説明

果実採取器

【課題】 果実に傷を付けず、果柄が確実に果樹から外せるものであって、しかも構造も簡単で取り扱いが容易な果実採取器を提供する。
【解決手段】 柄11と、柄11の先端11aに設けられ、果実21を収納する収納空間13が形成された採取部12とを具備する果実採取器10において、採取部12は、線条部材15が、両端15aが接近するようにして細長の輪状に曲折され、且つ輪状面が湾曲するように曲折された複数の保持部14を有し、複数の保持部14が、両端15aにおいて柄11の先端部11aに先端部11aを囲むようにして固定されることで、柄11の先端部11aの先方空間を囲むようにして、先端側がすぼまった収納空間13が形成され、隣接する保持部14同士が中途部で接触することにより、先端側に開放され、且つ接触部17に向けて徐々に間隔が狭くなる果柄挟み込み部16が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンゴ、梨、柿等の果実を採取する際に用いる果実採取器に関する。
【背景技術】
【0002】
リンゴ、梨、柿等の果実を収穫または摘果のために採取する場合、低所に結実しているものであれば人が手を伸ばしてそのまま採取することができるが、高所に結実しているものでは脚立を使用せざるを得なかった。
しかしながら、脚立を用いて果実を採取するには、脚立を持って果実が結実している場所へ移動しなくてはならず重労働であるため、従来より様々な果実採取器が考え出されている。
【0003】
以下、従来の採取器について説明する。
特許文献1に開示されている果実採取器は、棒状本杆の先端部に碗状体が分割されて設けられており、棒状本杆の下端部に設けられた操作レバーで碗状体の開閉が可能となっているものである。採取時には、操作レバーで碗状体で果実を把持し、棒状本杆を捻ることによって果柄を果樹から取り外すことができるとしている。
【0004】
また、特許文献2に開示されている果実採取器によると、パイプ杆の先端に設けられたフィンガ部によって果実を把持し、パイプ杆を捻ることによって果柄を果樹から取り外すことができる。この果実採取器では、フィンガ部を開閉可能にしているので、様々な大きさの果実を採取することができる。
【0005】
さらに、特許文献3には、パイプの先端に鉤状のカゴを設け、カゴでもぎ取った果実をパイプ内を落下させる果実採取器が開示されている。
【特許文献1】実開平6−23418号公報
【特許文献2】特開2000−354414号公報
【特許文献3】登録実用新案第3047656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に開示されたような果実採取器では、果実を把持して果実を捻ることによって、果実を果樹から取り外すようにしている。
しかし、このような果実採取器を用いて果実を果樹から取り外そうとすると、果柄が果樹から外れるのではなく、果柄が果実から外れてしまうこともあり、果柄がついたままの果実を確実に採取することができないおそれもあるという課題がある。
また、果実自体を強く把持する必要があるので、いくら果実に接触する部分に弾力性の有る部材を用いたとしても果実に必要以上の荷重がかかってしまい、果実の品質を損ねるおそれもあるという課題もある。
さらに、特許文献1や特許文献2に開示されたような果実採取器では、碗状体やフィンガ部を開閉させるための構成が必要なので、構造が複雑化してコストアップを免れることができず、また杆の重量が重くなるので、操作性も悪いという課題もある。
【0007】
また、特許文献3に開示されたような構成の果実採取器では、鉤状に形成されたカゴが果柄自体を挟んで果柄を捻ることができるので、果柄が付いたままの果実を採取することができ、また果実に必要以上の荷重がかかることもないと考えられる。
しかしながら、鉤状に形成されたカゴを果実に近づけていく場合に、鉤状の先端部が果実に触れて果実を傷つけてしまうこともあり、極めて慎重に採取を行なわなくてはならず、非常に使いづらいという課題がある。
また、この構成によれば、鉤状のカゴの隙間に果柄を挟んでいるが、確実に果柄を保持できているわけではないので、確実に果実の採取ができないおそれもある。
さらに、果実を落下させるためのパイプとなるとパイプの径もかなり大きいものとなるので、このようなパイプを直接手で持つこと自体困難であり、さらにこのようなパイプを持って果実に傷を付けないように高所になっている果実の採取を行なうことは極めて難しい。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは
果実に傷を付けず、果柄が確実に果樹から外せるものであって、しかも構造も簡単で取り扱いが容易な果実採取器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる果実採取器によれば、柄と、該柄の先端に設けられ、果実を収納する収納空間が形成された採取部とを具備する果実採取器において、前記採取部は、線条部材が、両端が接近するようにして細長の輪状に曲折され、且つ輪状面が湾曲するように曲折された複数の保持部を有し、該複数の保持部が、前記両端において前記柄の先端部に該先端部を囲むようにして固定されることで、柄の先端部の先方空間を囲むようにして、先端側がすぼまった前記収納空間が形成され、隣接する保持部同士が中途部で接触することにより、先端側に開放され、且つ該接触部に向けて徐々に間隔が狭くなる果柄挟み込み部が形成されていることを特徴としている。
【0010】
本発明による作用は以下の通りである。
すなわち本発明によれば、果実を採取する際に、採取者は柄を持って、保持部で囲まれた収納空間に果実を近づけていくと、下方に向けて徐々に隙間が狭くなるように構成されている果柄挟み込み部に果柄を容易に挟み込むことができる。この果柄挟み込み部は果実を収納する収納空間の周囲に複数設けられているので、どのような角度から果実採取器を対象となる果実へ近づけていっても、採取者は柄の向きをわずかに変更するだけで、果実へ果柄を確実に挟み込むことができる。
そして、操作者は、この段階で果実が収納空間内にほぼ位置していることを確認しつつ、柄を上方に押し上げるか、または柄を捻り、果柄を果樹から取り外す。
【0011】
ちなみに、果実がリンゴの場合には、果柄を上方に持ち上げれば簡単に果樹から取り外すことが知られている。したがって、下方に向けて徐々に隙間が狭くなっている果柄挟み込み部に果柄を進入させ、柄を上方へ持ち上げるだけで、果柄は自動的に果柄挟み込み部の隙間が狭い部分で確実に保持され、そして果柄が上方に持ち上げられるので、果実を強く把持しなくとも果樹からの取り外しは容易に行えるのである。
【0012】
また、収納空間の周囲壁面を構成する線条部材は、細長の輪状に曲折されているので、先端部が果実に接触してしまったとしても、果実を傷つけてしまうことはない。さらに、線条部材で囲まれた収納空間が形成されているので、果実の部材への接触面積が小さく、果実の品質を下げることなく採取可能である。なお、果実はほぼ球状ではあるが、時折いびつな形状のものも存在する。このようないびつな果実を採取する場合には、いびつに出っ張った部分等が、各保持部の輪状面の中央の空間から収納空間外へ突出することも可能であるので、いびつな形状であっても傷を付けずに確実に採取できる。
【0013】
また、前記各保持部の先端は、前記収納空間の内側に向くように折り曲げられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、果実採取後、柄を傾けた場合であっても果実が折り曲げた部分に引っかかるので、果実が収納空間からこぼれ落ちるのを防止することができる。
【0014】
さらに、前記各保持部の接触部は、隣接する保持部に対して重なり合うようにして接触していることを特徴としてもよい。
この構成によれば、収納空間内部から径方向に突出する果柄が、果柄挟み込み部内に進入していくと、果柄挟み込み部を形成している線条部材が重なっていることから、果柄は収納空間の周方向に向けて曲げられることとなる。このため、果柄挟み込み部による果柄の挟み込みが確実なものとなり、果柄が果柄挟み込み部から外れてしまうようなことを防止することができる。
【0015】
さらに、前記各保持部は、前記接触部よりも柄の先端に向けては、隣り合う保持部の線条が互いに1本の線条となるように構成されていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の果実採取器によれば、果実を傷つけることなく、簡単な操作で果実を果樹から確実に取り外すことができる。また、簡単な構成なので全体の軽量化が図れ、操作も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を、図面に基づいて説明する。
果実採取器10は、柄11と、柄11の先端11aに設けられた採取部12とから構成されている。
採取部12には、内部に果実を収納可能な形状であって、先端側がややすぼまった形状の収納空間13が形成されている。収納空間13は、線条部材15を細長の輪状に折り曲げ、且つそれぞれが外側(収納空間外方)に突出するように湾曲するように形成(図4参照)した保持部14を、柄11の断面の円周上に複数配置する(図2参照)ことによって形成されている。
線条部材15としては、直径2mm程度の針金等の金属製の線条を用いると加工しやすく且つ丈夫であるので好適である。
【0018】
線条部材15を折り曲げて形成した保持部14は、線条部材15を折り曲げた際の両端部15a,15aの部分が柄11の先端11aに固定される。固定自体はどのような方法で行なっても良い。本実施例では、ビニールテープ等を巻き付けて保持部14を柄11に取り付けている。
このようにして、保持部14の長軸方向Aの曲線状の端部が収納空間13の開口部側に位置するように配置される。
また、本実施例では、保持部14を6つ配置することによって、採取部12を形成している。
【0019】
また、各保持部14の輪状面(細長の輪状を正面から見た面)が、収納空間13の外壁面を構成するように配置される。
輪状面は、その周囲にのみ線条部材15が設けられ、この周囲以外の全体は開口するように設けられているので、果実への接触面積を小さくすることができ、またいびつな形状の果実を収納した場合であっても輪状面から収納空間13の外方へいびつな部分を突出させておくことができる。
【0020】
図5に保持部同士の連結の様子を輪状面の正面からみたところを示し、図6に図5の連結部分を輪状面の側面からみたところを示す。
ここに示すように、保持部14は、隣接する線条部材15同士の間では、収納空間13の径方向に重なり合うように設けられている。
また、図5の右に位置する線条部材15xは、図5の左に隣接する線条部材15yに対しては径方向外側に位置し、線条部材15xの右に隣接する線条部材(図示せず)に対しては径方向内側に位置するように設けられている。したがって、円周上に配置された複数の線条部材15のうち、いずれかの線条部材15だけが収納空間の内側に入り込んでいたり、収納空間の外側に突出していたりというようなことがなく、強度的にも極めて安定している。
【0021】
保持部14の先端から柄11の先端方向に向けて、隣接する保持部14同士の間の隙間において、採取対象となる果実の果柄を挟み込む果柄挟み込み部16が形成されている。果柄挟み込み部16は、収納空間13の先端側に向けて開放され、隣接する保持部14同士が接触している接触点17に向けて徐々に間隔が狭くなるようにして形成されている。
本実施例では保持部14を6つ設けているので、果柄挟み込み部16は収納空間13の周囲6箇所に設けられていることとなる。
【0022】
隣接する保持部14の接触点17よりも下方(柄11の先端11a方向)は、線条同士が一体となるように形成している。このようにすることで、収納空間の強度をさらに好適に確保できる。
一体となるように形成するには、2本の線条をビニールテープ等を巻き付けて一体にして形成してもよいし、溶接等で固定して一体としてもよい。
【0023】
果柄挟み込み部の作用を図7,図8に基づいて説明する。
上述したように、保持部14は、隣接する保持部14との間では収納空間13の径方向に重なり合っているので、収納空間13に収納した果実21の果柄20を果柄挟み込み部16に進入させると、進入当初は収納空間13の径方向に突出していたとしても、果柄挟み込み部16が徐々に収納空間13の周方向に向くようになるので、果柄20も徐々に収納空間の周方向を向くように曲げられる(図7の20aから20c参照)。こうして曲げられた果柄20は、果柄挟み込み部16による保持が確実なものとなる。
【0024】
なお、柄11は、例えばアルミ製の単なる丸棒や竹の棒などを用いることができ、果樹の高さに合わせて数十cm〜数mの長さまで適当な長さのものを選択することができる。ただし、操作性を良くするために、軽量な材質ものを選択するとよい。
【0025】
次に、上述してきた果実採取器の操作方法について説明する。
採取者は、柄11を持って採取しようとする果実に採取部12を下方から徐々に近づけていき、果実21を収納空間13の開口部付近または開口部から収納空間13内部にまで進入させる。そして、採取者は柄11を操作して、果柄20を複数箇所に設けられた果柄挟み込み部16のうちいずれかの果柄挟み込み部16に進入させる(図9)。
【0026】
図7,図8によって説明したように、果柄20がいずれかの果柄挟み込み部16に進入していくと、果柄20は徐々に線条部材15の間の隙間に挟み込まれ、また隙間の向きも上記のように徐々に収納空間13の周方向を向くようになっているので、果柄20も徐々に収納空間の周方向に曲げられる。こうして果柄20は果柄挟み込み部16に確実に保持される。
【0027】
果実21がリンゴの場合、採取者は、果柄20を果柄挟み込み部16に進入させつつさらに柄11を上昇させることで、果柄20を果樹に対して上方に引き上げ、果柄20を果樹から外す。
なお、果柄20を上方に引き上げただけでは果樹から外れない果実の場合には、果柄20を果柄挟み込み部16に挟み込んだ後に、採取者が柄11を捻ったり、柄11を下方に引き下げて、果柄20を果樹から外す動作を行なう。
【0028】
果樹から果柄20が外れると、果実21は収納空間13内に収納される。
採取者は、柄11を徐々に下方に下ろし、収納空間13内の果実21を取り出す。
これで、1つの果実の採取は終了する。採取者は他の果実の採取をするときは、上述した動作を再び繰り返す。
【0029】
以下、他の実施例について説明する。
図10に示す実施例では、保持部14の先端部14aをさらに収納空間13の内側に突出するように折り曲げるように形成している。図10では、1つの保持部14を側面から見たところしか図示していないが、採取部12全体として全ての保持部14の先端部14aが内側に折り曲げられているものとする。
このように保持部14の先端部14aを収納空間13の内側に折り曲げたことによる作用は、以下の通りである。
すなわち、果実採取後に柄11を徐々に下方に下ろす際に、収納空間13を水平近くまで寝かせてしまった場合でも、果実21が折り曲げた先端部14a部位に引っかかるので、果実21が収納空間13からこぼれ落ちるのを防止することができる。
【0030】
なお、上述した両実施例では、保持部14の数を6つにした場合について説明したが、保持部14の数は6つに限定されるものではない。
例えば、5つの保持部を円周上に配置して収納空間13を形成してもよいし、4つの保持部を円周上に配置して収納空間を形成してもよい。さらに、保持部の数は、ここに挙げた4つ,5つ,6つに限られるものではない。
【0031】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の果実採取器の全体構成を示す説明図である。
【図2】果実採取器を先端側からみた所を示す説明図である。
【図3】採取部の正面から見た所を示す説明図である。
【図4】線条部材の折り曲げについて説明した説明図である。
【図5】果柄挟み込み部を正面(収納空間径方向)から見た所を示す説明図である。
【図6】果柄挟み込み部を側面(収納空間周方向)から見た所を示す説明図である。
【図7】果柄の挟み込みの様子について説明する説明図である。
【図8】図7の果柄の挟み込みを側面から見た所について説明する説明図である。
【図9】果実を採取する際の説明図である。
【図10】保持部の先端部を内側に折り曲げた実施例の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
10 果実採取器
11 柄
12 採取部
13 収納空間
14 保持部
15 線条部材
16 果柄挟み込み部
17 接触点
20 果柄
21 果実

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄と、
該柄の先端に設けられ、果実を収納する収納空間が形成された採取部とを具備する果実採取器において、
前記採取部は、
線条部材が、両端が接近するようにして細長の輪状に曲折され、且つ輪状面が湾曲するように曲折された複数の保持部を有し、
該複数の保持部が、前記両端において前記柄の先端部に該先端部を囲むようにして固定されることで、柄の先端部の先方空間を囲むようにして、先端側がすぼまった前記収納空間が形成され、
隣接する保持部同士が中途部で接触することにより、先端側に開放され、且つ該接触部に向けて徐々に間隔が狭くなる果柄挟み込み部が形成されていることを特徴とする果実採取器。
【請求項2】
前記各保持部の先端は、前記収納空間の内側に向くように折り曲げられていることを特徴とする請求項1記載の果実採取器。
【請求項3】
前記各保持部の接触部は、隣接する保持部に対して重なり合うようにして接触していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の果実採取器。
【請求項4】
前記各保持部は、前記接触部よりも柄の先端に向けては、隣り合う保持部の線条が互いに1本の線条となるように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項記載の果実採取器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−121955(P2006−121955A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313269(P2004−313269)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(304050484)
【Fターム(参考)】