)の一方側に配置された発光素子(62)と、搬送通路(3)の幅方向反対側に配置された反射部材としてのプリズム(9)と、プリズム(9)の上方に配置される受光素子(63)とを備える。受光素子(63)は、発光素子(62)から照射され、反射部材(9)により反射される光ビーム(6)を受光する。
【0021】
紙幣鑑別装置(50)を使用する際に、入口(11)から紙幣を挿入すると、図示しない入口センサが挿入される紙幣を検出して、搬送装置(2)が駆動されるため、前送ユニット(31)の搬送ベルト(30)が正転駆動され、搬送ベルト(30)とピンチローラ(33)により搬送通路(3)を通り、紙幣鑑別装置(50)の内部に紙幣が搬送される。このとき、紙幣は、鑑別センサ(5)を通過して、紙幣の光学的特性又は磁気的特性が電気信号に変換されて、制御装置内に予め記憶される紙幣の光学的特性又は磁気的特性と変換された電気信号とが一致して、制御装置が紙幣を真正と鑑別すると、搬送ベルト(30)が更に正転され、紙幣の先端は、前送ユニット(31)のピンチローラ(33)に把持されて、山形部材(4)に向って搬送され、前基斜面(40)、第1の隆起部(15)、谷部(16)、第2の隆起部(25)及び後基斜面(41)を通過する。このとき、窪み(26)の前蓋斜面(50)と、前蓋斜面(50)に接続される湾曲する又は平坦な窪み面(52)と、窪み面(52)に接続される後蓋斜面(51)により、移動する紙幣の先端は、搬送通路(3)内に偏向され円滑に案内される。その後、紙幣は、中送ユニット(32)のピンチローラ(34)を通り出口(12)から排出される。制御装置内に予め記憶される紙幣の光学的特性又は磁気的特性と変換された電気信号とが一致しないとき、紙幣は、真正と判断されず、搬送ベルト(30)が逆転され、紙幣は、再び山形部材(4)を通過して、入口(11)に返却される。
【0022】
図8に示すように、真正と鑑別されて出口から排出される紙幣に引抜手段として、例えば、糸(46)が接続され、入口(11)方向に引張される糸(46)は、搬送通路(3)の前基面(42)に対向する窪み(26)の前縁(26a)と、頂部(17,28)と、後基面(43)に対向する窪み(26)の後縁(26b)とに接触して張架される。このとき、頂部(17) (28)間で第1の間隙(21)と第2の間隙(22)とを跨越する投影断面(29)の光ビーム(6)を光学検出装置(7)の発光素子(62)から照射されると、搬送通路(3)の幅方向に投影断面(29)内に糸(46)の陰影を投射して、光学検出装置(7)の受光素子(63)により、糸(46)の陰影を含む投影断面(29)の光ビーム(6)を確実に受光することができる。光学検出装置(7)の発光素子(63)は、搬送通路(3)の幅方向に光ビーム(6)を照射し、受光素子(63)は、搬送通路(3)を幅方向に通過した糸(46)の存在の有無情報を含む光ビーム(6)を受光して、受光する光ビーム(6)の光量に対応する電気信号を発生する。このように、糸(46)の陰影を含む光ビーム(6)を受光素子(63)が検出するので、糸(46)の存在の有無を確実に検出することができる。従って、本実施の形態では、頂部(17)(28)の少なくとも一方又は両方が窪み(26)の前縁(26a)及び後縁(26b)の少なくとも一方又は両方より搬送通路(3)の高さ方向に突出する形状に山形部材(4)と窪み(26)とを形成する必要がある。図8に示す実施の形態では、2つの頂部(17,28)の湾曲表面の共通な接線方向、即ち、基板(13)の表面とほぼ並行な搬送通路(3)の長さ方向に糸(46)が張架されるから、頂部(17,28)の仮想共通接線(27)を含む投影断面(29)で光ビーム(6)を照射することが必要である。また、山形部材(4)の頂部(17,28)に接触する糸(46)は、山形部材(4)の湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線(27)又は仮想接線(27)の延長線に沿って入口(11)側又は出口(12)側に延伸し、頂部(17,28)から離間する糸(46)は、基板(13)にも蓋板(14)にも接触しないから、第1の間隙(21)と第2の間隙(22)とを跨越(こえつ)する投影断面(29)で光ビーム(6)を光学検出装置(7)の発光素子(62)から搬送通路(3)の幅方向に照射し、照射される光ビーム(6)を受光素子(63)により受光して、受光素子(63)に電気的に接続される制御装置により、受光する光量に基づいて紙幣に接続される糸(46)を確実に検出することができる。この場合に、鑑別センサ(5)のイメージセンサの検出出力と、光学検出装置(7)との検出出力とから有価紙葉に接続される糸(46)の有無を判断することもできる。
【0023】
本発明は、図1〜図8に示す実施の形態に限定されず、異なる種々の変形実施の形態で実施することができる。
【0024】
例えば、図9及び図10に示すように、湾曲する又は平坦な単一の頂部(57)と、頂部(57)から滑らかに前基面(42)及び後基面(43)に向って前方に傾斜する前基斜面(40)及び後方に傾斜する後基斜面(41)とにより形成される隆起部(55)を有する山形部材(4)が基板(13)に設けられる。光学検出装置(7)の発光素子(62)から照射される光ビーム(6)の投影断面(59,60)は、前基斜面(40)、後基斜面(41)、前基面(42)及び後基面(43)に沿う所望の単数位置又は複数位置に設定され、照射される光ビーム(6)は、受光素子(63)により受光される。光学検出装置(7)は、発光素子(62)及び受光素子(63)を有する光送受信装置(8)と、光送受信装置(8)に対して搬送通路(3)の幅方向反対側に配置される反射部材となるプリズム(9)とを備える。
【0025】
光送受信装置(8)は、所定の間隔で互いに離間してケース(61)内に配置される発光素子(62)と、受光素子(63)とを備え、プリズム(9)は、光送受信装置(8)の発光素子(62)から搬送通路(3)の幅方向に照射される光ビーム(6a)をほぼ直角に、即ち搬送通路(3)とほぼ並行な方向に反射する第1の反射面(9a)と、発光素子(62)から照射される光ビーム(6a)とほぼ並行な方向に、即ち第1の反射面(9a)で反射された光ビーム(6b)をほぼ直角に反射して、受光素子(63)に向う光ビーム(6c)を形成する第2の反射面(9b)とを備える。発光素子(62)から照射される光ビーム(6a)と受光素子(63)が受光する光ビーム(6c)は、不正引抜用の糸(46)の陰影を投射する投影断面(59,60)を有する位置で搬送通路(3)の幅方向に照射される。図11に示す実施の形態では、糸(46)は、山形部材(4)の湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線(27)又は仮想接線(27)の延長線上に配置され、糸(46)と仮想接線(27)の位置は、一致する。図示の例では、光ビーム(6)の投影断面(59,60)は、円形光線断面であるが、特許文献7に示されるように、線状若しくは線形光線断面でもよく、必要に応じて、楕円光線断面又は矩形光線断面等種々の光線断面を採用することができる。
【0026】
いずれの場合でも、搬送通路(3)の長さ方向に張架される糸(46)を光ビーム(6)の投影断面(59,60)内に確実に捕捉するため、搬送通路(3)の高さの半分又はそれ以上の高さの頂部(57)を隆起部(55)に設ける必要がある。勿論、搬送通路(3)の高さ未満又はこれ以上の高さで隆起部(55)の頂部(57)を形成してもよい。また、搬送通路(3)の高さと同一又はこれ以上の高さで光ビーム(6)の投影断面(59,60)を形成する必要がある。
【0027】
例えば、本発明の実施の形態では、隆起部(55)の頂部(57)に接して又は頂部(57)を形成する湾曲表面の接線方向に糸(46)が搬送通路(3)の長さ方向に張架されるから、頂部(57)の湾曲表面に接する仮想接線(27)を含む投影断面(59,60)で光ビーム(6)を照射することが必要である。図9及び図10に示す実施の形態では、図11及び図12に示すように、搬送通路(3)の長さ方向に張架される糸(46)は、頂部(57)の接線方向で基板(13)の表面とほぼ並行に延伸するか又は頂部(57)のやや前方又は後方の湾曲表面に接する仮想接線(27)を範囲内含む投影断面(59,60)で光ビーム(6)を照射することができる。搬送通路(3)の長さ方向に張架される糸(46)を光ビーム(6)の投影断面(59,60)内に確実に捕捉できれば、搬送通路(3)の高さより小さい高さの投影断面(59,60)で光ビーム(6)を照射することができる。これにより、第1の間隙(21)と第2の間隙(22)とを跨越する投影断面(59,60)で光ビーム(6)を光学検出装置(7)から搬送通路(3)の幅方向に照射して、有価紙葉に接続された糸(46)を検出することができる。図3に示す発光素子(62)、受光素子(63)及びプリズム(9)による単一投影断面(29)の構造を図9に示す実施の形態にも適用することができる。また、鑑別センサ(5)のイメージセンサの検出出力と、光学検出装置(7)との検出出力とから有価紙葉に接続される糸(46)の有無を判断することもできる。
【0028】
例えば、図9及び図10に示す実施の形態では、搬送通路(3)の両側に光学検出装置(7)の発光素子(62)と受光素子(63)を搬送通路(3)の幅方向に分離して、プリズム(9)を省略し、光ビーム(6a)又は(6c)のみで糸(46)を検出することもできる。即ち、隆起部(55)の前方に配置される前基斜面(40)及び前基面(42)に沿う搬送通路(3)の高さの中間位置に整合する中心を有する第1の投影断面(59)の光ビーム(6)を発光素子(62)から照射して、受光素子(63)により光ビーム(6a)を受光することができる。光ビーム(6a)に加えて又は光ビーム(6a)を省略して、前記と同様に、隆起部(55)の後方に配置される後基斜面(41)及び後基面(43)に沿う搬送通路(3)の高さの中間位置に整合する中心を有する第2の投影断面(60)の光ビーム(6c)を発光素子(62)から照射して、受光素子(63)により光ビーム(6c)を受光することができる。このように、光学的に確実に糸(46)を検出できるので、紙幣引抜装置による引抜手段検出性能が向上すると同時に、防盗性を強化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、紙幣鑑別機、紙幣識別装置、クーポン受収装置等の紙幣取扱装置から有価紙葉を不正に引抜く装置として広範囲に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
(1)・・通路形成体、 (2)・・搬送装置、 (3)・・搬送通路、 (4)・・山形部材、 (5)・・鑑別センサ、 (6)・・光ビーム、 (7)・・光学検出装置、 (8)・・光送受信装置、 (9)・・反射部材、 (9a)・・第1の反射面、 (9b)・・第2の反射面、 (11)・・入口、 (12)・・出口、 (13)・・基板、 (14)・・蓋板、 (15)・・第1の隆起部、 (16)・・谷部、 (17)・・頂部、 (18)・・底部、 (19)・・湾曲通路、 (21)・・第1の間隙、 (22)・・第2の間隙、 (23)・・前傾斜面、 (24)・・後傾斜面、 (25)・・第2の隆起部、 (26)・・窪み、 (26a)・・前縁、 (26b)・・後縁、 (27)・・仮想接線、 (28)・・頂部、 (29)・・投影断面、 (30)・・搬送ベルト、 (31)・・前送ユニット、 (32)・・中送ユニット、 (33,34)・・ピンチローラ、 (36)・・第2の傾斜面、 (40)・・前基斜面、 (41)・・後基斜面、 (42)・・前基面、 (43)・・後基面、 (44,45)・・中間傾斜面、 (46)・・糸、 (50)・・紙幣鑑別装置、 (55)・・隆起部、 (57)・・頂部、 (59)・・投影断面、 (60)・・投影断面、 (62)・・発光素子、 (63)・・受光素子、
【技術分野】
【0001】
紙幣識別装置、クーポン受収装置等の有価紙葉取扱装置での有価紙葉の引き抜きを防止する有価紙葉引抜防止装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に示されるように、紙幣鑑別機内に収納される紙幣を不正に引抜く糸を検出する装置は、公知である。この糸検出装置は、紙幣を搬送する搬送通路の片側に配置した光源からプリズムを介して搬送通路の幅方向に光ビーム(6)を照射し、プリズムの反対側に配置された反射部材で光ビーム(6)を反射させて、プリズムを介して反射光を受光装置で受光する構造を備える。この装置では、搬送通路に糸が存在すると、受光装置で受光する光量が変化するため、糸を検出することができる。
【0003】
下記特許文献2は、紙幣鑑別機内に形成される紙幣通路の下方に発光ダイオードと受光トランジスタとを互いに離間してかつ背中合わせに配置して、発光ダイオードから照射される光を第1のプリズムにより紙幣通路内に横方向に照射し、紙幣通路を横断して進行する光を第2のプリズムにより受光した後に、第2のプリズムを通じて受光トランジスタに光を導き、受光トランジスタの出力により紙幣通路内の異物を検出する紙幣鑑別機を示す。
【0004】
引用文献3は、紙幣通路の片側に配置される光源から第1の偏光器を通じて紙幣通路内に幅方向に照射し、紙幣通路を通過する光を紙幣通路の反対側に配置される第2の偏光器を通じて光検出器で受光する糸検出装置を示す。この糸検出装置は、方向が変化する蛇行する紙幣通路を備え、詐欺行為中にセンサ領域内の紙幣通路の中央部分に確実に糸を配置して、検出装置から良好な信号を得ることができる。引用文献4は、引用文献3の対応米国特許である。
【0005】
下記特許文献5に示されるように、通路を通る貨幣に接続した糸を引張して、不正に貨幣を引き戻す糸を検出する糸検知センサは公知である。この糸検知センサは、赤外線発光器と、赤外線発光器から照射されて糸上で反射した光を検出する赤外線受光器とを備えている。
【0006】
下記特許文献6は、紙幣鑑別機の検出器を構成する基板の両側部にそれぞれ取り付けた発光ダイオードと受光器とを紙幣通路の両側に配置し、発光ダイオードから照射される光の量を受光器により受光することにより紙幣通路内の異物を検出する紙幣鑑別機を示す。
【0007】
特許文献7は、配線基板と、配線基板に固定されかつ搬送通路の一方の側に配置された発光ダイオード装置と、搬送通路の他方の側に配置されて発光ダイオード装置の光を受光しかつ搬送通路に向かって反射する光反射部材と、配線基板に固定されて光反射部材上で反射された光を受光して、受光する光の量に対応するレベルの電気信号を発生する光検出装置とを備え、紙幣鑑別機内に形成される搬送通路を通じて搬送される搬送通路内の紙幣又は異物を検出する紙幣鑑別機用光学式検出装置を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,441,891号公報 図3
【特許文献2】米国特許第5,988,345号公報 図7a
【特許文献3】特開2008−217023 図1
【特許文献4】米国特許第6,648,221号公報 図1
【特許文献5】米国特許第5,383,546号 図1
【特許文献6】米国特許第5,806,649号 図2
【特許文献7】特表2008−535236号公報 図10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の装置では、紙幣を引抜く糸が搬送通路の壁面に密着すると、光学検出装置で受光する光量が糸のない状態に対し殆ど変化しないため、確実に糸の存在を検出できない難点があった。
本発明は、受収した真正な有価紙葉の引抜を確実に阻止できる有価紙葉引抜防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の有価紙葉引抜防止装置は、有価紙葉を案内する搬送通路(3)の一部となる湾曲通路(19)を形成する通路形成体(1)と、搬送通路(3)の入口(11)と出口(12)との間で湾曲通路(19)を含む搬送通路(3)に沿って有価紙葉を搬送する搬送装置(2)と、搬送通路(3)の幅方向に光ビーム(6)を照射する発光素子(62)及び発光素子(62)から照射される光ビーム(6)を受光して光ビーム(6)の光量に対応する電気信号を発生する受光素子(63)を有する光学検出装置(7)とを備える。通路形成体(1)は、平坦な又は湾曲する前基面(42)及び平坦な又は湾曲する後基面(43)を形成する基板(13)と、基板(13)に固定されて、搬送通路(3)に沿う有価紙葉の搬送方向を変更する湾曲通路(19)を形成する山形部材(4)と、基板(13)の前基面(42)及び後基面(43)から一定間隔離間して配置されて搬送通路(3)を形成すると共に、山形部材(4)から一定間隔離間して配置されて湾曲通路(19)を形成する窪み(26)を有する蓋板(14)とを備える。山形部材(4)は、搬送通路(3)の幅方向にかつ全幅にわたり延伸しかつ少なくとも1つの頂部(17,28,57)を備え、搬送装置(2)は、湾曲通路(19)の前方で搬送通路(3)に沿って配置されて搬送通路(3)を通る有価紙葉を湾曲通路(19)に向って移動しかつ湾曲通路(19)を乗り越えさせる前送ユニット(31)を備える。糸又はテープ等の引抜手段(46)が接続された有価紙葉が湾曲通路(19)を通過した後に、光学検出装置(7)の発光素子(62)は、搬送通路(3)の幅方向に光ビーム(6)を照射し、光ビーム(6)の投影断面(29,59,60)は、山形部材(4)の頂部(17,28,57)を形成する湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線(27)又は仮想接線(27)の延長線を含むので、光ビーム(6)の投射断面内に引抜手段(46)の陰影を確実に投影して、有価紙葉に接続される引抜手段(46)の有無を光学的に確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
光学的に確実に引抜手段を検出できるので、有価紙葉引抜装置による引抜手段検出性能が向上すると同時に、防盗性を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による有価紙葉引抜防止装置を取り付けた紙幣鑑別装置を示す図3のI−I線に沿う断面図
【図2】図1の紙幣鑑別装置の搬送通路を示す平面図
【図3】図1のIII−III線に沿う紙幣鑑別装置の断面図
【図4】図1の紙幣鑑別装置の他の縦方向断面図
【図5】本発明の第1の実施の形態による有価紙葉引抜防止装置の湾曲通路を示す断面図
【図6】図5の湾曲通路に照射される光ビームの投射断面を示す断面図
【図7】図5の湾曲通路に形成される仮想接線により分割される第1の間隙と第2の間隙を示す断面図
【図8】糸が延伸する図6の湾曲通路を示す断面図
【図9】本発明の第2の他の実施の形態による有価紙葉引抜防止装置の湾曲通路を示す断面図
【図10】湾曲通路の幅方向に光ビームを照射する状態を示す断面図
【図11】糸が延伸する図9の湾曲通路を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
紙幣鑑別装置に適用した本発明による有価紙葉引抜防止装置の実施の形態を図1〜図11について以下説明する。これらの図面では、同一の部分には、同一の符号を付する。
【0014】
図1〜図5に示すように、本発明の実施の形態による有価紙葉引抜防止装置は、紙幣鑑別装置(50)内に取り付けられる。紙幣鑑別装置(50)は、移動する有価紙葉である紙幣を案内する搬送通路(3)の一部となる湾曲通路(19)を形成する通路形成体(1)と、搬送通路(3)の入口(11)と出口(12)との間で湾曲通路(19)を含む搬送通路(3)に沿って紙幣を搬送する搬送装置(2)と、図2、図10及び図12に示すように、搬送通路(3)の幅方向に光ビーム(光束又は光線)(6)を照射しかつ受光して、受光する光ビーム(6)の光量に対応する電気信号を発生する光学検出装置(7)とを備える。入口(11)に挿入される有価紙葉を検出して、検出信号を発生する図示しない入口センサが入口(11)に隣接して配置され、入口センサの検出信号を受信する図示しない制御装置は、搬送装置(2)の前送ユニット(31)を駆動する。また、搬送通路(3)に沿って前送ユニット(31)の前方に配置される鑑別センサ(5)は、紙幣の光学パターン及び糸(46)の陰影を検出して制御装置に検出信号を送出するイメージセンサを備える。
【0015】
図6に示すように、通路形成体(1)は、前基面(42)及び後基面(43)を形成する基板(13)と、基板(13)に固定されて、搬送通路(3)に沿う有価紙葉の搬送方向を変更する湾曲通路(19)を形成する山形部材(4)と、基板(13)の前基面(42)及び後基面(43)から一定間隔離間して配置されて搬送通路(3)を形成すると共に、山形部材(4)から一定間隔離間して配置されて湾曲通路(19)を形成する窪み(26)を有する蓋板(14)とを備える。湾曲通路(19)は、山形部材(4)と蓋板(14)の窪み(26)とにより形成され、山形部材(4)は、前基斜面(40)、前基斜面(40)に接続される単一又は複数の頂部(17,28)及び後基斜面(41)を形成し、窪み(26)は、前基斜面(40)に対向する前蓋斜面(50)、前蓋斜面(50)に接続される湾曲窪み面又は平坦窪み面及び後基斜面(41)に対向する後蓋斜面(51)を形成する。山形部材(4)の前基斜面(40)に円滑に連絡して、紙幣の搬送を案内する平坦な前基面(42)が設けられ、山形部材(4)の後基斜面(41)に円滑に連絡して、紙幣の搬送を案内する後基面(43)が設けられる。前基面(42)と後基面(43)は、それぞれ湾曲する断面形状を備えてもよい。
【0016】
図6に示す例では、山形部材(4)は、基板(13)の凹部(13a)に嵌合され、固定されるが、基板(13)と一体に山形部材(4)を形成することもできる。基板(13)、山形部材(4)及び蓋板(14)は、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン、アクリル樹脂若しくはこれらのコンパウンド等の透明、半透明又は不透明な樹脂材料により形成されるが、金属材料により山形部材(4)を形成することもできる。
【0017】
山形部材(4)は、図1及び図6に示す紙幣の搬送方向(D)に対して横に、即ち、図2に示すように、搬送方向(D)に対してほぼ直角又は搬送通路(3)の幅方向にかつ全幅にわたり延伸する第1の隆起部(15)と、紙幣の搬送方向に第1の隆起部(15)から離間して、第1の隆起部(15)に並行にかつ搬送通路(3)の全幅にわたり延伸する第2の隆起部(25)と、第1の隆起部(15)と第2の隆起部(25)との間に形成される谷部(16)とを備える。第1の隆起部(15)は、基板(13)から最大距離で突出する頂部(17)を備え、谷部(16)は、山形部材(4)のうち基板(13)から最小距離で窪む底部(18)を備え、第2の隆起部(25)は、基板(13)の外側に突出する頂部(28)を備える。2つの頂部(17)と(28)の高さは、同一でよいが、必ずしも同一である必要はなく、頂部(17)と(28)との間に光ビーム(6)の所望の大きさの投影断面が谷部(16)と蓋板(14)との間に形成される高さであれば、頂部(17)と(28)とは、異なる高さでもよい。
【0018】
本明細書では、「頂部(17)」は、基板(13)の表面又はこの表面を延長した仮想表面から直角方向に最も遠い部位をいい、「底部(18)」は、基板(13)の表面又はこの表面を延長した仮想表面から直角方向に谷部(16)の最も近い部位をいう。また、「有価紙葉」は、紙幣、クーポン、株券、銀行券、代用紙幣、臨時紙幣(スクリプト)、搭乗券、乗車券等の経済的価値を有する全ての書面又はカードをいう。「引抜手段」は、糸、テープ、針金、平坦で細長い板等を含み不正に有価紙葉を引抜くために使用される手段をいう。
【0019】
第1の隆起部(15)と、谷部(16)と、第2の隆起部(25)とを備える山形部材(4)は、図3に示すように、搬送通路(3)の幅方向に延伸しかつ搬送ベルト(30)を跨越して、基板(13)に固定される。即ち、搬送ベルト(30)が通過する開口部(44)が山形部材(4)の下方に形成される。図5に示すように、搬送装置(2)は、紙幣の搬送方向で第1の隆起部(15)の前方と後方とに延伸する搬送ベルト(30)と、搬送ベルト(30)に当接する前送ユニット(31)及び中送ユニット(32)を備える。前送ユニット(31)は、湾曲通路(19)の前方で搬送通路(3)に沿って配置されて搬送通路(3)を通る有価紙葉を湾曲通路(19)に向って移動しかつ湾曲通路(19)を乗り越えさせ、湾曲通路(19)の後方に搬送通路(3)に沿って配置される中送ユニット(32)は、湾曲通路(19)を通過した有価紙葉を把持しかつ更に出口(12)に向って奥に搬送する。前送ユニット(31)と中送ユニット(32)との間隔は、有価紙葉の長さより短い。前送ユニット(31)と中送ユニット(32)は、それぞれ搬送ベルト、搬送ローラ又は搬送ベルトと搬送ローラとの組合せにより構成されるが、図示の例では、搬送ベルト(30)とピンチローラ(33,34)との組合せとして構成される。山形部材(4)の底部(18)は、搬送ベルト(30)と同一のレベル又は搬送ベルト(30)より基板(13)から外側に離間して形成される。1対のピンチローラ(33,34)は、紙幣の長さより短い間隔で配置されるため、搬送ベルト(30)により搬送通路(3)を移動する紙幣の一端が、ピンチローラ(33,34)の一方を通過した後に、両端が両ピンチローラ(33,34)に把持された後に、ピンチローラ(33,34)を通過する。また、搬送通路(3)を形成する窪み(26)が第1の隆起部(15)と第2の隆起部(25)に対向して蓋板(14)に設けられ、図示の例では、窪み(26)は、搬送通路(3)の高さ分又はそれ以上の距離で第1の隆起部(15)及び第2の隆起部(25)より上方に湾曲する。本発明の別の実施の形態では、基板(13)と蓋板(14)とを逆に配置して、搬送通路(3)を下方に湾曲させてもよい。図7に示す実施の形態では、第1の隆起部(15)の頂部(17)と第2の隆起部(25)の頂部(28)とを接続する仮想接線(27)と谷部(18)との間及び仮想接線(27)と蓋板(14)との間に第1の間隙(21)と第2の間隙(22)とがそれぞれ形成される。
【0020】
図3に示すように、光学検出装置(7)の光送受信装置(8)は、搬送通路(3)の一方側に配置された発光素子(62)と、搬送通路(3)の幅方向反対側に配置された反射部材としてのプリズム(9)と、プリズム(9)の上方に配置される受光素子(63)とを備える。受光素子(63)は、発光素子(62)から照射され、反射部材(9)により反射される光ビーム(6)を受光する。
【0021】
紙幣鑑別装置(50)を使用する際に、入口(11)から紙幣を挿入すると、図示しない入口センサが挿入される紙幣を検出して、搬送装置(2)が駆動されるため、前送ユニット(31)の搬送ベルト(30)が正転駆動され、搬送ベルト(30)とピンチローラ(33)により搬送通路(3)を通り、紙幣鑑別装置(50)の内部に紙幣が搬送される。このとき、紙幣は、鑑別センサ(5)を通過して、紙幣の光学的特性又は磁気的特性が電気信号に変換されて、制御装置内に予め記憶される紙幣の光学的特性又は磁気的特性と変換された電気信号とが一致して、制御装置が紙幣を真正と鑑別すると、搬送ベルト(30)が更に正転され、紙幣の先端は、前送ユニット(31)のピンチローラ(33)に把持されて、山形部材(4)に向って搬送され、前基斜面(40)、第1の隆起部(15)、谷部(16)、第2の隆起部(25)及び後基斜面(41)を通過する。このとき、窪み(26)の前蓋斜面(50)と、前蓋斜面(50)に接続される湾曲する又は平坦な窪み面(52)と、窪み面(52)に接続される後蓋斜面(51)により、移動する紙幣の先端は、搬送通路(3)内に偏向され円滑に案内される。その後、紙幣は、中送ユニット(32)のピンチローラ(34)を通り出口(12)から排出される。制御装置内に予め記憶される紙幣の光学的特性又は磁気的特性と変換された電気信号とが一致しないとき、紙幣は、真正と判断されず、搬送ベルト(30)が逆転され、紙幣は、再び山形部材(4)を通過して、入口(11)に返却される。
【0022】
図8に示すように、真正と鑑別されて出口から排出される紙幣に引抜手段として、例えば、糸(46)が接続され、入口(11)方向に引張される糸(46)は、搬送通路(3)の前基面(42)に対向する窪み(26)の前縁(26a)と、頂部(17,28)と、後基面(43)に対向する窪み(26)の後縁(26b)とに接触して張架される。このとき、頂部(17) (28)間で第1の間隙(21)と第2の間隙(22)とを跨越する投影断面(29)の光ビーム(6)を光学検出装置(7)の発光素子(62)から照射されると、搬送通路(3)の幅方向に投影断面(29)内に糸(46)の陰影を投射して、光学検出装置(7)の受光素子(63)により、糸(46)の陰影を含む投影断面(29)の光ビーム(6)を確実に受光することができる。光学検出装置(7)の発光素子(63)は、搬送通路(3)の幅方向に光ビーム(6)を照射し、受光素子(63)は、搬送通路(3)を幅方向に通過した糸(46)の存在の有無情報を含む光ビーム(6)を受光して、受光する光ビーム(6)の光量に対応する電気信号を発生する。このように、糸(46)の陰影を含む光ビーム(6)を受光素子(63)が検出するので、糸(46)の存在の有無を確実に検出することができる。従って、本実施の形態では、頂部(17)(28)の少なくとも一方又は両方が窪み(26)の前縁(26a)及び後縁(26b)の少なくとも一方又は両方より搬送通路(3)の高さ方向に突出する形状に山形部材(4)と窪み(26)とを形成する必要がある。図8に示す実施の形態では、2つの頂部(17,28)の湾曲表面の共通な接線方向、即ち、基板(13)の表面とほぼ並行な搬送通路(3)の長さ方向に糸(46)が張架されるから、頂部(17,28)の仮想共通接線(27)を含む投影断面(29)で光ビーム(6)を照射することが必要である。また、山形部材(4)の頂部(17,28)に接触する糸(46)は、山形部材(4)の湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線(27)又は仮想接線(27)の延長線に沿って入口(11)側又は出口(12)側に延伸し、頂部(17,28)から離間する糸(46)は、基板(13)にも蓋板(14)にも接触しないから、第1の間隙(21)と第2の間隙(22)とを跨越(こえつ)する投影断面(29)で光ビーム(6)を光学検出装置(7)の発光素子(62)から搬送通路(3)の幅方向に照射し、照射される光ビーム(6)を受光素子(63)により受光して、受光素子(63)に電気的に接続される制御装置により、受光する光量に基づいて紙幣に接続される糸(46)を確実に検出することができる。この場合に、鑑別センサ(5)のイメージセンサの検出出力と、光学検出装置(7)との検出出力とから有価紙葉に接続される糸(46)の有無を判断することもできる。
【0023】
本発明は、図1〜図8に示す実施の形態に限定されず、異なる種々の変形実施の形態で実施することができる。
【0024】
例えば、図9及び図10に示すように、湾曲する又は平坦な単一の頂部(57)と、頂部(57)から滑らかに前基面(42)及び後基面(43)に向って前方に傾斜する前基斜面(40)及び後方に傾斜する後基斜面(41)とにより形成される隆起部(55)を有する山形部材(4)が基板(13)に設けられる。光学検出装置(7)の発光素子(62)から照射される光ビーム(6)の投影断面(59,60)は、前基斜面(40)、後基斜面(41)、前基面(42)及び後基面(43)に沿う所望の単数位置又は複数位置に設定され、照射される光ビーム(6)は、受光素子(63)により受光される。光学検出装置(7)は、発光素子(62)及び受光素子(63)を有する光送受信装置(8)と、光送受信装置(8)に対して搬送通路(3)の幅方向反対側に配置される反射部材となるプリズム(9)とを備える。
【0025】
光送受信装置(8)は、所定の間隔で互いに離間してケース(61)内に配置される発光素子(62)と、受光素子(63)とを備え、プリズム(9)は、光送受信装置(8)の発光素子(62)から搬送通路(3)の幅方向に照射される光ビーム(6a)をほぼ直角に、即ち搬送通路(3)とほぼ並行な方向に反射する第1の反射面(9a)と、発光素子(62)から照射される光ビーム(6a)とほぼ並行な方向に、即ち第1の反射面(9a)で反射された光ビーム(6b)をほぼ直角に反射して、受光素子(63)に向う光ビーム(6c)を形成する第2の反射面(9b)とを備える。発光素子(62)から照射される光ビーム(6a)と受光素子(63)が受光する光ビーム(6c)は、不正引抜用の糸(46)の陰影を投射する投影断面(59,60)を有する位置で搬送通路(3)の幅方向に照射される。図11に示す実施の形態では、糸(46)は、山形部材(4)の湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線(27)又は仮想接線(27)の延長線上に配置され、糸(46)と仮想接線(27)の位置は、一致する。図示の例では、光ビーム(6)の投影断面(59,60)は、円形光線断面であるが、特許文献7に示されるように、線状若しくは線形光線断面でもよく、必要に応じて、楕円光線断面又は矩形光線断面等種々の光線断面を採用することができる。
【0026】
いずれの場合でも、搬送通路(3)の長さ方向に張架される糸(46)を光ビーム(6)の投影断面(59,60)内に確実に捕捉するため、搬送通路(3)の高さの半分又はそれ以上の高さの頂部(57)を隆起部(55)に設ける必要がある。勿論、搬送通路(3)の高さ未満又はこれ以上の高さで隆起部(55)の頂部(57)を形成してもよい。また、搬送通路(3)の高さと同一又はこれ以上の高さで光ビーム(6)の投影断面(59,60)を形成する必要がある。
【0027】
例えば、本発明の実施の形態では、隆起部(55)の頂部(57)に接して又は頂部(57)を形成する湾曲表面の接線方向に糸(46)が搬送通路(3)の長さ方向に張架されるから、頂部(57)の湾曲表面に接する仮想接線(27)を含む投影断面(59,60)で光ビーム(6)を照射することが必要である。図9及び図10に示す実施の形態では、図11及び図12に示すように、搬送通路(3)の長さ方向に張架される糸(46)は、頂部(57)の接線方向で基板(13)の表面とほぼ並行に延伸するか又は頂部(57)のやや前方又は後方の湾曲表面に接する仮想接線(27)を範囲内含む投影断面(59,60)で光ビーム(6)を照射することができる。搬送通路(3)の長さ方向に張架される糸(46)を光ビーム(6)の投影断面(59,60)内に確実に捕捉できれば、搬送通路(3)の高さより小さい高さの投影断面(59,60)で光ビーム(6)を照射することができる。これにより、第1の間隙(21)と第2の間隙(22)とを跨越する投影断面(59,60)で光ビーム(6)を光学検出装置(7)から搬送通路(3)の幅方向に照射して、有価紙葉に接続された糸(46)を検出することができる。図3に示す発光素子(62)、受光素子(63)及びプリズム(9)による単一投影断面(29)の構造を図9に示す実施の形態にも適用することができる。また、鑑別センサ(5)のイメージセンサの検出出力と、光学検出装置(7)との検出出力とから有価紙葉に接続される糸(46)の有無を判断することもできる。
【0028】
例えば、図9及び図10に示す実施の形態では、搬送通路(3)の両側に光学検出装置(7)の発光素子(62)と受光素子(63)を搬送通路(3)の幅方向に分離して、プリズム(9)を省略し、光ビーム(6a)又は(6c)のみで糸(46)を検出することもできる。即ち、隆起部(55)の前方に配置される前基斜面(40)及び前基面(42)に沿う搬送通路(3)の高さの中間位置に整合する中心を有する第1の投影断面(59)の光ビーム(6)を発光素子(62)から照射して、受光素子(63)により光ビーム(6a)を受光することができる。光ビーム(6a)に加えて又は光ビーム(6a)を省略して、前記と同様に、隆起部(55)の後方に配置される後基斜面(41)及び後基面(43)に沿う搬送通路(3)の高さの中間位置に整合する中心を有する第2の投影断面(60)の光ビーム(6c)を発光素子(62)から照射して、受光素子(63)により光ビーム(6c)を受光することができる。このように、光学的に確実に糸(46)を検出できるので、紙幣引抜装置による引抜手段検出性能が向上すると同時に、防盗性を強化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、紙幣鑑別機、紙幣識別装置、クーポン受収装置等の紙幣取扱装置から有価紙葉を不正に引抜く装置として広範囲に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
(1)・・通路形成体、 (2)・・搬送装置、 (3)・・搬送通路、 (4)・・山形部材、 (5)・・鑑別センサ、 (6)・・光ビーム、 (7)・・光学検出装置、 (8)・・光送受信装置、 (9)・・反射部材、 (9a)・・第1の反射面、 (9b)・・第2の反射面、 (11)・・入口、 (12)・・出口、 (13)・・基板、 (14)・・蓋板、 (15)・・第1の隆起部、 (16)・・谷部、 (17)・・頂部、 (18)・・底部、 (19)・・湾曲通路、 (21)・・第1の間隙、 (22)・・第2の間隙、 (23)・・前傾斜面、 (24)・・後傾斜面、 (25)・・第2の隆起部、 (26)・・窪み、 (26a)・・前縁、 (26b)・・後縁、 (27)・・仮想接線、 (28)・・頂部、 (29)・・投影断面、 (30)・・搬送ベルト、 (31)・・前送ユニット、 (32)・・中送ユニット、 (33,34)・・ピンチローラ、 (36)・・第2の傾斜面、 (40)・・前基斜面、 (41)・・後基斜面、 (42)・・前基面、 (43)・・後基面、 (44,45)・・中間傾斜面、 (46)・・糸、 (50)・・紙幣鑑別装置、 (55)・・隆起部、 (57)・・頂部、 (59)・・投影断面、 (60)・・投影断面、 (62)・・発光素子、 (63)・・受光素子、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価紙葉を案内する搬送通路の一部となる湾曲通路を形成する通路形成体と、搬送通路の入口と出口との間で湾曲通路を含む搬送通路に沿って有価紙葉を搬送する搬送装置と、搬送通路の幅方向に光ビームを照射する発光素子及び発光素子から照射される光ビームを受光して光ビームの光量に対応する電気信号を発生する受光素子を有する光学検出装置とを備え、
通路形成体は、平坦な又は湾曲する前基面及び平坦な又は湾曲する後基面を形成する基板と、基板に固定されて、搬送通路に沿う有価紙葉の搬送方向を変更する湾曲通路を形成する山形部材と、基板の前基面及び後基面から一定間隔離間して配置されて搬送通路を形成すると共に、山形部材から一定間隔離間して配置されて湾曲通路を形成する窪みを有する蓋板とを備え、
山形部材は、搬送通路の幅方向にかつ全幅にわたり延伸しかつ少なくとも1つの頂部を備え、
搬送装置は、湾曲通路の前方で搬送通路に沿って配置されて搬送通路を通る有価紙葉を湾曲通路に向って移動しかつ湾曲通路を乗り越えさせる前送ユニットを備え、
光学検出装置の発光素子は、搬送通路の幅方向に光ビームを照射し、
光ビームの投影断面は、山形部材の頂部を形成する湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線又は仮想接線の延長線を含むことを特徴とする有価紙葉引抜防止装置。
【請求項2】
平坦に又は湾曲して前基面又は後基面を形成した請求項1に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項3】
平坦な前基面及び平坦な後基面を基板に設け、
基板の前基面及び平坦な後基面にそれぞれ対向する平坦な前蓋面及び後蓋面を蓋体に設けて直線状の搬送通路を形成し、
前基面と後基面との間で山形部材に対向する台形状又は湾曲状の窪みにより湾曲通路を形成した請求項1又は2に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項4】
湾曲通路の後方で搬送通路に沿って配置した搬送装置の中送ユニットにより、湾曲通路を通過した有価紙葉を把持しかつ更に出口に向って搬送する請求項1〜3の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項5】
湾曲通路の後方で搬送通路に沿って配置した搬送装置の中送ユニットにより、湾曲通路を通過した有価紙葉を把持しかつ更に出口側に搬送し、
前送ユニットと中送ユニットとの間隔は、有価紙葉の長さより短い請求項1〜3の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項6】
湾曲通路を形成する山形部材に前基斜面、前基斜面に接続される単一又は複数の頂部及び後基斜面を設け、前基斜面に対向する前蓋斜面、前蓋斜面に接続される湾曲窪み面又は平坦窪み面及び後基斜面に対向する後蓋斜面を窪みに設けた請求項1〜5の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項7】
前送ユニットの前方に有価紙葉の鑑別センサを配置した請求項1〜3の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項8】
搬送ベルト、搬送ローラ又は搬送ベルトと搬送ローラとの組合せにより前送ユニットを構成した請求項1〜7の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項9】
搬送ベルト、搬送ローラ又は搬送ベルトと搬送ローラとの組合せにより中送ユニットを構成した請求項4、5又は7に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項10】
入口に挿入される有価紙葉を検出して、検出信号を発生する入口センサと、
入口センサの検出信号を受信して、搬送装置の前送ユニットを駆動する制御装置とを備える請求項1〜9の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項11】
搬送通路に沿って配置される鑑別センサを備え、
鑑別センサは、引抜手段の陰影を検出するイメージセンサを備え、
イメージセンサの検出出力と、光学検出装置との検出出力とから有価紙葉に接続される引抜手段の有無を判断する制御装置を設けた請求項1に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項12】
山形部材の頂部に接触する引抜手段は、山形部材の湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線又は仮想接線の延長線に沿って入口側又は出口側に延伸し、頂部から離間する引抜手段は、基板にも蓋板にも接触しない請求項1〜11の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項13】
山形部材は、前基面に接続される前基斜面と、後基面に接続される後基斜面と、前基斜面と後基斜面とを接続する平坦な又は山形部材から突出して湾曲する単一の頂部とを備える請求項1〜12の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項14】
山形部材は、前基面に接続される前基斜面と、前基斜面に接続される平坦な又は山形部材から突出して湾曲する第1の頂部と、第1の頂部に接続される谷部と、谷部に接続される平坦な又は山形部材から突出して湾曲する第2の頂部と、第2の頂部と後基面との間に接続される後基斜面とを備える請求項1〜12の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項15】
光学検出装置から照射される光ビームの投影断面は、第1の頂部と第2の頂部の仮想共通接線を範囲内に含む請求項14に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項16】
仮想接線又は仮想接線の延長線と山形部材との間に第1の間隙を形成すると共に、仮想接線又は仮想接線の延長線と蓋板の窪みとの間に第2の間隙を形成し、光学検出装置から搬送通路の幅方向に照射される光ビームの投影断面は、第1の間隙と第2の間隙とを跨越する請求項12〜15の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項17】
光学検出装置から搬送通路内に照射される単一又は複数の光ビームの投影断面は、山形部材の頂部)を形成する湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線又は仮想接線の延長線を範囲内に含む請求項12〜16の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項18】
光学検出装置から搬送通路内に照射される単一の光ビームの投影断面は、第1の頂部と第2の頂部との間に形成される谷部に隣接する請求項14に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項19】
光学検出装置から搬送通路内に照射される単一又は複数の光ビームは、前基斜面と後基斜面とのそれぞれに沿い2つの投影断面を有する請求項13に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項20】
光学検出装置は、発光素子及び受光素子を有する光送受信装置と、被仮送受信装置に対して搬送通路の幅方向反対側に配置される反射部材とを備え、
反射部材は、光送受信装置の発光素子から搬送通路の幅方向に照射される光ビームを搬送通路とほぼ並行な方向に反射する第1の反射面と、発光素子から照射される光ビームとほぼ並行な方向に、第1の反射面で反射された光ビームを反射して、受光素子に向う光ビームを形成する第2の反射面とを備える請求項19に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項21】
有価紙葉の搬送方向で山形部材の前方と後方とに延伸して有価紙葉を搬送する搬送ベルトを搬送装置に設け、
山形部材は、搬送ベルトを跨越して基板上に固定される請求項12〜20の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項22】
搬送ベルトと同一のレベル又は搬送ベルトより基板から外側に離間して谷部を形成した請求項14に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項23】
山形部材の前方と後方とに搬送ベルトに当接する一対のピンチローラを搬送装置の前送ユニットと中送ユニットに設けた請求項12〜22の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項24】
光学検出装置の光送受信装置は、搬送通路の一方側に配置された発光素子と、搬送通路の幅方向の反対側に配置された反射部材と受光素子とを備え、受光素子は、発光素子から照射され、反射部材により反射される光ビームを受光する請求項14又は15に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項25】
光学検出装置の発光素子は、有価紙葉が湾曲通路を通過した後に、搬送通路の幅方向に光ビームを照射する請求項1〜24の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項1】
有価紙葉を案内する搬送通路の一部となる湾曲通路を形成する通路形成体と、搬送通路の入口と出口との間で湾曲通路を含む搬送通路に沿って有価紙葉を搬送する搬送装置と、搬送通路の幅方向に光ビームを照射する発光素子及び発光素子から照射される光ビームを受光して光ビームの光量に対応する電気信号を発生する受光素子を有する光学検出装置とを備え、
通路形成体は、平坦な又は湾曲する前基面及び平坦な又は湾曲する後基面を形成する基板と、基板に固定されて、搬送通路に沿う有価紙葉の搬送方向を変更する湾曲通路を形成する山形部材と、基板の前基面及び後基面から一定間隔離間して配置されて搬送通路を形成すると共に、山形部材から一定間隔離間して配置されて湾曲通路を形成する窪みを有する蓋板とを備え、
山形部材は、搬送通路の幅方向にかつ全幅にわたり延伸しかつ少なくとも1つの頂部を備え、
搬送装置は、湾曲通路の前方で搬送通路に沿って配置されて搬送通路を通る有価紙葉を湾曲通路に向って移動しかつ湾曲通路を乗り越えさせる前送ユニットを備え、
光学検出装置の発光素子は、搬送通路の幅方向に光ビームを照射し、
光ビームの投影断面は、山形部材の頂部を形成する湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線又は仮想接線の延長線を含むことを特徴とする有価紙葉引抜防止装置。
【請求項2】
平坦に又は湾曲して前基面又は後基面を形成した請求項1に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項3】
平坦な前基面及び平坦な後基面を基板に設け、
基板の前基面及び平坦な後基面にそれぞれ対向する平坦な前蓋面及び後蓋面を蓋体に設けて直線状の搬送通路を形成し、
前基面と後基面との間で山形部材に対向する台形状又は湾曲状の窪みにより湾曲通路を形成した請求項1又は2に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項4】
湾曲通路の後方で搬送通路に沿って配置した搬送装置の中送ユニットにより、湾曲通路を通過した有価紙葉を把持しかつ更に出口に向って搬送する請求項1〜3の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項5】
湾曲通路の後方で搬送通路に沿って配置した搬送装置の中送ユニットにより、湾曲通路を通過した有価紙葉を把持しかつ更に出口側に搬送し、
前送ユニットと中送ユニットとの間隔は、有価紙葉の長さより短い請求項1〜3の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項6】
湾曲通路を形成する山形部材に前基斜面、前基斜面に接続される単一又は複数の頂部及び後基斜面を設け、前基斜面に対向する前蓋斜面、前蓋斜面に接続される湾曲窪み面又は平坦窪み面及び後基斜面に対向する後蓋斜面を窪みに設けた請求項1〜5の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項7】
前送ユニットの前方に有価紙葉の鑑別センサを配置した請求項1〜3の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項8】
搬送ベルト、搬送ローラ又は搬送ベルトと搬送ローラとの組合せにより前送ユニットを構成した請求項1〜7の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項9】
搬送ベルト、搬送ローラ又は搬送ベルトと搬送ローラとの組合せにより中送ユニットを構成した請求項4、5又は7に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項10】
入口に挿入される有価紙葉を検出して、検出信号を発生する入口センサと、
入口センサの検出信号を受信して、搬送装置の前送ユニットを駆動する制御装置とを備える請求項1〜9の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項11】
搬送通路に沿って配置される鑑別センサを備え、
鑑別センサは、引抜手段の陰影を検出するイメージセンサを備え、
イメージセンサの検出出力と、光学検出装置との検出出力とから有価紙葉に接続される引抜手段の有無を判断する制御装置を設けた請求項1に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項12】
山形部材の頂部に接触する引抜手段は、山形部材の湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線又は仮想接線の延長線に沿って入口側又は出口側に延伸し、頂部から離間する引抜手段は、基板にも蓋板にも接触しない請求項1〜11の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項13】
山形部材は、前基面に接続される前基斜面と、後基面に接続される後基斜面と、前基斜面と後基斜面とを接続する平坦な又は山形部材から突出して湾曲する単一の頂部とを備える請求項1〜12の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項14】
山形部材は、前基面に接続される前基斜面と、前基斜面に接続される平坦な又は山形部材から突出して湾曲する第1の頂部と、第1の頂部に接続される谷部と、谷部に接続される平坦な又は山形部材から突出して湾曲する第2の頂部と、第2の頂部と後基面との間に接続される後基斜面とを備える請求項1〜12の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項15】
光学検出装置から照射される光ビームの投影断面は、第1の頂部と第2の頂部の仮想共通接線を範囲内に含む請求項14に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項16】
仮想接線又は仮想接線の延長線と山形部材との間に第1の間隙を形成すると共に、仮想接線又は仮想接線の延長線と蓋板の窪みとの間に第2の間隙を形成し、光学検出装置から搬送通路の幅方向に照射される光ビームの投影断面は、第1の間隙と第2の間隙とを跨越する請求項12〜15の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項17】
光学検出装置から搬送通路内に照射される単一又は複数の光ビームの投影断面は、山形部材の頂部)を形成する湾曲表面の少なくとも1点を通る仮想接線又は仮想接線の延長線を範囲内に含む請求項12〜16の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項18】
光学検出装置から搬送通路内に照射される単一の光ビームの投影断面は、第1の頂部と第2の頂部との間に形成される谷部に隣接する請求項14に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項19】
光学検出装置から搬送通路内に照射される単一又は複数の光ビームは、前基斜面と後基斜面とのそれぞれに沿い2つの投影断面を有する請求項13に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項20】
光学検出装置は、発光素子及び受光素子を有する光送受信装置と、被仮送受信装置に対して搬送通路の幅方向反対側に配置される反射部材とを備え、
反射部材は、光送受信装置の発光素子から搬送通路の幅方向に照射される光ビームを搬送通路とほぼ並行な方向に反射する第1の反射面と、発光素子から照射される光ビームとほぼ並行な方向に、第1の反射面で反射された光ビームを反射して、受光素子に向う光ビームを形成する第2の反射面とを備える請求項19に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項21】
有価紙葉の搬送方向で山形部材の前方と後方とに延伸して有価紙葉を搬送する搬送ベルトを搬送装置に設け、
山形部材は、搬送ベルトを跨越して基板上に固定される請求項12〜20の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項22】
搬送ベルトと同一のレベル又は搬送ベルトより基板から外側に離間して谷部を形成した請求項14に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項23】
山形部材の前方と後方とに搬送ベルトに当接する一対のピンチローラを搬送装置の前送ユニットと中送ユニットに設けた請求項12〜22の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項24】
光学検出装置の光送受信装置は、搬送通路の一方側に配置された発光素子と、搬送通路の幅方向の反対側に配置された反射部材と受光素子とを備え、受光素子は、発光素子から照射され、反射部材により反射される光ビームを受光する請求項14又は15に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【請求項25】
光学検出装置の発光素子は、有価紙葉が湾曲通路を通過した後に、搬送通路の幅方向に光ビームを照射する請求項1〜24の何れか1項に記載の有価紙葉引抜防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−170507(P2010−170507A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14830(P2009−14830)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000230858)日本金銭機械株式会社 (43)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000230858)日本金銭機械株式会社 (43)
【Fターム(参考)】
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