説明

有害生物防除用固形組成物

【課題】 アントラニルアミド系化合物の有害生物に対する防除効果を増強させる製剤組成物を提供する。
【解決手段】
殺虫剤の有効成分としての非晶質のアントラニルアミド系化合物又はその塩;非イオン性界面活性剤及び/又は陰イオン性界面活性剤;並びに鉱物系担体を含むことを特徴とする有害生物防除用固形組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害生物防除効果が向上したアントラニルアミド系化合物を含有する有害生物防除用固形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アントラニルアミド系殺虫剤は、鱗翅目等有害生物の防除に有用であることが知られており、特許文献1にはその製剤として乳剤、水和剤、粉剤、顆粒剤等種々の製剤処方が開示されている。また、特許文献2には該化合物の有害生物防除効果を増強する製剤として、疎水性溶媒を含む油性懸濁剤が開示されている。
【特許文献1】WO2005/077934号
【特許文献2】WO2007/081553号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アントラニルアミド系化合物を含め、多くの有害生物防除剤は、スペクトラム及び効果においてそれぞれ特徴を有する反面、特定の病害虫に対して効果が充分でなかったり、残効性が短く、一定期間の効果を期待できなかったりして、施用場面によっては、実用上充分な防除効果を示さないことがあり、製剤的手法により防除効果を向上させることが希求されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の検討を行った結果、アントラニルアミド系化合物を非晶質化することにより有害生物の防除効果が格段に増強されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、殺虫剤の有効成分としての非晶質のアントラニルアミド系化合物又はその塩、界面活性剤及び担体を含む有害生物防除用固形組成物に関する。又、本発明は、前記成分を含む水和剤又は顆粒水和剤に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の農薬組成物は、アントラニルアミド系化合物の効果を向上させ、低薬量での有害生物の防除を可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施例1の粉末X線回折像
【図2】比較例1の粉末X線回折像
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の組成物は、非晶質のアントラニルアミド系化合物又はその塩の少なくとも1種のもの、界面活性剤及び担体を含有する。
本発明に用いられるアントラニルアミド系化合物又はその塩としては、式(I):
【0008】
【化1】

(式中、Rはハロゲン、アルキル又はシアノであり、AはC3−4のシクロアルキルで置換されてもよいアルキルであり、mは0〜4である)で表されるアントラニルアミド系化合物又はその塩が挙げられる。
上記式(I)のR及びAのアルキル又はアルキル部分は、直鎖又は分岐状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルのようなC1−6のものなどが挙げられる。また、Rのハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素の各原子が挙げられる
前記アントラニルアミド系化合物の塩としては、農業上許容されるものであればあらゆるものが含まれるが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩のようなアンモニウム塩;塩酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩のような無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩のような有機酸塩などが挙げられる。
アントラニルアミド系化合物としては、望ましくは以下の化合物である。
(1)3−ブロモ−N−(2−ブロモ−4−クロロ−6−(1−シクロプロピルエチルカルバモイル)フェニル)−1−(3−クロロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(化合物1)
(2)3−ブロモ−N−(4−クロロ−2−(1−シクロプロピルエチルカルバモイル)−6−メチルフェニル)−1−(3−クロロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(化合物2)
(3)3−ブロモ−N−(2−ブロモ−4−クロロ−6−(シクロプロピルメチルカルバモイル)フェニル)−1−(3−クロロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(化合物3)
(4)3−ブロモ−N−(4−クロロ−2−メチル−6−(メチルカルバモイル)フェニル)−1−(3−クロロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(化合物4)
(5)3−ブロモ−1−(3−クロロピリジン−2−イル)−N−(4−シアノ−2−メチル−6−(メチルカルバモイル)フェニル)−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(化合物5)
【0009】
上記アントラニルアミド系化合物又はその塩の含有量は、組成物中に1〜90重量%、好ましくは5〜80重量%である。
アントラニルアミド系化合物又はその塩の平均粒子径は、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜100μmであり、その結晶形は非晶質である。
該化合物の結晶形は、完全な非晶質であることが望ましいが、一部結晶を含んでもよい。
非晶質とは、物質を構成する原子の配列に規則性を持たない固体状態をいい、粉末X線回折装置で測定した際にハローの回折図を示す固体状態をいう。非晶質とは、アモルファス及び無定形と同義である。
非晶質の原体は、乾燥処理やメカノケミカル処理並びに固体分散化などにより製造することができる。乾燥処理としては、噴霧乾燥や凍結乾燥が挙げられる。また、原体を加熱融解後に急冷することによっても非晶質原体を得ることができる。メカノケミカル処理としては、ライカイ機のような機械を用いた粉砕や、セルロース等の高分子化合物との混合粉砕が挙げられる。また、原体を糖や高分子化合物と共に溶媒で溶解した後、溶媒を留去することによっても非晶質原体を得ることができる(固体分散化)。
また、本発明の組成物には、有効成分としてアントラニルアミド系化合物の他に、他の有害生物防除剤を添加してもよい。他の有害生物防除剤としては、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺土壌害虫剤や殺菌剤などが挙げられる。
【0010】
本発明で使用することができる界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤から選択される1種または2種以上の界面活性剤を用いることができる。
非イオン性界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
ポリオキシアルキレン型界面活性剤:例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)アリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)フェニルエーテル、ポリオキシエチレン(モノ、ジ又はトリ)フェニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(モノ、ジ又はトリ)ベンジルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレン(モノ、ジ又はトリ)ベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(モノ、ジ又はトリ)スチリルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレン(モノ、ジ又はトリ)スチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(モノ、ジ又はトリ)スチリルフェニルエーテルのポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルキル(C8〜18)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル、アルキル(C8〜12)フェニルポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル、ポリオキシエチレンビスフェニルエーテル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸(C8〜18)エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸(C8〜18)エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキル(C8〜18)アミンエチレンオキサイド付加物および脂肪酸(C8〜18)アミドエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
多価アルコール型界面活性剤:例えば、グリセロール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸(C8〜18)エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグリコシドおよびアルキルポリグリコシド等が挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤の中で好ましいものとしては、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)アリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)フェニルエーテルまたはポリオキシエチレン脂肪酸(C8〜18)エステルである。
【0011】
陰イオン性界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
カルボン酸型界面活性剤:例えば、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ無水マレイン酸、マレイン酸または無水マレイン酸とオレフィン(例えばイソブチレンおよびジイソブチレン等)との共重合物、アクリル酸とイタコン酸の共重合物、メタアクリル酸とイタコン酸の共重合物、マレイン酸または無水マレイン酸とスチレンの共重合物、アクリル酸とメタアクリル酸の共重合物、アクリル酸とアクリル酸メチルエステルとの共重合物、アクリル酸と酢酸ビニルとの共重合物、アクリル酸とマレイン酸または無水マレイン酸の共重合物、N−メチル−脂肪酸(C12〜18)サルコシネート、樹脂酸および脂肪酸(C12〜18)等のカルボン酸、並びにそれらカルボン酸の塩が挙げられる。
硫酸エステル型界面活性剤:例えば、アルキル(C12〜18)硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜18)エーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜12)フェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜12)フェニルエーテルのポリマーの硫酸エステル、ポリオキシエチレンフェニルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルのポリマーの硫酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの硫酸エステル、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化脂肪酸および硫酸化オレフィン等の硫酸エステル、並びにそれら硫酸エステルの塩が挙げられる。
【0012】
スルホン酸型界面活性剤:例えば、アルキル(C12〜22)スルホン酸、アルキル(C8〜12)アリールスルホン酸、アルキル(C8〜12)ベンゼンスルホン酸、アルキル(C8〜12)ベンゼンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸のホルマリン縮合物、α−オレフィン(C14〜16)スルホン酸、アルキル(C8〜12)スルホコハク酸、リグニンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜12)フェニルエーテルスルホン酸、ポリオキシエチレンアリールスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜18)エーテルスルホコハク酸ハーフエステル、ナフタレンスルホン酸、アルキル(C1〜6)ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキル(C1〜6)ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物、アルキル(C8〜12)ジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸およびスチレンスルホン酸とメタアクリル酸の共重合物等のスルホン酸、並びにそれらスルホン酸の塩が挙げられる。
燐酸エステル型界面活性剤:例えば、アルキル(C8〜12)燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜18)エーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜12)フェニルエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜12)フェニルエーテルのポリマーの燐酸エステル、ポリオキシエチレンフェニルフェニルエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルのポリマーの燐酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの燐酸エステル、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールイミンおよび縮合燐酸(例えばトリポリリン酸等)等の燐酸エステル、並びにそれら燐酸エステルの塩が挙げられる。
陰イオン性界面活性剤における塩としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウムおよびカリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウムおよびマグネシウム等)、アンモニウムおよび各種アミン(例えばアルキルアミン、シクロアルキルアミンおよびアルカノールアミン等)等が挙げられる。
上記陰イオン性界面活性剤の中で好ましいものとしては、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩、アルキル(C12〜22)スルホン酸塩、アルキル(C8〜12)ベンゼンスルホン酸塩、アルキル(C8〜12)スルホコハク酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアリールスルホン酸塩及びナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物である。
界面活性剤がポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)アリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)フェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸(C8〜18)エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩、アルキル(C12〜22)スルホン酸塩、アルキル(C8〜12)ベンゼンスルホン酸塩、アルキル(C8〜12)スルホコハク酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアリールスルホン酸塩及びナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物からなる群より選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
界面活性剤の含有量は、組成物中に0.5〜40重量%、好ましくは1〜20重量%である。
【0013】
本発明で使用することができる担体としては、鉱物系担体、植物系担体、高分子担体等を挙げることができる。
鉱物系担体としては、例えば、カオリナイト、ディッカナイト、ナクライト、ハロサイト等のカオリン;クリソタイル、リザータイト、アンチコライト、アメサイト等の蛇紋石;ナトリウムモンモリロナイト、カルシウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト等のモンモリロナイト;サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、ハイデライト等のスメクタイト;パイロフィライト、タルク、蝋石、白雲母、フェンジャイト、セリサイト、イライト等の雲母;クリストバライト、クォーツ等のシリカ;ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライト等の含水珪酸マグネシウム;ドロマイト、炭酸カルシウム微粉末等の炭酸カルシウム;ギプサム、石膏等の硫酸塩鉱物;ゼオライト;沸石;凝灰石;バーミキュライト;ラポナイト;軽石;珪藻土;酸性白土;活性白土;クレー;ホワイトカーボン、二酸化チタンなどの合成品担体が挙げられる。
植物系担体としては、例えば、セルロース、籾殻、小麦粉、木粉、澱粉、糠、ふすま、大豆粉等が挙げられる。
高分子担体としてはメチルセルロース、アラビアガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストラン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、カゼインナトリウム、デキストリンなどが挙げられる。その他の担体として、尿素、乳糖、硫安、蔗糖、食塩、芒硝、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸等が挙げられる。
上記担体の中で好ましいものとしては鉱物系担体であり、鉱物系担体がカオリン、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土、クレー及びホワイトカーボンからなる群より選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
担体の含有量は本水和剤に対し、通常3〜95重量%、好ましくは10〜90重量%である。
【0014】
本発明の組成物の製剤としては、粉剤、DL剤、粒剤、粉粒剤、マイクロカプセル剤、水和剤、顆粒水和剤などが挙げられ、好ましい製剤としては水和剤又は顆粒水和剤である。
上記組成物は、非晶質のアントラニルアミド系化合物又はその塩、界面活性剤および担体の他、崩壊剤、安定化剤、pH調整剤、着色剤および香料からなる群から選択される1種又は複数の成分を組み合わせて製造することができる。
以下に本組成物の好ましい製剤の製造方法について述べる。
【0015】
(1)水和剤
本発明の水和剤は、非晶質のアントラニルアミド系化合物又はその塩、界面活性剤、担体を含む粉末組成物であり、通常、上記の成分をV型混合機などの混合機で混合することにより製造することができる。こうして製造される水和剤の平均粒子径は、一般に50μm以下である。
【0016】
(2)顆粒水和剤
本発明の顆粒水和剤は、非晶質のアントラニル系化合物又はその塩、界面活性剤及び担体を含む粒状の固形組成物である。
本顆粒水和剤は、農薬の製剤化において通常用いられる造粒法によって製造することができる。該造粒法としては押出し造粒法、含浸造粒法、圧縮造粒法、攪拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、噴霧造粒法等を挙げることができる。
押出し造粒法によって顆粒水和剤を製造する一例を以下に示す。
【0017】
非晶質のアントラニルアミド系化合物又はその塩、界面活性剤及び担体を混合した後、混合物に対し、通常0.1〜100重量%の水を滴下あるいは噴霧し、混練して混練物を調製する。 次に、該混練物を造粒機で造粒し、乾燥、整粒、篩別処理することにより、顆粒水和剤を得ることができる。
造粒で使用する造粒機としては、バスケット型押出し造粒機、ドーム型押出し造粒機等を挙げることができ、乾燥機としては、流動層乾燥機やベッド式乾燥機等を挙げることができる。整粒機としては、マルメライザーやピンミル、解砕機等を挙げることができ、篩別機としては、ジャイロシフターや電磁振動式篩別機等を挙げることができる。こうして製造される本顆粒水和剤の平均粒子径は、一般に0.3〜10mm程度、好ましくは0.3〜5mm程度である。
【0018】
本発明の組成物は、望ましくは以下のものである。
(1)非晶質のアントラニルアミド系化合物又はその塩;非イオン性界面活性剤及び/又は陰イオン性界面活性剤;並びに鉱物系担体を含む組成物。
(2)非晶質のアントラニルアミド系化合物又はその塩;ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)アリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)フェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸(C8〜18)エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩、アルキル(C12〜22)スルホン酸塩、アルキル(C8〜12)ベンゼンスルホン酸塩、アルキル(C8〜12)スルホコハク酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアリールスルホン酸塩及びナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤;並びにカオリン、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土、クレー及びホワイトカーボンからなる群より選択される少なくとも1種の担体を含む組成物。
(3)1〜90重量%の非晶質のアントラニルアミド系化合物又はその塩、0.5〜40重量%の界面活性剤及び3〜95重量%の担体を含む上記(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)非晶質のアントラニルアミド系化合物又はその塩;ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、クレー及びホワイトカーボンを含む上記(3)の組成物。
本発明の組成物は通常、水で希釈して散布処理に使用される。本組成物の希釈倍率は、本組成物中の活性成分の含有量、施用場面等によるが、通常は5〜100,000倍、好ましくは10〜100,000倍、更に好ましくは50〜10,000倍である。
【実施例】
【0019】
以下に、本発明を実施例および試験例を挙げて説明するが、本発明の解釈はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例で使用した担体及び界面活性剤は下記の通りである。
カープレックス CS−7:ホワイトカーボン(エポニックデグサジャパン社製)
ソルポール5073:ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル・アンモニウム塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル(東邦化学社製)
ソルポール5060:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(東邦化学社製)
ノイゲンEA-33:ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(第一工業製薬社製)
実施例1
化合物(1)に5重量%のカープレックス CS−7を混合し、石川式攪拌擂潰機(石川工場社製:AGA型)を用いて15分間、乳鉢粉砕した。得られた粉砕物(平均粒子径:9.2μm)2.2gを1.2gのソルポール5073、0.8gのソルポール5060、0.4gのノイゲンEA-33、6gのカープレックスCS-7及び29.4gのクレーと混合した後、遠心粉砕機(日本精機製作所社製:1mmφスクリーン、10,000rpm)で混合粉砕を行い、化合物(1)を5重量%含有する粉末の水和剤を得た。
なお、乳鉢粉砕した粉砕物の平均粒子径は9.2μmであり、結晶形は粉末X線回折測定した結果、非晶質であった。図1にその粉末X線回折結果を示す。
粉末X線回折測定は、リガク社製RINT1200(Cu-Kα1)を用いて実施した。
【0020】
実施例2
化合物(1)0.53gを0.3gのソルポール5073 、0.2gのソルポール5060 、0.1gのノイゲンEA-33 、1.5gのカープレックスCS-7 および7.4gのクレーと混合した後、石川式攪拌擂潰機を用いて15分間乳鉢粉砕を行い、化合物(1)を5重量%含有する粉末の水和剤を得た。
なお、乳鉢粉砕した粉砕物の粉末X線回折測定を行った結果、クレー由来のピークのみで、化合物(1)由来のピークは確認できなかった。
【0021】
比較例1
結晶性の化合物(1)をターボカウンタージェツトミル(ターボ工業社製:TJ-60)を用いて、粉砕した。次に、得られた化合物(1)の微粒子(平均粒子径:2μ)2.1gを1.2gのソルポール5073、0.8gのソルポール5060 、0.4gのノイゲンEA-33、6gのカープレックスCS-7 および29.5gのクレーと混合した後、遠心粉砕機(日本精機製作所社製:1mmφスクリーン、10,000rpm)で混合粉砕を行い、化合物(1)を5%含有する粉末の水和剤を得た。
なお、ターボカウンタージェットミルにて粉砕した原体は粉末X線回折測定結果から結晶質であった。図2にその粉末X線回折結果を示す。
【0022】
試験例1 シルバーリーフコナジラミに対する効果試験
(1)試験溶液の調製
実施例1及び2、並びに比較例1で得た組成物(活性成分:5重量%)を4,000倍量の水で希釈して12.5ppmの試験溶液を調製した。
(2)効果試験
第一本葉を1枚残し、他の葉を切除したポット植えのキュウリに、シルバーリーフコナジラミの成虫を放して約24時間産卵させた。その後、25℃の照明付恒温室内に9日間放置した。孵化幼虫数を調査した後、12.5ppmの試験液を各々ハンドスプレーで、葉全体に均一に散布処理した。処理後10日間25℃の照明付恒温室内に放置した後、老齢幼虫数および蛹数を調査し、下記計算式により防除価を求めた。試験結果を第1表に示した。第1表の結果のとおり、非晶質化した原体を含む本発明製剤は比較製剤に比べ優れた防除効果を示した。
防除価(%)=(1−((Ta×Cb)/(Tb×Ca)))×100
Ta:処理区における処理後の老齢幼虫数+蛹数
Tb:処理区における処理前の孵化幼虫数
Ca:無処理区における処理後の老齢幼虫数+蛹数
Cb:無処理区における処理前の孵化幼虫数
【0023】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺虫剤の有効成分としての非晶質のアントラニルアミド系化合物又はその塩、界面活性剤及び担体を含むことを特徴とする有害生物防除用固形組成物。
【請求項2】
アントラニルアミド系化合物が、3−ブロモ−N−(2−ブロモ−4−クロロ−6−(1−シクロプロピルエチルカルバモイル)フェニル)−1−(3−クロロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド、3−ブロモ−N−(4−クロロ−2−(1−シクロプロピルエチルカルバモイル)−6−メチルフェニル)−1−(3−クロロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド、3−ブロモ−N−(2−ブロモ−4−クロロ−6−(シクロプロピルメチルカルバモイル)フェニル)−1−(3−クロロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド、3−ブロモ−N−(4−クロロ−2−メチル−6−(メチルカルバモイル)フェニル)−1−(3−クロロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド又は、3−ブロモ−1−(3−クロロピリジン−2−イル)−N−(4−シアノ−2−メチル−6−(メチルカルバモイル)フェニル)−1H−ピラゾール−5−カルボキサミドである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤及び/又は陰イオン性界面活性剤である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)アリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)フェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸(C8〜18)エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩、アルキル(C12〜22)スルホン酸塩、アルキル(C8〜12)ベンゼンスルホン酸塩、アルキル(C8〜12)スルホコハク酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアリールスルホン酸塩及びナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
担体が鉱物系担体である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
担体がカオリン、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土、クレー及びホワイトカーボンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
非晶質のアントラニルアミド系化合物又はその塩;非イオン性界面活性剤及び/又は陰イオン性界面活性剤;並びに鉱物系担体を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
非晶質のアントラニルアミド系化合物又はその塩;ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)アリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキル(C8〜18)フェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸(C8〜18)エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩、アルキル(C12〜22)スルホン酸塩、アルキル(C8〜12)ベンゼンスルホン酸塩、アルキル(C8〜12)スルホコハク酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアリールスルホン酸塩及びナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤;並びにカオリン、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土、クレー及びホワイトカーボンからなる群より選択される少なくとも1種の担体を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
水和剤又は顆粒水和剤である請求項1に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−256321(P2009−256321A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53421(P2009−53421)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】