説明

材料塗布システムのワイヤレスオペレータインタフェース

オペレータインタフェースが、アクセス装置を介して、それぞれ動作場所での1つ又は複数の動作機能のIDをオペレータに提供する。アクセス装置は動作機能とのワイヤレス接続を有することができ、識別された機能に固有のメニューを提示する。アクセス装置はオプションで、データ、制御機能、配合表、メニュー等をオペレータに提供する。このようにして、オペレータは異なる動作場所にて動作機能の局所制御を行うことができ、それによって動作場所間を移動することでの時間の損失及びエネルギーが低減する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、粉体・流体材料塗布装置に関する。特に、本発明は、ポータブルアクセス装置を用いてこのような装置の制御システムを増強することに関する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2003年8月18日に出願された米国仮特許出願第60/481,251号、WIRELESS OPERATOR INTERFACE FOR FINISHING SYSTEMの利益を主張するものであり、その開示の全体は参照により本明細書に完全に援用される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
粉体・流体被覆材料は一般に、選択可能なパターンで材料を吹き付けるか、又は他の方法で計量分配することによって被塗物の表面に塗布される。たとえば、通常の粉体スプレー装置は、1つ又は複数のスプレーガン、スプレーガン動力機及び/又は振動機、粉体スプレーブース、粉体供給源、制御コンソール、並びに多くの場合に粉体オーバースプレー(powder overspray)回収及び/又は再利用システムを備えることができる。このような装置は既知であり、以下の例示的な米国特許、すなわち第5,167,714号、第5,482,556号、第5,566,042号、及び第6,021,799号に記載されており、それら開示の全体は参照により本明細書に完全に援用される。
【0004】
材料塗布装置は静電式のものもあれば、非静電式のものもある。静電式装置では、高電圧電極を使用して静電気電荷を材料に印加し、被塗物に付着する材料の塗着率を向上させる。塗布装置は通常、装置を通る材料の流れを制御するために使用されるトリガ機構も備える。このような装置は手動操作されるものもあれば、ロボット機構及び/又は適切な電子制御機構を用いるなどして電子的に制御されるものもある。
【0005】
粉体塗布システムの非限定的な例では、通常の吹き付け動作は粉体スプレーブースにて行われる。ブースを利用する主な目的は、粉体オーバースプレーの封じ込めである。粉体ブースによっては、粉体オーバースプレーを回収し、回収された粉体を保持容器に移すか、或いは引き続き利用するために粉体供給源に戻す粉体回収・再利用システムが装備されている、又は装備可能なものがある。
【0006】
スプレーガン(複数可)は、スプレーブースにおいて静止プラットフォーム又は可動プラットフォーム上に支持することができる。可動プラットフォームは、対象に対してガンのスプレーノズルの水平位置を設定・変更することができるだけでなく、ガン(複数可)を垂直移動させる機能も含むガン動力機を備えることができる。
【0007】
各スプレーガンは、粉体供給源又は供給センタから粉体被膜材料の流れを受け取る。吹き付け動作のための粉体はホッパ又は他の適した容器に保持される。粉体は、粉体供給空気ポンプの動作によりホッパから引き出される。粉体ポンプは通常、1つ又は複数の圧縮空気源から動作し、粉体供給ホース又はチューブを介して粉体をガンに供給する。
【0008】
ホッパ内の粉体供給源はまた、通常、ホッパの床を通るか、或いは粉体の上部を流動化する空気供給を通して、粉体を通る空気流により流動化する。未使用の粉体は、手動で、或いは粉体を粉体ドラム又は他の粉体供給容器からホッパに移す自動粉体移送装置の動作によりホッパに入れることができる。自動粉体移送装置では、センサを使用してホッパの粉面を検出するとともに、移送動作をモニタすることができる。
【0009】
したがって、粉体吹き付けシステム等の従来の材料塗布システムには、手動、自動、又は手動と自動を組み合わせて制御される多数の機能及び動作があることが明らかである。こういった制御及び動作機能は作業現場又は設備内で物理的に離れていることがある。中央制御コンソールを利用することができるが、それでもオペレータは通常、各場所を歩き回って設定の調整、作業のモニタリング、色替え手順の実施等を行わなければならない。中央制御コンソールと機能場所の1つ又は複数の間を行き来する必要があることは、厄介であるとともに時間を浪費する。また、色替え時間の短縮という高まり続ける需要により、作業現場でたとえ短い距離でも動作場所間を歩く必要があるという非効率性が明白になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、材料塗布システムに関連する1つ又は複数の動作場所での局所オペレータインタフェースを容易にする、材料塗布システム用の新規の方法及び装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、オペレータ又は他のユーザが、ハンドヘルドアクセス装置を使用してデータにアクセスし、システムの様々な動作場所での機能を局所制御できるようにする、材料塗布システムでの装置を意図する。このようにしてオペレータは、制御コンソール又は他の動作場所に再び戻る必要なく、動作場所にいながらにして局所調整を行い、計器を読み、又はコマンドを生成することができる。局所アクセスを提供するために、一実施の形態では、場所固有動作且つ機能固有の識別子が提供される。例示的な一実施の形態では、識別子はアクセス装置とのワイヤレス接続を有する。別法として、アクセス装置は、1つ又は複数の動作場所にあるドッキングステーション、クレードル、又は他の適したインタフェースに接続して識別子にアクセスすることができる。
【0012】
識別子はアクセス装置により検出又は認識することができ、認識された識別子に関連する動作機能に関連する適切なメニューがオペレータに表示される。次いでオペレータは、メニュー又はアクセス装置に関連する他の制御ロジックを使用して所望の動作を行うことができる。一実施の形態では、各識別子は、通常特定の動作場所での特定の動作機能に一意に関連する識別信号を送信する。限定としてではなくたとえば、オペレータがスプレーブース(動作場所)付近にいる場合、アクセス装置はスプレーガン(動作機能)に関連する識別子を検出する。たとえば、ガン動力機に関連し得る識別子等、他の識別子が検出される可能性もある。一実施の形態では、アクセス装置は特定の動作場所において認識されたすべての識別子のメニューを提示し、オペレータが対象装置を選択してアクセスできるようにする。別の実施の形態では、オーバーライド機能を使用して、オペレータが現在場所以外の場所での動作機能にアクセスできる、たとえばスプレーブースエリアを去る必要なく制御コンソールに再びアクセスできるようにすることができる。
【0013】
本発明の別の態様によれば、識別子は、一意の識別信号をアクセス装置に送信することによってアクセス装置により検出することができる。別法として、アクセス装置は局所検出される信号を送信することができ、それによってセンサ又は他の装置をアクティブ化させ、次いでセンサ又は他の装置が識別子をアクセス装置に返送する。いずれの実施の形態でも、アクセス装置には、オペレータが識別子又は識別子に関連する動作機能の感知距離内にいることがワイヤレス又は他の接続により通知される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、アクセス装置は動作機能に関連する各識別子への、たとえばIR、無線周波、超音波、又は他の適したワイヤレス技術によるなどのワイヤレス接続を有する。従来のワイヤレスネットワーク、たとえばWAN、LAN、Bluetooth型ネットワーク、IEEE802ネットワーク等を使用してワイヤレス接続を提供することができる。アクセス装置は、インタフェースロジック及び/又は制御ロジックを含むことにより、オペレータがシステムを所望通りに制御し易いようにプログラムすることができる。各種実施の形態では、インタフェースロジックは、オペレータが設定を調整し、データを収集し、中央制御システムとコマンドを交換する等を行えるようにすることができる。特定の一実施の形態では、アクセス装置は、各動作場所において検出され選択された動作機能に基づく可視メニューをオペレータに提示する。
【0015】
本発明は、上述した構成のような設計及び/又は使用に関連し、且つ具現される方法をさらに意図する。一実施の形態では、材料塗布システムを制御する方法が提供され、本方法は、各動作場所にそれぞれある2つ以上の材料塗布動作機能を設けるステップであって、動作場所のうちの少なくとも2つは、オペレータが場所間の移動するような距離だけ互いに物理的に離れている、設けるステップと、各動作機能に一意のワイヤレス識別子を関連付けるステップと、ワイヤレス接続を使用するステップであって、それによってオペレータが各識別子を検出する、使用するステップと、を含む。
【0016】
本発明のこれら及び他の態様及び利点が、添付図面を鑑みて好ましい実施形態の以下の説明から当業者に明らかになろう。
【0017】
本発明は、特定の部品及び部品の構成で物理的な形態をとることができ、本発明の好ましい実施形態及び方法について本明細書において詳細に説明するとともに、本明細書の一部を成す添付図面に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
図1を参照すると、例示的な一実施形態では、材料塗布システム、たとえば、物体(図示せず)に粉体被覆材料14を内部で吹き付ける粉体スプレーブース12を備えるタイプの通常の粉体スプレー装置10等において本発明を具現して示す。物体への粉体の塗布は概して、本明細書では粉体吹き付け動作又は被覆動作を指すが、粉体が実際に対象に吹き付けられる前後、及びその間に制御され実行される任意の数の制御機能、ステップ、パラメータがあり得る。したがって、本明細書において用いる材料塗布動作の制御という用語は、材料塗布プロセスの1つ又は複数の局面の選択、実行、制御、調整、変更又は修正、及び/又はブース環境の制御のうちの任意の1つ又は複数を含むその最も広い意味で解釈されるべきである。したがって、たとえば、本発明を吹き付け動作の広範囲のパラメータ及び機能の任意の1つ又は複数の制御に使用できることを意図する。これらとしては、手動での動作、自動での動作、又は手動及び自動の動作の組み合わせの一環のいずれかとしてのガントリガ制御、ガンパワー制御、粉体供給制御、粉体供給源制御、及びガン位置制御、スプレーブース空気流制御、並びに色替え動作を挙げることができるがこれらに限定されない。こういった特徴は本発明の例示的な説明と併せて本明細書に含まれるが、このような説明は限定の意味で解釈されるべきではない。本発明は、塗布動作の1つ又は複数の局面を制御することが望ましいあらゆる材料塗布システムに用途を見出すであろう。さらに、本明細書において説明する実施形態は粉体塗布装置の文脈の中で提示されるが、本発明を液体塗布又は計量分配システムにおいて使用することも可能なことを当業者は容易に認めよう。選択される材料塗布システムの特定の設計及び動作は、本明細書に明記される場合を除き本発明に制限を課すものではない。
【0019】
さらに、本発明の各種態様を、例示的な実施形態で組み合わせて具現されるものとして本明細書において説明し図示する。しかし、これら各種態様は、単独で、或いは種々のコンビネーション又はサブコンビネーションで多くの代替の実施形態で実現することができる。さらにまた、代替の材料、構造、構成、方法、装置等、本発明の各種態様及び特徴についての代替の各種実施形態を本明細書において述べ得るが、このような説明は、既知であれ、後に開発されるものであれ、利用可能な代替の実施形態の完全な、すなわち網羅的なリストであることを意図していない。当業者は、本発明の範囲内で、本明細書において明示的に開示していない場合であっても、本発明の態様の1つ又は複数をさらなる実施形態に容易に適合させることができる。さらに、本発明のいくつかの特徴及び態様について好ましい構成又は方法として説明し得るが、このような説明は、明記されない限り、このような特徴が要求される、又は必要であることを示唆することを意図していない。さらにまた、本発明の理解を助けるために例示的又は代表的な値及び範囲を含み得るが、このような値及び範囲は限定の意味で解釈されるべきではなく、明記される場合には重要な値であることのみを意図する。
【0020】
装置10は通常、スプレーブース12内に完全に、或いは一部配置されるスプレーガン18等、1つ又は複数の塗布装置をさらに備える。ガンは個々に又はまとめて手動で又は自動でトリガすることができ、さらに、静電動作式又は非静電動作式であることができる。ガン18は個々に又はまとめて、静止支持体に取り付けることも、又は既知のようにガン動力機20に取り付けることもできる。手動で動作するガンを使用してもよい。各ガン18(明確にするために1つのみを図1に示す)は、粉体ホッパ22から粉体供給ホース24を介して供給される粉体を受け取る。空気ポンプ26が粉体14をホッパ22から引き出し、供給ホース24を介してガン18に供給する。粉体供給源28、たとえば粉体ドラムが、ホッパ22に手動又は自動で移送することができる未使用の粉体供給源を保持する。粉体ブース12は、図1に示すように、粉体オーバースプレーを回収して容器に移送するか、或いはリサイクルしてホッパ22に戻す粉体回収・再利用システム30を備えることができる。
【0021】
図1の装置では、制御コンソール16は通常、オペレータが調整を行い、パラメータを設定し、全般的に吹き付け動作を制御するための中央制御場所として使用される。コンソール16は、プログラマブルコントローラ又は他の電子論理回路、及びガン18、ガン動力機20、粉体ポンプ26、粉体供給源28、及び再利用システム30の動作を制御するための種々の装置及びインタフェースを備えることができる。コンソール16の特定の設計は実際のスプレーシステム10の設計によって決まるため、図示の特徴のすべてを含む場合もあれば、それよりも少ない特徴を含む場合もあり、また追加の特徴を含む場合もある。ここでも、適した制御コンソール及びシステムの特定の詳細は引用特許において提供されており、そうでない場合であっても当業者に既知である。
【0022】
図1の概略図は大幅に簡略化されており、ただ、本発明と併せて有用である任意の数の材料塗布システム及び装置の一例を提供するためだけに用いられることを当業者は容易に認めよう。本発明と併せて使用されるシステム10の構成要素の数はより多くてもより少なくてもよい。図1の個々の構成要素の詳細については特に上記引用特許に提供されている。
【0023】
本発明は、アクセス装置1を使用して材料塗布システム10に使用される制御コンソール16の機能、パラメータ、及び他の特徴の制御を増大することを意図する。図1に示すように、アクセス装置1は必ずしもではないが好ましくは、プログラマブルハンドヘルドワイヤレス装置、たとえばPDA等の形態で実現される。本発明の一態様によれば、アクセス装置1は、図1に破線34で示すようにオペレータと制御コンソール16の間に任意のワイヤレスリンクを提供する。ワイヤレスリンクは、オペレータが粉体スプレーブース12又はコンソール16から離れた他の場所、又はその付近にいながらにして制御コンソール16に命令を送信できるようにする。このようにしてオペレータは吹き付け動作を観察し、1つ又は複数のパラメータ又は機能を変更する命令を制御コンソール16に送信し、同時にブース12で結果を観察することができる。たとえば、制御コンソール16は、スプレーブース12から距離を置いて、単なる一例を挙げれば10又は20フィートも離れて遠隔配置することができる。実際の距離は各サイトで様々であり、ワイヤレスアクセス装置1の有効範囲によってのみ限定される。しかし、本発明の全般的な態様として、「遠隔距離」又は「遠隔場所」は、腕の長さを超えるが選択された遠隔送信装置1の最大範囲を超えない任意の距離又は場所を意味し、又は場合によっては、遠隔距離又は遠隔場所は、機能、動作、又は制御に目が届かない任意の位置であることができる。
【0024】
本発明の別の態様によれば、アクセス装置1は1つ又は複数の識別子40と通信する。識別子の数及び場所は、材料塗布システム10の設計及びレイアウトに基づいた設計選択の問題並びにどの動作機能を局所制御することが望ましいかの問題である。
【0025】
本明細書において用いる動作機能という用語は概して、塗布システム10の一部を成す任意の1つ又は複数の装置、機能、制御機構等を指す。限定としてではなくたとえば、図1のシステムの場合、動作機能はガン動力機20、再利用システム30、スプレーブース12、供給源28、ガン18等であることができる。局所アクセスが望まれる各動作機能に識別子40を提供することができる。
【0026】
各動作機能は、作業現場のどこかの動作場所に物理的に配置される。動作場所は数フィート離れていても、又は多フィート離れていてもよい。本発明以前は、オペレータは相当距離を移動して調整を行い、品質をモニタし、色替え動作を行う等をする必要がある場合があった。これには、オペレータが動作場所のうちの1つで局所観察を行い、それから再び制御コンソール16に戻る必要があった。しかし本発明を用いることにより、オペレータはこれからは動作場所で動作機能に調整及び変更を局所的に行うことができる。識別子40は機能識別を提供し、アクセス装置1と通信することができる。必ずしもではないが好ましくは、ワイヤレス通信を用いて各識別子40をアクセス装置1にリンクする。別法として、ドッキングステーション、クレードル、又は同様の有線リンクを用いることができる。たとえば、アクセス装置1は、数例を挙げれば、RS−232ポート、USBポート、IEEE1394ポート、シリアルポート、パラレルポート等を通してインタフェースすることができる。
【0027】
オペレータが識別子40の1つ又は複数の範囲内又は感知距離内に近づくと、アクセス装置1は識別子40が送信している識別信号を検出する。各識別信号は好ましくは一意であり、したがって検出されると、アクセス装置1が、オペレータがその時点でアクセス可能な動作機能の視覚インジケータをオペレータに提供する。アクセス装置1は、信号を送信している識別子40を検出する識別ロジックを備える。
【0028】
例示的な実施形態はIDをアクセス装置1に送信する識別子40を使用するが、別法として、アクセス装置1は呼び掛け信号を送信するようにプログラムしてもよい。識別子40が呼び掛け信号を受信すると、その識別子40は次いでアクセス装置に識別信号を返送することができる。
【0029】
材料塗布システムの時に複雑な性質並びに時に2つ以上の動作機能(たとえば、ガン及びガン動力機)が相対的に近くにあることにより、アクセス装置1は2つ以上の識別子を同時に検出することがある。このような場合、アクセス装置は選択ロジックを備えて、オペレータがインタフェースしたい動作機能を選択できるようにするようにプログラムされる。この選択は、たとえば、アクセス装置1の一部である視覚画面上でオペレータに提示される単純な選択メニューから行うことができる。
【0030】
アクセス装置1が識別子40との通信を確立すると、本発明によれば、アクセス装置1内の制御ロジックは、データを交換又は受信するため、調整するため、動作機能を制御するため等のメニューをオペレータに提示する。したがって、アクセス装置1は、物理的に工場内のどこにいるのかを認識し、オペレータにより選択された動作機能に固有のメニューを提示する。このようにして、オペレータは、通信範囲内に留まっている限り、関連する動作場所において動作機能の局所制御を行うことができる。
【0031】
オペレータが通常、動作場所において局所制御を行うことを意図するが、アクセス装置1はオプションで、機能の感知範囲を超えたところにいるオペレータがその動作機能と通信できるようにするオーバーライドロジックを備えることができる。たとえば、ワイヤレスネットワークを用いてこのような通信を確立することができる。典型例は、任意の動作場所から利用可能な通信を制御コンソール16に提供することである。
【0032】
本発明の別の態様によれば、アクセス装置1は、1つ又は複数の押しボタンコマンドを、送信信号に変換される電気信号に変換する制御ロジック及びエンコーダを備えることができる。別法として、コマンドはスタイラスを使用して、又は付属のキーボードを使用してタッチスクリーン動作を通して入力してもよい。信号は受信器に検出され、受信器は信号を検出して復号化又は変換して電気命令にし、次いでこの電気命令が、動作機能に関連する制御回路内の適切な電子回路により処理される。
【0033】
アクセス装置1は、IR伝送等のワイヤレスリンクを介して制御コンソール16及び識別子40と通信することもできるPDA等のプログラマブル装置の形態で実現される。PDAは通常、材料塗布装置10の動作に必ずしも関連しない他の機能を含み得るソフトウェアベースの装置である。この文脈の中では、装置はPALM PILOT(登録商標)シリーズのPDA等の従来のPDA装置に典型的な電子メール、カレンダー等の他の特徴に使用され得るため、PDAバージョンは非専用装置であると考えられる。別法として、プロプラエタリプログラミング又は他のカスタムプログラミングを含む専用装置を使用してもよい。
【0034】
例示的な実施形態では、ワイヤレス接続を使用してアクセス装置1と各識別子40の間に通信を確立する。識別子40は単純な受信器及び送信器であることができるが、識別子40を関連する動作機能の局所制御回路に組み込むことができることをさらに意図する。このようにして、オペレータはアクセスしている動作機能を識別することができるだけでなく、アクセス装置1を通して制御ロジックを実行して動作機能を局所的に制御することもできる。これは、クレードル、ドッキングステーション等を介しての直接(すなわち、非ワイヤレス)接続を用いて実現することもできる。
【0035】
ワイヤレス接続は、数例を挙げれば、IR(IrDA)、RF、LAN、WAN、802.11(Wi−Fi)ネットワーク、IEEE1394ネットワーク、Bluetooth(登録商標)ネットワーク等を含むがこれらに限定されない任意の多くの方法で確立することができる。さらにまた、CANネットワーク又は他のプロプラエタリプロトコルネットワークにより分散通信を実現することもできる。
【0036】
図2を参照すると、例示的な一実施形態では、アクセス装置1は、従来の様式でソフトウェアを用いてプログラムすることができ、装置1が動作機能52と通信できるようにする通信ロジック50を備える。この例では、通信は、送/受信器回路を備えて、通信リンク54を経由してデータコマンド及び制御信号をアクセス装置1と交換することができる識別子40を介して確立される。リンク54をワイヤレスリンクとして示すが、上述したようにリンク54がワイヤレスリンクである必要はない。識別子40は動作機能制御機構52とインタフェースして、アクセス装置1が識別子40と通信できるようにする。
【0037】
アクセス装置の通信ロジックは、識別子40から識別信号を受信する。識別ロジック56は、制御ロジック58が動作機能52の動作を制御するに適切なメニュー又は画面をオペレータに提示することができるように識別信号を決定する。任意の選択ロジック60を、2つ以上の識別子40が動作ロケーションにおいて、又は動作機能の感知距離内の他の任意の場所から検出され得る可能性が高いシステムに使用することができる。オーバーライドロジック62をオプションで含めることができ、それにより、通信を適切な有無線ネットワークを介して確立することができる場合に、関連する識別子の感知範囲を超える場合であってもオペレータが動作機能、たとえば、特に制御コンソール16と通信できるようにする。たとえば、CANシステムへの有無線リンクが有効であろう。
【0038】
アクセス装置1は、種々のデータ収集機能、モニタリング機能、及び/又は制御機能をオペレータに提供するようにプログラムすることができる。オペレータに提示される特定の選択肢は、各動作機能及びアクセス装置1に内蔵される制御ロジックの洗練度に基づくことになる。したがって、これらは概して設計選択の問題である。典型例は、色替え動作毎に従う配合表をオペレータに提示することである。他の選択肢は、局所診断、部品識別(たとえば、吹き付け中の異なる部品)、材料識別等のガン制御パラメータ、空気圧設定、電流・電圧設定、トリガ回数、セットアップメニュー、及びパラメータ等であり得る。しかしこれは、本発明の使用により実行することができる制御特徴及びモニタリング特徴のタイプを少数列挙したにすぎない。したがって、本発明の主要な態様の1つは、オペレータが動作機能に近づくことができ、アクセス装置が、オペレータがどこにいるか、及びどの動作機能が通信に利用できるかを識別するとともに、選択された動作機能に固有のメニューをオペレータに提示する。これにより、本発明を用いない場合ではオペレータが各動作場所と制御コンソールの間を行き来する必要があることについての時間、エネルギー、及び非効率性が大幅に低減する。これによりまた、多くのメニューをスクロールして、特定の動作機能に該当するメニューを見つける必要性も低減する。
【0039】
本明細書において説明する例示的な一実施形態は、局所動作機能、たとえば局所動作機能のデータ収集又は制御機構調整等へのオペレータインタフェースとして機能するアクセス装置1を意図するが、このような装置はプログラミングの柔軟性、パワー、及びメモリストレージにおいて大幅な向上を遂げ続けている。したがって、別の実施形態では、制御ロジック58に通信ロジック50を介してワイヤレス接続を使用させて、主制御システム16(図1)及び/又は動作機能制御機構52(図2)からデータベース情報をアップロードさせることを意図する。アクセス装置1はさらに、データベース情報を利用する常駐プログラミングの形態の追加ロジックを備えることができる。たとえば、このような常駐ソフトウェアとしては、単なる一例を挙げると、EXCEL(登録商標)等のスプレッドシートタイプのソフトウェアを挙げることができる。常駐ソフトウェアは、上述したように市販のプログラムであってもプロプラエタリプログラムであってもよい。データベース情報をアクセス装置1に提供することができるだけでなく、データベース情報をアクセス装置1から1つ又は複数のワークステーション或いは設備全体にわたる他の動作機能にダウンロードすることもできる。たとえば、これにより、イントラネットシステム及びエクストラネットシステム、又は中央制御機構と分散したワークステーションの間の他の通信ネットワークの必要性が、特に、時にセキュリティを脅かす恐れのあるこのようなネットワークを使用したくないユーザにとってなくなる。
【0040】
限定ではなく、このような代替の一実施形態を用いる例としては以下が挙げられる。
a.ランタイム(又はセットアップ又は他)情報をスプレッドシートに収集する。スプレッドシートは、任意の市販されているPDA常駐スプレッドシートプログラムと併せて使用することができる。又は、PDAを別のワークステーション又はコンピュータネットワークと同期させて、スプレッドシートをExcel又は他の或る一般的なワークステーションベースのスプレッドシートシステムと併せて使用できるようにする。
b.アラームログを収集してPDAシステムのカレンダー部に記憶し、それによりユーザはその日に発生した問題を見ることができる。
c.アラームデータを収集し、パレードチャート(Paredo chart)及びSPC(統計学的プロセス制御)情報又は他の小さなグラフ表現を提供して、システムの診断をよりよく且つより容易にするPDA常駐QAプログラムを作成する。
【0041】
本明細書において用いる「PDA」又は「個人情報端末」は総称的に用いられ、「汎用PDA」と同義で用いられる。本発明のPDAは、概してユーザの手に合うようなサイズ及び形状を有する汎用コンピューティングマシンである。本明細書において用いる「汎用コンピューティングマシン」とは、一般に利用可能な異なる複数の種々のソフトウェアアプリケーション、たとえば、電子メール、画像閲覧、カレンダー、住所録、スプレッドシート、及び文書処理等を実行するように設計され、単一の目的、用途、及び/又は実施に向けて特に設計又は適合されないコンピュータである。本発明のPDAは、任意のバージョンのPalm OS(登録商標)及びWindows CE(登録商標)を含むがこれらに限定されない任意の適したオペレーティングシステムを走らせる。本発明の例示的なPDAとしては、Palm Tungsten(登録商標)及びZire(登録商標)ライン、Toshiba Pocket PCライン、並びにHewlett−Packard iPAQ(登録商標)ラインが挙げられるがこれらに限定されず、またさらに、PDAと電話を組み合わせた装置、たとえばHandspring Treo(登録商標)ライン等が挙げられる。一般的に言えば、本発明のPDAは一般に、特注品又は設計をカスタマイズした製品ではないという点で市販される。PDAは一般に、表示画面、及び電子スタイラスで機能するタッチスクリーンを含むがこれに限定されない少なくとも1つのユーザ入力機構を有している。
【0042】
本明細書において用いる「ロジック」は総称的に用いられ、機能を実行するハードウェア、ソフトウェア、及び/又はこれら両方の組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0043】
本明細書において用いる「ソフトウェア」は総称的に用いられ、本明細書に述べた機能を実行する、別個のアプリケーション及びダイナミックリンクライブラリからのものを含め、1つ又は複数のコンピュータ実行可能命令、ルーチン、アルゴリズム、モジュール、又はプログラムを含むがこれらに限定されない。ソフトウェアは、サーブレット、アプレット、スタンドアロン、プラグイン、又は他のタイプのアプリケーション等、種々の形態で実施することもできる。ソフトウェアは、当該技術分野において既知の種々のコンピュータ可読媒体に保持することができる。
【0044】
本明細書において用いる「ネットワーク」は総称的に用いられ、インターネット、イントラネット、仮想私設網、広域ネットワーク、及びローカルエリアネットワークを含むがこれらに限定されない。
【0045】
図3A及び図3Bを参照すると、オペレータはキーパッド200又は他の入力プロセスを介してアクセス装置1を起動することによって選択を行うことができる。キーパッドエンコーダ202がキー選択を適切なコードに変換し、このコードがエンコーダ/送信器204aによりRF信号としてさらにエンコードされてRFアンテナ206aを介して送信されるか、又はエンコーダ/ドライバ回路204bによりIR信号としてIR送信器206bを介して送信される。RF信号はアンテナ206aを介して受信器アンテナ208に送信され、IR信号は赤外線受信器209により検出される。IR信号又はRF信号は、第2のデコーダ213によって復号されて符号化キー信号になる。第3のデコーダ210がキーコマンドを、スプレーコントローラ又は他のコントローラ215a、215b等の選択されたサブシステムに適切な命令又は制御信号に変換する。
【0046】
エンコーダ及びデコーダの具体的な設計は従来通りであっても、又は特定の用途に固有であってもよい。たとえば、アクセス装置1は、ワイヤレス制御装置と一般に併用される標準ワイヤレス伝送プロトコル及び回路を使用することができる。
【0047】
図4は、装置が動作機能との確立された通信を識別した後、又はオペレータが複数の利用可能な動作機能のうちの1つを選択した後、アクセス装置1がオペレータに提示することのできる例示的な画面を示す。アクセス装置1は、必要に応じてタッチスクリーンインタフェース(スタイラス付き等)、押しボタン、キーパッド等を許容することができる。図4の例では、オペレータは製品入力選択100、スプレーパターン選択102、パワー設定104等への制御にアクセスすることができる。
【0048】
図5は、データ収集、診断等のためにオペレータに提示することができる例示的な画面を示す。ここでも、特定の画面及びデータを必要に応じてカスタマイズすることができるが、本発明によれば、そのときにアクセスしている動作機能に直接関連付けられる。図5の例では、オペレータは複数のスプレーガン124の電圧120、電流122等のデータを変更することができる。
【0049】
本発明について好ましい実施形態を参照して説明した。明らかに、本明細書を読んで理解すれば、変更及び代替が思い浮かぶであろう。添付の特許請求の範囲又はその等価物内にある限りにおいてこのような変更及び代替をすべて包含することを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明を利用する、床配置図としての通常の材料塗布システムの簡略化した概略図である。
【図2】本発明を利用する通信装置の機能ブロック図である。
【図3A】本発明による制御機能の機能ブロック図である。
【図3B】本発明による制御機能の機能ブロック図である。
【図4】本発明に有用な例示的なメニュー画面を示す図である。
【図5】本発明に有用な例示的なメニュー画面を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の動作場所にあり、動作時に第1の動作機能に従って材料を表面に塗布する少なくとも1つの塗布装置と、
互いに、且つ前記塗布装置の第1の場所からそれぞれ物理的に、オペレータが前記場所間を移動するような距離だけ離れており、そこに配置された関連する動作機能をそれぞれ有し、関連する各動作機能はオペレータアクセス機能を有する、1つ又は複数の追加動作場所と、
前記各追加動作場所及び前記塗布装置の第1の場所において前記塗布装置及び前記各動作機能に関連付けられ、ワイヤレスに通信可能な一意のIDがそれぞれ関連付けられる各ワイヤレス通信識別子と、
オペレータ使用時に前記識別子を検出するワイヤレスアクセス装置と、
を備える、材料塗布システム。
【請求項2】
前記アクセス装置はハンドヘルド装置を含む、請求項1に記載の材料塗布システム。
【請求項3】
前記ハンドヘルド装置は以下の群:PDA、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレットパーソナルコンピュータから選択される、請求項2に記載の材料塗布システム。
【請求項4】
前記各識別子と前記アクセス装置の間にワイヤレス接続を提供するワイヤレスネットワークを備える、請求項1に記載の材料塗布システム。
【請求項5】
前記ネットワークは以下の群:赤外線、無線周波、IEEE802、LAN、WAN、VPN、イントラネット、インターネットから選択される、請求項4に記載の材料塗布システム。
【請求項6】
前記アクセス装置は前記各識別子が近傍で検出されると動作する、請求項1に記載の材料塗布システム。
【請求項7】
前記アクセス装置は、識別子の感知距離内にあるときに前記識別子を認識する識別ロジックを備える、請求項1に記載の材料塗布システム。
【請求項8】
前記アクセス装置は、認識された識別子及び該識別子に関連する動作機能に関連する視覚表示をオペレータに提示する制御ロジックを備える、請求項7に記載の材料塗布システム。
【請求項9】
前記アクセス装置は、2つ以上の前記識別子が検出される場合に動作機能を選択するための視覚表示をオペレータに提供する選択ロジックを備える、請求項7に記載の材料塗布システム。
【請求項10】
前記アクセス装置は、感知範囲を超えている場合に前記動作機能の1つ又は複数を制御するための制御表示をオペレータに提供するオーバーライドロジックを備える、請求項1に記載の材料塗布システム。
【請求項11】
前記塗布装置は粉体スプレーガンを備え、前記追加動作機能は、供給センタ、サイクロン、最終濾過器、スプレーガン動力機、部品IDのうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の材料塗布システム。
【請求項12】
前記塗布装置は液体計量分配装置を備える、請求項1に記載の材料塗布システム。
【請求項13】
各動作場所にそれぞれ配置されている2つ以上の材料塗布動作機能を設けるステップであって、前記動作場所のうちの少なくとも2つは、オペレータが該場所間を移動するような距離だけ互いに物理的に離れている、設けるステップと、
前記各動作機能に一意のワイヤレス識別子を関連付けるステップと、
ワイヤレス接続を使用するステップであって、それによってオペレータが各識別子を検出する、使用するステップと、
を含む、材料塗布システムを制御する方法。
【請求項14】
検出された識別子に一意に関連する表示を前記オペレータに提示するステップを含む、請求項11に記載の材料塗布システムを制御する方法。
【請求項15】
関連する識別子が検出された場合に、以下:粉体スプレーガン、粉体供給センタ、最終濾過器、スプレーガン動力機、液体計量分配ガンのうちの1つ又は複数の動作を制御するステップを含む、請求項11に記載の材料塗布システムを制御する方法。
【請求項16】
第1の動作場所にあり、動作時に第1の動作機能に従って材料を表面に塗布する少なくとも1つの塗布装置と、
互いに、且つ前記塗布装置の第1の場所からそれぞれ物理的に、オペレータが前記場所間を移動するような距離だけ離れており、そこに配置された関連する動作機能をそれぞれ有し、関連する各動作機能はオペレータアクセス機能を有する、1つ又は複数の追加動作場所と、
前記各追加動作場所及び前記塗布装置の第1の場所において前記塗布装置及び前記各動作機能に関連付けられ、通信可能な一意のIDがそれぞれ関連付けられる各動作機能識別子と、
オペレータ使用時に前記識別子を検出し、該検出された識別子及び関連する動作機能に関連するメニューを前記オペレータに提示するアクセス装置と、
を備える、材料塗布システム。
【請求項17】
前記アクセス装置は以下の群:PDA、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレットパーソナルコンピュータから選択される、請求項14に記載の材料塗布システム。
【請求項18】
前記アクセス装置はワイヤレスハンドヘルド装置を含む、請求項14に記載の材料塗布システム。
【請求項19】
前記アクセス装置は、前記動作場所のうちの1つに配置された各通信クレードルに差し込まれる、請求項14に記載の材料塗布システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2007−502703(P2007−502703A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523831(P2006−523831)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/018843
【国際公開番号】WO2005/018825
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(391019120)ノードソン コーポレーション (150)
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
【Fターム(参考)】