説明

板材パネル

【課題】フラットな状態で輸送が可能であって経済的であり、装飾性及び強度を保ちつつ熟練工でなくても簡単に曲面を形成でき、取り付け取り外しの容易な板材パネルを提供することである。
【解決手段】2つの硬質材の層を軟質材の層の両面(表面及び裏面)に付して構成された上面長方形状の板材パネルに、長方形の縦辺に平行なスリットを縦辺の長さの全体にわたって形成する。スリットは硬質材の層を貫通している。これにより、曲面が簡単に構成できる。表面の硬質材の層を貫通するスリットと、裏面の硬質材の層を貫通するスリットとを入れ違いに配する。また、軟質材の層に横辺に平行な補強材挿入部を有する。これらの工夫によって、形成された曲面の変形を防止すると共に、板材全体の強度を保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具の一部又は間仕切壁として使用される板材パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
家具又は間仕切壁においては、曲面形状を構成したいことがある。例えば、家具においては椅子の着座面を体にフィットする形状にしたいといった要望がある。間仕切壁においては音響の反射を和らげるために平面状でなく曲面状の壁面としたいといった要望がある。
合板や石膏ボードなどの壁材は曲面を形成できない。このため、板材を湾曲させて曲面を形成していた。しかし、板材を所望の形状に湾曲させるためには、熟練した工員の技術が必要であった。
【0003】
特許文献1には、上記の問題を解決するため、発泡樹脂製の板材本体の表面側及び裏面側に板材の辺方向に板材を貫くスリットを設け、表面側及び裏面側のスリットの先端部を板厚の中心よりも奥側に位置させることにより、簡単に曲面を形成することのできる板材が開示されている。
しかし、特許文献1に開示された板材には、以下の問題があった。(1)板材の材質が発泡樹脂に限定されており、美しい外観を形成することが困難である。(2)スリットがあるため板材表面の部分は分断された長方形状であり、発泡樹脂製では十分な強度が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−041302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フラットな状態で輸送が可能であって経済的であり、装飾性及び強度を保ちつつ熟練工でなくても簡単に曲面を形成でき、取り付け取り外しの容易な板材パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の板材パネルは、
2つの硬質材の層を軟質材の層の両面(表面及び裏面)に付して構成された上面長方形状のものである。
表面の硬質財の層に用いられる硬質材の材質によって、後述のように硬質材を貫通するスリットを設ける場合においても、板材の強度を保つことができる。
ここで「硬質材」とは、加圧変形によって所望の曲面を得ることが困難な材質を言う。木、金属、プラスチック等の多くが硬質材に含まれる。
「軟質材」とは、加圧変形によって所望の曲面を得ることが容易な材質を言う。ゴム、軟性の合成樹脂等の多くが軟質材に含まれる。また、かかる軟質材は板材パネルの表面に加わる圧力(例えば板材パネルを椅子の座面に使用する場合に人間の体重によって発生する圧力)を吸収する弾性を有する。
【0007】
本発明の板材パネルは、
前記長方形の縦辺に平行なスリットが該縦辺の長さの全体にわたって形成され、
前記スリットは前記硬質材の層を貫通していることを特徴とする。
ここで「スリット」とは、板材パネルの外側から見て帯状(太さを持った直線状)であるような板材内部に向けての切り込みを言う。
長方形の縦辺に平行なスリットが設けられていることによって、長方形の横辺方向については特許文献1と同様に簡単に曲面を形成することができる。
【0008】
本発明の板材パネルは、
前記表面の硬質材の層を貫通する前記スリットと、前記裏面の硬質材の層を貫通する前記スリットとが入れ違いに配されていることを特徴とする。
表面の硬質材の層を貫通するスリットと、裏面の硬質材の層を貫通するスリットとが同位置にあると、その位置において軟質材が薄くなり、板材の破断を生じる可能性がある。これらのスリットを入れ違いに配することで、この問題を防止する。
【0009】
本発明の板材パネルは、
前記軟質材の層の前記長方形の上辺及び下辺の位置に、前記長方形の横辺に沿った補強材挿入部を有することを特徴とする。
曲面を形成した後に、板材に外部から力が加わると、曲面の形状が乱れてしまうことがある。補強材を挿入することによって曲面の形状を保持することができる。また、曲面を形成した後の板材の強度を保つこともできる。ここで、補強材としては十分な強度を持った材質のもの、例えば鉄板を用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
簡単に曲面を形成することのできる板材パネルであって、装飾性及び強度が保たれているので、壁面、家具等に活用できる。
また、例えば椅子のように種々の形状の曲面を持つ家具を製作するための素材として、規格化された板材パネル1種類で種々の形状の曲面を形成することができ、板材パネルの選定に係る手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、板材パネルの平面図である。
【図2】図2は、板材パネルの端面を示す図である。
【図3】図3は、板材パネルの曲面形状の例を示す図である。
【図4】図4は、補強材の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を用いた実施例を示す。
【実施例1】
【0013】
図1は、板材パネルの平面図である。板材パネル1全体に係る長方形について、この図において縦に描かれた辺が「縦辺」、横に描かれた辺が「横辺」である。
スリット5は、縦辺に平行なに縦辺の長さの全体にわたって形成されている。これにより、曲面の形成が容易である。
【0014】
図2は、板材パネルの端面を示す図である。図1における上側の端面を示しているものである。
板材パネル1は、軟質材の層2に、表面の硬質材の層3及び裏面の硬質材の層4が付されたものである。軟質材の層2はポリエチレンフォーム製であり、表面の硬質材の層3及び裏面の硬質材の層4はプライウッド製である。むろん、他の材質を用いてもよい。軟質材の層2をポリエチレンフォーム製とすることにより、曲面形成が容易になる。表面の硬質材の層3及び裏面の硬質材の層4をプライウッド製とすることにより、板材全体の強度を保ちつつ木に特有な外観を得ている。
スリット5が表面の硬質材の層3及び裏面の硬質材の層4を貫通して設けられている。表面の硬質材の層3を貫通するスリットと及び裏面の硬質材の層4を貫通するスリットとは入れ違いに設けられ、板材の破断が防止されている。
軟質材の層2のうち、表面の硬質材の層3及び裏面の硬質材の層4の中間部に、図1における長方形の横辺に沿った補強材挿入部6が設けられている。
【0015】
図3は、板材パネルの曲面形状の例を示す図である。このように、任意の形状の曲面が容易に形成できる。
【0016】
図4は、補強材の使用例を示す図である。補強材挿入部6に補強材7を挿入して用いる。補強材7は鉄板であり、図に示した形状に予め加工されている。補強材7は容易に変形しないので、板材全体としても形状が保たれる。
なお、図の右側に示すように、補強材挿入部6は、板材全体にわたって設けられたものでなく、板材の端部のみに設けられたものであってよい。補強材によって変形が防止され、補強材と硬質材によって板材全体の強度が保たれるならば、それ以上に補強材を用いる必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
簡単に曲面を形成することのできる板材パネルであって装飾性及び強度が保たれており、かつ、規格化された板材パネル1種類で種々の形状の曲面を形成することができるので、家具生産者、建築業者等による活用が期待できる。
【符号の説明】
【0018】
1 板材パネル
2 軟質材の層
3 表面の硬質材の層
4 裏面の硬質材の層
5 スリット
6 補強材挿入部
7 補強材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの硬質材の層を軟質材の層の両面(表面及び裏面)に付して構成された上面長方形状の板材パネル。
【請求項2】
前記長方形の縦辺に平行なスリットが該縦辺の長さの全体にわたって形成され、
前記スリットは前記硬質材の層を貫通していることを特徴とする、請求項1に記載の板材パネル。
【請求項3】
前記表面の硬質材の層を貫通する前記スリットと、前記裏面の硬質材の層を貫通する前記スリットとが入れ違いに配されていることを特徴とする、請求項2に記載の板材パネル。
【請求項4】
前記軟質材の層の前記長方形の上辺及び下辺の位置に、前記長方形の横辺に沿った補強材挿入部を有することを特徴とする、請求項2又は3に記載の板材パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96140(P2013−96140A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239860(P2011−239860)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(511043976)
【Fターム(参考)】