説明

果実収穫装置

【課題】 果実の果梗を軽い操作で切断でき、且つ、取り扱いや持ち運びが容易な果実収穫装置を提供する。
【解決手段】 果実収穫装置10は、伸縮自在の竿部材12と、この竿部材12の先端部16に設けられ、少なくとも果実50が通過可能な開口寸法を有する枠部材18と、この枠部材18の一側に設けられ、果実50が通過可能なシュート部材22と、枠部材18内に回動自在に取り付けられ、果実50を収納可能な寸法の椀状捕獲部材32と、枠部材18の他側、及び、捕獲部材32の縁部に設けられた切断部36と、竿部材12の基部14に設けられ、捕獲部材32を回動操作するための操作手段40とを備える。捕獲部材32は、常にシュート部材22側に位置して枠部材18の他側方向に開口すると共に、操作手段40により回動されて当該捕獲部材32の切断部36が枠部材18の切断部20と噛み合う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高木等地上から直接手の届かないところの果実を収穫するための果実収穫装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種果実収穫装置として、果実摘み取り器が提案されている。該果実摘み取り器は、約3m〜5mの棒の先端にくす玉状に割れる球型が設けられると共に、この球型の2つの割口に対向してノコギリ状の歯が設けられている。ノコギリ状の歯はスプリングによって開いており、一方の球型には容器が携帯されている。歯の下部には電磁石が取り付けられ、その下には電磁石を動作させるスイッチが設けられている。スイッチをONして電磁石を動作させると、ノコギリ状の歯は閉じられ、スイッチをOFFすると電磁石の動作は停止し、スプリングでノコギリ状の歯が開くようになっている。
【0003】
即ち、球型の2つの割口内に果実を挿入してスイッチをONすると、電磁石が動作してノコギリ状の歯が閉じられ、果梗が切断される。これにより、切り離された果実は地面に落下することなく容器に集められる。このように、スイッチをONするだけの軽い操作力で果実の果梗を切断できるように構成していた。(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】実開昭48−79738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の果実摘み取り器は、電磁石で開いた歯を閉じて果実の果梗を切断すると同時にスプリングを閉じる構成であった。果梗の切断と同時にスプリングを閉じるこのような構成では、大きく強力な電磁石を使用しなければ果実の果梗を切断することができない。大きな電磁石を使用すると棒の先端が重くなり果実摘み取り器の取り扱いが困難となってしまう問題があった。
【0006】
また、電磁石を動作させるために例えば商用交流電源を使用する場合には長い電線を使用しなければならない。このため、果実摘み取り器の取り扱いや持ち運びが困難である。そこで、持ち運びに便利な蓄電池の使用が考えられるが、大きく強力な電磁石を動作させるためには大きな電力消費がある。このため、蓄電池が短時間で放電してしまうという問題も発生してしまう。
【0007】
本発明は、係る従来技術の課題を解決するために成されたものであり、果実の果梗を軽い操作で切断でき、且つ、取り扱いや持ち運びが容易な果実収穫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の果実収穫装置は、伸縮自在の竿部材と、該竿部材の先端部に設けられ、少なくとも果実が通過可能な開口寸法を有する枠部材と、該枠部材の一側に設けられ、果実が通過可能なシュート部材と、枠部材内に回動自在に取り付けられ、果実を収納可能な寸法の椀状捕獲部材と、枠部材の他側、及び、捕獲部材の縁部に設けられた切断部と、竿部材の基部に設けられ、捕獲部材を回動操作するための操作手段とを備え、捕獲部材は、常にはシュート部材側に位置して枠部材の他側方向に開口すると共に、操作手段により回動されて当該捕獲部材の切断部が枠部材の切断部と噛み合うことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明の果実収穫装置は、上記において、両切断部の少なくとも一方をノコギリ状の刃としたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明の果実収穫装置は、請求項1又は請求項2に加えて、捕獲部材と操作手段とをワイヤーにて接続すると共に、当該操作手段には操作力軽減手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明の果実収穫装置は、請求項3において、操作力軽減手段は、ワイヤーが巻き取られる小径の巻取部と、この巻取部の半径よりも長い操作アームとにより構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明の果実収穫装置は、請求項4において、操作アームの長さを、巻取部の半径の1.5倍以上としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、伸縮自在の竿部材と、該竿部材の先端部に設けられ、少なくとも果実が通過可能な開口寸法を有する枠部材と、該枠部材の一側に設けられ、果実が通過可能なシュート部材と、枠部材内に回動自在に取り付けられ、果実を収納可能な寸法の椀状捕獲部材と、枠部材の他側、及び、捕獲部材の縁部に設けられた切断部と、竿部材の基部に設けられ、捕獲部材を回動操作するための操作手段とを備え、捕獲部材は、常にはシュート部材側に位置して枠部材の他側方向に開口すると共に、操作手段により回動されて当該捕獲部材の切断部が枠部材の切断部と噛み合うので、捕獲部材内に果実を収納して回動手段を回動操作させれば、捕獲部材の切断部と枠部材の切断部との間で果実の果梗を切断することができる。これにより、果梗を切断した果実をシュート部材内に落下させることができる。従って、例えば手が届かない高木等の果実を、脚立を使用せず、落下させることなく無傷で収穫することが可能となる。
【0014】
特に、竿部材を伸縮自在に構成しているので、竿部材を伸張させれば手が届かない高木に成っている果実を容易に収穫することが可能になると共に、竿部材を伸縮させれば手が届く低木の果実も収穫することができるようになる。これにより、例えば従来トゲで手が傷付き易かった柚や夏みかん、或いは、梅などでも手に傷を付けることなく収穫することが可能となる。従って、果実収穫装置の利便性を大幅に向上させることができるようになるものである。
【0015】
また、請求項2の発明によれば、上記において、両切断部の少なくとも一方をノコギリ状の刃としたので、果実の果梗をノコギリ状の刃の先端から奥の方に移動させることができる。これにより、果実の果梗が刃の先端から奥の方に斜めに移動して行くので、果実の果梗を容易に切断することが可能となる。従って、極めて軽い力で果実の果梗を切断して果実を収穫することができるようになるものである。
【0016】
また、請求項3の発明によれば、請求項1又は請求項2に加えて、捕獲部材と操作手段とをワイヤーにて接続すると共に、当該操作手段には操作力軽減手段を設けたので、例えば、請求項4の発明の如く、操作力軽減手段は、ワイヤーが巻き取られる小径の巻取部と、この巻取部の半径よりも長い操作アームとにより構成されているので、巻取部を小さな操作力で操作すれば捕獲部材を大きな力で回動させることができる。これにより、捕獲部材の切断部に強力な切断力を発生させることができる。従って、果実の果梗を軽い操作力で切断することができるようになるものである。
【0017】
特に、請求項5の発明の如く、操作アームの長さを、巻取部の半径の1.5倍以上とすることにより、果実の果梗を直接切断する場合に対して1/1.5以下の軽い操作力で果実の果梗を切断することができる。これにより、女性など手の力が弱い人であっても、高木等の手が届かないところの果実の果梗を切断して果実を収穫することができる。従って、果実収穫装置の利便性を極めて向上させることができるようになるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、高木に成った果実の果梗を切断する操作力が重いのを防止するため、軽い操作力で操作できる操作力軽減手段を設けたことを特徴とする。軽い操作力で果実の果梗を切断するという目的を、小径の巻取部とこの巻取部の半径より長い操作アームを備えただけの簡単な操作力軽減手段で実現した。
【実施例1】
【0019】
次に、図面に基づき本発明の実施の形態を詳述する。図1は本発明の一実施例を示す果実収穫装置10の側面図、図2は本発明の果実収穫装置10を構成する果実収穫部30の正面図、図3は同図2の果実収穫装置10の、果実収穫部30の側面図、図4は本発明の果実収穫装置10を構成する操作手段40の側面図をそれぞれ示している。
【0020】
果実収穫装置10は、地上より直接鋏を入れることができない約3m〜5mの高木の果実を、脚立を使わずに地上から収穫するもので、図1に示すように伸縮自在の竿部材12と、この竿部材12の一側に設けられた果実収穫部30と、竿部材12の他側に設けられた操作手段40とから構成されている。
【0021】
竿部材12は、軽い金属パイプ(例えばアルミニウムのパイプ)にて構成されている。この竿部材12は、竿本体12Aとこの竿本体12A内に伸縮自在に挿入された延長竿12Bとから長さ約3m〜5mに延長可能に構成されている。この延長竿12Bの先端部16(竿部材12の一側)に果実収穫部30が設けられ、竿本体12Aの基部14(竿部材12の他側)近傍には操作手段40が設けられている。該竿部材12は、竿本体12Aに対して延長竿12Bを任意の位置(この場合、約3m〜5mの範囲内)に伸縮させた状態で図示しないネジにて固定できるようになっている。該竿本体12Aは、直径約30mmの手で持ち易い太さに形成されている。
【0022】
果実収穫部30は、図2、図3に示すように帯状の枠部材18と捕獲部材32と円筒状のシュート部材22とから構成されている。枠部材18は、厚さ約1mm乃至2mm、幅約15mm乃至25mmの帯状で略円形に形成され、下部は取付部材13を介して図示しない溶接或いはボルトにて延長竿12Bの先端部16に固定されている。該枠部材18の一側は少なくともミカン、夏みかん、梨、柿など(以降これらを果実と称す)が通過可能な寸法の開口を有しており、枠部材18の他側には帯状の支持枠22Aに支持されたシュート部材22が設けられている。尚、図2、図3ではシュート部材22を図示していない。
【0023】
取付部材13は一側を開口したコ字状に形成され、この開口側が枠部材18に、反対側が延長竿12Bの先端部16に溶接或いはボルトにて固定されている。枠部材18には捕獲部材32が設けられており、この捕獲部材32は一側を開口し、底部側が半球状に形成された椀状に形成されている。椀状捕獲部材32は枠部材18の内側に取り付けられ、底部はシュート部材22内に収納され、枠部材18側を開口している。この枠部材18の開口は果実が通過可能な寸法の開口を有している。
【0024】
捕獲部材32は、竿部材12の直交方向両端が枠部材18に回動自在に固定されると共に、捕獲部材32の中心を通る両端が枠部材18に固定されている。これによって、捕獲部材32は、枠部材18内を回動自在に構成されている。また、枠部材18に設けられたシュート部材22(図1に図示)は、布或いはビニールシートなどにて果実が通過可能な円筒状に形成されると共に、略竿部材12同等或いはそれよりも長い長さを呈している。尚、18Aは枠部材18に捕獲部材32を回動自在に固定している固定ピンである。
【0025】
果実収穫部30には一対の切断部20、36が設けられている。一方の切断部20は枠部材18の開口縁に、他方の切断部36は捕獲部材32の開口縁に設けられている。係る、枠部材18の開口縁に設けた一方の切断部20は、固定ピン18Aの上側(竿部材12の離間側)に、捕獲部材32の開口縁に設けた他方の切断部36は、固定ピン18Aの下側(竿部材12側)に設けられている。
【0026】
そして、固定ピン18Aを中心に捕獲部材32を回動させると、捕獲部材32の開口縁に設けた切断部36は枠部材18の開口縁に設けた切断部20に噛み合う。この噛み合いによって、果実50の果梗50A(図7に図示)を切断できるように構成されている。即ち、両切断部20、36にはギザギザに山、谷、山、谷と形成された尖った刃が複数設けられており、これらの刃は山から谷、谷から山の部分全体端部が果実50の果梗50Aを切断可能な鋭利な刃で形成されている。このように両切断部20、36に形成されたギザギザしたノコギリ状の刃全体で、剪定鋏のように果実50の果梗50Aを切断できるようになっている。尚、刃は枠部材18側の切断部20、或いは、捕獲部材32側の切断部36のどちらか一方だけに設けても差し支えない。この場合も両切断部20、36は剪定鋏のようになっており、一方の切断部と鋭利な刃とで果実50の果梗50Aを切断することができる。
【0027】
また、捕獲部材32にはワイヤー38が取り付けられており、このワイヤー38は捕獲部材32の上方端部(延長竿12Bの反対側)にボルト38Aにて固定(カシメ固定でも差し支えない)されている。ワイヤー38は捕獲部材32底部側(捕獲部材32の開口反対側となるシュート部材22側)を通り、捕獲部材32の下部から延長竿12B先端の取付部材13に固定された滑車13Aを介して後述する操作手段40に接続されている。この滑車13Aは、シュート部材22の反対側に所定寸法延在している。これによって、捕獲部材32の回転角度を増大し、両切断部20、36が確実に噛み合うようになっている。
【0028】
また、果実収穫部30にはトーションバネよりなる付勢部材33が取り付けられており、この付勢部材33の一方は枠部材18に、他方は捕獲部材32に支持されている。この付勢部材33は、捕獲部材32の切断部36を枠部材18の切断部20から常時離間する方向に付勢している。即ち、捕獲部材32は固定ピン18Aを回転軸にして回動し、付勢部材33によって凹部をシュート部材22の反対側に位置させている。これによって、枠部材18の開口と捕獲部材32の開口とが常時シュート部材22の反対側に開口するように構成している。
【0029】
そして、捕獲部材32に取り付けられたワイヤー38が引かれると、図4に示すように捕獲部材32の切断部36は矢印方向に回動して、枠部材18の切断部20に近接して行く(図5)。係る両切断部20、36間に果実50の果梗50Aがある場合は、両切断部20、36の刃によって果実50の果梗50Aを容易に切断することができる。この場合、両切断部20、36は山、谷、山、谷とギザギザした鋭利な刃を複数設けている。これによって、果梗50Aは何れかの刃の山から谷の方向に移動して行くので、軽い力で果梗50Aを切断することができる。また、果実50の果梗50Aを切断後、引かれたワイヤー38が弛められると、回動自在の捕獲部材32は勢部材33によって元に戻り、捕獲部材32の開口と枠部材18の開口とがシュート部材22の反対側に開口する。
【0030】
一方、前記竿部材12の基部14には、図6に示すように捕獲部材32を回動操作させるための操作手段40が設けられており、この操作手段40には前記ワイヤー38が接続されている。即ち、捕獲部材32に固定されたワイヤー38は、取付部材13の滑車13Aを介して、取付部材13の下近傍で延長竿12B内に入る。そして、竿本体12Aの下端から竿部材12の外に引き出した後、操作手段40に設けた案内車42を介して、滑車44(本発明の巻取部に相当)に接続されている(図1に図示)。係るワイヤー38を竿本体12Aの下端から竿部材12の外に引き出すことにより、竿本体12A内に伸縮自在に挿入した延長竿12Bを伸縮した場合に、ワイヤー38は竿本体12A内に容易に出入りさせることができるので、伸縮させ難いという不都合を防止することができる。これにより、竿本体12A内に挿入された延長竿12Bを容易に伸縮することができる。
【0031】
また、操作手段40は操作力軽減手段を備えている。この操作力軽減手段は、前記ワイヤー38が巻き取られる直径約5cm〜約8cmと小径の滑車44と、操作アーム46とから構成されている。操作アーム46は、滑車44の半径よりも長さが長い寸法、好ましくは操作アーム46の長さ(図中矢印A範囲)を滑車44の半径の長さ(図中矢印B範囲)の1.5倍以上としている。これにより、操作力軽減手段は直接ワイヤー38を引いて果実50の果梗50Aを切断する場合よりも、果梗50Aを切断する操作力を軽減させることができるように構成されている。尚、操作手段40は支持アーム40Aによって竿部材12に固定されている。
【0032】
以上の構成で次に果実収穫装置10の使用例を説明する。まず、地上から直接手の届かない高木の果実50に合わせて竿部材12の延長竿12Bを伸縮調整し、固定する。そして、図7に示すように竿部材12の先端に設けた捕獲部材32と枠部材18との開口内に果実50を入れ、枠部材18の切断部20を果実50の果梗50Aに合わせる。
【0033】
次に、枠部材18の切断部20を果実50の果梗50Aに合わせた状態で、操作アーム46を矢印方向(図6に図示)に操作すると、捕獲部材32の上端に固定されたワイヤー38が引かれ、これによって捕獲部材32は固定ピン18Aを回転軸にして図8矢印方向に回動して行く。更に操作アーム46が図6矢印方向に操作されると、捕獲部材32の切断部36は枠部材18の切断部20と噛み合う(図9)。これによって、前述した如き、両切断部20、36に設けた鋭利な刃によって果実50の果梗50Aが切断される。係る捕獲部材32を椀状に形成しているので、切断部36で果実50を傷付けることなく捕獲部材32で果実50を優しく包み込むように切断部36を回動させることができる。
【0034】
このとき、回動した捕獲部材32の底部は枠部材18の開口側(シュート部材22の反対側)に位置して、捕獲部材32の開口は枠部材18の開口を介してシュート部材22内と連通する。これによって、高木から切断された果実50は、シュート部材22内に収納されると共に、複数の果実50をシュート部材22内に収穫することができる。そして収穫した果実50はシュート部材22の端部から取り出される。このとき、シュート部材22の端部を地面より離間させた状態で当該シュート部材22を弛ませると共に、弛ませた部分が地面に接触しないようにしておけば、シュート部材22内の果実50が直接地面に落下してしまうのを防止することができる。これにより、地面に接触した衝撃で果実50が汚れたり、割れたり傷付いてしまう等の不都合を防止することができる。
【0035】
このように、捕獲部材32の底部側を常にシュート部材22側に位置して枠部材18の一側方向(シュート部材22の離間側)を開口すると共に、操作手段40により回動されて当該捕獲部材32の切断部36が枠部材18の切断部20と噛み合うようにしているので、捕獲部材32内に果実50を収納した後、操作手段40を操作すれば、捕獲部材32の切断部36と枠部材18の切断部20との間で果実50の果梗50Aを切断することができる。これにより、果梗50Aを切断した果実50をシュート部材22内に収納することができる。従って、例えば高木等の手が届かないところの果実50が直接地面に落下して損傷してしまうのを防止することができ、無傷で収穫することが可能となる。
【0036】
特に、竿部材12を伸縮自在に構成しているので、竿部材12を伸張させれば手が届かない高木に成っている果実50を容易に収穫することが可能になると共に、竿部材12を伸縮させれば手が届く低木の果実50も収穫することができる。これにより、例えば従来トゲで手が傷付き易かった柚や夏みかん、或いは、梅などの収穫でも手に傷付くことなく収穫することができる。
【0037】
また、両切断部20、36の少なくとも一方をノコギリ状の鋭利な刃としたので、果実50の果梗50Aを刃の先端から奥の方に移動させることができる。これにより、果実50の果梗50Aが刃の先端から奥の方に斜めに移動して行くので、果実50の果梗50Aを容易に切断することが可能となる。従って、極めて軽い操作力で果実50の果梗50Aを切断し、果実50を収穫することができる。
【0038】
また、捕獲部材32と操作手段40とをワイヤー38にて接続すると共に、当該操作手段40には操作力軽減手段を設け、この操作力軽減手段をワイヤー38が巻き取られる小径の滑車44と、この滑車44の半径よりも長い操作アーム46とにより構成している。これにより、操作アーム46を小さな操作力で操作するだけで、大きな回転力で捕獲部材32を回動させることができ、捕獲部材32の切断部36に強力な切断力を発生させることができる。従って、果実50の果梗50Aを軽い操作力で切断して果実50を収穫することができる。
【0039】
特に、操作アーム46の長さを、滑車44の半径の1.5倍以上としているので、果実50の果梗50Aを直接切断する場合に対して1/1.5以下の軽い操作力で果実50の果梗50Aを切断することができる。これにより、女性などの手の力が弱い人であっても、操作アーム46を容易に操作することができるので、高木等の手が届かないところの果実50の果梗50Aを軽い力で切断し、果実50を収穫することができる。従って、果実収穫装置10の利便性を極めて向上させることができるようになる。
【実施例2】
【0040】
次に、図10には本発明の他の実施例の果実収穫装置10の操作手段40(操作力軽減手段)を示している。該果実収穫装置10は、前述の実施形態と略同じ構成を有している。以下、異なる部分について説明する。尚、前述の実施の形態と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。果実収穫装置10の操作手段40(操作力軽減手段)は、操作アーム46を、滑車44の半径の3倍以上の長さに構成している。
【0041】
詳しくは、操作アーム46の長さ(図中矢印AA範囲)を滑車44の半径の長さ(図中矢印BB範囲)の3.0倍以上としている。該操作アーム46を図中矢印方向に回動することによって、滑車44を複数回回動可能に構成されている。即ち、付勢部材33にて開口している捕獲部材32の切断部36は、操作アーム46が一回転されると枠部材18の切断部20側に約1/3回転接近し、3回転すると両切断部20、36が噛み合うようになっている。これにより、前述の操作力軽減手段でワイヤー38を引いて果実50の果梗50Aを切断する場合よりも、更に果梗50Aを切断する操作力を軽減させている。尚、46Aは操作アーム46を容易に回動させるための取っ手である。
【0042】
このように、操作アーム46の長さを、滑車44の半径の3.0倍以上とすることにより、果実50の果梗50Aを直接切断する場合に対して1/3.0以下の軽い操作力で果実50の果梗50Aを切断することができる。これにより、女性などの手の力が弱い人であっても、操作アーム46を軽く操作することができるので、高木等の手が届かないところの果実50の果梗50Aを更に軽い力で切断し、果実50を収穫することができる。従って、果実収穫装置10の利便性を極めて向上させることができるようになる。
【0043】
尚、実施例では操作アーム46の長さを、巻取部(滑車44)の半径の1.5倍以上としたが、果実50の果梗50Aを軽い操作力で切断できれば、操作アーム46の長さは滑車44の半径より長ければ、滑車44の半径の1.5倍以上より短くても、1.5倍以上であっても差し支えない。
【0044】
また、果実収穫装置10は上記各実施例のみに限定されるものではなく、この発明の趣旨から逸脱しない範囲で寸法や形状など各種の変更を行っても本発明は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例を示す果実収穫装置の側面図である(実施例1)。
【図2】本発明の果実収穫装置を構成する果実収穫部の正面図である。
【図3】同図2の果実収穫装置の果実収穫部の側面図である。
【図4】捕獲部材の切断部を枠部材の切断部側に回動させている状態を示す果実収穫部の側面図である。
【図5】同図4の捕獲部材の切断部が枠部材の切断部に噛み合う状態を示す果実収穫部の側面図である。
【図6】本発明の果実収穫装置を構成する操作手段の側面図である。
【図7】果実を収穫するため、枠部材の切断部を果実の果梗に合わせた状態を示す果実収穫部の側面図である。
【図8】同図7の状態で捕獲部材を回動させている状態を示す果実収穫部の側面図である。
【図9】両切断部で果実の果梗を切断した状態を示す果実収穫部の側面図である。
【図10】本発明の果実収穫装置を構成するもう一つの操作手段の側面図である(実施例1)。
【符号の説明】
【0046】
10 果実収穫装置
12 竿部材
12A 竿本体
12B 延長竿
13 取付部材
18 枠部材
20 切断部
22 シュート部材
30 果実収穫部
32 捕獲部材
33 付勢部材
36 切断部
38 ワイヤー
40 操作手段
44 滑車
46 操作アーム
50 果実
50A 果梗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮自在の竿部材と、
該竿部材の先端部に設けられ、少なくとも果実が通過可能な開口寸法を有する枠部材と、
該枠部材の一側に設けられ、前記果実が通過可能なシュート部材と、
前記枠部材内に回動自在に取り付けられ、前記果実を収納可能な寸法の椀状捕獲部材と、
前記枠部材の他側、及び、前記捕獲部材の縁部に設けられた切断部と、
前記竿部材の基部に設けられ、前記捕獲部材を回動操作するための操作手段とを備え、
前記捕獲部材は、常には前記シュート部材側に位置して前記枠部材の他側方向に開口すると共に、前記操作手段により回動されて当該捕獲部材の切断部が前記枠部材の切断部と噛み合うことを特徴とする果実収穫装置。
【請求項2】
前記両切断部の少なくとも一方をノコギリ状の刃としたことを特徴とする請求項1の果実収穫装置。
【請求項3】
前記捕獲部材と前記操作手段とをワイヤーにて接続すると共に、当該操作手段には操作力軽減手段を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2の果実収穫装置。
【請求項4】
前記操作力軽減手段は、前記ワイヤーが巻き取られる小径の巻取部と、この巻取部の半径よりも長い操作アームとにより構成されていることを特徴とする請求項3の果実収穫装置。
【請求項5】
前記操作アームの長さを、前記巻取部の半径の1.5倍以上としたことを特徴とする請求項4の果実収穫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−101775(P2006−101775A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293473(P2004−293473)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(504375455)
【Fターム(参考)】