説明

有機感光体および画像形成装置

【課題】形成される画像における濃度ムラの発生が抑制されると共に、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生が抑制される有機感光体および画像形成装置の提供。
【解決手段】導電性支持体上に中間層を有し、この中間層上に有機感光層が積層されてなる有機感光体において、中間層には、バインダー樹脂と酸化チタン粒子とが含有されており、有機感光層には、ブチラール樹脂が含有されており、前記酸化チタン粒子が、下記一般式(1)で表わされるシランカップリング剤により表面処理されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成方法において用いられる有機感光体、および、この有機感光体を具えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の複写機やプリンタなどの画像形成装置には、より一層の高画質化が要請されている。
高画質化の要請としては、具体的には、ページ内またはページ間での濃度ムラを改善することなどが挙げられる。
【0003】
ここで、複写機やプリンタなどの画像形成装置に用いられる感光体としては、有機系光導電性材料を主成分として含む有機感光層を有する有機感光体が広く用いられている。このような有機感光体としては、例えば、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む単層構造の有機感光層を有するものや、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とが積層されてなる積層構造の有機感光層を有するものが知られている。これらの中でも、積層構造の有機感光層を有する有機感光体、なかでも感光体表面を負に帯電させる負帯電型の有機感光体は、電子写真特性や耐久性に優れ、設計の自由度が高いことなどから、広く実用化されている。
【0004】
負帯電型の積層構造を有する有機感光体は、通常、導電性支持体上に、中間層と、電荷発生層上に電荷輸送層が形成されてなる有機感光層とが積層されている。
このような負帯電型の積層構造を有する有機感光体においては、その表面が負に帯電された後、露光されると、電荷発生層において電荷が発生し、このうち負電荷(電子)は中間層を経て導電性支持体へ移動し、一方、正孔(ホール)は電荷輸送層を経て有機感光体表面へ移動し、当該表面の負電荷を打ち消して静電潜像が形成される。そのため、中間層には、電子輸送性を有すること(電荷発生層で発生した電子を速やかに導電性支持体へ移動させること)および正孔ブロッキング性を有すること(導電性支持体から有機感光層への正孔の注入を抑制すること)が求められている。
【0005】
濃度ムラを改善する方法としては、中間層の電子輸送性を高めることが考えられる。しかしながら、単に中間層の電子輸送性を高めるのみでは、導電性支持体から有機感光層への正孔の注入を十分に抑制することができない、すなわち十分な正孔ブロッキング性が得られず、また、電荷発生層に含有される電荷発生物質として高感度のものを用いた場合においては、熱的励起により発生したキャリアのリークが生じ、これにより、有機感光体の表面電位が部分的に低下し、黒ポチやカブリなどの画像欠陥が発生するという問題がある。
【0006】
一方、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生を抑制する方法としては、例えば、特許文献1および2には、中間層に含有される金属酸化物粒子に対しアミノシランカップリング剤などの表面処理剤を用いて表面処理をすることが提案されている。
しかしながら、上記の方法によっては、正孔ブロッキング性が高くなって画像欠陥の発生を抑制することはできるものの電子輸送性が低下し、ページ内またはページ間での濃度ムラの発生を抑制することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−15184号公報
【特許文献2】特開2007−57820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、形成される画像における濃度ムラの発生が抑制されると共に、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生が抑制される有機感光体および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の有機感光体は、導電性支持体上に中間層を有し、この中間層上に有機感光層が積層されてなる有機感光体において、
中間層には、バインダー樹脂と酸化チタン粒子とが含有されており、
有機感光層には、ブチラール樹脂が含有されており、
前記酸化チタン粒子が、下記一般式(1)で表わされるシランカップリング剤により表面処理されたものであることを特徴とする。
【0010】
【化1】

【0011】
〔一般式(1)中、R1 は、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはアセチル基を示し、R2 は、炭素数1〜5の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R3 は、水素原子またはメチル基を示す。nは、1〜3の整数を示す。nが2以上の整数である場合においては、2つ以上のR1 は、互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。〕
【0012】
本発明の有機感光体においては、前記酸化チタン粒子が、数平均一次粒子径が10〜20nmのものであることが好ましい。
【0013】
本発明の有機感光体においては、前記有機感光層には、電荷発生物質として、Y型チタニルフタロシアニン、2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニン、または、2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンと非付加のチタニルフタロシアニンとの混合物が含有されていることが好ましい。
【0014】
本発明の有機感光体においては、前記有機感光層は、電荷発生物質およびブチラール樹脂を含有する電荷発生層上に、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層が形成されてなるものであることが好ましい。
【0015】
本発明の有機感光体においては、前記中間層を構成するバインダー樹脂がポリアミド樹脂であることが好ましい。
【0016】
本発明の画像形成装置は、上記の有機感光体を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有機感光体によれば、中間層に含有される酸化チタン粒子が、一般式(1)で表わされるシランカップリング剤(以下、「特定のシランカップリング剤」ともいう。)により表面処理されたものであり、有機感光層にブチラール樹脂が含有されることにより、形成される画像における濃度ムラの発生が抑制されると共に、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生が抑制される。
【0018】
本発明の画像形成装置によれば、上記の有機感光体を有することにより、形成される画像における濃度ムラの発生が抑制されると共に、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の有機感光体の層構成の一例を示す説明用断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
【図3】実施例において用いられるチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
<有機感光体>
本発明の有機感光体は、負帯電型の有機感光体であり、導電性支持体上に中間層を有し、この中間層上に有機感光層が積層されてなるものである。
本発明においては、有機感光層は、露光によって電荷を発生させる機能と、発生させた電荷(正孔)を感光体表面に輸送する機能とを有する。本発明に係る有機感光層は、電荷発生機能と、電荷輸送機能とを同一の層で行う単層構造を有していてもよく、電荷発生機能と電荷輸送機能とを異なる層で行う積層構造を有していてもよいが、繰り返し使用による残留電位の増加を抑制するためには、電荷発生層と電荷輸送層との積層構造を有することが好ましい。
【0022】
本発明の有機感光体の層構成は、特に限定されるものではないが、具体的な例としては、下記(1)および(2)の層構成が挙げられる。
(1)導電性支持体上に、中間層を有し、この中間層上に、電荷発生物質を含有する電荷発生層および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層がこの順に積層された積層構造の有機感光層が積層され、前記電荷輸送層が最表面層となる層構成。
(2)導電性支持体上に、中間層を有し、この中間層上に、電荷発生物質および電荷輸送物質を含有する単層構造の有機感光層が積層され、前記有機感光層(単層)が最表面層となる層構成。
なお、本発明の有機感光体は、有機感光層上に保護層が形成されていてもよい。
【0023】
本発明において、有機感光体とは、電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能および電荷輸送機能の少なくとも一方の機能が有機化合物により発揮されて構成されるものをいい、公知の有機電荷発生物質または有機電荷輸送物質から構成される感光層を有する感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能とが高分子錯体により構成される感光層を有する感光体など公知の有機感光体全てを含むものをいう。
【0024】
以下、本発明の有機感光体が上記(1)の層構成である場合について具体的に説明する。
【0025】
図1は、本発明の有機感光体の層構成の一例を示す説明用断面図である。
この有機感光体10は、導電性支持体12上に、中間層14を介して電荷発生層16および電荷輸送層18がこの順に積層されてなる有機感光層17が形成されている。
【0026】
この有機感光体10においては、当該有機感光体10の表面が負に帯電された後、露光されると、電荷発生層16において電荷が発生する。電荷発生層16で発生した電荷のうち、負電荷(電子)は中間層14を経て導電性支持体12に移動し、正孔は電荷輸送層18を経て有機感光体10表面に移動して有機感光体10表面の負電荷を打ち消すことにより、有機感光体10表面に静電潜像が形成される。
【0027】
本発明においては、中間層14に含まれる酸化チタン粒子が、特定のシランカップリング剤で表面処理されたものであることにより、当該酸化チタン粒子と電荷発生層16に含有されるブチラール樹脂とのなじみが良好となり、電子輸送性が高くなることから、濃度ムラの発生を抑制すると共に、中間層14と電荷発生層16との界面に欠陥が生じないので黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生を抑制することができると考えられる。また、酸化チタン粒子が、特定のシランカップリング剤による均一な被膜が付着されたものとされることから、電子輸送性を損なわず、カブリ耐性も向上させることができると考えられる。
【0028】
〔導電性支持体〕
本発明の有機感光体を構成する導電性支持体としては、円筒状、またはシート状のものであって、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属をドラム状またはシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウムおよび酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独またはバインダー樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルムおよび紙などが挙げられる。
【0029】
導電性支持体の表面は、露光により発生する干渉縞(モアレ)を抑制するために、封孔されたアルマイト処理(陽極酸化処理)が施されていてもよい。アルマイト処理は、通常、クロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行うことができるが、硫酸浴中で行うことが好ましい。硫酸浴中でのアルマイト処理は、硫酸濃度100〜200g/l、アルミニウムイオン濃度1〜10g/l、液温20℃、印加電圧約20Vの条件で行うことが好ましい。アルマイト処理被膜の平均膜厚は、通常、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0030】
〔中間層〕
本発明の有機感光体を構成する中間層は、バインダー樹脂(以下、「中間層用バインダー樹脂」ともいう。)と酸化チタン粒子とが含有されてなるものである。
この中間層に含有される酸化チタン粒子は、上記一般式(1)で表わされる、メタクリル構造またはアクリル構造を有するシランカップリング剤により表面処理されたもの、すなわち、原料としての酸化チタン粒子(以下、「未処理酸化チタン粒子」ともいう。)の表面が、一般式(1)で表わされるシランカップリング剤により処理されることにより、当該一般式(1)で表わされるシランカップリング剤による被膜が付着されたものである。
【0031】
中間層には、中間層用バインダー樹脂および酸化チタン粒子と共に、分散剤や酸化防止剤、レベリング剤などの他の成分が含有されていてもよい。
【0032】
(酸化チタン粒子)
本発明に係る酸化チタン粒子の原料となる未処理酸化チタン粒子は、アナタース型、ルチル型、アモルファス型などいずれの結晶型のものであってもよいが、中間層における分散性を高めるためには、ルチル型のものであることが好ましい。
また、未処理酸化チタン粒子は、樹枝状、針状、粒状などいずれの形状のものであってもよいが、中間層における分散性を高めるためには、粒状のものであることが好ましい。
【0033】
本発明において、特定のシランカップリング剤により表面処理された酸化チタン粒子が中間層に含有されていることにより、良好な特性を示す理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。
すなわち、メタクリル構造またはアクリル構造を有する特定のシランカップリング剤を用いることにより、酸化チタン粒子と電荷発生層に含有されるブチラール樹脂とのなじみが良好となり、電子輸送性が高くなることから、濃度ムラの発生を抑制し、また、中間層に含有される酸化チタン粒子が均一に分散されることにより、中間層と電荷発生層との界面に欠陥が生じないので黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生を抑制することができると考えられる。また、特定のシランカップリング剤を用いることにより、未処理酸化チタン粒子の表面を均一に薄膜で被覆することができるので、電子輸送性を損なわず、カブリ耐性も向上させることができると考えられる。
【0034】
上記一般式(1)において、R1 は、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはアセチル基を示し、好ましくはメチル基、エチル基である。
【0035】
2 は、炭素数1〜5の2価の脂肪族炭化水素基を示し、好ましくは炭素数2〜4の2価の脂肪族炭化水素基である。
【0036】
3 は、水素原子またはメチル基を示し、好ましくはメチル基である。
【0037】
nは、1〜3の整数を示す。なお、nが2以上の整数である場合においては、2つ以上のR1 は、互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0038】
このような特定のシランカップリング剤としては、具体的には、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシブチルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0039】
未処理酸化チタン粒子に対する特定のシランカップリング剤の付着量は、中間層の電子輸送性を損なわないためには、未処理酸化チタン粒子に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。また、カブリを抑制するためには、特定のシランカップリング剤の付着量は、未処理酸化チタン粒子に対して2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。
【0040】
特定のシランカップリング剤の付着量は、表面処理された酸化チタン粒子の強熱減量試験における、当該酸化チタン粒子の質量の減少量から求めることができる。
強熱減量試験は、例えば電気マッフル炉で700〜800℃で加熱する条件で行うことができる。
【0041】
特定のシランカップリング剤による表面処理方法としては、特に限定されず、湿式処理または乾式処理を採用することができる。
湿式処理による表面処理方法としては、具体的には、未処理酸化チタン粒子と特定のシランカップリング剤とを溶媒に分散させた溶液を、所定の温度で混合・撹拌し、その後、溶媒を除去し、アニール処理することにより、表面処理された酸化チタン粒子を得ることができる。
混合・撹拌時の温度は、30〜150℃程度であることが好ましく、混合・撹拌時間は、0.5〜10時間であることが好ましい。アニール処理温度は、例えば120〜220℃とすることができる。
【0042】
以上のような表面処理方法においては、特定のシランカップリング剤の添加量は、未処理酸化チタン粒子100質量部に対して2〜20質量部、溶媒の添加量は、未処理酸化チタン粒子100質量部に対して5〜15質量部であることが好ましい。
特定のシランカップリング剤の添加量が過少である場合においては、未処理酸化チタン粒子に対して十分な表面処理が行われず、中間層の正孔ブロッキング性が低下することにより、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生を十分に抑制することができないおそれがある。一方、特定のシランカップリング剤の添加量が過多である場合においては、シランカップリング剤同士が反応し、未処理酸化チタン粒子の表面に均一な被膜が付着されないことにより、リークが発生しやすくなるおそれがある。
【0043】
本発明において、酸化チタン粒子は、未処理酸化チタン粒子の表面が、一般式(1)で表わされるシランカップリング剤による被膜により完全に覆われているものであることが好ましい。
また、酸化チタン粒子は、未処理酸化チタン粒子の表面が直接、特定のシランカップリング剤によって表面処理されることにより、当該特定のシランカップリング剤による被膜が直接、未処理酸化チタン粒子表面に付着されたものであれば、さらに他の表面処理剤によって表面処理されることにより、他の表面処理剤による被膜が付着されたものであってもよい。すなわち、酸化チタン粒子は、複数の表面処理剤によって表面処理されることにより、当該複数の表面処理剤による被膜が積層された構成とされていてもよく、この複数の被膜のうち最下層(未処理酸化チタン粒子の表面に接触する膜)が、特定のシランカップリング剤によるものであればよい。
【0044】
他の表面処理剤の好ましい例としては、例えば、無機系化合物、特定のシランカップリング剤以外の反応性有機ケイ素化合物などが挙げられる。
無機系化合物としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニアやそれらの水和物などが挙げられる。
反応性有機ケイ素化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、n‐ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン;およびメチルハイドロジェンポリシロキサンなどが挙げられる。
反応性有機ケイ素化合物で表面処理することにより、酸化チタン粒子の分散性を効果的に高めることができる。
【0045】
他の表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法により行うことができる。
例えば、反応性有機ケイ素化合物による表面処理は、反応性有機ケイ素化合物を水または有機溶媒に分散させた溶液に、酸化チタン粒子を添加して混合・撹拌し、得られた溶液をろ過および乾燥することにより行うことができる。
【0046】
酸化チタン粒子は、数平均一次粒子径が10〜20nmのものであることが好ましい。
酸化チタン粒子の数平均一次粒子径が10nm未満である場合においては、電子輸送性が高くなり過ぎたり、分散性が損なわれることにより、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生を十分に抑制できないおそれがある。一方、酸化チタン粒子の数平均一次粒子径が20nmを超える場合においては、電子輸送性が損なわれることにより、濃度ムラの発生を十分に抑制することができないおそれがある。
【0047】
本発明において、酸化チタン粒子の数平均一次粒子径は、以下のように測定されるものである。
すなわち、酸化チタン粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)画像を倍率100000倍で観察し、100個の粒子を一次粒子としてランダムに選択する。これらの一次粒子のフェレ方向平均径を画像解析により測定し、それらの平均値を「数平均一次粒子径」として求めるものとする。
【0048】
(中間層用バインダー樹脂)
中間層用バインダー樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。中でも、電荷発生層を形成するための塗布液を中間層上に塗布する際に、当該中間層が溶解することを抑制する観点などから、ポリアミド樹脂が好ましく、メトキシメチロール化ポリアミド樹脂などのアルコール可溶性ポリアミド樹脂がより好ましい。
【0049】
特定のシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子の体積(T)と、中間層用バインダー樹脂の体積(B)との体積比(T/B)は、0.6〜1.3であることが好ましく、0.6〜1.1であることがより好ましい。
体積比(T/B)が0.6未満である場合においては、中間層の電子輸送性が低下することにより、濃度ムラの発生を十分に抑制することができないおそれがある。一方、体積比(T/B)が1.3を超える場合においては、中間層の正孔ブロッキング性が低下することにより、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生を十分に抑制することができないおそれがある。
【0050】
体積比(T/B)は、TGA(熱量計測定装置)により、以下の方法で測定することができる。
(1)酸化チタン粒子の比重を、真比重計(マイクロピクノメータ,エステック社製)を用いて測定する。また、中間層用バインダー樹脂の比重は、成型片とした状態の重量を測定した後、当該成型片を、体積既知の水中に入れて排除体積を測定することで求められる。
(2)一方、測定試料として、酸化チタン粒子と中間層用バインダー樹脂との混合物を準備する。次いで、アルミサンプルパンに測定試料5mgを秤量し、示差熱重量同時測定装置「TG/DTA6200」(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を使用して、窒素ガス雰囲気下(導入量150〜200ml/min)、昇温温度20℃/minにて加熱重量減少曲線で減少量を測定する。1段目の加熱重量減少量から中間層用バインダー樹脂の重量が求められ、その時点での残留重量から、酸化チタン粒子重量が求められる。
(3)そして、酸化チタン粒子および中間層用バインダー樹脂の、(1)で得られた比重と、(2)で得られた重量とから、酸化チタン粒子と中間層用バインダー樹脂の体積をそれぞれ算出する。それにより、体積比(T/B)を算出する。
【0051】
中間層の膜厚は、0.5〜15μmであることが好ましく、1〜7μmであることがより好ましい。
中間層の膜厚が過小である場合においては、導電性支持体表面全体を被覆することができず、導電性支持体からの正孔の注入を十分にブロックすることができないことにより、黒ポチやカブリなど画像欠陥の発生を十分に抑制することができないおそれがある。一方、中間層の膜厚が過大である場合においては、電気的抵抗が増大するため、十分な電子輸送性が得られないことにより、濃度ムラの発生を十分に抑制することができないおそれがある。
【0052】
〔有機感光層〕
(電荷発生層)
本発明の有機感光体を構成する有機感光層における電荷発生層は、電荷発生物質およびバインダー樹脂としてのブチラール樹脂よりなるものである。
【0053】
(電荷発生物質)
電荷発生物質としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などが挙げられる。
電荷発生物質は、露光光源の発振波長に対する感度に応じて選択されればよいが、デジタル複写機における露光光源の発振波長に対する感度を高めるためには、フタロシアニン顔料が好ましい。
【0054】
フタロシアニン顔料としては、露光光源の発振波長、例えば波長780nmに対する感度を高めるためには、Y型チタニルフタロシアニン、ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンを用いることが好ましい。
【0055】
Y型チタニルフタロシアニンは、Cu−Kα特性X線によるX線回折のスペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°において最大回折ピークを有するものである。
【0056】
ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンとしては、例えば、2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンが挙げられる。この2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンの構造を模式的に示すと、下記式(1)の通りである。
【0057】
【化2】

【0058】
2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンは、ブタンジオールの付加比率によって異なる結晶型をとりうる。良好な感度を得るためには、チタニルフタロシアニン1モルに対してブタンジオール化合物を1モル以下となるように反応させて得られる結晶型のものが好ましい。そのような結晶型を有する2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンは、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)8.3°において、特徴的なピークを有する。この2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンは、8.3°以外にも、24.7°、25.1°、26.5°にピークがみられる。
【0059】
ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンは、単独で含まれてもよいが、非付加のチタニルフタロシアニンと共に含まれてもよい。
【0060】
電荷発生物質としては、2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンと、非付加のチタニルフタロシアニンとの混合物を用いることもできる。この混合物を含む有機感光層(電荷発生層)を備えた有機感光体の相対反射スペクトルから換算して得られる、当該有機感光層の波長780nmにおける吸光度Abs(780)と波長700nmにおける吸光度Abs(700)との吸光度比(Abs(780)/Abs(700))が0.8〜1.1であることが好ましい。
【0061】
吸光度比(Abs(780)/Abs(700))は、以下のようにして求めることができる。
(1)まず、アルミニウム支持体上に、2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンと、非付加のチタニルフタロシアニンとの混合物を含む有機感光層を形成した感光体試料を準備する。そして、この感光体試料の相対反射光の吸収スペクトルを測定する。反射光の吸収スペクトルは、光学式膜厚測定装置「Solid Lambda Thickness」(スペクトラコープ社製)を用いて測定することができる。
即ち、まず各波長におけるアルミニウム支持体の反射強度をベースラインとして測定する。次いで、各波長における感光体試料の反射強度を測定する。そして、各波長における感光体試料の反射強度を、各波長におけるアルミニウム支持体の反射強度で割って得られる値を「相対反射率(Rλ)」とする。それにより、相対反射スペクトルを得る。
(2)次いで、得られた感光体試料の相対反射スペクトルを、下記式(A)により吸光度スペクトルに換算する。
式(A):Absλ=−log(Rλ
〔式(A)中、Rλは、波長λにおける感光体試料の反射強度を、波長λにおけるアルミニウム支持体の反射強度で割って得られる相対反射率を示す。〕
(3)次いで、干渉縞による凹凸を除去するために、上記(2)で換算した吸光度スペクトルデータを、波長領域765〜795nmおよび波長領域685〜715nmのそれぞれにおいて、二次の多項式に近似する。
(4)そして、近似した二次の多項式における、波長780nmにおける吸光度Abs(780)と、波長700nmにおける吸光度Abs(700)とを求める。それにより、吸光度比(Abs(780)/Abs(700))を算出する。
【0062】
ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンは、これを含む有機感光層(電荷発生層)を備えた有機感光体の相対反射スペクトルから換算して得られる、当該有機感光層の波長780nmにおける吸光度Abs(780)と波長700nmにおける吸光度Abs(700)との吸光度比(Abs(780)/Abs(700))が0.8〜1.1であることが好ましい。ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンを含む有機感光層の吸光度比(Abs(780)/Abs(700))が上記範囲内である場合においては、適切な分散シェアによって顔料結晶が安定化しやすく、光感度や、繰り返し露光による画像特性が安定する。
ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンを含む有機感光層の吸光度比は、前述と同様にして測定することができる。
【0063】
(ブチラール樹脂)
ブチラール樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂などが挙げられ、2種類以上の異なるブチラール樹脂を混合しても良い。また、ブチラール樹脂の他にポリビニルアセタール樹脂などを含有してもよいが、他の樹脂の含有量はブチラール樹脂に対して、40体積%以下であることが好ましい。
また、ブチラール樹脂のブチラール化度としては、50mol%以上であることが好ましい。
ブチラール樹脂の分子量としては、特に制限はないが、10000〜150000であることが好ましく、さらに好ましくは15000〜100000である。
【0064】
電荷発生物質の含有量は、ブチラール樹脂100質量部に対して20〜600質量部であることが好ましく、より好ましくは50〜500質量部である。
電荷発生物質の含有量が過少である場合においては、露光により十分な電荷を発生させることができず、有機感光層(電荷発生層)の感度が低下するおそれがある。一方、電荷発生物質の含有量が過多である場合においては、有機感光層(電荷発生層)の感度が過剰に高くなることにより、繰り返し使用に伴う残留電位の増加が生じやすい。
【0065】
電荷発生層の層厚は、電荷発生物質の特性などにより異なるが、0.01〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。
【0066】
(電荷輸送層)
本発明の有機感光体を構成する有機感光層における電荷輸送層は、電荷輸送物質およびバインダー樹脂(以下、「電荷輸送層用バインダー樹脂」ともいう。)よりなるものである。
【0067】
(電荷輸送物質)
電荷輸送物質としては、電荷(正孔)を輸送する物質として、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などが挙げられる。
【0068】
(電荷輸送層用バインダー樹脂)
電荷輸送層用バインダー樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。具体的には、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。なかでも、吸水率が低く、電荷輸送物質を良好に分散させることができることから、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0069】
電荷輸送層は、必要に応じて例えば酸化防止剤などの他の成分が含有されていてもよい。
【0070】
電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層用バインダー樹脂100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましい。
電荷輸送物質の含有量が過少である場合においては、電荷輸送性が十分ではないため、電荷発生層で発生した電荷を有機感光体表面まで十分に輸送できないことおそれがある。一方、電荷輸送物質の含有量が過多である場合においては、繰り返し使用に伴う残留電位の増加が顕著となりやすい。
【0071】
電荷輸送層の膜厚は、特に制限されないが、10〜40μm程度とすることができる。
【0072】
〔保護層〕
本発明の有機感光体において、保護層が形成される場合においては、当該保護層は、無機粒子およびバインダー樹脂(以下、「保護層用バインダー樹脂」という。)よりなるものであり、必要に応じて酸化防止剤や滑剤などの他の成分が含有されていてもよい。
【0073】
保護層に含まれる無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、酸化ジルコニウム等の粒子を好ましく用いることができる。特に表面を疎水化した疎水性シリカや疎水性アルミナ、疎水性ジルコニア、微粉末焼結シリカなどが好ましい。
【0074】
無機粒子は、数平均一次粒子径が1〜300nmのものが好ましく、5〜100nmのものが特に好ましい。
無機粒子の数平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡によって10000倍に拡大し、ランダムに300個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定値を算出して得られた値とされる。
【0075】
保護層用バインダー樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。例えば、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0076】
保護層に含有される滑剤としては、例えば、樹脂微粉末(例えば、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等)、金属酸化物微粉末(例えば、酸化チタン、酸化アルミ、酸化スズ等)、固体潤滑剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等)、シリコーンオイル(例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル等)、フッ素系樹脂粉体(例えば、四フッ化エチレン樹脂粉体、三フッ化塩化エチレン樹脂粉体、六フッ化エチレンプロピレン樹脂粉体、フッ化ビニル樹脂粉体、フッ化ビニリデン樹脂粉体、フッ化二塩化エチレン樹脂粉体及びそれらの共重合体等)、ポリオレフィン系樹脂粉体(例えば、ポリエチレン樹脂粉体、ポリプロピレン樹脂粉体、ポリブテン樹脂粉体、ポリヘキセン樹脂粉体などのホモポリマー樹脂粉体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などのコポリマー樹脂粉体、これらとヘキセンなどの三元共重合体、更にこれらの熱変成物のようなポリオレフィン系樹脂粉体等)などが挙げられる。
【0077】
上記滑剤として用いられる樹脂の分子量や粉体の粒径は、適宜選択される。樹脂の粒径は、特に0.1μm〜10μmであることが好ましい。これらの滑剤を均一に分散するため、分散剤を保護層用バインダー樹脂にさらに添加してもよい。
【0078】
〔有機感光体の製造方法〕
本発明の有機感光体は、例えば下記工程(1)〜(2)により製造することができる。
(1)中間層を形成する工程
中間層の形成工程においては、中間層用バインダー樹脂を溶媒に溶解した溶液中に酸化チタン粒子を添加して中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を導電性支持体に例えば浸漬塗布法により塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより中間層が形成される。
【0079】
中間層を形成するために用いられる溶媒としては、例えば、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノールなどの炭素数2〜4のアルコール類が、ポリアミド樹脂の溶解性と塗布性の観点から、特に好ましい。また、保存性、酸化チタン粒子の分散性を向上するために、前記溶媒と併用することのできる助溶媒としては、例えば、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0080】
(2−1)有機感光層を構成する電荷発生層を形成する工程
電荷発生層の形成工程においては、ブチラール樹脂を溶媒で溶解した溶液中に分散機を用いて電荷発生物質を分散して電荷発生層形成用塗布液を調製し、この電荷発生層形成用塗布液を中間層上に例えば浸漬塗布法により塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより電荷発生層が形成される。
【0081】
電荷発生層を形成するために用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
電荷発生物質の分散手段としては、特に限定されないが、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダーおよびホモミキサーなどの分散機が挙げられる。
【0083】
(2−2)有機感光層を構成する電荷輸送層を形成する工程
電荷輸送層の形成工程においては、電荷輸送層用バインダー樹脂と電荷輸送物質を溶媒で溶解して電荷輸送層形成用塗布液を調製し、この電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層上に例えば浸漬塗布法により塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより電荷輸送層が形成される。
【0084】
電荷輸送層を形成するために用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
本発明の有機感光体を製造するための各種塗布液の塗布方法は、浸漬塗布法の他にも、スライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方法、スプレー塗布等の塗布方法を採用することができる。スライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方法については、例えば特開昭58−189061号公報などに詳細に記載されている。
【0086】
以上のように、本発明の有機感光体によれば、中間層に含有される酸化チタン粒子が、特定のシランカップリング剤により表面処理されたものであり、有機感光層ブチラール樹脂が含有されることにより、形成される画像における濃度ムラの発生が抑制されると共に、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生が抑制される。
【0087】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、少なくとも本発明の有機感光体を有するものである。
図2は、本発明の画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
この画像形成装置100は、タンデム型のカラー画像形成装置であって、4組の画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット130と、給紙搬送手段150と、定着手段170とを有する。画像形成装置100の本体の上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0088】
画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、鉛直方向に並べて配置されている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、第1の像担持体である有機感光体111Y、111M、111C、111Bkと、その周囲にドラムの回転方向に順次配置された、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkと、露光手段115Y、115M、115C、115Bkと、現像手段117Y、117M、117C、117Bkと、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkとを有する。そして、有機感光体111Y、111M、111C、111Bk上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)のトナー画像をそれぞれ形成できるようになっている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、有機感光体111Y、111M、111C、111Bkに形成するトナー画像の色が異なる以外は同様に構成されるため、以下、画像形成ユニット110Yの例で説明する。
【0089】
有機感光体111Yは、本発明に係る有機感光体であって、当該有機感光体を構成する中間層には、特定のシランカップリング剤により表面処理された酸化チタン粒子が含有されており、有機感光層には、ブチラール樹脂が含有されているものである。
【0090】
帯電手段113Yは、有機感光体111Yに対して一様な電位を与える手段である。
本実施の形態においては、帯電手段113Yとしてコロナ放電型の帯電器が好ましく用いられる。
【0091】
露光手段115Yは、帯電手段113Yによって一様な電位を与えられた有機感光体111Y上に、画像信号(イエローの画像信号)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する機能を有する。露光手段115Yは、有機感光体111Yの軸方向にアレイ状に発光素子が配列されたLEDと結像素子とから構成されるもの、あるいはレーザー光学系などでありうる。
【0092】
露光光源は、発振波長が使用する電荷発生物質の最大吸光度の5割以上の範囲の半導体レーザーまたは発光ダイオードであることが好ましい。例えば、電荷発生物質として、2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンと非付加のチタニルフタロシアニンとの混合物を用いる場合には、650〜800nmであることが好ましい。これらの露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜100μmに絞り込み、感光体上にデジタル露光を行うことで、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)〜2400dpiあるいはそれ以上の高解像度の電子写真画像を形成しうる。
【0093】
露光ドット径とは、露光ビームの強度がピーク強度の1/e2 以上の領域の、主走査方向の露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を示す。
【0094】
現像手段117Yは、有機感光体111Yにトナーを供給し、有機感光体111Yの表面に形成された静電潜像を現像可能に構成されている。
クリーニング手段119Yは、有機感光体111Yの表面に圧接するローラや、ブレードを有しうる。
【0095】
無端ベルト状中間転写体ユニット130は、有機感光体111Y、111M、111C、111Bkと当接可能に設けられている。無端ベルト状中間転写体ユニット130は、第2の像担持体である無端ベルト状中間転写体131と、当該無端ベルト状中間転写体131と当接して配置された一次転写ローラ133Y、133M、133C、133Bkと、当該無端ベルト状中間転写体131のクリーニング手段135とを有する。
【0096】
無端ベルト状中間転写体131は、複数のローラ137A、137B、137C、137Dにより巻回され、回動可能に支持されている。
【0097】
この画像形成装置100において、前述の有機感光体111Y、現像手段117Y、およびクリーニング手段119Y等は、一体的に結合され、装置本体に着脱自在に構成されたプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)であってもよい。あるいは、帯電手段113Y、露光手段115Y、現像手段117Y、一次転写ローラ133Yおよびクリーニング手段119Yからなる群から選ばれる一以上の部材と、有機感光体111Yとを一体的に構成したプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)としてもよい。
【0098】
プロセスカートリッジ200は、筐体201と、それに収容された有機感光体111Y、帯電手段113Y、現像手段117Yおよびクリーニング手段119Yと、無端ベルト状中間転写体ユニット130とを有する。また、装置本体には、プロセスカートリッジ200を装置本体内にガイドする手段として支持レール203L、203Rが設けられている。それにより、プロセスカートリッジ200を装置本体に着脱可能となっている。これらのプロセスカートリッジ200は、装置本体に着脱自在に構成された単一の画像形成ユニットとなりうる。
【0099】
給紙搬送手段150は、給紙カセット211内の転写材Pを、複数の中間ローラ213A、213B、213C、213Dおよびレジストローラ215を経て、二次転写ローラ217に搬送可能に設けられている。
【0100】
定着手段170は、二次転写ローラ217により転写されたカラー画像を定着処理する。排紙ローラ219は、定着処理された転写材Pを挟持して、画像形成装置外部に設けられた排紙トレイ221上に載置可能に設けられている。
【0101】
このように構成された画像形成装置100では、画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkにより画像を形成する。具体的には、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkにより有機感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面にコロナ放電して負に帯電させる。次いで、露光手段115Y、115M、115C、115Bkで、有機感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面を画像信号に基づいて露光し、静電潜像を形成する。次いで、現像手段117Y、117M、117C、117Bkで、有機感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面にトナーを付与し、現像する。
【0102】
次いで、一次転写ローラ(一次転写手段)133Y、133M、133C、133Bkを、回動する無端ベルト状中間転写体131と当接させる。それにより、有機感光体111Y、111M、111C、111Bk上にそれぞれ形成した各色の画像を、回動する無端ベルト状中間転写体131上に逐次転写させて、カラー画像を転写する(一次転写する)。画像形成処理中、一次転写ローラ133Bkは、常時、有機感光体111Bkに当接する。一方、他の一次転写ローラ133Y、133M、133Cは、カラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する有機感光体111Y、111M、111Cに当接する。
【0103】
そして、一次転写ローラ133Y、133M、133C、133Bkと無端ベルト状中間転写体131とを分離させた後、有機感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面に残留するトナーを、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkで除去する。そして、次回の画像形成に備えて、必要に応じて有機感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面を除電手段(不図示)によって除電した後、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkにより負に帯電させる。
【0104】
一方、給紙カセット211内に収容された転写材P(例えば普通紙、透明シート等の最終画像を担持する支持体)を、給紙搬送手段150で給紙し、複数の中間ローラ213A、213B、213C、213D、レジストローラ215を経て二次転写ローラ(二次転写手段)217に搬送する。そして、二次転写ローラ217を回動する無端ベルト状中間転写体131と当接させて、転写材P上にカラー画像を一括して転写する(二次転写する)。二次転写ローラ217は、転写材P上に二次転写を行うときのみ、無端ベルト状中間転写体131と当接する。その後、カラー画像が一括転写された転写材Pを、無端ベルト状中間転写体131の曲率が高い部位で分離する。
【0105】
このようにしてカラー画像が一括して転写された転写材Pを、定着手段170で定着処理した後、排紙ローラ219で挟持して装置外の排紙トレイ221上に載置する。また、カラー画像が一括転写された転写材Pを無端ベルト状中間転写体131から分離した後、クリーニング手段135で無端ベルト状中間転写体131上の残留トナーを除去する。
【0106】
前述したように、本実施の形態の画像形成装置100に含まれる有機感光体111Y、111M、111C、111Bkの中間層は、十分な電子輸送性を有する。そのため、
有機感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面の残存電位の増加を抑制でき、画像の濃度ムラを少なくすることができる。さらに、画像形成装置100に含まれる有機感光体111Y、111M、111C、111Bkの中間層は、高い正孔ブロッキング性を有する。そのため、特に高感度の電荷発生層を有する有機感光体111Y、111M、111C、111Bkにおいても、導電性支持体からの不要な正孔の注入や電荷発生層からの不要な熱励起キャリアの移動を少なくすることができ、黒ポチやカブリなどの画像欠陥を抑制することができる。
【0107】
本発明の画像形成装置100によれば、本発明の有機感光体111Y、111M、111C、111Bkを有することにより、形成される画像における濃度ムラの発生が抑制されると共に、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生が抑制される。
【実施例】
【0108】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0109】
〔有機感光体の製造例1〕
以下の手順により、導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次形成してなる積層構造を有する有機感光体〔1〕を作製した。
【0110】
(1)導電性支持体の作製
長さ362±0.2mmのアルミニウム合金製素管をNC施盤に装着し、ダイヤモンド焼結バイトにて、外径59.95±0.04mm、表面のRzjis が1.2±0.2μmになるように切削加工を行い、導電性支持体〔1〕を作製した。
【0111】
(2)酸化チタン粒子の作製
数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン粒子100質量部をトルエン500質量部と撹拌混合し、一般式(1)で表わされるシランカップリング剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−503」(信越化学工業(株)製)9.5質量部を添加し、50℃で2時間撹拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、130℃で3時間焼き付けを行い、一般式(1)で表わされるシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子〔1〕を得た。この酸化チタン粒子〔1〕の真比重は3.8であった。また、この酸化チタン粒子〔1〕の数平均一次粒子径は、TEM画像から16nmであることを確認した。
【0112】
(3)中間層の形成
バインダー樹脂としての下記式(N−1)で表わされるポリアミド樹脂1質量部を、エタノール/n−プロピルアルコール/テトラヒドロフラン(体積比;45/20/35)の混合溶媒20質量部に加えて、20℃で撹拌混合した。この溶液に、酸化チタン粒子〔1〕を3.4質量部添加し、ビーズミルにより、ミル滞留時間4時間として分散させた。そして、この溶液を一昼夜静置した後、ろ過することにより、中間層形成用塗布液〔1〕を調製した。ろ過は、ろ過フィルタとして、公称濾過精度が5μmの「リジメッシュフィルタ」(日本ポール社製)を用いて、50kPaの圧力下で行った。このようにして得られた中間層形成用塗布液〔1〕を、導電性支持体〔1〕を洗浄した後の外周に浸漬塗布法で塗布して塗膜を形成し、この塗膜を120℃で30分間乾燥して層厚2μmの中間層〔1〕を形成した。得られた中間層〔1〕において、酸化チタン粒子〔1〕とバインダー樹脂との体積比(T/B)は0.8であった。
【0113】
【化3】

【0114】
(4)電荷発生層の形成
(4−1)電荷発生物質の合成
1,3−ジイミノイソインドリンとチタニウムテトラ−n−ブトキシドとから粗チタニルフタロシアニンを合成した。得られた粗チタニルフタロシアニンを硫酸に溶解させた溶液を、水に注入して結晶を析出させた。この溶液を濾過した後、得られた結晶を水で十分に洗浄して、ウエットペースト品を得た。次いで、ウエットペースト品を冷凍庫にて凍結させ、再度解凍した後、濾過および乾燥して、無定型チタニルフタロシアニンを得た。
得られた無定型チタニルフタロシアニンと、(2R,3R)−2,3−ブタンジオールとを、無定型チタニルフタロシアニンに対する(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの当量比が0.6となるように、オルトジクロロベンゼン(ODB)中にて混合した。得られた混合物を、60〜70℃で6時間加熱撹拌した。得られた溶液を一夜静置した後、メタノールをさらに添加して結晶を析出させた。この溶液を濾過した後、得られた結晶をメタノールで洗浄して、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンを含む電荷発生物質〔CGM−1〕を得た。
電荷発生物質〔CGM−1〕のX線回折スペクトルを測定した結果、8.3°、24.7°、25.1°、26.5°にピークが確認された。この電荷発生物質〔CGM−1〕は、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールとの1:1付加体と、チタニルフタロシアニン(非付加体)との混合物であると推定した。
【0115】
(4−2)電荷発生層の形成
下記成分を混合し、循環式超音波ホモジナイザー「RUS−600TCVP」(株式会社日本精機製作所製、19.5kHz,600W)にて循環流量40L/Hで0.5時間分散して電荷発生層形成用塗布液〔1〕を調製した。そして、この電荷発生層形成用塗布液〔1〕を浸漬塗布法で中間層〔1〕の上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥して層厚0.5μmの電荷発生層〔1〕を形成した。
電荷発生物質:電荷発生物質〔CGM−1〕 24質量部
バインダー樹脂:ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製)
12質量部
溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(体積比;4/1) 400質量部
【0116】
(5)電荷輸送層の形成
下記成分を混合して電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を調製した。この電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を浸漬塗布法により電荷発生層〔1〕上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥して層厚25μmの電荷輸送層〔1〕を形成した。
電荷輸送物質:下記式(CTM−1)で表わされる化合物 225質量部
バインダー樹脂:ポリカーボネート「Z300(三菱ガス化学社製)」 300質量部
酸化防止剤:「Irganox1010」(日本チバガイギー社製) 6質量部
溶媒:テトラヒドロフラン/トルエン混合液(体積比;3/1) 2000質量部
レベリング剤:シリコーンオイル「KF−54」(信越化学工業(株)製) 1質量部
【0117】
【化4】

【0118】
作製された有機感光体〔1〕の相対反射スペクトルを光学式膜厚測定装置「Solid Lambda Thickness」(スペクトラコープ社製)を用いて以下の手順で測定した。
(1)まず、各波長におけるアルミニウム支持体の反射強度をベースラインとして測定した。次いで、各波長における有機感光体試料の反射強度を測定した。そして、各波長における有機感光体試料の反射強度を、アルミニウム支持体の反射強度で割って得られる値を「相対反射率(Rλ)」として、相対反射スペクトルを得た。
(2)得られた有機感光体試料の相対反射スペクトルを、下記式(A)により吸光度スペクトルに換算した。
式(A):Absλ=−log(Rλ
〔式(A)中、Rλは、波長λにおける感光体試料の反射強度を、波長λにおけるアルミニウム支持体の反射強度で割って得られる相対反射率を示す。〕
(3)次いで、干渉縞による凹凸を除去するために、上記(2)で換算した吸光度スペクトルデータを、波長領域765〜795nmおよび波長領域685〜715nmのそれぞれにおいて、二次の多項式に近似した。
(4)近似した二次の多項式における、波長780nmにおける吸光度Abs(780)と、波長700nmにおける吸光度Abs(700)とを求め、吸光度比(Abs(780)/Abs(700))を算出した。得られた吸光度比(Abs(780)/Abs(700))は0.99であった。
【0119】
〔有機感光体の製造例2〕
有機感光体の製造例1における(2)酸化チタン粒子の作製において、「数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン粒子」を「数平均一次粒子径35nmのルチル型酸化チタン粒子」に変更し、また、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの添加量を8質量部に変更したことの他は同様にして酸化チタン粒子〔2〕を得、有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、「酸化チタン粒子〔1〕3.4質量部」を「酸化チタン粒子〔2〕3質量部」に変更したことの他は同様にして有機感光体〔2〕を作製した。
【0120】
〔有機感光体の製造例3〕
有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、酸化チタン粒子〔1〕を下記に示す酸化チタン粒子〔3〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔3〕を作製した。
【0121】
(酸化チタン粒子〔3〕の作製)
有機感光体の製造例1における(2)酸化チタン粒子の作製において得られた酸化チタン粒子〔1〕500質量部と、メチルハイドロジェンポリシロキサン(MHPS)30質量部と、トルエン1500質量部とを撹拌混合した後、ビーズミルによりミル滞留時間25分間、温度35±5℃の条件で湿式解砕処理を行った。湿式解砕処理して得られたスラリーから、ニーダを用いた減圧蒸留(バス温度:110℃、製品温度:30〜60℃、減圧度:約100Torr)によりトルエンを分離除去した。得られた乾燥物に、120℃で2時間、メチルハイドロジェンポリシロキサンの焼き付け処理を行った。焼き付け処理後に得られた粉体を、室温まで冷却した後、ピンミルにより粉砕し、一般式(1)で表わされるシランカップリング剤とMHPSとにより表面処理された酸化チタン粒子〔3〕を得た。
【0122】
〔有機感光体の製造例4〜6〕
有機感光体の製造例1における(2)酸化チタン粒子の作製において、「3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン9.5質量部」を表1に示すものおよび添加量に変更したことの他は同様にして酸化チタン粒子〔4〕〜〔6〕を得、有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、酸化チタン粒子〔1〕をそれぞれ酸化チタン粒子〔4〕〜〔6〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔4〕〜〔6〕を作製した。
【0123】
【表1】

【0124】
〔有機感光体の製造例7〕
有機感光体の製造例1における(4)電荷発生層の形成において、電荷発生層形成用塗布液〔1〕を下記に示す電荷発生層形成用塗布液〔2〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔7〕を作製した。
【0125】
(電荷発生層形成用塗布液〔2〕の調製)
下記成分を混合し、循環式超音波ホモジナイザー「RUS−600TCVP」(株式会社日本精機製作所製、19.5kHz,600W)にて循環流量40L/Hで0.5時間分散して電荷発生層形成用塗布液〔2〕を調製した。
電荷発生物質:Y型チタニルフタロシアニン(Cu−Kα特性X線によるX線回折のスペクトルでブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン) 20質量部
バインダー樹脂:ポリビニルブチラール樹脂「BM−1」(積水化学社製)10質量部
溶媒:メチルエチルケトン 700質量部
溶媒:シクロヘキサノン 300質量部
【0126】
〔有機感光体の製造例8(比較用)〕
有機感光体の製造例1における(4)電荷発生層の形成において、電荷発生層形成用塗布液〔1〕を下記に示す電荷発生層形成用塗布液〔3〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔8〕を作製した。
【0127】
(電荷発生層形成用塗布液〔3〕の調製)
下記成分を混合し、循環式超音波ホモジナイザー「RUS−600TCVP」(株式会社日本精機製作所製、19.5kHz,600W)にて循環流量40L/Hで0.5時間分散して電荷発生層形成用塗布液〔3〕を調製した。
電荷発生物質:電荷発生物質〔CGM−1〕 24質量部
バインダー樹脂:フェノキシ樹脂「PKHH」(InChem社製) 12質量部
溶媒:メチルエチルケトン 500質量部
溶媒:シクロヘキサノン 100質量部
【0128】
〔有機感光体の製造例9(比較用)〕
有機感光体の製造例1における(2)酸化チタン粒子の作製において、「3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン」を「N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン「KBM603」(信越化学工業(株)製)」に変更したことの他は同様にして酸化チタン粒子〔9〕を得、有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、酸化チタン粒子〔1〕を酸化チタン粒子〔9〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔9〕を作製した。
【0129】
〔有機感光体の製造例10(比較用)〕
有機感光体の製造例1における(2)酸化チタン粒子の作製において、「数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン粒子」を「数平均一次粒子径15nmルチル型酸化チタン粒子(シリカ及びアルミナコート品)「MT−100SA」(テイカ社製)」に変更したことの他は同様にして酸化チタン粒子〔10〕を得、有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、酸化チタン粒子〔1〕を酸化チタン粒子〔10〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔10〕を作製した。
【0130】
〔実施例1〜7および比較例1〜3〕
得られた有機感光体〔1〕〜〔10〕の耐刷前後(1枚目と10万枚目プリント後)の表面電位および画質(濃度ムラ、カブリ)を以下のようにして評価した。評価結果を表2に示す。
【0131】
〔表面電位の評価〕
得られた有機感光体〔1〕〜〔10〕のそれぞれの表面の、温度10℃、湿度15%RH下における初期(0秒後)の電位と30秒後の電位との差(電位変動ΔVi)を、電気特性測定装置により測定した。表面電位変動の測定は、有機感光体を130rpmで回転させながら、グリッド電圧−800V、露光量0.5μJ/cm2 の条件で、帯電と露光を繰り返して行った。ΔViの評価は、以下の基準に基づいて行った。
A:耐刷前後とも20V以下
B:耐刷前は20V以下、耐刷後は20V超30V以下
C:耐刷前は20V超30V以下、または、耐刷前は30V以下かつ耐刷後は30V超
D:耐刷前から30V超
【0132】
〔画質の評価〕
画像形成装置「bizhub PRO C6501」(コニカミノルタビジネステクノジーズ社製)を用い、温度30℃、湿度80%RH下で下記画質の評価を行った。
【0133】
(1)濃度ムラ
有機感光体〔1〕〜〔10〕をそれぞれブラック(BK)の画像形成ユニットに搭載した。そして、転写電流20μA〜100μAまで変化させて、図3で示されるチャートを出力した。転写材「PODグロスコート(A3サイズ、100g/m2 )」(王子製紙(株)製)を用いて、当該転写材上に形成した画像を目視観察した。画像の濃度ムラは、以下の基準で評価した。
A:転写電流60μA以上でも、濃度ムラが全くみられない
B:転写電流60μA以上でわずかに濃度ムラがみられるが、実用上問題ないレベル
C:転写電流40〜50μAでわずかに濃度ムラがみられるが、実用上問題ないレベル(ただし、高画質の画像を形成する際には問題となるレベル)
D:転写電流40μA未満でも濃度ムラが明確にみられ、実用上問題となるレベル
【0134】
(2)カブリ(官能評価)
有機感光体〔1〕〜〔10〕をそれぞれブラック(BK)の画像形成ユニットに搭載した。画像が形成されていない転写材「PODグロスコート(A3サイズ、100g/m2 )」(王子製紙(株)製)を準備し、この転写材をブラックの位置まで搬送し、グリッド電圧−800V、現像バイアス−650Vの条件で、無地画像(白ベタ画像)を形成した。そして、得られた転写材上のカブリの有無を評価した。
同様にして、画像が形成されていない転写材の代わりに、黄色ベタ画像が形成された転写材「PODグロスコート(A3サイズ、100g/m2 )」(王子製紙(株)製)を準備した。そして、当該転写材を、ブラック(BK)の位置まで搬送し、前述と同様にして無地画像(黄色ベタ画像)を形成した。そして、得られた記録紙上のカブリの有無を評価した。カブリの有無の評価は、以下の基準に基づいて行った。
A:カブリなし
B:拡大すると僅かにカブリがみられるが、実用上問題ないレベル
C:目視で僅かにカブリがみられ、実用上問題となるレベル
D:カブリが目立つ
【0135】
(3)カブリ(濃度評価)
上記(2)の評価において、無地画像を形成した後の転写材の、画像を形成しない部位におけるカブリ濃度を、マクベス濃度計「RD−918」(マクベス社製)により測定した。具体的には、以下の手順で測定した。
(a)画像が形成されていない転写材(白紙)の、任意の20カ所の絶対画像濃度を測定し、それらの平均値を「画像形成前の白紙濃度」とした。
(b)有機感光体〔1〕〜〔10〕をそれぞれブラック(BK)の画像形成ユニットに搭載し、上記(2)の転写材上に無地画像を形成した。得られた転写材の任意の20カ所の絶対画像濃度を測定し、それらの平均値を「無地画像形成後の白紙濃度」とした。
(c)上記(a)と(b)で求めた白紙濃度を下記式(B)に基づいてカブリ濃度として求めた。
式(B):カブリ濃度=(無地画像形成後の白紙濃度)−(画像形成前の白紙濃度)
カブリ濃度の評価は、以下の基準に基づいて行った。
A:カブリ濃度が0.003以下で良好
B:カブリ濃度が0.003超0.006以下で良好
C:カブリ濃度が0.006超0.01以下であり、高画質要求時には実使用上問題となるレベル
D:カブリ濃度が0.01超であり、実用上問題となるレベル
【0136】
【表2】

【0137】
表2に示されるように、未処理酸化チタン粒子に直接、一般式(1)で表わされるシランカップリング剤で表面処理した酸化チタン粒子を用い、かつ、電荷発生層にブチラール樹脂を含む、実施例1〜7に係る有機感光体〔1〕〜〔7〕は、表面電位のΔViが耐刷前は20V以下、耐刷後も30V以下と低く、かつ濃度ムラとカブリの発生を共に抑制することができたことが確認された。一方、電荷発生層にブチラール樹脂を含まない比較例1に係る有機感光体〔8〕、一般式(1)で表わされるシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子を用いなかった比較例2に係る有機感光体〔9〕、未処理酸化チタン粒子の表面を一般式(1)で表わされるシランカップリング剤で直接処理していない酸化チタン粒子を用いた比較例3に係る有機感光体〔10〕は、濃度ムラとカブリの発生を両立することができないことが確認された。
【符号の説明】
【0138】
10 有機感光体
12 導電性支持体
14 中間層
16 電荷発生層
17 有機感光層
18 電荷輸送層
100 画像形成装置
110Y、110M、110C、110Bk 画像形成ユニット
111Y、111M、111C、111Bk 有機感光体
113Y、113M、113C、113Bk 帯電手段
115Y、115M、115C、115Bk 露光手段
117Y、117M、117C、117Bk 現像手段
119Y、119M、119C、119Bk クリーニング手段
130 無端ベルト状中間転写体ユニット
131 無端ベルト状中間転写体
133Y、133M、133C、133Bk 一次転写ローラ(転写手段)
135 クリーニング手段
137A、137B、137C、137D ローラ
150 給紙搬送手段
170 定着手段
200 プロセスカートリッジ
201 筐体
203R、203L 支持レール
211 給紙カセット
213A、213B、213C、213D 中間ローラ
215 レジストローラ
217 二次転写ローラ(転写手段)
219 排紙ローラ
221 排紙トレイ
P 転写材
SC 原稿画像読み取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に中間層を有し、この中間層上に有機感光層が積層されてなる有機感光体において、
中間層には、バインダー樹脂と酸化チタン粒子とが含有されており、
有機感光層には、ブチラール樹脂が含有されており、
前記酸化チタン粒子が、下記一般式(1)で表わされるシランカップリング剤により表面処理されたものであることを特徴とする有機感光体。
【化1】


〔一般式(1)中、R1 は、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはアセチル基を示し、R2 は、炭素数1〜5の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R3 は、水素原子またはメチル基を示す。nは、1〜3の整数を示す。nが2以上の整数である場合においては、2つ以上のR1 は、互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。〕
【請求項2】
前記酸化チタン粒子が、数平均一次粒子径が10〜20nmのものであることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【請求項3】
前記有機感光層には、電荷発生物質として、Y型チタニルフタロシアニン、2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニン、または、2,3−ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンと非付加のチタニルフタロシアニンとの混合物が含有されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機感光体。
【請求項4】
前記有機感光層は、電荷発生物質およびブチラール樹脂を含有する電荷発生層上に、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層が形成されてなるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の有機感光体。
【請求項5】
前記中間層を構成するバインダー樹脂がポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の有機感光体。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の有機感光体を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−97221(P2013−97221A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240832(P2011−240832)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】