説明

木材処理方法

【課題】所要の乾燥状態になる自然乾燥の処理期間を短縮することができる木材処理方法を提供する。
【解決手段】この木材処理方法は、樹木を伐採した丸太の状態の木材Lを水中に浸すための池Pと自然乾燥を行うための場所を、伐採地の近くに予め用意しておき、木材Lを所定期間水中に浸し、その後に、受注状況に基づいて適宜それらの一部を地上に上げて地面上で所定期間自然乾燥する。そうして、次の伐採時期に、前年の残りの木材Lが水中にあるのならば、それを考慮し、無駄な伐採をしないように必要な本数だけを伐採する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然乾燥方式による木材処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材は、乾燥が不十分な状態で建造物等に使用された場合、時間の経過とともに変形したり収縮したりする可能性が高い。従って、所定の大きさに製材される前に十分に木材を乾燥するのが一般的である。木材を十分に乾燥させる木材処理方法の方式として、従来より、乾燥設備を設けた建物の中で熱風、蒸気、遠赤外線、高周波、燻煙などで加熱して短期間で乾燥する人工乾燥方式(例えば、特許文献1)や、屋外に長期間放置する自然乾燥方式(例えば、特許文献2)が行われている。自然乾燥方式は、人工乾燥方式のような乾燥設備や燃料を必要としないこと、乾燥後の木材の品質が良好であること、等の利点がある。
【0003】
【特許文献1】特開平11−237179号公報
【特許文献2】特開2004−25822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自然乾燥方式による木材処理方法は、所要の乾燥状態になるのに長期間を必要とするので、生産性に劣るという不利な点があり、多くの場合は、人工乾燥方式による木材処理方法が採用される傾向にある。
【0005】
本発明は係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、所要の乾燥状態になる自然乾燥の処理期間を短縮することができる木材処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の木材処理方法は、樹木を伐採した丸太の状態の木材を所定期間水中に浸し、その後に地面上で所定期間自然乾燥することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の木材処理方法は、請求項1に記載の木材処理方法において、木材を水中に浸す期間と地面上で自然乾燥する期間の合計を、長くとも1年間以内とすることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の木材処理方法は、請求項1又は2に記載の木材処理方法において、木材を所定期間水中に浸すための池と自然乾燥を行うための場所を、伐採地の近くに予め用意しておくことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の木材処理方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の木材処理方法において、地面上で自然乾燥する前に、加熱処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の木材処理方法によれば、木材を所定期間水中に浸し、その後に地面上で所定期間自然乾燥するようにしたので、所要の乾燥状態になる自然乾燥の処理期間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る木材処理方法における木材Lを水中に浸す状態を示す概略図である。スギ、ヒノキ、アカマツなどの樹木を、適切な時節(例えば、冬前)に伐採し、その伐採した丸太の状態の木材Lを、予め用意した水を溜めた貯木場である池Pに入れ、所定期間(例えば、2〜5ヶ月程度)水中に浸す。この場合、木材Lは水面に浮かんだり水底に沈んだりした状態にある。この状態で所定期間が経過した後、木材Lは地面上において桟積み等により放置されて所定期間自然乾燥される。
【0012】
図2は、皮付き丸太の状態の338本のスギの木材Lを、池Pにおいて4ヶ月間水中に浸した場合の重量増加を測定した実験の結果を示す棒グラフである。横軸は、重量変化率(%)であり、これは下記の計算式で得られる。
重量変化率=(水中処理後の重量−伐採後の重量)÷伐採後の重量×100
縦軸は、その重量変化率に該当するものの本数である。図2から明らかなように、重量変化率が16%近傍を中心に分布し、かなりの量の水分が吸収されたことが分かる。
【0013】
図3(a)は、スギの木材Lを、10月から110日間水槽において水中に浸し、その後、地面上で187日間自然乾燥した実験の結果を示すものである。図3(a)において、横軸は木材Lを水中に浸してからの日数であり、縦軸は木材Lの重量の変化率(%)である。なお、木材Lを水中に浸している状態が終わってから自然乾燥を開始するまでに準備期間を挟んでいる。図中、Aのデータは、末口径20cmで長さ70cmの皮付き丸太についてのものであり、Bのデータは、末口径20cmで長さ70cmの皮無し丸太についてのものである。木材Lを水中に浸している期間では、木材Lの重量は増加し、最後にはいずれの木材Lも重量増加率は16%を超えている。地面上での自然乾燥期間では、水分が抜けて木材Lの重量は減少する。
【0014】
図3(b)は、図3(a)における自然乾燥期間のデータから木材Lの含水率(%)を計算したものである。含水率は、自然乾燥期間の最後までには、いずれの木材Lも20%以下になっている。通常の自然乾燥、すなわち木材Lを所定期間水中に浸さずに行う自然乾燥では、この含水率になるためには1年以上を要する。これは、水中に浸さない木材Lの心材部は樹液が水分として多く残存しているのに対し、水中に浸す状態を経ることにより、心材部に真水が浸透して心材部から樹液が滲み出るようになり、その結果、木材Lが乾燥し易くなったと考えられる。本願発明者は、実際に、樹液が滲み出たのを確認した。
【0015】
このように、木材Lを所定期間水中に浸し、その後に地面上で所定期間自然乾燥するようにすると、所要の乾燥状態になる自然乾燥の処理期間を短縮でき、処理期間を1年間よりも短くすることができる。また、木材を水中に浸す期間と地面上で自然乾燥する期間の合計を、長くとも1年間以内とすると、伐採後、多くの木材Lを水中に貯え、受注状況に基づいて適宜それらの一部を地上に上げて自然乾燥させ、次の伐採時期に、前年の残りの木材Lが水中にあるのならば、それを考慮し、無駄な伐採をしないように必要な本数だけを伐採することが可能になる。なお、木材を水中に浸す期間は、図3(a)の実験では110日であるが、心材部に真水を十分に浸透させることから、少なくとも2ヶ月程度有ればよいと考えられる。また、木材Lを水中に浸す期間を長くしても、自然乾燥期間や木材Lの品質には影響はない。
【0016】
木材Lを所定期間水中に浸すための池Pと自然乾燥を行うための場所は、伐採地の近くに予め用意しておくことが望ましい。こうすることにより、人工乾燥方式による木材処理方法のように乾燥設備を設けた建物に未乾燥の木材Lを運搬する必要もなく、自然乾燥が完了した木材Lを必要とされるところに必要分だけ搬出すればよい。
【0017】
次に、本発明の第2の実施形態に係る木材処理方法を説明する。この木材処理方法は、本発明の第1の実施形態に加えて、木材を所定期間水中に浸した後で、地面上で所定期間自然乾燥する前に、加熱処理を行うものである。この加熱処理は、木材Lをリグニン軟化温度(例えば、80℃程度)に短時間(例えば、10〜24時間程度)加熱することにより、木材Lに含まれるリグニンを軟化し、リグニンが製材後に割れて木材Lの割れや反りを引き起こすことを防止するためのものである。
【0018】
ここで用いる加熱処理装置は、人工乾燥装置と異なり短時間加熱するものなので、簡易なものでよく、伐採地の近くに容易に設けることができる。例えば、加熱処理室となる40フィートコンテナを大型トラックで運び込み、その近くに焼却炉を設け、加熱処理室と焼却炉の間に熱伝達用のダクトを設ければよい。加熱方法は、熱風、蒸気、燻煙などを用いればよい。燃料費は多くを必要とせず、木の皮やチップを燃料とすることもできる。
【0019】
以上、本発明の実施形態に係る木材処理方法について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、水中に浸す木材は、多くの場合は、皮付き丸太であるが、皮無し丸太にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る木材処理方法における木材を水中に浸す状態を示す概略図である。
【図2】同上の木材処理方法の1つの実験結果図である。
【図3】同上の木材処理方法のもう1つの実験結果図である。
【符号の説明】
【0021】
L 木材
P 池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木を伐採した丸太の状態の木材を所定期間水中に浸し、その後に地面上で所定期間自然乾燥することを特徴とする木材処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の木材処理方法において、
木材を水中に浸す期間と地面上で自然乾燥する期間の合計を、長くとも1年間以内とすることを特徴とする木材処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の木材処理方法において、
木材を所定期間水中に浸すための池と自然乾燥を行うための場所を、伐採地の近くに予め用意しておくことを特徴とする木材処理方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の木材処理方法において、
地面上で自然乾燥する前に、加熱処理を行うことを特徴とする木材処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−83096(P2010−83096A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257263(P2008−257263)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(508213045)
【Fターム(参考)】