説明

木製装飾品及びその製造方法

【課題】自然美を生かした木製装飾品であり、工夫を凝らした今までにない新規な木製装飾品、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】原木を光が透ける厚さで径方向に切断してなると共に外周面の一部に平面部2aが設けられた複数の板状部材2を、夫々の前記平面部2aにて互いに突き合せて接合してなることを特徴とする木製装飾品。また、原木を長さ方向に切断して原木の外周面の一部に平面部2aを形成し、外周面の一部に平面部2aが形成された原木を光が透ける厚さで径方向に切断して複数の板状部材2を形成し、前記複数の板状部材2を夫々の前記平面部2aにて互いに突き合せて接合することを特徴とする木製装飾品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材によって形成された装飾品であり、照明器具の飾り、窓の飾り、欄間の飾り、置物、看板、衝立等、種々の装飾品として用いることのできる木製装飾品、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前より、流木や切り株を用いた壁飾りや置物等、木の外観形状の自然美を生かした木製装飾品がある。また、木の原木を長さ方向や径方向に切断して、縦切りや輪切りの板状とした看板や衝立等、原木の外観形状や木目の自然美を生かした木製装飾品がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
木の自然美を生かした木製装飾品としては、上述のように流木や切り株そのものを用いたものや、原木から板状に切出したもの等、種々のものがあるが、従来既存のものに限らず、工夫を凝らした今までにない新規な木製装飾品が望まれる。
【0004】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、自然美を生かした木製装飾品であり、工夫を凝らした今までにない新規な木製装飾品、及びその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、まず、木製装飾品としては、
「原木を光が透ける厚さで径方向に切断してなると共に外周面の一部に平面部が設けられた複数の板状部材を、夫々の前記平面部にて互いに突き合せて接合してなることを特徴とする木製装飾品」
である。
【0006】
ここで、原木の径方向とは、原木の軸に対して直交する方向に限らず、原木の軸に対して斜め方向を含むものであり、換言すれば、原木の軸方向と交差する方向を示すものである。また、原木が枝分かれした部分等のように複数の軸を有するものである場合には、切断方向が少なくとも一つの軸に対して径方向となっていればよい。
【0007】
上記構成の木製装飾品では、原木の外観を有する複数の板状部材を組み合わせてなるものであることから、原木を単純に縦切りや輪切りにした従来の木製装飾品よりも、原木の外形の自然美を生かしつつ複雑な外観形状を実現することができる。
【0008】
また、各板状部材は、光が透ける厚さで板状に切出されたものであるため、照明器具の飾りや窓の飾り等として用いることで、光を透かす趣のある木製装飾品を実現することができる。
【0009】
よって、上記構成によれば、自然美を生かした木製装飾品であり、工夫を凝らした今までにない新規な木製装飾品を実現することができる。
【0010】
なお、一つの木製装飾品として用いる板状部材は、少なくとも二つであればよく、二つの板状部材を一体化して一つの木製装飾品とする場合には、各板状部材として、夫々一つの平面部が設けられたものを用いればよい。
【0011】
また、三つの板状部材を一体化して一つの木製装飾品とする場合には、各板状部材として、互いでなす角が120°となった二つの平面部が設けられたものを用いて、夫々の平面部に他の板状部材の平面部を突き合わすようすればよい。さらには、四つの板状部材を一体化して一つの木製装飾品とする場合には、各板状部材として、互いでなす角が90°となった二つの平面部が設けられたものを用いればよい。すなわち、三つ以上の板状部材を用いる場合には、夫々の板状部材として、互いでなす角が「360°/板状部材の数」となった二つの平面部を有するものを用いればよい。
【0012】
上述した手段において、
「前記複数の板状部材の少なくとも一つは、年輪の中心を含むことを特徴とする木製装飾品」
とするのが好適である。
【0013】
少なくとも一つの板状部材に年輪の中心を含ませることで、木製装飾品に表れる木目において、年輪の中心をあたかも鳥や動物等の生物の目のように見せることができ、生物を模した木製装飾品を実現することができる。
【0014】
なお、一つの年輪の中心を含んだ板状部材を二つ用いたり、原木の枝分かれした部分を輪切りにすることで一つの板状部材に二つの年輪の中心を含ませたりすれば、木製装飾品全体の木目において、生物の二つの目、すなわち両目を表すことができる。
【0015】
次に、木製装飾品の製造方法としては、
「原木を長さ方向に切断して原木の外周面の一部に平面部を形成し、
外周面の一部に平面部が形成された原木を光が透ける厚さで径方向に切断して複数の板状部材を形成し、
前記複数の板状部材を夫々の前記平面部にて互いに突き合せて接合する
ことを特徴とする木製装飾品の製造方法」
である。
【0016】
外周面の一部に平面部を有する板状部材を形成する場合、原木を径方向に切断して複数の板状部材を順次切出した後、個々の板状部材の外周面の一部を切除して平面部を形成してもよいが、このような手法によると、多数の板状部材を形成する場合に作業が面倒である。
【0017】
そこで、上記構成の木製装飾品の製造方法では、原木を長さ方向に切断し、この切断面によって予め平面部を形成した後、原木を径方向に切断して複数の板状部材を原木から順次切出すことで、原木から多数の板状部材を簡便に形成することができる。
【0018】
上述した手段において、
「前記複数の板状部材は、原木から順次切出された二つの板状部材であり、
二つの板状部材において相互の切断面が同一側の面となるように二つの板状部材を組み合わせる
ことを特徴とする木製装飾品の製造方法」
とするのが好適である。
【0019】
三つ以上の板状部材を組み合わせた場合や、二つの板状部材の組み合わせであっても、二つの板状部材が原木の大きく異なる部位から切出されたものであった場合では、出来上がった木製装飾品の外郭形状が対称形状となり難い。また、各板状部材において、夫々の平面部の形状が大きく異なり、平面部同士を突き合せても一体感が得られないこともある。
【0020】
ここで、木製装飾品の外郭形状が対称形状であれば、ロールシャッハテストの図柄のように、見る者にとって「何かに見える」といった外郭形状を実現できることから望ましい。また、突き合わせる平面部が近似する形状であれば、複数の板状部材を組み合わせた場合に全体の一体感が得られ易い。
【0021】
そこで、上記構成の木製装飾品の製造方法では、原木から順次切出した二つの板状部材を用いて木製装飾品を形成することで、外郭形状が対称形状に近く、また、二つの板状部材の一体感が得られた木製装飾品を実現することができる。
【0022】
また、原木から順次切出された二つの板状部材において、一方に対して他方を裏返して相互の切断面同士が同一の面となるように組み合わせることで、相互の切断面側を表側の面とした場合に、表側の面の外郭形状や木目が、平面部を対称線とした線対称形状に極めて近似させることができる。
【発明の効果】
【0023】
上述した通り、本発明によれば、自然美を生かした木製装飾品であり、工夫を凝らした今までにない新規な木製装飾品、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】原木に平面部を形成する状態を示す斜視図である。
【図2】原木から個々の板状部材を切出す状態を示す斜視図である。
【図3】二つの板状部材を接合して一つの木製装飾品を形成する状態を示す斜視図である。
【図4】図1〜図3の手法によって形成された木製装飾品を示す斜視図である。
【図5】木製装飾品の別の例を示す斜視図である。
【図6】木製装飾品の使用例を示す斜視図である。
【図7】木製装飾品の別の使用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る木製装飾品及びその製造方法の実施形態としての一例を、以下、図面に従って詳細に説明する。
【0026】
まず、図1に示すように、原木1を長さ方向に切断し、原木1の外周面に平面部2aを形成する。
【0027】
ここで、原木1としては、松等、樹脂を多く含む木材や、ケヤキ、ナラ等、導管の多い木材が好ましい。何故ならば、後述するように光を透かす厚さで切出す場合に、厚く切出しても光を透かし易いからである。また、松を木材とする場合には、赤松や黒松を採用するのが好ましい。透かした光に赤みを帯びさせることができ、趣を高めることができることからある。
【0028】
また、原木1としては、立ち枯れた木や折れた枝等の朽木や、流木が好ましい。樹脂を多く含む木材では、朽木や流木ならば樹脂が完全に硬化しており、使い勝手がよいからである。
【0029】
次に、図2に示すように、外周面の一部に平面部2aを有する原木1を径方向に切断して、複数の板状部材2を順次切出す。ここで、板状部材2は、光が透ける厚さとする。すると、原木1を光が透ける厚さで径方向に切断してなると共に外周面の一部に平面部2aが設けられた複数の板状部材2が形成される。
【0030】
なお、板状部材の厚さを1〜2mm程度とすれば、たいていの木材において光が透けるのであるが、ケヤキやナラ等の導管が多い木材であれば、5mm程度の厚さでも光が十分に透け、松等の樹脂を多く含む木材であれば、10mm程度の厚さとしても、光が十分に透ける。
【0031】
最後に、図3に示すように、原木1から順次切出した二つの板状部材2を、相互の切断面が同一側の面となるように一方を裏返し(矢印A参照)、夫々の平面部2aを突き合わせるようにして(矢印B参照)、接着剤によって接合する。すると、図4に示すように、原木1を光が透ける厚さで径方向に切断してなると共に外周面の一部に平面部2aが設けられた複数の板状部材2を、夫々の平面部2aにて互いに突き合せて接合してなる木製装飾品10が形成される。また、このように形成された木製装飾品10では、二つの板状部材2における相互の切断面を表側の面として見ると、突き合わせて接合した平面部2aの接合線を対象線として、左右に線対称な形状に極めて近似する外郭形状及び木目模様となる。
【0032】
ところで、上述の例では、二つの板状部材2を、夫々、原木1の年輪の中心を含むものとしている。よって、木製装飾品10は、二つの年輪の中心を有するものとなり、二つの年輪の中心が、あたかも生物の両目のような雰囲気をかもし出し、生物を模した木製装飾品10となる。具体的に、図4に示す木製装飾品10は、見る者にとって、フクロウやミミズクのように見える。
【0033】
なお、図5に示すように、板状部材2を、年輪の中心を含まないものとしてもよく、さらには、原木1として、外周面全体が木材の外皮1aとなっておらず、一部が朽ち果てた破断面1bとなっている原木1を用いてもよい。このような場合でも、見る者にとって「何かに見える」といった木製装飾品10を形成することができる。具体的に、図5に示す木製装飾品10は、見る者にとって、カニのように見える。
【0034】
このような木製装飾品10は、種々の用途で使用することができる。例えば、図6に示すように、照明器具20において、シェード21に貼られる和紙22にすき込めば、電球等の光源23からの光を透かす飾りとして用いることができる。なお、このように木製装飾品10を和紙22にすき込む場合には、すき込みやすいように、木製装飾品10を厚さが1〜3mm程度の薄いものとすればよい。
【0035】
また、図7に示すように、照明器具20において、シェード21の枠組み24に組み込むことでも、電球等の光源23からの光を透かす飾りとして用いることができる。なお、このように木製装飾品10を枠組み24に組み込む場合には、堅固に組み込めるように、木製装飾品10を厚さが5〜10mm程度の厚いものとすればよい。
【0036】
また、照明器具20に限らず、本発明に係る木製装飾品は、
・ガラス窓や障子窓に貼り付けて、外の光を透かす窓の飾りとする
・置物として窓辺に置いたり、下げ飾りとして窓辺にぶら下げる
・光源が内蔵された額縁に入れて、芸術品や工芸品とする
・日本間の欄間の飾りとする
・木製装飾品を単体で用いて、看板や衝立とする
等、種々の用途で使用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 原木
1a 外皮
1b 破断面
2 板状部材
2a 平面部
10 木製装飾品
20 照明器具
21 シェード
22 和紙
23 光源
24 枠組み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原木を光が透ける厚さで径方向に切断してなると共に外周面の一部に平面部が設けられた複数の板状部材を、夫々の前記平面部にて互いに突き合せて接合してなることを特徴とする木製装飾品。
【請求項2】
前記複数の板状部材の少なくとも一つは、年輪の中心を含むことを特徴とする請求項1に記載の木製装飾品。
【請求項3】
原木を長さ方向に切断して原木の外周面の一部に平面部を形成し、
外周面の一部に平面部が形成された原木を光が透ける厚さで径方向に切断して複数の板状部材を形成し、
前記複数の板状部材を夫々の前記平面部にて互いに突き合せて接合する
ことを特徴とする木製装飾品の製造方法。
【請求項4】
前記複数の板状部材は、原木から順次切出された二つの板状部材であり、
二つの板状部材において相互の切断面が同一側の面となるように二つの板状部材を組み合わせる
ことを特徴とする請求項3に記載の木製装飾品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−121141(P2012−121141A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271013(P2010−271013)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(310015226)