説明

果実袋の製造方法及びその方法による果実袋

【課題】果実の糖度向上及び病中害に対する耐性を有し、カルシウムを含む無機物成分が果実の生長時に効率的に転移されるようにし、袋が果皮にくっつかないように改善果実袋の製造方法を提供する。
【解決手段】原紙にワックスをコーティングしてワックス層を形成する果実袋の製造方法において、ワックスを原紙層20にコーティングしてワックス層30を形成したあと、無機物成分のスプレー段階で、マグネシウム、カリウム、リン、カルシウム、チタニアなどの各種天然無機物成分が含有された七宝石、ゼオライト、麦飯石、貝殻のうち、少なくともいずれか一つを選択して0.1μm〜1mmの大きさで粉砕した粉末をワックス層上に0.1g/m〜4g/mで均一に塗布して無機物成分層40を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実袋の製造方法に係り、特に、果実の糖度向上及び病虫害に対する耐性を有するように、カルシウムを含む無機物成分が果実の生長時に效率的に転移されるようにし、袋が果皮にくっつかないように改善した果実袋の製造方法に関するものである。
【0002】
本発明はまた、上記の果実袋の製造方法によって製造された果実袋に関するものである。
【背景技術】
【0003】
果実袋は、防菌及び防虫の効果とともに、遮光性、防水性、透気性を調節して果実の外観まで影響を及ぼし、防菌及び防虫処理が行われた果実袋をかぶせて栽培すると、農薬の散布回数を減らすことができ、果実に農薬が直接つかないので果実の農薬汚染を予防することができ、袋の内部への害虫や菌の浸透を防ぐことができて、以前から使われてきた。
【0004】
現在、果実袋の製造方法は大きく3つに区分することができ、袋のコーティング及び薬剤処理方法に応じて果実の品質に及ぼす影響が大きくなる。
【0005】
第一、パラフィンワックスエマルジョンにメタノールを希釈して袋原紙にコーティングしたあとに乾燥するものであって、これは、袋が農薬と雨水によって汚染されるのを最小化するために、紙の性質(柔らかさ)を最大限維持させるコーティング方法である。しかし、耐久性が弱くて集中豪雨時に果実にくっついて袋が破損され、果実に病害虫が発生するという問題が生じることがある。
【0006】
このような例の一つとして、韓国登録特許第0463843号(2004.12.18)に開示されたワックスコーティング方法がある。前記特許では、カキ殻から抽出した液状カルシウム溶液、液状パラフィンワックス、機能向上補助剤及び有機溶媒などの原料を用いて製造された組成物を、果実袋の内紙の内側にコーティングして果実にかぶせるカルシウム含有袋を提供することが開示されている。しかし、この方法も集中豪雨時に袋が果実にくっついて袋が破損される問題点と、これによって病害虫の被害が発生するという問題点がある。
【0007】
第二、耐久性を補完するために、混合油(植物性乾性油)と少量のフッ素系撥水剤を添加した基材に石油で希釈して乾燥した油性撥水紙を使用するものがある。これは、袋が農薬と雨水によって汚染されるのを最小化させ、通気性が確保され、油成分が有する固有の病害虫治療がなされることによって使用頻度が高まっている。しかし、油処理の強弱が調節されない場合、果実の表面にむら及び壊死現象が発生して、果実の商品性が低下するという問題点がある。
【0008】
第三、パラフィンワックスを沸騰させて袋原紙にコーティングしたあとに冷却するワックスコーティング方法であって、このような前記ワックスコーティング方法は、袋が農薬と雨水による汚染を最小化する点において有利であり、集中豪雨時に袋が垂れ下がったり、破れたりする問題点は補完されるが、コーティング液が過度な場合、通気性が低下し、袋内の高温多湿によって病虫害が発生するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許第0463843号(2004.12.18)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記した従来の果実袋の製造方法による問題点を解決するためのもので、果実袋にワックスをコーティングした後、その表面にマグネシウム、リン、カルシウム、カリウム、チタニアなどの無機物成分を含有する鉱物質を均一に分散させて、果実の生長時に鉱物質に含有された無機物成分が效率的に転移され得るようにした機能性果実袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明によって、原紙にワックスをコーティングしてワックス層を形成する果実袋の製造方法において、ワックスを原紙層にコーティングしてワックス層を形成したあと、無機物成分のスプレー段階で、マグネシウム、カリウム、リン、カルシウム、チタニアなどを含んだ天然無機物成分が含有された七宝石、ゼオライト、麦飯石、貝殻のうち、少なくともいずれか一つを選択して0.1μm〜1mmの大きさで粉砕した粉末をワックス層上に0.1g/m〜4g/mで均一に塗布して、生長中に果実に転移される無機物成分層を形成することを特徴とする果実袋の製造方法が提供される。
【0012】
前記無機物成分の粉末としては、七宝石と貝殻類を体積割合で60〜80%、麦飯石とゼオライトを20〜40%混合して、0.1μm〜1mmの大きさで粉砕したものを使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、果実栽培用果実袋の原紙にワックスエマルジョンでコーティング処理したあと、その表面にマグネシウム、カルシウム、カリウム、リン、チタニアなどの無機物成分を含有した鉱物質粉末を均一に塗布し安定化させた果実袋は、処理面に塗布された無機物成分が雨や水分によって溶けて果実に転移されて果実の商品性が向上され、ワックス層の表面に粉末状態で塗布された無機物成分層が果実の表面に接触されて通気性が良好になり、従来の果実袋において通気性が低下され、袋内の高温多湿によって病虫害が発生されるという問題点と、果実の表面に壊死現象が発生するという問題点とも解決される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による栽培用果実袋の製造方法を示す概略的な構成図である。
【図2】本発明による栽培用果実袋にワックス(パラフィンワックス、オイルエマルジョン、パラフィンワックスエマルジョン)処理後にマグネシウム、リン、カルシウム、カリウム、チタニアなどの無機物成分を塗布して処理した果実袋の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の第1の実施例を図示した添付の図面を参考にして、本発明をより詳細に説明する。
【0016】
図1に示された本発明の果実袋の製造方法を実施するための製造装置において、ロール状態で供給される原紙1は、まずワックスコーティング段階で、支持ローラ2とワックスコーティングローラ3を通りながらワックスが原紙1にコーティングされる。次に、無機物成分のスプレー段階で、無機物成分の投入口6から供給される粉末状の無機物成分を、スプレー機4から原紙層20にコーティングされたワックス層30上に均一に噴射して無機物成分層40が形成される。このとき、スプレー機4の下側に集塵機5が具備されて、噴射された無機物成分のうち塗布されないものを集塵して除去する。その次に、原紙層20にコーティングされたワックス層30及びスプレーによって形成された無機物成分層40を安定化させるための安定化段階で、ワックスコーティングされ、無機物成分層が形成された原紙は、スチームローラ7、8と冷却ロール9、10を順に通過して、本発明による果実袋が、図2に示すように、原紙層20上に順にワックス層30及び無機物成分層40が形成されて製造される。
【0017】
前記ワックス層30の形成に使用するワックスは、一般的にパラフィンワックス、ワックスエマルジョンとして市販されるものを使用する。
【0018】
前記無機物成分のスプレー段階で噴射される無機物成分は、例えば、マグネシウム、カリウム、リン、カルシウム、チタニアなどの各種天然無機物成分が含有された七宝石、ゼオライト、麦飯石、貝殻などの材料を少なくとも一つを選択して0.1μm〜1mmの大きさで粉砕したものを使用する。七宝石と貝殻類を体積割合で60〜80%、麦飯石とゼオライトを20〜40%混合して使用することが好ましい。
【0019】
また、無機物成分のスプレー段階で、無機物成分は原紙のワックス層上に0.1g/m〜4g/mで均一に噴射して塗布することが好ましい。
【0020】
本発明による果実袋の製造方法と、従来技術において原紙にワックス(パラフィンワックス、オイルエマルジョン、パラフィンワックスエマルジョン)コーティングなどに農薬、抗菌性または防虫性物質を混合したり、水溶性カルシウムを混合して、紙にコーティング処理して生産する従来の果実袋との差異点は、無機物成分をワックスに混合してコーティングする代わりに果実袋用原紙にコーティングされたワックス層上に無機物を所定の大きさで粉砕した粉末状態で均一に塗布することにより、従来のワックスに無機物が均一に混合されないことによる問題点及び困難さを解決し、また、無機物成分が果実の表面に接触されるようにして、果実の生長中にカルシウムとその他の無機物が果実に転移される効率が改善されるという点にある。
【0021】
本発明によって製造された農業用果実袋を使用した結果、無機物成分が果実にどの程度転移されるかに対する試験を、下記のように実施した。
【実施例】
【0022】
〔実施例1〕
本発明によって栽培用果実袋に既存のワックスをコーティングしたあと、七宝石を0.1μm〜1mmの大きさで粉砕した粉末を1g/mでワックス層の表面にスプレーして、果実袋を製造してリンゴの栽培に適用した。
【0023】
また、比較例1は、通常果実の栽培に使用される果実袋のうち、ワックスコーティング処理したリンゴ袋を使用したものであり、比較例2は、農薬で分類され、Ca++水和剤として知られたKrafnonを使用したリンゴ袋を使用した。Krafnonは、超微粒子の炭酸カルシウムが95%、界面活性剤が5%で構成されているもので知られている。
【0024】
袋の使用時期は、リンゴに110日をかぶせて栽培し、そのうち10個のリンゴから果皮を分離したあと、果皮に付着された果肉を最大限除去したあとに105±5℃のドライオーブン(dry oven)で36時間乾燥させた。
【0025】
乾燥させた果皮3gをるつぼに定量したあと、600℃の灰化炉で6時間処理して残った重さを測定して灰分を定量した(KS M 7022)。
【0026】
果皮の無機元素の分析は、慶北大学校内の基礎科学研究院大邱センターにあるX−線蛍光分光器(X−ray Fluorescence spectrometer,PW2400,PHILIPS)を用いて回収された果皮灰分の無機元素の含量を測定して、その平均値を下記の表1に表示した。
【0027】
【表1】

【0028】
上記の表1で、リンゴの果皮の灰分、無機元素及び無機酸化物の含量を測定した結果、灰分の含量は、七宝石処理の場合において比較例1及び比較例2よりも0.1%以上増加したことが分かる。
【0029】
無機元素の含量では、七宝石粉末を果実袋の製造時にワックス層上に塗布した果実袋を使用した場合、無機元素の含量が全般的に増加されることから、本発明によって七宝石粉末を処理した果実袋の使用で、果実袋に塗布された七宝石粉末から無機物成分がリンゴ袋に接触されたリンゴへ転移されたことを推定することができ、特にカルシウムの転移が著しかった。
【0030】
これによって、特に人間において主に骨を構成するカルシウムのリンゴ袋からリンゴへの転移効率が向上され、リンゴ袋の機能性が改善されることを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、従来の果実袋は、袋が農薬と雨水によって汚染されるのを最小化させるためにコーティングする方法であって、コーティングを行う場合、集中豪雨時に袋が垂れ下がったり、または破れるという問題点は補完されるが、コーティング液を多くつける場合は通気性が低下し、袋内の高温多湿によって病虫害及び商品性が低下するという問題点を改善することができ、また、果実に無機元素、特にカルシウムの転移が従来の果実袋に比べて優れるので高品質の果実生産に適している。
【符号の説明】
【0032】
1 原紙
2 支持ローラ
20 原紙層
30 ワックス層
40 無機物成分層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙(20)にパラフィンワックスとワックスエマルジョンのうちから選択されたいずれか一つのワックスをコーティングしてワックス層(30)を形成して製造する果実袋の製造方法において、前記原紙(20)に形成されたワックス層(30)上に、無機物成分のスプレー段階で、マグネシウム、カリウム、リン、カルシウム、チタニアを含んだ天然無機物成分が含有された七宝石、ゼオライト、麦飯石、貝殻のうち、少なくともいずれか一つを選択して0.1μm〜1mmの大きさで粉砕した粉末を0.1g/m〜4g/mで均一に塗布して無機物成分層(40)を形成することを特徴とする、果実袋の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の果実袋の製造方法によって製造された果実袋。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−50433(P2012−50433A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179678(P2011−179678)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(511203499)ザ コリア コーポ−アグロ インコ−ポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】The Korea Coop−agro Inc.
【住所又は居所原語表記】29−134,Bolli−ri,Nongong−eup,Dalseong−gun,Daegu,Republic of Korea
【Fターム(参考)】