杭の配置方法および基礎構造体
【課題】杭式改良において改良効果を高めることのできるの杭の配置方法を提供する。
【解決手段】平面上で交差するX軸およびY軸を設定し、X軸方向にd1の中心間距離をもってm列配置するとともに、Y軸方向にd2の中心間距離をもってn列配置した複数の杭2を1つの杭群Pとし、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX軸方向へd1×mの距離およびY軸方向へd2×0.5の距離だけ離れた点が群中心C(n+1,n)となるように第2の杭群P(n+1,n)を配置し、第1の杭群(P(n,n))の中心からX軸方向へd1×0.5の距離およびY軸方向へd2×nの距離だけ離れた点が群中心C(n,n+1)となるように第3の杭群P(n,n+1)を配置する。このように一定の規則に則りつつあたかも無作為に杭2を配置したようにすることで、地盤Gに対する改良効果を高めることができる。
【解決手段】平面上で交差するX軸およびY軸を設定し、X軸方向にd1の中心間距離をもってm列配置するとともに、Y軸方向にd2の中心間距離をもってn列配置した複数の杭2を1つの杭群Pとし、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX軸方向へd1×mの距離およびY軸方向へd2×0.5の距離だけ離れた点が群中心C(n+1,n)となるように第2の杭群P(n+1,n)を配置し、第1の杭群(P(n,n))の中心からX軸方向へd1×0.5の距離およびY軸方向へd2×nの距離だけ離れた点が群中心C(n,n+1)となるように第3の杭群P(n,n+1)を配置する。このように一定の規則に則りつつあたかも無作為に杭2を配置したようにすることで、地盤Gに対する改良効果を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の配置方法および複数の杭を備えた基礎構造体に係り、地盤の耐震補強としての深層混合処理工法に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤や液状化地盤を改良するために、セメント系固化剤を撹拌混合して地盤を柱状に固化する深層混合処理工法が広く用いられている。深層混合処理工法は、施工中の振動や騒音が少ないことから、市街地での施工や既設構造物に近接する施工に対する適用性の高さが評価されている。深層混合処理工法の改良形式としては、図16(A)に示すような独立した複数の杭2を連続配置した正方形の頂点に配置する整列配置や、図16(B)に示すような独立した複数の杭2を、合同な2つの正三角形を組み合わせて連続配置した斜方形の頂点に配置する千鳥配置等の杭式改良の他、図16(C)に示すように、各列に配置された杭2をオーバーラップした状態で連設することで壁状の改良体を形成する壁式改良、図16(D)に示すように、壁状の改良体を正方格子状に配置した格子式改良、および地盤全体を改良するブロック式改良が知られている。これら改良形式の間では、地盤の支持力向上や地盤の液状化防止などの改良効果は、ブロック式改良が最も高く、杭式改良が最も低いとされている。
【0003】
杭式改良の特徴は、杭のオーバーラップ部がないため、施工効率が良く、地下の既設構造物に対しても杭の配置を工夫することにより柔軟に対応した施工が可能であることである。一方、格子式改良やブロック式改良は、壁式改良を発展させた或いは壁式改良を密に行ったものであり、壁式改良よりも改良体のオーバーラップ部が多く、施工効率が悪くなる特徴を有する。また、既設の地下構造物が存在する場合にはこれら形式の施工は困難となる。他方、格子式改良は、格子状の改良体の内部に未改良土を存置するためブロック式改良に比べて改良率(改良対象地盤の体積に対する改良体の体積の比率)は低くなるが、改良体が地震時のせん断変形を抑制することによって液状化を効果的に防止し得る。そのため、液状化対策として深層混合処理で地盤改良を行う場合、ブロック式または格子式を適用するのが一般的である。
【0004】
しかし、ブロック式や格子式の深層混合処理工法は、改良効果が高い反面、改良率が高くなって材料コストが上昇する。そこで、改良対象区域の外周に沿って深層混合処理工法による壁状の改良体を環状に形成し、壁状の改良体に囲繞された改良対象区域内に、硬化の際に膨張するセメント系材料を用いて深層混合処理工法による杭式改良を行う液状化対策工法(特許文献1参照)なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3624514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の液状化対策工法では、ブロック式や格子式に比べれば改良率を低減できるが、硬化の際に膨張するセメント系材料を用いるため、通常のセメントを用いた場合に比べて材料コストが上昇する。また、対象区域内に既設の地下構造物が存在する場合には、セメント系材料の膨張によって地下構造物が水平方向の力を受けるため、適用自体が困難である。一方、杭式改良においても、改良効果を高めるために杭のピッチを狭めることが考えられるが、この方法を採った場合には改良率の上昇と共に材料コストも上昇する。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、高価な材料を用いたり改良率を上昇させたりすることなく改良効果を高めることのできるの杭の配置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る杭(2)の配置方法は、互いに交差するX軸およびY軸を平面上に設定し、X軸方向にd1の中心間距離をもってm列配置するとともに、Y軸方向にd2の中心間距離をもってn列配置した複数の杭(2)を1つの杭群(P)とし、第1の杭群(P(n,n))の中心(C(n,n))からX軸方向へd1×mおよびY軸方向へd2×0.5離れた点がその中心(C(n+1,n))となるように第2の杭群(P(n+1,n))を配置し、第1の杭群(P(n,n))の中心からX軸方向へd1×0.5およびY軸方向へd2×n離れた点がその中心(C(n,n+1))となるように第3の杭群(P(n,n+1))を配置し、第2の杭群および第3の杭群をそれぞれ第1の杭群と仮定して更に第2の杭群および第3の杭群を配置することを特徴とする。なお、mおよびnは自然数であり、複数の杭で1つの杭群を構成すべく、m×nは2以上となる。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る基礎構造体(1)は、X軸とY軸とが互いに交差する平面上において、X軸方向にd1の中心間距離をもってm列配置されるとともに、Y軸方向にd2の中心間距離をもってn列配置された複数の杭(2)によって1つの杭群(P)が構成され、第1の杭群(P(n,n))の中心(C(n,n))からX軸方向へd1×mおよびY軸方向へd2×0.5離れた点がその中心(C(n+1,n))となるように第2の杭群(P(n+1,n))が配置され、第1の杭群(P(n,n))の中心(C(n,n))からX軸方向へd1×0.5およびY軸方向へd2×n離れた点がその中心(C(n,n+1))となるように第3の杭群(P(n,n+1))が配置され、第2の杭群および第3の杭群をそれぞれ第1の杭群と仮定したときに第2の杭群および第3の杭群が配置される位置に更に杭群が配置されたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、各群の中心が平面格子の格子点となるようにすることで、一定の規則性をもって杭を配置しつつ、あたかも無作為に配置したように杭を配置することができる。そして、杭を所定の軸方向に配列する杭式改良による地盤改良では、杭列間に存在する未改良領域が列方向に延在することが地盤の液状化を効果的に防止できない理由と考えられるが、この問題に対して本発明では、第2の杭群の杭が第1の杭群のX軸方向に沿う杭列の中間線上に配置されるため、X軸方向に沿う杭列間の未改良領域の長さが短くなる。また、第3の杭群の杭が第1の杭群のY軸方向に沿う杭列の中間線上に配置されるため、Y軸方向に沿う杭列間の未改良領域の長さも短くなる。そのため、同じ改良率であっても、通常の方法で杭を配置した杭式改良に比べて改良効果を高くすることができる。
【0011】
また、上記した杭の配置方法および基礎構造体においては、第2の杭群の中心からX軸方向へd1×mおよびY軸方向へd2×(−0.5)離れた点がその中心となるように第4の杭群を配置するようにしたり、第3の杭群の中心からX軸方向へd1×(−0.5)およびY軸方向へd2×n離れた点がその中心となるように第5の杭群を配置するようにしたりすることができる。このような配置としても、通常の方法で杭を配置した杭式改良に比べて同じ改良率で改良効果を高くすることができる。
【0012】
また、上記した杭の配置方法および基礎構造体においては、X軸方向とY軸方向とが90度の角度をもって交差するようにしたり、d1とd2とが等しくなるようにしたり、mとnとがともに2であるようにしたりするとよい。このようにすることにより、施工を容易にし、改良効果を効果的に高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、高価な材料を用いたり改良率を高めたりすることなく改良効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る基礎構造体の断面図
【図2】第1実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図3】第1実施形態に係る杭の配置による作用効果の説明図
【図4】第1実施形態に係る杭の配置による効果を示すグラフ
【図5】第2実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図6】第2実施形態に係る杭の配置による作用効果の説明図
【図7】第3実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図8】第4実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図9】第4実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図10】第5実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図11】第6実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図12】第7実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図13】第7実施形態に係る杭の配置による作用効果の説明図
【図14】第8実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図15】第8実施形態に係る杭の配置による作用効果の説明図
【図16】従来技術に係る杭の配置例を示す杭伏図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る杭の配置方法について図面を参照しながら説明する。
【0016】
≪第1実施形態≫
図1に示すように、本実施形態の配置方法によって杭を配置した基礎構造体1は、軟弱な地盤Gに構築された複数の杭2と、複数の杭2をその杭頭で連結するように地盤Gの上部に版状に構築された改良層3とからなる。各杭2は、深層混合処理工法によって造成される。深層混合処理工法としては、機械撹拌方式、高圧噴射方式および機械撹拌併用型高圧噴射方式のいずれを用いてもよく、固化材には、普通ポルトランドセメントや高炉セメント、セメント系固化材、石灰系固化材、或いはこれに添加剤を加えたものなど、一般的に使用されているものを用いればよい。本実施の形態では、1つの軸方向に沿ってdの中心間距離をもって等間隔に配置された複数の杭2のうち、隣接する2本の杭2が図示の断面に現れ、これに隣接する2本の杭2は図示の断面に現れない配置となっている。改良層3は、流動化処理土を固化させた固化処理層や、杭2と同様に地盤Gに固化材を撹拌させて地盤Gを固化させた固化処理層、砕石等を締め固めたもの等を適用することができ、全ての杭2の杭頭を連結することで地震時などにおける各杭2の倒れを防止する機能を果たし、液状化の防止にも寄与する。
【0017】
次に、本実施形態の杭2の配置方法について図2を参照して説明する。まず、改良対象となる地盤Gの平面上に任意のX軸と、X軸に90度の角度をもって交差するY軸とを設定する。そして、任意に設定した点p1に杭2を配置するとともに、点p1からX軸方向へdの距離をもつ点p2、点p1からY軸方向へdの距離をもつ点p3、および点p2からY軸方向へdの距離をもつ(点p3からX軸方向へdの距離をもつ)点p4に杭2を配置し、これら4本の杭2を1つの杭群Pとする。すなわち、dの中心間距離をもってX軸方向に2列配置するとともに、dの中心間距離をもってY軸方向に2列配置した4本の杭2から1つの杭群Pを構成する。
【0018】
次に、杭群Pの中心、すなわち点p1、点p2、点p4および点p3を順に結んで形成される正方形の中心を群中心Cとする。そして、1つの杭群Pに対し、略X軸方向に別の杭群Pを隣接配置するとともに、略Y軸方向に別の杭群Pを隣接配置する。なお、ここで云う「略」については後に説明する。以下、各杭群Pおよび各群中心Cについては、配置に応じた特定を行えるように、図中では、符号PおよびCの後に括弧書きで略X軸方向,略Y軸方向への配列番号を示す数字を付して、例えば、基準となる杭群Pを杭群P(1,1)と記し、その略X軸方向に隣接配置した杭群Pを杭群P(2,1)と記し、その略Y軸方向に隣接配置した杭群Pを杭群P(1,2)と記す。また、本説明では、任意の杭群Pを第1の杭群P(n,n)と称し、任意の杭群Pに対して略X軸方向に隣接配置した杭群Pを第2の杭群P(n+1,n)と称し、任意の杭群Pに対して略Y軸方向に隣接配置した杭群Pを第3の杭群P(n,n+1)と称して説明する。
【0019】
上記各杭群Pの配置は、具体的には以下のように行う。まず、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX軸方向へd×2(列)の距離、およびY軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n+1,n)となるように、第2の杭群P(n+1,n)を構成する4本の杭2を各点p1〜p4に配置する。このような所定の規則に則った杭群Pの配置方向を、本説明では「略X軸方向」と称する。また、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からY軸方向へd×2(列)の距離、およびX軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n,n+1)となるように、第3の杭群P(n,n+1)を構成する4本の杭2を各点p1〜p4に配置する。このような所定の規則に則った杭群Pの配置方向を、本説明では「略Y軸方向」と称する。
【0020】
この手順で、すべての杭群Pを第1の杭P(n,n)と仮定したうえで、略X軸方向に隣接する第2の杭群P(n+1,n)および略Y軸方向に隣接する第3の杭群P(n,n+1)を配置する。すると、第2の杭群P(n+1,n)に対して略Y軸方向に隣接配置した杭群P(n+1,n+1)の群中心C(n+1,n+1)と、第3の杭群P(n,n+1)に対して略X軸方向に隣接配置した杭群P(n+1,n+1)の群中心C(n+1,n+1)とは、ともに第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX軸方向へd×2.5の距離、およびY軸方向へd×2.5の距離だけ離れた位置にくることとなり、互いに一致する。つまり、各杭群Pの群中心Cが平面格子の格子点となり、略X軸方向に2群および略Y軸方向に2群の合計4群の杭群Pが重複しながら繰り返し現れる。このようにすべての杭群Pについて上記手順を行って順次4本の杭2を点p1〜p4に配置することで、一定の規則に則りつつ地盤Gの改良対象区域のすべてに杭2をあたかも無作為に配置したように配置することができる。なお、改良対象区域の外周縁近傍では、杭2の配置を適宜調整してもよい。
【0021】
このようにして杭2を配置した基礎構造体1では、図3に示すように、第1の杭群P(n,n)のそれぞれにおいて、隣接する杭群P間および各杭群を構成する杭列の間にX軸方向に延在する未改良領域Ax0,Ax1およびY軸方向に延在する未改良領域Ay0,Ay1が生じるが、近接配置された6つの杭群P(P(n+1,n)、P(n−1,n)、P(n,n+1)、P(n,n−1)、P(n+1,n−1)、P(n−1,n+1))を構成する杭2が、未改良領域Ax0,Ax1,Ay0,Ay1の延在を阻止するように未改良領域Ax0,Ax1,Ay0,Ay1の幅方向の中心に配置されるため、これら未改良領域Ax0,Ax1,Ay0,Ay1の長さが短くなる。これにより、基礎構造体1は、通常の方法で杭2を配置した同じ改良率の杭式の基礎構造体に比べて改良効果を高めることができる。
【0022】
なお、本願発明者らは、本実施形態に係る配置方法によって杭2を配置した基礎構造体1と、同じ改良率となるように図16(B)のような連続する正三角形の各頂点に杭を配置した基礎構造体とについて、地震が発生したときの地盤Gの流動化状態を調べるためのモデル実験を行った。なお、改良対象区域は岸壁際とし、所定の加速度で地盤Gを振動させたときに海側へ移動する岸壁(矢板)の変位量を計測することで地盤Gの流動化度の指標とした。その結果を図4に示す。グラフに示すように、入力加速度の大小に拘わらず、本実施形態に係る杭の配置方法による基礎構造体が従来の基礎構造体に比べて地盤の流動化を効果的に抑制することが見て取れる。
【0023】
≪第2実施形態≫
次に、図5および図6を参照して本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一または同様の部材などには同じ符号を付し、第1実施形態と異なる点について重点的に説明する。以下の実施形態においても同様とする。
【0024】
上記第1実施形態では、X軸方向に2列、Y軸方向に2列配置された4本の杭2によって1つの杭群Pが構成されるのに対し、本実施形態では図5に示すように、X軸方向に3列、Y軸方向に3列配置された9本の杭2によって1つの杭群Pが構成される。そして、各杭群Pを配置するに際しては、まず、任意の位置に第1の杭群P(n,n)を配置し、その群中心C(n,n)からX軸方向へd×3(列)の距離、およびY軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n+1,n)となるように、略X軸方向に第2の杭群P(n+1,n)を隣接配置する。また、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からY軸方向へd×3(列)の距離、およびX軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n,n+1)となるように、略Y軸方向に第3の杭群P(n,n+1)を隣接配置する。このような手順で、各杭群Pを第1の杭群P(n,n)と仮定して順次略X軸方向および略Y軸方向に第2の杭群P(n+1,n)および第3の杭群P(n,n+1)を隣接配置する。
【0025】
このように杭2を配置した基礎構造体1であっても、一定の規則性をもたせつつ杭2をあたかも無作為に配置したように配置することができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。つまり、図6に示すように、隣接する杭群P間および各杭群を構成する杭列の間にX軸方向に延在する未改良領域Ax0〜Ax2およびY軸方向に延在する未改良領域Ay0〜Ay2が生じるが、近接配置された6つの杭群Pを構成する杭2が未改良領域Ax1,Ax2の幅方向の中心に配置されるため、これら未改良領域Ax,Ayの長さが短くなる。これにより、基礎構造体1は、通常の方法で杭2を配置した同じ改良率の杭式の基礎構造体に比べてその改良効果を高めることができる。
【0026】
≪第3実施形態≫
次に、図7を参照して本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、X軸方向に3列、Y軸方向に2列配置された6本の杭2よって1つの杭群Pが構成される。そして、各杭群Pを配置するに際しては、まず、任意の位置に第1の杭群P(n,n)を配置し、その群中心C(n,n)からX軸方向へd×3(列)の距離、およびY軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n+1,n)となるように、第2の杭群P(n+1,n)を略X軸方向に隣接配置する。また、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からY軸方向へd×2(列)の距離、およびX軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n,n+1)となるように、第3の杭群P(n,n+1)を略Y軸方向に隣接配置する。このように杭2を配置した基礎構造体1であっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0027】
≪第4実施形態≫
次に、図8および図9を参照して本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、X軸方向およびY軸方向のどちらか一方に1列、どちらか他方に2列配置された2本の杭2よって1つの杭群Pが構成される。図8に示す杭2がX軸方向に2列配置された形態の場合、第1の杭群P(n,n)に対し、その群中心C(n,n)からX軸方向へd×2(列)の距離、およびY軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n+1,n)となるように、第2の杭群P(n+1,n)を配置し、その群中心C(n,n)からY軸方向へd×1(列)の距離、およびX軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n,n+1)となるように、第3の杭群P(n,n+1)を配置する。一方、図9に示す杭2がY軸方向に2列配置された形態の場合、第1の杭群P(n,n)に対し、X軸方向へd×1(列)の距離、およびY軸方向へd×0.5の距離だけずらした位置に第2の杭群P(n+1,n)を配置し、Y軸方向へd×2(列)の距離、およびX軸方向へd×0.5の距離だけずらした位置に第3の杭群P(n,n+1)を配置する。このように杭2を配置した基礎構造体1であっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、このように1つの杭群PにおいてX軸方向およびY軸方向のどちらか一方に1列しか杭2を配置しない場合、複数の杭2で1つの杭群Pを構成するために、X軸方向およびY軸方向のどちらか他方には杭2を2列以上に配置する必要がある。
【0028】
≪第5実施形態≫
次に、図10を参照して本発明の第5実施形態について説明する。上記各実施形態では、X軸方向およびY軸方向にともにdの中心間距離をもって配列された複数の杭2によって1つの杭群Pが構成されるが、本実施形態では、X軸方向にはd1の中心間距離をもって、Y軸方向にはd1よりも大きなd2の中心間距離をもって配列された複数の杭2よって1つの杭群Pが構成される。本実施形態ではX軸方向およびY軸方向ともに2列の杭2を配置した杭群Pの配置手順について説明するが、上記第2〜第4実施形態のような列数にしてもよい。本実施形態では、第1の杭群P(1,1)に対し、X軸方向へd1×2(列)の距離、およびY軸方向へd2×0.5の距離だけずらした位置に第2の杭群P(n+1,n)を配置し、Y軸方向へd2×2(列)の距離、およびX軸方向へd1×0.5の距離だけずらした位置に第3の杭群P(n,n+1)を配置する。このような配置によっても、上記同様の効果が奏される。なお、第2の杭群P(n+1,n)に対して略Y軸方向に隣接配置した杭群P(n+1,n+1)の群中心C(n+1,n+1)と、第3の杭群P(n,n+1)に対して略X軸方向に隣接配置した杭群P(n+1,n+1)の群中心C(n+1,n+1)とは、ともに第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX軸方向へd1×2.5の距離、およびY軸方向へd2×2.5の距離だけ離れた位置となり、各杭群Pはその群中心Cを格子点とした平面格子の配置となる。
【0029】
≪第6実施形態≫
次に、図11を参照して本発明の第6実施形態について説明する。上記各実施形態では、X軸とY軸とが90度の開き角度をなしているが、本実施形態では、X軸とY軸とが90度よりも大きな開き角度をなしている。各杭群Pの配置手順は第1実施形態と同様である。このように杭2を配置した基礎構造体1であっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、X軸とY軸とを90度よりも小さな開き角度とすることも可能であるが、この場合、第2の杭群P(n+1,n)の点p3に配置される杭2と、第3の杭群P(n、n+1)の点p2に配置される杭2との杭間距離が、他の箇所よりも短くなる傾向にあるので、X軸とY軸との開き角度を90度以外の角度にする場合には、90度よりも大きな角度に設定するの好ましい。
【0030】
≪第7実施形態≫
次に、図12および図13を参照して本発明の第7実施形態について説明する。本実施形態では、第2の杭群P(n+1,n)に対して略X軸方向に更なる杭群Pを配置する際に、第1〜第6実施形態のように第2の杭群P(n+1,n)を第1の杭群P(n,n)と仮定して更に第2の杭群P(n+1,n)を配置するのではなく、図12に示すように、第2の杭群P(n+1,n)の中心からX軸方向へd1×mおよびY軸方向へd2×(−0.5)離れた点がその中心となるように第4の杭群P(n+2,n)を配置する。
【0031】
なお、第2の杭群P(n+1,n)に対して略Y軸方向に更なる杭群Pを配置する際には、第1〜第6実施形態と同様に、第2の杭群P(n+1,n)を第1の杭群P(n,n)と仮定して第3の杭群P(n,n+1)を配置する。また、第4の杭群P(n+2,n)に対して略X軸方向および略Y軸方向に更なる杭群Pを配置する際にも、第1〜第6実施形態と同様に、第4の杭群P(n+2,n)を第1の杭群P(n,n)と仮定して更に第2の杭群P(n+1,n)および第3の杭群P(n,n+1)を配置する。
【0032】
このような手順で、杭群Pを略X軸方向および略Y軸方向に隣接配置すると、第1の杭群P(n,n)に対して略X軸方向に2群目かつ略Y軸方向に1群目の杭群P(n+2,n+1)が、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX軸方向へd×4.5の距離、およびY軸方向にd×2の距離だけ離れた位置にくることになる。つまり、これら略X軸方向に3群および略Y軸方向に2群の合計6群の杭群Pが重複しながら繰り返し現れる杭配置となる。
【0033】
杭2をこのように配置することにより、一定の規則に則りつつ、地盤Gの改良対象区域のすべてに杭2をあたかも無作為に配置したように配置することができ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。つまり、杭群P(2,2)の配置を代表例とした図13に示すように、隣接する杭群P間および杭群Pを構成する杭列の間にX軸方向に延在する未改良領域Ax0,Ax1およびY軸方向に延在する未改良領域Ay0,Ay1が生じるが、近接配置された6つの杭群Pを構成する杭2が未改良領域Ax,Ayの幅方向の中心に配置されるため、これら未改良領域Ax,Ayの長さが短くなる。これにより、通常の方法で杭2を配置した同じ改良率の杭式の基礎構造体に比べて基礎構造体1の改良効果を高めることができる。
【0034】
≪第8実施形態≫
最後に、図14および図15を参照して本発明の第8実施形態について説明する。本実施形態では、図14に示すように、第7実施形態と同様に第2の杭群P(n+1,n)に対して略X軸方向に更なる杭群Pを配置する際に、上記所定の規則に則って第4の杭群P(n+2,n)を配置することに加え、第3の杭群P(n,n+1)に対して略Y軸方向に更なる杭群Pを配置する際にも、第1〜第6実施形態のように第3の杭群P(n,n+1)を第1の杭群P(n,n)と仮定するのではなく、第3の杭群P(n,n+1)の群中心C(n,n+1)からX軸方向へd1×(−0.5)およびY軸方向へd2×n離れた点がその中心となるように第5の杭群P(n,n+2)を配置する。
【0035】
なお、第3の杭群P(n,n+1)に対して略X軸方向に更なる杭群Pを配置する際には、第1〜第6実施形態と同様に、第3の杭群P(n,n+1)を第1の杭群P(n,n)と仮定して第2の杭群P(n+1,n)を配置する。また、第5の杭群P(n,n+2)に対して略X軸方向および略Y軸方向に更なる杭群Pを配置する際にも、第1〜第6実施形態と同様に、第5の杭群P(n,n+2)を第1の杭群P(n,n)と仮定して更なる杭群P(第2の杭群P(n+1,n)および第3の杭群P(n,n+1))を配置する。
【0036】
このような手順で、杭群Pを略X軸方向および略Y軸方向に隣接配置すると、第1の杭群P(n,n)に対して略X軸方向に2群目かつ略Y軸方向に2群目の杭群P(n+2,n+2)が、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX軸方向へd×4の距離、およびY軸方向にd×4の距離だけ離れた位置にくることになり、これら略X軸方向に3群および略Y軸方向に3群の合計9群の杭群Pが繰り返し現れる杭配置となる。
【0037】
杭2をこのように配置しても、一定の規則に則りつつ、地盤Gの改良対象区域のすべてに杭2をあたかも無作為に配置したように配置することができる。そして、杭群P(2,2)の配置を代表例とした図15に示すように、第7実施形態と同様の効果、つまり、隣接する杭群P間および杭群Pを構成する杭列の間に生じた未改良領域Ax0,Ax1および未改良領域Ay0,Ay1が、X軸方向に延在することおよびY軸方向に延在することを近接配置された6つの杭群Pの杭2によって阻止され、その長さが短くなることにより、通常の方法で杭2を配置した同一改良率の杭式基礎構造体に比べて改良効果を高める効果を得ることができる。
【0038】
なお、第7実施形態および第8実施形態についても、上記第1実施形態の変形形態として示した第2および第3実施形態のように(図5および図7参照)、X軸方向に3列、Y軸方向に3列配置した9本の杭2によって、或いはX軸方向に3列、Y軸方向に2列配置した6本の杭2よって1つの杭群Pを構成したり、第5および第6実施形態のように(図10および図11参照)、杭2の中心間距離をX軸方向とY軸方向とで異ならせ、或いはX軸とY軸との開き角度を90度以外の角度に設定したりすることも当然に可能である。また、第7実施形態および第8実施形態について、第4実施形態のように(図8および図9参照)各杭群Pにおける杭2の配列数をX軸方向またはY軸方向について1列とすることも可能である。なお、第7実施形態による配置方法に対して杭群PにおけるY方向への杭2の配列数を1にした場合には、第1実施形態による配置方法の場合(図8)と全く同一の杭配置となる。
【0039】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では深層混合処理工法を用いた杭の配置について説明したが、軟弱地盤および液状化地盤の改良効果を得られるのでれば杭の種類はこれに限られず、場所打ちコンクリート杭や打込み杭、埋込み杭等であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 基礎構造体
2 杭
3 改良層
p 点
P 杭群
C 群中心
Ax,Ay 未改良領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の配置方法および複数の杭を備えた基礎構造体に係り、地盤の耐震補強としての深層混合処理工法に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤や液状化地盤を改良するために、セメント系固化剤を撹拌混合して地盤を柱状に固化する深層混合処理工法が広く用いられている。深層混合処理工法は、施工中の振動や騒音が少ないことから、市街地での施工や既設構造物に近接する施工に対する適用性の高さが評価されている。深層混合処理工法の改良形式としては、図16(A)に示すような独立した複数の杭2を連続配置した正方形の頂点に配置する整列配置や、図16(B)に示すような独立した複数の杭2を、合同な2つの正三角形を組み合わせて連続配置した斜方形の頂点に配置する千鳥配置等の杭式改良の他、図16(C)に示すように、各列に配置された杭2をオーバーラップした状態で連設することで壁状の改良体を形成する壁式改良、図16(D)に示すように、壁状の改良体を正方格子状に配置した格子式改良、および地盤全体を改良するブロック式改良が知られている。これら改良形式の間では、地盤の支持力向上や地盤の液状化防止などの改良効果は、ブロック式改良が最も高く、杭式改良が最も低いとされている。
【0003】
杭式改良の特徴は、杭のオーバーラップ部がないため、施工効率が良く、地下の既設構造物に対しても杭の配置を工夫することにより柔軟に対応した施工が可能であることである。一方、格子式改良やブロック式改良は、壁式改良を発展させた或いは壁式改良を密に行ったものであり、壁式改良よりも改良体のオーバーラップ部が多く、施工効率が悪くなる特徴を有する。また、既設の地下構造物が存在する場合にはこれら形式の施工は困難となる。他方、格子式改良は、格子状の改良体の内部に未改良土を存置するためブロック式改良に比べて改良率(改良対象地盤の体積に対する改良体の体積の比率)は低くなるが、改良体が地震時のせん断変形を抑制することによって液状化を効果的に防止し得る。そのため、液状化対策として深層混合処理で地盤改良を行う場合、ブロック式または格子式を適用するのが一般的である。
【0004】
しかし、ブロック式や格子式の深層混合処理工法は、改良効果が高い反面、改良率が高くなって材料コストが上昇する。そこで、改良対象区域の外周に沿って深層混合処理工法による壁状の改良体を環状に形成し、壁状の改良体に囲繞された改良対象区域内に、硬化の際に膨張するセメント系材料を用いて深層混合処理工法による杭式改良を行う液状化対策工法(特許文献1参照)なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3624514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の液状化対策工法では、ブロック式や格子式に比べれば改良率を低減できるが、硬化の際に膨張するセメント系材料を用いるため、通常のセメントを用いた場合に比べて材料コストが上昇する。また、対象区域内に既設の地下構造物が存在する場合には、セメント系材料の膨張によって地下構造物が水平方向の力を受けるため、適用自体が困難である。一方、杭式改良においても、改良効果を高めるために杭のピッチを狭めることが考えられるが、この方法を採った場合には改良率の上昇と共に材料コストも上昇する。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、高価な材料を用いたり改良率を上昇させたりすることなく改良効果を高めることのできるの杭の配置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る杭(2)の配置方法は、互いに交差するX軸およびY軸を平面上に設定し、X軸方向にd1の中心間距離をもってm列配置するとともに、Y軸方向にd2の中心間距離をもってn列配置した複数の杭(2)を1つの杭群(P)とし、第1の杭群(P(n,n))の中心(C(n,n))からX軸方向へd1×mおよびY軸方向へd2×0.5離れた点がその中心(C(n+1,n))となるように第2の杭群(P(n+1,n))を配置し、第1の杭群(P(n,n))の中心からX軸方向へd1×0.5およびY軸方向へd2×n離れた点がその中心(C(n,n+1))となるように第3の杭群(P(n,n+1))を配置し、第2の杭群および第3の杭群をそれぞれ第1の杭群と仮定して更に第2の杭群および第3の杭群を配置することを特徴とする。なお、mおよびnは自然数であり、複数の杭で1つの杭群を構成すべく、m×nは2以上となる。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る基礎構造体(1)は、X軸とY軸とが互いに交差する平面上において、X軸方向にd1の中心間距離をもってm列配置されるとともに、Y軸方向にd2の中心間距離をもってn列配置された複数の杭(2)によって1つの杭群(P)が構成され、第1の杭群(P(n,n))の中心(C(n,n))からX軸方向へd1×mおよびY軸方向へd2×0.5離れた点がその中心(C(n+1,n))となるように第2の杭群(P(n+1,n))が配置され、第1の杭群(P(n,n))の中心(C(n,n))からX軸方向へd1×0.5およびY軸方向へd2×n離れた点がその中心(C(n,n+1))となるように第3の杭群(P(n,n+1))が配置され、第2の杭群および第3の杭群をそれぞれ第1の杭群と仮定したときに第2の杭群および第3の杭群が配置される位置に更に杭群が配置されたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、各群の中心が平面格子の格子点となるようにすることで、一定の規則性をもって杭を配置しつつ、あたかも無作為に配置したように杭を配置することができる。そして、杭を所定の軸方向に配列する杭式改良による地盤改良では、杭列間に存在する未改良領域が列方向に延在することが地盤の液状化を効果的に防止できない理由と考えられるが、この問題に対して本発明では、第2の杭群の杭が第1の杭群のX軸方向に沿う杭列の中間線上に配置されるため、X軸方向に沿う杭列間の未改良領域の長さが短くなる。また、第3の杭群の杭が第1の杭群のY軸方向に沿う杭列の中間線上に配置されるため、Y軸方向に沿う杭列間の未改良領域の長さも短くなる。そのため、同じ改良率であっても、通常の方法で杭を配置した杭式改良に比べて改良効果を高くすることができる。
【0011】
また、上記した杭の配置方法および基礎構造体においては、第2の杭群の中心からX軸方向へd1×mおよびY軸方向へd2×(−0.5)離れた点がその中心となるように第4の杭群を配置するようにしたり、第3の杭群の中心からX軸方向へd1×(−0.5)およびY軸方向へd2×n離れた点がその中心となるように第5の杭群を配置するようにしたりすることができる。このような配置としても、通常の方法で杭を配置した杭式改良に比べて同じ改良率で改良効果を高くすることができる。
【0012】
また、上記した杭の配置方法および基礎構造体においては、X軸方向とY軸方向とが90度の角度をもって交差するようにしたり、d1とd2とが等しくなるようにしたり、mとnとがともに2であるようにしたりするとよい。このようにすることにより、施工を容易にし、改良効果を効果的に高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、高価な材料を用いたり改良率を高めたりすることなく改良効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る基礎構造体の断面図
【図2】第1実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図3】第1実施形態に係る杭の配置による作用効果の説明図
【図4】第1実施形態に係る杭の配置による効果を示すグラフ
【図5】第2実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図6】第2実施形態に係る杭の配置による作用効果の説明図
【図7】第3実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図8】第4実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図9】第4実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図10】第5実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図11】第6実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図12】第7実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図13】第7実施形態に係る杭の配置による作用効果の説明図
【図14】第8実施形態に係る杭の配置方法による杭伏図
【図15】第8実施形態に係る杭の配置による作用効果の説明図
【図16】従来技術に係る杭の配置例を示す杭伏図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る杭の配置方法について図面を参照しながら説明する。
【0016】
≪第1実施形態≫
図1に示すように、本実施形態の配置方法によって杭を配置した基礎構造体1は、軟弱な地盤Gに構築された複数の杭2と、複数の杭2をその杭頭で連結するように地盤Gの上部に版状に構築された改良層3とからなる。各杭2は、深層混合処理工法によって造成される。深層混合処理工法としては、機械撹拌方式、高圧噴射方式および機械撹拌併用型高圧噴射方式のいずれを用いてもよく、固化材には、普通ポルトランドセメントや高炉セメント、セメント系固化材、石灰系固化材、或いはこれに添加剤を加えたものなど、一般的に使用されているものを用いればよい。本実施の形態では、1つの軸方向に沿ってdの中心間距離をもって等間隔に配置された複数の杭2のうち、隣接する2本の杭2が図示の断面に現れ、これに隣接する2本の杭2は図示の断面に現れない配置となっている。改良層3は、流動化処理土を固化させた固化処理層や、杭2と同様に地盤Gに固化材を撹拌させて地盤Gを固化させた固化処理層、砕石等を締め固めたもの等を適用することができ、全ての杭2の杭頭を連結することで地震時などにおける各杭2の倒れを防止する機能を果たし、液状化の防止にも寄与する。
【0017】
次に、本実施形態の杭2の配置方法について図2を参照して説明する。まず、改良対象となる地盤Gの平面上に任意のX軸と、X軸に90度の角度をもって交差するY軸とを設定する。そして、任意に設定した点p1に杭2を配置するとともに、点p1からX軸方向へdの距離をもつ点p2、点p1からY軸方向へdの距離をもつ点p3、および点p2からY軸方向へdの距離をもつ(点p3からX軸方向へdの距離をもつ)点p4に杭2を配置し、これら4本の杭2を1つの杭群Pとする。すなわち、dの中心間距離をもってX軸方向に2列配置するとともに、dの中心間距離をもってY軸方向に2列配置した4本の杭2から1つの杭群Pを構成する。
【0018】
次に、杭群Pの中心、すなわち点p1、点p2、点p4および点p3を順に結んで形成される正方形の中心を群中心Cとする。そして、1つの杭群Pに対し、略X軸方向に別の杭群Pを隣接配置するとともに、略Y軸方向に別の杭群Pを隣接配置する。なお、ここで云う「略」については後に説明する。以下、各杭群Pおよび各群中心Cについては、配置に応じた特定を行えるように、図中では、符号PおよびCの後に括弧書きで略X軸方向,略Y軸方向への配列番号を示す数字を付して、例えば、基準となる杭群Pを杭群P(1,1)と記し、その略X軸方向に隣接配置した杭群Pを杭群P(2,1)と記し、その略Y軸方向に隣接配置した杭群Pを杭群P(1,2)と記す。また、本説明では、任意の杭群Pを第1の杭群P(n,n)と称し、任意の杭群Pに対して略X軸方向に隣接配置した杭群Pを第2の杭群P(n+1,n)と称し、任意の杭群Pに対して略Y軸方向に隣接配置した杭群Pを第3の杭群P(n,n+1)と称して説明する。
【0019】
上記各杭群Pの配置は、具体的には以下のように行う。まず、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX軸方向へd×2(列)の距離、およびY軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n+1,n)となるように、第2の杭群P(n+1,n)を構成する4本の杭2を各点p1〜p4に配置する。このような所定の規則に則った杭群Pの配置方向を、本説明では「略X軸方向」と称する。また、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からY軸方向へd×2(列)の距離、およびX軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n,n+1)となるように、第3の杭群P(n,n+1)を構成する4本の杭2を各点p1〜p4に配置する。このような所定の規則に則った杭群Pの配置方向を、本説明では「略Y軸方向」と称する。
【0020】
この手順で、すべての杭群Pを第1の杭P(n,n)と仮定したうえで、略X軸方向に隣接する第2の杭群P(n+1,n)および略Y軸方向に隣接する第3の杭群P(n,n+1)を配置する。すると、第2の杭群P(n+1,n)に対して略Y軸方向に隣接配置した杭群P(n+1,n+1)の群中心C(n+1,n+1)と、第3の杭群P(n,n+1)に対して略X軸方向に隣接配置した杭群P(n+1,n+1)の群中心C(n+1,n+1)とは、ともに第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX軸方向へd×2.5の距離、およびY軸方向へd×2.5の距離だけ離れた位置にくることとなり、互いに一致する。つまり、各杭群Pの群中心Cが平面格子の格子点となり、略X軸方向に2群および略Y軸方向に2群の合計4群の杭群Pが重複しながら繰り返し現れる。このようにすべての杭群Pについて上記手順を行って順次4本の杭2を点p1〜p4に配置することで、一定の規則に則りつつ地盤Gの改良対象区域のすべてに杭2をあたかも無作為に配置したように配置することができる。なお、改良対象区域の外周縁近傍では、杭2の配置を適宜調整してもよい。
【0021】
このようにして杭2を配置した基礎構造体1では、図3に示すように、第1の杭群P(n,n)のそれぞれにおいて、隣接する杭群P間および各杭群を構成する杭列の間にX軸方向に延在する未改良領域Ax0,Ax1およびY軸方向に延在する未改良領域Ay0,Ay1が生じるが、近接配置された6つの杭群P(P(n+1,n)、P(n−1,n)、P(n,n+1)、P(n,n−1)、P(n+1,n−1)、P(n−1,n+1))を構成する杭2が、未改良領域Ax0,Ax1,Ay0,Ay1の延在を阻止するように未改良領域Ax0,Ax1,Ay0,Ay1の幅方向の中心に配置されるため、これら未改良領域Ax0,Ax1,Ay0,Ay1の長さが短くなる。これにより、基礎構造体1は、通常の方法で杭2を配置した同じ改良率の杭式の基礎構造体に比べて改良効果を高めることができる。
【0022】
なお、本願発明者らは、本実施形態に係る配置方法によって杭2を配置した基礎構造体1と、同じ改良率となるように図16(B)のような連続する正三角形の各頂点に杭を配置した基礎構造体とについて、地震が発生したときの地盤Gの流動化状態を調べるためのモデル実験を行った。なお、改良対象区域は岸壁際とし、所定の加速度で地盤Gを振動させたときに海側へ移動する岸壁(矢板)の変位量を計測することで地盤Gの流動化度の指標とした。その結果を図4に示す。グラフに示すように、入力加速度の大小に拘わらず、本実施形態に係る杭の配置方法による基礎構造体が従来の基礎構造体に比べて地盤の流動化を効果的に抑制することが見て取れる。
【0023】
≪第2実施形態≫
次に、図5および図6を参照して本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一または同様の部材などには同じ符号を付し、第1実施形態と異なる点について重点的に説明する。以下の実施形態においても同様とする。
【0024】
上記第1実施形態では、X軸方向に2列、Y軸方向に2列配置された4本の杭2によって1つの杭群Pが構成されるのに対し、本実施形態では図5に示すように、X軸方向に3列、Y軸方向に3列配置された9本の杭2によって1つの杭群Pが構成される。そして、各杭群Pを配置するに際しては、まず、任意の位置に第1の杭群P(n,n)を配置し、その群中心C(n,n)からX軸方向へd×3(列)の距離、およびY軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n+1,n)となるように、略X軸方向に第2の杭群P(n+1,n)を隣接配置する。また、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からY軸方向へd×3(列)の距離、およびX軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n,n+1)となるように、略Y軸方向に第3の杭群P(n,n+1)を隣接配置する。このような手順で、各杭群Pを第1の杭群P(n,n)と仮定して順次略X軸方向および略Y軸方向に第2の杭群P(n+1,n)および第3の杭群P(n,n+1)を隣接配置する。
【0025】
このように杭2を配置した基礎構造体1であっても、一定の規則性をもたせつつ杭2をあたかも無作為に配置したように配置することができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。つまり、図6に示すように、隣接する杭群P間および各杭群を構成する杭列の間にX軸方向に延在する未改良領域Ax0〜Ax2およびY軸方向に延在する未改良領域Ay0〜Ay2が生じるが、近接配置された6つの杭群Pを構成する杭2が未改良領域Ax1,Ax2の幅方向の中心に配置されるため、これら未改良領域Ax,Ayの長さが短くなる。これにより、基礎構造体1は、通常の方法で杭2を配置した同じ改良率の杭式の基礎構造体に比べてその改良効果を高めることができる。
【0026】
≪第3実施形態≫
次に、図7を参照して本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、X軸方向に3列、Y軸方向に2列配置された6本の杭2よって1つの杭群Pが構成される。そして、各杭群Pを配置するに際しては、まず、任意の位置に第1の杭群P(n,n)を配置し、その群中心C(n,n)からX軸方向へd×3(列)の距離、およびY軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n+1,n)となるように、第2の杭群P(n+1,n)を略X軸方向に隣接配置する。また、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からY軸方向へd×2(列)の距離、およびX軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n,n+1)となるように、第3の杭群P(n,n+1)を略Y軸方向に隣接配置する。このように杭2を配置した基礎構造体1であっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0027】
≪第4実施形態≫
次に、図8および図9を参照して本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、X軸方向およびY軸方向のどちらか一方に1列、どちらか他方に2列配置された2本の杭2よって1つの杭群Pが構成される。図8に示す杭2がX軸方向に2列配置された形態の場合、第1の杭群P(n,n)に対し、その群中心C(n,n)からX軸方向へd×2(列)の距離、およびY軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n+1,n)となるように、第2の杭群P(n+1,n)を配置し、その群中心C(n,n)からY軸方向へd×1(列)の距離、およびX軸方向へd×0.5の距離だけ離れた点がその群中心C(n,n+1)となるように、第3の杭群P(n,n+1)を配置する。一方、図9に示す杭2がY軸方向に2列配置された形態の場合、第1の杭群P(n,n)に対し、X軸方向へd×1(列)の距離、およびY軸方向へd×0.5の距離だけずらした位置に第2の杭群P(n+1,n)を配置し、Y軸方向へd×2(列)の距離、およびX軸方向へd×0.5の距離だけずらした位置に第3の杭群P(n,n+1)を配置する。このように杭2を配置した基礎構造体1であっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、このように1つの杭群PにおいてX軸方向およびY軸方向のどちらか一方に1列しか杭2を配置しない場合、複数の杭2で1つの杭群Pを構成するために、X軸方向およびY軸方向のどちらか他方には杭2を2列以上に配置する必要がある。
【0028】
≪第5実施形態≫
次に、図10を参照して本発明の第5実施形態について説明する。上記各実施形態では、X軸方向およびY軸方向にともにdの中心間距離をもって配列された複数の杭2によって1つの杭群Pが構成されるが、本実施形態では、X軸方向にはd1の中心間距離をもって、Y軸方向にはd1よりも大きなd2の中心間距離をもって配列された複数の杭2よって1つの杭群Pが構成される。本実施形態ではX軸方向およびY軸方向ともに2列の杭2を配置した杭群Pの配置手順について説明するが、上記第2〜第4実施形態のような列数にしてもよい。本実施形態では、第1の杭群P(1,1)に対し、X軸方向へd1×2(列)の距離、およびY軸方向へd2×0.5の距離だけずらした位置に第2の杭群P(n+1,n)を配置し、Y軸方向へd2×2(列)の距離、およびX軸方向へd1×0.5の距離だけずらした位置に第3の杭群P(n,n+1)を配置する。このような配置によっても、上記同様の効果が奏される。なお、第2の杭群P(n+1,n)に対して略Y軸方向に隣接配置した杭群P(n+1,n+1)の群中心C(n+1,n+1)と、第3の杭群P(n,n+1)に対して略X軸方向に隣接配置した杭群P(n+1,n+1)の群中心C(n+1,n+1)とは、ともに第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX軸方向へd1×2.5の距離、およびY軸方向へd2×2.5の距離だけ離れた位置となり、各杭群Pはその群中心Cを格子点とした平面格子の配置となる。
【0029】
≪第6実施形態≫
次に、図11を参照して本発明の第6実施形態について説明する。上記各実施形態では、X軸とY軸とが90度の開き角度をなしているが、本実施形態では、X軸とY軸とが90度よりも大きな開き角度をなしている。各杭群Pの配置手順は第1実施形態と同様である。このように杭2を配置した基礎構造体1であっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、X軸とY軸とを90度よりも小さな開き角度とすることも可能であるが、この場合、第2の杭群P(n+1,n)の点p3に配置される杭2と、第3の杭群P(n、n+1)の点p2に配置される杭2との杭間距離が、他の箇所よりも短くなる傾向にあるので、X軸とY軸との開き角度を90度以外の角度にする場合には、90度よりも大きな角度に設定するの好ましい。
【0030】
≪第7実施形態≫
次に、図12および図13を参照して本発明の第7実施形態について説明する。本実施形態では、第2の杭群P(n+1,n)に対して略X軸方向に更なる杭群Pを配置する際に、第1〜第6実施形態のように第2の杭群P(n+1,n)を第1の杭群P(n,n)と仮定して更に第2の杭群P(n+1,n)を配置するのではなく、図12に示すように、第2の杭群P(n+1,n)の中心からX軸方向へd1×mおよびY軸方向へd2×(−0.5)離れた点がその中心となるように第4の杭群P(n+2,n)を配置する。
【0031】
なお、第2の杭群P(n+1,n)に対して略Y軸方向に更なる杭群Pを配置する際には、第1〜第6実施形態と同様に、第2の杭群P(n+1,n)を第1の杭群P(n,n)と仮定して第3の杭群P(n,n+1)を配置する。また、第4の杭群P(n+2,n)に対して略X軸方向および略Y軸方向に更なる杭群Pを配置する際にも、第1〜第6実施形態と同様に、第4の杭群P(n+2,n)を第1の杭群P(n,n)と仮定して更に第2の杭群P(n+1,n)および第3の杭群P(n,n+1)を配置する。
【0032】
このような手順で、杭群Pを略X軸方向および略Y軸方向に隣接配置すると、第1の杭群P(n,n)に対して略X軸方向に2群目かつ略Y軸方向に1群目の杭群P(n+2,n+1)が、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX軸方向へd×4.5の距離、およびY軸方向にd×2の距離だけ離れた位置にくることになる。つまり、これら略X軸方向に3群および略Y軸方向に2群の合計6群の杭群Pが重複しながら繰り返し現れる杭配置となる。
【0033】
杭2をこのように配置することにより、一定の規則に則りつつ、地盤Gの改良対象区域のすべてに杭2をあたかも無作為に配置したように配置することができ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。つまり、杭群P(2,2)の配置を代表例とした図13に示すように、隣接する杭群P間および杭群Pを構成する杭列の間にX軸方向に延在する未改良領域Ax0,Ax1およびY軸方向に延在する未改良領域Ay0,Ay1が生じるが、近接配置された6つの杭群Pを構成する杭2が未改良領域Ax,Ayの幅方向の中心に配置されるため、これら未改良領域Ax,Ayの長さが短くなる。これにより、通常の方法で杭2を配置した同じ改良率の杭式の基礎構造体に比べて基礎構造体1の改良効果を高めることができる。
【0034】
≪第8実施形態≫
最後に、図14および図15を参照して本発明の第8実施形態について説明する。本実施形態では、図14に示すように、第7実施形態と同様に第2の杭群P(n+1,n)に対して略X軸方向に更なる杭群Pを配置する際に、上記所定の規則に則って第4の杭群P(n+2,n)を配置することに加え、第3の杭群P(n,n+1)に対して略Y軸方向に更なる杭群Pを配置する際にも、第1〜第6実施形態のように第3の杭群P(n,n+1)を第1の杭群P(n,n)と仮定するのではなく、第3の杭群P(n,n+1)の群中心C(n,n+1)からX軸方向へd1×(−0.5)およびY軸方向へd2×n離れた点がその中心となるように第5の杭群P(n,n+2)を配置する。
【0035】
なお、第3の杭群P(n,n+1)に対して略X軸方向に更なる杭群Pを配置する際には、第1〜第6実施形態と同様に、第3の杭群P(n,n+1)を第1の杭群P(n,n)と仮定して第2の杭群P(n+1,n)を配置する。また、第5の杭群P(n,n+2)に対して略X軸方向および略Y軸方向に更なる杭群Pを配置する際にも、第1〜第6実施形態と同様に、第5の杭群P(n,n+2)を第1の杭群P(n,n)と仮定して更なる杭群P(第2の杭群P(n+1,n)および第3の杭群P(n,n+1))を配置する。
【0036】
このような手順で、杭群Pを略X軸方向および略Y軸方向に隣接配置すると、第1の杭群P(n,n)に対して略X軸方向に2群目かつ略Y軸方向に2群目の杭群P(n+2,n+2)が、第1の杭群P(n,n)の群中心C(n,n)からX軸方向へd×4の距離、およびY軸方向にd×4の距離だけ離れた位置にくることになり、これら略X軸方向に3群および略Y軸方向に3群の合計9群の杭群Pが繰り返し現れる杭配置となる。
【0037】
杭2をこのように配置しても、一定の規則に則りつつ、地盤Gの改良対象区域のすべてに杭2をあたかも無作為に配置したように配置することができる。そして、杭群P(2,2)の配置を代表例とした図15に示すように、第7実施形態と同様の効果、つまり、隣接する杭群P間および杭群Pを構成する杭列の間に生じた未改良領域Ax0,Ax1および未改良領域Ay0,Ay1が、X軸方向に延在することおよびY軸方向に延在することを近接配置された6つの杭群Pの杭2によって阻止され、その長さが短くなることにより、通常の方法で杭2を配置した同一改良率の杭式基礎構造体に比べて改良効果を高める効果を得ることができる。
【0038】
なお、第7実施形態および第8実施形態についても、上記第1実施形態の変形形態として示した第2および第3実施形態のように(図5および図7参照)、X軸方向に3列、Y軸方向に3列配置した9本の杭2によって、或いはX軸方向に3列、Y軸方向に2列配置した6本の杭2よって1つの杭群Pを構成したり、第5および第6実施形態のように(図10および図11参照)、杭2の中心間距離をX軸方向とY軸方向とで異ならせ、或いはX軸とY軸との開き角度を90度以外の角度に設定したりすることも当然に可能である。また、第7実施形態および第8実施形態について、第4実施形態のように(図8および図9参照)各杭群Pにおける杭2の配列数をX軸方向またはY軸方向について1列とすることも可能である。なお、第7実施形態による配置方法に対して杭群PにおけるY方向への杭2の配列数を1にした場合には、第1実施形態による配置方法の場合(図8)と全く同一の杭配置となる。
【0039】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では深層混合処理工法を用いた杭の配置について説明したが、軟弱地盤および液状化地盤の改良効果を得られるのでれば杭の種類はこれに限られず、場所打ちコンクリート杭や打込み杭、埋込み杭等であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 基礎構造体
2 杭
3 改良層
p 点
P 杭群
C 群中心
Ax,Ay 未改良領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するX軸およびY軸を平面上に設定し、
前記X軸方向にd1の中心間距離をもってm列配置するとともに、前記Y軸方向にd2の中心間距離をもってn列配置した複数の杭を1つの杭群とし、
第1の杭群の中心から前記X軸方向へd1×mおよび前記Y軸方向へd2×0.5離れた点がその中心となるように第2の杭群を配置し、
前記第1の杭群の中心から前記X軸方向へd1×0.5および前記Y軸方向へd2×n離れた点がその中心となるように第3の杭群を配置し、
前記第2の杭群および前記第3の杭群をそれぞれ前記第1の杭群と仮定して更に前記第2の杭群および前記第3の杭群を配置することを特徴とする杭の配置方法。
【請求項2】
前記第2の杭群を前記第1の杭群と仮定して更に前記第2の杭群を配置する代わりに、前記第2の杭群の中心から前記X軸方向へd1×mおよび前記Y軸方向へd2×(−0.5)離れた点がその中心となるように第4の杭群を配置し、
前記第4の杭群を前記第1の杭群と仮定して更に前記第2の杭群および前記第3の杭群を配置することを特徴とする、請求項1に記載の杭の配置方法。
【請求項3】
前記第3の杭群を前記第1の杭群と仮定して更に前記第3の杭群を配置する代わりに、前記第3の杭群の中心から前記X軸方向へd1×(−0.5)および前記Y軸方向へd2×n離れた点がその中心となるように第5の杭群を配置し、
前記第5の杭群を前記第1の杭群と仮定して更に前記第2の杭群および前記第3の杭群を配置することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の杭の配置方法。
【請求項4】
前記X軸と前記Y軸とが90度の角度をもって交差することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の杭の配置方法。
【請求項5】
前記d1と前記d2とが等しいことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の杭の配置方法。
【請求項6】
前記mと前記nとがともに2であることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の杭の配置方法。
【請求項7】
X軸とY軸とが互いに交差する平面上において、前記X軸方向にd1の中心間距離をもってm列配置されるとともに、前記Y軸方向にd2の中心間距離をもってn列配置された複数の杭によって1つの杭群が構成され、
第1の杭群の中心から前記X軸方向へd1×mおよび前記Y軸方向へd2×0.5離れた点がその中心となるように第2の杭群が配置され、
前記第1の杭群の中心から前記X軸方向へd1×0.5および前記Y軸方向へd2×n離れた点がその中心となるように第3の杭群が配置され、
前記第2の杭群および前記第3の杭群をそれぞれ前記第1の杭群と仮定したときに前記第2の杭群および前記第3の杭群が配置される位置に更に前記杭群が配置されたことを特徴とする基礎構造体。
【請求項1】
互いに交差するX軸およびY軸を平面上に設定し、
前記X軸方向にd1の中心間距離をもってm列配置するとともに、前記Y軸方向にd2の中心間距離をもってn列配置した複数の杭を1つの杭群とし、
第1の杭群の中心から前記X軸方向へd1×mおよび前記Y軸方向へd2×0.5離れた点がその中心となるように第2の杭群を配置し、
前記第1の杭群の中心から前記X軸方向へd1×0.5および前記Y軸方向へd2×n離れた点がその中心となるように第3の杭群を配置し、
前記第2の杭群および前記第3の杭群をそれぞれ前記第1の杭群と仮定して更に前記第2の杭群および前記第3の杭群を配置することを特徴とする杭の配置方法。
【請求項2】
前記第2の杭群を前記第1の杭群と仮定して更に前記第2の杭群を配置する代わりに、前記第2の杭群の中心から前記X軸方向へd1×mおよび前記Y軸方向へd2×(−0.5)離れた点がその中心となるように第4の杭群を配置し、
前記第4の杭群を前記第1の杭群と仮定して更に前記第2の杭群および前記第3の杭群を配置することを特徴とする、請求項1に記載の杭の配置方法。
【請求項3】
前記第3の杭群を前記第1の杭群と仮定して更に前記第3の杭群を配置する代わりに、前記第3の杭群の中心から前記X軸方向へd1×(−0.5)および前記Y軸方向へd2×n離れた点がその中心となるように第5の杭群を配置し、
前記第5の杭群を前記第1の杭群と仮定して更に前記第2の杭群および前記第3の杭群を配置することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の杭の配置方法。
【請求項4】
前記X軸と前記Y軸とが90度の角度をもって交差することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の杭の配置方法。
【請求項5】
前記d1と前記d2とが等しいことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の杭の配置方法。
【請求項6】
前記mと前記nとがともに2であることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の杭の配置方法。
【請求項7】
X軸とY軸とが互いに交差する平面上において、前記X軸方向にd1の中心間距離をもってm列配置されるとともに、前記Y軸方向にd2の中心間距離をもってn列配置された複数の杭によって1つの杭群が構成され、
第1の杭群の中心から前記X軸方向へd1×mおよび前記Y軸方向へd2×0.5離れた点がその中心となるように第2の杭群が配置され、
前記第1の杭群の中心から前記X軸方向へd1×0.5および前記Y軸方向へd2×n離れた点がその中心となるように第3の杭群が配置され、
前記第2の杭群および前記第3の杭群をそれぞれ前記第1の杭群と仮定したときに前記第2の杭群および前記第3の杭群が配置される位置に更に前記杭群が配置されたことを特徴とする基礎構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−196173(P2011−196173A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27392(P2011−27392)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
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