説明

木製メガネフレームおよびその製造方法

【課題】 外観を木材で構成して自然な風合いを出すことができ、軽量でありながら使用上、充分な強度を備えた木製メガネフレーム、およびそのような木製メガネフレームを簡単に製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】 メガネレンズを縁取るレンズフレーム2と、レンズフレーム2の左右端部に取り付けられるテンプルフレーム3とを有するメガネフレームであって、前記レンズフレーム2および前記テンプルフレーム3の一方または両方が、木製の単板Sを複数枚重ねて圧着して成形されているとともに、各フレーム形状に沿って所定の弾性力を有する細線状の補強芯材4が内蔵されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度で軽量な木製メガネフレームおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の木製のメガネフレームは、原材料となる木材からメガネの各フレームの形状に合わせて削り出して製造するものであったため、軽量化が難しく、オーダーメイドに近いものとなってしまうため高価にならざるを得なかった。もし軽量化するためにフレームをより細く削り出した場合には強度が低下してしまい、簡単に折れてしまうという問題がある。一方、木材を用いてメガネフレームを製造する技術としていくつか特許出願がなされており、例えば、特表平10−505922号公報には、圧縮して強化材にした複数の樹脂含浸木材積層材を含む複合材料からなる眼鏡フレーム及び耳づるが提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、特開2006−235481号公報には、樹脂製フロントフレーム及び樹脂製ツルの外表面側に木材層を接着して積層し、ツルの樹脂層の内部に芯金を埋着したメガネフレームが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平10−505922号公報
【特許文献2】特開2006−235481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、積層させた木材の強度を増すために樹脂を含浸させている。このため、フレームの可撓性が低下するし、重量も増大してしまうという問題がある。このようなメガネを使用すると重くて、耳や鼻の接触部分が痛くなるし、撓みがないためフィット感も悪い。
【0006】
一方、特許文献2に記載された発明においては、ツルの強度を高めるために芯金を用いているが、木材層の内部には埋め込めないため、樹脂層の内部に埋着させている。このため、互いに異なる素材である樹脂層と木材層とを接着することとなり、その接着面が簡単に剥離しやすいという問題がある。また、本物志向のユーザにとっては、木製の自然な風合いの点で劣るため物足りなく、ニーズに合わないという問題もある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、外観を木材で構成して自然な風合いを出すことができ、軽量でありながら使用上、充分な強度を備えた木製メガネフレーム、およびそのような木製メガネフレームを簡単に製造することができる製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る木製メガネフレームは、メガネレンズを縁取るレンズフレームと、レンズフレームの左右端部に取り付けられるテンプルフレームとを有するメガネフレームであって、前記レンズフレームおよび前記テンプルフレームの一方または両方が、木製の単板を複数枚重ねて圧着して成形されているとともに、各フレーム形状に沿って所定の弾性力を有する細線状の補強芯材が内蔵されている。
【0009】
また、本発明の一態様として、前記レンズフレームおよび/または前記テンプルフレームは、木の繊維方向が縦目の前記単板と、木の繊維方向が横目の前記単板とが交互に重ねられてなることが望ましい。
【0010】
さらに、本発明の一態様として、前記レンズフレームおよび/または前記テンプルフレームを構成する複数枚の前記単板のいずれかには、他の単板と圧着される面に各フレーム形状に沿って細線状の嵌入溝が形成されており、この嵌入溝に沿って前記補強芯材が嵌入されていてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様として、前記レンズフレームを構成する複数枚の前記単板のいずれかには、他の単板と圧着される面に少なくとも前記メガネレンズの略上半分の縁部に沿って細線状の上方嵌入溝が形成されているとともに、当該単板とは異なる単板には、他の単板と圧着される面に少なくとも前記メガネレンズの略下半分の縁部に沿って下方嵌入溝が形成され、前記上方嵌入溝および前記下方嵌入溝に沿って前記補強芯材が嵌入されていてもよい。
【0012】
さらに、本発明の一態様として、前記レンズフレームの略下半分には、略上半分よりも薄肉に形成されたレンズ用薄肉部が形成されており、前記メガネレンズを配置可能に構成されていてもよい。
【0013】
本発明に係る木製メガネフレームの製造方法は、メガネレンズを縁取るレンズフレームと、前記レンズフレームの左右端部に取り付けられるテンプルフレームのうち一方または両方の前記フレームを木製で製造する木製メガネフレームの製造方法であって、複数枚の木製の単板を前記レンズフレームおよび/または前記テンプルフレームの形状に形成する単板形成工程と、前記レンズフレームを構成する複数枚の単板のうち少なくともいずれか一枚、および/または前記テンプルフレームを構成する複数枚の単板のうち少なくともいずれか一枚に、そのフレーム形状に沿って細線状の嵌入溝を形成する嵌入溝形成工程と、この嵌入溝形成工程で形成された前記嵌入溝に沿って所定の弾性力を有する細線状の補強芯材を嵌入する補強芯材嵌入工程と、この補強芯材嵌入工程で嵌入された補強芯材が内蔵されるように前記複数枚の単板を重ね合わせて圧着する単板圧着工程と、を有する。
【0014】
また、本発明に係る木製メガネフレームの製造方法の一態様として、前記単板圧着工程の前工程として、前記レンズフレームおよび/または前記テンプルフレームの薄肉に形成する部分には、前記各フレームを構成する複数枚の前記単板のいずれかに、他の単板と重ねられた際に対向する面に圧着防止部材を貼付する圧着防止部材貼付工程と、前記単板圧着工程後に、前記圧着防止部材により圧着されなかった単板の不着部分を除去する薄肉部形成工程とを有していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外観を木材で構成して自然な風合いを出すことができ、軽量でありながら使用上、充分な強度を備えた木製メガネフレームを得ることができるとともに、そのような木製メガネフレームを簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る木製メガネフレームの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の木製メガネフレームを示す底面図である。
【図3】本発明に係る木製メガネフレームの製造方法の一実施形態を示すフローチャート図である。
【図4】本実施形態において、レンズフレームを構成する各単板を示す図である。
【図5】本実施形態において、テンプルフレームを構成する各単板を示す図である。
【図6】本実施形態において、レンズフレーム用の各単板を圧着した状態を示す(a)正面図、および(b)6B−6B線における一部省略拡大断面図である。
【図7】本実施形態において、テンプルフレーム用の各単板を圧着した状態を示す(a)正面図、および(b)7B−7B線における一部省略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る木製メガネフレームおよびその製造方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
本実施形態の木製メガネフレーム1は、図1および図2に示すように、主として、メガネレンズ(図示せず)を縁取るレンズフレーム2と、このレンズフレーム2の左右端部に取り付けられるテンプルフレーム3と、これらレンズフレーム2およびテンプルフレーム3を補強する補強芯材4と、レンズフレーム2に対してテンプルフレーム3を開閉可能に連結するバネ丁番5とを有している。以下、各構成部について詳細に説明する。
【0019】
レンズフレーム2は、メガネレンズの縁部を支持するためのものであり、図1に示すように、左右のメガネレンズを配置する一対の開口部21,21を備えたフレーム状に形成されている。また、レンズフレーム2は、複数枚の木製の単板Sを積層させて圧着して成型されており、その内部に所定の弾性力を有する細線状の補強芯材4が内蔵されている。
【0020】
本実施形態において、補強芯材4は、ピアノ線と呼ばれるステンレスワイヤ等によって構成されており、レンズフレーム2のフレーム形状に沿って内蔵されている。具体的には、図1において点線で示すように、メガネレンズの略上半分の縁部に沿う補強芯材4と、メガネレンズの略下半分の縁部に沿う補強芯材4とが、2本内蔵されている。
【0021】
また、本実施形態において、レンズフレーム2の略下半分には、図2に示すように、略上半分よりも薄肉に形成されたレンズ用薄肉部22が形成されている。このレンズ用薄肉部22は、メガネフレーム2の開口部21にメガネレンズを配置し易くするためのものであり、本実施形態では、後述するように、内面側となる単板Sの不着部分を予め2枚分除去することによって形成されている。なお、予め単板Sを除去しておくのは薄く削る手間を省くための工夫であり、単板Sを除去することなくヤスリ等により削って形成してもよい。
【0022】
テンプルフレーム3は、耳にかけてレンズフレーム2を支持するためのものであり、図1および図2に示すように、一対の左右対称形状に形成されている。各テンプルフレーム3は、レンズフレーム2と同様、複数枚の木製の単板Sを積層させて圧着して成型されており、その内部に補強芯材4が内蔵されている。
【0023】
各テンプルフレーム3において、補強芯材4は、テンプルフレーム3のフレーム形状に沿って内蔵されている。具体的には、補強芯材4は、図1および図2に示すように、テンプルフレーム3の長手方向に沿うように内蔵されている。
【0024】
また、本実施形態において、テンプルフレーム3の内面側には、図2に示すように、両端部よりも薄肉に形成されたテンプル用薄肉部31が形成されている。このテンプル用薄肉部31は、人間のテンプル(こめかみ)にフィットし易くするためのものであり、本実施形態では、後述するように、内面側となる単板Sの不着部分を1枚分除去することによって形成されている。なお、前述したレンズ用薄肉部22と同様、単板Sを除去することなく所望の薄さに削って形成してもよい。
【0025】
なお、本発明において、レンズフレーム2およびテンプルフレーム3に使用する単板Sは、木製であれば、特に限定されるものではない。ただし、製造時または使用時においてフレームにかかる外力を吸収し、ひび割れや折れを防止するため、適度な弾性を有する木材を使用することが好ましく、例えば、クルミ材、ナラ材、カバ材、イタヤカエデ材等が好適である。
【0026】
また、本発明では、補強芯材4としてステンレスワイヤを使用しているが、これに限定されるものではなく、所定の弾性力を有し、ある程度変形しても元の形状に復元する材料であれば、グラスファイバー等適宜選択しうる。また、補強芯材4の太さは、強度の向上度合いを考慮すると0.5mm以上であることが好ましく、一方、フレーム2,3の厚みや後述する嵌入溝6への嵌め込みやすさを考慮すると0.8mm以下であることが好ましい。よって、本実施形態では、約0.6mmのステンレスワイヤを使用している。
【0027】
バネ丁番5は、各テンプルフレーム3をレンズフレーム2の左右端部に連結するものである。本実施形態において、バネ丁番5は、いわゆる丁番としての開閉機能を有する他、テンプルフレーム3を開いた状態から、バネの伸縮によってさらに外方向へ開けるようになっている。このため、木製メガネフレーム1をかける際、および外す際の負荷がかかりにくい上、テンプルを強く押圧することがなくソフトな掛け心地となる。
【0028】
なお、本発明に係る木製メガネフレーム1では、レンズフレーム2およびテンプルフレーム3の両方を木製としているが、この構成に限定されるものではなく、デザイン上、レンズフレーム2またはテンプルフレーム3のいずれか一方のみを木製とし、他方を木製以外のフレームを使用して構成してもよい。
【0029】
つぎに、本発明に係る木製メガネフレーム1の製造方法の一実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態では、レンズフレーム2およびテンプルフレーム3の両方を木製で構成する場合について説明する。
【0030】
本実施形態の木製メガネフレーム1の製造方法は、図3に示すように、主として、単板形成工程(ステップS1)と、嵌入溝形成工程(ステップS2)と、補強芯材嵌入工程(ステップS3)と、圧着防止部材貼付工程(ステップS4)と、単板圧着工程(ステップS5)と、薄肉部形成工程(ステップS6)と、仕上げ工程(ステップS7)とを有している。以下、各工程について説明する。
【0031】
単板形成工程は、複数枚の単板Sをレンズフレーム2の形状およびテンプルフレーム3の形状に形成する工程である(ステップS1)。本実施形態において、レンズフレーム2用の単板Sは、図4に示すように、5枚で構成されており、最も内面側(顔側)の単板Sは2mm厚で、他の単板Sは1mm厚に形成されている。また、各単板Sは、削り代を考慮して、レンズフレーム2よりも太幅に形成され、かつ、開口部21には位置合わせ用の固定穴23が形成されている。
【0032】
一方、テンプルフレーム3用の単板Sは、図5に示すように、4枚で構成されており、内面側(顔側)から外面側にかけて、2mm厚と1mm厚の単板Sが交互に積層されている。本実施形態において、各単板Sは、左右のテンプルフレーム3を基端部側で接続した形状に形成されている。また、各単板Sは、削り代を考慮して、テンプルフレーム3よりも太幅に形成され、かつ、基端部側の下端部に位置合わせ用の固定穴31が形成されている。
【0033】
また、本実施形態において、レンズフレーム2用の各単板Sおよびテンプルフレーム3用の各単板Sについては、それぞれ木の繊維方向が縦目の単板Sと、木の繊維方向が横目の単板Sとを両方用意する。そして、縦目の単板Sと横目の単板Sとを交互に重ねることで、温度や湿度の変化に対する変形を抑制するとともに、単板圧着工程でのプレス加工による割れを防止するようになっている。つまり、縦目と横目の各単板Sを使用することにより耐湿性や耐候性、加工性に優れた特性が得られる。
【0034】
つぎに、嵌入溝形成工程は、レンズフレーム2およびテンプルフレーム3を構成する複数枚の単板Sのうち少なくともいずれか一枚に、補強芯材4を嵌入するための嵌入溝6を形成する工程である(ステップS2)。具体的には、レンズフレーム2およびテンプルフレーム3を構成する各単板Sの固定穴23に治具を挿通し、位置合わせした状態で加工するため、各嵌入溝6が正確な位置に形成される。
【0035】
本実施形態では、図4に示すように、レンズフレーム2を構成する各単板Sのうち、最も内面側(顔側)の単板Sの表面には、メガネレンズの略上半分の縁部に沿って上方嵌入溝61を形成する。また、外面側から2枚目の単板Sの裏面には、メガネレンズの略下半分の縁部に沿って下方嵌入溝62を形成する。一方、テンプルフレーム3を構成する各単板Sのうち、外側から2枚目の単板Sの表面には、図5に示すように、テンプルフレーム3の長手方向に沿ってテンプル用嵌入溝63を形成する。
【0036】
なお、上方嵌入溝61、下方嵌入溝62およびテンプル用嵌入溝63は、上記形状に限定されるものではなく、他の単板Sと圧着される面において、各フレーム形状に沿って細線状に形成されていればよい。例えば、上方嵌入溝61および下方嵌入溝62は、メガネレンズの全周を囲む形状に形成してもよい。あるいは一曲線に限らず、適当な間隔を隔ててフレームに沿って断続的に形成されるようにしてもよい。
【0037】
また、各嵌入溝6の数は、上記構成に限定されるものではなく、フレームの厚さや要求される強度に応じて適宜増減してもよい。さらに、各嵌入溝6を形成する単板Sは、上記構成に限定されるものではなく、補強芯材4が外観に露出しないように、各嵌入溝6が他の単板Sと重ねられて対向する面に形成されていればよい。また、本実施形態では、上述したように、補強芯材4として約0.6mmのステンレスワイヤを使用するため、溝幅が約0.8mmで、溝の深さが約0.6mmの嵌入溝6を形成している。
【0038】
つづいて、補強芯材嵌入工程は、嵌入溝形成工程で形成された各嵌入溝6に沿って補強芯材4を嵌入する工程である(ステップS3)。本実施形態では、上方嵌入溝61、下方嵌入溝62およびテンプル用嵌入溝63のそれぞれに補強芯材4を嵌入し、所定の接着剤で接着する。これにより、レンズフレーム2の上半分および下半分の強度が向上するとともに、テンプルフレーム3の強度が向上する。
【0039】
つぎに、圧着防止部材貼付工程は、レンズフレーム2およびテンプルフレーム3を構成する複数枚の単板Sのうち、所定の単板Sにおける所定の部分に圧着防止部材7を貼付する工程である(ステップS4)。この圧着防止部材7は、レンズ用薄肉部22およびテンプル用薄肉部31を形成するために予め薄く加工する目的であり、次工程において、単板S同士が圧着するのを防止する。本実施形態では、圧着しない部分にマスキングテープを使用している。
【0040】
具体的には、図4に示すように、レンズフレーム2を構成する複数枚の単板Sのうち、他の単板Sと重ねられた際に対向する面、本実施形態では外面側から3枚目の単板Sの裏面に、各開口部21の下縁部を被覆するように圧着防止部材7を貼付する。これにより、圧着防止部材7を貼付した部分では、単板S同士が圧着されないため、当該不着部分を除去することで予め薄く加工することができ、簡単かつ迅速にレンズ用薄肉部22が形成される。
【0041】
また、図5に示すように、テンプルフレーム3用の単板Sのうち、最も内面側の単板Sの表面には、テンプルフレーム3の略中間部を被覆するように圧着防止部材7を貼付する。これにより、圧着防止部材7を貼付した部分では、単板S同士が圧着されないため、当該不着部分を除去することで予め薄く加工することができ、簡単かつ迅速にテンプル用薄肉部31が形成される。
【0042】
なお、圧着防止部材7を貼付する部分は、上記構成に限定されるものではなく、レンズフレーム2およびテンプルフレーム3を薄肉に形成する部分であって、レンズフレーム2およびテンプルフレーム3として残しておく単板Sと、除去する単板Sとの間に貼付すればよい。
【0043】
つぎに単板圧着工程は、補強芯材4が内蔵されるようにレンズフレーム2およびテンプルフレーム3を構成する各単板Sを重ね合わせて圧着する工程である(ステップS5)。本実施形態では、各単板Sの接着面に熱可塑性または熱硬化性の接着剤を塗布した後、プレスした状態で高周波加熱する。これにより、接着剤の硬化が促進されて短時間で圧着し、レンズフレーム2およびテンプルフレーム3が所定形状に成型される。
【0044】
なお、レンズフレーム2については、図4に示すように、上方嵌入溝61を形成した単板Sを一番下にして、その上から順次、外側の単板Sを積層させて圧着する。これにより、図6に示すように、上方嵌入溝61および下方嵌入溝62に嵌入された各補強芯材4が、レンズフレーム2に内蔵されるため、外観が全て木材で構成される。このため、自然な風合いが醸し出される上、樹脂を含浸させたり、1本の木材から削り出す場合に比べて軽量化される。
【0045】
一方、テンプルフレーム3については、図5に示すように、圧着防止部材7を貼付した単板Sを一番下にして、その上から順次、外側の単板Sを積層させて圧着する。これにより、図7に示すように、テンプル用嵌入溝63に嵌入された各補強芯材4が、テンプルフレーム3に内蔵されるため、外観が全て木材で構成される。このため、レンズフレーム2と同様、自然な風合いが醸し出されるとともに軽量化される。
【0046】
つづいて、薄肉部形成工程は、上述した各薄肉部22,31を形成する工程である(ステップS6)。具体的には、図6(b)および図7(b)に示すように、圧着防止部材7によって圧着されなかった不着部分における内側の単板Sを除去する。このとき、圧着防止部材7が、単板S同士の圧着を防止するため、簡単に単板Sが除去され、迅速にレンズ用薄肉部22およびテンプル用薄肉部31が形成される。このため、単にフレームを切削して薄肉に形成する場合と比べて、加工時に破損することが少なく、加工時間が短縮される。
【0047】
最後に、仕上げ工程は、レンズフレーム2およびテンプルフレーム3に対し、仕上げ加工をする工程である(ステップS7)。本実施形態では、レンズフレーム2に鼻あて部24を接着した後、NC(Numerical Control:数値制御)加工によってレンズフレーム2およびテンプルフレーム3を荒削りする。その後、サンドペーパー等による研磨加工や、スプレーガン等による塗装処理を施すことにより、木製メガネフレーム1が製造される。
【0048】
なお、本実施形態の木製メガネフレーム1にメガネレンズを取り付ける場合、メガネレンズの外周縁部に凹溝を形成するとともに、当該凹溝にナイロン糸等の支持糸を巻回させる。そして、当該支持糸の両端をレンズフレーム2に係止することで、メガネレンズが支持されることとなる。
【0049】
以上のような本実施形態の木製メガネフレーム1およびその製造方法によれば、以下のような効果を奏する。
1.外観を木材で構成して本物志向に合った自然な風合いを出すことができ、軽量でありながら使用上、十分な強度に高めることができる。
2.縦目と横目の単板Sを交互に重畳させることで、温度や湿度の変化に対する変形を抑制して耐湿性および耐候性の優れたものにするとともに、プレス加工時の割れを防止することができる。
3.木製のレンズフレーム2およびテンプルフレーム3に補強芯材4を内蔵させることができる。
4.レンズフレーム2およびテンプルフレーム3における所望の部分を簡単かつ迅速に薄肉に形成することができる。
5.木製メガネフレーム1を簡単かつ正確に製造することができる。
【0050】
なお、本発明に係る木製メガネフレーム1およびその製造方法は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0051】
例えば、上述した本実施形態では、メガネレンズの全周を縁取るフルリムタイプのレンズフレーム2を使用しているが、この構成に限定されるものではない。すなわち、メガネレンズの略上半分のみを縁取るナイロールタイプや、メガネレンズの略下半分のみを縁取る逆ナイロールタイプのレンズフレーム2であってもよい。この場合、補強芯材4は、メガネレンズの略上半分または略下半分のいずれかにのみ内蔵させればよい。
【符号の説明】
【0052】
1 木製メガネフレーム
2 レンズフレーム
3 テンプルフレーム
4 補強芯材
5 バネ丁番
6 嵌入溝
7 圧着防止部材
21 開口部
22 レンズ用薄肉部
23 固定穴(レンズフレーム側)
24 鼻あて部
31 テンプル用薄肉部
32 固定穴(テンプルフレーム側)
61 上方嵌入溝
62 下方嵌入溝
63 テンプル用嵌入溝
S 単板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メガネレンズを縁取るレンズフレームと、レンズフレームの左右端部に取り付けられるテンプルフレームとを有するメガネフレームであって、前記レンズフレームおよび前記テンプルフレームの一方または両方が、木製の単板を複数枚重ねて圧着して成形されているとともに、各フレーム形状に沿って所定の弾性力を有する細線状の補強芯材が内蔵されている木製メガネフレーム。
【請求項2】
前記レンズフレームおよび/または前記テンプルフレームは、木の繊維方向が縦目の前記単板と、木の繊維方向が横目の前記単板とが交互に重ねられてなる請求項1に記載の木製メガネフレーム。
【請求項3】
前記レンズフレームおよび/または前記テンプルフレームを構成する複数枚の前記単板のいずれかには、他の単板と圧着される面に各フレーム形状に沿って細線状の嵌入溝が形成されており、この嵌入溝に沿って前記補強芯材が嵌入されている請求項1または請求項2に記載の木製メガネフレーム。
【請求項4】
前記レンズフレームを構成する複数枚の前記単板のいずれかには、他の単板と圧着される面に少なくとも前記メガネレンズの略上半分の縁部に沿って細線状の上方嵌入溝が形成されているとともに、当該単板とは異なる単板には、他の単板と圧着される面に少なくとも前記メガネレンズの略下半分の縁部に沿って下方嵌入溝が形成され、前記上方嵌入溝および前記下方嵌入溝に沿って前記補強芯材が嵌入されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の木製メガネフレーム。
【請求項5】
前記レンズフレームの略下半分には、略上半分よりも薄肉に形成されたレンズ用薄肉部が形成されており、前記メガネレンズを配置可能に構成されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の木製メガネフレーム。
【請求項6】
メガネレンズを縁取るレンズフレームと、前記レンズフレームの左右端部に取り付けられるテンプルフレームのうち一方または両方の前記フレームを木製で製造する木製メガネフレームの製造方法であって、
複数枚の木製の単板を前記レンズフレームおよび/または前記テンプルフレームの形状に形成する単板形成工程と、
前記レンズフレームを構成する複数枚の単板のうち少なくともいずれか一枚、および/または前記テンプルフレームを構成する複数枚の単板のうち少なくともいずれか一枚に、そのフレーム形状に沿って細線状の嵌入溝を形成する嵌入溝形成工程と、
この嵌入溝形成工程で形成された前記嵌入溝に沿って所定の弾性力を有する細線状の補強芯材を嵌入する補強芯材嵌入工程と、
この補強芯材嵌入工程で嵌入された補強芯材が内蔵されるように前記複数枚の単板を重ね合わせて圧着する単板圧着工程と、
を有する木製メガネフレームの製造方法。
【請求項7】
前記単板圧着工程の前工程として、前記レンズフレームおよび/または前記テンプルフレームの薄肉に形成する部分には、前記各フレームを構成する複数枚の前記単板のいずれかに、他の単板と重ねられた際に対向する面に圧着防止部材を貼付する圧着防止部材貼付工程と、
前記単板圧着工程後に、前記圧着防止部材により圧着されなかった単板の不着部分を除去する薄肉部形成工程とを有する請求項6に記載の木製メガネフレームの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−108395(P2012−108395A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258379(P2010−258379)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【特許番号】特許第4820915号(P4820915)
【特許公報発行日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(398010553)株式会社ササキ工芸 (1)
【Fターム(参考)】