説明

【課題】杖を構成するシャフトとグリップとを個々に交換できるようにすると共に、使用者の好みに合った最適な杖を容易に得られるようにする。
【解決手段】棒状のシャフト1と、該シャフト1の上端に設けられるグリップ2とを備えた杖であって、該グリップ2又は前記シャフト1を交換できるように、該両部材が着脱自在に取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高齢者や身障者等の歩行を補助するために使用される杖に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の杖としては、例えば次のようなものが存在する。即ち、この従来のものは所謂L字又はT字型杖と称されるものであり、パイプ状のシャフト部と、該シャフト部よりも小径に形成されてその上端に取付けられる細径部とからなるシャフトと、該シャフトの細径部に取付けられるグリップとを備えている。細径部はシャフト部の上端部に挿入されて接着剤により固着されている。また、細径部とグリップとはネジ部の螺合及び接着剤による接着によって強固に固着されている。
【特許文献1】特開2005−124982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の杖に於いては、シャフトとグリップとが固着されて交換不能な一体物として構成されているために、次のような不都合を有していた。即ち、シャフト又はグリップの何れか一方のみが破損して使用不能となった場合、たとえ他方の部材が十分に使用できる状態にあっても、新しく杖を買い換える必要があり、大変不経済であった。また、杖を購入するに際しては、通常シャフトの柄や色調等のデザイン、グリップの握り易さや形状、全体のバランス等が選定の基準となる。しかるに、好みに合うような杖が必ずしも存在するとは限らず、例えばシャフト又はグリップの何れか一方が好みに合わないような場合もある。このような場合、妥協してその儘その杖を購入するか、或いは購入を諦めざるを得なかったのである。
【0004】
それ故に、本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、杖を構成するシャフトとグリップとを個々に交換できるようにすると共に、使用者の好みに合った最適な杖を容易に得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る杖は、棒状のシャフトと、該シャフトの上端部に設けられるグリップとを備えた杖であって、該グリップ又は前記シャフトを交換できるように、該両部材が着脱自在に取付けられてなるものである。
【0006】
このような杖にあっては、シャフトとグリップとが着脱自在に取付けられてなるために、これら両部材の何れか一方を交換することが可能になる。従って、例えばこれら両部材のうち何れか一方が破損した場合は、その一方のみを交換すればよいために、大変経済的である。また、杖の販売形態として、シャフトとグリップとを夫々単品で販売することが可能となるために、購入者はシャフト及びグリップを個々に選定し、この両部材を取付けることにより、好みに合った最適な杖を容易に得ることができる。更に、このようなシャフトやグリップを複数所有していれば、例えばその時の自らの気分やTPO等に応じて杖を使い分けることが可能になる。
【0007】
また、前記シャフトが、パイプ状のシャフト部と、雌ネジ部を有する連結孔が上端中央部に形成されて前記シャフト部の上端部に挿着される第1連結部とを備え、前記グリップが、人が把持するグリップ部と、前記連結孔の雌ネジ部に螺合される雄ネジ部を有して前記グリップ部に設けられる第2連結部とを備えるようにしてもよい。
【0008】
この場合は、第2連結部の雄ネジ部を第1連結部の雌ネジ部に螺合することにより、これらの両連結部を介してシャフトとグリップとが着脱自在に取付けられることになる。
【0009】
更に、周方向に形成される係合溝を有する棒状体を前記第2連結部の雄ネジ部に延設すると共に、前記シャフト部の上端部に切欠を形成して、該切欠に前記第1連結部の前面部を配し、しかも該第1連結部の前面部に雌ネジ部を有する取付孔を径方向に形成する共に、該雌ネジ部に螺合される止ネジの先端部が前記係合溝に係合するように構成することも可能である。
【0010】
このように、第1連結部と第2連結部との固定手段として、これら各部材に夫々設けたネジ部の螺合と、係合溝への止ネジの係合という2種類の手段を採用することにより、両連結部を着脱自在に取付けることができる一方で、接着剤を使用することなく両者を確実且つ強固に固定することが可能になる。また、止ネジと係合溝との係合により、第2連結部の雄ネジ部の緩み防止も図れることになって、大変有用である。
【0011】
更に、前記第1連結部の前面部にカバー体をスライド自在に設けて、前記止ネジを隠蔽し得るように構成してもよい。
【0012】
これによると、通常の使用時には止ネジが隠蔽されるように、カバー体をスライドさせる。カバー体により止ネジは隠蔽されて、外観体裁を損なうようなことはない。一方、止ネジを取付孔に螺合及び螺脱する場合は、カバー体を逆方向にスライドさせた状態で行う。
【0013】
また、本発明に係る杖は非常に簡易な構成からなるために、その製作も容易に且つ安価に行える。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、シャフトとグリップとを個々に交換することができると共に、使用者の好みに合った最適な杖を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る杖の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に於ける杖の正面図で、図2は側面図を示す。
【0016】
図1に示すように、杖Aは所謂T字型杖と称されるものであり、棒状のシャフト1と、該シャフト1の上端部に設けられるグリップ2とを備えている。シャフト1は、パイプ状のシャフト部3と、該シャフト部3の上端部に挿着される第1連結部4と、前記シャフト部3の下端部に設けられる滑り止め用のゴム先5とからなっている。グリップ2は、使用者が把持するためのグリップ部6と、該グリップ部6を前記第1連結部4を介してシャフト部3に着脱自在に取付けるための第2連結部7とからなっている。例えば、前記シャフト1及びグリップ2の第2連結部7はアルミニウム等の軽金属で構成され、グリップ部2は木材や合成樹脂等から構成される。しかるに、これら各部材の具体的な材質は、これに限定されるものではない。
【0017】
シャフト部3の上端部には、所定幅を有する切欠3aが軸方向に形成されている。第1連結部4は、図3及び図4に示すように略円柱状に形成されており、その上端中央部には上部側に雌ネジ部10を有する連結孔11が軸方向に設けられている。また、図5(a)に示すように、第1連結部4の前面部には凹溝12を中央に有する凸状部13が軸方向に形成されており、凹溝12の両内側面にはガイド溝14、14が設けられている。凹溝12の下部には、雌ネジ部15を有する取付孔16が、前記連結孔11の下部側と連通するように径方向に設けられている。また、凹溝12には、上部及び取付孔15の上方位置に夫々嵌合凹部17、18が幅方向に設けられている。第1連結部4の上端部外周縁には、前記凸状部13と連なるようにして鍔部19が形成されている。尚、第1連結部4とシャフト部3とは接着剤により固着されている。本実施形態に係るシャフト1は、以上のように構成されている。
【0018】
第2連結部7の上端部には、前記グリップ部6の下面に形成された雌ネジ部6aに螺合する雄ネジ部20が設けられている。これら各ネジ部6a、20は、接着剤により二重に固着されている。また、第2連結部7の下部側には、図3に示すように第1連結部4の雌ネジ部10に螺合可能な雄ネジ部21が形成され、更に該雄ネジ部21の下端部には棒状部22が延設されている。また、棒状部22の外周面には、前記取付孔16の雌ネジ部15に止ネジ23を締着した際に、その先端部が係合する係合溝24が周方向に形成されている。
【0019】
このように両連結部4、7の固定手段として、各ネジ部10、21の螺合、及び係合溝24への止ネジ23の係合という2種類の手段を採用しているために、両連結部4、7を着脱自在に固定できる一方で、接着剤を使用することなく両者を確実且つ強固に固定することができる。また、止ネジ23と係合溝24との係合により、第2連結部7の雄ネジ部21の緩み防止も図ることができて、大変有用である。
【0020】
尚、第2連結部7には、各連結部4、7のネジ部10、21を締着させた際に、第1連結部4の鍔部19の上面に当接する鍔部25が設けられている。また、この状態で第1連結部4の凹溝12の上部開口部分は、図2及び図3に示すように鍔部25により閉鎖されることになる。本実施形態に係るグリップ2は、以上のように構成されている。
【0021】
第1連結部4の凹溝12には、図5(b)に示すような合成樹脂製のカバー体30が上下方向にスライド自在に設けられている。即ち、カバー体30の両側部には、第1連結部4のガイド溝14にスライド自在に嵌合するレール31、31が設けられている。また、カバー体30の裏面上部側には、前記第1連結部4の嵌合凹部17、18に嵌合可能な嵌合凸部32が設けられている。この嵌合凸部32を上側の嵌合凹部17に嵌合させた開放状態では、図4に示すように、第1連結部4の取付孔16に螺合させた止ネジ23の頭部が露出し、カバー体30から手を離してもこの開放状態は維持される。これにより、止ネジ23の螺合及び螺脱作業を容易に行うことができる。
【0022】
一方、カバー体30を下方にスライドさせて、その嵌合凸部32を下側の嵌合凹部18に嵌合させた閉鎖状態では、図1乃至図3に示すように、前記止ネジ23がカバー体30により隠蔽されるために、外観体裁を損なうようなことはない。通常、杖Aはこの状態で使用される。また、この閉鎖状態でカバー体30の裏面は、止ネジ23の頭部に当接するように構成されている。これにより、振動等による止ネジ23の緩みを好適に防止することができる。更に、カバー体30は、その嵌合凸部32と嵌合する各嵌合凹部17、18の存在、及び第2連結部7の鍔部25による凹溝12の上部開口部分の閉鎖により、不用意に第1連結部4から離脱するようなことはない。
【0023】
また、カバー体30の下端中央には切欠33が形成されており、カバー体30が閉鎖状態にある場合は、図1及び図3に示すように、第1連結部4の凹溝12の下面間には隙間34が形成される。この隙間34にはマイナスドライバーの先端が挿入可能であり、ドライバーの先端でカバー体30を上向きに押圧すれば、該カバー体30の嵌合凸部32と第1連結部4の嵌合凹部18との嵌合状態を容易に解除できる。これにより、カバー体30を閉鎖状態から開放状態となるように上向きにスライドさせることが可能になる。
【0024】
尚、カバー体30を合成樹脂で構成すると、第1連結部4が金属等で構成されて両者間に若干の寸法誤差があっても、かかる誤差はカバー体30の変形により適切に吸収される。但し、カバー体30は金属等で構成しても構わない。
【0025】
本実施形態に係る杖Aは、以上のように構成されている。かかる杖Aは従来の杖と同様に歩行の際に携帯して使用されるが、これにより使用者の歩行を良好に補助することができる。しかるに、このような使用等によって、シャフト1又はグリップ2の何れか一方が破損する場合がある。この場合は、次のようにして破損した部材を交換することができる。以下、その一例としてシャフト1が破損した場合について説明する。
【0026】
シャフト1を新しいものと交換するために、先ず破損したシャフト1をグリップ2から取外す必要がある。即ち、上述したようにマイナスドライバーの先端をカバー体30の切欠33と凹溝12間に形成された隙間34に挿入する。閉鎖状態にあるカバー体30を上向きに押圧して、その嵌合凸部32と下側の嵌合凹部18との嵌合状態を解除する。そして、嵌合凸部32が上側の嵌合凹部17に嵌合するように、カバー体30を上向きにスライドさせて開放する。
【0027】
次に、止ネジ23を取付孔16の雌ネジ部15から螺脱して取外す。その後、シャフト1を手で固定した状態でグリップ2を回転させて、第2連結部7の雄ネジ部21を第1連結部4の雌ネジ部10から螺脱する。これにより、シャフト1をグリップ2から取外すことができる。
【0028】
次に、このグリップ2に新しく用意したシャフト1を取付けるのであるが、かかる取付作業は上述した取外作業とは全く逆の作業となる。即ち、第2連結部7の雄ネジ部21と第1連結部4の雌ネジ部10とを螺合した後、止ネジ23を取付孔6の雌ネジ部15に螺合して、その先端部を第2連結部7の係合溝24に係合させる。更に、カバー体30を下向きにスライドさせて、その嵌合凸部32を第1連結部4の嵌合凹部18に嵌合すれば、取付作業は完了する。
【0029】
以上説明したように、シャフト1とグリップ2とを着脱するという一連の交換作業は極めて簡易な作業であるために、高齢者等であっても容易に行うことができる。尚、グリップ2が破損した場合も同様にして、その交換を行えばよい。
【0030】
また、このようにしてシャフト1又はグリップ2の何れか一方のみを交換することができるために、従来のもののように杖を新たに買い換えるという必要はなくなり、よって大変経済的である。
【0031】
更に、杖Aの販売形態として、シャフト1とグリップ2とを夫々単品で販売することが可能となるために、購入者はシャフト1及びグリップ2を個々に選定し、この両部材1、2を取付けることによって、好みに合った最適な杖Aを容易に得ることができる。また、このようなシャフト1やグリップ2を複数所有していれば、例えばその時の自らの気分やTPO等に応じて杖Aを使い分けることが可能になる。
【0032】
尚、上記各実施形態に於いては、所謂T字型杖を本発明の係る杖Aの一例として説明したが、杖Aの種類はこれに限定されるものではない。本発明は、棒状のシャフト1とグリップ2とを備えた杖について幅広く適用可能である。
【0033】
また、上記実施形態では、シャフト1のシャフト部1と第1連結部4、及びグリップ2のグリップ部6と第2連結部7とを夫々別部材で構成しているが、これらは一体物として構成することも可能である。
【0034】
更に、実用面を考慮するとシャフト1は、上記実施形態のように軽量化が図れるパイプで構成するのが好ましいが、本発明は決してこれに限定されるものではない。要は、シャフト1は棒状であればよく、例えば中実棒等で構成しても構わない。
【0035】
また、上記実施形態では、第1連結部4にカバー体30をスライド自在に設けている。しかるに、かかるカバー体30は必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
【0036】
更に、シャフト1とグリップ2とを着脱自在に取付ける具体的な手段も、上記実施形態に限定されるものではない。
【0037】
その他、シャフト1やグリップ2の形状等の各部の構成も本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更自在である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明は杖について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る杖を示す正面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】同断面図である。
【図4】同カバー体を上方に移動させた状態を示す断面図である。
【図5】(a)は一方の連結部の断面図、(b)はカバー体の正面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 シャフト
2 グリップ
3 シャフト部
3a 切欠
4 第1連結部
6 グリップ部
7 第2連結部
10 雌ネジ部
11 連結孔
13 凸状部
14 ガイド溝
15 雌ネジ部
16 取付孔
21 雄ネジ部
22 棒状部
23 止ネジ
24 係合溝
30 カバー体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のシャフトと、該シャフトの上端部に設けられるグリップとを備えた杖であって、
該グリップ又は前記シャフトを交換できるように、該両部材が着脱自在に取付けられてなることを特徴とする杖。
【請求項2】
前記シャフトが、パイプ状のシャフト部と、雌ネジ部を有する連結孔が上端中央部に形成されて前記シャフト部の上端部に挿着される第1連結部と、を備え、
前記グリップが、人が把持するグリップ部と、前記連結孔の雌ネジ部に螺合される雄ネジ部を有して前記グリップ部に設けられる第2連結部と、を備えてなる請求項1記載の杖。
【請求項3】
周方向に形成される係合溝を有する棒状体が前記第2連結部の雄ネジ部に延設されると共に、前記シャフト部の上端部に切欠が形成されて、該切欠に前記第1連結部の前面部が配され、しかも該第1連結部の前面部には雌ネジ部を有する取付孔が径方向に形成される共に、該雌ネジ部に螺合される止ネジの先端部が前記係合溝に係合するように構成されてなる請求項2記載の杖。
【請求項4】
前記第1連結部の前面部にカバー体がスライド自在に設けられて、前記止ネジを隠蔽し得るように構成されてなる請求項3記載の杖。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−142269(P2010−142269A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319563(P2008−319563)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)