説明

木材収穫管理システム

【課題】急傾斜地や作業スペースの限られた森林で効率のよい林業経営が行える木材収穫管理システムを提供する。
【解決手段】無線による作業指示によって作動する自走式無人樹木伐採運搬機1と、それに作業指示を送信するコントローラ50と、自走式無人樹木伐採運搬機1によって伐採・収穫した木材の収穫情報を管理する木材情報管理センター70とを備える木材収穫管理システムであって、コントローラ50が、自走式無人樹木伐採運搬機1に作業指示を送信するとともに、収穫情報を木材情報管理センター70に送信するコントローラ送信部52を備え、木材情報管理センター70が、コントローラ送信部52から送信された木材の収穫情報を受信するセンター受信部72と、受信した収穫情報を格納して管理する情報管理部71とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線による作業指示によって作動する自走式無人樹木伐採運搬機と、その自走式無人樹木伐採運搬機に作業指示を送信するコントローラと、自走式無人樹木伐採運搬機によって伐採・収穫した木材の収穫情報を管理する木材情報管理センターとを備える木材収穫管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
森林にて樹木を伐採して木材とし、その木材を市場に搬出するまでの間、一元的な管理をする方法が知られている(たとえば特許文献1)。この技術によると、作業者が林業機械に乗車して、伐倒・枝打ち・玉切り作業を行った後、林業機械に搭載されたコンピュータより木材管理センターに収穫した木材の収穫情報が送信されて管理されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−522591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この特許文献1で開示されている技術では、タイヤ走行のクレーンをベース車両としてクレーンの先端にハーベスタを取り付けた林業機械を用いるものであった。すなわち、この文献では、緩やかな傾斜で広大なスペースによる森林経営を行う場合が想定されており、急傾斜地にある森林、樹間のつまった森林、あるいは作業スペースの限られた森林には適用することが困難であった。このため、これらの森林では、依然として人力による樹木の収穫作業に頼らざるを得ないという状況にある。加えて、人力にて収穫した木材の情報をどのように一元管理するかという点も解決すべき重要な課題である。
そこで、この発明の目的は、急傾斜地や作業スペースの限られた森林で効率のよい林業経営が行える木材収穫管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、無線による作業指示によって作動する自走式無人樹木伐採運搬機と、該自走式無人樹木伐採運搬機に作業指示を送信するコントローラと、前記自走式無人樹木伐採運搬機によって伐採・収穫した木材の収穫情報を管理する木材情報管理センターとを備える木材収穫管理システムであって、
前記自走式無人樹木伐採運搬機が、樹木を把持する把持部と、前記把持した樹木を長手方向に送る送出部と、前記送り出された樹木を所望の位置で切断する切断部と、前記切断した樹木を積載して運搬する運搬部とを備え、
前記コントローラが、前記自走式無人樹木伐採運搬機に作業指示を送信するとともに、前記木材情報管理センターに前記収穫情報を送信するコントローラ送信部を備え、
前記木材情報管理センターが、前記コントローラ送信部から送信された前記木材の収穫情報を受信するセンター受信部と、受信した前記収穫情報を格納して管理する情報管理部とを備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の木材収穫管理システムにおいて、前記木材情報管理センターがセンター送信部を備える一方、前記コントローラがコントローラ受信部を備える木材収穫管理システムであって、
前記木材情報管理センターが伐採する樹木の伐採指示を作成して前記センター送信部を介して前記伐採指示を送信し、前記コントローラ受信部が前記伐採指示を受信することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の木材収穫管理システムにおいて、前記コントローラと前記木材情報管理センターとの間の通信が人工衛星を介して行われる木材収穫管理システムであって、
前記自走式無人樹木伐採運搬機が、該自走式無人樹木伐採運搬機の地理的位置を前記人工衛星を用いて特定する位置決定部を備え、該位置決定部にて特定した前記自走式無人樹木伐採運搬機の地理的位置を前記木材情報管理センターに送信する一方、
前記木材情報管理センターが、収穫前の樹木の地理的分布情報を格納して管理するとともに、受信した前記自走式無人樹木伐採運搬機の地理的位置と前記収穫前の樹木の地理的分布情報とに基づいて前記伐採指示を作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、無線による作業指示によって作動する自走式無人樹木伐採運搬機と、その自走式無人樹木伐採運搬機に作業指示を送信するコントローラと、自走式無人樹木伐採運搬機によって伐採・収穫した木材の収穫情報を管理する木材情報管理センターとを備える木材収穫管理システムであって、自走式無人樹木伐採運搬機が、樹木を把持する把持部と、把持した樹木を長手方向に送る送出部と、送り出された樹木を所望の位置で切断する切断部と、切断した樹木を積載して運搬する運搬部とを備え、コントローラが、自走式無人樹木伐採運搬機に作業指示を送信するとともに、木材情報管理センターに収穫情報を送信するコントローラ送信部を備え、木材情報管理センターが、コントローラ送信部から送信された木材の収穫情報を受信するセンター受信部と、受信した収穫情報を格納して管理する情報管理部とを備える。したがって、樹木伐採機が無人であるので、乗用の樹木伐採機に比べて車両を小型化・軽量化することができる。
【0009】
これによって、これまで、転倒の危険性から乗用の大型作業車両の進入が困難であった急傾斜地の森林や、作業スペースが確保できないため作業車両の進入が困難であった森林など、人力による樹木の収穫作業に頼ってきた箇所でも機械化による伐採作業を行うことが可能となり、樹木伐採作業を効率的に行うことができるようになる。さらに、樹木伐採機が運搬部を備えるので、伐採した樹木を木材としてそのまま積載して搬出することができ、効率性の高い伐採・運搬作業が行える。加えて、従来、樹木伐採機と、木材運搬車両とを別々に用意する必要があり、両者の間の受け渡し作業を行うスペースが必要であったが、この発明の自走式無人樹木伐採運搬機は両者の機能を兼ね備えているので、木材の受け渡しを行うスペースを必要としない。このため、作業スペースの限られた森林においていっそう効率的な作業をすることができる。
【0010】
さらに、収穫した木材の情報である収穫情報を木材情報管理センターに無線送信して管理するので、効率的な情報管理を行うことができる。以上より、急傾斜地や作業スペースの限られた森林で効率のよい林業経営が行える木材収穫管理システムを提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、木材情報管理センターがセンター送信部を備える一方、コントローラがコントローラ受信部を備える木材収穫管理システムであって、木材情報管理センターが伐採する樹木の伐採指示を作成してセンター送信部を介して伐採指示を送信し、コントローラ受信部が伐採指示を受信するので、木材情報管理センターからコントローラを操作する作業者に伐採する樹木をリアルタイムで指示することができ、効率的な木材の収穫・管理作業を行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、コントローラと木材情報管理センターとの間の通信が人工衛星を介して行われる木材収穫管理システムであって、自走式無人樹木伐採運搬機が、その自走式無人樹木伐採運搬機の地理的位置を人工衛星を用いて特定する位置決定部を備え、その位置決定部にて特定した自走式無人樹木伐採運搬機の地理的位置を木材情報管理センターに送信する一方、木材情報管理センターが、収穫前の樹木の地理的分布情報を格納して管理するとともに、受信した自走式無人樹木伐採運搬機の地理的位置と収穫前の樹木の地理的分布情報とに基づいて伐採指示を作成するので、木材情報管理センターで、収穫後の木材の管理に加えて、収穫前の樹木の管理も行うことが可能となり、いっそう効率的な林業経営が行える木材収穫管理システムを提供することができる。加えて、通信衛星を用いるので、コントローラと木材管理センターとの地理的距離が離れていても容易に通信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一例としての自走式無人樹木伐採運搬機の側面図である。
【図2】その要部拡大正面図である。
【図3】自走式無人樹木伐採運搬機を遠隔操作するコントローラの平面図である。
【図4】この発明の一例としての自走式無人樹木伐採運搬機の要部概略平面図であり、(a)は伐倒時、(b)は枝払い・玉切り時、(c)は(b)のX矢視断面図である。
【図5】この発明の木材収穫管理システムのブロック図である。
【図6】(a)〜(e)は、この発明のコントローラに備えるディスプレイにおける操作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1にこの発明の一例としての自走式無人樹木伐採運搬機の側面図を示す。自走式無人樹木伐採運搬機1は、クローラと車輪などを備える走行部2、走行部2の上方に脚体3を介して本体部4、本体部4の上に荷台(運搬部)5を備える。本体部4の前部分には、ブーム6、アーム7、ブラケット8を介して、ハーベスタ10を備える。
【0015】
走行部2は、自走式無人樹木伐採運搬機1の進行方向の左右側にそれぞれ設けられる。走行部2は左右それぞれに2つのクローラ2Aを備えてなる。クローラ2Aの内部には、クローラ2Aを回転させるための駆動輪2Bのほか、トラックローラ、テンションローラなどを備えてなる。なお、駆動輪2Bは油圧式モータを備える。
【0016】
本体部4内には、エンジン、ラジエータ、油圧ポンプ、油圧バルブ、油圧タンクなど自走式無人樹木伐採運搬機1を作動させるための作動手段に加えて、これらを制御する制御手段、無線を送受信する通信手段などを備える。荷台5は、伐採した樹木を載置するためのものである。なお、脚体3は、油圧シリンダ3A,3Bを備える。油圧シリンダ3A,3Bが伸縮することで、本体部4は走行部2に対して上下することができるように構成されている。
【0017】
次にハーベスタ10について、図1を参照しつつ、図2を用いて説明する。ハーベスタ10は、樹木を伐倒、枝払い、玉切りして材木とするための林業機械である。ハーベスタ10は、アーム7に固設されたブラケット8の先端に連結部9を介して取り付ける。この連結部9はパイプ状に構成され、ブラケット8に対して回動自在である。連結部9の下端には、ハンガー11を取り付ける。なお、ハンガー11の上端にはハーベスタ10を旋回させるための旋回装置11Aを備えている。
【0018】
ハンガー11は側面視で略L字状に構成され、その下端には本体フレーム12を取り付ける。本体フレーム12は、側面視で略逆L字状に形成され、上端部分の上側には一対のグラップル(把持部)13A,13Bをそれぞれ回動軸13a,13bの周りに回動自在に備える。なお、ハンガー11の側面と、本体フレーム12の側面にはそれぞれ、油圧シリンダ11C,12Cが取り付けられている。油圧シリンダ11Cは、ハンガー11をその上端を支点として傾動させるように働き、油圧シリンダ12Cは、本体フレーム12をその下端を支点傾動さえるように働に、油圧シリンダ11C,12Cによって、ハーベスタ10として図1中で矢印方向に回動させる。
【0019】
グラップル13A,13Bは樹木を把持する役割と、把持した樹木の枝払いをする役割を兼ね備える。後者の働きをするために、グラップル13A,13Bはそれぞれ略三日月形状である。また、その内周側すなわち、グラップル13A,13Bが樹木を把持する際に、樹木と接する側に枝払い用の刃が形成されている。そして、グラップル13A,13Bの後端部にそれぞれ回動軸13a,13bを貫通させ、グラップル13A,13Bがともに閉じる方向に回動すると、樹木を挟持するように構成されている。なお、グラップル13A,13Bには、把持した樹木の直径を測定するための不図示の測径手段を備える。測径手段は、たとえば、回動軸13a,13bにポテンショメータをとりつけて、回動軸13a,13bの回動角度から把持している樹木の直径を計算するようなものである。
【0020】
また、本体フレーム12には測尺装置18を設ける。測尺装置18は、グラップル13A,13Bが開いた状態のときに、グラップル13Aとグラップル13Bとの中間に位置し、かつ、グラップル13A,13Bが閉じて樹木を把持したときにその樹木の側面がこれに当接するように設けられる。
【0021】
本体フレーム12の上端部分の下側には、一対のローラアーム14A,14Bの上端部分を矢印方向(図2)に回動自在に取り付ける。ローラアーム14A,14Bの下端部分には、材搬送ローラ(送出部)15A,15Bを回転自在に取り付ける。グラップル13A,13Bが樹木を把持するときに、材搬送ローラ15A,15Bが開き、2つのローラの間に樹木を挟持し、これらのローラが回転することで挟持した樹木を送り出すことができる。材搬送ローラ15A,15Bの外周面には、樹木を確実に挟持して送り出すことができるように無数の凹凸が形成されて、ローラの回転スリップを防止するようになっている。
【0022】
材搬送ローラ15A,15Bの下方には下部フレーム16を備え、下部フレーム16の下側には、これと平行にチェーンソー(切断部)17を回動自在に取り付ける。なお、17Aはチェーンソーのモータである。チェーンソー17は、樹木を根元で切断したり、所望の長さで切断(玉切り)したりするためのものであり、通常、グラップル13A,13Bまたは/および材搬送ローラ15A,15Bが樹木を挟持した状態で切断操作がなされる。
【0023】
自走式無人樹木伐採運搬機1は、コントローラ50によって遠隔無線操作される。図3に示すように、コントローラ本体50Bの表面には操作部が形成されている。コントローラ本体50Bの表面の左右には、それぞれ操作スティック55,56を設ける。この操作スティック55,56は上下左右に傾動可能である。また、操作スティック55,56の間には、伐倒と玉切りをするための伐倒・玉切ボタン59と、枝払いをするための枝払ボタン60とを備える。操作スティック55の下側には、ブーム6の上下動作と回転動作、さらにアーム7の伸縮操作とを切り替える切替スイッチ57を設ける。
【0024】
また、操作スティック56の下側には、クローラ2A、グラップル13A,13B、脚体3の操作を切り替える、切替スイッチ58を設ける。これら2つの切替スイッチのさらに下側には、ディスプレイ(表示部)54を設ける。ディスプレイ54の右側には、ディスプレイ54に表示される項目を選択するための選択ボタン62と、選択した項目を決定する確定ボタン63とを設ける。また、ディスプレイ54の左側には、操作画面を切り替えるための画面切替ボタン64を設ける。
【0025】
コントローラ本体50Bの上端には、無線電波を送受信するためのアンテナ61を突出して備える。このアンテナ61はコントローラ本体50B内に備える送信部52、受信部53(ともに後述)に接続されている。また、操作部からの操作信号はすべてアンテナ61を介して自走式無人樹木伐採運搬機1の受信部へと無線送信される。
【0026】
次にコントローラ50を用いて自走式無人樹木伐採運搬機1を操作する方法を説明する。まず、コントローラ50の切替スイッチ58をクローラ側に切り替える。そして、自走式無人樹木伐採運搬機1を進行させたい方向に操作スティック56を倒すと、自走式無人樹木伐採運搬機1のクローラ2Aがその方向へと走行するように制御される。たとえば、図3中で上側に操作スティック56を倒すと自走式無人樹木伐採運搬機1は直進し、操作スティック56を左側に倒すと自走式無人樹木伐採運搬機1は左折する。
【0027】
このようにして、自走式無人樹木伐採運搬機1が所望の位置に到着したら、作業者は樹木の伐採の操作をコントローラ50によって行う。まず、伐倒である。グラップル13A,13Bで所望の樹木を把持するには、切替スイッチ58をグラップル側に切り替える。そして、操作スティック56を左に倒す。これによって一対のグラップル13A,13Bが開く。これに連動して、一対の材搬送ローラ15A,15Bも開く。自走式無人樹木伐採運搬機1をやや前進させて、樹木をグラップル13A,13Bの間で、かつ、材搬送ローラ15A,15Bの間に位置させる。次に、操作スティック56を右に倒すと、グラップル13A,13B、材搬送ローラ15A,15Bのそれぞれが閉じて、両者で樹木を把持する。この状態で、伐倒・玉切ボタン59を押下すると、チェーンソー17が作動して、樹木の根元付近を切断する。
【0028】
次に枝払いと玉切りを行う。枝払ボタン60を押下すると、ハーベスタ10が樹木を把持したままで、前側にほぼ90度傾倒する。同時に、ブーム6とアーム7が適宜操作されて、荷台5にわずかにかかる位置で荷台5の上方に移動する。言い換えると、樹木を切断する際にチェーンソー17が荷台5の上方に位置するとともに、切断された樹木が、チェーンソー17を挟んで材搬送ローラ15A,15Bと反対側でかつ、荷台5内に落下するように構成する。したがって、この発明では玉切りと同時に木材の荷台5への積載を行うことができる。
【0029】
詳しくは、図4(a)に示すような位置で樹木の伐倒を行ったのち、図4(b)および図4(c)に示すような位置にハーベスタ10を移動させる。ハーベスタ10の移動位置は、樹木を玉切りしたときに、切り落とした材木が荷台5内に落下する位置である。さらに、その後、材搬送ローラ15A,15Bが回転して樹木を荷台5に向けて水平方向に送り出す。このとき、グラップル13A,13Bに形成された刃が樹木の側面に突出した枝を切り落としながら、樹木は送り出される。このときに、樹木の平均直径が測径手段によって測定されて、送受信部40からコントローラ50を介して後述する木材情報管理センターに自動送信される。
【0030】
測尺装置18は送り出された樹木の長さを測定しており、あらかじめ設定された長さに到達すると、材搬送ローラ15A,15Bが回転を停止する。そして、伐倒・玉切ボタン59を押下すると、チェーンソー17が作動して、樹木を所望の長さで切断し、木材が製造される。チェーンソー17で切断された木材は、荷台5内に落下する。チェーンソー17が樹木を切断した時点で測尺装置18は測長値をリセットし、新たに長さを測定することが可能となる。なお、測尺装置18とチェーンソー17との組み合わせによって、木材の長さに加えて本数もカウントすることができる。これらの情報は、送受信部40からコントローラ50を介して後述する木材情報管理センターに自動送信される。
【0031】
さらに枝払ボタン60を押下すると、材搬送ローラ15A,15Bが再び回転して、樹木の枝打ちをしながら樹木は送り出される。樹木が所定の長さだけ送り出されると、材搬送ローラ15A,15Bが回転を停止する。そして、伐倒・玉切ボタン59を押下すると、チェーンソー17が作動して、樹木を所望の長さで切断し、2本目の木材が製造されて、荷台5内に落下する。
【0032】
一本目の樹木の伐採が終了したら、次の目的の樹木へと自走式無人樹木伐採機1を移動させて同様の作業を行う。なお、荷台5、本体部4(またはハーベスタ10)の位置を上下させたいときは、切替スイッチ58を本体上下の位置に切り替える。そして、操作スティック56を上下方向に操作して高さを変化させる。この脚体3の昇降は、油圧シリンダ3A,3Bの伸縮にてなされる。
【0033】
図5には、自走式無人樹木伐採運搬機1を用いた木材収穫管理システムのブロック図を示す。木材収穫管理システムは、自走式無人樹木伐採運搬機1と、これを遠隔無線操縦するコントローラ50と、収穫した木材の在庫を管理する木材情報管理センター70とを備える。そして、コントローラ50と木材情報管理センター70との通信は人工衛星100によって行われる。
【0034】
自走式無人樹木伐採運搬機1には、図1,2にて説明した装置に加えて、送受信部40(送信部40A、受信部(伐採機受信部)40B)、位置決定部41、エンジンスイッチキーなどを備える。送受信部40は、コントローラ50から送信された作業指示を受信するほか、製造した木材の直径、長さ、本数などの情報を収穫情報としてコントローラ50に送信するためのものである。また、位置決定部41は、人工衛星100からの電波を受信して、GPS機能により自走式無人樹木伐採運搬機1の地理的位置を特定するためのものである。
【0035】
コントローラ50は、図3に示す各種の操作部51、アンテナ61に加えて、送信部(コントローラ送信部)52、受信部(コントローラ受信部)53などを内蔵する。送信部52は、操作部51からの操作指令を電波として自走式無人樹木伐採運搬機1へ送信したり、操作部51から入力された収穫情報や自走式無人樹木伐採機1の地理的位置情報などを木材情報管理センター70に送信したりする。また、受信部53は、木材情報管理センター70からの情報や伐採指示を電波として受信するためのものである。なお、この送受信は人工衛星100を介して行われる。
【0036】
木材情報管理センター70には、情報管理部71、自走式無人樹木伐採運搬機1およびコントローラ50からの情報の無線受信する受信部(センター受信部)72、コントローラ50へ情報を無線送信する送信部(センター送信部)73、各種情報を表示するモニター74などを備える。情報管理部71には、顧客からの木材の注文情報、出荷した木材の出荷情報、自走式無人樹木伐採運搬機1で収穫した木材の収穫情報など在庫管理に関する情報が一元管理されているほか、木材情報管理センター70が管理する、収穫前の樹木の地理的分布情報である樹木分布図が管理されている。
【0037】
次に、このように構成された木材収穫管理システムを運用する方法を説明する。まず、木材情報管理センター70では、オペレータが情報管理部71によって管理されている木材の在庫管理状況に応じて、次に伐採する樹木の種類と場所を設定して、コントローラ50を操作する現場の作業者に伐採指示をする。なお、自走式無人樹木伐採運搬機1に備える位置決定部41は、自走式無人樹木伐採運搬機1のエンジンがONであるときはいつでも自走式無人樹木伐採運搬機1の地理的位置をコントローラ50経由で木材情報管理センター70に送信できる。したがって、木材情報管理センター70のオペレータは、この自走式無人樹木伐採運搬機1の現在位置と、情報管理部71に格納している樹木分布図に基づいて、最適な伐採箇所についても同時に作業者に指示する。これらの情報は、送信部73よりコントローラ50に送信されてディスプレイ54に表示され、作業者に報知される。
【0038】
作業者は、木材情報管理センター70からの指示に基づき、コントローラ50を操作して自走式無人樹木伐採運搬機1を伐採位置に移動させる。このとき、コントローラ50は、自走式無人樹木伐採運搬機1の地理的位置を把握しているので、自走式無人樹木伐採運搬機1を所望の位置に確実に移動させることができる。まず、伐採作業を開始するには、画像切替ボタン64を押下してディスプレイ54に伐採作業開始の画面を表示する(図6(a))。選択ボタン62で「Yes」を選択し、確定ボタン63を押下して確定する。これによって、不図示の記憶部に記憶されていた送信済みの収穫情報が消去され、新たな収穫情報の記憶が開始可能となる。伐採作業の手順は前述したとおりであるので説明を省略する。
【0039】
伐採作業が終了したら、画面切替ボタン64を押下して終了画面を表示する。終了画面は詳しくは、図6(b)に示すように構成されている。所望の樹木の伐採が終了したときは、選択ボタン62にて「Yes」を選択し、確定ボタン63を押下して確定する。すると、樹木の種類が表示されるので(図6(c))、杉を伐採したときは、「スギ」を選択ボタン62にて選択し、確定ボタン63を押下して確定する。次に、コントローラ50に蓄積された、製造された木材の直径、長さ、本数とともに、木材の種類を収穫情報として木材情報管理センター70に送信するか、尋ねられるので、選択ボタン62にて「Yes」を選択し(図6(d))、確定ボタン63を押下して確定する。すると、収穫情報が木材情報管理センター70に送信され、情報管理部71に記憶される。さらに、ディスプレイ54上では、収穫作業を終了するかを尋ねられる(図6(e))。収穫作業を終了するときは、選択ボタン62にて「Yes」を選択し、確定ボタン63を押下して確定する。
【0040】
一方、収穫作業を終了せずに、別の場所に移動して伐採作業を継続するときは、選択ボタン62にて「No」を選択し、確定ボタン63を押下して確定する。その後、コントローラ50を操作して自走式無人樹木伐採運搬機1を移動させ、伐採作業を開始する。このとき、ディスプレイ54において、伐採作業開始の画面にて(図6(a))、選択ボタン62で「Yes」を選択し、確定ボタン63を押下して確定する。これによって、不図示の記憶部に記憶されていた送信済みの収穫情報が消去され、新たな収穫情報の記憶が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
なお、この発明の自走式無人樹木伐採運搬機は上述の実施形態に限定されるものではない。上述の例では、自走式無人樹木伐採運搬機の走行部がクローラ式であったが、車輪走行タイプであってもよい。また、ハーベスタのタイプは、上述の例に限定されるものではなく、公知の技術を利用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 自走式無人樹木伐採運搬機
2 走行部
3 脚体
4 本体部
5 荷台(運搬部)
6 ブーム
7 アーム
8 ブラケット
9 連結部
10 ハーベスタ
11 ハンガー
11C,12C 油圧シリンダ
12 本体フレーム
13A,13B グラップル(把持部)
13a,13b 回動軸
14A,14B ローラアーム
15A,15B 材搬送ローラ(送出部)
16 下部フレーム
17 チェーンソー(切断部)
18 測尺装置
50 コントローラ
50B コントローラ本体
51 操作部
52 送信部(コントローラ送信部)
53 受信部(コントローラ受信部)
54 ディスプレイ(表示部)
55,56 操作スティック
57,58 切替スイッチ
59 伐倒・玉切ボタン
60 枝払ボタン
61 アンテナ
62 選択ボタン
63 確定ボタン
64 画面切替ボタン
70 木材情報管理センター
71 情報管理部
72 受信部(センター受信部)
73 送信部
74 モニター
100 人工衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線による作業指示によって作動する自走式無人樹木伐採運搬機と、該自走式無人樹木伐採運搬機に作業指示を送信するコントローラと、前記自走式無人樹木伐採運搬機によって伐採・収穫した木材の収穫情報を管理する木材情報管理センターとを備える木材収穫管理システムであって、
前記自走式無人樹木伐採運搬機が、樹木を把持する把持部と、前記把持した樹木を長手方向に送る送出部と、前記送り出された樹木を所望の位置で切断する切断部と、前記切断した樹木を積載して運搬する運搬部とを備え、
前記コントローラが、前記自走式無人樹木伐採運搬機に作業指示を送信するとともに、前記木材情報管理センターに前記収穫情報を送信するコントローラ送信部を備え、
前記木材情報管理センターが、前記コントローラ送信部から送信された前記木材の収穫情報を受信するセンター受信部と、受信した前記収穫情報を格納して管理する情報管理部とを備えることを特徴とする、木材収穫管理システム。
【請求項2】
前記木材情報管理センターがセンター送信部を備える一方、前記コントローラがコントローラ受信部を備える木材収穫管理システムであって、
前記木材情報管理センターが伐採する樹木の伐採指示を作成して前記センター送信部を介して前記伐採指示を送信し、前記コントローラ受信部が前記伐採指示を受信することを特徴とする、請求項1に記載の木材収穫管理システム。
【請求項3】
前記コントローラと前記木材情報管理センターとの間の通信が人工衛星を介して行われる木材収穫管理システムであって、
前記自走式無人樹木伐採運搬機が、該自走式無人樹木伐採運搬機の地理的位置を前記人工衛星を用いて特定する位置決定部を備え、該位置決定部にて特定した前記自走式無人樹木伐採運搬機の地理的位置を前記木材情報管理センターに送信する一方、
前記木材情報管理センターが、収穫前の樹木の地理的分布情報を格納して管理するとともに、受信した前記自走式無人樹木伐採運搬機の地理的位置と前記収穫前の樹木の地理的分布情報とに基づいて前記伐採指示を作成することを特徴とする、請求項2に記載の木材収穫管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−10603(P2011−10603A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158132(P2009−158132)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)