説明

【課題】組立て易く、使用する板状部材が少なく、上面が反り難い天板を備えた机を提供する。
【解決手段】板状部材を折曲形成してなる天板体20と、天板体20を支持している脚体11とを備えた机10であって、天板体20は、底板部22と、前天板部23と、後天板部24と、前天板部23の後端から下方へ折曲されている前立板部25と、後天板部24の前端から下方へ折曲されている後立板部26とを有し、脚体11を嵌入する嵌入孔21が底板部22に開口し、脚体11は、嵌入孔21に嵌入され、脚体11の上部に形成された脚体切込12で互いに重なり合う前立板部25と後立板部26とを挟持していることを特徴とする机。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール等の板状部材を天板に用いた机に関するものである。
【背景技術】
【0002】
枕机には、予め木材から切り出されている部材を、使用時に組立て使うものが多く用いられている。
【0003】
木材からなる枕机は、性能的には優れているものの、コストが高く、組立てに時間がかかっていた。枕机は、短期間だけ使用して、使い回されることなく廃棄される(使い捨て)場合も少なくない。また、木製であることから、リサイクルし難かった。そのため、木材からなる枕机は、壊れる前に焼却処分されていた。
【0004】
コストが低く、リサイクル可能な材料として、例えば、段ボール等がある。特許文献1には、図12に示すように、傾斜した台下面93に添設されて天板面91に直交する中央リブ94と中央リブ94に添設され天板面91の裏面に添着している天板補強面92とを有する台部95と、台部95を支持する脚部96とを備えた段ボール製の幼児用の机90が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−52338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の机90は、天板が天板面91と天板補強面92との二重になっていることから、多くの段ボールを使用しなくてはならず、コストが高くなっていた。その上、天板面91(特に中央)の浮き上がりを防止する機能が弱いことから、天板面91に反りが生じた場合には、天板面91の中央が上方に浮き上がってしまい、天板面91と天板補強面92との間に隙間が生じて、がばがばになっていた。そのため、燭台等のように重心が高いものや、座りが悪いものを載置すると転倒してしまうおそれがあった。また、台部95と脚部96との係合が弱く、特に、左右の内側方向(矢印Aの方向)への脚部96の傾きの規制は、台部95の開口97の縁のみで行っていることから、脚部96が傾いてしまうおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、組立て易く、使用する板状部材が少なく、上面が反り難い天板を備えた机を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、板状部材を折曲形成した天板体を、側面視において、逆三角形状にすることで変形していびつになり難くする。また、天板を前天板部と後天板部とに二分割し、前天板部から折曲された前立板部と後天板部から折曲された後立板部とが重なり合った状態で脚体の脚体切込に挟持されていることで、前天板部及び後天板部を共に反り難くする。
【0009】
本発明の机は、板状部材を折曲形成してなる天板体と、前記天板体を支持している脚体とを備えた机であって、前記天板体は、左右方向に延びる一本の折曲線部で折曲され前記折曲線部より前側の前部が前側上方に傾斜し、前記折曲線部より後側の後部が後側上方に傾斜している底板部と、前記底板部の前端から後方へ水平に折曲され前記折曲線部の上方まで延びている前天板部と、前記底板部の後端から前方へ水平に折曲され前記折曲線部の上方まで延びている後天板部と、前記前天板部の後端から下方へ垂直に折曲され下端が前記折曲線部に当接している前立板部と、前記後天板部の前端から下方へ垂直に折曲され下端が前記折曲線部に当接している後立板部とを有し、前記脚体を嵌入する嵌入孔が前記底板部に開口し、前記脚体は、前記嵌入孔に嵌入され、前記脚体の上部に形成された脚体切込で互いに重なり合う前記前立板部と後立板部とを挟持していることを特徴とする。
【0010】
机の態様は、特に限定はされないが、脚体が一つでもよいし、二つ以上でもよい。
【0011】
脚体は、特に限定はされないが、軽量になることから、板状部材を筒状に形成したものであることが好ましく、製造し易いことから、天板体に用いられる板状部材と同じものを筒状に形成したものであることがより好ましい。また、使用耐荷重が向上することから、上端が前天板部及び後天板部に当接していることが好ましい。
【0012】
また、前立板部と後立板部とが離間し難くなり、前天板部と後天板部とがさらに反り難くなることから、脚体切込の深さは、前立板部及び後立板部の上下方向の長さの半分以上であることが好ましい。
【0013】
天板体は、特に限定はされないが、前立板部と後立板部とが底板部に固定され、前天板部と後天板部とがさらに反り難くなることから、折曲線部に止孔が形成され、前立板部及び後立板部の下端に該下端から下方に突出して止孔に係止される係止突片が形成されていることが好ましい。脚体が一対(二つ)の場合には、止孔は一対の脚体の間の部位に形成されていることが好ましい。これは、一対の脚体の間に位置する前立板部及び後立板部の部位が底板部に固定され、一対の脚体の間の前天板部と後天板部との部位が反り難くなるからである。また、前天板部と後天板部との間に隙間が生じ難くなるからである。
【0014】
また、脚体が板状部材を筒状に形成したものである場合には、前立板部及び後立板部に、脚体の左右の少なくとも一方の側板部を挟持する立板切込が形成されていることが好ましく、左右両方の側板部を挟持する二つの立板切込が形成されていることがより好ましい。これは、脚体の左右の側板部が立板切込に挟持されることで、脚体が傾き(特に左右方向の傾き)難くなり、机の安定性が向上するからである。また、脚体が天板体から脱落し難くなるからである。
【0015】
また、二つの立板切込の間にある当接片の態様は、特に限定はされないが、前立板部及び後立板部の下端より下方に突出して嵌入孔に挿入されていることが好ましい。これは、当接片の下部と嵌入孔の縁とで脚体を挟持することができ、脚体がさらに傾き難くなるからである。
【0016】
板状部材としては、特に限定はされないが、容易に折曲形成できる易折曲性板状部材、例えば、段ボール、厚紙、プラスチックシート、プラダン(プラスチック段ボール)等が好ましい。また、段ボール、厚紙、プラスチックシート、プラダンは、軽量である点も好ましい。
【0017】
机は、用途が枕机に限定されるものではなく、祭壇等の飾りを載置する机や、子供用机等の用途が例示できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、組立て易く、使用する板状部材が少なく、上面が反り難い天板を備えた机を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例の机の斜視図である。
【図2】同机の分解斜視図である。
【図3】同机の一部を破断させた下から見上げた斜視図である。
【図4】同机の正面図である。
【図5】同机の平面図である。
【図6】同机の右側面図である。
【図7】同机の脚体の展開図である。
【図8】同机の天板体の展開図である。
【図9】同机の天板体の折曲形成途中の斜視図である。
【図10】同机の第一の変更例の斜視図である。
【図11】同机の第二の変更例の斜視図である。
【図12】従来例の机の一部を分解した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0020】
本発明の机10について、図1〜図11を用いて説明する。
【0021】
机10は、天板体20と、左右方向に互いに離間し天板体20を支持する一対の脚体11とを備えている。
【0022】
脚体11は、略矩形状の段ボール15を折曲形成したものであり、段ボール15の一端側に設けられている糊代部16を他端側の内面に糊着することで、上面及び下面が共に開口した略四角筒状をしている。また、脚体11は、鉛直に起立し、起立時に上面は略水平になっている。脚体11の左右の側板部17は、前後板部18より幅広であり、前後方向の中央に上端から下方へと鉛直に延びる脚体切込12が欠成されている。脚体切込12の深さ(上下方向の長さ)は、後述する前立板部25及び後立板部26の上下方向の長さの半分以上である。
【0023】
天板体20は、略矩形状の一枚の段ボール14を折曲形成したものであり、底板部22、前天板部23、後天板部24、前立板部25及び後立板部26とを有し、側面視が略逆三角形状である。
【0024】
底板部22は、中央において左右方向に延びる一本の中央折曲線31で折曲されて二分され、中央折曲線31より前側が前部22aであり、中央折曲線31より後側が後部22bである。前部22a及び後部22bは共に左右方向に長い矩形状である。前部22aは前端が高くなるよう前側上方に傾斜している。後部22bは後端が高くなるよう後側上方に傾斜している。底板部22には、前後方向に長い矩形状に開口した嵌入孔21が二つ形成されている。それぞれの嵌入孔21は、長辺の中央で中央折曲線31と直交している。また、脚体11が嵌入されている。二つの嵌入孔21の間、即ち、一対の脚体11の間には、左右方向に長い長円状に開口した止孔28が形成されている。止孔28は中央折曲線31と重なっている。
【0025】
前天板部23は、底板部22に連結され、底板部22の前端の前折曲線32で後方へ鋭角に折曲されて、水平に設けられている。また、中央折曲線31の鉛直上方付近まで延び、左右方向に長い矩形状である。前天板部23の下面には、脚体11の上端が当接している。
【0026】
後天板部24は、底板部22に連結され、底板部22の後端の後折曲線33で前方へ鋭角に折曲されて、水平に設けられている。また、中央折曲線31の鉛直上方付近まで延び、左右方向に長い矩形状である。後天板部24の下面には、脚体11の上端が当接している。
【0027】
前天板部23と後天板部24とは略同じ大きさであり、上面が面一になっている。
【0028】
前立板部25は、前天板部23に連結され、前天板部23の後端の前中折曲線34で下方へ垂直に折曲されて、鉛直に立設されている。また、左右方向に長い略矩形状で、下端が中央折曲線31付近の底板部22の上面に当接している。止孔28に対応するところには前立板部25の下端から下方に突出した係止突片29が形成されている。それぞれの嵌入孔21に対応するところには、下端から上方に鉛直に延びる四つ(それぞれの嵌入孔21に二つずつ)の立板切込30が欠成されている。二つの立板切込30の間が当接片27である。当接片27は、前立板部25の下端より下方に突出している。
【0029】
後立板部26は、後天板部24に連結され、後天板部24の前端の後中折曲線35で下方へ垂直に折曲されて、鉛直に立設されている。また、左右方向に長い略矩形状で、下端が中央折曲線31付近の底板部22の上面に当接している。止孔28に対応するところには後立板部26の下端から下方に突出した係止突片29が形成されている。それぞれの嵌入孔21に対応するところには、下端から上方に鉛直に延びる四つ(それぞれの嵌入孔21に二つずつ)の立板切込30が欠成されている。二つの立板切込30の間が当接片27である。当接片27は、後立板部26の下端より下方に突出している。
【0030】
前立板部25と後立板部26とは、前立板部25の後面に後立板部26の前面を接触させて重なり合っている。そして重なり合った状態で脚体切込12に挿入され、脚体切込12に挟持されている。また、それぞれの係止突片29は止孔28に貫通して、係止されている。二つ立板切込30には、一つの脚体11の左右の側板部17が挿入され、側板部17を挟持している。また、当接片27は、下部が嵌入孔21に遊貫して、脚体11の内部に挿入され、左右両側が脚体11の内面に当接している。そして当接片27の下部と嵌入孔21の縁とで脚体11を挟持している。
【0031】
机10の組立て方について説明する。
先ず、段ボール14を折曲形成して、側面視が略逆三角形状に天板体20を形成する。折曲形成された天板体20は、止孔28に係止突片29を係止させて、展開しないようになっている。
次に、糊代部16を糊着して、略四角筒状に段ボール15を折曲形成した一対の脚体11を、二つの嵌入孔21に嵌入し、上端を前天板部23及び後天板部24の下面に当接させる。
【0032】
本発明の机10によれば、次の(a)〜(i)の効果が得られる。
(a)天板を前天板部23と後天板部24とに二分割し、前立板部25と後立板部26とが重なり合った状態で脚体11の脚体切込12に挟持されていることから、前天板部23及び後天板部24が共に反り難くなっている。また、前天板部23と後天板部24との間に隙間が生じ難くなっている。
(b)係止突片29が止孔28に係止されていることから、前天板部23及び後天板部24(特に一対の脚体11の間の部位)がさらに反り難くなっている。また、前天板部23と後天板部24との間に隙間がさらに生じ難くなっている。さらに、組立て時に天板体20が展開しないことから、組立てが容易に行える。
【0033】
(c)脚体11の左右の側板部17がそれぞれ立板切込30に挟持されていることから、脚体11が傾き難くなり、机の安定性が向上している。また、脚体11が脱落し難くなっている。
(d)当接片27の下部と嵌入孔21の縁とで脚体11を挟持していることから、脚体11がさらに傾き難くなり、机の安定性がさらに向上している。
【0034】
(e)側面視において、天板体20が逆三角形状であることから、変形していびつになり難くなっている。
(f)前天板部23及び後天板部24とが二重でないことから、使用する段ボールの量を少なくでき、低コストである。
(g)前天板部23及び後天板部24の下面に脚体11が当接して支持していることから、使用耐荷重が高くなっている。
【0035】
(h)段ボールからなることから、容易に折曲形成できて組立てが容易であり、リサイクルが可能であり、軽量であり、容易に折りたためてコンパクトにすることができる。
(i)前天板部23と後天板部24とからなる天板が略水平で反り難いことから、燭台等を載置しても転倒するおそれがなく、枕机として用いることができる。
【0036】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
・図10に示すように、後天板部24を前天板部23より上に設けて雛壇状にする。
・図11に示すように、前天板部23及び後天板部24のどちらか一方(後天板部24)を他方(前天板部23)より前後方向に幅広にする。
【符号の説明】
【0037】
10 机
11 脚体
12 脚体切込
20 天板体
21 嵌入孔
22 底板部
22a 前部
22b 後部
23 前天板部
24 後天板部
25 前立板部
26 後立板部
28 止孔
29 係止突片
30 立板切込
31 中央折曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材を折曲形成してなる天板体(20)と、前記天板体(20)を支持している脚体(11)とを備えた机(10)であって、
前記天板体(20)は、左右方向に延びる一本の折曲線部(31)で折曲され前記折曲線部(31)より前側の前部(22a)が前側上方に傾斜し、前記折曲線部(31)より後側の後部(22b)が後側上方に傾斜している底板部(22)と、前記底板部(22)の前端から後方へ水平に折曲され前記折曲線部(31)の上方まで延びている前天板部(23)と、前記底板部(22)の後端から前方へ水平に折曲され前記折曲線部(31)の上方まで延びている後天板部(24)と、前記前天板部(23)の後端から下方へ垂直に折曲され下端が前記折曲線部(31)に当接している前立板部(25)と、前記後天板部(24)の前端から下方へ垂直に折曲され下端が前記折曲線部(31)に当接している後立板部(26)とを有し、前記脚体(11)を嵌入する嵌入孔(21)が前記底板部(22)に開口し、
前記脚体(11)は、前記嵌入孔(21)に嵌入され、前記脚体(11)の上部に形成された脚体切込(12)で互いに重なり合う前記前立板部(25)と後立板部(26)とを挟持していることを特徴とする机。
【請求項2】
前記机(10)は、左右方向に互いに離間した一対の前記脚体(11)を備え、
前記天板体(20)は、一対の前記脚体(11)の間の前記折曲線部(31)の部位に止孔(28)が形成され、前記前立板部(25)及び後立板部(26)の下端に該下端から下方へ突出して前記止孔(28)に係止される係止突片(29)が形成されている請求項1記載の机。
【請求項3】
前記脚体(11)は、板状部材を筒状に形成したものであり、
前記前立板部(25)及び後立板部(26)には、前記脚体(11)の左右の少なくと一方の側板部(17)を挟持する立板切込(30)が形成されている請求項1又は2記載の机。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−272(P2013−272A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133116(P2011−133116)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(591117169)太陽紙工株式会社 (5)