説明

果実保護具

【課題】災害や鳥などに遭遇しても果実を確実に保護し、果実を不自然な形状にはしないようにすることができ、且つ果実が肥大しても破裂や亀裂を生じさせずに済む果実保護具を提供する。
【解決手段】まだ肥大しきっていない果実の周囲を覆うように、二つ割りに形成された第1の部材32と第2の部材33とが係合して果実に装着される果実保護具30であって、果実が最大に肥大した場合よりもその容積が小さく形成され、果実が最大に肥大したときは果実保護具30の容積よりも果実の方が大きくなることができるように係合が外れるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まだ肥大しきっていない果実に装着し、果実を保護する果実保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
リンゴ等の果実は、肥大する前に果樹に着いている状態で袋かけが行われることが一般的である。まだ成熟していない果実に袋をかけることによって、常に日光が当たることを防止して色を良くし、また防虫効果を図ることができる。
【0003】
一方、トマト、メロン、スイカ等のまだ肥大しきっていない果実に装着し、果実の形状を任意に成形する方法が従来より知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
特許文献1では、トマト、メロンおよびスイカ等の球状の果実を立方体等の非球状に造形すべく、造形用枠型を果実の周囲に配置する構成が開示されている。
また、特許文献2では、ナスやキュウリなどの野菜を様々な造形にするための造形用具が開示されている。
特許文献3でも、メロンやスイカ等の果実を任意の形状に造形するための造形用具が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭55−27767号公報
【特許文献2】実開昭61−92267号公報
【特許文献3】実用新案登録第3134612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リンゴやブドウ等の果実においては袋がかけられることにより、色を良くし、防虫効果は期待できるが、傷などの防止は図ることができず、台風等の災害により果樹から落下してしまうと市場価値が無くなって売り物にはならなくなってしまうという課題がある。
【0007】
さらに、落下の危険性だけでなく、雹による傷、鳥などの動物が食べた痕など、果実は様々な危険にさらされている。
しかし、今までは果実の落下や傷などの保護についてはほとんど検討されておらず、鳥が来ないようにネットを張るなどの対策をとる程度しか考えられていなかった。このため、果実を保護する方策が熱望されているという課題がある。
【0008】
一方、果実や野菜等の周囲に造形用の構造物を装着することは、上述したように公知である。しかし、食品を自然の形ではなく人工的な形にしたところで、消費者の購入意欲は一時的には増すかもしれないが、すぐに飽きがきてしまう。また、やはり自然な形状の方が食欲も沸き、購入意欲も増加するものである。
【0009】
また、このように果実や野菜等の周囲に何らかの構造物を配置して果実を造形する場合、果実が肥大してもどの程度まで肥大しているのか確認しにくい。この点、特許文献3の栽培容器は透明なアクリル部材を用いていることが開示されているので、果実の大きさについては把握できる。しかし、特許文献3の栽培容器は、アクリル部材をボルトとナットで締め付けており、果実が栽培容器の容積以上に肥大してしまうと果実が破裂したり亀裂を生じるおそれがあった。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、災害や鳥などに遭遇しても果実を確実に保護し、果実を不自然な形状にはしないようにすることができ、且つ果実が肥大しても破裂や亀裂を生じさせずに済む果実保護具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するため次の構成を備える。すなわち、本発明にかかる果実保護具によれば、まだ肥大しきっていない果実の周囲を覆うように、二つ割りに形成された第1の部材と第2の部材とが係合して果実に装着される果実保護具であって、果実が最大に肥大した場合よりもその容積が小さく形成され、果実が最大に肥大したときは果実保護具の容積よりも果実の方が大きくなることができるように、前記係合が外れるように設けられていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、落下や雹等の災害にあっても傷が付かないように周囲を覆っており、また鳥や獣からの被害も防ぐことができる。また、果実が大きくなると係合が外れるので、果実が保護具よりも大きくなろうとして破損したり、亀裂が入るのを防止できるとともに、係合が外れたことを農作業の間に容易に発見できるので、収穫時期を適切にすることができる。さらに、内部空間を果実本来の形状とすることで、自然な形状に成形できるので、一時的なブーム等にならず安定した販売が期待できる。
【0012】
また、前記係合する部分は、二つ割りに形成された第1の部材または第2の部材のいずれか一方に設けられた爪状部材と、第1の部材または第2の部材のいずれか他方に設けられ、前記爪状部材と係合する環状部材とを有し、果実の肥大によって前記爪状部材が破損することによって係合が外れることを特徴としてもよい。
この構成によれば、爪状部材を容易に破損するような薄肉状にしたり、切り込みを入れるなどしておくことにより、果実が肥大してきた場合には簡単に爪状部材が破損して係合が外れることができる。
【0013】
さらに、第1の部材と第2の部材とを緊締し、果実の肥大によって第1の部材と第2の部材との係合が外れたときに、破けるように設けられた緊締手段が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、果実が肥大して係合が外れると緊締手段が落下して紙面に落ちるので、作業者は緊締手段が地面にあるか否かだけを確認さえすれば果実が収穫に適した大きさに肥大したことを容易に知ることができる。
【0014】
前記緊締手段が配置される箇所には、緊締手段が収納される溝部が形成されていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、緊締手段が溝部に引っかかるため、緊締手段が滑り落ちないようにすることができる。
【0015】
なお、前記第1の部材と第2の部材とが離間したことを検出するセンサが設けられ、該センサが前記第1の部材と第2の部材とが離間したことを検出する と、その旨を報知する報知手段が設けられていることを特徴としてもよい。
すなわち、従来は収穫の季節になれば果樹園・畑を頻繁に見回って収穫時期を逃さないようにする必要があったが、この構成によれば、収穫に適した大きさに果実が肥大したことを容易に見つけることができる。
【0016】
また、前記報知手段は、発光手段であることを特徴とすれば、収穫に適しているかの確認がさらに迅速に行える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の果実保護具によれば、災害や鳥などに遭遇しても果実を確実に保護し、果実を不自然な形状にはしないようにすることができ、且つ果実が肥大しても破裂や亀裂を生じさせずに済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る果実保護具の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1から図3に本実施形態の果実保護具の全体構成図を示す。なお、本実施形態では対象とする果実はリンゴであるものとする。
果実保護具30は、それぞれ内部が湾曲した凹部となっている第1の部材32と第2の部材33とで構成されている。第1の部材32および第2の部材33は、それぞれプラスチック等の軽量の材料で形成されており、厚さは1〜2mm程度の薄いものとなっている。
【0019】
第1の部材32と第2の部材33とを組み合わせることにより、内部に肥大前のリンゴを収納可能な空間35が形成される。
また、この空間35の外側を形成する外壁面は、リンゴの一般的な形状をなしているものである。したがって、この空間35は球状に近いものであり、特に奇をてらった形状にはなっていない。
【0020】
第1の部材32には、第2の部材33と当接する部位(湾曲した凹部の端縁部37)に第2の部材方向へ向けて突出する爪状部材36が設けられている。爪状部材36は、端縁部37の上方に向けて突出する爪本体36aと、爪本体36aの上部から下部に向け徐々に水平方向に広がる引掛部36bとを有している。
このような爪状部材36は、第1の部材32の凹部の端縁部37に沿って複数設けられている。本実施形態では、第1の部材32に3つの爪状部材36が設けられている。
【0021】
一方、第2の部材33の、第1の部材32の爪状部材36が設けられた箇所に対応する箇所に、爪状部材36と係合する環状部材40が設けられている。環状部材40は、第2の部材33の、第1の部材32と当接する部位(湾曲した凹部の端縁部)から外方に向けて突出し、突出方向に直交する方向に開口した開口部が形成されている。
環状部材40も、爪状部材36と同数設けられており、本実施形態では、第2の部材33に3つの環状部材40が設けられている。
【0022】
なお、本実施形態では、第1の部材32において、爪状部材36が形成されている箇所と、凹部を挟んで対向する位置に環状部材41が設けられており、第2の部材33において、環状部材40が形成されている箇所と、凹部を挟んで対向する位置に爪状部材42が設けられている。
【0023】
そこで、第1の部材32と、第2の部材33とを互いの凹部が向かい合うように合わせると、第1の部材32の爪状部材36が第2の部材33の環状部材40に挿入され、爪状部材36の引掛部36bの下端面が環状部材40の端面に当接して抜け止めとなって係合する。
同様に、第2の部材33の爪状部材42が第1の部材32の環状部材41に挿入され、爪状部材42の引掛部の下端面が環状部材41の端面に当接して抜け止めとなって係合する。
【0024】
また、第1の部材32と第2の部材33とが係合された果実保護具30の底面には、水抜き用の水抜き穴43が形成されている。これは、まだ肥大しきっていない果実を内部に配置した後に果実保護具30内に雨水が溜まってしまうと、果実が腐ったりするため、水を抜くために設けられているものである。
さらに、果実保護具30の上面には、リンゴの果柄を通過させるための果柄用穴44が形成されている。
【0025】
果実保護具30の上面には、果樹の枝に吊り下げるための紐を通す紐用環状部材46が設けられている。これにより、果実保護具30の加重が果実の上面にかからないように、果実保護具30の加重を果樹の枝にかけることができる。
また、紐用環状部材46は、1つの果実保護具の2箇所に設けられることで、2箇所で枝に吊り下げることができ果実保護具30の果樹への保持が確実なものとなる。
【0026】
さらに、2つの紐用環状部材46は、第1の部材32と第2の部材33にそれぞれ1つずつ設けるとよい。このように構成することで、後述するように、果実が肥大して第1の部材32と第2の部材33とが分離したとき、第1の部材32および第2の部材33が果樹から落下しないようにすることができる。
【0027】
また、果実保護具の周囲を縛り付けるように、第1の部材32と第2の部材33とを緊締する緊締手段(図示せず)を設けてもよい。緊締手段は、紙や細いビニールなど極めて切れやすく弱い材質で形成されているとよい。
このような緊締手段によって、第1の部材32と第2の部材33の周囲を巻回しておくことで、後述するように、果実が肥大して第1の部材32と第2の部材33とが分離したとき、この緊締手段が切れて落下するので、一目で果実の肥大を認識することができる。したがって、緊締手段としては、目立つ色にしておくと、落下していることの認識が容易に行われて好適である。
【0028】
また、緊締手段は、そのままであると果実保護具30の表面上を滑り落ちてしまう可能性が高いので、緊締手段を設ける箇所に溝52を形成しておくとよい。緊締手段は、溝52上に配置されることにより滑り落ちないようにすることができる。
【0029】
続いて、果実が肥大したときの作用について説明する。
本実施形態の果実保護具30の内部の空間35は、果実の収穫時期における大きさよりも容積が小さく形成されている。したがって、果実が果実保護具30内で肥大していくと、果実が果実保護具30を内側から圧迫し、爪状部材36を破損させる。爪状部材36が破損することによって、果実が十分に肥大したことが一目で分かる。また、爪状部材36の破損により、第1の部材32と第2の部材33とが分離することによって、緊締手段が切れる。したがって、緊締手段は地面に落下し、果実が肥大したことが果樹の近傍まで近寄らなくても容易に判断できる。
【0030】
なお、本実施形態の爪状部材は第1の部材3つ、第2の部材に3つ、計6つ設けられている。
これらのうち、全てを破損可能に設けてもよいし、少なくともいずれか1つを破損可能に設けてもよい。
なお、図4に示すように、破損可能な爪状部材36の形状としては、爪本体36aと引掛部36bとの結合部分の面積が小さくなるように、例えば、切り込み39を入れておいてもよい。
【0031】
(第2の実施形態)
上述した実施形態とは異なる構成の実施形態について、図5に基づいて説明する。図5は、果実保護具30を水平方向で切断して下から上方を見たところを示している。なお、上述した実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する場合もある。
本実施形態では、第1の部材32と、第2の部材33とを接合する部位には磁石48を設け、第1の部材32と第2の部材33とを磁力により接合する。
【0032】
そして、本実施形態では、第1の部材32と第2の部材33の係合が解除された場合、係合の解除を検出するセンサ51が設けられる。センサ51としては、第1の部材32と第2の部材33の距離を計測する静電容量センサ等を用いることができる。
【0033】
センサ51の検出信号は、果実が肥大したことを作業者に報知する報知手段に接続されている。報知手段としては、LED等の表示手段55が挙げられる。
センサ51は、第1の部材32と第2の部材32の係合が外れたことを検出すると、検出信号を表示手段55に出力する。表示手段55は、係合が外れたことを示すためにLEDを点灯(または点滅)させる。したがって、果実が肥大したことが果樹の近傍まで近寄らなくても容易に判断できる。
【0034】
上述してきた果実保護具30は、透明にまたは半透明などにすることにより、ほどよく日光を当てることができる。
さらに、水抜き穴43と果柄用穴44以外にも、側面に複数の穴を穿説してもよい。これにより、新鮮な空気を果実に供給できる。
【0035】
なお、果実としてはリンゴに限定されることなく、ナシ、桃、ミカン、柿、スイカ、メロン等様々な果実に用いることができる。
【0036】
以上、本発明につき好適な実施形態を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る果実保護具の第1の部材を示す斜視図である。
【図2】果実保護具の底面方向からの斜視図である。
【図3】果実保護具の上面方向からの斜視図である。
【図4】爪状部材の拡大図である。
【図5】果実保護具の第2の実施形態の説明図である。
【符号の説明】
【0038】
30 果実保護具
32 第1の部材
33 第2の部材
35 空間
36,42 爪状部材
36a 爪本体
36b 引掛部
37 端縁部
40、41 環状部材
43 水抜き穴
44 果柄用穴
46 紐用環状部材
48 磁石
51 センサ
52 溝
55 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
まだ肥大しきっていない果実の周囲を覆うように、二つ割りに形成された第1の部材と第2の部材とが係合して果実に装着される果実保護具であって、
果実が最大に肥大した場合よりもその容積が小さく形成され、
果実が最大に肥大したときは果実保護具の容積よりも果実の方が大きくなることができるように、前記係合が外れるように設けられていることを特徴とする果実保護具。
【請求項2】
前記係合する部分は、二つ割りに形成された第1の部材または第2の部材のいずれか一方に設けられた爪状部材と、第1の部材または第2の部材のいずれか他方に設けられ、前記爪状部材と係合する環状部材とを有し、
果実の肥大によって前記爪状部材が破損することによって係合が外れるように設けられていることを特徴とする請求項1記載の果実保護具。
【請求項3】
第1の部材と第2の部材とを緊締し、果実の肥大によって第1の部材と第2の部材との係合が外れたときに、破けるように設けられた緊締手段が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の果実保護具。
【請求項4】
前記緊締手段が配置される箇所には、緊締手段が収納される溝部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の果実保護具。
【請求項5】
前記第1の部材と第2の部材とが離間したことを検出するセンサが設けられ、
該センサが前記第1の部材と第2の部材とが離間したことを検出すると、その旨を報知する報知手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項記載の果実保護具。
【請求項6】
前記報知手段は、発光手段であることを特徴とする請求項5記載の果実保護具。

【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−68722(P2010−68722A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236862(P2008−236862)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(308025668)株式会社エムケーアイ (3)
【Fターム(参考)】