説明

有機ケイ素化合物

【課題】 オゾニド官能性を有する有機ケイ素化合物の調製方法を提供すること。
【解決手段】 下記式:
【化1】


(式中、Rは少なくとも2個の炭素原子を有する炭化水素連結基であり、R1、R2及びR3は水素、アルキル基又はアリール基であり、xは少なくとも1の値であり、R7はアルキル基、アリール基、ハロゲン、アルコキシ又はアセトキシであり、R8は炭化水素基である)から選ばれる式により表される有機ケイ素化合物をオゾンに暴露することを含む方法により得られるオゾニド官能性を有する有機ケイ素化合物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は有機モノマーの遊離基重合の開始に関し、より詳細には、遊離基開始剤としてのオゾニド官能シラン及びオゾニド官能シロキサンの使用に関する。
【0002】
【従来の技術】過酸化物及び他の高度に酸素化された化合物によるビニルモノマーの重合の遊離基開始反応は周知である。そのような不安定な過酸化物及び酸素化された化合物が分解して遊離基を形成し、次いで遊離基がビニルモノマーと反応する場合に重合が開始され、その結果としてビニルモノマーの重合が起こる。しかしながら、遊離基開始剤の使用は比較的安定な開始剤のみに限定されている。その結果、オゾンO3 を使用してあるポリマーの他のポリマーの表面へのグラフト重合を開始し、主に他のポリマーの表面に関係する特性を変えることが提案されている。しかしながら、多くの場合において、ポリマー表面とのO3 の反応及び酸化面の構造は、明確に定義されず、ポリマーの化学構造にかなりの程度依存する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】例えば、オレフィン(アルケン)が使用される場合に、C−H結合の開裂及び遊離基の形成がアイソタクチックポリプロピレンのオゾン分解中に観察され、それにより不飽和を有するポリマーは転位し、不飽和結合の開裂が起こる。いずれの場合においても典型的には寿命が短い中間体が形成され、従って、中間体はビニルモノマーを重合する際に迅速に使用されなければならない。
【0004】従って、オゾン分解反応の簡便さを利用する一方でビニル重合を意のままに開始させることに使用できる安定な明確に定義されるオゾニド中間体を調製することが望ましい。
【0005】そのような例の一つは、下記式:
【0006】
【化6】


【0007】により表される化合物、すなわちビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンをオゾンにより処理することによって得られる(Otkrytiia Izobreteniia Promyshlennye Obraztsi Tovarnye Znaki 54 (48), 第89頁(1977)参照)。
【0008】しかしながら、有機ケイ素オゾニドを使用してビニル重合を開始させ、有機ケイ素末端基を有するポリマーが得られるように、有機ケイ素化合物、すなわちシラン又はシロキサンポリマーに結合した安定なオゾニドを得ることがさらに望ましい。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、オゾニド官能性を有する有機ケイ素化合物である組成物及びオレフィン系不飽和を有する有機ケイ素化合物をオゾンに暴露することによるオゾニド官能性を有する有機ケイ素化合物の調製方法を提供する。
【0010】また、本発明は、オゾニド官能性を有する有機ケイ素化合物の存在下で重合性有機モノマーを加熱することにより重合性有機モノマーの重合が開始される重合方法、及びこの方法により調製されるポリマー又はコポリマーを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】オゾニド官能性を有するある種の有機ケイ素化合物は下記構造式:
【化7】


(式中、Rはケイ素に結合した不飽和基の残基であり、R1、R2及びR3は水素、アルキル基又はアリール基であり、R’はアルキル基、アリール基、加水分解性基、オルガノシロキシ基又はポリオルガノシロキシ基である)により表される。
【0012】前記オルガノシロキシ基及びポリオルガノシロキシ基の有機置換基は、ケイ素原子に結合するのに適する置換基のうちのいずれであってもよい。これらの基に適する典型的な有機置換基には、炭化水素基、すなわち、アルキル基及びアリール基が含まれる。
【0013】本発明の代表的なオゾニド官能性を有する有機ケイ素化合物の別の種類は、ケイ素原子が環構造の一部であるオゾニドに結合したシクロアルキルシラン、又はケイ素原子が環構造の一部でないオゾニドに結合したシクロアルキルシランである。
【0014】本発明は、有機ケイ素分子に結合したオゾニド基を有する明確に定義される比較的安定な化合物を提供する。ビニルモノマーの存在下で前記化合物を加熱すると、前記化合物は分解し、重合を開始する。その結果、開始剤の有機ケイ素部分は結果として生成する有機ポリマーの不可欠な部分になる。
【0015】特定のアルケンのオゾン分解によって、オゾニド中間体の形成が起こる。オゾニド中間体は下記式:
【化8】


(式中、R1、R2、R3及びR4は水素、アルキル基、すなわちメチル、又はアリール基、すなわちフェニルである)により表される5員ペルオキシエーテル環状物である。例えば、R1、R2、R3及びR4がそれぞれ水素である場合には、このオゾニドは1,2,4−トリオキソランである。例えば、R1及びR3が水素であり、かつ、R4がメチルである場合には、このオゾニドは3,5−ジメチル−1,2,4−トリオキソランである。
【0016】これらのオゾニド中間体は安定ではなく、容易に転位して種々のヒドロペルオキシド、2量体及び重合体過酸化物並びに他の酸素含有化合物となる。文献によれば、殆どの場合においてこれらのオゾニドは急速に分解してまず最初により安定な双性イオン中間体を形成すると概して認識されている。
【0017】我々は、意外にも、オゾニド基を有する有機ケイ素化合物が、有機オゾニド中間体を安定なカルボニル化合物に減成することが周知の亜鉛及び酢酸の存在下でも安定のまま存在することを見出した。亜鉛及び酢酸の存在下での本発明のオゾニド化合物の分解は、たんに反応混合物を32℃に1時間加熱した場合に完了する。
【0018】従って、本発明のオゾニドに結合した有機ケイ素化合物は室温(20〜25℃)で比較的安定であり、高温でのみ分解するため、ビニルモノマーの重合を開始する。例えば、オゾニドがシランに結合している場合には、シラン基により停止された有機ポリマーが得られる。
【0019】最初のビニルモノマーの重合後、それに続いて他のシロキサンモノマー又はオリゴマーとのこれらの末端シランの重縮合によりブロックコポリマーが生成する場合に、加水分解性置換基を有する官能シラン、すなわちハロシラン、アルコキシシラン及びアセトキシシランを使用することができる。ブロックコポリマーの構造は官能シランの構造に依存する。例えば、1個のアルケニル基及び1個の加水分解性基を有するシランが上記のようにケイ素原子に結合する場合には、AB型ブロックコポリマー(すなわち、Aが有機ブロックであり、BがシリコーンブロックであるAAAABBBBB)が得られる。2個のアルケニル基及び1個の加水分解性基を有する前記シランがケイ素原子に結合する場合には、ABA型ブロックコポリマー(すなわち、Aが有機ブロックであり、BがシリコーンブロックであるAAAABBBBBAAAA)が得られる。重縮合又は遊離基重合により重合し得る基を多数有するシランを用いると、より複雑なブロックコポリマー構造が可能である。
【0020】官能シラン及び本発明に最も好ましいシランの幾つかの例は、不飽和がケイ素原子から離れた少なくとも2個の炭素原子に位置するシラン、すなわち、ブテニル−メチルジクロロシラン、5−ヘキセニルジメチルクロロシラン、5−ヘキセニルメチルジクロロシラン、5−ヘキセニルトリクロロシラン、7−オクテニルジメチルクロロシラン、7−オクテニルトリクロロシラン、1,10−ビス(ジメチルクロロシリル)−5−デセン、3−ブテニルトリエトキシシラン、5−ヘキセニルジメチル−メトキシシラン、5−ヘキセニルメチルジメトキシシラン、及び7−オクテニルトリメトキシシランである。
【0021】加水分解性置換基を有する官能シラン、すなわち、ハロシラン、アルコキシシラン及びアセトキシシランが本発明において最も好ましいが、他の種類の加水分解性置換基、すなわちアミノ、ケトキシム、ウレイド、カルボキシル、スルフェート、スルホン酸エステル、シアノ、イソシアナート、ホスフェート及びリン酸エステルを有する官能シランを使用することができる。
【0022】オゾニドがオルガノシロキサンポリマーに結合する場合に、有機モノマーがシリコーンポリマーにグラフト化したものが得られる。そのようなグラフトコポリマーの構造は、オルガノシロキサンポリマー鎖に沿うオゾニドの位置に依存する。従って、テレケリックオゾニドはABAブロック構造を導き、ペンダントオゾニドは高分子くし状構造を導く。本明細書において「テレケリック」なる用語は、選択的に反応して他の分子との結合を提供する末端基を有するポリマーを意味する。
【0023】本発明において使用するのに最も好ましいものはテレケリックアルケニル基を有するポリシロキサンである。適切なアルケニル官能シロキサン及びそれらの調製方法は例えば米国特許第4,609,574号明細書に記載されている。
【0024】一般的に、これらの物質は、ジオルガノシロキサン「D」単位:R2 a SiO2/2 及び鎖末端「M」単位:R3 a SiO1/2 (式中、Ra はメチル基又は不飽和を有する炭化水素基である)から構成されるものとして表すことができる。前記不飽和基には、高級アルケニル基、すなわち−(CH2 m −CH=CH(CH2 n H(式中、mは2、3又は4であり、nは0、1又は2であるが、望ましければmは4を超える値であっても、nは2を超える値であってもよい)が含まれる。不飽和が炭化水素の末端部分に存在する必要はない。しかしながら、ケイ素原子から離れた少なくとも2個の炭素原子に位置しなくてはならない。
【0025】上記官能シラン及びアルケニル官能シロキサンに加えて不飽和を有する他の種の有機ケイ素化合物を使用することができる。例えば、ケイ素原子が環構造の一部を構成しているシクロアルキルシラン等のシクロアルキルシランが使用される。そのようなシクロアルキルシランは下記式により表される。
【0026】
【化9】


【0027】この種のシクロアルキルシランの例となる化合物は、Journal of Organic Chemistry、第39巻、第11号、第1539〜1542頁(1974)に記載されている。この種のシクロアルキルシランにおいて、m及びnはそれぞれ2〜4の値であり、R5はアルキル基、アリール基、又は上記加水分解性基のうちの1種である。上記のように、不飽和はケイ素原子から離れた少なくとも2個の炭素原子に位置すべきである。
【0028】さらに、ケイ素原子が環構造の一部を構成していない種類のシクロアルキルシランを使用することができる。そのようなシクロアルキルシランは下記式により表される。
【0029】
【化10】


【0030】この種のシクロアルキルシランにおいて、pは1〜4の値であり、qは2〜6の値であり、R6はアルキル基、アリール基、又は上記加水分解性基のうちの1種を表す。不飽和はケイ素原子から離れた少なくとも2個の炭素原子の位置に有るべきである。
【0031】直前に示したシクロアルキルシランの別の態様は下記式により表される。
【0032】
【化11】


【0033】この別の態様のシクロアルキルシランにおいて、rは0〜4の値であり、s及びtはそれぞれ1〜6の値であり、R6はアルキル基、アリール基、又は上記加水分解性基のうちの1種を表わす。不飽和はケイ素原子から離れた少なくとも2個の炭素原子の位置にあるべきである。
【0034】ケイ素原子が環構造の一部を構成していない種類のシクロアルキルシランのうち使用することができる他の種類のシクロアルキルシランは下記式により表される。
【0035】
【化12】


【0036】この種のシクロアルキルシランにおいて、uは2〜4の値であり、vは3〜7の値であり、R6はアルキル基、アリール基、又は上記加水分解性基のうちの1種を表す。不飽和はケイ素原子から離れた少なくとも2個の炭素原子に位置するべきである。
【0037】ケイ素原子が環構造の一部を構成していない種類の官能シクロアルキルシランの幾つかの例として、[2−(3−シクロヘキセニル)エチル]ジメチルクロロシラン、[2−(3−シクロヘキセニル)エチル]メチルジクロロシラン、3−シクロヘキセニルトリクロロシラン、[2−(3−シクロヘキセニル)エチル]トリエトキシシラン、及び[2−(3−シクロヘキセニル)エチル]トリメトキシシランがある。
【0038】本発明は下記の反応シーケンスで概略的に例示される。例えば、オゾンはそれ自体が二重結合に結合して下記式のようにオゾニドを形成する。
【0039】
【化13】


【0040】二重結合がオルガノシラン化合物内部に存在する場合には、下記式のようにオゾニドに結合したシランが得られる。
【0041】
【化14】


【0042】下記式:
【0043】
【化15】


【0044】により表されるオルガノシラン化合物を使用すると同様な結果が得られる。
【0045】二重結合がポリオルガノシロキサン分子内部に存在する場合には、下記式のようにオゾニドに結合したポリオルガノシロキサンが得られる。
【0046】
【化16】


【0047】次の反応シーケンスにおいて、下記式のようにケイ素原子が環構造の一部であるオゾニドに結合したシクロアルキルシランが得られる。
【0048】
【化17】


【0049】次の反応シーケンスにおいて、下記式のようにケイ素原子が環構造の一部ではないオゾニドに結合したシクロアルキルシランが得られる。
【0050】
【化18】


【0051】次の反応シーケンスにおいて、下記式のようにケイ素原子が環構造の一部ではない別の態様のオゾニドに結合したシクロアルキルシランが得られる。
【0052】
【化19】


【0053】次の反応シーケンスにおいて、下記式のようにケイ素原子が環構造の一部ではない別の態様のオゾニドに結合したシクロアルキルシランが得られる。
【0054】
【化20】


【0055】次の反応シーケンスにおいて、上記のオゾニドに結合したシラン又はオゾニドに結合したポリシロキサンは「オゾニド」と表されるものであって、「ポリマー生成物」の調製の際の下記式により表される反応シーケンスで使用される。
【0056】
【化21】


【0057】「オゾニド」に結合したシラン、すなわち、
【0058】
【化22】


【0059】は下記例1に従って調製することができる。
【0060】「オゾニド」に結合したポリシロキサン、すなわち
【0061】
【化23】


【0062】は下記例2に従って調製することができる。
【0063】本発明によると、上記反応シーケンスにおいて下記式により表される種類の「オゾニド」を使用することもできる。
【0064】
【化24】


【0065】この種の「オゾニド」に結合したシランは下記式により表される。
【0066】
【化25】


【0067】この種の「オゾニド」に結合したシランは下記例3に従って調製することができる。
【0068】この種の「オゾニド」に結合したポリシロキサンは下記式により表すことができる。
【0069】
【化26】


【0070】これらの「オゾニド」を表す式において、xは1以上の値であり、Rは不飽和基の残基を表す。すなわち、例えば不飽和が5−ヘキセニルである場合にはRは−(CH2 4 −であり、Rは少なくとも2個の炭素原子を含むものでなくてはならない。R7はアルキル基、アリール基、又は上記官能基のうちの1種である。R8は炭化水素基、すなわち、アルキル基である。本発明をより詳細に説明する目的で次の実施例を示す。
【0071】
【実施例】
例1 オゾニドに結合したシランの調製攪拌機を備えた三つ口フラスコ内のD4、すなわち環状4量体オクタメチルシクロテトラシロキサンに5−ヘキセニルジメチルクロロシランH2 C=CH(CH2 4 Si(CH3 2 Clを溶解させた(150ml中に17.43g)。溶液を0℃に冷却した。溶液を含む容器内にオゾンを導入し、0.0268×10-4kg毎秒(kg/s)の流量で通気した。オゾン分解反応は濃青色により指示されるとして95分後に完了した。構造を13C−NMR及びガスクロマトグラフにより確認した。例えば、二重結合炭素に関係するピーク(−114及び−140ppm)はオゾン分解により消失し、酸素に結合した炭素に由来するオゾニド特性ピーク(−94及び−104ppm)が観測された。NMRスペクトルにその他の変化は観測されなかった。
【0072】例2 オゾニドに結合したポリシロキサンの調製この例においてテレケリックヘキセニル基を有するポリシロキサンを使用した。このシロキサンは25℃での粘度が170センチストークス(mm2 /s)であるジメチル5−ヘキセニルシロキシ末端ジメチルポリシロキサンであった。このテレケリックシロキサンを、攪拌機を備えた三つ口フラスコ内の塩化メチレンCH2 Cl2 に溶解させた(150ml中に50g)。溶液を−15℃に冷却した。溶液を含む容器内にオゾンを導入し、0.0268×10-4kg毎秒(kg/s)の流量で通気した。13C−NMRによって、残留二重結合が存在しないことによりオゾニド中間体への完全な転化が示された。
【0073】例3 他のオゾニドに結合したシランの調下記式:
【0074】
【化27】


【0075】により表される1,10−ビス(ジメチルクロロシリル)−5−デセンを攪拌機を備えた三つ口フラスコ内の塩化メチレンに溶解させた(150ml中に23.23g)。溶液を0℃に冷却した。溶液を含む容器内にオゾンを導入し、0.0268×10-4kg毎秒(kg/s)の流量で通気した。オゾン分解反応は濃青色により指示されるとして80分後に完了した。
【0076】例4 オゾニドにより開始されるエチルアクリレートの重合例1において調製されたオゾニドシランとエチルアクリレートモノマーH2 C=CHCOOC2 5 とを重合させることによりシリコーン末端基を有するポリエチルアクリレートを調製した。この例において、重合開始剤を含まない例1のオゾニドに結合したシラン15.63g及びエチルアクリレート1.03gを混合し、1オンス入り容器に入れた。窒素によりフラッシュした後、容器を70℃の恒温槽内に入れた。60分後、反応混合物は透明から濁った状態に変化し、メタノールからポリマーが沈殿していた。
【0077】例5 オゾニドにより開始されるエルアクリレートの重合重合開始剤を含まない例2において調製されたオゾニドに結合したポリシロキサン15.22gとエチルアクリレートモノマー8.61gとを1オンス入り容器内で混合することによりポリシロキサンの末端にグラフト化されたポリエチルアクリレート、すなわちABAブロックコポリマーを調製した。酸素を除去するために窒素によりフラッシュした後、容器を70℃の恒温槽内に入れた。透明な反応混合物を恒温槽内に入れた直後に反応混合物は濁った。しかしながら、反応を1時間続けさせるとメタノールからコポリマーが沈殿した。
【0078】例6 オゾニドにより開始されるアクリルアミドの重合例3において調製されたオゾニドシランとアクリルアミドモノマーH2 C=CHCONH2 とを重合させることによりシリコーン末端基を有するポリアクリルアミドを調製した。この例において、重合開始剤を含まない例3のオゾニドに結合したシラン21.93g及びアクリルアミド3.12gを混合し、1オンス入り容器内に入れた。酸素を除去するために窒素によりフラッシュした後、容器を70℃の恒温槽内に入れた。60分後、反応混合物は黄色から褐色に変色し、ポリマーが水中に沈殿していた。
【0079】例7(比較例) オゾニドシランなし重合開始剤を含まないエチルアクリレート(1.25g)を13.24gのオクタメチルシクロテトラシロキサンに溶解させ、1オンス入り容器内に入れた。窒素により酸素を除去し、窒素置換した後、例4に記載のように反応混合物を恒温槽内に1時間入れた。この間に変化は観察されず、溶液は透明のまま残った。メタノール中でポリマーは沈殿しなかった。この例は、オゾニド結合基が存在しない場合には、重合が起こり得ないことを示すものである。
【0080】例8(比較例) シリコーンなしこの例は、シリコーンマトリックスがオゾニド結合基の安定性に著しい影響を及ぼすことを示すものである。この例において、オゾン分解反応は、塩化メチレン(100ml)中で1−ヘキセンCH3 CH2 CH2 CH2 CH=CH2 (8.5g)を使用して−78℃で30分間実施した。青色を呈することにより指示されるとして反応は40分で完了した。しかしながら、このオゾニドは非常に不安定であった。従って、このオゾニドを室温にするか又は溶剤CH2 Cl2 を除去した直後に、このオゾニドは制御できない発熱反応で急速に分解し、反応フラスコから勢いよくはね出た。
【0081】シロキサン分子の存在によって分解反応の速度が著しく遅くなり、またそのような高度に酸素化された不安定なオゾニド中間体を取り扱う場合に起こりやすい爆発の危険性が低下すると考えられる。上記例は以下のように要約される。
【0082】
【表1】


【0083】本発明の本質的態様から離れることなく本明細書に記載の化合物、組成物及び方法に他の変更を加えてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記式:
【化1】


(式中、Rは少なくとも2個の炭素原子を有する炭化水素連結基であり、R1、R2及びR3は水素、アルキル基又はアリール基であり、xは少なくとも1の値であり、R7はアルキル基、アリール基、ハロゲン、アルコキシ又はアセトキシであり、R8は炭化水素基である)から選ばれる式により表される有機ケイ素化合物をオゾンに暴露することを含む方法により得られるオゾニド官能性を有する有機ケイ素化合物。
【請求項2】 オゾンに暴露される有機ケイ素化合物が5−ヘキセニルジメチルクロロシラン、1,10−ビス(ジメチルクロロシリル)−5−デセン及びジメチルヘキセニルシロキシ末端ジメチルポリシロキサンからなる群から選ばれる請求項1記載の化合物。
【請求項3】 下記式:
【化2】


(式中、m及びnは2〜4の値であり、pは1〜4の値であり、qは2〜6の値であり、rは0〜4の値であり、s及びtはそれぞれ1〜6の値であり、uは2〜4の値であり、vは3〜7の値であり、R5及びR6はアルキル、アリール、ハロゲン、アルコキシ又はアセトキシである)から選ばれる式により表される有機ケイ素化合物をオゾンに暴露することを含む方法により得られるオゾニド官能性を有する有機ケイ素化合物。
【請求項4】 下記構造式:
【化3】


(式中、Rはケイ素に結合している不飽和基の残基であり、R1、R2及びR3は水素、アルキル基又はアリール基であり、R’はアルキル基、アリール基、加水分解性基、オルガノシロキシ基又はポリオルガノシロキシ基である)により表されるオゾニド官能性を有する有機ケイ素化合物の存在下で重合性有機モノマーを加熱することにより前記重合性有機モノマーの重合を開始させることを含む重合方法。
【請求項5】 有機ケイ素化合物が下記式:
【化4】


【化5】


(式中、xは少なくとも1の値であり、R7はアルキル基、アリール基、ハロゲン、アルコキシ又はアセトキシであり、R8は炭化水素基である)からなる群から選ばれる式により表されるものである請求項4記載の方法。
【請求項6】 有機ケイ素化合物が、ケイ素原子が環構造の一部であるシクロアルキルシラン及びケイ素原子が環構造の一部でないシクロアルキルシランからなる群から選ばれるシクロアルキルシランである請求項4記載の方法。
【請求項7】 重合性有機モノマーがビニル含有モノマーである請求項4記載の方法。

【公開番号】特開平10−231299
【公開日】平成10年(1998)9月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−27118
【出願日】平成10年(1998)2月9日
【出願人】(590001418)ダウ・コ−ニング・コ−ポレ−ション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION