説明

有機化合物の発酵製造

本発明は、少なくとも3個のC原子を有するか、少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のN原子を有する少なくとも1種の有機化合物を発酵により製造する方法に関し、該方法は、以下のステップ:
(i)デンプン供給材料を粉砕し、それによりデンプン供給材料の非デンプン性固体成分の少なくとも一部分を含むミルベースを得るステップ;
(ii)懸濁物中の乾燥物含量が少なくとも45重量%となる量で前記ミルベースを水性液体中に懸濁するステップ;
(iii)前記ミルベース中のデンプン性成分を液化、および適切ならば、続く糖化により加水分解し、それにより加水分解されたデンプン供給材料のデンプン性成分と、デンプン供給材料の非デンプン性固体成分の少なくとも一部分とを含んでなる水性培地Mを得るステップ;および
(iv)前記有機化合物の過剰生産が可能な微生物の培養のための発酵に、ステップ(iii)で得られた水性培地Mを用いるステップ
を含み、ここで、ステップ(iii)において、ステップ(ii)で得られた懸濁物に蒸気を導入することにより、該懸濁物を、前記ミルベース中に存在するデンプンのアルファ化(gelatinization)温度より高い温度まで加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3個のC原子を有するか、または少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のN原子を有する有機化合物の発酵製造に関し、該製造では、微生物を培養するために、デンプン供給材料の非デンプン性固体成分の少なくとも一部分を含む糖含有培地を使用する。
【背景技術】
【0002】
糖含有液体培地は多数の発酵プロセスの基本的な栄養供給源である;該培地中に存在する糖成分は、用いられる微生物によって代謝され、有益な有機生成物を生じさせる。このように製造される微生物代謝産物、すなわち有機化合物の範囲には、例えば、低分子量の揮発性化合物(例えばエタノール)、非揮発性代謝産物(例えばアミノ酸、ビタミンおよびカロテノイド)、および多数の他の物質が含まれる。
【0003】
種々のプロセス条件に応じて、異なる炭素供給材料が、そのような一般に公知の微生物の発酵プロセスに利用される。それらは、ビート由来の純粋なショ糖、および高揮発度糖蜜(high-test molasses)(転化サトウキビ糖蜜(inverted sugarcane molasses))として知られるサトウキビ糖蜜から、デンプン加水分解物由来のグルコースにまでおよぶ。さらに、L−リジンの生物工学的製造のために工業規模で使用できる補基質として、酢酸およびエタノールが挙げられる(Pfefferle et al., Biotechnological Manufacture of Lysine, Advances in Biochemical Engineering/Biotechnology, Vol. 79 (2003), 59-112)。
【0004】
上述の炭素供給材料に基づいて、微生物代謝産物の、糖ベースの発酵製造に関する種々の方法および手順が確立されている。例としてL−リジンを考慮すると、前記方法および手順は、例えばPfefferleら(上掲)によって、菌株開発、方法開発および工業的製造に関して報告されている。
【0005】
微生物代謝産物の微生物媒介性の発酵製造のための重要な炭素供給材料はデンプンである。デンプンは、まず、先行する反応ステップで液化および糖化されなければならない。その後、炭素供給材料として発酵で利用することができる。この目的を達成するために、デンプンは、通常、天然デンプン供給材料、例えばジャガイモ、キャッサバ、穀類(例えばコムギ、トウモロコシ、オオムギ、ライムギ、ライコムギまたはイネ)から予備精製された形式で取得され、その後、酵素により液化および糖化され、続いて、実際の発酵で所望の代謝産物を製造するために用いられる。
【0006】
そのような予備精製されたデンプン供給材料の使用に加えて、微生物代謝産物の発酵製造用の炭素供給材料の製造に、前処理されていないデンプン供給材料を使用することも報告されている。典型的には、デンプン供給材料は最初に挽いて粉砕される。そしてミルベース(Mahlgut)が液化および糖化に付される。このミルベースは、天然に、デンプンに加えて、発酵に悪影響を与える可能性がある一連の非デンプン性成分を含むため、通常、これらの成分は発酵前に除去される。除去は、粉砕直後(WO 02/077252; JP 2001-072701; JP 56-169594; CN 1218111)、液化後(WO 02/077252; CN 1173541)または糖化後(CN 1266102; Beukema et al.: Production of fermentation syrups by enzymatic hydrolysis of potatoes; potato saccharification to give culture medium (Conference Abstract), Symp. Biotechnol. Res. Neth. (1983), 6; NL8302229)に行うことができる。しかし、すべての変法には、実質的に純粋なデンプン加水分解物を発酵で使用することが含まれる。
【0007】
有機化合物の発酵製造のための新規なプロセスは、特に、発酵前のデンプン供給材料の精製、例えば液化および糖化されたデンプン溶液の精製を含み(JP 57159500)、または再生可能資源からの発酵培地の製造を可能にすることを目的にする方法を提供する(EP 1205557)。
【0008】
一方で、未処理のデンプン供給材料はバイオエタノールの発酵製造で大規模に使用されることが知られている。この場合、通常、穀類全粒であるデンプン供給材料は、まず、乾式製粉に付され、その後、デンプン供給材料のデンプン成分が酵素を使用して加水分解される。この場合、加水分解は、例えば撹拌容器中でバッチ方式で、あるいは例えばジェット調理器具中で連続的に実施することができる。好適な方法の説明は、例えば「The Alcohol Textbook - A reference for the beverage, fuel and industrial alcohol industries」, Jaques et al. (Ed.), Nottingham Univ. Press 1995, ISBN 1-8977676-735, Chapter 2, pp. 7-23, およびMcAloon et al.,「Determining the cost of producing ethanol from corn starch and lignocellulosic feedstocks」, NREL/TP-580-28893, National Renewable Energy Laboratory, October 2000に見出せる。
【0009】
バイオエタノールの発酵製造では、蒸留によって有用な生成物が取得されるため、乾式製粉プロセス由来の予備精製されていない形態のデンプン供給材料の使用は重大な問題にはならない。しかし、他の微生物代謝産物の製造に乾式製粉法を使用する場合、糖液経由で発酵に導入される固体流(Festoffstrom)が問題になる。なぜなら、固体流は発酵に対して、例えば酸素移動速度または使用される微生物の酸素要求に関する悪影響を有するだけでなく(これに関しては、Mersmann, A. et al.: Selection and Design of Aerobic Bioreactors, Chem. Eng. Technol. 13 (1990), 357-370を参照のこと)、その後の加工をかなり複雑にする可能性がある。
【0010】
さらに、固体導入の結果、デンプン含有懸濁液の製造中でさえ、懸濁液の粘性が臨界値に達する可能性があり、その結果、例えば30重量%を超えるトウモロコシ粉を含有する懸濁液はもはや水中に均一に混和されない(Industrial Enzymology, 2nd Ed., T. Godfrey, S. West, 1996)。これは、従来の手順でのグルコース濃度を制限する。バイオエタノールの発酵製造では、発酵に用いられる酵母に対する生成物の毒性のために、いかなる場合においても有意義な様式で変換できない高い濃度では、このことはもはや関係がない。
【0011】
低い糖濃度の糖含有培地を発酵に供給することは、原理的に、エタノール以外の有機代謝産物の発酵製造において不利である。なぜなら、この手順が発酵液の過度の希釈を生じさせ、その結果、達成できる目的の生成物の終濃度が低下し、それにより、まず、これらの生成物を発酵培地から取得する場合のコストが増加し、次に空時収量が減少するからである。特に、大量のバイオエタノールの製造のために製造され、かつ通常は約30または33重量%以下の低い糖またはグルコース濃度を有するデンプン加水分解物を、他の化学物質の製造のための少量の二次発酵に部分的に供給することを目的にする場合に、これらの考察は重要である。
【0012】
これらの困難および制限のせいで、バイオエタノールの製造に広く用いられている乾式製粉法は、現在まで、エタノール以外の微生物代謝産物の発酵製造において特別な経済的重要性を有していない。
【0013】
従来、乾式製粉の考え方および、この方法に関連して原理的に存在する利点を、微生物代謝産物の工業的規模の製造に応用する試みは、デンプン供給材料としてキャッサバを使用して報告されているだけである。例えばJP 2001/275693では、乾燥状態で粉砕された皮むき済みキャッサバ塊茎をデンプン供給材料として用いる、アミノ酸の発酵製造のための方法が記載されている。該方法を実施するために、ミルベースの粒径を150μm以下に調節することが必要である。この目的で用いられるろ過ステップでは、ミルベースの、非デンプン含有成分を含む部分を除去した後、存在するデンプンを液化/糖化し、その後発酵させる。この方法では、中程度の糖濃度が得られる。アミノ酸含有飼料添加物の製造に関してJP 2001/309751に同様の方法が記載されている。
【0014】
発酵に用いられる液体培地中の高い糖濃度は、本出願人のWO 2005/116228(PCT/EP2005/005728)に記載の方法によって、糖化用の、デンプン供給材料の固体の非デンプン性成分を主に含むミルベースを使用することによって達成することができる。驚くべきことに、デンプン供給材料中に存在する固体の非デンプン性成分は発酵前に除去する必要がないことが明らかになった。穀粒より選択されるデンプン供給材料を使用する同様の方法が本出願人のPCT/EP2006/066057(先の特許出願DE 102005042541.0)に記載されている。しかしながら、この方法は、高い糖濃度を有する糖含有培地の継続的供給に関して、比較的複雑である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、有機化合物の発酵製造のための別の方法であって、デンプン供給材料中に存在する非デンプン性固体成分をあらかじめ、少なくとも完全には、除去する必要がない方法を提供することである。特に、該方法はデンプン供給材料のデンプン成分の継続的な加水分解を可能にするべきである。さらに、使用される培地を容易に操作できること、および発酵プロセスにおいてそれらを問題なく使用できることによって際立っていなければならない。特に、該方法は、デンプン供給材料として穀類の使用を可能にしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、有機化合物の製造のための発酵プロセスは、以下:
(i)デンプン供給材料を粉砕し、それによりデンプン供給材料の非デンプン性固体成分の少なくとも一部分を含むミルベースを得るステップ;
(ii)懸濁物中の乾燥物含量が少なくとも45重量%となる量で前記ミルベースを水性液体中に懸濁するステップ;
(iii)前記ミルベース中のデンプン性成分を液化、および適切ならば、続く糖化により加水分解し、それにより加水分解されたデンプン供給材料のデンプン性成分と、デンプン供給材料の非デンプン性固体成分の少なくとも一部分とを含んでなる水性培地Mを得るステップであって、加水分解が、該懸濁物に、該ミルベース中に存在するデンプンのアルファ化(gelatinization)温度より高い温度の蒸気を導入することにより該ミルベースの懸濁物を加熱することを含むステップ
を含む方法により得られる水性培地の形態で、発酵に必要な糖を供給した場合、本来高い固体の導入にもかかわらず、効率的に実施可能であることが見出された。
【0017】
よって、本発明は、少なくとも3個のC原子を有するか、少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のN原子を有する少なくとも1種の有機化合物を発酵により製造する方法であって、ステップ(i)および(ii)に加えて、以下のステップ:
(iii)前記ミルベース中のデンプン性成分を液化、および適切ならば、続く糖化により加水分解し、それにより加水分解されたデンプン供給材料のデンプン性成分と、デンプン供給材料の非デンプン性固体成分の少なくとも一部分とを含んでなる水性培地Mを得るステップ;および
(iv)前記有機化合物の過剰生産が可能な微生物の培養のための発酵に、ステップ(iii)で得られた水性培地Mを用いるステップ
を含み、ここで、ステップ(iii)において、ステップ(ii)で得られた懸濁物に蒸気を導入することにより、該懸濁物を、前記ミルベース中に存在するデンプンのアルファ化(gelatinization)温度より高い温度まで加熱する方法を提供する。
【0018】
加水分解に用いる懸濁物中の高い乾燥物含量にもかかわらず、本発明による様式では加水分解は問題なく実施することができ、したがって、高濃度の代謝可能な糖が得られる。驚くべきことに、加水分解後に糖が単糖もしくは二糖の形態で存在するか、またはオリゴ糖(=デキストリン)の形態で存在するかは問題ではない。驚くべきことに、得られる培地中のデンプン供給材料の非デンプン固体成分の高い含量は、発酵を妨げない。さらに、比較的高いミルベース濃度でのデンプン供給材料の液化に際して生じる粘性の問題は、本発明の方法の結果、ほぼ回避することができる。高い乾燥物含量により生じる発酵培地中の代謝可能な糖の高い濃度の結果として、発酵の供給期間(feed phase)中に特に有利に該培地を利用することができ、それにより、望ましくない希釈はほぼ回避されるか、または少なくとも顕著に低減される。当然、本発明により得られる培地Mは、発酵のバッチ期間中の糖供給源として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本明細書中では、以下、用語「デンプン成分」および「デンプン性成分」は同義的に用いられる。
【0020】
ステップ(iii)で得られる水性培地Mに関して、用語「水性培地」、「液体培地」および「水性糖含有液」は同義的に用いられる。
【0021】
本明細書中では、以下、用語「液化」とは、オリゴ糖、特にデキストリンをもたらす、加水分解によるデンプンの分解を意味する。
【0022】
本明細書中では、以下、用語「糖化」または「糖化すること」とは、単糖、特にグルコース等の単糖をもたらすデキストリンの加水分解を意味する。したがって、「糖化酵素」は、デキストリンを加水分解して単糖をもたらす酵素を意味すると理解される。
【0023】
本明細書中では、以下、用語「デキストリン」は、加水分解によるデンプンの分解の結果として得られるオリゴ糖であって、一般に、3〜18個、特に6〜12個の単糖単位、特にグルコース単位からなるオリゴ糖を意味する。
【0024】
用語「グルコース相当物(glucose equivalents)含量」および「糖濃度(sugar concentration)」とは、発酵に潜在的に利用可能な、培地中の単糖、二糖およびオリゴ糖の総濃度を表す。用語「グルコース相当物」には、グルコース以外の代謝可能な糖または糖単位も含まれる。
【0025】
本明細書中では、以下、用語「過剰生産する」または「過剰生産」は、微生物に関する場合、1以上のその代謝産物を、該微生物の増殖に必要とされる量を超える量で生産し、その結果、発酵培地中での蓄積が生じ、該蓄積が細胞外または細胞内で生じうる該微生物の特性を特定するために使用される。
【0026】
粉砕のためのデンプン供給材料として好適であるのは、主に、乾燥穀類または種子であり、その場合、デンプン量は乾燥状態で少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%になる。それらは、現在大規模に栽培されている多数の穀類植物、例えばトウモロコシ、コムギ、カラスムギ、オオムギ、ライムギ、ライコムギ、イネ、サトウダイコン、ジャガイモ、キャッサバおよび種々のモロコシおよびキビ種、例えばサトウモロコシおよびミロにおいて見出される。デンプン供給材料は、好ましくは、穀類のうちから、特に好ましくはトウモロコシ、ライムギ、ライコムギおよびコムギ穀粒のうちから選択される。原理的に、本発明の方法は、同様のデンプン供給材料、例えば種々のデンプン含有穀類または種子の混合物を用いて実施することもできる。
【0027】
糖含有液体培地を製造するために、目的のデンプン供給材料をステップ(i)で粉砕する。この作業は、液体、例えば水を添加するか、または添加せずに、好ましくは液体を添加せずに行う。乾式製粉を後の湿式製粉ステップと組み合わせることも可能である。
【0028】
乾式製粉に典型的に用いられる装置は、ハンマーミル、ローターミルまたはローラーミルである;湿式粉砕に好適な装置は、パドルミキサー、撹拌ボールミル、循環ミル、ディスクミル、円環槽ミル、振動ミルまたはプラネタリーミルである。原理的に、他のミルもまた好適である。湿式粉砕に必要とされる液体の量は当業者が通常の実験で決定することができる。通常、乾燥物含量が10〜20重量%の範囲であるように調節される。
【0029】
製粉では、以後のプロセスステップに好適な粒径をもたらす。これに関して、それは、ステップ(i)の製粉ステップ、特に乾式製粉ステップで得られるミルベースが、100〜630μmの範囲の粒径の穀粉粒子、すなわち微粒子成分を30〜100重量%、好ましくは40〜95重量%、特に好ましくは50〜90重量%の量で有する場合に有利であることがわかっている。好ましくは、得られるミルベースは、100μmを超える粒径の、50重量%の穀粉粒子を含む。一般に、少なくとも95重量%の粉砕穀粉粒子は2mm未満の粒径を有する。これに関して、粒径は振動分析計を使用するスクリーン分析を用いて測定される。原理的には、高い生成物収率を得るために小さい粒径が有利である。しかし、過度に小さい粒径は、ミルベースが液化中または加工中、例えば発酵ステップ後の固体の乾燥中にスラリー化した場合に、問題を生じさせ、特に凝集塊形成/集塊に起因する問題を生じさせる可能性がある。
【0030】
通常、穀粉は抽出率または穀粉グレードによって特徴づけられる。その互いの相関は、穀粉グレードの特性が抽出率の増加とともに高くなるというものである。抽出率は、用いるミルベースの100重量部に基づく、得られた穀粉の重量に対応する。製粉プロセス中、最初に、例えば穀粒の内部由来の純粋な超微細穀粉が得られるが、さらなる製粉では、すなわち抽出率が増加すると、穀粉中の粗繊維の量および殻含量が増加し、デンプン含量が減少する。したがって、穀粉グレードとして知られる値に抽出率も反映される。穀粉グレードは穀粉(flours)、特に穀類の穀粉(cereal flours)を分類するための数値として使用され、穀粉の灰分含量に基づいている(灰基準として知られる)。穀粉グレードまたは型番号は、穀粉固体100gが焼却された場合に後に残るmg単位の灰(無機質)の量を示す。穀類の穀粉の場合、型番号が大きいほど高い抽出率を意味し、なぜなら、穀粒の核が約0.4重量%の灰を含むのに対し、殻は約5重量%の灰を含むからである。抽出率が低い場合、ゆえに穀類の穀粉は、粉砕胚乳、すなわち穀粒のデンプン成分から主に構成され;抽出率が高い場合、穀類の穀粉は、穀粒の粉砕されたタンパク質含有アリューロン層をも含み;穀粉の場合、それらは、タンパク質含有および脂肪含有胚の成分および種子殻の成分をも含み、それは生線維および灰を含む。本発明の目的では、高い抽出率、または大きい型番号の穀粉が原理的に好ましい。デンプン供給材料として穀類を使用する場合、無傷の穀粒をその殻と一緒に粉砕し、適切であればあらかじめ胚および殻を機械的に除去した後に、加工することが好ましい。
【0031】
本発明では、使用されるミルベースは、抽出率に対応して、粉砕される穀粒中に存在する非デンプン性固体成分の少なくとも一部分、好ましくは少なくとも20重量%、特に少なくとも50重量%、とりわけ少なくとも90重量%、非常にとりわけ少なくとも99重量%を含む。ミルベースのデンプン性成分(ゆえにデキストリン含有培地(M)中の代謝可能な糖の量)に基づき、ミルベース中の非デンプン性固体成分は、好ましくは、少なくとも10重量%、特に少なくとも15重量%、例えば15〜75重量%、とりわけ20〜60重量%の範囲になる。
【0032】
続いて、ステップ(ii)でミルベースを水性液体(例えば淡水、(例えば後の発酵由来の)再循環処理水またはこれらの液体の混合物)と混合し、水性懸濁液を得る。この手順は、多くの場合スラリー化とも称される。
【0033】
一般に、得られる懸濁物が、少なくとも45重量%、多くの場合少なくとも50重量%、特に少なくとも55重量%、とりわけ少なくとも60重量%、例えば45〜80重量%、好ましくは50〜75重量%、特に55〜70重量%、とりわけ60〜70重量%の乾燥物含量を有するようになる量で、デンプン供給材料、またはミルベースを水性液体と混合する。
【0034】
原理的に、固体ミルベースを懸濁するために用いる水性液体を、やや高い温度(例えば40〜70℃の範囲内)まであらかじめ加熱することが可能である。液体の温度は、得られる懸濁物がデンプンのアルファ化温度(gelatinazation temperature)よりも低い温度、好ましくはデンプンのアルファ化温度よりも少なくとも5K低い温度を有するように選択される。好ましくは、懸濁物の温度は、60℃、特に55℃を超えない。
【0035】
水性液体中への粒子状ミルベースの懸濁は、この目的で慣用の装置中でバッチ方式でまたは連続的に行うことができ、例えば攪拌ミキサー中で、または固体と液体を混合するための連続動作混合装置中で、例えばローター/ステーター原理により動作するミキサー中で、バッチ方式で行うことができる。
【0036】
加水分解を行うために、最初に、ミルベースを含む水性懸濁液を、蒸気の導入によってデンプン供給材料またはミルベース中に存在するデンプンのアルファ化温度より高い温度まで加熱する。この目的で特定のデンプンに必要とされる温度は、当業者に公知であるか(「The Alcohol Textbook - A reference for the beverage, fuel and industrial alcohol industries」(冒頭で引用されている), Chapter 2, p. 11を参照のこと)、または通常の実験により当業者が決定することができる。典型的に、目的のアルファ化温度より少なくとも10K、特に少なくとも20K、例えば10〜100K、特に20〜80K高い温度で懸濁液を加熱する。特に、90〜150℃の範囲、とりわけ100〜140℃の範囲の温度に懸濁液を加熱する。
【0037】
懸濁液の加熱に用いられる蒸気は、典型的に、少なくとも105℃、特に少なくとも110℃、例えば110〜210℃の温度を有する過熱蒸気である。蒸気は、好ましくは、大気圧を超える圧力(superatmospheric pressure)で懸濁液に導入される。したがって、蒸気は、好ましくは、少なくとも1.5bar、例えば1.5〜16bar、特に2〜12barの圧力を有する。
【0038】
一般に、懸濁液への蒸気の導入は、該蒸気が大気圧を超える圧力、好ましくは1〜10または11bar、特に1.5〜5barの大気圧を超える圧力で、好ましくは高速で懸濁液に導入されるように行われる。蒸気導入の結果、該懸濁液は、アルファ化温度より高い温度である90℃より高い温度に直ちに加熱される。
【0039】
蒸気での加熱は、好ましくは、連続操作デバイスで実施される。該デバイスに、懸濁液の粘性、供給速度およびデバイスの形状の結果である特定の供給圧で連続的に懸濁液を満たし、懸濁液充填ゾーン中に、調節可能なノズルを介して供給圧に基づく高い圧力で加熱蒸気を満たす。高い圧力での蒸気の供給とは、懸濁液が加熱されるだけでなく、さらに機械的エネルギーが系に導入され、この機械的エネルギーがミルベース粒子のさらなる粉砕を促進し、特に均一のエネルギー供給をもたらし、ゆえに、ミルベース中の顆粒状デンプン粒子の特に均一のアルファ化をもたらすことを意味する。これらのデバイスは、典型的に、チューブの形状を有する。蒸気は、好ましくは、チューブ状デバイスの長軸に沿って送り込まれる。一般に、懸濁液は、少なくとも45°の角度で、または直角に供給される。調節可能領域のノズルは、典型的に、蒸気の流動方向に向かって細くなる円錐形状を有する。針、または長軸方向に移動可能なロッド上に配置されている円錐がこのノズル内に配置される。針、または円錐は、ノズルの先端と一緒になって開口部を形成する。針、またはロッドを長軸方向に動かすことによって、開口部のサイズ、ゆえにノズル末端の断面積を単純な様式で調節することができ、それにより蒸気の供給速度を単純な様式で調節することができる。
【0040】
これらのデバイスはまた、典型的に、混合管を備えている。懸濁液は、蒸気が供給された後に混合管へ輸送され、該管中で懸濁液はデバイスから出る。この混合管は、通常、蒸気供給に沿って、かつ材料供給に対して垂直に配置される。混合管およびノズルは一緒になって、典型的には開口部を形成し、該開口部を通して懸濁液が輸送される。この開口部の影響として、輸送プロセス中に追加の剪断力が懸濁液に対して作用し、ゆえに、懸濁液に対する機械的エネルギーの供給が増加する。混合管は、長軸方向に移動可能であるように配置することができる。混合管の移動は、開口部のサイズを調節し、ゆえにデバイス中の圧力を低下させる単純な方法である。
【0041】
そのようなデバイスはジェット調理器の名称で先行技術から公知である。該デバイスは、例えば「The Alcohol Textbook」, Chapter 2, 上掲, Figure 13に示されているデバイスであり、例えばHYDROHEATER(登録商標)の名称でHydro Thermal Corp. Waukesha WI, USAから市販されている。
【0042】
反応が連続的に実施される場合、一般に、蒸気で処理された懸濁液は、その後、後反応帯(after-reaction zone)へ輸送される。その目的は、デンプン成分のゲル化を継続することである。典型的には、大気圧を超える圧力、典型的に2〜8barの範囲の絶対圧力が後反応帯にかかっている。後反応帯の温度は、典型的に、90〜150℃の範囲である。この後反応帯の滞留時間は、懸濁液の温度に依存して、1分間〜4時間の範囲でありうる。後反応帯は、典型的に、チューブまたはカラムの形状を有する。一実施形態では、後反応帯は垂直に配置されたカラムの形状を有する。ここで、懸濁液は、蒸気処理デバイスから出ると、カラムの上部領域にアプライされ、下部領域に回収される。本発明の別の実施形態では、後反応帯はチューブの形状を有する。
【0043】
懸濁液が後反応帯から出た後、一般に、圧力が解放され、その後、液化が実施される。圧力の解放は、好ましくは、フラッシュ蒸発の形式で実施される。その目的は、懸濁液を好ましくは100℃未満、特に85℃未満の温度に冷却することである。一般に、そのように分散されたデンプンを、その後、別の反応容器中で液化する。液化は上記のように実施することができる。
【0044】
液化は慣用の様式で実施することができる。一般に、ステップ(ii)での液化は、一般にα−アミラーゼより選択される少なくとも1種のデンプン液化酵素の存在下で行う。反応条件下で活性または安定なデンプンを液化する他の酵素も利用することができる。
【0045】
ミルベース中のデンプン部分を液化するために、原則として全てのデンプン液化酵素を利用することができ、特にα−アミラーゼ(酵素分類EC 3.2.1.1)、例えばバシラス・リケンフォルミス(Bacillus lichenformis)またはバシラス・ステロテルモフィラス(Bacillus staerothermophilus)から得られたα−アミラーゼ、具体的にはバイオエタノール製造の範囲内で乾式粉砕法により得られる物質を液化するために用いられるものを利用することができる。好ましい酵素は、温度安定性である(すなわち、アルファ化温度より高い温度に加熱したときにも、酵素活性を失わない)。液化に好適なα−アミラーゼは市販もされており、例えば、Termamyl 120 L, type Lの商品名でNovozymesから、またはSpezymeの商品名でGenencorから市販されている。液化のために、異なるα−アミラーゼの組み合わせを用いることも可能である。
【0046】
有利には、デンプン液化酵素(特にα−アミラーゼ)の量は、デンプンからオリオ糖への迅速かつ完全な分解が達成されるように選択される。デンプン液化酵素(特にα−アミラーゼ)の総量は、用いるデンプン供給材料の総量に基づき、通常0.002〜3.0重量%の範囲内、好ましくは0.01〜1.5重量%、特に好ましくは0.02〜0.5重量%である。α−アミラーゼ(または用いるデンプン液化酵素)は、初めに反応容器に導入することができ、または液化ステップの間に添加することもできる。
【0047】
α−アミラーゼ(または用いるデンプン液化酵素)の至適活性のために、ステップ(ii)は好ましくは、少なくともいくらかの時間、液化酵素の至適pHの範囲内のpH値で、多くの場合に弱酸性の範囲内、好ましくは4.0〜7.0、特に好ましくは5.0〜6.5のpH値で行われ、この場合、pHは通常はステップ(ii)の前か、またはその開始時に調整される。このpHは、好ましくは液化の間にチェックされ、適宜、再調整される。pHは、好ましくは、希釈鉱酸(HSO、HPOなど)または希釈水酸化アルカリ(NaOHまたはKOHなど)を用いて調整される。
【0048】
用いられる酵素を安定化するために、適切であれば、例えばCaClを使用して、Ca2+イオンの濃度を酵素特有の最適値に調節する。好適な濃度値は当業者が通常の実験で決定することができる。α−アミラーゼとして例えばTermamylが用いられる場合、液体培地中のCa2+濃度を、例えば、10〜100ppm、好ましくは20〜80ppm、特に好ましくは約30〜70ppmに調節することが有利である。単位ppmは重量に基づく単位であり、g/1000kgを意味する。
【0049】
デンプンをデキストリンに完全に分解するために、ヨウ素または、適切であれば、デンプンを検出するための別の試験によるデンプンの検出が陰性になるか、または少なくとも本質的に陰性になるまで、反応混合物を設定温度で維持する。適切であれば、ここで、例えば、用いられるデンプン供給材料の総量に基づいて、0.001〜0.5重量%、好ましくは0.002〜0.2重量%の範囲の、1以上の追加のα−アミラーゼ部分を反応混合物に加えることができる。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、デンプン液化酵素の少なくとも一部もしくは全部、一般的には少なくとも50%、特に少なくとも80%、または全体を、蒸気加熱プロセスの前に、水性液体中のミルベースの懸濁物に添加する。この様式では、混合物がアルファ化温度よりも高い温度まで加熱されるときには、液化プロセスが既に行われている。蒸気を用いる加熱、および後反応期間は、適宜行われる。別個の反応容器中での続く液化ステップは省くことができる。しかし、そのような液化ステップは、デキストリンへのデンプンの分解を完了させるために行われうる。
【0051】
これにより、ミルベース由来の液化されたデンプン部分(典型的にはデキストリン)および適宜、さらなるオリゴ糖および単糖または二糖、ならびに液化に用いたミルベースの非デンプン性成分(特にミルベースの非デンプン性固体成分)を含む、水性デンプン加水分解物がもたらされる。
【0052】
この加水分解物は、水性培地Mとして、有機化合物の調製のための発酵に、直接的に供給することができる。しかし、多くの場合、糖化を行う。糖化は、先行技術の公知の糖化プロセスと同様に実施することができる。
【0053】
糖化は連続的にまたはバッチ方式で行うことができる。この目的のために、液化された培地は、典型的には、例えば次の発酵ステップに供給される前に、特別な糖化槽中で完全に糖化される。この目的のために、液化後に得られる水性生成物を、糖化を行う酵素、典型的にはグルコアミラーゼを用いて、この目的で通常用いられる条件下で処理する。
【0054】
デキストリン(すなわちオリゴ糖)の糖化のために、原則として全てのグルコアミラーゼ(酵素分類EC 3.2.1.3)を用いることができ、特にアスペルギルスから得られるグルコアミラーゼ、具体的にはバイオエタノールの製造に関して乾式粉砕法により得られる糖化材料に対して用いられるものを用いることができる。糖化に好適なグルコアミラーゼは、市販もされており、例えば、Dextrozyme GAの商品名でNovozymesから;またはOptidexの商品名でGenencorから市販されている。異なるグルコアミラーゼの組み合わせを用いてもよい。
【0055】
糖化酵素は、用いるデンプン供給材料の総量に基づき、通常0.001〜5.0重量%、好ましくは0.005〜3.0重量%、特に好ましくは0.01〜1.0重量%の量で、液化後に得られるデキストリン含有加水分解物に添加される。
【0056】
一般に、糖化は糖化酵素の至適温度の範囲内の温度かそれよりも若干低い温度で、例えば50〜70℃、好ましくは60〜65℃で行う。水性液化生成物は、好ましくはまずこれらの温度にされ、続いて糖化を行う酵素で処理される。糖化酵素(例えばグルコアミラーゼ)を添加する前に、液体加水分解物のpHを、用いる酵素の至適活性範囲内の値に、好ましくは3.5〜6.0の範囲内、特に好ましくは4.0〜5.5、非常に特に好ましくは4.0〜5.0の範囲内の値に調整するのが有利である。
【0057】
糖化酵素の添加後は、好ましくはデキストリン含有懸濁物を、一定期間、例えば2〜72時間または必要ならばより長く、特に5〜48時間、設定された温度で保持する。この間に、デキストリンが糖化されて単糖が生じる。糖化プロセスの進行は、公知の方法(例えばHPLC、酵素アッセイまたはグルコース試験紙)を用いて当業者がモニタリングすることができる。単糖濃度が実質的にはもう上昇しないか、再び低下したら、糖化は終了している。
【0058】
デンプン供給材料の本質的にすべての成分を含むか、または、デンプンに加えて、少なくとも固体の非デンプン性成分の一部分をも含むミルベースが、糖含有液体培地(1)の製造に用いられる(すなわちデンプン供給材料の非デンプン性固体成分が完全には除去されていない)ため、液化および場合により糖化後に得られる液体加水分解物もまた、該デンプン供給材料の非デンプン性固体成分の一部分または全量を含む。このことは、多くの場合、例えば穀類由来の、一定量のフィチン酸塩(phytate)の導入をもたらすことが多く、これは見過ごしてはならない量である。それにより生じる阻害効果を回避するために、液体加水分解物を発酵ステップに付する前に、該加水分解物に1種以上のフィターゼを加えることが有利である。フィターゼは、個別の高温条件に対して十分に安定であれば、液化前、液化中または液化後に加えることができる。フィターゼの活性がそれぞれの場合で反応条件下でわずかにしか影響を受けない限り、いずれのフィターゼを用いてもよい。使用されるフィターゼは、好ましくは、>50℃、特に好ましくは>60℃の熱安定性(T50)を有する。フィターゼの量は、通常、1〜10000単位/デンプン供給材料1kg、特に10〜4000単位/デンプン供給材料1kgである。
【0059】
全体的な糖の収量を上げるために、または遊離アミノ酸を得るために、別の酵素、例えばプルラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、グルカナーゼ、キシラナーゼ、グルコシダーゼまたはプロテアーゼを、液化中または糖化中に添加することが可能である。これらの酵素の添加は、粘性に対するよい効果(すなわち低い粘性)を有する場合があり(例えば、長鎖(longer-chainとも称される)グルカンおよび/または(アラビノ)キシランを切断することにより)、また代謝可能なグルコシドの遊離および(残留)デンプンの遊離をもたらす場合がある。プロテアーゼの使用は同様によい効果を有し、すなわち発酵に対して増殖因子として作用するアミノ酸の遊離を可能にする。
【0060】
本発明の別の実施形態では、発酵の前に糖化を行わないか、または部分的にしか行わない。この場合、糖化は、少なくとも部分的には、発酵中にその場で(すなわちin situで)行う。例えば、液体培地中に存在するデキストリンの一部(例えば、デキストリン(またはもとのデンプン)の総重量に基づいて、10〜90重量%の範囲内、特に20〜80重量%の範囲内)を糖化し、得られた糖含有培地を発酵に用いるように手順を進めることができる。続いて、さらなる糖化を、発酵培地中でその場で(in situ)行う。さらに、糖化を、別個の糖化槽を用いずに、発酵槽の中で直接行うことができる。
【0061】
in situ糖化は、上記のように糖化酵素を添加して行うこともできるし、またはそのような酵素の不在下で行うこともできる。なぜなら、多くの微生物は、それ自身、オリゴ糖を代謝することができるからである。そのような場合には、デキストリンはそのままで微生物に取り込まれ、代謝されるか、または、前もって糖化された後に、該菌株に本来備わる糖化酵素(例えば、該菌株に本来備わるグルコアミラーゼ)により加水分解され、続いて代謝される。後者の場合の特に有利な態様は、発酵中の糖化の速度(特にグルコース遊離の速度)が、第1にバイオマスの量により、第2に該菌株に本来備わる糖化酵素の発現レベルにより、該微生物の要求に自動的に適合されることである。
【0062】
in situ糖化の利点は、第1に設備投資が少なくなること;第2に、グルコースの遊離が遅延することで、適切ならば、用いる微生物での阻害または代謝変化を生じることなしに、より高い濃度のグルコースをバッチ中に導入することが可能になることである。大腸菌では、例えば、過度に高いグルコース濃度は有機酸(酢酸塩)の形成をもたらし、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisae)では、そのような場合に、たとえ通気された発酵槽中に十分な酸素が存在しても、発酵に切り替わる(クラブトリー効果)。遅延したグルコース遊離は、グルコアミラーゼ濃度を制御することによって調節することができる。このことは、上記の効果を抑制することを可能にし、かつより多くの基質を初めから導入することができ、これにより希釈(付与される供給流の結果である)を低減させられるようになる。
【0063】
液化、および適宜糖化、が行われた後に得られる水性加水分解物(すなわち、培地M)は、典型的には少なくとも45重量%、多くの場合少なくとも50重量%、特に少なくとも55重量%、とりわけ少なくとも60重量%、例えば45〜80重量%、好ましくは50〜75重量%、特に55〜70重量%、とりわけ60〜70重量%の乾燥物含量を有する。したがって、加水分解後に得られる水性培地Mは、一般に、培地Mの総重量に基づき、(グルコース相当物として計算して)少なくとも35重量%、多くの場合少なくとも40重量%、特に少なくとも45重量%、とりわけ少なくとも50重量%、例えば35〜70重量%、特に40〜65重量%、特に45〜60重量%、とりわけ50〜60重量%の糖濃度を有する。
【0064】
方法をどのように行うかに依存して、得られる培地M中に存在するグルコース相当物は、単糖の形態で存在するか、またはオリゴ糖(特にデキストリン)の形態で存在する。主成分は典型的にはヘキソースおよびペントースなどの単糖(例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、ソルボース、キシロース、アラビノースおよびリボース、特にグルコース)またはこれらの単糖のオリゴ糖である。培地M中の遊離型またはオリゴ糖の成分としてのグルコース以外の単糖の量は、用いるデンプン供給材料およびそれが含む非デンプン性成分の関数として変わり、また方法が実施される様式(例えば、セルラーゼの添加によるセルロース成分の分解)により影響を受けうる。典型的には、培地Mのグルコース相当物のうちの遊離型または結合型でのグルコース部分は、グルコース相当物の総量に基づき、50〜99重量%、特に75〜97重量%、とりわけ80〜95重量%を占める。
【0065】
ステップ(iii)で得られる水性培地Mは、所望の有機化合物の発酵生産のために、ステップ(iv)において本発明にしたがい用いられる。この目的のために、培地Mは発酵に付され、ここで発酵に用いられる微生物を培養するために用いられる。個々の有機化合物は、この方法において、揮発性または非揮発性微生物代謝産物をして得られる。
【0066】
一般に、デキストリン含有培地Mは、発酵に供給される前に、発酵温度(通常は32〜37℃の範囲内)まで冷却される。
【0067】
適切ならば、水性デキストリン含有培地Mは発酵前に滅菌することができ、このとき微生物は、一般に、熱的にまたは化学的方法により破壊される。この目的のために、水性培地Mは、通常は80℃を超える温度に加熱される。細胞の破壊または溶解は、発酵の直前に行うことができる。この目的のために、培地Mの全体を溶解または破壊プロセスに付する。これは、例えば熱的手段または化学的手段により実施することができる。しかし、本発明の方法の範囲内では、発酵前に本明細書中に記載のような滅菌ステップは行う必要がないことが示されている。むしろ、そのような滅菌ステップを行わないことが有利であると実証されている。したがって、本発明の好ましい実施形態は、ステップ(iii)で得られた培地Mを直接的に、すなわち事前に滅菌プロセスを行わずに、発酵に供給する方法に関する。
【0068】
発酵では、培地中に存在する糖が代謝される。培地中に存在する糖がオリゴ糖の形態で、特にデキストリンの形態で存在する場合、それらはそのままで微生物により取り込まれるか、または、添加されたか該菌株に本来備わる糖化酵素(特にグルコアミラーゼ)によりあらかじめ糖化された後に取り込まれ、代謝される。糖化酵素を添加せず、かつ培地中に存在する糖がオリゴ糖(具体的にはデキストリン)の形態で存在する場合、液化デンプン成分の糖化は、微生物による糖(特に単糖グルコース)の代謝と並行して行われる。
【0069】
発酵は、当業者に公知の慣用の様式で行うことができる。この目的で、所望の微生物を、一般に、本明細書中に記載の方法により得られる液体培地中で培養する。
【0070】
発酵法は、バッチ方式または流加方式(中間生成物の回収を伴う流加を含む)で行うことができ、流加プロセスが好ましい。
【0071】
例えば、本発明の方法により得られる培地Mまたは慣用の糖供給材料、すなわち代謝可能な単糖、二糖および/またはオリゴ糖、または代謝可能な単糖、二糖および/またはオリゴ糖を含む培地に、適切ならば水での希釈および慣用の培地成分(例えばバッファー、栄養塩類、窒素供給材料(例えば硫酸アンモニウム、尿素等)、アミノ酸を含む複合栄養培地成分(例えば酵母エキス、ペプトン、CSL等))の添加後に、所望の微生物を接種することができ、そしてこの微生物を、該微生物の濃度が発酵に望ましい定常状態に達するまで発酵条件下で増殖させることができる。この場合、発酵培地中に存在する糖が代謝され、所望の代謝産物が形成される(バッチプロセスまたはバッチ期間としても知られる)。
【0072】
流加プロセスを行う場合、培地Mを、バッチ期間後に(例えば、糖総濃度が特定の値未満に低下したときに)、連続的にまたはバッチ方式で、発酵培地に添加する。
【0073】
本発明の方法の典型的な実施形態は、以下のステップ:
(v)水性発酵培地F中で有機化合物の過剰生産が可能な微生物を培養するステップ;および
(vi)発酵培地Fに培地Mを添加し、その中で、培地M中に存在する加水分解されたデンプン性成分(すなわち糖)が、有機化合物の生成を伴って、該有機化合物の過剰生産が可能な微生物により代謝されるステップ
を含む流加プロセスである。
【0074】
ステップ(v)では、例えば、まず、慣用の糖含有培地(一般にグルコース溶液)を水性液体(特に水)で希釈することにより好適な糖濃度に合わせ、発酵に慣用される培地成分(例えばバッファー、栄養塩類、窒素供給材料(例えば硫酸アンモニウム、尿素等)、アミノ酸を含む複合栄養培地成分(例えば酵母エキス、ペプトン、CSL等))を添加することができる。この場合、糖と液体との比率は、一般に、好ましくは、発酵培地F中の単糖の総濃度が、グルコース相当物として計算して、発酵培地Fの総重量に基づき、6重量%未満、例えば>0〜5重量%の範囲内となるように選択される。そのように調製された糖含有バッチ培地に所望の微生物を接種し、該微生物を、該微生物の濃度が発酵に望ましい定常状態に達するまで、該バッチ培地(発酵培地F)中で発酵条件下で増殖させる。ここで、発酵培地F中に導入された糖が代謝され、所望の代謝産物が形成される。
【0075】
ステップ(vi)にしたがう発酵培地Fへの水性培地Mの添加が発酵プロセスを維持し、微生物により過剰生産される代謝産物が発酵液中に蓄積する。供給される培地Mとバッチ培地(発酵培地F)(初めに導入され、微生物を含む)との容量比は、一般に、約1:10〜10:1、好ましくは約1:5〜5:1、具体的には1:1〜5:1の範囲内である。発酵液中の糖含量は、特に糖含有液体培地の供給速度によって制御することができる。一般に、供給速度は、発酵液中の単糖含量が>0重量%〜約5重量%の範囲内となるように、特に3重量%の値を超えないように調整される。
【0076】
好ましい実施形態では、ステップ(v)での発酵培地F(すなわち、この場合バッチ培地)は、原則として、培地M、有機化合物の過剰生産が可能な微生物、栄養塩類、慣用の添加物(塩基またはバッファーなど)、および適宜、希釈のための水を含む。この目的のために、培地Mを、適切ならば、所望の糖濃度(例えば、グルコース相当物として計算して、培地Mの総重量に基づいて0.1〜10重量%の範囲内)まで希釈し、これを発酵培地F(バッチ培地)の作製に直接用いる。
【0077】
ステップ(vi)にしたがい発酵の維持に用いるデキストリン含有培地の糖含量は、発酵培地Fの希釈を最小限にするために、通常は比較的高い(例えば、上記の範囲である)。
【0078】
好ましくは、比較的高い糖濃度(グルコース相当物として計算して、水性培地Mの総重量に基づき、例えば少なくとも40重量%、特に少なくとも45重量%、とりわけ少なくとも50重量%)を有する培地Mを調製するように、手順を進める。続いてこの培地Mを、まず、水で希釈した後、ステップ(v)にしたがってバッチ培地(発酵培地F)を作製するために用い、次にステップ(vi)にしたがって発酵培地Fへの添加に用いる。
【0079】
当然に、本発明にしたがえば、バッチ期間中および/または流加期間中に、発酵に用いられ、代謝される対象の糖の大部分(少なくとも60重量%、特に70重量%)は、培地Mに起源する。本発明の一実施形態では、発酵に用いられ、代謝される対象の糖の一部(例えば1〜50重量%、特に5〜40重量%、とりわけ10〜30重量%)は、慣用の糖供給材料に起源する。慣用の糖供給材料としては、グルコースおよびスクロースなどの単糖および二糖が挙げられるが、代謝可能な単糖、二糖および/またはオリゴ糖を少なくとも50重量%の濃度で含み、かつ水に不溶な固体を原則として含まない培地(例えば、グルコースシロップ、スクロースシロップ、高濃ジュース、マルトースシロップ、デキストリンシロップ、また糖製造からの廃棄産物(糖蜜)、特にビート糖製造からの糖蜜およびサトウキビ糖製造からの糖蜜)も含まれる。
【0080】
本発明の方法は、少なくとも3個のC原子を有するか、または少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のN原子とを含む、揮発性および非揮発性(特に非揮発性)微生物代謝産物を、発酵法で製造することを可能にする。
【0081】
これに関して、非揮発性産物とは、分解を受けずに発酵液からの蒸留によって回収することができない化合物を意味すると理解される。一般に、これらの化合物は、大気圧下で、水の沸点より高い沸点、頻繁には150℃より高い沸点、特に200℃より高い沸点を有する。一般に、それらは標準条件(298K、101.3kPa)下で固体である化合物である。
【0082】
しかし、大気圧下で、水の沸点より低い融点および/または油状の粘稠性を有する非揮発性の微生物代謝産物を製造するための発酵に、本発明にしたがう液体培地Mを用いることも可能である。
【0083】
用語、非揮発性の微生物代謝産物は、特に、好ましくは3〜10個の炭素原子を有し、かつ、適切であれば、それらに結合している1個以上の、例えば1、2、3または4個のヒドロキシル基を有する有機モノ−、ジ−およびトリカルボン酸、例えば酒石酸、イタコン酸、コハク酸、プロピオン酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、2,5−フランジカルボン酸、グルタル酸、レブリン酸(levulic acid)、グルコン酸、アコニチン酸およびジアミノピメリン酸、クエン酸;タンパク質原性および非タンパク質原性アミノ酸、例えばリジン、グルタミン酸、メチオニン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、トリプトファンおよびトレオニン;プリンおよびピリミジン塩基;ヌクレオシドおよびヌクレオチド、例えばニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)およびアデノシン−5’−一リン酸(AMP);脂質;好ましくは10〜22個の炭素原子を有する飽和および不飽和脂肪酸、例えばγ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸;好ましくは3〜8個の炭素原子を有するジオール、例えばプロパンジオールおよびブタンジオール;3個以上の、例えば3、4、5または6個のOH基を有する多価アルコール(多官能性を有するアルコールとも称される)、例えばグリセロール、ソルビトール、マンニトール、キシリトールおよびアラビニトール(arabinitol);少なくとも4個の炭素原子、例えば4〜22個の炭素原子を有する長鎖(longer-chainとも称される)アルコール、例えばブタノール;炭水化物、例えばヒアルロン酸およびトレハロース;芳香族化合物、例えば芳香族アミン、バニリンおよびインジゴ;ビタミンおよびプロビタミン、例えばアスコルビン酸、ビタミンB、ビタミンB12およびリボフラビン、補因子および、栄養補助剤として知られるもの;タンパク質、例えば酵素、例えばアミラーゼ、ペクチナーゼ、酸性、ハイブリッドまたは中性セルラーゼ、エステラーゼ、例えばリパーゼ、パンクレアーゼ(pancreases)、プロテアーゼ、キシラナーゼおよびオキシドレダクターゼ、例えばラッカーゼ、カタラーゼおよびペルオキシダーゼ、グルカナーゼ、フィターゼ;カロテノイド、例えばリコペン、β−カロテン、アスタキサンチン、ゼアキサンチンおよびカンタキサンチン;好ましくは3〜10個の炭素原子および、適切であれば、1個以上のヒドロキシル基を有するケトン、例えばアセトンおよびアセトイン;ラクトン、例えばγ−ブチロラクトン、シクロデキストリン、生体ポリマー、例えばポリヒドロキシアセテート、ポリエステル、例えばポリラクチド、多糖、ポリイソプレノイド、ポリアミド;および上述の化合物の前駆体および誘導体を含む。非揮発性の微生物代謝産物として好適な他の化合物はGutcho, Chemicals by Fermentation, Noyes Data Corporation (1973), ISBN: 0818805086に記載されている。
【0084】
用語「補因子」は、正常な酵素活性の発生に必要とされる非タンパク質性化合物を含む。これらの化合物は有機または無機化合物でありうる;好ましくは、本発明の補因子分子は有機分子である。そのような分子の例はNADおよびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)である;これらの補因子の前駆体はナイアシンである。
【0085】
用語「栄養補助剤」は、植物および動物、特にヒトの健康を促進する食品添加物を含む。そのような分子の例は、ビタミン、酸化防止剤および特定の脂質、例えば多価不飽和脂肪酸である。
【0086】
製造される代謝産物は、特に酵素、アミノ酸、ビタミン、二糖、3〜10個のC原子を有する脂肪族モノ−およびジカルボン酸、3〜10個のC原子を有する脂肪族ヒドロキシカルボン酸、3〜10個のC原子を有するケトン、4〜10個のC原子を有するアルカノールおよび3〜10個、特に3〜8個のC原子を有するアルカンジオールのうちから選択される。
【0087】
そのように発酵製造される化合物は、それぞれの場合で、用いられる微生物によって生産されるエナンチオマー型(異なるエナンチオマーが存在する場合)として得られることが当業者には明らかである。ゆえに、一般には、アミノ酸の場合、それぞれのL−エナンチオマーが得られる。
【0088】
発酵に用いられる微生物は、以下で詳細に記載されるように、それ自体公知の様式で、目的の微生物代謝産物に依存する。それらは天然起源であっても、遺伝子改変型であってもよい。好適な微生物および発酵プロセスの例を以下の表Aに挙げる。
【表1】

【0089】

【0090】

【0091】

【0092】

【0093】

【0094】

【0095】
本発明の好ましい実施形態では、製造される有機化合物は、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびトリカルボン酸(ヒドロキシル基が結合していてもよく、3〜10個のC原子を有する)、タンパク質原性アミノ酸および非タンパク質原性アミノ酸、プリン塩基、ピリミジン塩基;ヌクレオシド、ヌクレオチド、脂質;飽和および不飽和脂肪酸;4〜10個のC原子を有するジオール、3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコール、少なくとも4個のC原子を有する長鎖アルコール、炭水化物、芳香族化合物、ビタミン、プロビタミン、補因子、栄養補助剤、タンパク質、カロテノイド、3〜10個のC原子を有するケトン、ラクトン、生体ポリマーならびにシクロデキストリンのうちから選択される。
【0096】
本発明の第1の好ましい実施形態は、酵素、例えばフィターゼ、キシラナーゼまたはグルカナーゼの発酵製造における、本発明にしたがって得ることができる糖含有液体培地の使用に関する。
【0097】
本発明の第2の好ましい実施形態は、アミノ酸、例えばリジン、メチオニン、トレオニンおよびグルタミン酸の発酵製造における、本発明にしたがって得ることができる糖含有液体培地の使用に関する。
【0098】
本発明の別の好ましい実施形態は、ビタミン、例えばパントテン酸およびリボフラビン、ならびにその前駆体および誘導体の発酵製造における、本発明にしたがって得ることができる糖含有液体培地の使用に関する。
【0099】
本発明のさらなる好ましい実施形態は、以下の物質の発酵製造での本発明にしたがい得られる糖含有液体培地の使用に関する:
− モノ−、ジ−およびトリカルボン酸、特に3〜10個のC原子を有する脂肪族モノ−およびジトリカルボン酸、例えばプロピオン酸、フマル酸、およびコハク酸、
− 3〜10個のC原子を有する脂肪族ヒドロキシカルボン酸、例えば乳酸;
− 上記長鎖アルカノール、特に4〜10個のC原子を有するアルカノール、例えばブタノール;
− 上記ジオール、特に3〜10個、特に3〜8個のC原子を有するアルカンジオール、例えばプロパンジオール;
− 上記ケトン、特に3〜10個のC原子を有するケトン、例えばアセトン;および
− 上記炭水化物、特に二糖、例えばトレハロース。
【0100】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物は、ポリヒドロキシアルカノアート、例えばポリ−3−ヒドロキシブチラートおよび他の有機ヒドロキシカルボン酸、例えば3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ酪酸およびSteinbuchel(上掲)に記載の他のもの(例えば長鎖(longer-chainとも称される)ヒドロキシカルボン酸、例えば3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸および3−ヒドロキシテトラデカン酸が含まれる)とのコポリエステル、およびこれらの混合物である。発酵を実施するために、例えばS.Y. Lee, Plastic Bacteria Progress and prospects for polyhydroxyalkanoate production in bacteria, Tibtech, Vol. 14, (1996), pp. 431-438に他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いてよい。
【0101】
したがって、好ましい実施形態では、発酵に用いられる微生物は、以下の代謝産物の少なくとも1つを過剰生産する天然または組み換え微生物のうちから選択される:
− 酵素、例えばフィターゼ、キシラナーゼまたはグルカナーゼ;
− アミノ酸、例えばリジン、トレオニンまたはメチオニン;
− ビタミン、例えばパントテン酸およびリボフラビン;ならびにその前駆体および/または誘導体;
− 二糖、例えばトレハロース;
− 3〜10個のC原子を有する脂肪族モノ−およびジカルボン酸、例えばプロピオン酸、フマル酸、およびコハク酸;
− 3〜10個のC原子を有する脂肪族ヒドロキシカルボン酸、例えば乳酸;
− ポリヒドロキシアルカノアート、例えばポリ−3−ヒドロキシブチラートおよび、3−ヒドロキシ酪酸のコポリエステル;
− 3〜10個のC原子を有するケトン、例えばアセトン;
− 4〜10個のC原子を有するアルカノール、例えばブタノール;および
− 3〜8個のC原子を有するアルカンジオール、例えばプロパンジオール。
【0102】
好適な微生物は、通常、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、バシラス属(Bacillus)、アッシビヤ属(Ashbya)、エシェリキア属(Escherichia)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、アクチノバシラス属(Actinobacillus)、アネロビオスピリラム属(Anaerobiospirillum)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、リゾプス属(Rhizopus)およびクロストリジウム属(Clostridium)のうちから選択され、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、バシラス・サブティリス(Bacillus subtilis)、アッシビヤ・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)、大腸菌(Escherichia coli)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはアスカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)、アネロビオスピリラム・スクシニプロデュセンス(Anaerobiospirillum succiniproducens)、アクチノバシラス・スクシンゲネス(Actinobacillus succinogenes)、ラクトバシラス・デルブリュッキイ(Lactobacillus delbruckii)、ラクトバシラス・レイキマンニイ(Lactobacillus leichmannii)、プロピオニバクテリウム・アラビノサム(Propionibacterium arabinosum)、プロピオニバクテリウム・シェルマニイ(Propionibacterium schermanii)、プロピオニバクテリウム・フロイデンレイキイ(Propionibacterium freudenreichii)、クロストリジウム・プロピオニカム(Clostridium propionicum)、クロストリジウム・ホルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、リゾプス・アリザス(Rhizopus arrhizus)およびリゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)の株のうちから選択される。
【0103】
好ましい実施形態では、発酵に用いられる微生物はコリネバクテリウム属(genus Corynebacterium)の株であり、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)の株である。特に、それは、アミノ酸、とりわけリジン、メチオニンまたはグルタミン酸を過剰生産するコリネバクテリウム属の株であり、とりわけコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である。
【0104】
別の好ましい実施形態では、発酵に用いられる微生物はエシェリキア属(genus Escherichia)の株であり、特に大腸菌(Escherichia coli)の株である。特に、それは、アミノ酸、とりわけリジン、メチオニンまたはトレオニンを過剰生産するエシェリキア属の株であり、とりわけ大腸菌である。
【0105】
特定の好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はリジンである。その発酵を実施するために、例えばPfefferle et al., 上掲およびUS 3,708,395に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。原理的に、連続的および非連続的(バッチまたは流加)様式の操作がともに好適であり、流加様式が好ましい。
【0106】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はメチオニンである。その発酵を実施するために、例えばWO 03/087386およびWO 03/100072に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0107】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はパントテン酸である。その発酵を実施するために、例えばWO 01/021772に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0108】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はリボフラビンである。その発酵を実施するために、例えばWO 01/011052, DE 19840709, WO 98/29539, EP 1 186 664およびFujioka, K.: New biotechnology for riboflavin (vitamin B2) and character of this riboflavin. Fragrance Journal (2003), 31(3), 44-48に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0109】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はフマル酸である。その発酵を実施するために、例えばRhodes et al, Production of Fumaric Acid in 20-L Fermentors, Applied Microbiology, 1962, 10 (1), 9-15に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0110】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はコハク酸である。その発酵を実施するために、例えばInt. J. Syst. Bacteriol. 26, 498-504 (1976); EP 249773 (1987) (Lemme and Datta); US 5504004 (1996) (Guettler, Jain and Soni); Arch. Microbiol. 167, 332-342 (1997); Guettler MV, Rumler D, Jain MK., Actinobacillus succinogenes sp. nov., a novel succinic-acid-producing strain from the bovine rumen. Int J Syst Bacteriol. 1999 Jan;49 Pt 1:207-16; US 5,723,322, US 5,573,931, US 5,521,075, WO99/06532, US 5,869,301またはUS 5,770,435に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0111】
別の特に好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物はフィターゼである。その発酵を実施するために、例えばWO 98/55599に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0112】
発酵によって発酵液が生成される。該発酵液は、所望の微生物代謝産物に加えて、本質的に、発酵中に生産されるバイオマス、液化デンプン溶液の代謝されない成分および、特に、デンプン供給材料の非デンプン性固体成分、例えば線維および利用されない糖、およびさらに利用されないバッファーおよび栄養塩類を含む。本出願では、この液体培地は発酵液とも称され、発酵液は、デキストリン含有培地(I)をも含み、そこに存在する糖は部分的または不完全な発酵による変換にしか付されておらず、すなわち、そこでは、利用可能な糖(例えば単糖および二糖)の部分的または不完全な微生物による代謝しか起こっていない。
【0113】
微生物代謝産物の単離もしくは枯渇前または発酵液の揮発性成分の除去前に、適切であれば、上記様式で滅菌ステップが実施される。
【0114】
本発明の特定の実施形態(I)は、少なくとも1種の微生物代謝産物を発酵液から枯渇させるか、または単離する方法に関する。次いで、発酵液のほとんどの揮発性成分を除去し、固体または半固体のタンパク質組成物を生じさせる。そのような方法を実施するための、および得られるタンパク質組成物についてのさらに詳細な説明は、本出願人のWO 2005/116228(PCT/EP2005/005728)の対象である。該文献はさらなる詳細に関して参照される。
【0115】
発酵液からの代謝産物、すなわち、少なくとも3個のC原子を有するかまたは少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のN原子を有する有機化合物(以下、有益な生成物とも称される)の単離または枯渇は、通常、発酵液から少なくとも1種の代謝産物が枯渇または単離され、残留する発酵液中のこの代謝産物の含量が、それぞれの場合で残留発酵液の総重量に基づいて、20重量%を超えず、特に10重量%を超えず、とりわけ5重量%を超えず、非常にとりわけ2.5重量%を超えない量になるように実施される。
【0116】
ファインケミカル(すなわち微生物代謝産物)は、1以上のステップで発酵液から単離するか、または枯渇させることができる。これに関して必須のステップは、発酵液から固体成分を除去することである。このステップは、有益な生成物の単離前または単離後に実施することができる。有益な生成物のおおまかな清浄および入念な精製のため、および製剤化のためのステップをさらに含む、当技術分野で慣用の方法は、有益な生成物の単離および固体の除去、すなわち固液相分離の両者に関して公知である(例えばBelter, P.A, Bioseparations: Downstream Processing for Biotechnology, John Wiley & Sons (1988), およびUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th ed. on CD-ROM, Wiley-VCHに記載されている)。
【0117】
有益な生成物を単離するために、有利には、まず、例えば遠心分離またはろ過によって、発酵液から固体成分を除去し、次いで、例えば結晶化、沈殿、吸着または蒸留によって、液相から有益な生成物を単離する手順にしたがうことができる。別法として、例えばクロマトグラフ法または抽出法を使用することによって、有益な生成物を発酵液から直接単離することもできる。特に述べる必要があるクロマトグラフ法はイオン交換クロマトグラフィーであり、その場合、有益な生成物をクロマトグラフィーカラムで選択的に単離することができる。この場合、残留する発酵液からの固体の除去は、例えばデカント、蒸発および/または乾燥によって、有利に実施することができる。
【0118】
揮発性または油性化合物の場合、一般に、処理中、特に乾燥中に、最高温度をモニタリングすることが必要である。これらの化合物は、それらを吸着剤上で偽固体(pseudo-solid form)に製剤化することによって有利に製造することもできる。この目的に好適な吸着剤は、例えば本出願人のWO 2005/116228(PCT/EP2005/005728)に詳述されている。この様式で好都合に製造できる化合物の例は、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸、さらにまたプロピオン酸、乳酸、プロパンジオール、ブタノールおよびアセトンである。偽固体製剤であるこれらの化合物も、本発明の目的で、固体の非揮発性の微生物代謝産物であると理解される。
【0119】
別の特定の実施形態(II)は、非揮発性の微生物代謝産物をあらかじめ単離するか、または枯渇させることなく、かつ適切であれば、あらかじめ少なくとも一部の固体成分を除去することなく、発酵液の揮発性成分を実質的に除去し、非揮発性の微生物代謝産物の固体製剤を生じさせる方法に関する。そのような方法を実施するためのさらに詳細な説明は、本出願人のPCT/EP2006/066057(先の特許出願DE 102005042541.0)に見出せる。
【0120】
「実質的に」とは、揮発性成分が除去されて、固体または少なくとも半固体残留物が残り、半固体残留物は、適切であれば、固体を加えることによって固体生成物に変換することができることを意味する。一般に、これは、30重量%を超えず、頻繁には20重量%を超えず、特に15重量%を超えない残留水分含量に至るまでの揮発性成分の除去を意味する。一般に、発酵液の揮発性成分は、有利には、発酵液から除去され、乾燥後に決定される固体成分の総重量に基づいて0.2〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは2〜15重量%、非常に特に好ましくは5〜15重量%の範囲の残留水分含量に至る。残留水分含量は、当業者が熟知している慣用の方法によって、例えば熱重量分析(Hemminger et al., Methoden der thermischen Analyse [Methods of thermal analysis], Springer Verlag, Berlin, Heidelberg, 1989)を用いて、決定することができる。
【0121】
発酵液から固体の非揮発性代謝産物(群)を得る作業は、1、2またはそれ以上のステップで、特に1ステップまたは2ステップの手順で行うことができる。一般に、固体の代謝産物を得るための少なくとも1ステップ、特に最終ステップは、乾燥ステップを含む。
【0122】
1ステップの手順では、所望の残留水分含量に達するまで、発酵液の揮発性成分を、適切であれば上述の予備的な除去後に、除去する。
【0123】
2ステップまたは多段階の手順では、まず、例えばろ過(マイクロフィルトレーション、限外ろ過)によって、または揮発性成分の一部分を熱によって蒸発させることによって、発酵液を濃縮する。このステップで除去される揮発性成分の量は、一般に、発酵液の揮発性成分の乾燥物に基づいて10〜80重量%、特に20〜70重量%を占める。1以上の以後のステップでは、所望の残留水分含量に達するまで、発酵液の残りの揮発性成分を除去する。
【0124】
この実施形態(II)では、有益な生成物をあらかじめ枯渇させるか、または実際に単離することなく、揮発性成分を液体培地から本質的に除去する。したがって、発酵液の揮発性成分を除去する場合、非揮発性代謝産物は、本質的に、液体培地の揮発性成分と一緒には除去されず、発酵液由来の他の固体成分の少なくとも一部分、通常そのほとんど、特にその全体とともに、得られる残留物中に残留する。しかし、そうすると、一定量(好ましくは少量)の、一般に、代謝産物の総乾燥物に基づいて20重量%を超えず、例えば0.1〜20重量%、好ましくは10を超えず、特に5重量%を超えず、特に好ましくは2.5重量%を超えず、非常に特に好ましくは1重量%を超えない量の、所望の非揮発性の微生物代謝産物を、発酵液の揮発性成分を除去する際にこれらの成分と一緒に取り出すことも可能である。非常に特に好ましい実施形態では、それぞれの場合で代謝産物の総乾燥重量に基づいて、少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%、とりわけ99重量%、非常にとりわけ約100重量%までの所望の非揮発性の微生物代謝産物が、揮発性成分の除去後に得られた発酵培地の固体成分の一部分と、または発酵培地のすべての固体成分と混合された固体として残留する。
【0125】
所望であれば、揮発性成分の除去前に、例えば遠心分離またはろ過によって、非デンプン性固体成分の一部分、例えば5〜80重量%、特に30〜70重量%を発酵液から分離することができる。適切であれば、非揮発性の微生物代謝産物を含まないか、または少量しか含まない粗固体粒子を除去するために、そのような予備的分離を実施する。この予備的ろ過は、当業者に公知の慣用の方法を使用して、例えば粗いふるい、ネット、穴のあいたオリフィスプレート等を使用して実施することができる。適切であれば、遠心力分離装置で粗固体粒子を分離して除いてもよい。ここで用いられる設備、例えばデカンタ、遠心分離機、セジカンター(sedicanter)および分離装置も当業者に公知である。この様式では、固体または半固体(例えばペースト状)の残留物が得られ、それは、デンプン供給材料の非揮発性代謝産物および非揮発性の、概して固体の、非デンプン性成分または少なくともその大部分、頻繁には固体の非デンプン性成分の少なくとも90重量%または全体を含む。
【0126】
発酵の固体成分とともに存在する乾燥代謝産物の特性は、製剤化補助剤(例えば担体)およびコーティング材料、結合剤および他の添加物の添加によって、とりわけ種々のパラメータに関して、例えば活性物質含量、粒径、粒子の形状、粉塵化傾向、吸湿性、安定性、特に保存安定性、色、匂い、流動挙動、凝集傾向、帯電、光に対する感受性および温度感受性、機械的安定性および再分散性に関して特異的にそれ自体知られた様式で製剤化することができる。
【0127】
慣用の製剤化補助剤には、例えば、結合剤、担体材料、粉末化/流動補助剤、さらにまた着色顔料、殺生物剤、分散剤、消泡剤、粘性調節剤、酸、アルカリ、酸化防止剤、酵素安定化剤、酵素阻害剤、吸着剤(adsorbates)、脂肪、脂肪酸、油またはこれらの混合物が含まれる。そのような製剤化補助剤は、製剤化および乾燥方法、例えばスプレー乾燥、流動床乾燥および凍結乾燥を使用する場合に特に、乾燥助剤として有利に用いられる。さらなる詳細はPCT/EP2006/066057(先の出願DE 102005042541.0)に見出せる。
【0128】
上述の添加物および、適切であれば、追加の添加物、例えばコーティング材料の量は、目的の代謝産物の特定的な要求および用いられる添加物の特性に依存して、大きく変動しうる。それは、例えば、それぞれの場合で生成物またはその最終剤形の物質混合物の総重量に基づいて、0.1〜80重量%の範囲、特に1〜30重量%の範囲でありうる。
【0129】
製剤化補助剤の添加は、発酵液の加工(製品製剤化または固体設計とも称される)前、加工中または加工後に行うことができ、特に乾燥中に行うことができる。発酵液または代謝産物の加工前の製剤化補助剤の添加は、特に、加工対象の物質または生成物の加工性を改善するために有利でありうる。製剤化補助剤は、得られた固体の代謝産物に、あるいは該代謝産物を含む溶液もしくは懸濁液に、例えば発酵完了後の発酵液に直接、または加工中および最終乾燥ステップ前に得られた溶液もしくは懸濁液に加えることができる。
【0130】
ゆえに、例えば、補助剤を微生物代謝産物の懸濁液と混合することができる;そのような懸濁液は、担体材料に、例えばスプレーするか、または混合することによって付加することもできる。乾燥中の製剤化補助剤の添加は、例えば代謝産物を含む溶液または懸濁液がスプレーされる場合に重要でありうる。製剤化補助剤の添加は、例えばコーティング/コーティング層を乾燥粒子に付加する場合に、特に乾燥後に行う。乾燥後および追加のコーティングステップ後のいずれでも、生成物に追加の補助剤を加えることができる。
【0131】
発酵液からの揮発性成分の除去は、液相から固相を分離するための通例の方法によって、それ自体公知の様式で行われる。該方法には、ろ過による方法および液相の揮発性成分を蒸発させる方法が含まれる。有用な生成物をおおまかに清浄するためのステップおよび製剤化ステップを含んでもよいそのような方法は、例えばBelter, P. A, Bioseparations: Downstream Processing for Biotechnology, John Wiley & Sons (1988), およびUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th ed. on CD-ROM, Wiley-VCHに記載されている。発酵終了後の製品製剤化または加工の範囲内で用いることができる、当業者に公知の方法、設備、補助剤および一般的または特異的実施形態は、さらにまた、EP 1038 527, EP 0648 076, EP 835613, EP 0219 276, EP 0394 022, EP 0547 422, EP 1088 486, WO 98/55599, EP 0758 018およびWO 92/12645に記載されている。
【0132】
この実施形態(II)の第1のバリエーションでは、非揮発性の微生物代謝産物は、液相で溶解された状態で存在すれば、例えば結晶化または沈殿によってそれを液相から固相に変換される。その後、例えば遠心分離、デカントまたはろ過によって、非揮発性固体成分(代謝産物が含まれる)を分離する。同様の様式で油性代謝産物を分離して除いてもよく、吸着剤、例えばシリカ、シリカゲル、ローム、クレイおよび活性炭の添加によって、目的の油性発酵産物が固体に変換される。
【0133】
この実施形態(II)の第2のバリエーションでは、蒸発によって揮発性成分を除去する。蒸発はそれ自体公知の様式で行うことができる。揮発性成分を蒸発させるために好適な方法の例は、スプレー乾燥、流動床乾燥または流動床凝集、凍結乾燥、空気ドライヤーおよび接触ドライヤー、および押出乾燥である。上述の方法と、形状を付与する方法、例えば押し出し、ペレット化またはプリル化(prilling)の組み合わせを実施してもよい。これらの最後に記載される方法では、部分的にまたは大部分が事前乾燥済みの代謝産物含有物質混合物を用いることが好ましい。
【0134】
好ましい実施形態では、発酵液の揮発性成分の除去は、スプレー乾燥法または流動床乾燥法(流動床顆粒化が含まれる)を含む。この目的を達成するために、適切であれば、たとえあったにしても少量の非揮発性の微生物代謝産物しか含まない粗固体粒子を取り出すための予備的分離後に、発酵液を1種以上のスプレー乾燥または流動床乾燥装置に送り込む。固体を含む発酵液の輸送、すなわち送り込みは、便宜上、固体を含む液体のための通例の輸送デバイス、例えばポンプ、例えば偏心シングルロータースクリューポンプ(例えばDelasco PCM製)または高圧ポンプ(例えばLEWA Herbert Ott GmbH製)を用いて行われる。
【0135】
本発明の糖含有液体培地を使用する発酵は、以下のように実施することもできる:
(vii)総重量に基づいて50重量%を超えない、例えば5〜45重量%の範囲の部分を、ステップ(iii)で得られた培地(M)から取り出し、該部分はデンプン供給材料の非デンプン性固体成分を含み、かつ残りの部分が、第1の代謝産物(A)、例えば固体の非揮発性代謝産物(A)または揮発性代謝産物(A)を製造するための発酵に供給され;かつ
(viii)この部分を、適切であればデンプン供給材料の非デンプン性固体成分の全体または一部分をあらかじめ除去した後に、代謝産物(A)と同一であるか、または異なる第2の代謝産物(B)を製造するための発酵に供給する。
【0136】
(vii)の非デンプン性固体成分が分離される場合、培地Mの残りの部分の固体含量は、好ましくは50重量%を超えず、特に30重量%を超えず、特に好ましくは10重量%を超えず、非常に特に好ましくは5重量%を超えない量になる。そのような場合、第2の代謝産物(B)を製造するための発酵前に、すべての固体を分離することが特に好ましい。
【0137】
この手順により、(vii)の分離発酵において、例えば酸素移動速度に関して、一定の最小限の要求を満たす必要がある微生物を使用することが可能になる。(vii)の分離発酵において用いるために好適な微生物は、例えば、バシラス属の種、好ましくはバシラス・サブティリス(Bacillus subtilis)である。分離発酵においてそのような微生物によって生産される化合物は、特にビタミン、補因子および栄養補助剤、プリンおよびピリミジン塩基、ヌクレオシドおよびヌクレオチド、脂質、飽和および不飽和脂肪酸、芳香族化合物、タンパク質、カロテノイドから選択され、とりわけビタミン、補因子および栄養補助剤、タンパク質およびカロテノイドから選択され、非常にとりわけリボフラビンおよびパントテン酸カルシウムから選択される。
【0138】
この手順の好ましい実施形態は、2つの別個の発酵における同一の代謝産物(A)および(B)の並行製造に関する。これは特に同一代謝産物の異なる適用が異なる純度要求を有する場合に有利である。したがって、第1の代謝産物(A)、例えば飼料添加物として使用されるアミノ酸、例えばリジン、メチオニン、トレオニンまたはグルタミン酸を、固体含有発酵液を使用して製造し、かつ同一の第2の代謝産物(B)、例えば食品添加物として使用される同一のアミノ酸を、(viii)の固体が除去された発酵液を使用して製造する。非デンプン性固体成分の完全または部分的除去のおかげで、適用分野が高い純度要求を有する、例えば食品添加物としての代謝産物を加工する場合の精製の複雑さを低減することができる。
【0139】
別の好ましい実施形態では、この手順を例えば以下のように実施することができる。代謝産物A、例えばアミノ酸、例えばリジン、メチオニン、グルタミン酸またはトレオニン、クエン酸またはエタノールの製造のための好ましくは大量発酵は、例えばWO 2005/116228(PCT/EP2005/005728)またはPCT/EP2006/066057(先の出願DE 102005042541.0)に記載の方法にしたがって、またはバイオエタノールの発酵製造についての公知の方法にしたがって実施される。(vii)では、ステップ(iii)で得られる培地(M)の一部分を取り出す。(vii)にしたがって取り出された部分は、(viii)にしたがって、通例の方法、例えば遠心分離またはろ過によって固体を完全にまたは部分的に除去することができ、それはBを製造するための発酵において必要とされるものに依存する。このように得られた培地(M)(場合により完全にまたは部分的に固体が除去されている)は、(vii)にしたがって、代謝産物Bを製造するための発酵に供給される。(viii)にしたがって分離された固体流は、有利には、大量発酵の培地Mの流れに戻される。
【0140】
大量発酵において製造される微生物代謝産物(A)がエタノールである場合、ステップ(iii)にしたがって製造される培地Mは、エタノール(バイオエタノール)の発酵製造において通常用いられる、例えば25〜33重量%の範囲の単糖、二糖またはオリゴ糖濃度を有する。ここで再び、ステップ(viii)の固体の分離は、個別の代謝産物Bを製造するための発酵に必要とされるものにしたがい行われる。
【0141】
上述の手順の好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物Bはリボフラビンである。その発酵を実施するために、例えばWO 01/011052, DE 19840709, WO 98/29539, EP 1186664およびFujioka, K.: New biotechnology for riboflavin (vitamin B2) and character of this riboflavin. Fragrance Journal (2003), 31(3), 44-48に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0142】
方法のこのバリエーションを実施するために、上記のように、代謝産物A、例えばアミノ酸、例えばリジン、メチオニンまたはグルタミン酸、クエン酸またはエタノールを製造するための、好ましくは大量発酵を実施する。(vii)にしたがって、ステップ(iii)で得られた培地Mの一部分を取り出し、(viii)にしたがって、通例の方法、例えば遠心分離またはろ過によって、完全にまたは部分的に固体を除去する。得られた、本質的に完全にまたは部分的に固体が除去されている培地Mを、(viii)にしたがって、代謝産物B(この場合、リボフラビン)を製造するための発酵に供給する。(viii)にしたがって分離された固体流は、有利には、大量発酵の培地Mの流れに戻される。
【0143】
(viii)にしたがい作製されたリボフラビン含有発酵液は、例えばDE 4037441, EP 464582, EP 438767およびDE 3819745に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順によって加工することができる。細胞集団の溶解後、好ましくはデカントによって、結晶状態で存在するリボフラビンを分離する。固体を分離する他の方法、例えばろ過もまた可能である。その後、好ましくはスプレー乾燥機および流動床乾燥機を用いて、リボフラビンを乾燥する。別法として、(viii)にしたがって製造されたリボフラビン含有発酵混合物を、例えばEP 1048668およびEP 730034に記載の条件および手順と類似の条件および手順によって加工することができる。低温殺菌後、発酵液を遠心分離し、残留する固体含有フラクションを鉱酸で処理する。形成されたリボフラビンをろ過によって水性酸性培地から取り出し、適切であれば洗浄し、次いで乾燥する。
【0144】
この手順の別の好ましい実施形態では、発酵において微生物によって生産される代謝産物Bはパントテン酸である。その発酵を実施するために、例えばWO 01/021772に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順を用いることができる。
【0145】
この方法のバリエーションを実施するために、リボフラビンに関して上に記載されるような手順にしたがってよい。(viii)にしたがって予備的精製に付され、かつ好ましくは固体が本質的に除去されている培地Mを、パントテン酸の製造のために、(viii)にしたがって発酵に供給する。ここで、固体含有液体培地と比較して粘性が低減されることが特に有利である。分離された固体流は、好ましくは、大量発酵の糖含有液体培地の流れに戻される。
【0146】
(viii)にしたがって製造されたパントテン酸含有発酵液は、例えばEP 1 050 219およびWO 01/83799に、他の炭素供給材料に関して記載されている条件および手順と類似の条件および手順によって加工することができる。すべての発酵液を低温殺菌した後、例えば遠心分離またはろ過によって、残留する固体を分離する。固体分離ステップにおいて得られた透明な流出液を、部分的に蒸発させ、適切であれば塩化カルシウムで処理し、乾燥、特にスプレー乾燥する。
【0147】
分離して除かれた固体は、並行大量発酵法の範囲内で、それぞれの所望の微生物代謝産物(A)とともに得ることができる。
【0148】
乾燥および/または製剤化ステップ後、全粒または粉砕された穀粒、好ましくはトウモロコシ、コムギ、オオムギ、キビ、ライコムギおよび/またはライムギを製品製剤またはタンパク質組成物に加えてよい。
【0149】
以下に挙げる実施例は、本発明の個別の態様を説明するためのものであり、決して限定的であると理解すべきではない。
【実施例】
【0150】
I. デンプン供給材料の粉砕
以下で用いられるミルベースを次のように製造した。ローターミルを使用して全粒トウモロコシ穀粒を完全に粉砕した。異なるビーター、製粉経路またはスクリーン要素を使用して、3つの異なる程度の粉末度を得た。実験室用振動スクリーン(振動分析計:Retsch Vibrotronic type VE1;スクリーニング時間5分、振幅:1.5mm)を用いるミルベースのスクリーン分析では、表Iに列挙される結果が得られた。
【表2】

【0151】
II. 酵素によるデンプンの液化およびデンプンの糖化
II.(1)ジェット調理器を用いた液化
乾式粉砕したトウモロコシ粉を連続的に液化するために、250Lの容量を有する2つの攪拌槽を準備する;1時間ごとに、ジェット調理器のそれぞれに交互に、水でスラリーにしたトウモロコシ粉を加える。典型的には、それらの槽は、117kgの水が導入され、かつ、α−アミラーゼ(例えば、Termamyl SC)を0.10重量%(用いる穀粉の量に基づき)の濃度で前記の水に加えるように準備される。その後、133kgのトウモロコシ粉を、約45℃で、複数のステップで加え、混合する。Ca2+濃度を50ppmに調整(例えば、CaClの添加により)した後、pHを5.6〜5.8の範囲内に調整する。全ての成分を加えた後、該トウモロコシ粉懸濁物を、ジェット調理器で用いるまで、攪拌により十分に混合する。次に、この懸濁物を250kg/hで5barの圧力でジェット調理器に供給する。アルファ化温度を超えて、105℃までのトウモロコシ粉懸濁物の加熱は、25kg/hの蒸気を並行して(7.5bar)付与することにより行う。保持時間5分間の管状反応器(ジェット調理器の下流に配置されている)中で、アルファ化デンプンの一部分がデキストリンに分解される(液化1)。その後、反応混合物の温度をフラッシングにより90℃まで下げるが、このプロセスで約5kg/hの蒸気が出る。続いて、デンプンをデキストリンに完全に分解するために、第2の液化を、別の管状反応器中で90℃にて100分間にわたって行う。そして得られた反応混合物をさらなるフラッシングにより61℃の糖化温度まで冷却するが、このプロセスでは約14kg/hの水が失われる。
【0152】
II.(1)糖化
II.(1)で得られた反応混合物の一部分を、無作為試験において糖化した。この目的で、約1000gの反応混合物を攪拌槽に移し、攪拌を続けながら61℃に保った。攪拌は、実験の全体を通して継続した。HSOを用いてpHを4.3に調整した後、17.9g(15.2ml)のDextrozyme GA(Novozyme A/S)を添加した。約3時間、温度を保ち、その間、反応の進行をHPLCによりモニタリングした。最後には、グルコース濃度は420g/kgであった。
【0153】
III.菌株
ATCC13032 lysCfbr
以下の実施例の一部では、ATCC13032 lysCfbrの名前でWO 05/059144に記載されている、改変コルネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)株を用いた。
【0154】
実施例1
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)を使用する振とうフラスコ実験に、プロトコルIIで調製した液化・糖化トウモロコシ粉加水分解物を用いた。
【0155】
菌株
フィードバック調節が解除されたアルパルトキナーゼを有する、改変された野生型であるATCC13032 lysCfbrを使用した。
【0156】
種菌の調製
細胞を滅菌CM+CaAc寒天(組成:表1を参照のこと;121℃で20分間)上にストリークし、次いで30℃で一晩インキュベートした。続いて、細胞をプレートからかきとり、生理食塩水に再懸濁した。2つのバッフルを備えた250mlエルレンマイヤーフラスコ中の25mlの培地(表2を参照のこと)に、それぞれ、610nmでの光学濃度がOD610値0.5に達する量の、得られた細胞懸濁液を接種した。
【表3】

【0157】
発酵液の調製
フラスコ培地の組成は表2に示される通りである。試験を三重測定で実施した。
【表4】

【0158】
接種後、フラスコを30℃で48時間、加湿シェーカー中で振とう(200rpm)しながらインキュベートした。発酵終了後、HPLCによってグルコース含量およびリジン含量を決定した。Agilent 1100 series LC systemを用いてHPLC分析を実施した。Agilent 1100 series LC System HPLCでの高圧液体クロマトグラフィーによってアミノ酸濃度を決定した。オルトフタルアルデヒド(ortho-phthaldehyde)でのプレカラム誘導体化により、形成されたアミノ酸の定量化を可能にし;Agilent Hypersil AAカラムを使用してアミノ酸混合物を分離する。
【0159】
実施例2
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)を使用する振とうフラスコ実験に、プロトコルIIで調製した液化・糖化トウモロコシ粉加水分解物を用いた。
【0160】
菌株
glaAプロモーターの制御下にアスペルギルス・フィクウム(Aspergillus ficuum)由来の6コピーのphyA遺伝子を有するアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)フィターゼ産生株を、WO98/46772に詳細に記載されているNP505-7の製造と同様に作製した。3つの改変glaAアンプリコン(ISO505に類似)を有するが、phyA発現カセットが組み込まれていない菌株を対照として使用した。
【0161】
種菌の調製
1バッフルを備えた100mlエルレンマイヤーフラスコ中の20mlの前培養培地(表3を参照のこと)に、それぞれ、100μlの凍結乾燥培養物を接種し、加湿シェーカー中で振とう(170rpm)しながら、34℃で24時間インキュベートする。
【表5】

【0162】
1バッフルを備えた250mlエルレンマイヤーフラスコ中の50mlの本培養培地(表4を参照のこと)に、それぞれ、5mlの前培養を接種する。
【0163】
発酵液の調製
フラスコ培地の組成は表4に示される通りである。各サンプルについて2フラスコを準備した。
【表6】

【0164】
接種後、フラスコを34℃で6日間、加湿シェーカー中で振とう(170rpm)しながらインキュベートした。発酵停止後、250mM酢酸/酢酸ナトリウム/Tween 20(0.1重量%)、pH5.5バッファー中で、フィチン酸を基質として使用して、好適なフィターゼ活性レベル(標準:0.6U/ml)でフィターゼ活性を決定した。アッセイをマイクロタイタープレート(MTP)での適用に標準化した。10μlの酵素溶液を、250mM酢酸ナトリウムバッファー、pH5.5中の6.49mMフィチン酸塩溶液(フィチン酸塩:フィチン酸のドデカナトリウム塩)140μlと混合した。37℃で1時間のインキュベーション後、等容量(150μl)のトリクロロ酢酸を加えて反応を停止させた。この混合物の1アリコート(20μl)を、0.32N HSO、0.27重量%のモリブデン酸アンモニウムおよび1.08重量%のアスコルビン酸を含む溶液280μlに移した。その後、50℃で25分間インキュベートした。青色溶液の吸収を820nmで測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3個のC原子を有するか、少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のN原子を有する少なくとも1種の有機化合物を発酵により製造する方法であって、以下のステップ:
(i)デンプン供給材料を粉砕し、それによりデンプン供給材料の非デンプン性固体成分の少なくとも一部分を含むミルベースを得るステップ;
(ii)懸濁物中の乾燥物含量が少なくとも45重量%となる量で前記ミルベースを水性液体中に懸濁するステップ;
(iii)前記ミルベース中のデンプン性成分を液化、および適切ならば、続く糖化により加水分解し、それにより加水分解されたデンプン供給材料のデンプン性成分と、デンプン供給材料の非デンプン性固体成分の少なくとも一部分とを含んでなる水性培地Mを得るステップ;および
(iv)前記有機化合物の過剰生産が可能な微生物の培養のための発酵に、ステップ(iii)で得られた水性培地Mを用いるステップ
を含み、ここで、ステップ(iii)において、ステップ(ii)で得られた懸濁物に蒸気を導入することにより、該懸濁物を、前記ミルベース中に存在するデンプンのアルファ化(gelatinization)温度より高い温度まで加熱する、上記方法。
【請求項2】
蒸気を用いる加熱をジェット調理器中で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
加熱されたミルベースの懸濁物を、フラッシュエバポレーションによりアルファ化温度よりも低い温度まで冷却し、続いてデンプン液化酵素の存在下でデンプンの液化を行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種のデンプン液化酵素を、加熱前に前記懸濁物に添加する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
デンプンの加水分解が糖化ステップを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
以下のステップ:
(v)前記有機化合物の過剰生産が可能な微生物を、代謝可能な糖を含む水性発酵培地F中で培養するステップ;および
(vi)前記発酵培地Fに水性培地Mを添加し、そのプロセスの間に前記水性培地M中に存在する加水分解されたデンプン性成分が、前記有機化合物の形成を伴って、前記微生物により代謝されるステップ
をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(v)において、前記発酵培地Fが、原則として、前記水性培地M、前記有機化合物の過剰生産が可能な微生物、栄養塩類、慣用の添加物および希釈のための水を含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(ii)で用いるミルベースが、デンプン供給材料中に存在するデンプン供給材料の非デンプン性固体成分を少なくとも20重量%含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
デンプン供給材料として穀粒を用いる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
デンプン液化酵素がα−アミラーゼである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
製造される有機化合物が、ヒドロキシル基が結合していてもよく、3〜10個の炭素原子を有するモノカルボン酸、ジカルボン酸およびトリカルボン酸、タンパク質原性アミノ酸および非タンパク質原性アミノ酸、プリン塩基、ピリミジン塩基;ヌクレオシド、ヌクレオチド、脂質;飽和および不飽和脂肪酸;4〜10個の炭素原子を有するジオール、3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコール、少なくとも4個の炭素原子を有する長鎖アルコール、炭水化物、芳香族化合物、ビタミン、プロビタミン、補因子、栄養補助剤、タンパク質、カロテノイド、3〜10個の炭素原子を有するケトン、ラクトン、生体ポリマーならびにシクロデキストリンより選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
発酵に用いる微生物が、以下の代謝産物:酵素、アミノ酸、ビタミン、二糖、3〜10個のC原子を有する脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、3〜10個のC原子を有する脂肪族ヒドロキシカルボン酸、3〜10個のC原子を有するケトン、4〜10個のC原子を有するアルカノール、3〜8個のC原子を有するアルカンジオールならびにポリヒドロキシアルカノアートのうち少なくとも1つを過剰生産する天然または組み換え微生物より選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
微生物が、1種以上のアミノ酸を過剰生産するものより選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
微生物が、3〜10個のC原子を有する1種以上の脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸を過剰生産するものより選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
微生物が、1種以上の酵素を過剰生産するものより選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
微生物が、フィターゼを過剰生産するものより選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
微生物が、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、バシラス属(Bacillus)、アッシビヤ属(Ashbya)、エシェリキア属(Escherichia)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、アクチノバシラス属(Actinobacillus)、アネロビオスピリラム属(Anaerobiospirillum)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、クロストリジウム属(Clostridium)およびリゾプス属(Rhizopus)より選択される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
微生物が、コリネバクテリウム属(genus Corynebacterium)の株より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1種の微生物代謝産物が発酵液から枯渇するか単離され、かつ発酵液の揮発性成分が続いて実質的に除去され、固体または半固体タンパク質組成物が得られる、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
発酵液の揮発性成分の少なくとも一部が、非揮発性微生物代謝産物の事前の単離または枯渇、および適宜、固体成分の事前の除去なしに除去され、非揮発性微生物代謝産物の固体調製物が得られる、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−517012(P2009−517012A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541758(P2008−541758)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068928
【国際公開番号】WO2007/060235
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】