説明

有機/無機複合フィルムおよび有機/無機複合フィルムの製造方法

【課題】本発明は、十分な光学特性と極めて高い耐熱性や寸法安定性と共に、特に優れた可撓性を有し、画像表示素子や光電変換素子の基板の材料などとして有用な有機/無機複合フィルム、およびその製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、当該有機/無機複合フィルムを利用した画像表示素子など提供することも目的とする。
【解決手段】本発明に係る有機/無機複合フィルムの製造方法は、多孔質PTFEに、ホウ素イオン、ハロゲンイオンおよび金属アルコキシド化合物を含む溶液を含浸させる工程;および、上記溶液を含浸させた多孔質PTFEを硬化する工程;を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機/無機複合フィルム、当該有機/無機複合フィルムの製造方法、および当該有機/無機複合フィルムを含む画像表示素子等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機ガラス材料は光学特性や耐熱性に優れることから、耐熱性の光学材料として広く使用されている。しかしながら無機ガラス材料には、重い、破損しやすい、薄型化が困難、柔軟性に乏しいといった欠点がある。そのため、これら欠点を有さず且つ光学特性に優れた樹脂材料が検討されるようになってきた。
【0003】
そのような光学材料用の樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂;ポリカーボネート(PC)系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂が主として用いられている。これら樹脂は柔軟性や加工性に優れているため、レンズ、光ディスク、フィルムなどの材料として幅広く使用されている。
【0004】
特に近年、ディスプレイや太陽電池には、軽量化、薄型化および大型化が要求されていることから、その基板材料としては、無機ガラスから軽量であり且つ薄膜化が容易である樹脂への転換が図られている。また、樹脂基板は形状の自由度が高いのでフレキシブルな基板となり得る上に、意匠性の観点からも有利である。
【0005】
しかし、上記のポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂といった光学材料用樹脂には、耐熱性が低いという欠点がある。よって、画像表示素子や光電変換素子の基板材料として用いると、必要な駆動回路や透明導電層などを形成するときの高温プロセスに耐えられないので、樹脂材料をガラスの代替用途として用いることは困難であった。
【0006】
さらに樹脂材料は、線熱膨張係数が大きいため熱履歴により駆動回路や透明導電層へ与える応力が大きく、回路の断線やフィルムの反りが生じやすくなる。従って、光学特性に優れると共に耐熱性と寸法安定性に優れた樹脂材料の開発が盛んに検討されており、これまでにもポリエーテルスルホン(PES)、耐熱性ポリカーボネート、ポリアリレートなどが見出されている。しかしこれら耐熱樹脂の耐熱性や寸法安定性は決して十分ではない。
【0007】
例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイに用いられる画像表示素子に必要なカラーフィルタの形成におけるプロセス温度は、一般に180℃以上である。しかし、ポリエーテルスルホンやポリアリレートはかかる高温に耐えられないため、当該プロセス温度を150℃程度に低減する必要がある。その結果、色特性や耐薬品性といったカラーフィルタの性能が不十分とならざるを得ない。
【0008】
また、画像表示素子や光電変換素子に必要な透明導電層を、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法などの物理的製膜法により形成する場合、200℃以上に温度を高めることが多い。当該温度を高めることによって、透明導電層の結晶化が進行し、電気抵抗値が低く透明性の高い透明導電層が得られるからである。しかし、ポリエーテルスルホン、耐熱ポリカーボネート、ポリアリレートなどの樹脂を基板材料として使用する場合、当該温度は200℃程度以下にせざるを得ない。そのために基板材料の透明性が低くなり、電気抵抗値は高くなってしまう。
【0009】
さらに、画像表示素子に必要なアモルファスシリコンTFTを直接法により形成する場合には、プロセス温度が最高で300℃に達する。よって、上記の樹脂フィルムでは、直接法によるTFTの形成は不可能であった。
【0010】
上記樹脂材料の他、光学特性の優れた耐熱性樹脂としてフッ素樹脂も知られている。しかしフッ素樹脂は高温でのクリープや熱膨張係数が大きく、高温環境での寸法安定性や形状維持性は不十分である。
【0011】
また、比較的耐熱性に優れた樹脂としてポリイミドが広く知られているが、一般的なポリイミドは茶褐色に着色しているため光学用途には使用できない。
【0012】
耐熱性を有するポリマーとしてポリアミドも広く知られており、特許文献1のとおり、光学特性の優れたポリアミドも開発されている。しかしこのポリアミドは、低波長側の光の透過率が低くなる傾向があり、また、吸水率が高いといった問題がある。
【0013】
上述したように、一般的に樹脂の耐熱性は不十分であるため、特許文献2の方法では、その形成に高温を要する薄膜トランジスタ、カラーフィルタ、透明導電層などをいったんガラスなどの耐熱性基材板上に形成し、次いで樹脂基板上に転写している。しかし、この方法の生産効率は低く、ガラス基板を用いた場合よりもコストが高くなるという欠点がある。また、低温で駆動回路やガスバリア層を形成する方法も試みられているが、得られた駆動回路などの性能が不十分であったり、長いプロセス時間を要したりするため、実用には至っていない。
【0014】
その他、樹脂を含む複合材料も検討されているが、依然としてその耐熱性や耐候性は十分とはいえない。例えば特許文献3に記載の繊維強化複合材料は、繊維にマトリクス材料を含浸させたものである。しかし、当該マトリクス材料としてはフェノール樹脂やアクリル樹脂が用いられているので、耐熱性に問題がある。さらに、当該複合材料からなるシートの光透過性は十分ではない。また、特許文献4には、有機高分子中に無機微粒子を含む有機/無機複合体からなるフィルムが開示されているが、やはり有機高分子により耐熱性に劣る。その上、光透過性や寸法安定性も十分とはいい難い。さらに、特許文献5には平均繊維径が5〜300nmの合成樹脂繊維にマトリクス材料を含浸硬化させた複合材料が開示されている。しかし、このようなナノレベルの合成繊維の製造工程は非常に煩雑である。また、この合成繊維の耐熱性には問題があり、その光透過性や寸法安定性も十分とはいえない。
【0015】
また、特許文献6には、極薄ガラスに金属酸化物ポリマーを含む層と三次元架橋ポリマー層を積層した可撓性基板が開示されている。しかし、極薄ガラスの製造コストは極めて高く、また、破損し易いことからハンドリング性に問題がある。
【0016】
特許文献7には、耐熱性、低熱膨張性および耐溶剤性がうたわれている有機/無機複合体からなるフィルムが開示されている。この低熱膨張性は、特に基板として利用する場合における寸法安定性に重要である。しかし当該フィルムは、電子線の照射が必要であるなど製造方法が煩雑である。また、マトリクス材料にアクリル系樹脂などが用いられているため、耐熱性や低熱膨張性が十分とはいい難い。
【0017】
特許文献8には、線膨張率が低く、寸法安定性が良く、耐熱性の高いフィルムが開示されている。当該フィルムは、液晶ディスプレイなどの基板として用いられる。しかし当該フィルムはセルロースエステルフィルムが主材料であることから、250℃程度以上の高温における耐熱性に劣るという問題がある。
【0018】
本願出願人の研究者らは、特許文献9のとおり、可撓性や化学的安定性などに優れた複合フィルムとして、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜の空孔にシリカゲルが充填された複合膜を開発し、特許出願している。当該複合フィルムは、高い耐熱性などを有しながらも扱い難いシリカゲルを耐熱性や耐候性などに優れる多孔質PTFEフィルムと組合せることにより、可撓性などを高めたものである。
【特許文献1】特公平7−89452号公報
【特許文献2】特開2000−47023号公報
【特許文献3】特開2005−60680号公報
【特許文献4】特開2007−23184号公報
【特許文献5】特開2007−51214号公報
【特許文献6】特開2005−297498号公報
【特許文献7】特開2007−8989号公報
【特許文献8】特開2005−306924号公報
【特許文献9】特開2001−329105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、従来、様々な有機/無機複合体からなるフィルムが知られている。本願出願人の研究者らも、可撓性などに優れた複合フィルムを開発している。
【0020】
しかし近年、ディスプレイや太陽電池などの基板として用いられるフィルムに対しては、十分な光学特性と極めて高い耐熱性や寸法安定性と共に、より一層優れた可撓性が求められるようになっており、従来技術では対処できない場合が生じている。例えばディスプレイなどでは、さらなる薄膜化が要求されており、それに伴って基板にはより高い可撓性も必要となる。また、フィルムを基板としてデバイスを製造する場合には、Roll to rollという非常に効率的な方法が用いられることがある。この方法では、ロール状の原料フィルムをほどきつつ必要部品を順に搭載していき、再びロール状に巻き取る。製品はロール状のまま出荷することができるため、製造現場のみならず運搬時も便利である。ところが、従来フィルムをRoll to rollの製造に適用すると、ロール状にした段階でクラックが発生したり、ときには破断してしまうことがあった。
【0021】
そこで本発明が解決すべき課題は、十分な光学特性と極めて高い耐熱性や寸法安定性と共に、特に優れた可撓性を有し、ディスプレイや太陽電池の基板の材料などとして有用な有機/無機複合フィルム、およびその製造方法を提供することにある。また本発明は、当該有機/無機複合フィルムを利用した画像表示素子などを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた。その結果、多孔質PTFEに、ホウ素イオン、ハロゲンイオンおよび金属アルコキシド化合物を含む溶液を含浸させた上で硬化することにより得られる有機/無機複合フィルムは、十分な光学特性と極めて高い耐熱性および寸法安定性を有すると共に、極めて厳しい可撓性試験にも耐えることを見出して、本発明を完成した。
【0023】
本発明に係る有機/無機複合フィルムの製造方法は、多孔質PTFEに、ホウ素イオン、ハロゲンイオンおよび金属アルコキシド化合物を含む溶液を含浸させる工程;および、上記溶液を含浸させた多孔質PTFEを硬化する工程;を含むことを特徴とする。
【0024】
上記方法においては、多孔質PTFEに上記溶液を含浸させた後、さらに当該溶液を塗布する工程を行ってもよい。かかる態様によって、多孔質PTFE上に、金属アルコキシド化合物の重合体を主な構成成分とする層を形成することができる。
【0025】
上記溶液へは、さらに金属酸化物微粒子を添加してもよい。かかる態様によって、金属酸化物微粒子由来の特性を、本発明の有機/無機複合フィルムに付与することができる。
【0026】
上記金属アルコキシド化合物としては、ケイ素アルコキシド化合物が好適である。ケイ素アルコキシド化合物の重合体の屈折率は他の樹脂材料に比べて一般的に低く、多孔質PTFEと近いことから、ケイ素アルコキシド化合物を用いて得られる有機/無機複合フィルムは、フィルム表面での光反射が少なく光線透過性に優れ、また、透明性にも優れる。さらに、ケイ素アルコキシド化合物の重合体は化学的に安定であり、耐熱性や耐候性などに優れるので、高温プロセスや屋外での使用にも耐え得る。
【0027】
本発明の有機/無機複合フィルムは、多孔質PTFE、および金属アルコキシド化合物を硬化することにより得られる重合体を含み;上記多孔質PTFEの空隙は上記重合体により充填されており;且つ、上記重合体がホウ素元素およびハロゲン元素を含む;ことを特徴とする。
【0028】
本発明の有機/無機複合フィルムとしては、さらに金属酸化物微粒子を含むものが好適である。かかる有機/無機複合フィルムは、添加された金属酸化物微粒子由来の特性を有する。
【0029】
本発明の有機/無機複合フィルムとしては、二酸化ケイ素からなる金属酸化物微粒子を含み、且つ50℃以上、300℃以下における線熱膨張係数が50ppm/℃以下であるものが好適である。一般的に、有機材料の線熱膨張係数は高いので、線熱膨張係数の低い金属材料などにより有機材料上に回路などを形成すると、熱プロセスにより有機材料と金属材料などの層との間に応力が生じ、製品の寸法安定性が損なわれる。しかし、線熱膨張係数が比較的低い上記有機/無機複合フィルムを用いれば、その表面に金属材料などの層を形成した上で熱プロセスを付与しても、寸法安定性が高く信頼性の高い製品が得られる。二酸化ケイ素からなる金属酸化物微粒子は、上記重合体との相互作用によって、フィルムの線熱膨張係数を低減させる。
【0030】
本発明の有機/無機複合フィルムは、画像表示素子、光電変換素子、タッチパネル用部材を構成するフィルムの材料として有用である。本発明に係る有機/無機複合フィルムは、十分な光学特性と極めて高い耐熱性および寸法安定性を有すると共に、極めて優れた可撓性を有するので、薄膜化が求められているこれら素子や部材の基板として適しており、また、Roll to rollでこれら素子等を製造する場合の材料となり得る。
【発明の効果】
【0031】
本発明の有機/無機複合フィルムは、十分な光学特性と極めて高い耐熱性および寸法安定性を有すると共に、特に優れた可撓性を有する。よって、本発明の有機/無機複合フィルムは、例えば太陽電池やディスプレイの基板など、十分な光学特性と極めて高い耐熱性および寸法安定性と共に、高い可撓性などが要求されるものの材料として有用である。また、本発明方法は、かかる有機/無機複合フィルムを製造することができる。よって発明は、従来のガラス基板や樹脂基板フィルムにとって代わり得るフィルムに関するものとして、産業上非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明に係る有機/無機複合フィルムの製造方法は、多孔質PTFEに、ホウ素イオン、ハロゲンイオンおよび金属アルコキシド化合物を含む溶液を含浸させる工程;および、上記溶液を含浸させた多孔質PTFEを硬化する工程;を含むことを特徴とする。
【0033】
本発明で用いる多孔質PTFEは、ポリテトラフルオロエチレンのファインパウダーを成形助剤と混合することにより得られるペーストの成形体から、成形助剤を除去した後または除去せずに延伸し、必要に応じて焼成することにより得られる。一軸延伸の場合、フィブリルが延伸方向に配向すると共に、フィブリル間が空孔となった繊維質構造となる。また、二軸延伸の場合、フィブリルが放射状に広がり、ノードとフィブリルで画された空孔が多数存在するクモの巣状の繊維質構造となる。
【0034】
多孔質PTFEは、耐熱性や耐候性などの特性を有することから、その製造において高温が要求される部材の材料や、長時間にわたる屋外での使用が必要となる部材の材料として、非常に有用である。
【0035】
多孔質PTFEの空孔率は、上記溶液を含浸できるものであれば特に限定されないが、含浸性や光透過性を確保するために、好ましくは30%以上、より好ましくは60%以上、さらにより好ましくは80%以上とする。なお、多孔質PTFEの空孔率は、JIS K6885で定義されている見掛け密度の測定方法に準拠して測定した見掛け密度ρより、下記式から算出することができる。
空孔率(%)=[(2.2−ρ)/2.2]×100
【0036】
多孔質PTFEの平均フィブリル径は特に制限されないが、特に透明性を確保したい場合には200nm以下とすることが好ましい。平均フィブリル径が200nmを超えると、金属アルコキシド化合物の重合物との界面で可視光の屈折や散乱が生じ易く、透明性が低下するおそれがある。より高い透明性を確保するためには、平均フィブリル径を100nm以下にすることがより好ましく、50nm以下にすることがさらに好ましい。一方、光透過性と光拡散性の両方を確保したい場合には、平均フィブリル径を200nm以上、700nm以下とすることが好ましい。なお、当該平均フィブリル径は、走査型電子顕微鏡を用いて多孔質PTFEのSEM画像を無作為に撮影し、得られたSEM画像における100以上のフィブリルの径を計測し、これら計測値の平均値とすることができる。
【0037】
高い光透過性を確保するためには、使用する多孔質PTFE中に700nm以上のノードが無いことが望ましく、また、透明性を確保するためには、200nm以上のノードが無いことが望ましい。
【0038】
本発明の有機/無機複合フィルムの厚さは特に制限されず、用途により適宜決定すればよいが、好ましくは1μm以上、1000μm以下とする。1μm未満ではフィルム強度が不足して取扱いが難しくなる場合があり得る一方で、1000μmを超えると溶液を均一に含浸することが難しくなる場合があり得る。当該フィルムの厚さとしては、10μm以上、500μm以下がより好ましく、20μm以上、200μm以下がさらに好ましい。また、当該厚さは、Roll to rollなどの効率的な製造を可能にするために、ロール状に巻ける程度に調整することが好ましい。
【0039】
多孔質PTFEとしては、化学修飾または物理修飾によって、その機能性を高めたものを用いてもよい。化学修飾および物理修飾の方法は特に限定されないが、化学修飾としては、アセチル化、イソシアネート化、アセタール化などによりフィブリル表面に官能基を付加させる方法や、化学反応により有機物や無機物をフィブリル表面に被覆する方法などが挙げられる。物理修飾としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどの物理蒸着法、化学蒸着法、無電解メッキや電解メッキなどのメッキ法などが挙げられる。これらの修飾方法は単独で用いてもよく、また複数を併用してもよい。
【0040】
本発明方法では、多孔質PTFEに、ホウ素イオン、ハロゲンイオンおよび金属アルコキシド化合物を含む溶液を含浸させる。
【0041】
金属アルコキシド化合物を構成する金属元素としては、Si、Ti、Al、Sn、Zn、Mgなどを挙げることができる。また、金属アルコキシド化合物を構成するアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシなどのC1-6アルコキシル基を挙げることができる。また、金属アルコキシド化合物は、化学修飾または物理修飾によって、その機能性を高めたものを用いてもよい。修飾する有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基およびその置換体;炭素数6〜20のアリール基およびその置換体;炭素数7〜20のアラルキル基およびその置換体;−C−O−、−C=O、−COO−、−COOH、−CON=、−CN、−NH2、−NH−、エポキシ基などの極性を有する有機基;>C=CH−などの不飽和炭素結合を有する有機基などが挙げられる。
【0042】
金属アルコキシド化合物としては、ケイ素アルコキシド化合物が好適である。ケイ素アルコキシド化合物の溶液を含浸させた上で硬化させた本発明の有機/無機複合フィルムは、フィルム表面での光反射が少なく光線透過性に優れ、また、透明性にも優れる。さらに、ケイ素アルコキシド化合物の重合体は化学的に安定であり、耐熱性や耐候性などに優れるので、高温プロセスや屋外での使用にも耐え得る。
【0043】
ケイ素アルコキシド化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジメトキシメチルシランフェニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられる。
【0044】
溶液における金属アルコキシド化合物の割合は、適宜調整すればよい。例えば、金属アルコキシド化合物の重合物の単独層を厚く形成したい場合には、金属アルコキシド化合物の濃度を高めることにより溶液の粘度を高めることが好ましい。それに対して、多孔質PTFEの空孔において、金属アルコキシド化合物の重合物層を薄く被覆したい場合には、金属アルコキシド化合物の濃度は低減する方がよい。一般的には、溶媒に対する金属アルコキシド化合物の割合は、20wt%以上、95wt%以下程度とすることが好ましい。
【0045】
本発明方法で用いるホウ素イオンとハロゲンイオンは、主に金属アルコキシド化合物中の金属を金属酸化物にする反応を促進する触媒と考えられるが、本発明の有機/無機複合フィルムにおいては、さらに別の作用効果を発揮している可能性もある。
【0046】
本発明で用いる溶液にホウ素イオン(B3+)を存在せしめるには、溶解することによりホウ素イオンを与える化合物を用いればよい。かかる化合物としては、一般式:B(OR)3[Rは、C1-6アルキル基を示す]で表されるトリアルコキシボランが好適である。中でもトリエトキシボランが好適である。
【0047】
本発明で用いる溶液にハロゲンイオンを存在せしめるには、ハロゲンイオンの塩を用いればよい。かかる化合物としては、例えば、フッ化水素アンモニウム(NH4F・HF)、フッ化ナトリウム(NaF)、塩化アンモニウム(NH4Cl)を挙げることができる。ハロゲンイオンとしては、F-およびCl-が好適である。
【0048】
ホウ素イオンとハロゲンイオンの添加量は適宜調整すればよい。例えば、金属アルコキシド化合物に対するこれらイオンの割合が低過ぎると、金属アルコキシド化合物の加水分解の十分な進行が困難となり、金属酸化物が十分に生成しない場合があり得る。一方、当該割合が高過ぎると、生成する金属酸化物が不均一となり、硬化膜が脆くなるおそれがあり得る。一般的には、溶液中におけるホウ素イオンの濃度は、1.0モル/L以上、10.0モル/L以下とすることが好ましい。溶液中におけるハロゲンイオンの濃度は、0.001モル/kg以上、2モル/kg以下が好ましく、0.002モル/kg以上、0.3モル/kg以下がより好ましい。
【0049】
本発明方法で用いる溶液を構成する溶媒としては、アルコールが好ましい。アルコールは金属アルコキシド化合物の溶解能に優れる上に、重合反応後は容易に留去することができる。また、反応を効率的に進行させる目的で、溶液中に0.2モル/L以上、50モル/L以下程度の水を添加してもよい。
【0050】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノールなどが挙げられ、それらを単独、もしくは複数を併用、任意に混合しても構わない。好適には、金属アルコキシド化合物を構成するアルコキシル基に対応するアルコールを用いる。
【0051】
本発明方法で用いる溶液には、金属アルコキシド化合物の重合反応の触媒として、酸や塩基を加えてもよい。かかる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、弗化水素酸などの酸を挙げることができ、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの塩基が挙げられる。
【0052】
本発明方法で用いる溶液へは、さらに金属酸化物微粒子を添加してもよい。さらに添加する金属酸化物微粒子由来の特性を、本発明の有機/無機複合フィルムに付与することができる。例えば、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、亜鉛、インジウム、スズ、バリウム、マグネシウムおよびリチウムから選択される1または2以上の金属の酸化物からなる微粒子を添加することにより、これら金属酸化物微粒子の特性を有機/無機複合フィルムに付与することが可能となる。例えば、線熱膨張係数や熱収縮率を低減することができる。
【0053】
金属酸化物微粒子の平均粒子径は特に制限されないが、大き過ぎると有機/無機複合フィルムの透明性に悪影響を及ぼすおそれがある。よって、当該平均粒子径としては200nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下とする。当該平均粒子径の下限は特に制限されないが、例えば1nm以上とする。また、その粒度分布は狭いほどよく、200nm超の微粒子が無いことが望ましい。金属酸化物微粒子の形状は特に限定されないが、球状、棒状、不定形状などであり、これらの微粒子を単独もしくは複数を併用しても構わない。また異なる金属酸化物微粒子を2種類以上混合してもよい。
【0054】
金属酸化物微粒子の配合量は特に限定されないが、一般的には金属アルコキシド化合物等を含む溶液に対して10質量%以上、90質量%以下が好ましい。10質量%未満では、添加した金属酸化物粒子の効果が十分に発揮されないおそれがある。一方、90質量%を超えると、金属アルコキシド化合物の重合反応が十分に進行しない可能性があり得る。当該配合量は、より好ましくは20質量%以上、80質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以上、60質量%以下である。
【0055】
その他、上記溶液には、紫外線吸収剤、抗菌剤、帯電防止剤、光触媒、上記以外の硬化触媒、可塑剤、増粘剤、消泡剤、カーボンブラックなど、有機系または無機系の各種添加剤を添加することができる。
【0056】
上記溶液を多孔質PTFEフィルムに含浸させる方法は特に制限されず、常法を用いることができる。例えば、真空加圧含浸、真空含浸、噴霧、蒸発乾固、メタリングバー方式、ダイコート方式、グラビア方式、リバースロール方式、ドクターブレード方式などいずれの方式であってもよい。なお、多孔質PTFEフィルムへ溶液を塗布するのみであっても、溶液は空隙を満たす。即ち、本発明における「含浸」は、多孔質PTFEフィルムの空隙が溶液で満たされればよく、塗布等も含む概念である。
【0057】
多孔質PTFEフィルムの厚さが薄い場合、一回の含浸のみで、多孔質PTFEフィルムの空隙は溶液で満たされる。よって、溶液中の固形分含量や溶液粘度を高めることにより、金属アルコキシド化合物の重合体層を多孔質PTFEフィルム上に形成することも可能である。但し、かかる重合体層が必要無い場合には、多孔質PTFEフィルム上に残存する溶液を除去する。
【0058】
一方、多孔質PTFEフィルムの厚さが厚い場合、一回の含浸のみでは空隙を溶液で完全に満たすことができないことがある。その場合には、溶液を複数回含浸させ、空隙が完全に満たされるようにする。
【0059】
上記溶液を含浸させた多孔質PTFEフィルムには、さらに上記溶液を塗布してもよい。かかる態様により、金属アルコキシド化合物の重合物の単独層を積層することができる。
【0060】
塗布方法は特に限定されないが、例えば、メタリングバー方式、ダイコート方式、グラビア方式、リバースロール方式、ドクターブレード方式などいずれの方式であってもよい。
【0061】
上記溶液の塗布を行う場合は、多孔質PTFEフィルムの塗布面の溶媒が極力取り除かれた状態で行うことが好ましい。多孔質PTFEフィルムの表面に溶媒が付着した状態で塗布を行うと塗布斑が生じやすく、金属アルコキシド化合物の重合物の単独層の均一性や厚みに悪影響を及ぼす可能性がある。また、多孔質PTFEフィルムと重合物層との密着性を高めるために、多孔質PTFEフィルムの表面にコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、アルカリ処理などの表面活性化処理を施すこともできる。
【0062】
次に、上記溶液を含浸させた多孔質PTFEフィルムを硬化させることにより、本発明の有機/無機複合フィルムを得る。具体的には、上記溶液中の金属アルコキシド化合物を加水分解しつつ重合させる。即ち、ゾルゲル反応を行う。より具体的には、例えばケイ素のアルコキシド化合物を用いた場合には、Si−O結合によるオリゴマー化、さらにはポリマー化されたシロキサン結合が生成されるゾルゲル反応を進行せしめる。
【0063】
硬化方法としては、重合反応が進行すれば特に限定されないが、加熱処理の他、紫外線、X線、電子線、赤外線、マイクロ波などを照射することによりエネルギーを付与する方法がある。簡便であることから、好ましくは加熱処理を行う。
【0064】
硬化のための加熱処理の温度は適宜調整すればよいが、一般的には20〜320℃程度とする。20℃未満であると硬化反応が進行し難い場合がある一方で、320℃を超えるとクラックなどが発生しやすくなり、良好な複合フィルムを取得し難くなる場合がある。より好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは200〜300℃である。また、加熱時間も適宜調整すればよいが、一般的には10〜360分間程度である。エネルギー光線を照射する場合、その種類や強度も適宜選択することができる。
【0065】
比較的低温で重合反応を進めた場合には、残留した溶媒を留去するために、好ましくは減圧下、さらに加熱すればよい。
【0066】
上記方法で製造される本発明の有機/無機複合フィルムは、多孔質PTFEフィルム、および金属アルコキシド化合物を硬化することにより得られる重合体を含み;上記多孔質PTFEフィルムの空隙は上記重合体により充填されており;且つ、上記重合体がホウ素元素およびハロゲン元素を含む;ことを特徴とする。
【0067】
本発明の有機/無機複合フィルムでは、多孔質PTFEフィルムの空隙が、金属アルコキシド化合物を硬化することにより得られる重合体により充填されている。多孔質PTFEフィルムに対する重合体の割合としては、30vol%以上、95vol%以下が好ましい。当該割合が30vol%以上であれば、多孔質PTFEフィルムの光学特性や寸法安定性などの特性を十分に改善することができる。一方、95vol%を超えると、優れた可撓性の付与や多孔質PTFEの優れた特性を活かすことが難しくなり得る。なお、多孔質PTFEフィルムに対する重合体の割合は、原材料として用いた多孔質PTFEフィルムの質量と、有機/無機複合フィルムの質量から求められる。また、ここでの重合体の質量は、有機/無機複合フィルムにおける多孔質PTFEフィルム以外の質量をいい、別途金属酸化物微粒子等を添加した場合には、それらの質量も含むものとする。
【0068】
本発明の有機/無機複合フィルムにおいて、「充填」とは、多孔質PTFEフィルムの全ての空隙が上記重合体により埋められている場合に限定されるものではなく、複合フィルムの上下や裏表を通じるような連通穴が存在しない範囲で、ePTFEのノードおよびフィブリルの表面が上記重合物で被覆されている場合も含むものとする。
【0069】
上記重合体は、ホウ素元素およびハロゲン元素を含む。上記の製造方法のとおり、本発明の有機/無機複合フィルムは、ホウ素イオンとハロゲンイオンを含む溶液を多孔質PTFEフィルムに含浸することにより製造される。このホウ素イオンとハロゲンイオンが有機/無機複合フィルムにおいて最終的にどのような状態にあるかは必ずしも明らかではない。しかし、少なくとも金属アルコキシド化合物溶液の硬化反応で蒸散することはあり得ず、本発明の有機/無機複合フィルムはホウ素イオンやハロゲンイオンを用いずに製造されたフィルムに比べて明らかに優れた特性を有するので、これらは重合体中に存在し、様々な特性を有機/無機複合フィルムに付与していると考えられる。
【0070】
可能性としては、上記ホウ素元素やハロゲン元素は、重合体中に共有結合していたり、或いは配位していることが考えられる。例えば、金属アルコキシド化合物の重合体中の金属元素がホウ素元素に置換されていたり、また、加水分解反応により生じた水酸基がハロゲン元素に置換されている可能性がある。
【0071】
本発明の有機/無機複合フィルムにおけるホウ素元素の割合は、0.33mmol/g以上、17mmol/g以下程度が好ましく、ハロゲン元素の割合は、0.0003mmol/g以上、4mmol/g以下程度が好ましい。上記各割合が下限値以上であれば、可撓性などの特性の改善効果が十分に得られる。一方、上記各割合が上限値を超えると、金属アルコキシド化合物の加水分解反応が阻害されるおそれがあるので好ましくない。
【0072】
本発明の有機/無機複合フィルムにおけるホウ素元素およびハロゲン元素の割合は、従来公知の分析手法で測定可能である。例えばホウ素元素に関しては、高周波プラズマ発光分光分析装置(ICP発光分析装置)などにより測定することができる。より具体的には、まず試料を精秤した後に灰化容器に入れ、電気炉中で加熱して有機物を完全に分解する。残留した灰分を炭酸塩と混合した上で加熱融解することにより水溶性にした後、純水に完全溶解してから、高周波プラズマ発光分光分析装置でホウ素元素を定量する。使用する高周波プラズマ発光分光分析装置としては、島津製作所製のICPS−8100型を挙げることができる。
【0073】
本発明の有機/無機複合フィルムとしては、上記金属酸化物の他に、別途金属酸化物微粒子を含むものが好ましい。かかる有機/無機複合フィルムは、当該金属酸化物微粒子由来の特性を有するものとなる。例えば、酸化ケイ素微粒子を別途含む有機/無機複合フィルムは、線熱膨張係数や熱収縮率が低減されている。
【0074】
本発明の有機/無機複合フィルムは、金属アルコキシド化合物の重合体へのホウ素元素とハロゲン元素の添加により、可撓性が顕著に改善されている。具体的には、本発明フィルムを曲げても破断したりクラックを発生したりすることがなく、良好なフレキシブル性を示す。よって、Roll to rollという効率的でありながら可撓性が要求される製法にも適用可能である。本発明において十分な可撓性を有することを示す基準としては、例えば、曲率半径が5mm以下でも問題なく取り扱えることをいうものとする。
【0075】
本発明の有機/無機複合フィルムの全光線透過率は特に制限されないが、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。本発明に係る有機/無機フィルムは、重合体部分を有さない多孔質PTFEよりも全光線透過率が高くなるが、フィルム内での光の吸収やフィルム表面での反射を低減することにより、全光線透過率をより一層高めることが可能である。具体的には、フィルム内で光の吸収を防ぐには、重合物に含まれる金属イオンなどの不純物を除去する。不純物である金属イオンとしては、ニッケルイオン、チタンイオン、マンガンイオンなどを挙げることができる。また、フィルム表面での光の反射を抑えるには、フィルムと空気との屈折率の差を小さくすることが考えられる。一般的に、ケイ素アルコキシド化合物の重合体は、他のアルコキシド化合物の重合体よりも低い屈折率を示すため、全光線透過率を高めるには、ケイ素アルコキシド化合物の重合体を用いることが好ましい。本発明フィルムの全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。
【0076】
本発明の有機/無機複合フィルムにおける重合物層の屈折率は特に限定されないが、透明性を高めるためには、多孔質PTFEの屈折率により近いことが好ましい。具体的には、当該屈折率は1.25以上、1.5以下程度が好ましく、1.3以上、1.45以下程度がより好ましい。
【0077】
本発明の有機/無機複合フィルムを構成する多孔質PTFEは耐熱性に優れる。また、ケイ素アルコキシド重合物は耐熱性に優れることから、両者を組合わせることにより、耐熱性に極めて優れる有機/無機複合フィルムが得られる。かかる耐熱性は、熱収縮率や線熱膨張係数により評価することができる。
【0078】
熱収縮率は、フィルムに対して実質的に張力を付与しない状態で300℃、1時間の熱処理を行い、熱処理前後の試料長を測定し、以下の式により算出することができる。
熱収縮率(%)=((熱処理前の試料長)−(熱処理し、冷却後の試料長))/(熱処理前の試料長)×100
【0079】
本発明の有機/無機複合フィルムでは、少なくとも一方向の熱収縮率が1%以下であることが好ましい。より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。当該熱収縮率が1%以下であると、加工時あるいは使用時の温度変化による寸法変化や特性変化が抑制されるので好ましい。
【0080】
線熱膨張係数に関しては、50〜300℃の温度範囲で、50ppm/℃以下であることが好ましい。より好ましくは30ppm/℃以下であり、さらに好ましくは20ppm/℃以下である。また、高温でのフィルム処理に対応するためには、250〜300℃の温度範囲において線熱膨張係数が50ppm/℃以下であることが好ましく、30ppm/℃以下であることがより好ましく、20ppm/℃以下であることがさらに好ましい。
【0081】
本発明に係る有機/無機複合フィルムの熱収縮率や線熱膨張係数は、製造条件により調整し得る。例えば、金属アルコキシド化合物を加熱硬化する場合における処理温度が高ければ熱収縮率は低くなり、また、加熱処理時間が長ければ同様に低くなる。硬化条件として加熱に加えてUV照射やマイクロウェーブ照射を用いることで硬化度を高め、熱収縮率を低くすることもできる。また、多孔質PTFEそのものの熱収縮率が低ければ本発明フィルムの熱収縮率も低くなる。
【0082】
本発明の有機/無機複合フィルムを構成する多孔質PTFEは、耐候性にも優れる。よって、重合体として耐候性に優れるものを用いれば、本発明に係る有機/無機複合フィルムの耐候性をより一層高めることも可能である。耐候性に優れる金属アルコキシド化合物の重合体としては、例えば、ケイ素アルコキシド化合物の重合体を挙げることができる。
【0083】
本発明に係る有機/無機複合フィルムの表面は、ケン化処理、コロナ処理、火炎処理、グロー放電処理、UV処理などを施してもよい。また、アンカー層などを設けてもよい。
【0084】
本発明の複合フィルムは単層フィルムでも、積層フィルムでもよい。例えば、本発明に係る単層の有機/無機複合フィルムに、本発明に係る単層の有機/無機複合フィルム、またはその他の樹脂層や無機層を積層し、これら層が交互に配された積層フィルムとしてもよい。かかる積層フィルムは、ガスバリアフィルム、透明導電性フィルム、耐熱性透明フィルムなどとして利用することができる。
【0085】
これら各層の層数や厚さなどは、目的にあわせて調整することが可能である。上記樹脂層としては、例えばフッ素系樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコールなどからなるものが好ましい。また、無機層としても特に限定されないが、例えばSi、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ta等の1種以上を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物などを用いることができる。有機層および無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でもよいが、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法や、熱エネルギーや光エネルギーなどを利用した化学反応で製膜する塗布法、化学蒸着法などを適用することができる。
【0086】
本発明の複合フィルムの用途は特に限定されないが、十分な光学特性と極めて高い耐熱性や寸法安定性を有し、なおかつ可撓性に極めて優れることから、フレキシビリティが必要であったり、Roll to roll製法の適用が求められるデバイスなどの材料として有用である。例えば画像表示素子、光電変換素子、タッチパネル用部材、光拡散フィルム、照明用材料、帯電防止材料などに用いることができる。
【0087】
画像表示素子としては特に限定されないが、液晶表示素子、有機EL素子、無機EL素子、フィールドエミッションディスプレイ素子、プラズマディスプレイ素子、電子ペーパー素子などを意味する。例えば、有機EL素子は、透明な基板上に透明電極層と有機エレクトロ・ルミネッセンスからなる発光層と金属電極層とを順次積層し、発光層を封止板で封止した構造が一例として挙げられるが、この透明導電層を積層する透明基板に本発明の複合フィルムは好適に使用できる。
【0088】
光電変換素子としては、シリコン半導体系光電変換素子、化合物半導体系光電変換素子、色素増感型光電変換素子などがある。例えば、色素増感型光電変換素子としては、透明な基板上に透明導電層を積層し、さらにアナターゼ型酸化チタンの多孔質膜を積層し、この酸化チタン膜の表面にルテニウム錯体を光増感色素として付着させた色素担持酸化チタン電極と、透明導電層を積層した基板の表面に触媒量の白金もしくは導電性カーボン処理した対極の電極を重ねあわせ、その電極間に電解液を注入する構造を有するものが一例として挙げられる。また、シリコン半導体系光電変換素子としては、薄膜型のものがある。かかる薄膜型のシリコン半導体系光電変換素子は、例えば、透明基板の上に透明導電層、光電変換層、および裏面電極層が順次積層された構造を有する。以上のように、透明導電層を積層する透明基板として、本発明の複合フィルムは好適に使用できる。
【0089】
本発明の複合フィルムは、タッチパネル用部材としても利用できる。例えば、本発明の複合フィルムは、特開平5−127822号公報などに記載されたタッチパネルに応用することができる。より具体的には、透明なタッチパネルは、通常、厚さ10μm以下の非導電性スペーサーを介して、透明電極層が積層された2枚の透明基板が、その電極面が対向するように配置されている構造を有する。本発明の複合フィルムは、当該透明基板として好適に使用できる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0091】
実施例1〜4
5、50または100μmの厚みを有し、縦200mm×横200mmの4種類の多孔質PTFEフィルムを、ホウ素イオンおよびハロゲンイオンを有するシリカ系ゾルゲル反応溶液A(株式会社日興製,ヒートレスグラスGS−600−1)に含浸し、70℃で10分間予備乾燥して溶媒を留去し、さらに300℃で240分間加熱硬化することによって、有機/無機複合フィルムを得た。
【0092】
各フィルムの厚さを、最小目盛りが1μmであるダイヤルゲージにより測定した。得られた測定値と各多孔質PTFEフィルムの厚さの差から、多孔質PTFEフィルム上に形成されたシリカ単独層の厚みを算出した。結果を表1に示す。
【0093】
比較例1〜4
上記実施例1〜4のシリカ系ゾルゲル反応溶液Aを厚さ50μmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、UPILEX(登録商標)、50μm厚さ)上にコーティングし、70℃で10分間予備乾燥して溶媒を留去した後、ポリイミドフィルムから引き剥がし、300℃で240分間加熱硬化することによって、縦10mm×横20mmの4種類のポリシロキサンフィルムを得た。塗布量を調節することによって、当該フィルムの厚さを、20、50、70または100μmとした。
【0094】
試験例1 可撓性試験
上記実施例1〜4および比較例1〜4の各フィルムを、断面半径が5mm、1mmまたは0.5mmの円柱に巻き付け、破断の有無を観察することで可撓性を評価した。実施例1〜4の結果を表1に、比較例1〜4の結果を表2に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
上記結果のとおり、ポリシロキサンの単独フィルムは可撓性に劣り、小さく曲げることにより破断してしまった。一方、ホウ素イオンとハロゲンイオンを含むシリカ系ゾルゲル反応溶液Aを多孔質PTFEフィルムに含浸した上で熱硬化させた本発明フィルムは可撓性に優れ、小さく曲げても破断しないことが明らかにされた。
【0098】
実施例5〜10
5、20、40μmの厚みを有する縦200mm×横200mmの多孔質PTFEフィルムに対し、ホウ素イオンおよびハロゲンイオンを有するシリカ系ゾルゲル反応溶液A(株式会社日興製,ヒートレスグラスGS−600−1)を含浸し、70℃で10分間予備乾燥した。次いで、300℃で240分間加熱硬化することによって、計6種の有機/無機フィルムを得た。得られた複合フィルムの厚さを、最小目盛りが1μmであるダイヤルゲージにより測定した。得られた測定値と各多孔質PTFEフィルムの厚さの差から、多孔質PTFEフィルム上に形成されたポリシロキサン単独層の厚みを算出した。
【0099】
比較例5〜10
テトラエトキシシラン100重量部、エタノール133重量部および純水52重量部を混合した。当該混合物を80℃で24時間加熱還流することによって、テトラエトキシシランのシリカ系ゾルゲル反応溶液Bを調製した。5、20、40μmの厚みを有する縦200mm×横200mmの多孔質PTFEフィルムに対し、上記で得たシリカ系ゾルゲル反応溶液Bを含浸し、70℃10分間予備乾燥後、さらに300℃で120分間加熱硬化することによって計6種の有機/無機フィルムを得た。実施例5〜10と同様に厚みを測定した。
【0100】
試験例2 可撓性試験
上記実施例5〜10および比較例5〜10の各フィルムを、断面半径が5mmまたは2mmの円柱に巻き付け、クラックの有無を肉眼で観察することにより可撓性を評価した。結果を表3に示す。表3中、「○」はクラックが皆無である場合を示し、「×」は1以上のクラックが肉眼で観察された場合を示す。
【0101】
【表3】

【0102】
上記結果のとおり、多孔質PTFEフィルムにホウ素イオンとハロゲンイオンを含有しないシリカ系ゾルゲル反応溶液Bを含浸させて硬化した有機/無機複合フィルムの場合、屈曲させた場合にクラックが生じてしまう。一方、多孔質PTFEフィルムにホウ素イオンとハロゲンイオンが添加されたシリカ系ゾルゲル反応溶液Aを含浸させて硬化した有機/無機複合フィルムの場合、クラックは皆無であった。
【0103】
実施例11
シリカ系ゾルゲル反応溶液A(日興製,ヒートレスグラスGS−600−1)とシリカ微粒子(平均粒子径:10〜20nm,日産化学工業製,MeOHシリカゾル)を2:1の質量割合で混合し、シリカ系ゾルゲル反応溶液Cを得た。当該シリカ系ゾルゲル反応溶液Cを多孔質PTFEフィルム(厚み5μm,平均フィブリル径:100nm)に含浸した。当該多孔質PTFEフィルムを70℃で30分間加熱することにより乾燥し、さらに300℃で2時間加熱することにより硬化させ、有機/無機複合フィルムを取得した。
【0104】
当該有機/無機複合フィルムの厚さをダイヤルゲージにより測定したところ、25μmであった。
【0105】
また、得られたフィルムを縦5cm×横5cmに切り出し、ヘイズメーター(日本電色工業製,NDH2000)の試料台に挟み込み、JIS K7361−1に準拠して全光線透過率を測定し、また、JIS K7105に準拠して平行線透過率を測定した。当該有機/無機複合フィルムの全光線透過率は93.7%、平行線透過率は91.9%であった。
【0106】
実施例12
シリカ系ゾルゲル反応溶液A(日興製,ヒートレスグラスGS−600−1)とシリカ微粒子(平均粒子径:10〜20nm,日産化学工業製,MeOHシリカゾル)を1.5:1の質量割合で混合し、シリカ系ゾルゲル反応溶液Dを得た。当該シリカ系ゾルゲル反応溶液Dを多孔質PTFEフィルム(厚み5μm,平均フィブリル径:100nm)に含浸した。当該多孔質PTFEフィルムを70℃で30分間加熱することにより乾燥し、さらに300℃で2時間加熱することにより硬化させ、有機/無機複合フィルムを取得した。
【0107】
当該有機/無機複合フィルムの厚さをダイヤルゲージにより測定したところ、25μmであった。また、当該有機/無機複合フィルムの全光線透過率は93.9%、平行線透過率が92.2%であった。
【0108】
実施例13
シリカ系ゾルゲル反応溶液A(日興製,ヒートレスグラスGS−600−1)とシリカ微粒子(平均粒子径:10〜20nm、触媒化成工業製OSCAL−1432M)を1:1の質量の割合で混合し、シリカ系ゾルゲル反応溶液Eを得た。当該シリカ系ゾルゲル反応溶液Eを多孔質PTFEフィルム(厚み5μm,平均フィブリル径:100nm)に含浸した。当該多孔質PTFEフィルムを70℃で30分間加熱することにより乾燥し、さらに300℃で2時間加熱することにより硬化させ、有機/無機複合フィルムを取得した。
【0109】
当該有機/無機複合フィルムの厚さをダイヤルゲージにより測定したところ、25μmであった。また、当該有機/無機複合フィルムの全光線透過率は94.5%、平行線透過率が91.7%であった。
【0110】
実施例14
多孔質PTFEフィルム(厚み5μm,平均フィブリル径:100nm)中に、シリカ系ゾルゲル反応溶液A(日興製,ヒートレスグラスGS−600−1)を含浸した。当該多孔質PTFEフィルムを70℃で30分間加熱することにより乾燥し、さらに300℃で2時間加熱することにより硬化させ、有機/無機複合フィルムを取得した。
【0111】
当該有機/無機複合フィルムの厚さをダイヤルゲージにより測定したところ、25μmであった。また、当該有機/無機複合フィルムの全光線透過率は93.6%、平行線透過率が92.8%であった。
【0112】
比較例11
多孔質PTFEフィルム(厚み5μm,平均フィブリル径:100nm)中に、比較例5〜10で調製したシリカ系ゾルゲル反応溶液Bを含浸した。当該多孔質PTFEフィルムを70℃で30分間加熱することにより乾燥し、さらに300℃で2時間加熱することにより硬化させ、有機/無機複合フィルムを取得した。
【0113】
当該有機/無機複合フィルムの厚さをダイヤルゲージにより測定したところ、6μmであった。また、当該有機/無機複合フィルムの全光線透過率は95.2%、平行線透過率が87.7%であった。
【0114】
実施例15
シリカ系ゾルゲル反応溶液A(日興製,ヒートレスグラスGS−600−1)とシリカ微粒子(平均粒子径:10〜20nm,日産化学工業製,MeOHシリカゾル)を2:1の質量割合で混合し、シリカゾルを得た。当該シリカゾルを多孔質PTFEフィルム(厚み50μm)に含浸した。当該多孔質PTFEフィルムを70℃で30分間加熱することにより乾燥し、さらに300℃で2時間加熱することにより硬化させ、有機/無機複合フィルムを取得した。
【0115】
当該有機/無機複合フィルムの厚さをダイヤルゲージにより測定したところ、50μmであった。また、当該有機/無機複合フィルムの全光線透過率は83.1%であった。
【0116】
実施例16
シリカ系ゾルゲル反応溶液A(日興製,ヒートレスグラスGS−600−1)とシリカ微粒子(平均粒子径:10〜20nm,触媒化成工業製,OSCAL−1432M)を1:1の質量割合で混合し、シリカゾルを得た。当該シリカゾルを多孔質PTFEフィルム(厚み50μm)に含浸した。当該多孔質PTFEフィルムを70℃で30分間加熱することにより乾燥し、さらに300℃で2時間加熱することにより硬化させ、有機/無機複合フィルムを取得した。
【0117】
当該有機/無機複合フィルムの厚さをダイヤルゲージにより測定したところ、50μmであった。また、当該有機/無機複合フィルムの全光線透過率は81.3%であった。
【0118】
実施例17
多孔質PTFEフィルム(厚み50μm)中に、シリカ系ゾルゲル反応溶液A(日興製,ヒートレスグラスGS−600−1)を含浸した。当該多孔質PTFEフィルムを70℃で30分間加熱することにより乾燥し、さらに300℃で2時間加熱することにより硬化させ、有機/無機複合フィルムを取得した。
【0119】
当該有機/無機複合フィルムの厚さをダイヤルゲージにより測定したところ、50μmであった。また、当該有機/無機複合フィルムの全光線透過率は88.9%であった。
【0120】
比較例12
比較例として、市販のPENフィルム(厚み:100μm,帝人製,テオネックス(登録商標)Q65F)を準備した。当該フィルムの全光線透過率は88.2%、平行線透過率が87.5%であった。
【0121】
比較例13
比較例として、市販のPESフィルム(厚み:50μm,住友ベークライト製,スミライト(登録商標)FS−1300)を準備した。当該フィルムの全光線透過率は87.4%、平行線透過率が87.1%であった。
【0122】
比較例14
比較例として、市販のPIフィルム(厚み:100μm,三菱瓦斯化学製,ネオプリム(登録商標)L−3430)を準備した。当該フィルムの全光線透過率は89.0%、平行線透過率が88.7%であった。
【0123】
試験例3 線熱膨張係数の測定
実施例11〜17および比較例11〜14のフィルムから幅4.5mm×長さ25mmのサンプルを切り出し、TMA(セイコー電子工業製,SSC−5000)を用いて、線熱膨張係数を測定した。チャック間距離は10mm、昇温速度は10℃/min、荷重は5g、温度範囲は50〜300℃または250〜300℃に設定した。また、測定はMD方向とTD方向の両方で行い、それらの平均値をもって線熱膨張係数とした。結果を表4に示す。
【0124】
【表4】

【0125】
表4のとおり、本発明に係る有機/無機複合フィルムにおいて、ホウ素イオンとハロゲンイオンの触媒作用によりシリカ系ゾルゲル反応溶液から得られるポリシロキサンに加え、酸化ケイ素微粒子を別途加えることにより、線熱膨張係数を低減できることが分かった。よって、本発明に係る有機/無機複合フィルムに酸化ケイ素微粒子を添加したものは、特に回路基板材料として有用である。
【0126】
なお、PENフィルム(比較例12)とPESフィルム(比較例13)は、加熱により溶融断裂してしまい、線熱膨張係数の測定が不可能であった。
【0127】
試験例4 耐候性の評価
上記実施例14で得た有機/無機複合フィルム、比較例12〜14の従来の樹脂フィルムのイエローインデックス(YI)と全光線透過率を、それぞれ分光式色差計(日本電色工業社製,SE2000)とヘイズメーター(日本電色工業社製,NDH2000)により測定した。次いで、各フィルムに対して、UV照射装置(日本UVマシーン製、UVC−4000AM,光源:メタルハライドランプ,照度条件:200mV/cm2)により紫外線を10分間照射した後、同様にイエローインデックスと全光線透過率を測定した。結果を表5に示す。
【0128】
【表5】

【0129】
PENフィルムとPESフィルムは、従来、太陽電池の透明基板として利用・検討されているものである。しかし上記結果のとおり、これらフィルムに紫外線を照射すると、着色や光線透過率の減少が見られた。即ち、これらフィルムを透明基板とする太陽電池は、経時的にエネルギー効率が低下すると考えられる。
【0130】
一方、本発明の有機/無機複合フィルムは、紫外線照射前後でイエローインデックスや全光線透過率にほとんど変化がない。よって、本発明の有機/無機複合フィルムの、従来フィルムに対する耐候性における優位性が実証された。
【0131】
実施例18
多孔質PTFEフィルム(厚み50μm)中に、シリカ系ゾルゲル反応溶液A(日興製,ヒートレスグラスGS−600−1)を含浸した。当該多孔質PTFEフィルムを70℃で30分間加熱することにより乾燥し、さらに300℃で2時間加熱することにより硬化させ、有機/無機複合フィルムを取得した。
【0132】
当該有機/無機複合フィルムの厚さをダイヤルゲージにより測定したところ、50μmであった。
【0133】
試験例5 熱収縮率の測定
実施例18と比較例14の各フィルムから幅200mm×長さ200mmのサンプルを切り出し、150mm×150mmの正方形の頂点となる点にマークをつけた上でオーブンに入れ、無加重の状態で300℃で1時間加熱処理を行った。室温まで冷却した後、その熱処理前後の寸法変化を、0.01mmレベルまで測定可能なノギスで測定し、下記式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=[(熱処理前の試料長)−(加熱処理後の試料長)]/(熱処理前の試料長)×100
【0134】
測定はMD方向とTD方向の両方で行い、それらの平均値をもって熱収縮率とした。結果を表6に示す。
【0135】
【表6】

【0136】
表6に示す結果のとおり、本発明に係る有機/無機複合フィルムは、従来フィルムに比べて熱収縮率が低い。よって、本発明に係る有機/無機複合フィルムは高温の熱プロセスを受けても寸法安定性(形状維持)に優れることから、精密な回路基板の材料として用いれば信頼性の高い回路基板が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機/無機複合フィルムを製造するための方法であって、
多孔質PTFEフィルムに、ホウ素イオン、ハロゲンイオンおよび金属アルコキシド化合物を含む溶液を含浸させる工程;および
上記溶液を含浸させた多孔質PTFEフィルムを硬化する工程;
を含むことを特徴とする有機/無機複合フィルムの製造方法。
【請求項2】
上記溶液を含浸させた後、さらに当該溶液を塗布する工程を含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記溶液へ、さらに金属酸化物微粒子を添加する請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記金属アルコキシド化合物として、ケイ素アルコキシド化合物を用いる請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
多孔質PTFEフィルム、および金属アルコキシド化合物を硬化することにより得られる重合体を含み;
上記多孔質PTFEフィルムの空隙は上記重合体により充填されており;且つ
上記重合体がホウ素元素およびハロゲン元素を含む;
ことを特徴とする有機/無機複合フィルム。
【請求項6】
さらに金属酸化物微粒子を含む請求項5に記載の有機/無機複合フィルム。
【請求項7】
金属酸化物微粒子が二酸化ケイ素からなるものであり、且つ50℃以上、300℃以下における線熱膨張係数が50ppm/℃以下である請求項6に記載の有機/無機複合フィルム。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の有機/無機複合フィルムを含む画像表示素子。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれかに記載の有機/無機複合フィルムを含む光電変換素子。
【請求項10】
請求項5〜7のいずれかに記載の有機/無機複合フィルムからなるフィルムを含むタッチパネル用部材。

【公開番号】特開2010−31143(P2010−31143A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194660(P2008−194660)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】