説明

有機ガスの透過性評価方法および透過性評価装置

【課題】密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を的確に評価できるうえ、有機ガスの透過性評価の精度を向上することができる透過性評価方法および透過性評価装置に関する。
【解決手段】磁気ディスク装置10を配置した加熱恒温槽1に不活性ガスを供給し、加熱恒温槽1内に供給された不活性ガスを、加熱恒温槽1の外部に接続した吸着管6により吸着させ捕集し、加熱恒温槽1内に供給された不活性ガスが、磁気ディスク装置10の内部に侵入した場合、当該不活性ガスの有機ガス成分を、磁気ディスク装置10に配置した吸着剤11により吸着し、吸着管6による有機ガスの濃度と、吸着剤11による有機ガスの濃度とを分析し、両者の有機ガスの比率により有機ガスの透過性を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ガスの透過性を評価する有機ガスの透過性評価方法および透過性評価装置に関し、特に、評価用の有機ガス濃度を一定にする事により磁気ディスク装置などの密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を的確に評価および評価精度を向上することができる有機ガスの透過性評価方法および透過性評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、磁気ディスク装置の内部には、磁気ディスクに対してデータをリード/ライトする磁気ヘッドや磁気ヘッドを支持するヘッドサスペンション、磁気ディスクを回転させるスピンドルモータなどの駆動部を備えており、これらの部品は塵や埃などの混入を防止すべく外装カバーにより密閉された状態で筐体内に収納されている。
【0003】
ところで、このように密閉構造となっている磁気ディスク装置の場合、塵や埃など以外に外部から有機ガスが侵入する場合がある。
【0004】
ここで、有機ガスのうちシリコーンガスなどが磁気ディスク装置の内部に多量に侵入した場合には、ヘッドクラッシュやヘッドの浮上変動などの障害を引き起こす事があるため、このような磁気ディスク装置を対象として、(1)有機ガスの透過性を予めガス捕集装置やガス分析装置などを使用して有機ガスを分析することが行なわれている。
【0005】
具体的には、ガス差圧法(JISK7126)による透過性試験などが一般的に適用されている。また、有機ガス以外では、カップ法(JISZ0208)や湿度センサー法(JISK7129)による水蒸気の透過性評価方法などが一般的に適用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、(2)発生した有機ガスをガス捕集装置やガス分析装置などを使用して分析する方法が行なわれている(例えば、非特許文献1参照)。この場合の分析方法では、磁気ディスク装置のカバーに2個の通孔を形成し、一方に、吸着剤として、高分子ポーラスビーズ(例えば、Tenax樹脂)を固定し、他方からはN2ガスなどのキャリヤーガスを供給し、磁気ディスク装置内部から発生するガスを捕集する。
【0007】
そして、捕集した吸着管を前処理装置として加熱脱着装置が付設したガスクロマトグラフ(以下GCと略す)に検出器として質量分析計(MSD)などが付設した分析装置を使用して分析することとしている。
【0008】
また、(3)磁気ディスク装置内部の媒体へのガス吸着をガスによる曝露装置や分析装置などを使用して分析するなどの評価方法が行なわれている(例えば、特許文献2参照)。具体的には、媒体を加熱容器に入れ、発生した水蒸気などのガスをキャリヤーガスで搬送した後、測定セルに導入し吸着しているガスを分析する方法が知られている。
【0009】
【特許文献1】特開2003−141872号公報
【特許文献2】特開2000−20950号公報
【非特許文献1】IDEMA STANDARDS Microcontamination Document No. M11-99
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上述した有機ガスの透過性評価方法の場合には、以下に示す問題がある。すなわち、評価対象となる磁気ディスク装置の内部に吸着剤を配置した有機ガス透過性評価方法の場合には、磁気ディスク装置のパッキンからの透過つまり内部から外部への流出、あるいは外部から内部への侵入が考えられる。
【0011】
このため、測定したい対象サンプルを全てサンプリングしている事にならないため、正確な評価ができないという問題がある。また、吸着剤は基本的には気流が衝突(気流との接触)して吸着現象を起こすものであることから、自然対流現象による吸着では淀みがあり、この結果、正確に有機ガスの透過性を評価できないという問題がある。
【0012】
さらに、このような方法の場合、磁気ディスク装置内外の濃度が一定になった時(平衡状態)が、評価の終点となり得る。ところが実際の現象を考えると、例えば、一般の室内環境やクリーンルーム環境内のガスの量は、建材等からガスが発生しているうえ、その空間容積も大きいことから、ガスが吸着剤に吸着する量に対して無限大、つまり吸着剤に吸着される量があったとしても、それは微量であり周囲環境の量(濃度・分圧)は変化しないと考えられることから現実の現象とは異なるという問題がある。
【0013】
また、磁気ディスク装置を内部に配置する密閉容器は、容器と蓋から構成されるガラス容器であるため、接合部の隙間からの有機ガスの抜け(流出)と容器内部への吸着が懸念されるうえ、容器内部はいつも所定の初期濃度になっていない可能性がある。
【0014】
すなわち、透過性ガスの仕込み量は有機ガスの評価後では、磁気ディスク装置の内部への侵入量、容器外部へのリーク量、容器内部への吸着量、容器内部で吸着剤に捕集された量、磁気ディスク装置の内部で吸着剤に捕集された量、容器内部と磁気ディスク装置の内部に漂っている量(吸着剤に捕集されていない量)との総和になるべきであるが、これらの各量は実際には、測定できない項目があるため有機ガスの評価としては、正確ではないという問題がある。
【0015】
また、非特許文献1に開示された磁気ディスク装置のカバーに供給口と排出口の2箇所に通孔を形成し、一方から不活性ガスを流し他方に吸着管を設置して発生ガスをサンプリングする方法の場合、磁気ディスク装置の内部や吸着管の抵抗により、不活性ガスが排出口から排出されない場合や排出側でサンプリングし易くするために、吸着管の後ろからポンプで吸引する場合がある。
【0016】
この時、圧力バランスによっては、不活性ガスがパッキン等から磁気ディスク装置の外部に漏出したり、吸引することでパッキン等から周囲環境ガスが磁気ディスク装置の外部から内部に侵入する恐れがあるため、磁気ディスク装置内部から漏出する発生ガスを正確に分析/評価できないという問題がある。
【0017】
また、磁気ディスク装置の内部等に強制的に汚染ガスを導入する際、相互間の漏れ量が不明であるため、正味のガス導入量がバラツキ、それを制御あるいは考慮した実験条件を構築するのが困難であるという問題がある。
【0018】
さらに、このような汚染ガスなどの有機ガスの評価用の物質は、磁気ディスク装置の内部や密閉容器内部の汚染によりガスとして発生することが考えられる。このため、発生したガスや透過したガスが評価用のガスによるものか汚染によるガスによるものかが不明確となるため、正確な有機ガスの透過評価方法とはいえない。
【0019】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、
評価用の有機ガス濃度を一定にする事により磁気ディスク装置などの密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を的確に評価および評価精度を向上することができる有機ガスの透過性評価方法および透過性評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した問題を解決し、目的を達成するため、本発明は、密閉型筐体を配置した密閉容器内に不活性ガスを供給し、密閉容器内に供給された不活性ガスを密閉容器の外部に接続した吸着管により吸着させ捕集し、密閉容器内に供給された不活性ガスが、密閉型筐体の内部に侵入した場合に、当該不活性ガスの有機ガス成分を、密閉型筐体内に配置した吸着剤吸着剤により吸着し、吸着管により捕集した有機ガスの濃度と、吸着剤により吸着した有機ガスの濃度とを分析し、両者の比率により有機ガスの透過性を評価する有機ガスの透過性を評価する方法としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、評価用の有機ガス濃度を一定にする事により磁気ディスク装置などの密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を的確に評価できるうえ、有機ガスの透過性評価の精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に添付図面を参照し、本発明の有機ガスの透過性評価方法および透過性評価装置に係る各実施例1〜実施例5について詳細に説明する。なお、以下に示す実施例1〜実施例5によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
[有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴]
先ず最初に、本実施例1に係る有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴を説明する。図1は、本実施例1に係る有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴を説明するための説明図である。
【0024】
同図に示すように、本実施例1において、磁気ディスク装置10を対象とする有機ガスの透過性評価方法では、内部に磁気ディスク装置10を配置する加熱恒温槽1と、この加熱恒温槽1の内部に不活性ガスを供給する不活性ガス発生装置Pと、磁気ディスク装置10の内部に配置されるとともに不活性ガスを吸着する吸着剤11と、加熱恒温槽1内の不活性ガスを排出管4を通じて、吸着し捕集する吸着管6とを用いて行なわれる。
【0025】
ここで、本実施例1では、特に、磁気ディスク装置10を内部に配置した加熱恒温槽1に、不活性ガス発生装置Pから評価したいガス成分を添加させたヘリウムガス(He)や窒素ガス(N2)を一定流量供給しながら、磁気ディスク装置10の排出側の吸着管6に発生ガスを捕集するとともに、加熱恒温槽1への流出分(磁気ディスク装置10内部から外部に透過する有機ガス)は、加熱恒温槽1の排出側の吸着管6に捕集することとしている。
【0026】
すなわち、加熱恒温槽1の内部に、ガス濃度を一定かつ連続的に一定流量供給する事で、磁気ディスク装置10内に透過した評価対象となる有機ガス成分の濃度を測定することとしている。
【0027】
すなわち、同図に示すように、評価対象としての磁気ディスク装置10を内部に配置した加熱恒温槽1(密閉容器)の所定位置(図1の左側と右側)には、不活性ガスを発生させる不活性ガス発生装置Pの供給管5を挿通させる通孔2と、加熱恒温槽1の内部に供給された不活性ガスを排出させるための通孔3が形成されている。また、この通孔3には、加熱恒温槽1内に供給された不活性ガスを捕集して吸着させる吸着管6に不活性ガスを導入させるための排出管4が接続されている。
【0028】
不活性ガス発生装置Pは、例えば、ヘリウムガス(He)や窒素ガス(N2)などの不活性ガスを発生させる装置であり、この不活性ガス発生装置Pは、不活性ガスに評価したいガス成分を発生させ混合する装置である。
【0029】
なお、加熱恒温槽1の内部に不活性ガスを供給する装置は、不活性ガス発生装置ではなく、透過性ガス成分添加ボンベであってもよい。具体的には、透過性を評価したいガス成分を含んだ既知濃度のガスボンベでもよい。
【0030】
また、透過性ガスを捕集した吸着管6は、透過性ガスが未知濃度の場合や既知濃度であっても、濃度を確認する場合はGC-MS分析装置などで測定することとする。ここで、ガス濃度のトレーサビリティが明確なボンベを使用した場合は、吸着管6により捕集したガス濃度を必ずしも測定しなくても良い。
【0031】
また、磁気ディスク装置10の内部の所定位置には、不活性ガス発生装置Pから供給された不活性ガスが磁気ディスク装置10の内部に侵入した場合に、この侵入した不活性ガスの有機ガス成分を捕集し吸着する吸着剤11(または、固層吸着剤)が配置されている。
【0032】
後述するように、磁気ディスク装置10内部の有機ガス濃度については、吸着剤11を取り出して、同様にGC-MS分析装置などで測定する。なお、この吸着剤11には、例えば、ポーラスポリマービーズなどの多孔質高分子材を使用することができる。
【0033】
GC−MS分析装置は、分離分析装置であるガスクロマトグラフと定性分析装置である質量分析計とを組み合わせたガスクロマトグラフ質量分析法(GC−MS)を使用することで正確に物質の質量を分析する装置である。
【0034】
[有機ガスの透過性評価方法による処理手順]
次に、図2を用いて、本実施例1に係る有機ガスの透過性評価方法の処理手順について説明する。図2は、有機ガスの透過性評価方法による処理手順を示すフローチャートである。
【0035】
すなわち、同図のフローチャートに示すように、先ず、磁気ディスク装置10(図1)を内部に配置した加熱恒温槽1(図1)に対する不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程を行なう(ステップS1)。この不活性ガス供給工程により磁気ディスク装置10の外側に一定濃度・一定流量の透過性ガスを供給することができる。ここで、供給する不活性ガスの量は、一定流量であることが好ましい。
【0036】
次に、ステップS1の不活性ガス供給工程により加熱恒温槽1内に供給された不活性ガスを、加熱恒温槽1の外部に接続した吸着管6(図1)により吸着させ捕集する不活性ガス捕集工程を行なう(ステップS2)。
【0037】
次に、加熱恒温槽1内に供給された不活性ガスが、磁気ディスク装置10の内部に侵入した場合に、当該不活性ガスの有機ガス成分を、磁気ディスク装置10に配置した吸着剤11により吸着する有機ガス成分吸着工程を行なう(ステップS3)。前述したように、吸着剤11は、磁気ディスク装置10の内部に存在する外部から透過した有機ガスを吸着することができる。
【0038】
次に、吸着管6により捕集した有機ガスの濃度と、吸着剤11により吸着した有機ガスの濃度とを分析する有機ガス濃度分析工程を行う(ステップS4)。具体的には、それぞれ加熱脱着装置付きのGC-MS分析装置により定性定量を行う。
【0039】
そして、最後に有機ガス成分分析工程により分析された測定データに基づいて、評価目的の透過性ガス濃度と磁気ディスク装置10内部のガス濃度との比率により透過性を評価する有機ガス透過性評価工程を行う(ステップS5)。
【0040】
ここで、本実施例1の場合、有機ガスの透過性評価方法を行なう場合は、図2に示すフローチャートに基づいて、人手により実施することとしているが、人手ではなく作業ロボットなどを利用して、この有機ガスの透過性評価方法を行なうようにしてもよい。
【0041】
以上説明したように、本実施例1の有機ガスの透過性評価方法では、磁気ディスク装置10を配置した加熱恒温槽1に不活性ガスを供給し、加熱恒温槽1内に供給された不活性ガスを、加熱恒温槽1の外部に接続した吸着管6により吸着させ捕集し、加熱恒温槽1内に供給された不活性ガスが、磁気ディスク装置10の内部に侵入した場合に、当該不活性ガスの有機ガス成分を、磁気ディスク装置10に配置した吸着剤11により吸着し、吸着管6により捕集した有機ガスの濃度と、吸着剤11により吸着した有機ガスの濃度とを分析し、両者の比率により有機ガスの透過性を評価するので、磁気ディスク装置10の周囲環境濃度は一定になるので、その不変な濃度に対して、ある時間における磁気ディスク装置10内部の透過性評価ガス濃度を測定する事が可能となる。したがって、バラツク要因が少なく精度が向上し、実際の現象に近い評価とすることができる。これによって、磁気ディスク装置などの密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を的確に評価および評価精度を向上させることができる。
【0042】
また、上述したように、本実施例1では、評価ガス濃度を一定にして連続的に一定流量供給する事により、磁気ディスク装置10を設置してある加熱恒温槽1の内壁表面に吸着する量は見かけ上「0」となり、周囲のガス濃度は一定になる。また、加熱恒温槽1の外部に有機ガスの漏出があった場合でも、この加熱恒温槽1内の濃度は不変となることから、評価データがバラツク要因を減少させることができる。
【実施例2】
【0043】
[有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴]
次に、本実施例2に係る有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴を説明する。図3は、本実施例2に係る有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴を説明するための説明図である。ここで、図3に示すように、本実施例2では、磁気ディスク装置10から流出する発生ガス或いは、磁気ディスク装置10の内部から流出する発生ガスの分析方法を透過性評価方法としていることに特徴がある。また、磁気ディスク装置10の構成部品から発生する有機ガスの評価方法としている。
【0044】
図3に示すように、本実施例2における磁気ディスク装置10を対象とする有機ガスの透過性評価方法では、内部に磁気ディスク装置10を配置する加熱恒温槽1と、この加熱恒温槽1の内部に配置された磁気ディスク装置10の内部に不活性ガスを供給管5を通じて供給する不活性ガス発生装置Pと、磁気ディスク装置10の内部に存在する不活性ガスを排出管7を通じて捕集する吸着管8と、加熱恒温槽1の内部に配置した吸着剤20とを用いて行なうことを概要とする。
【0045】
すなわち、同図に示すように、内部に磁気ディスク装置10を配置した加熱恒温槽1の所定位置(図1の左側と右側)には、不活性ガスを発生させる不活性ガス発生装置Pの供給管5を挿通させる通孔2と、加熱恒温槽1の内部に供給された不活性ガスを排出させるための通孔3が形成されている。
【0046】
また、磁気ディスク装置10の上部位置には、不活性ガス発生装置Pからの供給管5を挿通させる通孔14と、排出管7を挿通させる通孔15がそれぞれ形成されている。この通孔15には、磁気ディスク装置10の内部に存在する不活性ガスを吸着管8に導入させるための排出管7が接続されている。また、加熱恒温槽1の内部であって、磁気ディスク装置10の外部には、吸着剤20(または、固層吸着剤)が配置されている。
【0047】
不活性ガス発生装置Pは、実施例1と同様に、例えば、ヘリウムガス(He)や窒素ガス(N2)などの不活性ガスを発生させる装置であり、この不活性ガス発生装置Pは、不活性ガスに評価したいガス成分を添加させ混合させる装置である。
【0048】
また、加熱恒温槽1の内部に配置された吸着剤20は、磁気ディスク装置10の内部から加熱恒温槽1の外部へと流出(透過)した、有機ガスを吸着し捕集する機能を備えている。また、この吸着剤20は、実施例1と同様に、例えば、ポーラスポリマービーズなどの多孔質高分子材を使用することができる。
【0049】
なお、透過性評価ガス濃度について、未知の場合などでは磁気ディスク装置10の内部に導入される直前に配管を分岐するなどして、吸着管8を設置可能な部位を設置する場合もある。ここで、吸着管8により捕集した有機ガスは加熱脱着装置付きのGC-MS分析装置などにより定性定量分析を行なう。
【0050】
本実施例2において、有機ガスの透過性評価方法を行なう場合、不活性ガス発生装置Pから発生する不活性ガスを、供給管5を通じて磁気ディスク装置10の内部に供給する。
この場合、この磁気ディスク装置10の内部に供給される不活性ガスは、一定濃度となる(内部環境濃度は一定)。
【0051】
また、この磁気ディスク装置10の内部に供給された不活性ガスは、磁気ディスク装置10の通孔15に接続された排出管7を通じて、吸着管8に吸着され捕集される。
【0052】
そして、磁気ディスク装置10からの透過性ガスを吸着剤20により吸着し捕集し、この透過性ガス量を測定する。そして、評価目的の透過性ガス濃度と加熱恒温槽1内部の濃度との比率に基づいて、有機ガスの透過性を評価する。ここで、実施例1と同様に、ガス濃度のトレーサビリティが明確なボンベを使用した場合などでは、必ずしも吸着管8によるガス濃度測定を行なう必要はない。
【0053】
ここで、本実施例2では、不活性ガス発生装置Pから発生させる不活性ガスに透過性評価ガスを混入する例として説明しているが、このような透過性評価ガスを混入させない場合は、磁気ディスク装置10の内部或いは、加熱恒温槽1の内部に配置した部品からの発生ガス分析法として使用することができる。
【0054】
この場合、発生するガス量は吸着管8によるガス量を測定した量と、吸着剤20によるガス量を測定した量の合計値となる。これにより、磁気ディスク装置10から漏出した量についても考慮する事が可能となり、より精度が高い有機ガスの透過性評価方法とすることができる。
【0055】
以上説明したように、本実施例2の有機ガスの透過性評価方法では、不活性ガス発生装置Pから加熱恒温槽1の内部に配置された磁気ディスク装置10の内部に不活性ガスを供給管5を通じて供給し、磁気ディスク装置10の内部に存在する不活性ガスを排出管7を通じて吸着管8により吸着し捕集し、加熱恒温槽1の内部に配置した吸着剤20により磁気ディスク装置10から漏出した有機ガス(透過性ガス)を吸着するとともに両者の比率により有機ガス濃度を分析することとしているので、磁気ディスク装置10の内部環境濃度は一定になることから、その不変な濃度に対して、ある時間における磁気ディスク装置10外部への透過性評価ガス濃度を測定する事を可能とすることができる。したがって、評価によるバラツク要因を少なくすることができ評価精度が向上するうえ、実際の現象に近い評価方法を実現することができる。
【実施例3】
【0056】
[有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴]
次に、本実施例3に係る有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴を説明する。図4は、本実施例3に係る有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴を説明するための説明図である。ここで、本実施例3では、加熱恒温槽1と磁気ディスク装置10の内部にそれぞれ不活性ガスを供給する不活性ガス流路を設けるように構成した有機ガスの透過性評価方法であることに特徴がある。
【0057】
図4に示すように、磁気ディスク装置10を配置した加熱恒温槽1の上部位置(図4の左側上部)には、通孔2が形成されている。この通孔2には、ヘリウムガス(He)や窒素ガス(N2)に評価したいガス成分を添加させた不活性ガスを発生させる不活性ガス発生装置Pの供給管5が挿通されている。
【0058】
また、加熱恒温槽1の下部位置(図4の左側下部)には、同じく不活性ガスを発生させる不活性ガス発生装置P´の供給管13を挿通させる通孔12が形成されている。また、加熱恒温槽1の上部位置(図4の右側上部)には、通孔3が形成されている。この通孔3には、加熱恒温槽1の内部に供給された不活性ガスを吸着管6に排出させる排出管4が接続されている。
【0059】
また、磁気ディスク装置10の上部位置には、不活性ガス発生装置P´からの供給管13を挿通させる通孔14と、排出管7を接続する通孔15とがそれぞれ形成されている。
【0060】
磁気ディスク装置10の内部には、不活性ガス発生装置P´からの供給管13を通じて、不活性ガスが供給される、また、この磁気ディスク装置10の内部に供給された不活性ガスは、排出管7を通じて、吸着管8により吸着され捕集される。
【0061】
ここで、吸着管8には、捕集する有機ガスの濃度に応じてリアルタイム測定を行えるようなIA−MS分析装置などを接続するようにしてもよい。また、透過性評価を対象とするガス濃度について、未知の場合は加熱恒温槽1に入る直前に配管を分岐するなどして、吸着管8を設置可能な部位を設置することとしてもよい。
【0062】
不活性ガス発生装置P´は、この不活性ガス発生装置P´の上部に設けた不活性ガス発生装置Pと同様に、例えば、ヘリウムガス(He)や窒素ガス(N2)などの不活性ガスを発生させる装置であり、この不活性ガス発生装置Pは、不活性ガスに評価したいガス成分を発生させ混合する装置である。
【0063】
本実施例3において、有機ガスの透過性評価方法を行なう場合、不活性ガス発生装置Pから発生させた不活性ガスを、供給管5を通じて加熱恒温槽1の内部に供給する。この場合、この加熱恒温槽1の内部に供給される不活性ガスは、一定濃度となる。ここで、加熱恒温槽1内部の不活性ガスを排出管4を通じて吸着管6により捕集する。
【0064】
また、不活性ガス発生装置P´から発生させた不活性ガスを、供給管13を通じて磁気ディスク装置10の内部に供給する。この場合も、磁気ディスク装置10の内部に供給された不活性ガスは、一定濃度となる。そして、この磁気ディスク装置10の内部に供給された不活性ガスを、磁気ディスク装置10の通孔15に接続された排出管7を通じて、吸着管8に吸着し捕集する。
【0065】
そして、吸着管6および吸着管8により捕集した透過性ガス濃度を測定し、評価目的の透過性ガス供給側濃度と磁気ディスク装置10からの排出された透過性ガス濃度との比率により有機ガスの透過性を評価する。
【0066】
ここで、有機ガスの透過性を評価する際、透過してきた有機ガスを捕集するタイミングは、例えば、一定時間評価ガスを磁気ディスク装置10の周囲に供給した後、磁気ディスク装置10の内部に透過してきたガスを捕集するようにしてもよい。
【0067】
また、吸着管8による有機ガスの吸着量と磁気ディスク装置10内部に供給した不活性ガス量から磁気ディスク装置10内部に透過してきたガス濃度を、加熱恒温槽1に供給した評価ガスの濃度から、透過性の比率を算出する。そして、所定の時間における透過してきたガス量を算出し、算出されたガス量から透過性を分析する。
【0068】
ここで、種々の時間に対する透過量を算出し、その傾きやグラフ形状に基づいて、有機ガスの透過性の判断を行うこともできる。具体的には、傾きが低い場合は、ガス量の透過性が低いと分析することができる。また、グラフの傾きが高い場合は、ガス量の透過性が高いと分析することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施例3の有機ガスの透過性評価方法では、不活性ガス発生装置Pから発生させた不活性ガスを、供給管5を通じて加熱恒温槽1の内部に供給し、加熱恒温槽1内部の不活性ガスを排出管4を通じて吸着管6により捕集し、不活性ガス発生装置P´から発生させた不活性ガスを、供給管13を通じて磁気ディスク装置10の内部に供給し、磁気ディスク装置10の内部に供給された不活性ガスを、磁気ディスク装置10の通孔15に接続された排出管7を通じて、吸着管8に吸着し捕集し、吸着管6および吸着管8により捕集した透過性ガス濃度を測定し、評価目的の透過性ガス供給側濃度と磁気ディスク装置10からの排出側濃度との比率により有機ガスの透過性を評価することとしているので、磁気ディスク装置10の周囲環境濃度は一定になるので、その不変な濃度に対して、ある時間における磁気ディスク装置10内部の透過性評価ガス濃度を測定する事が可能となる。したがって、バラツク要因が少なく精度が向上し、実際の現象に近い評価とすることができる。
【実施例4】
【0070】
[有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴]
次に、本実施例4に係る有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴を説明する。図5は、本実施例4に係る有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴を説明するための説明図である。ここで、本実施例4では、磁気ディスク装置の内部に汚染ガスを強制的に供給することで、有機ガスの透過性を評価する有機ガス透過性評価方法としている。
【0071】
ここで、本実施例4の構成要件は、前述した実施例3の構成要件とほぼ同じ構成であるが、磁気ディスク装置10および各内部部品を対象とするガスに対する耐久性を評価する手法として、磁気ディスク装置10の供給口側から、不活性ガスに耐久性を悪化させる汚染ガスを混合させることを概要とする。すなわち、汚染ガスの混入量に対する磁気ディスク装置10或いは部品の耐久性や信頼性を有機ガスの透過性評価方法としている。
【0072】
同図に示すように、内部に磁気ディスク装置10(または、部品)を配置した加熱恒温槽1の上部位置(図5の左側上部)には、ヘリウムガス(He)や窒素ガス(N2)などの不活性ガスを発生させる不活性ガス発生装置Pの供給管5を挿通させる通孔2が形成されている。
【0073】
また、加熱恒温槽1の下部位置(図5の左側下部)には、汚染ガス(例えば、シロキサン等)を混入させた不活性ガスを発生させる不活性ガス発生装置P´の供給管13を挿通させる通孔12が形成されている。また、加熱恒温槽1の下部位置(図5の右側上部)には、この加熱恒温槽1の内部に供給された不活性ガスを排出管4通じて排出させる通孔3が形成されている。
【0074】
また、磁気ディスク装置10の上部位置には、不活性ガス発生装置P´からの供給管13を挿通させる通孔14と、排出管7を挿通させる通孔15がそれぞれ形成されている。この排出管7は、加熱恒温槽1の下部位置(図5の右側下部)に形成された通孔3を通じて、磁気ディスク装置10内に供給された不活性ガスを捕集して吸着させる吸着管8に接続されている。
【0075】
不活性ガス発生装置Pは、実施例1と同様に、例えば、ヘリウムガス(He)や窒素ガス(N2)などの不活性ガスを発生させる装置であり、この不活性ガス発生装置Pは、不活性ガスに評価したいガス成分を発生させ混合する装置である。
【0076】
不活性ガス発生装置P´は、この不活性ガス発生装置P´の上部に設けた不活性ガス発生装置Pと同様に、例えば、ヘリウムガス(He)や窒素ガス(N2)などの不活性ガスを発生させる装置であり、本実施例4では、特に、不活性ガスに磁気ディスク装置10や部品の耐久性を悪化させる汚染ガス(例えば、シロキサンなど)が混入されている。
【0077】
本実施例4において、有機ガスの透過性評価方法を行なう場合、加熱恒温槽1の内部に不活性ガスを供給させるとともに、加熱恒温槽1の内部に不活性ガスを供給し、磁気ディスク装置10の内部に汚染ガスを混入させた不活性ガスを供給し、加熱恒温槽1の排出管4を通じて吸着管8に吸着され捕集した量を磁気ディスク装置10から漏出したガスが正味の汚染量として算出する。
【0078】
以上説明したように、本実施例4の有機ガスの透過性評価方法では、加熱恒温槽1の内部に不活性ガスを供給させるとともに、加熱恒温槽1の内部に不活性ガスを供給し、磁気ディスク装置10の内部に汚染ガスを混入させた不活性ガスを供給するので、磁気ディスク装置10から漏出した汚染ガス量は、加熱恒温槽1の排出管4に接続された吸着管6により正確に算出できることから、磁気ディスク装置10を対象とする有機ガスによる耐久性(信頼性)と汚染ガス量との影響評価の精度を向上させることができるうえ、汚染ガスの混入量に対する磁気ディスク装置10或いは部品の耐久性や信頼性を効率的に評価することができる。
【実施例5】
【0079】
[有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴]
次に、本実施例5に係る有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴を説明する。図6は、本実施例5に係る有機ガスの透過性評価方法の概要および特徴を説明するための説明図である。ここで、本実施例5では、有機ガスの漏れと混入を補正可能な発生ガス分析を行なうことができる有機ガスの透過性評価方法に特徴がある。
【0080】
ここで、本実施例5における有機ガスの透過性評価方法を行なう構成は、前述した実施例3、4とほぼ同様の構成であるが、この実施例5では、不活性ガス発生装置P、P´から供給させる不活性ガス中に自然界には無い水素(H)の同位体元素である重水素を有する物質D1、D2(例えば、トルエン-d8、アセトン-d6やメタノール-d3等の化合物)をそれぞれの高純度ガスに異なる物質として(重水素を有する物質D1、D2)を一定濃度混入させている。そして、それらを例えば、GC−MS装置で測定することにより、有機ガスの漏れや混入量を把握する構成としている。
【0081】
すなわち、重水素を有する物質D1、D2は、自然界には存在しない物質であるから、磁気ディスク装置10内部からの発生と加熱恒温槽1内からの発生はないこととなる。
【0082】
これにより、双方の吸着管6、8に捕集されたガスの量から、どちらの側からガスが漏出されたのか、そしてその漏れと混入量が計算可能となるので、有機ガスの導入量・ガスの濃度を精度良く算出することが可能になる。
【0083】
具体的に説明すると、加熱恒温槽1および磁気ディスク装置10に供給する不活性ガスに透過量・漏れ量のマーカーとなる成分(重水素を有する物質D1、D2)を微量に混入させるようにしている。
【0084】
ここで、透過量・漏れ量のマーカーとなる成分は、発生ガスに存在していると好ましくないため、不活性ガスに自然界には無い水素(H)の同位体元素である重水素(D)を有する物質、例えばトルエン-d8、アセトン-d6やメタノール-d3等の化合物をそれぞれの高純度ガスに異なる物質(D1,D2)を一定濃度混入させる構成としている。そして、このガス濃度を、例えば、GC−MS装置で測定することにより、どちらの側にどれ位の量が漏出したか混入したかを分析することが可能となる。
【0085】
上述したように、本実施例5において有機ガスの透過性評価方法を行なう場合、有機ガスの漏れや混入量を把握可能なマーカー、例えば、評価物質にトルエン−d8(分子量100)を不活性ガスに混入することにより、磁気ディスク装置10からトルエン(分子量92)が発生した場合でも、測定に質量分析計を使用することで、分子量100のトルエンなのか分子量92のトルエンなのかを区別する評価方法を行なう。すなわち、これによって、磁気ディスク装置10からの正味の透過量(ガス発生量)を把握することができるようにしている。
【0086】
以上説明したように、本実施例5の有機ガスの透過性評価方法では、正味のガス導入量(インジェクション量)を把握する事が可能となるため、評価精度の向上効果を得ることができる。また、汚染ガスに対しても同様な手法を採ることで、切り分けが可能となり、評価精度の向上効果を得ることができる。すなわち、これまでの磁気ディスク装置10の評価で精度低下要因として問題であった磁気ディスク装置10内部におけるガスの出入りの影響を最小化でき、精度の高い評価方法を実現することができる。
【0087】
(他の実施例)
さて、これまで本発明の実施例1〜5について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、上記特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において、種々の異なる実施例にて実施することもできる。
【0088】
すなわち、前述した実施例5で説明した有機ガスの透過性評価方法におけるガス導入方法は、前述した実施例1〜実施例4においてもガスの供給量・導入量(インジェクション量)を精度良く把握することができる。
【0089】
具体的に説明すると、例えば、実施例4の汚染ガス自体に、重水素を有する物質D1を使用することで、意図した物質なのか汚染による物質なのかを切り分ける事が可能となる。
【0090】
また、本実施例5で示した汚染化合物としては、例えば、(1)芳香族化合物として、トルエン-d8などが、(2)-OH基を有するアルコール化合物として、メタノール-d4、エタノール-d6、イソプロピルアルコール-d8などが、(3)フタル酸エステル化合物として、ジエチルフタレート-3、4、5、6-d4、ジブチルフタレート-3、4、5、6-d4、ジブチルフタレート-3、4、5、6-d22、ジ-2エチルフタレート-3、4、5、6-d4などが、(4)アジピン酸エステル化合物として、ジ-2エチルヘキシルアジペート-d8など実際に販売されているものを採用することができる。
【0091】
また、(5)シリコン化合物として、ヘキサメチル-d18-ジシロキサン、テドラメチルシラン-d12、テトラエトキシ-d20-シランなどが、(6)炭化水素化合物として、ヘキサン-d143、ヘプタン-d14などが、(7)含窒素化合物として、ジクロロメタン-d2、クロロホルム-d1などが、(8)含酸素化合物として、アセトン-d6など実際に販売されているものを採用することができる。
【0092】
また、(9)含硫黄化合物として、ジメチルスルフォキシド-d6などが、(10)含窒素化合物として、N、N´-ジメチルアセトアミド-d9などが、(11)含リン化合物として、リン酸トリメチル-d9、リン酸トリブチル-d27などが、(12)含すず化合物として、塩化トリフェルすず-d15、塩化トリブチルすず-d27、テトラフェニルすず-d36など実際に販売されているものを採用することができる。
【0093】
以上説明したように、本実施例5の有機ガスの透過性評価方法では、双方の吸着管6、8に捕集されたガスの量から、どちらの側からガスが漏出されたのか、そしてその漏れと混入量が計算可能となるので、ガスの導入量・ガスの濃度を精度良く算出することができる。
【0094】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0095】
(付記1)密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を評価する有機ガスの透過性評価方法であって、
前記密閉型筐体を配置した密閉容器内に評価用物質を添加した不活性ガスを、一定濃度で且つ、連続的に供給する一定濃度ガス供給工程と、
前記一定濃度ガス供給工程により前記密閉容器内に供給されたガス濃度を測定するガス濃度成分測定工程と
を含むことを特徴とする有機ガスの透過性評価方法。
【0096】
(付記2)密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を評価する有機ガスの透過性評価方法であって、
前記密閉型筐体を配置した密閉容器内に評価用物質を添加した不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程と、
前記不活性ガス供給工程により供給された不活性ガスを前記密閉容器の外部に接続した吸着管により吸着させ捕集する不活性ガス捕集工程と、
前記密閉型筐体内に有機ガス成分を吸着して捕集する吸着剤を配置し、前記不活性ガス供給工程により前記密閉容器内に供給された不活性ガスが、前記密閉型筐体の内部に侵入した場合に、当該不活性ガスの有機ガス成分を、前記吸着剤により吸着する有機ガス成分吸着工程と、
前記不活性ガス捕集工程により捕集した有機ガスの濃度と、前記吸着剤により吸着した有機ガスの濃度とを分析する有機ガス濃度分析工程と、
前記有機ガス濃度分析工程により分析された有機ガス成分量の比率により有機ガスの透過性を評価する有機ガス透過性評価工程と
を含むことを特徴とする有機ガスの透過性評価方法。
【0097】
(付記3)密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を評価する有機ガスの透過性評価方法であって、
前記密閉型筐体を内部に配置した密閉容器内に評価用物質を添加した不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程と、
前記不活性ガス供給工程により供給された不活性ガスを前記密閉容器の外部に接続した吸着管により吸着させ捕集する不活性ガス捕集工程と、
前記密閉型筐体の外部であって、前記密閉容器内に前記有機ガス成分を捕集して吸着する吸着剤を配置し、前記密閉型筐体に供給された不活性ガスが、当該密閉型筐体の外部から漏出した場合に、当該不活性ガスの有機ガス成分を、前記吸着剤により吸着する有機ガス成分吸着工程と、
前記不活性ガス捕集工程により捕集した有機ガスの濃度と、前記吸着剤により吸着した有機ガスの濃度とを分析する有機ガス濃度分析工程と、
前記有機ガス濃度分析工程により分析された有機ガス成分量との比率により有機ガスの透過性を評価する有機ガス透過性評価工程と
を含むことを特徴とする有機ガスの透過性評価方法。
【0098】
(付記4)前記密閉型筐体の内部には、当該密閉型筐体を構成する部品であり、前記有機ガス透過性評価工程は、当該部品を対象とする有機ガスの透過性評価であることを特徴とする付記3に記載の有機ガスの透過性評価方法。
【0099】
(付記5)密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を評価する有機ガスの透過性評価方法であって、
前記密閉型筐体を内部に配置した密閉容器内に評価用物質を添加した不活性ガスを供給する第一の不活性ガス供給工程と、
前記密閉型筐体の内部に不活性ガスを供給する第二の不活性ガス供給工程と、
前記第一の不活性ガス供給工程により供給された不活性ガスを前記密閉容器の外部に接続した吸着管により吸着させ捕集する第一の不活性ガス捕集工程と、
前記第二の不活性ガス供給工程により供給された不活性ガスを前記密閉容器の外部に接続した吸着管により吸着させ捕集する第二の不活性ガス捕集工程と、
前記第一の不活性ガス捕集工程により捕集した有機ガスの濃度と、前記第二の不活性ガス捕集工程により捕集した有機ガスの濃度とを分析する有機ガス濃度分析工程と、
前記有機ガス濃度分析工程により分析された有機ガス成分量との比率により有機ガスの透過性を評価する有機ガス透過性評価工程と、
を含むことを特徴とする有機ガスの透過性評価方法。
【0100】
(付記6)前記密閉型筐体の内部に侵入した不活性ガスの単位時間毎の透過量をリアルタイム或いは、一定時間毎の透過量として取得する透過量取得工程をさらに含むことを特徴とする付記5に記載の有機ガスの透過性評価方法。
【0101】
(付記7)前記有機ガス透過性判定工程は、前記評価用物質に自然界に存在しない水素の同位体元素である重水素を有する物質を対象として評価することを特徴とする付記1〜6の何れか一つに記載の有機ガスの透過性評価方法。
【0102】
(付記8)前記重水素を有する物質は、トルエン-d8、アセトン-d6、メタノール-d3、エタノール-d5、イソプロピルアルコール-d8、ジエチルフタレート-d4、ジ-2-エチルヘキシルアジペート-d8、ジ-2-エチルヘキシルフタレート-d4の何れかの化合物であることを特徴とする付記7に記載の有機ガスの透過性評価方法。
【0103】
(付記9)前記吸着剤または前記吸着管に捕集されたガス濃度の定量分析・定性分析は、検出器に質量分析計を有する装置全般のうちの何れか一つを用いることを特徴とする付記2〜8の何れか一つに記載の有機ガスの透過性評価方法。
【0104】
(付記10)密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を評価する有機ガスの透過性評価装置であって、
前記密閉型筐体を配置した密閉容器内に評価用物質を添加した不活性ガスを、一定濃度で且つ、連続的に供給する一定濃度ガス供給手段と、
前記一定濃度ガス供給手段により前記密閉容器内に供給されたガス濃度を測定するガス濃度成分測定手段と
を含むことを特徴とする有機ガスの透過性評価装置。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、有機ガスの透過性評価方法を行なう場合に有用であり、密閉型筐体内に侵入する有機ガスの透過性を評価する有機ガスの透過性評価方法に関し、特に、有機ガスの透過性を的確に評価できるうえ、有機ガスの透過性評価の精度を向上することができる透過性評価方法および透過性評価装置として効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】実施例1に係る有機ガスの透過性評価方法を説明する図である。
【図2】有機ガスの透過性評価方法の手順を説明するフローチャートである。
【図3】実施例2に係る有機ガスの透過性評価方法を説明する図である。
【図4】実施例3に係る有機ガスの透過性評価方法を説明する図である。
【図5】実施例4に係る有機ガスの透過性評価方法を説明する図である。
【図6】実施例5に係る有機ガスの透過性評価方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0107】
1 加熱恒温槽
2、3、12、14、15 通孔
4、7 排出管
5、13 供給管
10 磁気ディスク装置
11、20 吸着剤
P、P′ 不活性ガス発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を評価する有機ガスの透過性評価方法であって、
前記密閉型筐体を配置した密閉容器内に評価用物質を添加した不活性ガスを、一定濃度で且つ、連続的に供給する一定濃度ガス供給工程と、
前記一定濃度ガス供給工程により前記密閉容器内に供給されたガス濃度を測定するガス濃度成分測定工程と
を含むことを特徴とする有機ガスの透過性評価方法。
【請求項2】
密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を評価する有機ガスの透過性評価方法であって、
前記密閉型筐体を配置した密閉容器内に評価用物質を添加した不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程と、
前記不活性ガス供給工程により供給された不活性ガスを前記密閉容器の外部に接続した吸着管により吸着させ捕集する不活性ガス捕集工程と、
前記密閉型筐体内に有機ガス成分を吸着して捕集する吸着剤を配置し、前記不活性ガス供給工程により前記密閉容器内に供給された不活性ガスが、前記密閉型筐体の内部に侵入した場合に、当該不活性ガスの有機ガス成分を、前記吸着剤により吸着する有機ガス成分吸着工程と、
前記不活性ガス捕集工程により捕集した有機ガスの濃度と、前記吸着剤により吸着した有機ガスの濃度とを分析する有機ガス濃度分析工程と、
前記有機ガス濃度分析工程により分析された有機ガス成分量の比率により有機ガスの透過性を評価する有機ガス透過性評価工程と
を含むことを特徴とする有機ガスの透過性評価方法。
【請求項3】
密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を評価する有機ガスの透過性評価方法であって、
前記密閉型筐体を内部に配置した密閉容器内に評価用物質を添加した不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程と、
前記不活性ガス供給工程により供給された不活性ガスを前記密閉容器の外部に接続した吸着管により吸着させ捕集する不活性ガス捕集工程と、
前記密閉型筐体の外部であって、前記密閉容器内に前記有機ガス成分を捕集して吸着する吸着剤を配置し、前記密閉型筐体に供給された不活性ガスが、当該密閉型筐体の外部から漏出した場合に、当該不活性ガスの有機ガス成分を、前記吸着剤により吸着する有機ガス成分吸着工程と、
前記不活性ガス捕集工程により捕集した有機ガスの濃度と、前記吸着剤により吸着した有機ガスの濃度とを分析する有機ガス濃度分析工程と、
前記有機ガス濃度分析工程により分析された有機ガス成分量との比率により有機ガスの透過性を評価する有機ガス透過性評価工程と
を含むことを特徴とする有機ガスの透過性評価方法。
【請求項4】
密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を評価する有機ガスの透過性評価方法であって、
前記密閉型筐体を内部に配置した密閉容器内に評価用物質を添加した不活性ガスを供給する第一の不活性ガス供給工程と、
前記密閉型筐体の内部に不活性ガスを供給する第二の不活性ガス供給工程と、
前記第一の不活性ガス供給工程により供給された不活性ガスを前記密閉容器の外部に接続した吸着管により吸着させ捕集する第一の不活性ガス捕集工程と、
前記第二の不活性ガス供給工程により供給された不活性ガスを前記密閉容器の外部に接続した吸着管により吸着させ捕集する第二の不活性ガス捕集工程と、
前記第一の不活性ガス捕集工程により捕集した有機ガスの濃度と、前記第二の不活性ガス捕集工程により捕集した有機ガスの濃度とを分析する有機ガス濃度分析工程と、
前記有機ガス濃度分析工程により分析された有機ガス成分量との比率により有機ガスの透過性を評価する有機ガス透過性評価工程と
を含むことを特徴とする有機ガスの透過性評価方法。
【請求項5】
前記密閉型筐体の内部に侵入した不活性ガスの単位時間毎の透過量をリアルタイム或いは、一定時間毎の透過量として取得する透過量取得工程をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の有機ガスの透過性評価方法。
【請求項6】
前記有機ガス透過性評価工程は、前記評価用物質に自然界に存在しない水素の同位体元素である重水素を有する物質を対象として評価することを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の有機ガスの透過性評価方法。
【請求項7】
前記重水素を有する物質は、トルエン-d8、アセトン-d6、メタノール-d3、エタノール-d5、イソプロピルアルコール-d8、ジエチルフタレート-d4、ジ-2-エチルヘキシルアジペート-d8、ジ-2-エチルヘキシルフタレート-d4の何れかの化合物であることを特徴とする請求項6に記載の有機ガスの透過性評価方法。
【請求項8】
前記吸着剤または前記吸着管に捕集されたガス濃度の定量分析・定性分析は、検出器に質量分析計を有する装置全般のうちの何れか一つを用いることを特徴とする請求項2〜7の何れか一つに記載の有機ガスの透過性評価方法。
【請求項9】
密閉型筐体を対象とする有機ガスの透過性を評価する有機ガスの透過性評価装置であって、
前記密閉型筐体を配置した密閉容器内に評価用物質を添加した不活性ガスを、一定濃度で且つ、連続的に供給する一定濃度ガス供給手段と、
前記一定濃度ガス供給手段により前記密閉容器内に供給されたガス濃度を測定するガス濃度成分測定手段と
を含むことを特徴とする有機ガスの透過性評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−49763(P2010−49763A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214596(P2008−214596)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)