説明

有機物含有肥料の造粒方法

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は有機物含有肥料の造粒方法に関し、さらに詳細には有機物含有肥料とカラシ油粕またはカラシ油粕を含む肥料と水とを含む混合物から有機物含有肥料を造粒する方法に関する。
[従来の技術]
近年、肥料の高機能化のために肥料中の有機物含量を高めることが望まれており、そのような有機物含量の多い肥料を、取扱が容易で、施肥がしやすく、飛散や流失の少ない形状の成形肥料に効率的に造粒する方法が要望されている。
有機物を含有する化成肥料は一般にその水混合物をパン型造粒機や回転円筒型造粒機や撹拌型造粒機等により造粒し得られた造粒物を乾燥し所望の粒子径範囲に篩別することにより得られる。成形肥料の形状は通常2mm〜4mmの平均粒子径を有する球状ないし球状に近い形が最適である。
しかし、一般に有機物の配合割合が多くなるほど肥料の造粒が難しくなり、また得られた肥料粒子の硬度が低下するという欠点がある。そのため有機物の配合割合が多い化成肥料を粒状にするために、造粒助剤として例えば廃糖密アルコール廃液、リグニン、リグニン液等を添加して造粒する方法が行なわれている。この方法によると造粒性、硬度は改善するものの多量の添加水分を必要とするため造粒物を乾燥するのに膨大な重油等エネルギーコストがかかること、また乾燥時悪臭を放つといった問題がある。
廃糖密アルコール廃液を用いる方法におけるこのような欠点を改良するために、肥料に廃糖密アルコール醗酵廃液乾燥物を混合して成形した成形肥料も提案されている(特公昭63−28879号公報)。この方法によれば、混合時間が短縮され、成形後の乾燥工程が不要となる等の利点があるが、上記廃液乾燥物は廃液に担体を加えて乾燥粉末化したもので、このため成形肥料中の有機肥料の含量を上げることが難しい。従って、有機物の配合割合が多い肥料を造粒するためには、一般には転動造粒法を採用せずコンパクティング造粒機、ブリケット造粒機、ペレット造粒機等を使用する圧縮成形造粒法が行なわれている。しかし、この方法によると乾燥エネルギーの低減及び悪臭の発生防止にはある程度効果はあるものの形状が不定形、ペレット状(円筒状)、ブリケット状(凸レンズ状)となるため、近年普及のめざましい機械施肥及びBB肥料(バルクブレンディング肥料)に対する適応性には、いまひとつ欠けるきらいがある。
[発明が解決しようとする課題]
そこで本発明者らは、この様な現状に鑑み鋭意研究を重ねた結果、油粕の一種であるカラシ油粕が肥料の造粒助剤として有効であることが見出され、カラシ油粕またはカラシ油粕を含む肥料に水を加え混練したものを、肥料原料に加え混合造粒すれば製品歩留が良く比較的添加水分が少なくてすみ、しかも、肥料粒子の硬度が高く形状的にも球状ないし球状に近い形の有機物含有肥料が製造可能なることを見い出し、本発明を完成するに至った。
[課題を解決するための手段]
すなわち本発明は、有機物を含有する肥料原料と、カラシ油粕またはカラシ油粕を含む肥料に水を加え混練したものとを混合し、造粒することを特徴とする有機物含有肥料の造粒方法である。
本発明において使用する有機物を含有する肥料は骨粉、皮粉、ナタネ油粕、ダイズ油粕、乾燥菌体肥料、魚粕等の有機肥料、またはこれらの混合物、あるいはこれらの有機肥料と、窒素成分(N)、燐酸成分(P)、加里成分(K)、Mg、Mn、B等微量成分を含む化学肥料との混合物の何れであっても任意に使用でき、特に限定されるものではないが、有機物含有肥料中の有機物が30〜100重量%であることが好しい。
また、本発明において使用するカラシ油粕は芥子の種実から油を抽出採取した油粕であり、それ自体肥料として利用可能のものであり、米国、カナダ、西欧、ソ連、インドなどで生産され、わが国には一部輸入されているが肥料としてはほとんど利用されていない。
本発明においてはカラシ油粕のみを肥料の造粒助剤として使用してもよいが、カラシ油粕を含む肥料、例えばカラシ油粕とナタネ油粕との混合物等をそのまま使用することもできる。この場合混合物中のカラシ油粕の含量はカラシ油粕が10〜100重量%、好ましくは30〜100重量%の混合物を用いる。カラシ油粕の含量が10%以下の場合には水で混練しても粘度が低く、造粒が効果的に行なわれない。
またカラシ油粕の添加量は造粒された肥料全体の乾燥重量に対し、カラシ油粕の重量が5〜100重量%、特に10〜70重量%の範囲となるようにするのが好ましい。カラシ油粕の量が5重量%より少ないと造粒が効果的に行なわれない。従って、前記のようにカラシ油粕を含む肥料を造粒助剤として用いる場合には、造粒された肥料全体の乾燥重量に対するカラシ油粕の量を上記の範囲に保つ必要があるが、造粒助剤中のカラシ油粕の量が余り少ないと、混練のために必要な水の添加量が多くなり、乾燥の手間やエネルギー消費の点から好ましくなく、このためにも造粒剤中のカラシ油粕の濃度が大きいものが好ましい。
カラシ油粕は、ナタネ油粕などと同じく種実から採取した油粕であるが、他の油粕と異なり、水を加え混練することによって、適当な粘性が付与され、有機物含有肥料の造粒のための助剤として使用できるという特異な性質をもっている。例えば、種実としては同属に分類されるナタネ油粕は有機肥料として広く利用されているが、これを含有する肥料を造粒しようとすれば造粒のための助剤を必要とし、しかもこのような有機物の配合割合が高いほど造粒が困難になるという傾向を有する。すなわち一般に油粕は造粒に対してはマイナスの作用を有すると考えられていたものであるが、カラシ油粕は驚くべきことに、これとは逆に造粒助剤としての効果を奏するのである。しかもカラシ油粕はそれ自体が有機肥料であり、他の補助成分を添加する必要もないので、本発明方法により有機物含量の高い成形肥料を得ることができる。
本発明方法により有機物含有肥料を造粒するには、まずバグミキサー、ニーダー、ホイール型混練機等混練機能を有する機器でカラシ油粕に対し、水を添加し、適度の撹拌をし粘着性をもった混練物を調整する第1工程と、この混練物を有機物を含有する肥料中に添加し、ミキサーによって混合分散させる第2工程、さらにこの混合物を造粒する第3工程により順次行なうのが好ましい。
第1工程における添加水分は、カラシ油粕のみを造粒助剤として用いる場合には、カラシ油粕に対し、10〜30重量%が好しい。10%以下では、所望する十分な粘度を得られず、また30%以上では、強粘着団子状となるため、第2工程で有機物を含有する肥料と均一に混合するのに支障をきたす。また付着により装置が汚れる。またカラシ油粕と肥料の混合物を造粒助剤として用いる場合には混合物に対する水の添加量を上記の範囲とすることが、好ましい。
またこの工程における混練時間は使用機種によって異なるが30秒〜3分が好しく30秒以内では十分な混練効果が得られずまた3分以上では粘着性が強くなり上記と同様な問題が発生する。
第2工程で有機物を含有する肥料と混合された混合物中の、第1工程で調製した混練物の配合割合は、造粒された肥料全体の乾燥重量に対し、カラシ油粕の重量が5〜100乾燥重量%となるようにする。即ち第1工程で調製した混練物だけでも造粒できるが、肥料成分上の理由から10〜90乾物重量%が好しい。
また、装置、混合時間については十分混合分散できる機種、時間を採用すれば良く特に限定されるものではないが、装置上連続化の可能な機種が好しい。
第1工程における操作を省略し、第2工程内で両者の操作を行なう方法、即ちあらかじめ有機物を含有する肥料中にカラシ粕を混ぜておき、第2工程のミキサー中で水を添加し、混合及び混練を行なう方法も可能ではあるが、カラシ油粕の粘性を十分引き出せないので、上記のごとき逐次操作の法が好ましい。
第3工程における造粒方式としては、それ自体公知の種々の造粒方式を任意に採用できる。本発明においては、球状ないし球状に近い製品形状の得られるパン型造粒機回転円筒型造粒機、撹拌式造粒機を用いるのが有利である。
[実施例]
以下、本発明の実施例及び比較例を示し本発明を具体的に説明する。
実施例1 硫安10部、硫加10部、魚粕20部、脱こう骨粉20部、乾燥菌体肥料10部、皮粉10部、ナタネ油粕10部、ヒマシ油粕10部を混合し粉状の有機物を含有する肥料を製造した。他方カラシ油粕100部に対し水20重量%の水を加え、これをニーダーで3分間混練しカラシ油粕の混練物を調整した。
上記有機物を含有する肥料1.8kgとカラシ油粕の混練物336gをバグミキサーに入れ、1分間混合し造粒用原料混合物を調整した。この造粒用原料混合物を内径1m高さ19cmのパン型造粒機に入れ、約15分間造粒操作を行なった。得られた造粒物の一部を取り出し常法により水分を測定した。残りの造粒物を70℃の恒温箱型乾燥機に入れ、約6時間放置して乾燥した。得られた乾燥粒状物を2mm及び4mmの篩で篩分し2〜4mmの粒状物を製品粒状肥料とし全乾燥粒状物に対する製品粒状肥料の重量%を製品歩留とした。また、製品粒状肥料の中から任意に20粒取り出し、不層式硬度計で硬度を測定し平均粒子硬度を求めた。この結果を第1表に示す。
比較例1 更に比較のために実施例1で調整した有機物を含有する肥料1.8kgと廃糖密アルコール廃液(水分含有量60%)666gとをバグミキサーに入れ、1分間混合し、造粒用原料混合物を調製した。以下、実施例1と同様の操作で粒状肥料を製造し、同様の測定を行なった。
これらの造粒品水分、製品歩留、製品硬度を第1表に示す。


第1表から明らかなように、カラシ油粕を造粒助剤として用いた本発明方法は廃糖密アルコール廃液を用いる方法に較べ、造粒効率、製品硬度ともに優れている。
実施例2 脱こう骨粉50部、乾燥菌体肥料50部を混合し、粉状の有機物を含有する肥料を製造した。他方カラシ油粕80重量%を含有するカラシ油粕−ナタネ油粕混合物に対し、20重量%の水を加え、これをニーダーで30秒間混練してカラシ油粕を含有するナタネ油粕の混練物を調製した。上記有機物を含有する肥料400gとカラシ油粕を含有する混練物2002gをバグミキサーに入れ、1分間混合し、造粒用原料混合物を調製した。以下実施例1と同様の操作で粒状肥料を製造し同様の測定を行なった。
これらの造粒品水分、製品歩留、製品硬度を第2表に示す。
比較例2 実施例2において、カラシ油粕−ナタネ油粕混合物の代わりにナタネ油粕を用いた以外は実施例2と同じ方法でパン型造粒機を用いて肥料の造粒操作を行なった。この結果を第2表にあわせて示したが、カラシ油粕−ナタネ油粕混合物を用いた本発明方法に較べ、造粒効率が非常に悪かった。


実施例3 実施例2で用いたと同じカラシ油粕80重量%を含有するカラシ油粕−ナタネ油粕混練物を調製し、ナタネ油粕400gと上記カラシ油粕−ナタネ油粕混練物2014gをバグミキサーに入れ、1分間混合し、造粒用原料混合物を調製した。以下実施例1と同様の操作で粒状肥料を製造し同様の測定を行なった。
これらの造粒品水分、製品歩留、製品硬度を第3表に示す。
比較例3 実施例3において、カラシ油粕−ナタネ油粕混練物の代わりにナタネ油粕を用いた以外は実施例3と同じ方法でパン型造粒機を用いて肥料の造粒操作を行なった。この結果を第3表にあわせて示したが、カラシ油粕−ナタネ油粕混合物を用いた本発明方法に較べ、造粒効率が非常に悪かった。


[発明の効果]
本発明の造粒法は、カラシ油粕またはカラシ油粕を含む肥料の使用により従来の廃糖密アルコール廃液、リグニン、リグニン液等造粒助剤が不要となるばかりでなく、これら造粒助剤を使用した従来の造粒法に比べ、造粒効率が高く、製品粒子硬度も高くなり、また添加水分が少なくてすむため、乾燥エネルギーの節約になる。
また、それ自体が肥料成分を含むため、この有効利用がはかられ、有機物含量の高い成形肥料が得られる等優れた効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】有機物を含有する肥料原料と、カラシ油粕またはカラシ油粕を含む肥料に水を加え混練したものとを混合し、造粒することを特徴とする有機物含有肥料の造粒方法。

【特許番号】第2859354号
【登録日】平成10年(1998)12月4日
【発行日】平成11年(1999)2月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−33239
【出願日】平成2年(1990)2月14日
【公開番号】特開平3−237084
【公開日】平成3年(1991)10月22日
【審査請求日】平成9年(1997)2月5日
【出願人】(999999999)朝日工業株式会社