説明

杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造

【課題】 工場での生産性を向上でき、しかも鞘管の外側で施工することができ、施工性も優れる杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造を提供すること。
【解決手段】 鞘管2の端部に外側に突き出した環状のフランジ部12を設け、このフランジ部12に、鞘管2の内側に突き出す環状のシール部11aを備える弾性体のシール部材11を当て、さらにこのシール部材11に押えリング部13aを備える押え部材13を当て、これらの外側から固定部材15で挟んで固定する。
これにより、鞘管2の外側でシール構造10の取り付けができ、しかも固定部材15で挟んで固定することで、ボルト用の孔加工や位置合わせが不要となり、製作および施工が簡単にできるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造に関し、弾性体のシール部材を鞘管の外側からボルトによらず簡単に取り付けることができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
例えば人工島や橋台等の構造物を構築する際の基礎部分として、構造物の一部をなすよう鋼管又はコンクリート等からなる鞘管を取り付けておき、この鞘管内に鋼管又はコンクリート等からなる杭を挿入して地中に打設した後、鞘管と杭との間の空間にグラウトを充填したり、逆に杭を打設した後、鞘管を挿入し、これらの隙間にグラウトを充填することにより、杭と鞘管とを一体的に結合固定することが行われており、鞘管の下端部において鞘管と杭の隙間からグラウトが外部に流出することを防止するためシール構造が設けられる。
【0003】
従来から鞘管と杭の隙間からグラウトが流出することを防止するためのシール構造については種々提案されている。
例えば特許文献1には、図9(a)に示すように、ゴム等の弾性体により形成された断面形状がL字状の環状のシール材1の外周面に鞘管2に溶接固定するための鋼管などの短筒状の固定部材3が一体にされており、鞘管2の下端部に装着して固定部材3を溶接することでシール構造が施工され、シール材1が下側に弾性変形して先端が杭4の外面に圧接してシールするように構成され、比較的杭4と鞘管2との間隔が小さい場合のシール構造とされている。
【0004】
また、比較的杭4と鞘管2との間隔が大きい場合のシール構造としては、例えば図9(b)に示すように、断面形状がI字状のシール材5を用い、鞘管2の内周面に環状の取付金具6を水平に突き出すように溶接し、シール材5を載せて環状の押え板7を介してボルト・ナット8で締め付けて固定するものがある。
なお、図中の9は、スペーサである。
【特許文献1】特開平09−88050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のシール構造では、断面形状がL字状のシール部材1と、これを鞘管2に取り付けるための金属製の環状の固定部材3とを工場にて一体に成形し、施工の際に、環状の固定部材3ごと鞘管2に溶接して取り付けなければならず、作業性が悪く、簡単に施工できないという問題がある。
また、断面形状がI字状のシール材5を用いるシール構造の場合には、鞘管2の内周面に取付金具6を溶接した後、シール材5を載せ、取付金具6、シール材5および押え板7のボルト挿入孔を位置合わせしながらボルト・ナット8で締め付けなければならず、位置合わせが煩雑であり、簡単に施工することができず、予めこれら取付金具6、シール材5および押え板7にボルト挿入孔を加工しておく必要もあり、製作も大変であるという問題がある。
【0006】
この発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたもので、工場での生産性を向上でき、しかも鞘管の外側で施工することができ、施工性も優れる杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造は、杭とその外側に配置される鞘管との間隙に注入されるグラウトの流出を防止してシールするシール構造であって、
前記鞘管の端部に外側に突き出した環状のフランジ部を設け、このフランジ部に前記鞘管の内側に突き出す環状のシール部を備える弾性体のシール部材を設け、このシール部材に当てる押えリング部を備える押え部材を設け、この押え部材と前記フランジ部との間の前記シール部材を、外側から固定部材で挟んで固定してなることを特徴とするものである。
この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、鞘管の端部に外側に突き出した環状のフランジ部を設け、このフランジ部に、鞘管の内側に突き出す環状のシール部を備える弾性体のシール部材を当て、さらにこのシール部材に押えリング部を備える押え部材を当て、これらの外側から固定部材で挟んで固定するようにしており、鞘管の外側でシール構造の取り付けができ、しかも固定部材で挟んで固定することで、ボルト用の孔加工や位置合わせが不要となり、製作および施工が簡単にできるようになる。
【0008】
また、この発明の請求項2記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造は、請求項1記載の構成に加え、前記シール部材の外周端縁部に、肉厚または凸状の抜け止め部を形成してなることを特徴とするものである。
この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、シール部材の外周端縁部に、肉厚または凸状の抜け止め部を形成しており、抜け止め部の内側を挟んで固定することで、肉厚または凸状の部分で抜け難くなり、一層確実に固定できるようになる。
【0009】
さらに、この発明の請求項3記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造は、請求項1または2記載の構成に加え、前記押え部材の端縁部に、前記鞘管の周面と平行に突き出す円筒部を形成してなることを特徴とするものである。
この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、押え部材の端縁部に、前記鞘管の周面と平行に突き出す円筒部を形成してあり、鞘管の下端部が海底面などに設置される場合にも円筒部でシール部材の変形できる空間を確保して確実にシールできるようになる。
【0010】
また、この発明の請求項4記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記押え部材の端縁部に、先端部が大径の円すい部を形成してなることを特徴とするものである。
この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、押え部材の端縁部に、先端部が大径の円すい部を形成してあり、押え部材に直接円すい部を形成したり、円筒部を介して円すい部を形成することで、杭を先に打設し、鞘管を後で設置する場合でも円すい部をガイドとして容易に施工できるようになる。
【0011】
さらに、この発明の請求項5記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記シール部材の上面または下面のいずれかに、前記鞘管の内周面より突き出して当該シール部材を支持する補強部材を設けたことを特徴とするものである。
この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、シール部材の上面または下面のいずれかに、鞘管の内周面より突き出して当該シール部材を支持する補強部材を設けてあり、補強部材でシール部材を支えて補強することで、杭と鞘管との間隔が大きい場合でも偏心を抑えて確実にシールできるようになる。さらに、押え部材の内側より補強部材が突出した範囲のグラウト圧を補強部材が受け持つので、シール部材にかかるグラウト圧が小さくなり、シール部材の変形を抑えて、鞘管と杭の偏心量が大きくても安定したシール効果を期待できるようになる。
【0012】
また、この発明の請求項6記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記押え部材の押えリング部の内周端を、前記鞘管の内周面より突出させて前記シール部材を支持可能に構成してなることを特徴とするものである。
この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、押え部材の押えリング部の内周端を、前記鞘管の内周面より突出させて前記シール部材を支持可能に構成してあり、押え部材を突き出すことによってもシール部材を支えて補強できるようになり、別部材とすることなく、杭と鞘管との間隔が大きい場合でも偏心を抑えて確実にシールできるようになる。
【0013】
さらに、この発明の請求項7記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造は、請求項1〜6のいずれかに記載の構成に加え、前記押え部材の外周端縁に、前記鞘管のフランジ面に当接させる当接部を形成してなることを特徴とするものである。
この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、押え部材の外周端縁に、鞘管のフランジ面に当接させる当接部を形成してあり、押え部材の当接部をフランジ面に当てることで、押え部材の変形を防止して確実にシールでき、特に鞘管が取り付けられてジャケットの重量が重い場合に有効である。
【0014】
また、この発明の請求項8記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造は、請求項1〜7のいずれかに記載の構成に加え、前記フランジ部の外周端縁の円周複数箇所に、前記押え部材のずれを防止するずれ止め部材を設けてなることを特徴とするものである。
この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、前記フランジ部の外周端縁の円周複数箇所に、前記押え部材のずれを防止するずれ止め部材を設けてあり、ずれ止め部材によってシール部材を位置決めでき、確実にシールできるようになり、特に押え部材の当接部をフランジ面に当てることと組合わせることで、押え部材の変形を防止して特に鞘管が取り付けられてジャケットの重量が重い場合であって確実に位置決めしてシールできるようになり有効となる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の請求項1記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、鞘管の端部に外側に突き出した環状のフランジ部を設け、このフランジ部に鞘管の内側に突き出す環状のシール部を備える弾性体のシール部材を当て、さらにこのシール部材に押えリング部を備える押え部材を当て、これらの外側から固定部材で挟んで固定するようにしたので、鞘管の外側でシール構造を取り付けることができ、しかも固定部材で挟んで固定することで、ボルト用の孔加工や位置合わせが不要となり、製作および施工を簡単にすることができる。
【0016】
また、この発明の請求項2記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、シール部材の外周端縁部に、肉厚または凸状の抜け止め部を形成したので、抜け止め部の内側を挟んで固定することで、肉厚または凸状の部分で抜け難くなり、一層確実に固定することができる。
【0017】
さらに、この発明の請求項3記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、押え部材の端縁部に、前記鞘管の周面と平行に突き出す円筒部を形成したので、鞘管の下端部が海底面などに設置される場合にも円筒部でシール部材の変形できる空間を確保して確実にシールすることができる。
【0018】
また、この発明の請求項4記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、押え部材の端縁部に、先端部が大径の円すい部を形成したので、押え部材に直接円すい部を形成したり、円筒部を介して円すい部を形成することで、杭を先に打設し、鞘管を後で設置する場合でも円すい部をガイドとして容易に施工することができる。
【0019】
さらに、この発明の請求項5記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、シール部材の上面または下面のいずれかに、鞘管の内周面より突き出して当該シール部材を支持する補強部材を設けたので、補強部材でシール部材を支えて補強することで、杭と鞘管との間隔が大きい場合でも偏心を抑えて確実にシールすることができる。さらに、押え部材の内側より補強部材が突出した範囲のグラウト圧を補強部材が受け持つことができるので、シール部材にかかるグラウト圧が小さくなり、シール部材の変形を抑えて、鞘管と杭の偏心量が大きくても安定したシール効果を期待することができる。
【0020】
また、この発明の請求項6記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、押え部材の押えリング部の内周端を、前記鞘管の内周面より突出させて前記シール部材を支持可能に構成したので、押え部材を突き出すことによってもシール部材を支えて補強することができ、別部材とすることなく、杭と鞘管との間隔が大きい場合でも偏心を抑えて確実にシールすることができる。
【0021】
さらに、この発明の請求項7記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、押え部材の外周端縁に、鞘管のフランジ面に当接させる当接部を形成したので、押え部材の当接部をフランジ面に当てることで、抑え部材の変形を防止して確実にシールすることができ、特に鞘管が取り付けられてジャケットの重量が重い場合に有効にシールすることができる。
【0022】
また、この発明の請求項8記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、フランジ部の外周端縁の円周複数箇所に、押え部材のずれを防止するずれ止め部材を設けたので、ずれ止め部材によってシール部材を位置決めして確実にシールすることができる。特に、押え部材の当接部をフランジ面に当てることと組合わせることで、押え部材の変形を防止して確実にシールすることができ、特に鞘管が取り付けられてジャケットの重量が重い場合に有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図1および図2はこの発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造の一実施の形態にかかり、図1(a),(b)は全体の概略断面図および鞘管の概略斜視図、図2(a)は鞘管の部分拡大断面図、同図(b)は鞘管の他の一実施形態の部分拡大断面図である。
【0024】
この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造10は、ゴムや合成樹脂などの弾性体の環状で横断面形状が横長のI字状のシール部材11を、鞘管2の外側で取り付けることができるようにし、しかも取付固定をボルト・ナットを挿通することなく、固定部材を差し込むなどで挟んで行うことで、工場などでの各部材の製作を容易とし、施工現場でも簡単に施工できるようにしたものである。
【0025】
この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造10では、鞘管2の端部である下端に、外側に水平に突き出して環状のフランジ部12が設けられ、鞘管2の下端に当てられて溶接して取り付けてある。
【0026】
この鞘管2のフランジ部12を介して取り付けられるシール部材11は、鞘管2の内側に突き出す環状のシール部11aを備えるとともに、外側には、フランジ部12に当てて取り付ける取付部11bが一体に形成してある。
【0027】
また、このシール部材11には、外周端縁部に上方に突き出す凸状の抜け止め部11cが一体に形成してあり、この凸状の抜け止め部11cによって杭4を打ち込んだり、打ち込んである杭4に挿入する場合の内側への抜け出しを防止する。なお、抜け止め部11cは、凸状の部分を外側に形成する場合に限らず、外側の部分を肉厚にして構成するようにしても良い。
【0028】
さらに、この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造10では、シール部材11の取付部11bをフランジ部12に挟んで取り付けるため環状の押え部材13が用意され、フランジ部12と同一形状としてあり、内径が鞘管2の内径と同一とされて鞘管2の内側に突き出さないようするとともに、外径がフランジ部12の外径と同一として構成してあり、押え部材13の全体がシール部材11に当たる板状の押えリング部13aとしてある。
【0029】
また、鞘管2を海底に設置する場合の押え部材14としては、水中に設置する場合の押え部材13と異なり、図2(b)に示すように、その端縁部であるシール部材11の取付部11bに当てる押えリング部14aの端縁部に鞘管2と同一内径とされ、鞘管2の周面と平行に下方に突き出す円筒部14bを一体に形成して構成する。このような円筒部14bを備える押え部材14を用いることで、シール部材11が下方に曲がるように変形する場合の変形空間を確保することができ、特に鞘管2を海底面に設置する場合の変形空間の確保に有効となる。
【0030】
次に、鞘管2のフランジ部12に当てたシール部材11を押え部材13、14を介して挟んで取り付ける固定部材15は、例えば図3にそれぞれ示すように、略C字状のシャコ万力形状とした金属製のフレーム15aを備え、開口部の対向面15b間で挟むようにするものや対抗面15bの先端にテーパ面15cを形成したもの、あるいはシャコ万力と同様に、一方の対向面に突き出して締付ねじ15dを取り付けたものなどが用いられる。
【0031】
このような固定部材15を用いて行うシール部材11の取り付けは、例えば図3に示すように、締付治具16を用い、フランジ部12に当てたシール部材11を押え部材13、14を介して挟んで締め付けてシール部材11を圧縮した状態としておき、締付治具16の近傍に固定部材15を差し込んだ後、締付治具16を取り外すようにする。
【0032】
あるいは、開口部の対向面15bにテーパ面15cを形成した固定部材15を用い、締付治具16を用いることなく、ハンマーなどで打ち込んで取り付けるようにしても良い。
【0033】
さらに、締付ねじ15dを備えた固定部材15を用いる場合には、締付ねじ15dを戻して開口部を広げた状態として装着した後、締付ねじ15dをねじ込んで締め付けることで取り付けるようにする。
【0034】
こうして固定部材15を鞘管2の円周に複数個等間隔に配置することで、シール部材11の取り付けが完了する。この固定部材15の取り付け個数は、鞘管2の大きさにもよるが、例えば円周8箇所ないし10箇所程度とすれば良い。
【0035】
このような杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造10によれば、鞘管2の外側に突き出したフランジ部12にシール部材11を取り付けることができ、これまでの鞘管の内側で施工する場合に比べ、作業空間も確保し易く、作業も効率良く、容易にできる。
【0036】
また、シール部材11の取付固定を固定部材15で挟んで取り付けるようにしたので、ボルトを挿入する孔加工や、ボルト穴を合わせる位置合わせの必要がなく、簡単にシール部材11を鞘管2に取り付けることができる。
【0037】
次に、この発明の他の一実施の形態について、図4により説明するが、すでに説明した実施の形態と同一部分には、同一記号を記し、重複する説明は省略する。
この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造10では、これまで説明した杭後打ち工法に替え、杭先打ち工法に適用するもので、押え部材17として、シール部材11に当てる押えリング部17aの端縁部に円筒部17aを介して先端部が大径の円すい部17cが一体に形成されて構成してあり、鞘管2の杭4への挿入端が漏斗状に広がった状態となっている。
なお、他の構成はすでに説明した実施の形態と同一である。
【0038】
このような押え部材17を用いる杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造10によれば、押え部材17の円すい部17cによって先に打設された杭4に鞘管2を設置する場合のガイドとすることができ、簡単に位置合わせを行って作業することができる。
【0039】
次に、この発明の他の一実施の形態について、図5により説明するが、すでに説明した実施の形態と同一部分には、同一記号を記し、重複する説明は省略する。
この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造10では、押え部材17の外周端縁に、鞘管2のフランジ面であるフランジ12の下面に当接させる当接部17dが外周に沿って連続して溶接して設けてある。一方、鞘管2のフランジ部12には、下方に突き出してずれ止め部材18が円周複数箇所に溶接して設けてあり、押え部材17の当接部17dの外周端面に当てることで、鞘管2のフランジ部12と、シール部材11と、押え部材17のずれを防止するようにしてある。
なお、他の構成はすでに説明した実施の形態と同一である。
【0040】
これらにより、押え部材17の当接部17dをフランジ部12の下面(フランジ面)に当てることで、押え部材17の当接部17dで外周縁部を締めるけることができるとともに、固定部材15でその内側の内周縁部を締め付けることができ、一層確実にシールすることができ、特に鞘管2が取り付けられてジャケットの重量が重い場合に有効にシールすることができる。
また、フランジ部12の外周端縁の円周複数箇所に、ずれ止め部材18を設けたので、ずれ止め部材18によって押え部材17のずれを防止することができ、シール部材11を位置決めして確実にシールすることができる。
【0041】
なお、この実施の形態では、押え部材17の当接部17dとずれ止め部材18とを組み合わせて設ける場合について説明したが、いずれか一方だけを設けるように構成しても良く、ずれ止め部材だけとして押え部材のずれ止めおよびシール部材の位置決めを行うようにしても良い。
【0042】
次に、この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造10で、鞘管2と杭4との空間が大きい場合には、例えば図6に示すように、シール部材11の下側に補強部材19を配置して、鞘管2の内周面より突き出すように取り付ける。
【0043】
この補強部材19としては、例えば鉄板、合成樹脂板、ワイヤーブラシなどで構成し、図6(b)に示すように、放射状に分割したものを押え部材13を介して取り付けるようにする。この補強部材19の鞘管2の内周面からの突き出し量は、杭4の打設をガイドするスペーサと同一程度とすれば良い。
なお、他の構成は、すでに説明した上記実施の形態と同一である。
【0044】
このような補強部材19を設けることで、この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造10によれば、シール部材11を均一に変形させ、鞘管2と杭4との偏心を抑えることができ、同心状に施工することができる。
また、押え部材17の内側より補強部材19が突出した範囲のグラウト圧を補強部材19で支持することができ、この分だけシール部材11にかかるグラウト圧を減少させることができ、シール部材11の変形を抑えて、鞘管2と杭の偏心量が大きくても安定したシール効果を期待することができるとともに、上記実施の形態と同一の効果を奏する。
【0045】
なお、補強部材19を別に設けるのに替え、図7に示すように、押え部材13の押えリング部13aの内周端を鞘管2の内周面より突き出すように形成し、この部分を補強部13bとして一体に構成したものでも良く、押え部材13に環状の補強部13bを形成した場合も同様に、シール部材11を均一に変形させ、鞘管2と杭4との偏心を抑えることができるとともに、すでに説明した杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造10と同一の効果を奏する。
【0046】
さらに、この杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造10では、シール部材11の取付強度を増大する必要がある場合には、図8に示すように、押え部材13の外周端縁に、鞘管2のフランジ部12に当てる支持部13cを設けるようにし、固定部材15で挟んで固定するのに加え、押え部材13の外周端の支持部13cを当てることで、半径方向2箇所で押えることができ、ジャケット重量が重い場合にも強固に取り付けることができる。
【0047】
この支持部13cの突き出し量は、例えばシール部材11の取付部11bを固定部材15で挟んで圧縮した状態で、支持部13cがフランジ部12の下面に当接するように形成する。
【0048】
このような押え部材13に支持部13cを設けることで、強固にシール部材11を取り付けることができるとともに、すでに説明した杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造10と同一の効果を奏する。
なお、シール部材11の取付強度の確保のためには、押え部材13に支持部13cを設ける場合に限らず、固定部材15の数量を増やしたり、固定部材15の厚みを厚くして押える部分の面積を増大するようにしても良い。
【0049】
また、補強部13bや支持部13cを設ける場合の例として押え部材13を挙げて説明したが、他の押え部材14や押え部材17に対して適用することもでき、同様の作用効果を奏するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造の一実施の形態にかかる全体の概略断面図および鞘管の概略斜視図である。
【図2】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造の一実施の形態にかかり、(a)は鞘管の部分拡大断面図、(b)は鞘管の他の一実施形態の部分拡大断面図である。
【図3】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造の他の一実施の形態にかかるそれぞれ締付治具および固定部材による取付の説明図である。
【図4】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造のさらに他の一実施の形態にかかる杭先打ち工法に適用する場合の部分断面図である。
【図5】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造の一実施の形態にかかるそれぞれ杭先打ち工法に適用する場合の部分斜視図、A部分の分解図およびA部分の断面図である。
【図6】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造の他の一実施の形態にかかり、(a)は部分断面図、(b)は補強部材を抽出した平面図である。
【図7】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造の一実施の形態にかかる部分断面図である。
【図8】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造の他の一実施の形態にかかる部分断面図である。
【図9】従来の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造の横断面図である。
【符号の説明】
【0051】
2 鞘管
4 杭
10 杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造
11 シール部材
11a シール部
11b 取付部
11c 抜け止め部
12 フランジ部
13 押え部材
13a 押えリング部
13b 補強部
13c 支持部
14 押え部材
14a 押えリング部
14b 円筒部
15 固定部材
15a フレーム
15b 対向面
15c テーパ面
15d 締付ねじ
16 締付治具
17 押え部材
17a 押えリング部
17b 円筒部
17c 円すい部
17d 当接部
18 ずれ防止部材
19 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭とその外側に配置される鞘管との間隙に注入されるグラウトの流出を防止してシールするシール構造であって、
前記鞘管の端部に外側に突き出した環状のフランジ部を設け、このフランジ部に前記鞘管の内側に突き出す環状のシール部を備える弾性体のシール部材を設け、このシール部材に当てる押えリング部を備える押え部材を設け、この押え部材と前記フランジ部との間の前記シール部材を、外側から固定部材で挟んで固定してなることを特徴とする杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造。
【請求項2】
前記シール部材の外周端縁部に、肉厚または凸状の抜け止め部を形成してなることを特徴とする請求項1記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造。
【請求項3】
前記押え部材の端縁部に、前記鞘管の周面と平行に突き出す円筒部を形成してなることを特徴とする請求項1または2記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造。
【請求項4】
前記押え部材の端縁部に、先端部が大径の円すい部を形成してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造。
【請求項5】
前記シール部材の上面または下面のいずれかに、前記鞘管の内周面より突き出して当該シール部材を支持する補強部材を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造。
【請求項6】
前記押え部材の押えリング部の内周端を、前記鞘管の内周面より突出させて前記シール部材を支持可能に構成してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造。
【請求項7】
前記押え部材の外周端縁に、前記鞘管のフランジ面に当接させる当接部を形成してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造。
【請求項8】
前記フランジ部の外周端縁の円周複数箇所に、前記押え部材のずれを防止するずれ止め部材を設けてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−84948(P2009−84948A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258726(P2007−258726)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)