説明

枠付き上下鋳型の枠合せ装置

【課題】造型された枠付き上下鋳型の枠合せ時における枠合せ不良の検出精度を向上させて、見切り面からの湯こぼれを防止することができる枠付き上下鋳型の枠合せ装置を提供する。
【解決手段】立設する4本の支柱の上方に載置される昇降シリンダと、該昇降シリンダのロッド先端に固定される昇降テーブルおよび該昇降テーブルの下部に設けられる、前記枠付き上鋳型の上枠の両端部に形成される突起部の上下両面に加工されている上面加工面および下面加工面のうち下面加工面に搬送ローラを着脱可能にする支持機構を具備する昇降部と、前記昇降部に前記枠付き上鋳型の上面加工面に向けて少なくとも4個配置されるとともに該上面加工面の変位を測定する変位センサと、該枠付き上鋳型を上昇させた状態と枠合せ後の状態における該上面加工面の変位をそれぞれ測定した測定値とあらかじめ設定されている枠合せ不良条件に基づいて枠合せ不良の判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は枠付き上下鋳型の枠合せ装置に関する。さらに詳しくは、造型された枠付き上下鋳型の枠合せ時における枠合せ不良を検出する枠付き上下鋳型の枠合せ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、造型機により造型された枠付き上鋳型と枠付き下鋳型は、ローラーコンベアに交互に配置して搬送されるとともに、この搬送途中に枠付き上鋳型を反転させたのち、上下鋳型を枠合せして注湯機により注湯される。そして、この枠付き上下鋳型を枠合せする装置としては、種々の装置がある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、最近のニアネットシェイプや、鋳物素材の精度向上、抜き勾配の縮小、鋳バリ無し化の推進により、エンジンのシリンダーヘッドのように複雑な形状の中子の大きな幅木を使用する鋳型を枠合せする時、中子の幅木と鋳型との凹凸部のはめあいがきつい場合、図9に示されるように枠付き上鋳型101が枠付き下鋳型102に対して傾いた状態または図10に示されるように枠付き上鋳型101が枠付き下鋳型102に密着せずに浮き上がった状態で枠合せされることがある。なお、図9において、符号103は中子であり、符号104は幅木である。また、図中符号δ1は正規の枠合せ状態の砂付き高さの設定値よりも小さい高さであり、符号δ2はこの砂付き高さの設定値よりも大きい高さである。
【0004】
このような枠合せ不良である枠付き上鋳型101が枠付き下鋳型102に対して傾いた状態や浮き上がった状態の場合、注湯時に、上下枠合せ面(見切り面)からの湯こぼれが発生し、鋳物素材の不良が発生する。
【0005】
そこで、枠合せ不良を検出して、見切り面からの湯こぼれを防止する枠合せ装置として、合せた上下枠間にセンサを配置して、上枠と下枠の相対距離を測定することが確実で望ましいが、センサ設置スペースが確保しにくいとともに、精度を向上させるために多くのセンサが必要となり、大きな設備費用が発生するという問題がある。
【0006】
これに対して、図11〜12に示されるように、4本の支柱105に取付け部材(図示せず)を介して変位センサ106を下方に45°傾斜させてそれぞれ取付け、枠付き上鋳型101を枠付き下鋳型102に枠合せる時に、上枠107の両側端に形成される突起部108の上下両面に加工されているローラ転走のための加工面のうち、上面加工面109のレベルの変化を測定する枠合せ装置110が考えられる。
【0007】
この枠合せ装置110における枠合せ不良の検出は、前記上面加工面109の目標レベルの目標値をあらかじめ設定しておき、その設定値に対する実測値の差が、あらかじめ設定したしきい値を超えた場合に枠合せ不良としている。
【0008】
【特許文献1】実開平6−34846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記枠合せ装置の場合、枠付き上鋳型101を枠合せステーションに搬入する時、枠付き上鋳型101を上昇させ、待避させる必要があるため、上面加工面109のレベルの変位を垂直に測定することができず、図12に示されるように、斜め方向から測定した測定値Lm1を垂直方向からの換算値Lm2に演算しなければならない。
【0010】
このため、4個の変位センサ106の取付け位置の精度や、取付け部の剛性、センサの交換時の再現性の維持は、上面加工面のレベルの測定精度に影響を及ぼす重要な要因であるが、前記変位センサ106の取付け作業やメンテナンス作業による取付け位置のばらつきは避けられないため、枠合せ不良検出の精度を向上させることが難しい。
【0011】
そこで、本発明は、叙上の事情に鑑み、造型された枠付き上下鋳型の枠合せ時における枠合せ不良の検出精度を向上させて、見切り面からの湯こぼれを防止することができる枠付き上下鋳型の枠合せ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の枠付き上下鋳型の枠合せ装置は、造型機により造型された枠付き上鋳型と枠付き下鋳型をローラコンベヤに交互に配置して1枠送りされる第1搬送ラインに配設され、該枠付き上鋳型と枠付き下鋳型を枠合せたのち、注湯機への第2搬送ラインに送り出す枠付き上下鋳型の枠合せ装置において、立設する4本の支柱の上方に掛け渡される中央フレームに下向きに載置される昇降シリンダと、該昇降シリンダのロッド先端に固定される昇降テーブルおよび該昇降テーブルの下部に設けられる、前記枠付き上鋳型の上枠の両端部に形成される突起部の上下両面に加工されている上面加工面および下面加工面のうち下面加工面に搬送ローラを着脱可能にする支持機構を具備する昇降部と、前記昇降部に前記枠付き上鋳型の上面加工面に向けて少なくとも4個配置されるとともに該上面加工面の変位を測定する変位センサと、該枠付き上鋳型を上昇させた状態と枠合せ後の状態における該上面加工面の変位をそれぞれ測定した測定値とあらかじめ設定されている枠合せ不良条件に基づいて枠合せ不良の判定を行う枠合せ不良検出手段とを備えてなることを特徴としている。
【0013】
また、前記枠合せ不良条件が、前記枠付き上鋳型を上昇させた状態と枠合せ後の状態における該上面加工面の変位をそれぞれ測定した測定値の最大値と最小値の差から枠合せ後の上枠の傾きを演算することを含んでいる野が好ましい。
【0014】
また、前記昇降シリンダが前記昇降部の変位を検出可能な検出器を付設しているのが好ましい。
【0015】
また、前記枠合せ不良条件が、前記検出器により枠合せ時の前記搬送ローラの途中停止時の停止目標位置に対する停止位置の流れ量を演算することと、この流れ量を用いて枠合せ後の状態における上枠の上面加工面の変位を補正すること、および補正された変位を用いて枠合せ後の上枠の浮き上りを演算することを含んでいるのが好ましい。
【0016】
また、前記枠合せ不良条件が、さらに前記演算された浮き上りに、前記途中停止位置の搬送ローラと上枠のスキマおよび上下枠の見切り面側砂付き高さを考慮した演算を行うことを含んでいるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、昇降シリンダにより昇降する昇降部に変位センサを配置することにより、この変位センサの取付け位置のばらつきや交換時の再現性が維持できなくても、上面加工面の変位測定値の誤差を吸収でき、枠合せ不良としての上枠の傾きや浮上りの検出精度を向上させることができることから、見切り面からの湯こぼれを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて本発明の枠付き上下鋳型の枠合せ装置を説明する。図1〜3に示されるように、本実施の形態における枠合せ装置1は、造型機(図示せず)により造型された枠付き上鋳型(以下、単に上鋳型という)M1と枠付き下鋳型(以下、単に下鋳型という)M2をローラコンベヤ2に交互に配置して、図3の紙面左側に配置されるプッシャーシリンダ(図示せず)とクッションシリンダ3により1枠送りされる第1搬送ライン4の下流端に配設されている。この枠合せ装置1の上流に配置される上鋳型M1と下鋳型M2を交互に搬入する前記ローラコンベヤ2には、下鋳型M2を載置する定盤台車5を案内走行する一対の固定レール6が付設されている。
【0019】
また、前記第1搬送ライン4には、上鋳型M1を反転させる反転機(図示せず)が設置されている。そして、前記上鋳型M1と下鋳型M2を枠合せたのち、当該枠合せされた上下鋳型は紙面の垂直方向に設置される注湯機(図示せず)への第2搬送ライン7に送り出される。本実施の形態では、枠合せされた上下鋳型を第2搬送ライン7に送り出すために、可動ベース11の四方に設けられた軸受12に軸支される回転軸13の両端に固着される駆動ローラ14、該回転軸14の端部を回転させるスプロケット15、チェーン16およびモータ17からなる駆動ローラ機構と、固定ベース18に立設する支柱19に支持される一対の固定レール20と、前記可動ベース11を昇降させる第2昇降シリンダ21とを具備する昇降リフタ22が用いられている。なお、本実施の形態では、枠合せされた上下鋳型を第2搬送ライン7に送り出すために、昇降リフタ22が用いられているが、本発明においては、これに限定されるものではなく、トラバーサを適宜用いることができる。
【0020】
前記上鋳型M1の上枠F1は、対向する両端部に突起部Ffが形成されている。そして、この突起部Ffの上下両面は、上鋳型M1を搬送させるローラコンベヤ2のローラ2aが転走するために加工されている。この上下両面に加工された上面加工面Ffaおよび下面加工面Ffbのうち、下面加工面Ffbに後述する搬送ローラ49が、第1昇降シリンダ31の昇降動作と開閉シリンダ46の開閉動作により着脱可能にされる。
【0021】
本発明の一実施の形態にかかわる枠合せ装置は、第1昇降シリンダ31と、該第1昇降シリンダ31のロッド31aの先端に固定される昇降テーブル32および該昇降テーブル32に設けられる支持機構33からなる昇降部34と、前記上鋳型M1の上面加工面Ffaに向けて前記昇降部34に配置される変位センサ35と、該変位センサ35の測定値とあらかじめ設定されている枠合せ不良条件に基づいて枠合せ不良の判定を行う枠合せ不良検出手段36と、前記昇降リフタ22とを備えている。
【0022】
前記第1昇降シリンダ31は、ロッド31aの変位位置を検出できるように
検出器としてエンコーダ(図示せず)が付設されており、床面に立設する4本の支柱37の上方に掛け渡される四方のフレーム38aと中央フレーム38bのうち、この中央フレーム38bに下向きに載置されている。また、この第1シリンダ31の両側には、ガイドロッド39が設けられている。なお、前記エンコーダに代えてロッド31aの変位を計測するために、検出器として、たとえばリニアスケール(図示せず)を用いることができる。
【0023】
また、第1昇降シリンダ31としては、油圧シリンダ、エアシリンダまたは電動シリンダを用いることができる。
【0024】
前記支持機構33は、上下鋳型M1、M2の搬入する方向(以下、単に搬入方向という)に直交する方向に沿って前記昇降テーブル32の下面に形成される支持部材41に固着される一対の水平部材42と、該水平部材42の両先端に形成されるガイドピン43に嵌着されるホルダー44を有する一対の移動部材45と、該一対の移動部材45の中央内側に両端がピン結合される開閉シリンダ46と、前記ホルダー44に垂設される4個のアーム47と、搬入方向に沿って隣接するアーム47の下端に固着される一対のローラフレーム48と、それぞれのローラフレーム48の内面に回転自在に軸支される搬送ローラ(フリーローラ)49とから構成されている。なお、ガイドピン43の先端には、ホルダー44のストッパーナット43aが螺着されている。
【0025】
また、本実施の形態では、前記一対のローラフレーム48のうち、一方のローラフレーム48に上鋳型M1の位置決めを行うクランプ部材50が取り付けられている。この上鋳型M1の位置決めに対して、下鋳型M2の位置決めのためのクランプ部材51は支柱37に取り付けられている。
【0026】
前記変位センサ35は、前記上枠F1の上面加工面Ffaの変位(距離)を非接触にて測定することができるセンサであれば、とくに限定されるものではないが、レーザ変位センサとすることができる。
【0027】
また、この変位センサ35は、枠合せ不良としての上枠F1の傾きを少なくとも検出するために、前記昇降部34の周辺部に少なくとも4個配置する。本実施の形態では、前記変位センサ35は、前記4個のアーム47に取付け部材61を介して取り付けられているが、本発明においては、とくにこれに限定されるものではなく、たとえば前記昇降テーブル32の四方位置に取付け部材を介して取り付けることができる。
【0028】
前記枠合せ不良検出手段36は、たとえば枠合せ装置1を制御する制御パネル(図示せず)に搭載させることができる。また、この枠合せ不良検出手段36における変位センサ35の測定値は、上鋳型M1を上昇させた状態と該上鋳型M1を下鋳型M2に重ね合わせた枠合せ後の状態における上面加工面Ffaの変位をそれぞれ測定した測定値である。
【0029】
また、枠合せ不良条件としては、上枠Ffaの傾きを検出する場合、これらの測定値から傾き量を演算したのち、しきい値と比較することである。
【0030】
そして、上枠Ffaの浮き上りを検出する場合、枠合せした時の搬送ローラ49の途中(中間)停止位置の流れ量(落下量)を演算したのち、この流れ量を用いて枠合せ後の状態における上枠F1の上面加工面Ffaの変位を補正する。ついで、補正された変位を用いて上枠F1の浮き上りを演算する。その後、さらに図5に示されるように、途中停止位置の搬送ローラ49と上枠F1のスキマh1や上下枠F1、F2の見切り面側砂付き高さh2を考慮した演算値をしきい値と比較することである。
【0031】
また、前記上枠F1の傾きや浮き上りの検出は、個別に判定することができるが、両者の検出を併用して、どちらかの判定で不良を検出した場合に、枠合せ不良と判断することもできる。
【0032】
なお、前記流れ量とは、第1昇降シリンダ31が油圧シリンダやエアシリンダの場合、油や空気のリークなどにより停止時の正規位置からの移動量であり、電動シリンダの場合、たとえばブレーキ部品の摩耗などにより停止時の正規位置からの移動量である。
【0033】
このように構成された枠合せ装置の動作について説明する。
まず、図3に示されるように、ローラコンベヤ2から昇降リフタ22側に送り出された上鋳型M1は、あらかじめ第1昇降シリンダ31の伸長作動により下降している昇降テーブル32の下部の支持機構33における搬送ローラ49上に搬入される。
【0034】
ついで、図4に示されるように、第1昇降シリンダ31の縮引作動により昇降テーブル32の下部の支持機構33における搬送ローラ49上の上枠F1が上昇すると、定盤台車5に載せた下鋳型M2の下枠F2が昇降リフタ22の固定レール20上に搬入される。
【0035】
この状態で、搬送ローラ49上の上枠F1の上面加工面Ffaのレベルの変位(変位センサ35からの距離)を4箇所測定する。
【0036】
ついで、図5〜6に示されるように、第1昇降シリンダ31を伸長作動させて搬入された下枠F2上に上枠F1を降ろすとともに、搬送ローラ49を上枠F1の下面加工面Ffbから離脱させて枠合せを完了する。
【0037】
この状態で、下枠F2上の上枠F1の上面加工面Ffaのレベルの変位(変位センサ35からの距離)を4箇所測定する。
【0038】
ついで、前記枠合せ不良検出手段36により上枠F1の枠合せ不良の判定を行う。このとき、傾きまたは浮き上りの場合には不良信号を操作パネルに表示し、警告を発する。
【0039】
ついで、開閉シリンダ46を伸長作動させて搬送ローラ49を上枠F1の下面加工面Ffbの下方から外方へ移動させる。
【0040】
ついで、図8に示されるように、昇降リフタ22の第2昇降シリンダ21を伸長作動させることにより、駆動ローラ14が上昇し、定盤台車5のレール5aを介して定盤台車5を持上げるとともに、定盤台車5の車輪5bが固定レール20から離れる。これにより、駆動ローラ14に載せ換えられた合せ枠を第2搬送ライン7に搬出するため、第1昇降シリンダ31の縮引作動により昇降部34の搬送ローラ49を上昇して、枠合せ工程を終了する。
【実施例】
【0041】
つぎに本発明における枠合せ不良検出手段の実施例1を説明するが、本発明はかかる実施例1に限定されるものではない。
【0042】
まず、枠合せ不良検出手段による枠合せ後の上枠の傾きの判定について説明する。
(1a)図4に示されるように、上鋳型M1を搬入後、上枠F1を搬送ローラ49上に載せた状態で、変位センサ35により上枠F1のコーナー4箇所の上面加工面Ffaの変位aを測定する。そして、これらの測定値(a1,a2,a3,a4)を記憶する。
【0043】
なお、測定に先立ち、すべての搬送ローラ49が水平に調整さていることを確認しておく。
【0044】
ここで、前記変位aの測定値(a1,a2,a3,a4)は、4個の変位センサ35の取付け誤差により、a1≠a2≠a3≠a4であっても良い。
【0045】
(2a)枠合せ後、下枠F2上に上枠F1を載せた状態で、変位センサ35により上枠F1のコーナー4箇所の上面加工面Ffaの変位bを測定する。そして、これらの測定値(b1,b2,b3,b4)を記憶する。
【0046】
(3a)枠合せ前後の上枠F1の4箇所の変位差ci(i=1,2,3,4)をつぎの式(1)〜(4)により演算する。
c1=a1−b1 ・・・(1)
c2=a2−b2 ・・・(2)
c3=a3−b3 ・・・(3)
c4=a4−b4 ・・・(4)
【0047】
(4a)枠合せ後の上枠F1の傾きを演算する。
まず、4箇所の変位差ciの最大値と最小値をそれぞれ算出して、Cmax,Cminとすると、上枠F1の傾きdはつぎの式(5)により演算する。そしてこの演算値を記憶する。
d=Cmax−Cmin ・・・(5)
【0048】
(5a)枠合せ不良としての傾き不良を判定する。
あらかじめ設定されるしきい値が、たとえば2mmである場合、判定式はつぎの式(6)により表される。
d>2 ・・・(6)
判定の結果、式(6)を満たす場合、枠合せ工程を停止する信号を発信し、枠合せ不良を表示する。
【0049】
本実施例1においては、搬送ローラ49上の上枠F1の変位を測定し、下枠F2上に枠合せした後に測定した上枠F1の変位との差をそれぞれの変位センサ35について演算するため、4個の変位センサ35の取付け位置の精度にばらつきが生じたり、交換時の再現性が維持できなくても、演算結果に影響しない。
【0050】
また、本実施例1の場合、4箇所の枠合せ前後の変位差から最大値と最小値の差を演算することにより、枠合せ後の上枠F1の傾きを判定するため、昇降部33の途中停止における停止精度や、上下枠F1、F2の見切り面側砂付き高さh2(図5〜6参照)にばらつきが生じても、演算結果に影響しない。
【0051】
つぎに本発明における枠合せ不良検出手段の実施例2を説明するが、本発明はかかる実施例2に限定されるものではない。
【0052】
枠合せ不良検出手段による枠合せ後の上枠の浮き上りの判定について説明する。
(1b)〜(2b)は前記実施例1の(1a)〜(2a)と同一であるので説明を省略する。
【0053】
(3b)図5に示されるように、エンコーダにより下枠F2上に上枠F1を載せた状態の枠合せ時の搬送ローラ49の途中(中間)停止位置(第1昇降シリンダの正規停止位置)の流れ量Lをつぎの式(7)により演算する。そしてこの演算値を記憶する。なお、前記途中停止位置とは、上枠F1を載置している搬送ローラ49を下降させたのち、確実に枠合せさせるときに該搬送ローラ49が上枠F1の下面加工面Ffbから離脱している位置である。
L=搬送ローラの停止位置の出力値(測定値)L1−搬送ローラの停止位置の目標値L0 ・・・(7)
【0054】
(4b)前記上枠F1のコーナー4箇所の上面加工面Ffaの変位bi(i=1,2,3,4)に流れ量Lをつぎの式(8)〜(11)のように加算して補正する。そしてこの演算値ei(i=1,2,3,4)を記憶する。
e1=b1+L ・・・(8)
e2=b2+L ・・・(9)
e3=b3+L ・・・(10)
e4=b4+L ・・・(11)
【0055】
(5b)枠合せ前後の上枠F1の浮き上りをつぎの式(12)〜(15)により演算する。そしてこの演算値fi(i=1,2,3,4)を記憶する。
f1=a1−e1 ・・・(12)
f2=a2−e2 ・・・(13)
f3=a3−e3 ・・・(14)
f4=a4−e4 ・・・(15)
この演算値fiとあらかじめ設定されるしきい値を比較して、枠合せ不良としての浮き上り不良を判定することができるが、本実施例2では、さらにつぎの演算を行うことで精度の良い浮き上り不良であるか否かを判定することができる。
【0056】
(6b)前記演算値fi(i=1,2,3,4)をつぎの式(16)〜(19)により補正したのち、これらの補正値gi(i=1,2,3,4)から最大値Gmaxを演算する。
g1=f1−h1−h2 ・・・(16)
g2=f2−h1−h2 ・・・(17)
g3=f2−h1−h2 ・・・(18)
g4=f4−h1−h2 ・・・(19)
ここで、h1は、図5〜6に示されるように、途中停止位置の流れ量がない場合の搬送ローラ49と上枠F1のスキマであり、たとえば10mmに設定することができる。また、h2は、図5〜7に示されるように、上下枠F1、F2の見切り面側砂付き高さであり、たとえば2mmに設定することができる。
なお、この設定値h1、h2については、任意に設定変更可能である。
【0057】
(7b)枠合せ不良としての浮き上り不良を判定する。
あらかじめ設定されるしきい値が、たとえば2mmである場合、判定式はつぎの式(20)により表される。
Gmax>2 ・・・(20)
判定の結果、式(20)を満たす場合、枠合せ工程を停止する信号を発信し、枠合せ不良を表示する。
【0058】
本実施例2においては、前記実施例1と同様に、搬送ローラ49上の上枠F1の変位を測定し、下枠F2上に枠合せした後に測定した上枠F1の変位との差をそれぞれの変位センサ35について演算するため、4個の変位センサ35の取付け位置の精度にばらつきが生じたり、交換時の再現性が維持できなくても、演算結果に影響しない。
【0059】
また、本実施例2は、上下枠F1、F2の見切り面側砂付き高さh2の変動と言う不確定要素があるが、上枠F1に傾きを生じず浮き上る現象に対し、有効である。
【0060】
なお、図5に示されるように、固定レール20、定盤台車5の車輪5aの偏摩耗や、定盤台車5上への砂付着、下枠F2の反見切り面のサンドカット不良による反見切り面砂付きによる高さh3の変動による上枠F1の変位の変化については、枠合せ不良と同じ異常として検出してしまうが、湯こぼれ防止に対しては安全側に働き、枠合せ不良の表示時点で調査すれば異常の原因がわかるため、大きな問題ではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施の形態にかかわる枠付き上下鋳型の枠合せ装置の要部正面図である。
【図2】図1の左側面図である。
【図3】搬送ローラの下降位置に上枠が搬入した状態を説明する正面図である。
【図4】搬送ローラが上枠を持上げて上昇位置にあるとともに、この上枠の下方に下枠が搬入した状態を説明する正面図である。
【図5】枠合せ時の搬送ローラの途中(中間)停止位置状態を説明する正面図である。
【図6】図5の要部側面図である。
【図7】上下枠の見切り面側砂付き高さを説明する拡大図である。
【図8】合せ枠を上昇させるとともに搬送ローラを上昇位置まで上昇させた状態を説明する正面図である。
【図9】枠付き上鋳型が枠付き下鋳型に対して傾いた状態を説明する図である。
【図10】枠付き上鋳型が枠付き下鋳型に密着せずに浮き上がった状態を説明する図である。
【図11】従来の枠合せ装置の正面図である。
【図12】図11の枠合せ装置における枠合せ時の上枠の上面加工面のレベルを測定する状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0062】
F1 上枠
Ff 突起部
Ffa 上面加工面
Ffb 下面加工面
F2 下枠
M1 枠付き上鋳型(上鋳型)
M2 枠付き下鋳型(下鋳型)
1 枠合せ装置
2 ローラコンベヤ
2a ローラ
3 クッションシリンダ
4 第1搬送ライン
5 定盤台車
5a レール
5b 車輪
6 固定レール
7 第2搬送ライン
11 可動ベース
12 軸受
13 回転軸
14 駆動ローラ
15 スプロケット
16 チェーン
17 モータ
18 固定ベース
19 支柱
20 固定レール
21 第2昇降シリンダ
22 昇降リフタ
31 第1昇降シリンダ
31a ロッド
32 昇降テーブル
33 支持機構
34 昇降部
35 変位センサ
36 枠合せ不良検出手段
37 支柱
38a フレーム
38b 中央フレーム
39 ガイドロッド
41 支持部材
42 水平部材
43 ガイドピン
43a ストッパーナット
44 ホルダー
45 移動部材
46 開閉シリンダ
47 アーム
48 ローラフレーム
49 搬送ローラ
50 クランプ部材
51 クランプ部材
61 取付け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造型機により造型された枠付き上鋳型と枠付き下鋳型をローラコンベヤに交互に配置して1枠送りされる第1搬送ラインに配設され、該枠付き上鋳型と枠付き下鋳型を枠合せたのち、注湯機への第2搬送ラインに送り出す枠付き上下鋳型の枠合せ装置において、
立設する4本の支柱の上方に掛け渡される中央フレームに下向きに載置される昇降シリンダと、
該昇降シリンダのロッド先端に固定される昇降テーブルおよび該昇降テーブルの下部に設けられる、前記枠付き上鋳型の上枠の両端部に形成される突起部の上下両面に加工されている上面加工面および下面加工面のうち下面加工面に搬送ローラを着脱可能にする支持機構を具備する昇降部と、
前記昇降部に前記枠付き上鋳型の上面加工面に向けて少なくとも4個配置されるとともに該上面加工面の変位を測定する変位センサと、
該枠付き上鋳型を上昇させた状態と枠合せ後の状態における該上面加工面の変位をそれぞれ測定した測定値とあらかじめ設定されている枠合せ不良条件に基づいて枠合せ不良の判定を行う枠合せ不良検出手段
とを備えてなる枠付き上下鋳型の枠合せ装置。
【請求項2】
前記枠合せ不良条件が、前記枠付き上鋳型を上昇させた状態と枠合せ後の状態における該上面加工面の変位をそれぞれ測定した測定値の最大値と最小値の差から枠合せ後の上枠の傾きを演算することを含んでいる請求項1記載の枠付き上下鋳型の枠合せ装置。
【請求項3】
前記昇降シリンダが前記昇降部の変位を検出可能な検出器を付設してなる請求項1記載の枠付き上下鋳型の枠合せ装置。
【請求項4】
前記枠合せ不良条件が、前記検出器により枠合せ時の前記搬送ローラの途中停止時の停止目標位置に対する停止位置の流れ量を演算することと、この流れ量を用いて枠合せ後の状態における上枠の上面加工面の変位を補正すること、および補正された変位を用いて枠合せ後の上枠の浮き上りを演算することを含んでいる請求項3記載の枠付き上下鋳型の枠合せ装置。
【請求項5】
前記枠合せ不良条件が、さらに前記演算された浮き上りに、前記途中停止位置の搬送ローラと上枠のスキマおよび上下枠の見切り面側砂付き高さを考慮した演算を行うことを含んでいる請求項4記載の枠付き上下鋳型の枠合せ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−69519(P2010−69519A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242097(P2008−242097)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】