説明

木質ポリオレフィン樹脂組成物

【課題】溶融粘度が低く、成形性に優れるとともに、天然木材に近い良好な木質感を付与することが可能で、しかも成形時の変色(焼けこげ)が抑制され、得られる成形品の耐衝撃性や曲げ弾性率などの機械的強度に優れる木質ポリオレフィン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂100重量部に対して木粉20〜200重量部と、植物油あるいは不飽和脂肪酸のエポキシ化物からなる可塑剤4〜30重量部とを配合して目的の木質ポリオレフィン樹脂組成物を得る。特に、ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)が1〜30であり、木粉の平均粒径が30〜500μmであり、植物油あるいは不飽和脂肪酸のエポキシ化物からなる可塑剤のオキシラン酸素が4重量%以上であるものが好ましい。この木質ポリオレフィン樹脂組成物は、特に射出成形品の成形に好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性に優れ、機械的強度が高く、天然木材に近い木質感を有する木質ポリオレフィン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人に優しい住まいとして、個人の生活環境に自然を採り入れる傾向がある。リビングルーム、廊下、テーブル、椅子、玄関などに木の温もりや木質感を付与することを目的として、従来のじゅうたん、プラスチックタイル、ケミカルエンボス床材等に代わり、木製のフローリングが採用されたり、窓際、幅木、長押、階段手摺り等の建材に多くの木材が使用されたりしている。また、園芸用品、家庭用品、介護用トイレ、文房具等にも木の温もりを求める動きが高まり、木材を用いることが多くなっている。
【0003】
しかし、木材の使用は、樹木の伐採に繋がることから、地球資源の浪費を招く危険性を有している。従って、快適な住環境を形成するため、木材を無駄なく有効に活用しつつ、成長の早い樹種で森林育成を行うこと等により、地球環境を健全な状態で保護するような調和の取れた社会の構築が求められている。
【0004】
一方、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂に木粉を配合した樹脂組成物を成形して、建築材料等を製造する方法が提案されている。このような方法によれば、機械的強度が大きく、木材に近い外観や触感を有する成形品を得ることができ、かつ製材時に副生する木片や建て替え時に発生する廃材等を木粉として使用すれば、地球資源を有効活用することが可能になる。
【0005】
このような樹脂組成物は、木粉の配合量を多くすることで、より天然木材に近い木質感を得ることが可能となる。しかし、樹脂組成物に木粉が多量に存在すると、溶融時の流動性が低下し、溶融粘度が上昇することによって、樹脂組成物の成形性が低下し、生産性に悪影響を及ぼす。また、得られた成形品の表面状態や形状等に不具合が発生し、品質面で問題が生じる。
【0006】
これらの問題を解決するために、下記の特許文献1には、高級脂肪酸、脂肪酸アルコールエステル、高級脂肪酸アミド、多価アルコールのエポキシ化合物との反応によるエーテル化物等の樹脂用加工助剤を含浸させた木粉を、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂に含有させてなる樹脂組成物から成形品を得る方法が開示されている。また、下記の特許文献2には、木粉と部分鹸化脂肪酸エステルおよび/または変性ポリエチレンとを予備混合し、これを塩化ビニル樹脂に含有させてなる樹脂組成物から成形品を得る方法が開示されている。
【0007】
ところが、これらの方法は予め木粉に含浸処理や予備混合を行う必要があるため作業が煩雑になる。かつ天然木材に近い木質感を得るために比較的多量の木粉を配合した場合には、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂に均一に混合分散させることが難しくなり、また溶融粘度も高くなって成形性も低下するため、依然として問題があった。
【特許文献1】特開昭54−72247号公報
【特許文献2】特開平8−337701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、その目的とするところは、溶融粘度が低く、成形性に優れるとともに、天然木材に近い良好な木質感を付与することが可能で、しかも成形時の変色(焼けこげ)が抑制され、得られる成形品が耐衝撃性や曲げ弾性率などの機械的強度に優れる、木質ポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意研究を行った結果が、ポリオレフィン樹脂に木粉と、植物油あるいは不飽和脂肪酸のエポキシ化物からなる可塑剤とを配合することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、第1の発明に係る木質ポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して木粉20〜200重量部と、植物油あるいは不飽和脂肪酸のエポキシ化物からなる可塑剤4〜30重量部とを含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、第2の発明に係る木質ポリオレフィン樹脂組成物は、上記第1の発明において、木質ポリオレフィン樹脂組成物を射出成形品の成形に用いることを特徴とするものである。
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明に用いるポリオレフィン樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)等が挙げられる。特に、軽量で剛性、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性などの製品物性や成形性に優れ、かつ比較的に低価格であることから、ポリプロピレン(PP)が好ましい。
【0014】
上記ポリオレフィン樹脂は、メルトフローレート(MFR)が1〜30のものが好適に用いられが、特に3〜26のものが好ましい。ポリオレフィン樹脂のMFRが過度に高くなると、得られる成形品の機械的強度が低くなり、逆にMFRが過度に低くなると、溶融混練が容易でなくなり樹脂組成物中に木粉を均一に分散させることが難しくなる。
ここで、ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準拠して測定される。
【0015】
上記ポリオレフィン樹脂は、新しい原料樹脂のほか、回収されたポリオレフィン樹脂成形品を利用することができる。このように回収されたポリオレフィン樹脂成形品を再利用することは、環境保護および資源保護に加えて製造コストの低減の観点からも意義がある。回収されたポリオレフィン樹脂成形品を利用する場合は、他の成分を均一に混合しやすいように、粉砕や裁断などによりその粒径範囲を10μm〜10mmとしたものが好ましく、200μm〜5mmの粒径範囲がさらに好ましい。
【0016】
また、本発明に用いる木粉としては、特に限定されず、例えば、杉、檜、松、栂、ラワン、チーク等の針葉樹や広葉樹の材木片、鉋屑、鋸屑などを用いることができる。また、木材を製材する際に副生する木片や住宅の建て替え時に発生する廃材を用いることもできる。このような木粉を用いることにより、製造コストの低減が可能となり、環境保護や資源保護を実現することができる。
【0017】
上記木粉の平均粒径は30〜700μmが好ましく、50〜500μmの平均粒径がさらに好ましい。平均粒径が30μm未満では、嵩比重が低下し、そのため得られる成形品の強度が低下する恐れがあり、逆に平均粒径が700μmを超えると、樹脂組成物を用いて射出成形を行った場合に、ノズル部分での詰まりが発生しやすくなり、その結果、成形品の表面が荒れて、木質感が低下することがある。ここで、上記木粉の平均粒子径は、木粉を篩いにより分級して目開きに対する累積重量%曲線を作成し、その50重量%に相当する目開きの値を意味する。このような平均粒径を有する木粉を得る方法としては、特に限定されず、例えば粉砕機を用いて木材を粉末にする方法が挙げられる。
【0018】
木粉には、通常、数%〜数十%の水分が含まれている。本発明においては、木粉を例えば50〜60℃で30〜40時間乾燥させることにより、含水量を10重量%以下とした木粉を用いるのが好ましい。木粉の含水量が10重量%を超えると、樹脂組成物を用いて成形を行った場合に、成形品の中に気泡が発生し、機械的強度が低下したり、外観を損ねたりする恐れがある。より好ましい含水量は5重量%以下である。
【0019】
また、本発明においては、植物油あるいは不飽和脂肪酸の、エポキシ化物からなる可塑剤(以下、「エポキシ化可塑剤」という)を用いる。このようなエポキシ化可塑剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化不飽和トリグリセライドあるいはエポキシ化不飽和脂肪酸オクチルエステル、エポキシ化不飽和脂肪酸デシルエステル、エポキシ化不飽和脂肪酸ブチル等のエポキシ化不飽和脂肪酸モノエステル類などが挙げられる。
【0020】
上記エポキシ化可塑剤においては、オキシラン酸素量は、特に限定されないが、オキシラン酸素量が4重量%以上のものが好ましい。オキシラン酸素量が4重量%以上のものを用いると、樹脂組成物において、木粉の水酸基とエポキシ化可塑剤のエポキシ基とが反応することにより、相溶化剤的役割を持つことができ、この樹脂組成物から得られる成形品の衝撃強さや曲げ弾性率などの機械的強度を高めることができる。エポキシ化可塑剤のオキシラン酸素量が4重量%未満の場合は、相溶化剤的役割が不十分で、成形品の耐衝撃性が低下し、特に射出成形体の場合は、ウエルド部分で割れが発生しやすくなる。ここで、オキシラン酸素量は、試料を氷酢酸に溶解させ、臭化水素酸−氷酢酸溶液で滴定を行い、試料に含まれるオキシラン酸素量を求める基準油脂分析試験法に基づき測定される。
【0021】
しかして、本発明においては、上記ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、上記木粉20〜200重量部が配合される。木粉の配合量が20重量部未満であると、天然木材に近い良好な木質感および外観を付与することが難しくなり、逆に200重量部を超えると、樹脂への木粉の分散性が悪化するとともに、樹脂組成物の溶融粘度が上昇し、射出成形などの成形性が低下する。木粉の好ましい配合量は50〜150重量部である。
【0022】
さらに、本発明においては、上記ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、上記エポキシ化可塑剤4〜30重量部が配合される。エポキシ化可塑剤の配合量が4重量部未満であると、樹脂組成物の溶融粘度の低下効果が十分に発現せず、逆に30重量部を超えると、樹脂組成物から得られる成形品の曲げ弾性率が著しく低下し、実用上で問題となる。エポキシ化可塑剤のより好ましい配合量は10〜20重量部である。
【0023】
なお、必要に応じて、さらに通常のポリオレフィン樹脂の加工時に用いられる添加剤、例えば、相溶化剤、熱安定剤、加工助剤、滑剤、充填剤、着色剤、耐衝撃強化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、発泡剤等を配合してもよい。
【0024】
本発明の木質ポリオレフィン樹脂組成物を調製する方法としては、上記ポリオレフィン樹脂、木粉、エポキシ化可塑剤、その他の添加剤を一括してヘンシェルミキサーなどの混合機に投入し、激しく撹拌しつつ120〜190℃に昇温する方法が簡便で好ましい。この混合の過程で、木粉に吸収されている水分の大部分を揮散させる。ヘンシェルミキサーなどを用いて全成分を一括投入し混合することにより、嵩比重が大きく、木粉、エポキシ化可塑剤、その他の添加剤が均一に分散した混合物を得ることができる。
【0025】
上記の温度に到達した後、混合物をクーリングミキサーに移して、50〜60℃に温度を下げる。クーリングミキサー中の混合物の温度が十分に低下した後、クーリングミキサーから混合物を粉末の状態で取り出す。取り出された粉末状の混合物は、そのまま成形用のコンパウンドとすることができるが、さらに押出機で溶融混練してペレット化することが好ましい。
【0026】
ペレット化の好ましい方法としては、例えば、ベント付き一軸押出機または二軸押出機を用い、シリンダー温度、ダイス温度を150〜190℃とし、ベント孔から木粉中の残留水分を排除しつつ、ペレット化する方法が採用される。こうして、本発明の木質ポリオレフィン樹脂組成物が得られる。
【0027】
本発明の木質ポリオレフィン樹脂組成物を用いて、天然木材に近似する木質感に富んだ各種の成形品を得ることができる。この木質ポリオレフィン樹脂組成物を用いて成形品を成形する方法としては、特に限定されず、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形等の公知の成形方法を用いることができる。これ等の成形法により成形を行う場合、成形時の樹脂温度は190℃以下とすることが好ましい。樹脂温度が190℃を超えると、溶融粘度は低下するが、木粉中に含有されるヘミセルロース、セルロース、リグニン成分等が熱分解し、成形品に変色(焼けこげ)が発生しやすくなるとともに、木酢酸ガスなどの金属腐食性ガスが発生し、金型等の成形機に錆びが発生しやすくなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、溶融粘度が低く、成形性に優れるとともに、天然木材に近い良好な木質感を付与することが可能で、しかも成形時の変色(焼けこげ)が抑制され、得られる成形品の耐衝撃性や曲げ弾性率などの機械的強度に優れる木質ポリオレフィン樹脂組成物が得られる。
【0029】
このような効果が得られる理由は次のように推察される。すなわち、疎水性であるポリオィン樹脂と親水性である木片とは、親和性に乏しく本来相溶しない。ところが、本発明では、エポキシ化可塑剤を配合することにより、溶融混練の際に木粉の水酸基とエポキシ化可塑剤のエポキシ基とが反応することにより、木粉の表面をエポキシ化可塑剤が覆って、ポリオレフィン樹脂中への木粉の分散性およびこの樹脂との接着性が高まり相溶化剤的役割を持つこととなり、さらに成形加工時にエポキシ化可塑剤による可塑性と滑性とにより、樹脂組成物の溶融粘度が低くなる。
【0030】
それゆえ、多量の木粉を配合しても、樹脂組成物の溶融粘度が低下し、成形時の変色(焼けこげ)が抑制され、成形品の木質外観と物性、特に耐衝撃性、曲げ弾性率を従来法では到達し得なかった水準にまで向上させることができる。特に、本発明の木質ポリオレフィン樹脂組成物を用いて射出成形体を成形する場合は、ウエルド部分で割れが発生しなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
(実施例1〜5および比較例1〜6)
表1に示す配合比に基づき、下記ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、木粉、エポキシ化可塑剤(エポキシ化大豆油、エポキシ化不飽和脂肪酸オクチルエステル)、その他、エポキシ化熱可塑性エラストマー、ステアリン酸亜鉛を秤量し実施例1〜5および比較例1〜6の配合毎にヘンシェルミキサーに仕込んで高速混合しつつ木粉中の水分の大部分を水蒸気として揮散させた。温度が上昇して169℃に達した時点で、混合物をクーリングミキサーに移して低速混合し50℃まで下げた。得られた粉末状の混合物をシリンダー径40mmのベント孔付き二軸異方向押出機により、ベント孔から残る水分を揮散させながら下記条件で溶融押出し、ペレタイザーによりペレット化した。
【0033】
配合物
PP樹脂(出光石油化学社製:「J466HP」、MFR=3)
木粉(檜粉、含水量:3重量%、粒径範囲:0.1〜0.5mm、平均粒径:0.35mm)
エポキシ化可塑剤(旭電化社製:「 エポキシ化大豆油 O−130P」、オキシラン酸素量=6.9重量%)
エポキシ化可塑剤(旭電化社製:「エポキシ化不飽和脂肪酸オクチルエステル D−32」オキシラン酸素量=4.3重量%)
エポキシ化熱可塑剤エラストマー(ダイセル化学社製:「 エポフレンド CT−301」、オキシラン酸素量=0.7重量%)
ステアリン酸亜鉛(旭電化社製:「SZ−2000」)
【0034】
押出条件
スクリュー:回転数35rpm
フィード :回転数10rpm
成形温度 :C1=180℃、C2=185℃、C3=190℃
アダプター=185℃、ダイス=185℃
ダイス :3mmΦ×2孔
冷却 :空気冷却
【0035】
得られた木質ポリプロピレン樹脂組成物のペレットを用いて、次の方法により溶融粘度、射出成形性、成形品の外観、成形品の衝撃強さおよび成形品の曲げ弾性率の評価を行った。その結果をまとめて表1に示す。
【0036】
(1)溶融粘度の測定
ペレットをキャピラリーレオメーター(東洋精機製作所製)に入れ、JIS K 7199に準拠し、次の条件で測定した。
バレル径 :9.55mm
バレル全長 :350mm
キャピラリー径 :1mm
キャピラリー長 :10mm
測定温度 :190℃
せん断速度 :6080sec−1
【0037】
(2)射出成形性の評価
ペレットを射出成形機(型締力:30トン、射出一回当たりの最大射出量:12g、シリンダー径:15mm)により、下記の条件で射出成形し、下記の判定基準により成形性を評価した。また、ペレットを射出成形機(型締力:160トン、射出一回当たりの最大射出量:147g、シリンダー径:36mm)により、下記の条件で射出成形し、得られた成形品を観察し、下記の評価基準により評価した。
【0038】
スクリュー:ノンフライト型、回転数60rpm
設定温度 :C1=180℃、C2=185℃、C3=190℃
C4=190℃、ヘッド=190℃
金型 :耐衝撃性評価サンプル作製の場合、JIS K7110に基づく金型
曲げ弾性評価サンプル作成の場合、JIS K 7171に基づく金型
【0039】
射出成形性の評価基準
○:成形品の重量が12gおよび147gのいずれの場合でも、射出成形が良好である。
△:成形品の重量が12gの場合は、射出成形が良好である。ただし、成形品の重量100gの場合は、成形品が充填不足(ショート)ぎみになる。
×:成形品の重量が12gおよび147gのいずれの場合でも、成形品が充填不足(ショート)ぎみになる。
【0040】
(3)成形品の外観
○:木質感があり、天然木に近い肌触りである。
×:表面光沢があり、木質感がない。
【0041】
(4)成形品の色差
成形品の表面の色差を、色差計(東京電飾製:model TC−1800MK II)を用い、JIS K 7105に準拠し、反射角が10度の条件でLab法により評価した。ここで、L値が大きいほど成形品の白色度が高く、L値が低いほど成形品の黒色度(焦げ茶具合)が増す。
【0042】
(5)成形品の衝撃強さの測定
JIS K 7110に準拠し、Vノッチ付き、振り子型ハンマーが30kgの条件で測定した。
【0043】
(6)成形品の曲げ弾性率の測定
成形品の曲げ弾性率を、テンシロン(オリエンテック製:UTA−500)を用い、JIS K 7171に準拠し、支点間距離が60mm、可動部のクロスヘッド速度が2.0mm/分の条件で測定した。
【表1】

【0044】
表1に示すように、ポリオレフィン樹脂と木粉とにエポキシ化可塑剤を配合した本発明の樹脂組成物(実施例1〜5)では、組成物の溶融粘度が低く、射出成形性が良好であり、かつ得られた成形品表面の木質感が良好で、成形に伴う変色(焼けこげ)がわずかであり、しかも高い耐衝撃性および高い曲げ弾性率を有していた。一方、木粉配合量が過度に少ない場合(比較例5)は成形品表面に木質感がなかった。また、木粉を過度に配合した場合(比較例6)や、エポキシ化可塑剤を配合しない場合や配合量が過度に少ない場合(比較例1〜3)では、溶融粘度が高く、成形品が充填不足(ショート)ぎみとなり、成形に伴う変色が大で、耐衝撃性が低めであった。また、エポキシ化可塑剤の配合量が過度に多い場合(比較例4)は曲げ弾性率が著しく低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂100重量部に対して木粉20〜200重量部と、植物油あるいは不飽和脂肪酸のエポキシ化物からなる可塑剤4〜30重量部とを含むことを特徴とする木質ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項2】
射出成形品の成形に用いることを特徴とする請求項1に記載の木質ポリオレフィン樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−36815(P2006−36815A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214648(P2004−214648)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】