説明

【課題】簡単、且つ安全に天板の傾斜角度を調節することができる机を提供すること。
【解決手段】床面に起立し、先端に固定金具を備える一対の前部脚部と、床面に起立する一対の後部脚部が接続部を介して上部で連結してなる後部支持体と、少なくとも前記前部脚部と前記後部支持体とを連結する連結フレームと、両端に前記固定金具に軸支される回転金具を備える支持アームと、前記支持アームの上部に設けられる天板と、を備える机であって、前記固定金具は、前記支持アームを下方へ移動させる前記回転金具の回転を規制する一方、前記支持アームを上方へ移動させる前記回転金具の回転を許容し、また、所定の解除操作によって前記規制を解除するものであって、前記支持アームは前記天板の外周に沿って略コ字状に形成され、前記天板は前記支持アーム支持されていることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板を有する机に関するものであり、特に天板の傾斜角度が調節可能な机に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、使用者の身長、座高などに応じて机の天板の高さを調節できるように天板が昇降する構造を備える机が知られている。特に、学校で使用される学童机(学校用机)は、学生(児童)の成長に伴って天板の高さを調節することができるようになっている。
【0003】
ところで、学童机は上述したように天板の高さを調節する構造を備えていることはあるが、天板の机面は、学童机が設置される床面に対して略平行(水平)に固定されていた。
【0004】
しかしながら、教室の前方で授業を行う講師(教師)や教室の前方に設置された黒板と、天板に置かれている本やノートと、を交互に見ることは、視線を略90度変更することになり、首や肩の疲労や負担が大きくなる。そこでJIS規格においては、学童机として傾斜した天板(机面)を必要とする場合に、天板(机面)の傾斜角度を10度〜16度とすることを推奨している。
【0005】
一方で、学校給食時には容器が机から落下しないように天板を水平にする必要があるため、学童机は状況に応じて天板の傾斜角度を調節することができる構造を備えることが望ましい。
【0006】
例えば特許文献1に記載されている傾斜調整机は、机面の一部に傾斜板を設け、当該傾斜版の裏面には低角度用支柱と急角度用支柱とが設けられており、一方、各支柱と対応する位置に低角度用ストッパと急角度用ストッパとが設けられており、対応する支柱とストッパとによって傾斜板の傾斜角度を調整することができることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−325235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている傾斜調整机は、傾斜角度を調整するために、一方の手で傾斜板を把持し、他方の手で支柱を操作しなければならないため両手を使う必要があり、片手で手軽に傾斜角度を調整することができない。また、傾斜角度調整中に、支柱がストッパに嵌っていない状態で傾斜板から手を離すことにより、机面と傾斜板との間に指を挟む危険がある。
【0009】
本発明は上述した問題点に鑑み、簡単、且つ安全に天板の傾斜角度を調節することができる机を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の机は、床面に起立し、先端に固定金具を備える一対の前部脚部と、床面に起立する一対の後部脚部が接続部を介して上部で連結してなる後部支持体と、少なくとも前記前部脚部と前記後部支持体とを連結する連結フレームと、両端に前記固定金具に軸支される回転金具を備える支持アームと、前記支持アームの上部に設けられる天板と、を備える机であって、前記固定金具は、前記支持アームを下方へ移動させる前記回転金具の回転を規制する一方、前記支持アームを上方へ移動させる前記回転金具の回転を許容し、また、所定の解除操作によって前記規制を解除するものであって、前記支持アームは前記天板の外周に沿って略コ字状に形成され、前記天板は前記支持アーム支持されていることを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、簡単な操作で且つ安全に天板の傾斜角度を調節することができる。
【0012】
また上記構成の机において、前記支持アームは、その両端部近傍に、屈曲部を備えて、前記天板を前記固定金具及び前記回転金具よりも高い位置で支持し、前記机は前記天板の下方に棚部材を備えることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、天板の下方に棚部材を設けても天板が高い位置で支持されることによって天板と棚部材とが干渉することがないので、棚部材を備える机を提供することができる。
【0014】
また上記構成の机において、前記後部脚部を接続する前記接続部には、前記天板が水平状態において前記天板を下方から支持する支持部材が形成されていることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、天板にかかる荷重を分散させることができるので、固定金具及び回転金具に過度の荷重がかかることを防ぐことができる。
【0016】
また上記構成の机において、前記天板は予め定められた複数の角度に段階的に調整可能であることが望ましい。
【0017】
この構成によれば、使用者が天板の傾斜角度を所望の角度に調整することが容易となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡単な操作で且つ安全に天板の傾斜角度を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】は、本発明の机の一例である学童机のパイプフレーム構造を示す概略図である。
【図2】は、本発明の机の一例である学童机が備えるラチェット機構を示す概略図である。
【図3】は、本発明の第1実施形態である学童机の構造を示す第1の側面図である。
【図4】は、本発明の第1実施形態である学童机の構造を示す上面図である。
【図5】は、本発明の第1実施形態である学童机の構造を示す第1の正面図である。
【図6】は、本発明の第1実施形態である学童机の構造を示す第2の側面図である。
【図7】は、本発明の第1実施形態である学童机の構造を示す第2の正面図である。
【図8】は、本発明の第2実施形態である学童机の構造を示す側面図である。
【図9】は、本発明の第2実施形態である学童机の構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために本発明の机の一例である学童机を示すものであって、本発明をこの学童机に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の机にも等しく適応し得るものである。
【0021】
すなわち、本発明は天板の傾斜角度を水平状態と最大傾斜角度との間で調整可能な机であればよく、例えば、上棚を備えない学習机、書見台、弱視者用机、座卓、介護用テーブル、検査台などに適用することができる。
【0022】
なお、以下の説明において、「上下」とは床面に載置(設置)される学童机において、天板側を「上」とし、床面側を「下」とする。また、「前後」とは、学童机を使用する使用者が学童机に正対する側を「前」とし、その反対側を「後」とする。また、「左右」とは、学童机を使用する使用者が学童机に正対したときにおいて使用者の右手側を「右」とし、使用者の左手側を「左」とする。
【0023】
図1は、本発明の机の一例である学童机のパイプフレーム構造を示す概略図である。学童机Dは、パイプフレームとして、床面Fから起立し、先端に固定金具20を備える左右一対の前部脚部1,1と、床面Fから起立する左右一対の後部脚部2a,2aが接続部2bを介して上部で連結してなる後部支持体2と、少なくとも前部脚部1,1と後部支持体2とを連結する連結フレーム3と、両端に固定金具20に軸支される回転金具30を備える支持アーム4とを有している。
【0024】
パイプフレームは、特に限定されるものではないが、本実施形態では金属製の中空の円筒状パイプを用いて構成されている。
【0025】
前部脚部1,1は、保護部材1a(図3等参照)を介して床面Fに起立し、その上部周辺で床面Fに略平行となるように後部に向かってアール状に屈曲し、先端には固定金具20が備えられている。固定金具20は後述する回転金具30と共にラチェット機構(角度調節用金具)を構成するものである。
【0026】
後部脚部2a,2aは、保護部材2c(図3等参照)を介して床面Fに起立し、その上部が接続部2bを介して接続され、後部脚部2a,2aと接続部2bは後部支持体2を構成する。接続部2bは後部脚部2a,2aと一体に形成されるものでも、溶接やネジなどによって後部脚部2a,2aに固定されるものであってもよい。接続部2bには下方から後述する天板5を支持する支持部材6が形成されている。支持部材6の形状は特に限られるものではなく、下方から天板5を支持することができる形状であればよい。本実施形態においては正面視略コ字状に形成されている。
【0027】
連結フレーム3は前部脚部1,1と後部支持体2(より詳細には後部脚部2a,2a)や、後部脚部2a,2a同士を連結する。本実施形態においては、左側の前部脚部1と左側の後部脚部2a、右側の前部脚部1と右側の後部脚部2a、後部脚部2a同士が連結フレーム3によって連結され、それぞれ上部及び下部で連結されることによって学童机Dの強度を高めている。連結フレーム3は各脚部に溶接することとしてもよいし、ネジによって固定することとしてもよい。
【0028】
支持アーム4は後述する天板5がその上部に設けられて天板5を支持し、その両端には固定金具20に軸支される回転金具30が備えられている。上述したように固定金具20と回転金具30とはラチェット機構(角度調節用金具)を構成するものである。ラチェット機構としては、例えば座椅子で背もたれの傾斜角度を段階的に調整し、且つ所定の解除操作によって傾斜角度を初期状態に戻すことができる公知のラチェット機構を用いることとすればよい。
【0029】
本実施形態のラチェット機構について図2を参照して説明する。図2に示すように、本実施形態において固定金具20は、円筒状の取付部21を備え、当該取付部21に前部脚部1の先端部が内嵌された状態で固定される。一方、回転金具30は、円筒状の取付部31を備え、当該取付部31に支持アーム4の先端部(両端部のうちの一方)が内嵌された状態で固定される。
【0030】
回転金具30はその内部に所定のピッチで周方向に並んで形成されるギヤを備えている。当該ピッチを変更することで、回転金具30の固定金具20に対する開き角度θを任意の角度の範囲(例えば160度〜180度)で予め定められた複数の角度に段階的に調整可能とすることができる。
【0031】
回転金具30は、回転軸40を介して固定金具20に当該固定金具20に対して相対的に回転可能に軸支されている。さらに、回転金具30は揺動軸50を介して固定金具20に揺動可能に軸支されている。
【0032】
このようにして構成されるラチェット機構において固定金具20は、固定金具20と回転金具30との角度(回転金具30の固定金具20に対する開き角度)θが大きくなる方向への回転金具30の回転を規制(禁止)する一方で、角度θが小さくなる方向への回転金具30の回転を許容する。本実施形態では、角度θは予め定められた複数の角度に段階的に調整可能であることとしているが、角度θを無段階に調節可能なものであってもよい。
【0033】
固定金具20は、角度θが予め設定された第1の所定の角度(角度θを段階的に調整可能なラチェット機構にあっては最小設定角度)よりも小さい角度となったときに、角度θが大きくなる方向への回転金具30の回転の規制を解除し、第2の所定角度(角度θを段階的に調整可能なラチェット機構にあっては最大設定角度)まで回転させる(戻す)ことができる。
【0034】
[第1実施形態]
図3は、本発明の第1実施形態である学童机の構造を示す第1の側面図である。また、図4は、本発明の第1実施形態である学童机の構造を示す上面図である。また、図5は、本発明の第1実施形態である学童机の構造を示す第1の正面図である。また、図6は、本発明の第1実施形態である学童机の構造を示す第2の側面図である。また、図7は、本発明の第1実施形態である学童机の構造を示す第2の正面図である。
【0035】
図3〜図7に示すように支持アーム4の上部には天板5が設けられている。支持アーム4は天板5の左右端部及び後部の外周に沿って上面視(図4参照)略コ字状に形成されている。また、支持アーム4は両端部周辺で屈曲部4a(図3参照)を備えている。屈曲部4aは前後方向に形成され、屈曲部4aの後部が屈曲部4aの前部よりも高い位置となるように形成されている。これによって天板5はラチェット機構(固定金具20及び回転金具30)よりも高い位置で支持されるので、天板5を傾斜させたときに天板5の前部と前部脚部1,1の上部においてアール状に屈曲している部分とが接触するのを防ぐことができる。
【0036】
支持アーム4は屈曲部4aを含み一体に形成されることとしてもよいし、一端が回転金具30に接続される第1支持アームと、天板5が設けられる第2支持アームと、第1支持アームの他端と第2支持アームの両端を溶接やネジなどによって接続する屈曲部4aとからなることとしてもよい。
【0037】
天板5は水平状態において、支持アーム4と接続部2bに形成されている支持部材6によって支持されている。支持アーム4が天板5の前部を支え、支持部材6が天板5の後部を支えることによって、天板の上に書籍の重さや学童机Dの使用者の体重などの荷重がかかったときに、ラチェット機構に過度な荷重がかかることを防ぐことができる。
【0038】
天板5の傾斜角度を調節するときには、例えば天板5の後部を片手で掴持して上方に引き上げることで回転金具30が回転し、第1の所定角度(本実施形態では天板5の傾斜角度が8度となる角度)で回転金具30の回転が止まる。さらに天板5の傾斜角度を急にするときには、再度天板5の後部を片手で掴持して上方に引き上げることで回転金具30が回転し、第2の所定角度(本実施形態では天板5の傾斜角度が16度となる角度、図6及び図7参照)で回転金具30の回転が止まる。このようにして段階的に天板5の傾斜角度を調節し、給食など天板5を水平状態に戻す必要があるときには、天板5の傾斜角度を予め定められた最大の所定角度以上(固定金具20と回転金具30との角度を最小設定角度以下)とすることによって天板5の傾斜角度を緩やかにする方向に回転金具30を回転させることが可能となる。
【0039】
前部脚部1,1と後部脚部2a,2aを連結する連結フレーム3のうち、上部の連結フレーム3には、荷物等を掛けるためのフック7が取り付けられている。
【0040】
本実施形態によれば、簡単な操作で且つ安全に天板の傾斜角度を調節することができる。
【0041】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態である学童机の構造を示す側面図である。図9は、本発明の第2実施形態である学童机の構造を示す正面図である。なお、第1実施形態と同一の部分については同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0042】
本実施形態において学童机Dは棚部材8を備えている。棚部材8は天板5の下方に設置され、各脚部や連結フレーム3などと溶接されることによって支持される。このとき、上述したように支持フレーム4は屈曲部4aを備えて天板5を高い位置で支持しているため、上述したように天板5を傾斜させたときに天板5の前部と前部脚部1,1の上部においてアール状に屈曲している部分とが接触するのを防ぐことができるのに加えて、天板5の前部と棚部材8とが干渉することがなく、学童机Dに棚部材8を備えることができる。
【0043】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。加えて、天板の下方に棚部材を設けても天板が高い位置で支持されることによって天板と棚部材とが干渉することがないので、棚部材を備える机を提供することができる。
【0044】
[その他の実施形態]
上記第1実施形態及び第2実施形態において、支持フレーム4が屈曲部4aを備えることとしたが、屈曲部4aは第2実施形態で説明したように天板5と棚部材8との干渉を防ぐためのものであるから、第1実施形態において支持フレーム4が屈曲部4aを備えない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、天板の傾斜角度が調節可能な机に利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 前部脚部
2 後部支持体
3 連結フレーム
4 支持フレーム
5 天板
6 支持部材
8 棚部材
20 固定金具
30 回転金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に起立し、先端に固定金具を備える一対の前部脚部と、
床面に起立する一対の後部脚部が接続部を介して上部で連結してなる後部支持体と、
少なくとも前記前部脚部と前記後部支持体とを連結する連結フレームと、
両端に前記固定金具に軸支される回転金具を備える支持アームと、
前記支持アームの上部に設けられる天板と、
を備える机であって、
前記固定金具は、前記支持アームを下方へ移動させる前記回転金具の回転を規制する一方、前記支持アームを上方へ移動させる前記回転金具の回転を許容し、また、所定の解除操作によって前記規制を解除するものであって、
前記支持アームは前記天板の外周に沿って略コ字状に形成され、前記天板は前記支持アーム支持されていることにより、前記天板の傾斜角度を調節可能であることを特徴とする机。
【請求項2】
前記支持アームは、その両端部近傍に、屈曲部を備えて、前記天板を前記固定金具及び前記回転金具よりも高い位置で支持し、前記机は前記天板の下方に棚部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の机。
【請求項3】
前記後部脚部を接続する前記接続部には、前記天板が水平状態において前記天板を下方から支持する支持部材が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の机。
【請求項4】
前記天板は予め定められた複数の角度に段階的に調整可能であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の机。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−5874(P2013−5874A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139545(P2011−139545)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511154331)
【Fターム(参考)】