説明

材料の機械的特性を測定する装置及び方法

【課題】 レイアウト及び構造が簡単で、測定精度の改善が図れる、材料の機械的特性を測定する装置及び方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、所定の幾何形状を有する圧子(14)と、圧子(14)を測定対象物(26)の材料試料表面へと押し込む力を発生するデバイス(28)と、押し込み深さを測定するデバイス(24)とを使用した材料の機械的特性を測定する装置及び方法であって、圧子(14)には、力を発生するデバイス(28)が作用する力印加部分(19)と、測定対象物(26)の材料表面に向いた圧子先端(22)を有するシャフト(21)とが含まれ、それらの力印加部分(19)とシャフト(21)との間に、力印加部分つまり力導入部分(19)に対しての、シャフト(21)の少なくとも1つの半径方向の偏位を生じさせ又は検出可能である少なくとも1つのマイクロメカニカル・モーション・アクチュエータ(31)を設ける構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の幾何形状を有する圧子と、その圧子を材料試料表面に押し込む力を生成するデバイス及び押し込み深さを測定するデバイスとを用いて、材料の機械的特性を測定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の機械的特性を測定するこのタイプの装置及び方法は、DE10 2006 052 153 A1により知られている。当該文献において、力を生成するデバイス及び押し込み深さを測定するデバイスは、第1及び第2の櫛形駆動アクチュエータの形態で設けられるように設計され、該櫛形駆動アクチュエータは2つの櫛形電極を有し、2つの櫛形電極は、その櫛歯が印加される電圧に応じて部分的に重なるように、互いに並行に整列された複数の櫛歯を各々が備える。これは、力発生の分解能及び押し込み深さ測定の分解能の向上を可能にすることを目的とし、更に、試料材料の異なるタイプには反応しない。この装置では、第1の櫛形駆動アクチュエータ及び側方櫛形駆動アクチュエータが備えられ、可動櫛歯のその向きに並行な動きが、材料表面に垂直な方向の圧子の動きをもたらすことになるように整列される。更に別の櫛形駆動アクチュエータが横断櫛形駆動アクチュエータとして設けられ、圧子が材料表面全体にわたって横断方向に変位可能であるような向きにされる。このタイプの装置の組み付け及び構成は極めて複雑で高価である。同時に、側方櫛形駆動アクチュエータ及び横断櫛形駆動アクチュエータは、材料の機械的特性の測定中に相互に影響を及ぼす可能性があり、測定精度に悪影響を及ぼす。
【0003】
DE103 20 725 A1により知られるマイクロメカニカル・モーションセンサは、周期的な駆動電圧が印加される静電振動デバイスによって、恒久的な周期振動が励起される振動可能に取り付けられた棒バネ要素に取り込まれる偏位を検出することができる。更に、2つの感知軸を備えた回転レートセンサは、DE10 2006 052 522 A1により知られており、DE103 20 725 A1のマイクロメカニカル櫛形駆動アクチュエータに類似した半径方向偏位を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE10 2006 052 153 A1公報
【特許文献2】DE103 20 725 A1公報
【特許文献3】DE10 2006 052 522 A1公報
【特許文献4】DE103 20 725 A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、レイアウト及び構造の観点で簡単であり、且つ材料の機械的特性を特定する際の測定精度を改善することができる、材料の機械的特性を測定する装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明によれば、圧子には、力印加部分およびシャフトが含まれ、力を発生するデバイスが作用する力印加部分と、シャフトとの間に、少なくとも1つのマイクロメカニカル・モーション・アクチュエータが、圧子の力導入部分に対しての、シャフトの少なくとも1つの半径方向の偏位を作動又は検出可能であるように、設けられた構成とする、ことによって達成される。かかる構成は、材料表面へのシャフトの押し込み動作の間又はその後に、シャフトがマイクロメカニカル・モーション・アクチュエータを用いて回動自在に駆動可能であり、該回動を加えるのに必要な力が検出可能であり、又は初期位置に対して達成された回動が検出可能であり、更に、材料の機械的特性が、材料の表面へのシャフトの押し込み動きを加えるのに必要とされる決定された力に基づいた依存関係によって引き続き特定されるという利点を有する。回動動きの結合解除、又は材料表面に垂直な圧子の押し込み動きに対するシャフトの半径方向の偏位によって、検出される値の相互劣化が最小限にされ又は排除され、よって、材料特性の測定又は検出の改善が可能になる。
【0007】
本発明の好ましい構成によれば、押し込み深さを測定するデバイスは、圧子のシャフトにおける、測定表面に垂直な偏位を検出するよう設計される。従って、好ましくはシャフトの距離検出部材と圧子先端との間に一定距離を有するシャフトの押し込み距離を直接的に検出することができる。これは押し込み深さの正確な検出を可能にする。圧子の力印加部分上での押し込み動きの検出は、間に挿入されるマイクロメカニカル・モーション・アクチュエータによる誤差を生じる可能性がある。
【0008】
本発明の好ましい構成によれば、マイクロメカニカル・モーション・アクチュエータは、回動自在に駆動可能な櫛形駆動アクチュエータとして実現される。これは、小規模圧子を実現するために小規模構造を維持できるようにする。加えて、マイクロ範囲又はナノ範囲のデータ収集が可能になる。
【0009】
回動自在に駆動可能な櫛形駆動アクチュエータの好ましい構成によれば、該アクチュエータは、LIGAプロセスを用いて作製されるか、或いは微小電気機械システム(MEMS)として実現されるように設計される。これは、高分解能及び精度でアクチュエータを作製できるようにする。更に、これは、測定値を簡単に得ることができるようにする。
【0010】
本発明による装置は、2つの部品で実現され、シャフトと力印加部分との間に回動ジョイントを設けた圧子を備えることが好ましく、該ジョイントは、圧縮を受けたときに圧子の縦軸で剛直であるように実現され、且つ縦軸に対して半径方向に偏位することができる。これは、一方では、測定プロセス中にシャフトが材料表面に押し出されるときに伴う力を伝達し、他方では、力印加部分に対してシャフトの回動駆動を重ね合わせることを可能にする。
【0011】
圧子の回動ジョイントは、好ましくは、シャフトを受けるための第1の接続部材と、力導入部分に装着するための第2の接続部材とを備え、第1及び第2の接続部材が、好ましくは、1つ又は複数の円周方向に配置された弾性結合リンクを用いて、互いに一定距離で軸方向に維持しながら互いから一定距離で半径方向に回動可能であるように配置することができる。このようにして、2つの部品で実現される圧子が、実際に一体部品の圧子であるかのように動作し、よって材料の機械的特性を正確に測定できることが確保される。
【0012】
加えて、回動ジョイントの2つの弾性結合リンク間には、少なくとも1つの回動自在に駆動可能な櫛形駆動アクチュエータが設けられる。2つの櫛形電極間にそれぞれ配置される櫛歯は、僅かに弓状形状で実現され、これらが互いに対して回動動きをしたときに、互いに対して準並行に整列したままであるようにされ、よって、櫛形電極間での多少の大きな交互の動きが可能になる。
【0013】
好ましい構成によれば、回動ジョイントの第1及び第2の接続部材の間にエアギャップが形成される。このようにして、圧子におけるシャフトと力印加部分との間に摩擦無し構成を設けることができる。或いは、第1及び第2の接続部材の間に少なくとも1つの低摩擦摺動要素を設けることができる。加えて代替として、互いに関連付けられた接続部材の2つの端面が、低摩擦表面を有し、圧子に押し込み力を加えている間並びに材料への圧子の押し込みが達成された後に、シャフトが回動自在に駆動できるように設計することができる。
【0014】
本発明の更に好ましい構成によれば、圧子の力印加部分は、電気絶縁材料から形成されるよう設計される。これにより、マイクロメカニカル・モーションアクチュエータに電圧を供給するために導電体を加力部分に直接取り付けることができ、測定結果に悪影響を及ぼす可能性があった拘束されていない電源コードを省くようにする。
【0015】
本発明の更に有利な構成によれば、圧子、特に加力部分は、少なくとも1つのバネ部材により受けられ、圧子の装着方向に偏位できるように保持され、少なくとも1つのバネ部材が導電材料から作られ、よってマイクロメカニカル・モーション・アクチュエータの電源コードの一部を形成するように設計される。従って、構成部品の数及び運動質量の量を削減することができる。好ましくは、少なくとも1つの板バネを使用する。
【0016】
本発明の目的は更に、材料表面への圧子の押し込み動作の間又はその後に、圧子の力導入部分とシャフトとの間に位置付けられた少なくとも1つのマイクロメカニカル・モーションア・クチュエータが作動させられ、圧子の力導入部分に対するシャフトの少なくとも1つの半径方向偏位が開始されるか、又は半径方向偏位が検出され、或いは半径方向偏位が開始されて検出されると言う、材料の機械的特性を測定する方法によって達成される。これにより、好ましくは材料の弾性域の材料応力が関係している範囲までは材料特性に関する追加情報を得ることが可能になる。回動動きに必要な力及び/又は作動した回動動きの角度の検出、並びに測定対象物の表面への圧子の押し込みをもたらす力及び検出された距離の1つにより、材料特性の決定が可能となる。材料の機械的特性を測定するために側方櫛形駆動アクチュエータ及び横断櫛形駆動アクチュエータを伴う方法と比べて、機械的特性を測定するこのような方法は、定められた表面上で且つ圧子の表面全体と連続して接触した状態で力の印加を行うこと、及び運動質量及びこれにより生じる外乱を同時に最小限にしながら、設計及び技術的実現が簡素化されるといった利点がある。
【0017】
本発明の更に好ましい構成によれば、回動振動は、材料特性を測定するために回動駆動することができる櫛形駆動アクチュエータの形態で実現されるマイクロメカニカル・モーションアクチュエータに伝達されるように設計される。このようにして、特に除荷相中に周波数選択性信号を検出すること、及び材料の特性を決定するためにこれらを評価することができる。
【0018】
本発明の更に好ましい構成によれば、連続的な力が、力を発生するデバイスによって圧子に印加されるように設計される。このようにすることで、マイクロメカニカル・モーションアクチュエータによる回動振動の重ね合わせを生じることができ、この回動振動は周期的に生じるのが好ましい。或いは、非周期的な回動振動を開始することができる。
【0019】
本方法の代替の構成によれば、不連続又は階段状の力が、力を発生するデバイスによって圧子に印加されるように設計される。こした押し込み動作の場合には、回動振動は、押し込み動き時に周期的に又は非周期的に等しく開始されて重ね合わせることができる。
【0020】
更に、回動振動、特に周期的な回動振動は、材料表面へのシャフトの押し込みフェーズが完了したときに開始するよう設計することができる。これにより、材料の緩和動作をある程度まで考慮することができるようになる。非周期的な回動振動を等しく可能にすることもできる。
【0021】
本方法の更に有利な構成によれば、材料表面のシャフトの回動動きを除く過程中に、信号が櫛形駆動アクチュエータによって検出され、評価ユニットにより評価されるように設計され、これにより、圧子の回動角の位置を高い精度で連続して決定することができる。
【0022】
本発明並びに他の有利な実施形態及びその発展形態は、図面において示される実施例を参照しながら以下で記載し説明する。説明及び図面による特徴は、本発明に従って個々に或いは何らかの組み合わされた複数の特徴部として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】材料の機械的特性を測定する本発明による装置の概略断面図である。
【図2】図1による装置の圧子の概略拡大図である。
【図3】圧子及び回動ジョイントの加力部分に配置されたマイクロメカニカル・モーションアクチュエータの概略図である。
【図4】回動ジョイントを備えたマイクロメカニカル・モーションアクチュエータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、材料の機械的特性を測定する装置11を概略的に示している。装置11は、詳細には図示していない保持設備上、特にスタンド上に配置されたボックス12を含む。ボックス内には、ボックス開口15から外部に突出して軸方向に誘導される、好ましくは縦軸16に沿って動きをさせられる圧子14が設けられる。圧子14は、少なくとも1つ、好ましくは2つの互いに並行に配置されるバネ部材18(詳細には板バネ)によって受けられ、該バネ部材18は、スタート位置(すなわち非偏位位置)にあるときに準ゼロ力の浮動条件で配置されるように、相互に設定されるのが好ましい。圧子14は、少なくとも2つの部品で実現され、力印加部分19とシャフト21とを有する。2つのバネ部材18は、好ましくは円筒型本体すなわち小管体として実現することができる力印加部分19を保持し、該バネ部材18が板バネの形状にされることによって、圧子14の縦軸16に対して偏位可能とされる。
【0025】
圧子14のシャフト21は、利用される硬度試験方法に応じた特定の幾何形状を有する圧子先端22を備える。圧子先端22は、特にダイアモンドで作られている場合にはピラミッド形状であり、又は特に硬化鋼で作られている場合には球形状とすることができる。更に、圧子先端22の幾何形状は等しくすることも可能である。圧子先端22からある距離にあり、好ましくはボックス12内のシャフト21上には、押し込み深さを測定するデバイス24の一部であるセンサ23が設けられる。従って、圧子先端22の実際の変位又は測定対象物26の材料表面への押し込みの実際の深さを検出することができる。押し込み深さを測定するデバイス24は、硬度測定システムの電気制御機器25に接続される。圧子を測定対象物26の試料表面に向けた動きを行わせ、押し込み動きをさせる力を発生するデバイス28は、同様に硬度測定の電気制御機器25と通信する。このデバイス28は、好ましくは、圧子先端22とは反対側の圧子14の端部に作用する。
【0026】
圧子14の力印加部分19とシャフト21との間には、圧子14の縦軸16の周りでシャフト21を半径方向に偏位可能にするマイクロメカニカル・モーション・アクチュエータ31が設けられる。マイクロメカニカル・モーション・アクチュエータ31の作動は、力印加部分19を通ってマイクロメカニカル・モーション・アクチュエータ31に延びるように構成された電気的接続配線32によって確保される。力印加部分19は、好ましくは、電気的に絶縁され、バネ部材18がボックス内の電気制御機器33によって接触することができるように設計される。電気的接続配線32が力印加部分19に対するバネ部材18の作用点からマイクロメカニカル・モーション・アクチュエータ31まで延びると、力印加部分19に取り付けられるか又はこれに一体化した電気的接続配線32が設けられ、よって、運動質量の比例した量を低減し、何らかの追加の外乱作用を排除することが可能になる。電気制御機器33は、マイクロメカニカル・モーションアクチュエータ31を作動させる役目を果たし、硬度測定システム25及び/又は力発生デバイス28と通信している。装置11は、記号で表現された電気コネクタ35により通電される。加えて、装置を制御し、データ及び/又は信号を取り出すための評価ユニット及び/又はコンピュータを接続するコネクタ又はインターフェースを更に設けてもよい。
【0027】
図2は、圧子14の概略拡大図を示している。力印加部分19は、回動ジョイント36を介してシャフト21に直接接続され、上記回動ジョイント36は、圧縮を受けたときに圧子14の軸方向すなわち縦軸16に沿って剛直であり、双方向の回動の感知において好ましくは同じ程度まで半径方向に偏位することができるようにして実現される。回動ジョイント36は、例えばポット型の第1の接続部材37を有し、力印加部分19上の凹部に挿入され、又はここに取り付けられる。第1の接続部材37に関連付けられ、例えばシャフト21のネック40を係合し且つこれを中心配置されるようにして保持するための締結部39を有する第2の接続部材38が設けられる。接続部材37、38の代替の幾何学的構成も可能であり、並びに圧子14のそれぞれの要素部材の構成及び収容を反転することも可能である。マイクロメカニカル・モーションアクチュエータ31は、回動ジョイント36に一体化されるか、又は第1及び第2の接続部材37、38上に配置されて、第1の接続部材37に対して第2の接続部材38の変形を与えるようにされる。
【0028】
図3及び図4は、マイクロメカニカル・モーションアクチュエータ31を備えた回動ジョイント36の概略拡大図を示している。第1及び第2の接続部材37、38は各々、弾性結合リンク41によって接続される。この弾性結合リンク41は、蛇行形状の矩形構造を有し、圧子14の押し込み動きの力が加えられたときに第1の接続部材37と第2の接続部材38との間に軸方向に形成されるギャップを一定幅で維持しながら、第1の接続部材37に対して第2の接続部材38の半径方向の変形を可能にする。好ましくは、接続部材の個々のランド部分が方形断面で形成される。回動ジョイントの機能を満足する結合リンク41の他の幾何形状及び配置も想定可能である。
【0029】
有利には、マイクロメカニカル・モーションアクチュエータ31は、櫛形駆動アクチュエータ42として実現される。例証として、結合リンク41の間に3つの櫛形駆動アクチュエータ42が配置され、該結合リンク41及び櫛形駆動アクチュエータ42は、好ましくは、円周付近に互いに等角度で分布するように配置される。櫛形駆動アクチュエータ42は、櫛形電極44間に配置された櫛歯43を有する。櫛形駆動アクチュエータ42を作動することによって、櫛形電極44に対する交互配置の深さが関係している範囲まで櫛歯43が運動可能であり、この交互配置の深さに応じて、回動動きを測定するのに役立ち、これに応じて押し込み深さ及び発生する力を測定するデバイス24、28の他のパラメータと共に評価される電圧が誘起されることを実現することができる。
【0030】
櫛形駆動アクチュエータ42は、LIGAプロセスで作製することができる。ドイツ語起源に関して、頭文字「LIGA」は、Lithographie (リソグラフィー), Galvanoformung (電気めっき), Abformung (成形)を表し、深X線リソグラフィー、電気めっき、及びマイクロ成形の組み合わせに基づいた手順を意味する。これにより、プラスチック、金属、及びセラミックの材料タイプの0.2μmまでの極めて小さい寸法及び最大アスペクト比が50の最大3mmまでの構造を有する微細構造を得ることが可能になる。加えて、櫛形駆動アクチュエータは、MEMS構造として実現することができる。両方の構成により、圧子をマイクロスケール又はナノスケールの圧子として実現することが可能になる。
【0031】
力印加部分19に対してシャフト21の回動動き及び半径方向偏位を加えるこのタイプの櫛形駆動アクチュエータ42の利用には、力の生成及び/又は半径方向偏位の角度の測定の両方を1つのセンサで実施できる利点があり、組立体を小型にすることができ、測定誤差の発生源を低減可能にする。更に、少なくとも2つの部品からなり、マイクロメカニカル・モーションアクチュエータを備えた圧子を含む本発明の構成には、硬度測定及び材料試験の両方を可能にする利点がある。
【0032】
本発明による装置は、材料の機械的特性の測定、特定、及び更に試験における様々な手順を実施することを可能にする。
【0033】
例証として、マイクロメカニカル・モーションアクチュエータ31は、圧子14が測定対象物26の材料表面に接触するまでは作動しないように設計することができる。圧子14が測定対象物26内に押し込まれるとすぐに、或いは測定対象物26内への圧子14の押し込みが完了した後、マイクロメカニカル・モーションアクチュエータ31が作動され、特に力印加部分19に対する回動振動がシャフト21に伝達され、従って、半径方向偏位が生じるようになる。偏位を行うために印加される力を検出することができる。或いは、回動動きを開始し、実施される回動動きを測定することができ、或いは測定を通じて両方の値を得ることができる。これらは、圧子の押し込み運動を発生するのに使用される力と共に、評価ユニットにおいて得られて評価される。従って、得られた測定値から、測定対象物を構成する材料の対応する機械的特性を特定することができる。
【0034】
本方法の代替の構成において、測定対象物26への圧子14の押し込みの間又はその後に、回動振動がマイクロメカニカル・モーションアクチュエータ31に伝達されるように設計される。好ましくは、この応答が測定され、それを除く過程中に結果として生じる位相シフトが得られて評価される。
【0035】
或いは、例えば直流により生成された連続的に増大する力は、特に周期的な回動動き時に重ね合わせるように設計することができる。或いは、非周期的な回動動きを生成することも可能である。
【0036】
本発明の更に代替の実施形態において、連続的に増大する力ではなく、不連続的に準ステップ状に増大する力を生じさせ、少なくとも1つの半径方向の偏位を増大する力の各ステップに関連付けることができるようにしてもよい。試験されることになる材料に応じて、機械的特性を測定する方法を適応させることができる。
【符号の説明】
【0037】
14 圧子
19 力印加(力導入)部分
21 シャフト
22 圧子先端
24 測定デバイス
26 測定対象物
28 力を生成するデバイス
31 マイクロメカニカル・モーション・アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幾何形状を有する圧子(14)と、
前記圧子(14)を測定対象物(26)の材料試料表面へと押し込む力を生成するデバイス(28)と、
押し込み深さを測定するデバイス(24)と、
を備えた材料の機械的特性を測定する装置において、
前記圧子(14)には、前記力を発生するデバイス(28)が作用する力印加部分(19)と、前記測定対象物(26)の材料表面に向いた圧子先端(22)を有するシャフト(21)との間に、マイクロメカニカル・モーション・アクチュエータ(31)が、前記力印加部分(19)に対する前記シャフト(21)の少なくとも1つの半径方向の偏位を生じさせ又は検出可能であるように設けられている、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記圧子(14)の押し込み深さを測定するデバイス(24)が、前記測定対象物(26)の材料表面に対して垂直に前記シャフト(21)で生じる偏位を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マイクロメカニカル・モーション・アクチュエータ(31)が、少なくとも1つの回動自在に駆動可能な櫛形駆動アクチュエータ(42)として実現される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記回動自在に駆動可能な櫛形駆動アクチュエータ(42)が、LIGAプロセスに従って、又はMEMSシステムとして作製される、
ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記圧子(14)が少なくとも2つの部品で構成され、前記シャフト(21)と前記力印加部分(19)との間に回動ジョイント(36)が設けられ、前記ジョイントが、圧縮を受けたときに前記圧子(14)の縦軸(16)で剛直であるように実現され、且つ前記縦軸(16)に対して半径方向に偏位することができる、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記回動ジョイント(36)が前記シャフト(21)を受けるための第1の接続部材(37)と前記力導入部分(19)を収容するための第2の接続部材(38)とを有し、前記第1及び第2の接続部材(37、38)が、複数の円周方向に配置された弾性結合リンク(41)を用いて、互いに一定距離又はほぼ一定距離で軸方向に維持しながら半径方向に回動可能であるように配置することができる、
ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記2つの弾性結合リンク(41)の間には、少なくとも1つの回動自在に駆動可能な櫛形駆動アクチュエータ(42)が設けられる、
ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の接続部材(37、38)の間には、エアギャップが形成され、又は少なくとも1つの低摩擦摺動要素が設けられ、或いは互いに関連付けられた接続部材(37、38)の端面が低摩擦表面を備える、
ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記圧子(14)の力印加部分(19)が、電気絶縁材料から形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記圧子(14)、特に前記力印加部分(19)が、少なくとも1つのバネ部材(18)によって受けられ、前記圧子(14)の装着方向に偏位することができるように保持され、前記少なくとも1つのバネ部材(18)が、電気的に導通するように実現され、よって前記マイクロメカニカル・モーションアクチュエータ(31)の電源コード(32)の一部を形成するように実現される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
所定の幾何形状を有する圧子(14)が、力を生成するデバイス(28)の所定の力で測定対象物(26)の材料試料表面へと押し込まれ、
前記圧子(14)の押し込み深さが、前記測定対象物(26)の材料表面において前記押し込み深さを測定するデバイス(24)を用いて検出されるようにする、
材料の機械的特性を測定する方法において、
前記測定対象物(26)の材料表面への前記圧子(14)の押し込み動作の間又はその後に、前記圧子(14)の力導入部分(19)と前記シャフト(21)との間に位置付けられた少なくとも1つのマイクロメカニカル・モーション・アクチュエータ(31)が作動され、
前記圧子(14)の力導入部分(19)に対する前記シャフト(21)の少なくとも1つの半径方向偏位が開始され、又は回動動きが検出され、或いは回動動きが開始されて検出される、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
機械的特性の測定において、回動振動、特に周期的回動振動が、少なくとも1つの回動自在に駆動可能な櫛形駆動アクチュエータ(42)として実現される前記マイクロメカニカル・モーションアクチュエータ(31)に伝達される、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記力を生成するデバイス(28)によって前記圧子(14)に連続した力が加えられる、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記力を生成するデバイス(28)によって前記圧子(14)に不連続の又はステップ状の力が加えられる、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記測定対象物(26)の材料表面に作用される前記シャフト(21)の導入された回動動きを除く動作中に、前記マイクロメカニカル・モーションアクチュエータ(31)によって前記シャフト(21)からの信号が検出され、該信号が評価ユニットによって評価される、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−122220(P2010−122220A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264698(P2009−264698)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(309007036)ヘルムート・フィッシャー・ゲーエムベーハー・インスティテュート・フューア・エレクトロニク・ウント・メステクニク (5)