説明

木ガスによる木材生長応力除去方法およびその装置

【目的】本発明は、木材等を燃料として、この燃料から発生する木ガス内にスギ中目材等の被処理木材を封入して、木材の生長応力を完全に除去し、干割れや加熱による材固有の色彩や光沢を失うことなく、化粧価値を重視する在来軸組構法の住宅部材としての利用価値を高めようというものである。
【構成】本発明では、木ガスの中に被処理木材を所定時間封入することによって、すなわち、生長応力の除去に必要な木ガスによる煙を処理室内に充満させるために木質燃料2を燃焼させ、発生する木ガスは、処理室27の壁面8に設けられた風穴20に白金網又はステンレス網21をくぐって処理室27に充満するようにして、木材の生長応力を除去せしめる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、原木を木ガス中に封入して、木材の成長応力を解除し、乾燥を早める木材生長応力除去方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】木材を住宅部材その他の材料として使用するためには、使用される木材が、長年に亘って寸法的に狂いを生じることなく組込まれてなければならない。ところが、温度差や湿度差の激しい環境の中にあって、このような要求を満たすために、木材は、住宅や木製品に使用される前に十分に乾燥させて、これら木材の有する生長応力を止めてから使用しなければならないとされていた。
【0003】特に、戦後植林されてきた人工林が間もなく成熟期を迎えようとして、年々芯持材の生産が増加しているが、特にスギ中目材の新用途開発が国策として打ちだされており、このような芯持材について、その生長応力を除去し、厄介もの扱いされている木材の利用促進が急務となっている。
【0004】従来、木材の生長応力の除去には、木材乾燥の工程が必須であり、このためには、加熱して乾燥させることや、温水中に浸して乾燥の実を上げること等が行われている。
【0005】
【発明が解決すべき問題点】ところが、木材の乾燥においても、自然乾燥では時間が掛りすぎるし、温水等を使用した人工的な乾燥では、木材が必ず持っている生長応力のため、特に国産材のように芯持材においては乾燥の過程で干割れや反りが生じ用途が限定されたり、歩止りを大幅に低下させる欠点がある。
【0006】
【問題点を解決すべき手段】本発明は、木材等を燃料として、この燃料から発生する木ガス内にスギ中目材等の被処理木材を封入して、木材の生長応力を完全に除去し、干割れや加熱による材固有の色彩や光沢を失うことなく、化粧価値を重視する在来軸組構法の住宅部材としての利用価値を高めようというものである。
【0007】本発明では、木ガスの中に被処理木材を所定時間封入することによって、木材の生長応力を除去しようとするものである。そして、このために、本発明に係る木材の生長応力除去装置にあっては、生長応力の除去に必要な木ガスによる煙を処理室内に充満させるために木質燃料2を燃焼させ、発生する木ガスは、処理室27の壁面8に設けられた風穴20に白金網又はステンレス網21をくぐって処理室27に充満するようになっている。
【0008】
【作用】木質燃料から発生する、いわゆる、木ガス中に、スギ中目材等を封入して、木材の生長応力を完全に除去する。木ガス中にスギ中目材等を封入すれば、何ゆえに、木材の生長応力を完全に除去できるのか、詳しい知見は明らかではないが、ともかくも、木ガス中にスギ中目材等を所定時間封入しておくことにより、木材のもつ生長応力を完全に除去できるのである。
【0009】
【実施例】本発明に係る木ガスによる木材生長応力除去方法およびその装置の一実施例を図面にもとづいて説明する。図1は、本発明の木ガスによる木材生長応力除去装置の側断面図であり、図1中、符号1は、空気吸入口、2は、木質燃料、3は燃料投入口、4は、ロストル、5は、高密度溶岩等の材質からなる遠赤外線増殖用セラミックス材、6は、木ガスを通す風道、7は、全体を風雨から守る屋根、8は、燃焼室側処理室27の壁面、9は、炉壁体を構成するコンクリート製のボックスカルバート、10は、処理室27内の熱を外に逃がさないようにするガラスウール断熱材、11は、処理室27内の熱を遠赤外線に効率よく変換するセラミックスボード、12は、木材の間に木ガスの流通をよくするために被処理木材16間に入れられる棧、13は、処理室27内に木ガスを引き込む換気扇、14は、前記換気扇13の回転により、前記処理室27の余分の木ガスを外部に排出する風道管、15は、被処理木材16を搬入、搬出する後部扉、16は、被処理木材である。
【0010】また、17は、トロッコ台に設けられ、被処理木材16の荷崩れを防ぐ方立て、18は、同トロッコ用レール、19は、同トロッコ台である。さらに、20は、前記燃焼室側処理室側面に開けられた木ガスを通す風穴、21は、燃焼の火のこが、前記処理室27内に入り込まないように設けられた白金網またはステンレス網である。また、22は生長応力除去促進室であり、内部の高密度溶岩等の木ガス処理促進材23により、室内温度を保持せしめるように構成される。24は、燃焼用ロストルであり、25は、耐火レンガ、27は、処理室、28は、燃焼室である。
【0011】なお、本実施例においては、木ガスの火炎が、上記促進材や白金網等を通過させることにより、木ガスの火のこをろ過して、加熱処理木材の着火を未然に防ぐ働きをしている。このために、処理室27の壁面8に設けた風穴は下部ほど大きくしてあり、処理室内の木ガスの濃度が、上部と下部が同じようになるように工夫したものであり、形や大きさ、位置、数等は特定したものではない。
【0012】次に、この装置を用いて木ガスによる木材生長応力除去方法を説明する。前記処理室27の後方部扉15を開けてトロッコ19に棧積みした木材16を収納して扉を閉め、換気扇13を回転させながら、木質燃料に着火し、木ガスを発生させる。該木ガスは、風道6、処理室27の風穴20を通り抜けて、処理室にたまり、木材を燻煙する。そして、炉内に差し込んだガスセンサーを見ながら木質燃料の補給を空気吸入口1の開閉を行って、処理室の木ガスの濃度を所望の範囲に調節を行う。
【0013】本実施例の処理装置によれば、密度の高い溶岩等23に蓄熱させ、木ガスによる処理を促進させることとしたので、木ガスによる燻煙むらを防ぎ、夜間における燃料の補給をしなくても、処理室内の木ガス濃度の低下を最小限に留めることができ、間欠運転が可能になった。したがって、夕方退社する際に丸太の切れ端等の火持ちのよい燃料を補給し、火が消えない程度に空気吸入口の開きを小さくして退社する。空気吸入口からは少量の空気しか流入しないので、前記木質燃料は小さくくすぶり続け、翌朝出社時まで十分木ガスを発生させることができる。
【0014】出社時には、木質燃料を補給すると共に空気の流入量を多くすると、処理室内は直ちに多量の木ガスで充満され、日中は2時間おき位にセンサーのガス濃度を確認する程度ですむ。このように、処理室内は、木ガスで充満されると共に、処理室内は、60〜80℃前後に上昇、加工を繰り返し、このくりかえしを2〜3日間行ってから、空気口を密閉し、約2日間位かけて徐冷して木材の内部温度が常温に近づいた時に、室外に取り出し、必要に応じて小割り製材を行い、天然乾燥又は人工乾燥機に入れて乾燥させる。
【0015】
【発明の効果】現在は外材率が70%以上を占めているが、地球環境問題から、外材の輸入も永続性が薄れ、当分の間は低質で小径芯持材の国産材を活用するほかないが、それらの木材から生長応力を簡単にしかも低コストで除去できるようになったので、木材資源の有効利用と、また、付加価値により木材産業の活性化ができる。
【0016】本発明により、ガス発生源となる木質燃料は林地内の残材及び製材工場の廃材を用いるので殆ど燃費がかからず、炉壁体は耐熱用鉄筋コンクリート製のボックスカルバートを連結して設置する簡易なものであり、また、熱焼室及び木ガス処理促進材又はそれに類似の高密度の溶岩等は安価で容易に入手できるため、低価格で各地に設置ができ、自動制御装置を用いなくても簡単に操作ができるようになり、低質材を低コストで生長応力を除去することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、木材生長応力除去装置の側断面図
【図2】図2は、同正面図
【図3】図3は、図1の側断面中のAーA線縦断面図
【図4】図4は、木材生長応力除去装置の後方部開扉図
【図5】図5は、間欠運転による木材生長応力除去装置の温度変化を示す図
【符号の説明】
1・・・空気吸入口
2・・・木質燃料
3・・・燃料投入口
4・・・ロストル
5・・・遠赤外線増殖用セラミック等
6・・・風道
7・・・屋根
8・・・加熱室の壁面
9・・・ボックスカルバート
10・・・ガラスウール断熱材
11・・・セラミックスボード
12・・・棧
13・・・換気扇
14・・・風導管
15・・・後部扉
16・・・木材
17・・・方立て
18・・・トロッコ用レール
19・・・トロッコ台
20・・・風穴
21・・・白金網(又はステンレス網)
22・・・生長応力除去促進室
23・・・木ガス処理促進材
24・・・燃焼用ロストル
25・・・耐火レンガ
26・・・扉
27・・・処理室
28・・・燃焼室

【特許請求の範囲】
【請求項1】被処理木材を木質燃料から発生する木ガス中に一定期間封入して木材の潜在的に有する生長応力を除去する木ガスによる木材生長応力除去方法。
【請求項2】前記木ガスによる木材生長応力除去方法は、木ガスの発生を間欠的にせしめて処理することを特徴とする請求項1記載の木ガスによる木材生長応力除去方法。
【請求項3】空気吸入口を備え、木質燃料を投入し、燃焼させる燃焼用ロストルを有する燃焼室と、該燃焼室と風道によって連結され、内部の高密度溶岩等の木ガス処理促進材により、室内温度を保持せしめ、木材の生長応力を除去促進する生長応力除去促進室と、内部の木ガス濃度を調節する換気扇を備える一方、内部の間欠的温度上昇を保持するガラスウール断熱材およびセラミックスボードを壁面に備えた処理室とからなり、該処理室と前記生長応力除去促進室との間には、前記燃焼室より発生する木ガスを通す一方、燃焼の火のこが前記処理室内に入り込まないように設けられる白金網またはステンレス網で覆われた風穴を有し、前記換気扇の回転により、前記処理室の木ガスを外部に排出する風道管とを有することを特徴とする木ガスによる木材生長応力除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平7−137006
【公開日】平成7年(1995)5月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−308724
【出願日】平成5年(1993)11月15日
【出願人】(393030338)中央木材開発株式会社 (1)