説明

架橋共重合体の製造方法、架橋共重合体、および吸着剤

【課題】 製品としての架橋共重合体の溶出物を効率よく低減できる上、高収量が実現される架橋共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】 (1)モノビニル芳香族モノマーと架橋性芳香族モノマーを共重合させて架橋共重合体(A)を得る工程、(2)前記の共重合させた架橋共重合体(A)を溶媒で膨潤させる工程、(3)前記の膨潤させた架橋共重合体(A)を加熱する工程を含むことを特徴とする架橋共重合体(B)の製造方法。好ましくは、さらに(4)架橋重合体(A)を水蒸気と接触させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物などの溶出の少ない架橋共重合体の製造方法、架橋共重合体、および吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔質の架橋共重合体からなる合成吸着剤(以下、単に「吸着剤」と証することがある。)は、その使用時に有機物等の溶出が発生するという課題があった。こうした架橋強重合体である樹脂からの溶出物は、分離や精製の対象となる被処理液の着色・毒性化、樹脂の表面の汚染による脱塩阻害・臭気発生・処理量低下、樹脂の分解による水分の増加等を招く原因となる。よって、このような樹脂からの溶出物を生じる虞の少ない合成吸着剤が望まれていた。
【0003】
樹脂からの溶出物が発生する原因としては、まず、架橋共重合体の製造時に残存する不純物、例えば、未重合の単量体成分(モノマー)、重合不十分の低重合体成分(ダイマー、トリマー、オリゴマー)、遊離重合体成分(線状ポリマー、ポリマー微粒子)、重合反応による副生物等の存在が挙げられる。例えば、スチレン系樹脂の場合、未重合の単量体成分としてスチレンモノマー、ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン等が、重合不十分の低重合体成分としてスチレンダイマー、スチレントリマー、スチレンオリゴマー等が、遊離重合体成分として線状ポリスチレン、ポリスチレン微粒子等が、重合反応による副生物としてホルムアルデヒドやベンズアルデヒド等が、それぞれ不純物として残留する。このような不純物の残存を防ぐための有効な手段は知られておらず、従来はこのような不純物を除去するために、吸着剤の製造後や使用前に、蒸留水等でこれを洗浄する工程が必要となり、コストの高騰や工程の煩雑化を招いていた。
【0004】
また、溶出物発生の別の原因として、架橋共重合体がその使用時や保存時に、時間の経過に伴い酸化等によって分解され、分解物を生じることが挙げられる。このような分解物の発生を防ぐために、抗酸化能を付与する置換基を導入する技術が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)が、その効果は十分ではなかった。
また、特許文献4には、重合反応の一部を100度以上の温度で行う粒状重合体の製造方法が開示されている。しかしながら、高温の加熱反応を複数回実施する場合は、設備コストやエネルギー消費の問題もあるため、その他に有効な溶出物低減技術が望まれていた。
【0005】
一方、本発明の前記課題とは全く異なるものとして、特許文献5には、高表面積低膨潤性のマクロポーラス高分子吸着剤の製造方法が開示されている。特許文献6にも同様の高表面積の高分子吸着剤が記載されており、低膨潤性であることが確認可能である。しかしながら、特許文献5、6の製造方法は、フリーデル・クラフツ(FC)反応を利用した合成法を基本としている。このFC反応により得られた製品のビニル基の残留量は、0.5meq/g未満であるという特徴があるが、FC反応に用いる有機スルホン酸は高価である上、反応後、これらの有機酸を精製する手段が蒸留精製しかないこと等、工業的な使用には多くの課題が存在する。さらに、FC反応を利用する場合は、脱アルキル化反応も同時に行われる。即ち、FC反応に付随してポリスチレン鎖の開裂反応が起き、オリゴマーや単分子物質が生成するため、却って有機物の溶出が多くなる。
【0006】
さらに、本発明の前記課題とは全く異なるものとして、特許文献7には、高分子種(たね)粒子を膨潤助剤で膨潤し膨潤粒子を形成する工程を有する液体クロマトグラフィー用ポリマー充填剤の製造方法及びポリマー充填剤が開示されている。しかしながら、かかる文献に開示される高分子種は、一般にソープフリー重合で合成した架橋共重合体ではない線状ポリマーを用いており、これを用いて均一性を担保し、単分散性を良好なものとし、さらに微細孔を無くすか減少させる技術であるため、膨潤工程の技術的意義が全く異なるものであった。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1078940号明細書
【特許文献2】特開平2−115046号公報
【特許文献3】特開平10−137736号公報
【特許文献4】特開2006−328290号公報
【特許文献5】特開2000−202284号公報
【特許文献6】特開平9−182572号公報
【特許文献7】特開平11−94813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の背景から、架橋共重合体を用いた合成吸着剤について、不純物の残存や分解物の発生を防ぎ、使用時における溶出物の発生を抑制するための技術が望まれていた。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、その目的は、不純物の残存や分解物の発生を抑制することが可能な粒状重合体の製造方法と、それを用いた合成吸着剤の製造方法を提供すること、並びに、樹脂からの溶出物の発生が少ない合成吸着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、モノビニル芳香族モノマーと架橋性芳香族モノマーを共重合させて得られる架橋共重合体が、有機溶媒中では膨潤しやすいところに着目し、かかる膨潤工程を製造工程に組み込み、溶出物が除去しやすい状態とし、さらに膨潤工程後に加熱する工程(以下、「追重合工程」と称することがある)を設けて、前記架橋重合体を膨潤した状態でラジカル架橋させ、得られる製品が膨潤した構造で固定化させることにより、効率よく溶出物を低減できることを見出した。また、かかる方法により、結果的に、従来と同量の原料で製品収量が増加すること(原料のモノマー量の削減や、1バッチ当たりの生産量の増加、均一性の向上)、および、重量当たりの表面積、細孔容積も増加することを見出した。更に、この製造方法を利用することにより、溶出物の発生が少ない合成吸着剤を製造することが可能となり、上記課題が効果的に解決されることを見出して、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、以下の〔1〕〜〔6〕に存する。
〔1〕(1)モノビニル芳香族モノマーと架橋性芳香族モノマーを共重合させて架橋共重合体(A)を得る工程
(2)前記の共重合させた架橋共重合体(A)を溶媒で膨潤させる工程
(3)前記の膨潤させた架橋共重合体(A)を加熱する工程
を含むことを特徴とする架橋共重合体(B)の製造方法。
〔2〕前記(3)前記の膨潤させた架橋共重合体(A)を加熱する工程の後に、
(4)架橋重合体(A)を水蒸気と接触させる工程
を含む前記〔1〕の架橋共重合体(B)の製造方法。
〔3〕前記〔1〕または〔2〕に記載の架橋共重合体(B)の製造方法によって製造されたことを特徴とする架橋共重合体。
〔4〕ビニル基含有量が0.5mmol/g以上であり、表面積が500m/g以上であり、かつ乾燥時における水による膨潤度比が1.05以下であることを特徴とする架橋共重合体。
〔5〕表面積が500m/g以上であり、乾燥時における水による膨潤度比が1.05以下であり、かつ下記溶出試験で測定される不純物残留量が20mg/L以下であることを特徴とする架橋共重合体。
[溶出試験]
i)室温(約25℃)下、脱塩水を十分に通液した架橋共重合体10.0mlにアセトン50mlをSV2で通液する。
ii)通液したアセトン全量中に含まれる不純物を分析し、不純物残留量を測定する。
iii)不純物残留量を架橋重合体1リットル当たりに換算して算出する。
〔6〕前記〔3〕〜〔5〕に記載の架橋共重合体を含むことを特徴とする吸着剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の架橋共重合体の製造方法によれば、製品としての架橋共重合体の溶出物を効率よく低減できる上、高収量が実現される。また、本発明の架橋共重合体およびこれを用いて形成された吸着剤は、溶出物の発生が少ないため、高品質である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
[1]架橋共重合体の製造方法
本発明の架橋共重合体(B)の製造方法は、下記工程を含むことが特徴である。
(1)モノビニル芳香族モノマーと架橋性芳香族モノマーを共重合させて架橋共重合体(A)を得る工程
(2)前記の共重合させた架橋共重合体(A)を溶媒で膨潤させる工程
(3)前記の膨潤させた架橋共重合体(A)を加熱する工程
以下、各工程について詳述する。なお、本発明において製造対象となる架橋共重合体(B)の形状は、通常は粒子の形状(粒状)である。具体的な形状としては球状、略球状、多面体状、凝集体状など様々な形状が挙げられるが、特に制限されるものではない。
[1-1](1)モノビニル芳香族モノマーと架橋性芳香族モノマーを共重合させて架橋
共重合体(A)を得る工程
[1-1-1]モノビニル芳香族モノマー
原料としては、重合可能な反応基(例えば、エチレン性不飽和結合等)を有する芳香族モノマー化合物(以下適宜「モノビニル芳香族モノマー」という。)が用いられる。
【0012】
モノビニル芳香族モノマーの種類は特に制限されないが、例えば以下のものが挙げられる。
i)スチレン及びその誘導体:
スチレン;o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン等のアルキルスチレン;p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン;p−フェニルスチレン等のアリールスチレン;p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等のハロゲノスチレン;クロロメチルスチレン、クロロブチルスチレン、ブロモブチルスチレン等のハロゲノアルキルスチレンなど。
【0013】
ii)ポリビニル芳香族化合物:
ジビニルベンゼン(中でもm−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン)、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ビスビニルビフェニル、ビスビニルフェニルスルホン、ビスビニルフェニルエタン、ビスビニルフェニルブタン等のスチレン誘導体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等のアクリル系誘導体など。
【0014】
中でも、原料モノマーとしては、スチレン及びその誘導体が好ましく、スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、アリールスチレン、ハロゲノスチレンがより好ましく、スチレンが特に好ましい。
なお、これらの原料モノマーは、何れか一種を単独で用いても良く、必要に応じて二種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0015】
[1-1-2]架橋性芳香族モノマー
本発明では、後述のイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂)の基体や合成吸着剤等の用途に好適な架橋共重合体を製造する観点から、原料モノマーの一部として、重合可能な反応基(例えば、エチレン性不飽和結合等)を2つ以上有する化合物(以下適宜「架橋性モノマー」という。)を用いることが好ましい。
【0016】
架橋性モノマーの種類は特に制限されないが、例としては、上述の各種のポリビニル系モノマー等が挙げられる。
これらの架橋性モノマーは、何れか一種を単独で用いても良く、必要に応じて二種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
中でも、架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼン(以下、「DVB」と称することがある。)、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0017】
架橋性モノマーの使用量は、目的とする重合体の種類及び用途によっても異なるが、全原料モノマーに対する比率(架橋度)として、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、また、通常81重量%以下、好ましくは63重量%以下の範囲である。
具体的に、合成吸着剤では架橋度が比較的高く、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上の範囲であり、場合によっては架橋度80%のDVBそのものを用いて製品を製造することもある。
【0018】
[1-1-3]重合開始剤
重合反応には通常、重合開始剤を用いる。
重合開始剤としては、高温重合反応を有効に作用させる場合は、通常は100℃以上でラジカルが発生できる高温用重合開始剤を少なくとも使用する。なお、分子内に複数の半減期温度を有する重合開始剤を使用したり、半減期温度の異なる二種以上の重合開始剤を併用することも可能である。
【0019】
具体的な重合開始剤の種類として、例えば以下のものが挙げられる。
i)過酸化物系重合開始剤:
高温用重合開始剤としては、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ヘキシルパーベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルクミルパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラーメンタンハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0020】
また、モノビニル芳香族モノマーと架橋性芳香族モノマーを共重合させて架橋共重合体(A)を製造する工程で使用する低温用重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル(以下適宜「BPO」と略する。)、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジー2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルヒドロキシブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0021】
ii)アゾ系重合開始剤:
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等。
中でも、重合開始剤としては、過酸化物系重合開始剤が好ましく、1,1,3,3−テトラメチルヒドロキシブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサンが特に好ましい。
【0022】
重合開始剤の使用量は、使用するモノマーや重合開始剤の種類によっても異なるが、全原料モノマーに対する比率として、通常0.05重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、また、通常3.0重量%以下、好ましくは1.5重量%以下の範囲である。重合開始剤の使用量が少なすぎると、重合が未熟に終わり、結果として残存する低重合体成分や遊離重合体成分が多くなってしまうばかりでなく、重合に長時間を要するという課題がある。一方、重合開始剤の使用量が多すぎると、原料モノマーの転換率は高くなるが、残留する低重合体成分や遊離重合体成分の平均分子量が小さくなり、溶出物の発生が多くなってしまう傾向がある。その理由としては、多量に発生した開始剤のラジカルにより、低重合体成分や遊離重合体成分の末端ラジカルが失活し、停止反応が起こってしまうこと、架橋性モノマーの残存二重結合が、多量に発生した開始剤によるラジカルで消費されてしまい、有効架橋度が低くなってしまうこと、重合開始剤が重合体の水素を引き抜き、ラジカル発生の原因になること等が挙げられる。
【0023】
[1-1-4]溶媒
重合反応には、必要に応じて溶媒を用いても良い。溶媒を使用する場合、原料となる各モノマーを溶解させるものであれば、その溶媒の種類は特に制限されないが、通常は各種の有機溶媒が使用される。溶媒の使用量は、架橋共重合体(A)に対する比率として、通常0重量%以上、300重量%以下の範囲である。
【0024】
なお、有機溶媒の有無、種類、使用量等によって、得られる架橋共重合体の形態(ゲル型か多孔性か)やその物理構造が異なる。よって、目的とする架橋共重合体の種類や用途に応じて、有機溶媒の有無及び種類を調整することが好ましい。
具体的には、有機溶媒を使用せずに重合反応を行なうと、ゲル型の架橋共重合体が得られ、有機溶媒を使用して重合反応を行なうと、有機溶媒が沈殿剤(多孔化剤)として機能することにより、多孔性の架橋共重合体が得られる。また、使用するモノマーに対する貧溶媒(例えば、主原料モノマーがスチレンの場合であれば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、イソオクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)、2−エチルヘキサノール、tert−アミルアルコール、デカノール、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等の有機溶媒、又はこれらのうち複数の混合溶媒等)を使用すると、非膨潤性の多孔性架橋共重合体が得られ、生成する重合体に対する良溶媒(例えば、得られる重合体が芳香族系の場合であれば、ジクロロエタン、1,4−ジオキサン等の有機溶媒)を使用すると、膨潤性のゲル様、半多孔性架橋共重合体が得られる。
【0025】
[1-1-5]他の成分
反応系には、必要に応じてその他の成分を加えても良い。その他の成分の例としては、多孔化に有効な沈澱剤である線状ポリマー等の高分子化合物が挙げられる。
線状ポリマーの具体例としては、ポリスチレン(重量平均分子量(Mw)が通常1000以上、好ましくは1万以上、また、通常100万以下、好ましくは10万以下の範囲)、ポリパラメチルスチレン、ポリパラクロロスチレン等が挙げられる。
【0026】
なお、上述の有機溶媒や高分子化合物等の沈殿剤(多孔化剤)を加えた重合系では、沈殿剤による重合開始剤の希釈や重合開始剤分子同士の衝突頻度の低下が生じるので、通常はゲル型の架橋共重合体を製造する場合よりも多くの重合開始剤を使用する。但し、このような場合でも、上述の高温重合反応を行なう際には、重合開始剤の使用量を、全原料モノマーに対する割合で、通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、また、通常0.5重量%以下の範囲と、比較的少なくすることができる。これは、高温で重合することにより、ラジカル重合における再結合反応や残存二重結合への反応が促進されるためである。これにより、重合開始剤の使用量が比較的少なくても、重合の完結度は高くなり、残留する低重合体成分や遊離重合体成分の分子量は高くなり、その濃度は低くなるため、結果として樹脂からの溶出物の発生を防ぐことができる。
【0027】
[1-1-6]重合反応の方式
重合反応の方法は特に限定されるものではなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合等、公知の種々の方法を何れか単独で、或いは二種以上を組み合わせて採用することができる。これらは目的とする重合体の種類や用途に応じて、適宜選択すればよい。
特に、得られる重合体を後述のように合成吸着剤として使用する場合には、重合体の形状を粒状、中でも球状又は略球状とすることが好ましいが、この様な粒状(球状又は略球状)の重合体を製造するためには、油中水型又は水中油型の懸濁重合を行なうのが有効である。
【0028】
油中水型又は水中油型の懸濁重合を行なう場合、水相及び油相を反応器中に入れ、これを攪拌等の手段により懸濁状態にしながら重合反応を行なう。分散相と連続相との浴比は、(分散相の体積):(連続相の体積)の比の値で、通常0.5:1以上、好ましくは1:1.5以上、また、通常1:10以下、好ましくは1:6以下、更に好ましくは1:4以下の範囲とすることが好ましい。
【0029】
水相の成分としては通常、水が用いられる。一方、油相は主に原料モノマーと、必要に応じて用いられる有機溶媒によって構成されることになる。また、重合開始剤は、例えばベンゾイルパーオキサイドやアゾビスイソブチロニトリル等の過酸化物のような非水溶性の重合開始剤の場合、油相中に存在することになり、例えば過硫酸塩、過酸化水素、ハイドロパーオキサイドのような水溶性重合開始剤の場合、水相中に存在することになる。
【0030】
なお、油相の各種の物性(粘度、比重、界面張力等)は、その構成や組成により大きく異なる。このため、油相の比重を通常0.8以上、1.4以下に調整するのが好ましく、また、油相の粘度を通常0.1cps(センチポアズ)以上、200cps以下に調整するのが好ましい。また、水相中に油相の液滴を浮遊させる場合は、水相の比重と油相の比重との差{(水相の比重)−(油相の比重)}が通常0以上、0.5以下であることが好ましい。
【0031】
水相を連続相とする場合、その水相は、原料モノマー等からなる油相と混和せず、且つ、油相を液滴としてその中に分散させ得るのに適当な不活性液体である必要がある。通常、水相には懸濁剤が含まれる。常法的に使用可能な懸濁剤は、使用する水相成分の種類、組成、及び量に依存する。ここで使用する懸濁剤は、特に限定されるものではなく、通常の懸濁重合に使用する懸濁剤を適宜選択して使用することが可能である。代表的な例としては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、でんぷん、ポリアクリルアミド、ポリ(ジメチルジアリル)アンモニウムクロリド、水不活性無機化合物、例えばケイ酸マグネシウム、並びにセルロースエーテル類、例えばカルボキシメチル−メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これらの懸濁剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせで用いてもよい。ただし、発生した油相液滴を合着、破砕することなく粒径の均一性を保持するためには、油相の物性との相関により、水相成分の種類及び懸濁剤の濃度を決定する。油相液滴の粒径の均一性を保持する際、懸濁剤は、水相の全重量に対して通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、また、通常5重量%以下、好ましくは1.5重量%以下の範囲である。
【0032】
[1-1-7]重合雰囲気
本発明では、重合反応系内の酸素量を、全原料モノマーに対する比率として、通常1000ppm以下、中でも100ppm以下、更には10ppm以下と、できるだけ少なくすることが好ましい。なお、米国特許第4192921号明細書、特開昭53−124184号公報等において、酸素ガスを含む窒素を流通させながら重合する方法も提案されている。しかしながら、重合反応(特にラジカル重合反応)において、反応系内に酸素が存在すると、末端ラジカルは酸素と共重合しやすいため、原料モノマーの重合反応に酸素が取り込まれ、過酸化物結合を含むポリマーが生成する。
【0033】
反応系内の酸素量を低減するためには、反応器内の気相を不活性ガスで十分に置換してから反応を行なうのが好ましい。脱気方法としては、不活性ガスをバブリングする方法、減圧脱気を繰り返す方法、加圧及び/又は加温して液相や気相中の溶存酸素を不活性ガスに置換する方法など、一般的に知られている方法で置換することができる。不活性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガス等が挙げられるが、窒素ガスが好ましい。
【0034】
重合温度は、通常50℃以上、好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下の範囲が好ましい。重合温度が低すぎると、重合性単量体の転換率が低くなる場合がある。また、重合温度が高すぎると、付着物量が増加する、スチレン特有の熱重合による二量体構造物、三量体構造物が副生する等の場合がある。
【0035】
重合時間は、重合開始剤の半減期温度や使用量、モノマーの重合性、樹脂の架橋度等によって異なるが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上であり、通常12時間以下、好ましくは6時間以下である。重合時間が短すぎると、重合が完結できない、残留する低重合体成分や遊離重合体成分等の量が低減できない等の場合がある。また、重合時間が長すぎると、生産性が低下する場合がある。
【0036】
[1-1-8]その他
本発明の製造方法により得られる重合体の収率は、使用する原料モノマーや重合開始剤の種類、重合条件、多孔化剤の使用割合等によって異なり、特に制限されるものではないが、全原料モノマーに対する重量比で、通常99.0重量%以上、好ましくは99.5重量%以上である。
【0037】
また、残留する原料モノマーの濃度は、重合体1Lに対する重量(mg/L)で、通常300mg/L以下、好ましくは50mg/L以下、より好ましくは10mg/L以下である。
また、残留する低重合体成分・遊離重合体成分の濃度は、重合体1Lに対する重量(mg/L)で、通常300mg/L以下、好ましくは200mg/L以下、更に好ましくは100mg/L以下の範囲である。
【0038】
また、本発明の製造方法により得られる重合体の粒径は、使用する原料モノマーや重合開始剤の種類、重合条件等によって異なり、目的に応じて適切に調節すればよいが、通常1μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常2mm以下、好ましくは1mm以下の範囲である。さらに粒径が均一性に優れた樹脂であっても良い。
[1−2](2)共重合させた架橋共重合体(A)を溶媒で膨潤させる工程
前記[1−1]で得られた架橋共重合体(A)は、溶媒により膨潤させる。
本発明の架橋共重合体の製造方法においては、膨潤処理を行うことにより、細孔を大きくし、前記[1−1]で得られた架橋共重合体(A)に残留する、溶出物の原因となる重合性モノマー類や低分子ポリスチレン等の化合物を、本工程により除去することが出来る。
【0039】
膨潤に用いる溶媒は、前記[1−1]で使用される溶媒と同一であっても良いし、他の溶媒であっても良い。一般に、架橋共重合体(A)に対して良溶媒であることが望ましいが、樹脂に対し膨潤させる溶媒であるなら、どのような溶媒であっても良い。また水を一部添加することも可能である。このような溶媒としては、通常、ベンゼン、トルエン、キシレン、二塩化エチレン、ジクロロプロパン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、酢酸イソアミル、イソブチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトンが用いられる。
【0040】
膨潤における溶媒の液温は、通常、室温以上であり、通常 重合温度以下、好ましくは50℃以上である。液温が高すぎると、溶媒の添加装置が高価となったり、モノマー溶液を添加中に重合が進行する可能性があり、低すぎると、モノマーの吸収速度が小さく、膨潤に時間がかかる、均一に拡散しない等の問題がある。
また、膨潤処理は、通常前記[1−1]で得られた架橋共重合体(A)を前記溶媒に浸漬することにより行われるが、その浸漬時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.2時間以上であり、通常12時間以下、好ましくは3時間以下、さらに好ましくは1時間以下である。浸漬時間が短すぎると、溶液を均一に吸収しない、添加したモノマー溶液が単独で重合する可能性があり、長すぎると生産性が低下する。
【0041】
また、浸漬は静置、または攪拌条件で行うが、モノマーの吸収速度やモノマーの均一の吸収性の観点から攪拌条件で行うのが好ましい。
膨潤工程では、樹脂に溶媒を短時間に均一に吸収させるため、消泡剤を添加してもよい。即ち、例えば、前記[1−1]の共重合を、50℃以上で懸濁重合し、この共重合が終了した後、重合ポリマーに溶媒を吸収させて膨潤させる場合は、膨潤工程の前に、一度樹脂を水洗した後、溶媒溶液を添加する方法もある。しかし、膨潤処理工程を短時間で行うため、重合終了後、引き続き、溶媒溶液を含浸させる方法も考えられる。この場合、懸濁重合の際、界面活性剤を添加しているため、溶媒をスムーズに含浸するため、消泡剤を添加し、溶媒を添加する。
【0042】
溶媒を添加する際は、溶液のpHを調整する、塩析剤を添加する、消泡剤を添加する等の方法が採用される。消泡剤を添加する場合は、例えばノニオン系の界面活性剤を消泡剤として用いることが好ましい。この場合、膨潤処理工程の温度は、重合温度近辺であることが好ましい。
[1−3](3)膨潤させた架橋共重合体(A)を加熱する工程
前記[1−2]で膨潤させた架橋共重合体(A)は、さらに加熱処理させることにより、膨潤した構造で固定化させて完全な製品としての架橋共重合体(B)とする(以下、「追重合」と称することがある。)。
【0043】
本工程における追重合により、[1−2]工程でも残留する、溶出物の原因となる低分子ポリスチレン等の化合物を、母体である架橋共重合体(A)と架橋させてさらに溶出物を低減することが出来る。
本発明における追重合が行われる雰囲気内は特に限定はないが、窒素雰囲気であることが好ましい。
【0044】
本工程における追重合の温度(雰囲気温度)は、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃であり、通常200℃以下、好ましくは160℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。温度が高すぎると重合缶が高価になる、昇温冷却に時間を要する、低すぎると重合が完結せず、モノマー類の溶出につながる。
【0045】
また、加熱時間は、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、さらに好ましくは2時間以上であり、通常24時間以下、好ましくは12時間以下、さらに好ましくは6時間以下である。加熱時間が短すぎると重合が未完結になり、長すぎると生産性が悪くなる。
ここで、追重合の際に架橋性モノマーを添加すると、架橋重合体の溶媒膨潤率が低下する。このような架橋性モノマーとしては[1-1-2]に記載の架橋性芳香族モノマーを挙げることができる。架橋性モノマーの添加量は、最終製品としての架橋共重合体(B)に対して、通常0重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。架橋性モノマーの添加量が多すぎると、逆に樹脂が収縮し、製品収量が増加しないばかりか、後で添加した原料により、変動費が高くなる場合がある。
【0046】
また、追重合においては、重合開始剤を用いても良く、その濃度は、[1−1]工程における重合開始剤の濃度に比べて低い方が好ましい。具体的に、追重合における重合開始剤の全原料モノマーに対する濃度は、通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、また、通常2.0重量%以下、好ましくは1.0重量%以下の範囲である。
[1−4](4)架橋重合体(A)を水蒸気と接触させる工程
前記[1−3]で追重合を行った架橋共重合体(A)は、さらに水蒸気と接触させる工程(以下、「水蒸気処理」と称することがある。)を経ることにより、溶出物の更に少ない架橋共重合体(B)を得ることができる。
【0047】
即ち、本工程における水蒸気処理追重合により、モノマー成分由来の不純物を水蒸気で揮散させ、さらに溶出物を低減することが出来る。
本工程において接触させる水蒸気は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。温度が高すぎると樹脂が分解したり、樹脂の細孔構造が変化する可能性がある。低すぎると完全に残留成分を除去できない。
【0048】
また、接触時間は、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上であり、通常10時間以下、好ましくは6時間以下、さらに好ましくは3時間以下である。接触時間が短すぎると残留量が高くなる。長すぎるとコストが高くなる。
具体的には、例えば、以下の処理法を挙げることができる。即ち、追重合を行った架橋重合体を水切りした後、グラスライニング製、テフロン(登録商標)製、SUS製などのカラムに充填し、過熱水蒸気を通気する。
[2]架橋共重合体
本発明の製造方法により得られる架橋共重合体は、上述の様に不純物の残存や酸化等による分解物の発生が抑制され、溶出物の発生が少ないという特徴を有する。よって、その材料、構造、サイズ等を制御することにより、イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂、キレート交換樹脂等)の基体や、合成吸着剤、蛋白分離剤等として、好適に使用することが可能である。
【0049】
または、本発明の架橋共重合体は、下記の特性を有することが特徴である。即ち、本発明の架橋共重合体は、下記(a)〜(c)の特性を有することが特徴である。
(a)ビニル基含有量が0.5mmol/g以上であること
(b)表面積が500m/g以上であること
(c)乾燥時における水による膨潤度比が1.05以下であること
または、本発明の架橋共重合体は、上記(b)、(c)および下記(d)の特性を有することが特徴である。
(d)下記溶出試験で測定される不純物残留量が20mg/L以下であることを特徴とする架橋共重合体。
[溶出試験]
i)室温(約25℃)下、脱塩水を十分に通液した架橋共重合体10.0mlにアセトン50mlをSV2で通液する。
ii)通液したアセトン全量中に含まれる不純物を分析し、不純物残留量を測定する。
iii)不純物残留量を架橋重合体1リットル(L)当たりに換算して算出する。
【0050】
以下、(a)〜(d)の特性について詳述する。
[2−1]ビニル基含有量
本発明の架橋共重合体は、表面積が500m/g以上、好ましくは600m/g以上であり、通常1500m/g以下である。表面積が小さすぎると被処理液の対象物質の吸着量が小さくなり、大きすぎると樹脂が脆弱になり、微粉末が発生したり、樹脂が破砕しやすくなる。表面積は、例えばマイクロメトリクス社製「フローソーブ2300型」などの測定装置を用いた窒素吸着法等により測定することが出来る。
[2−2]表面積
本発明の架橋共重合体は、ビニル基含有量が0.5mmol/g以上、好ましくは0.7mmol/g以上、さらに好ましくは1.0mmol/g以上であり、通常3.0mmol/g以下、好ましくは2.5mmol/g以下、さらに好ましくは2.0mmol/g以下である。ビニル基含有量が多すぎると樹脂の膨潤率が高くなる。ビニル基含有量を上記範囲とするためには、フリーデル・クラフツ反応を行わないこと、有機酸との接触を避けること等により可能である。ビニル基含有量は、例えばラマン分光法を用いて測定することが出来る。
[2−3]乾燥時における水による膨潤度比
本発明の架橋共重合体は、十分に架橋構造が形成されるため、架橋共重合体に形成されるマクロポアやミクロポアが剛直化している。このため、乾燥状態でも水分を含有した状態でも、架橋共重合体そのものは水によって膨潤しない特性を有する。即ち、本発明の架橋共重合体は、乾燥時における水による膨潤度比が1.05以下、好ましくは1.03以下、さらに好ましくは1.02であり、通常0.98以上である。前記膨潤度比が高すぎると乾燥状態で測定した細孔物性値と実使用状態である水中での細孔構造が異なる。
【0051】
乾燥時における水による膨潤度比は以下のようにして測定することができる。
[乾燥時における水による膨潤度比の測定方法]
(i)メタノールを入れたビーカーに架橋共重合体を入れ、脱気する。この架橋共重合体をカラムに充填し、脱気した脱塩水を通液して、架橋共重合体中のメタノールを水に置換する。この架橋共重合体を50℃で真空乾燥する。得られた架橋共重合体をメスシリンダーに入れ、乾燥状態での体積を測定する。
(ii)乾燥状態の前記架橋共重合体にメタノールを加え、スラリー状態にして、カラムに流し込む。前記カラムに50%メタノール水溶液を3BV通液し、更に脱塩水で10BV通液して、架橋共重合体中のメタノールを水に置換する。
【0052】
水に置換した架橋共重合体を取り出し、再度メスシリンダーに移し、水膨潤状態での体積を測定する。
(iii)乾燥時における水による膨潤度比=水膨潤状態での架橋共重合体の体積/乾燥状態での架橋共重合体体積として、算出する。
なお、本発明の架橋共重合体は、水によって膨潤しない特性を有するが、たとえばトルエン等の有機溶媒によっても膨潤しにくい特性を有する。ただし、架橋密度が低い部分が有機溶媒により溶媒和されるため、膨潤度比は、水によるそれよりも高い。即ち、本発明の架橋共重合体は、トルエンによる膨潤度比が通常1.2以下、好ましくは1.15%以下である。膨潤度比が高すぎると通液性が低下する。
【0053】
トルエンによる膨潤度比は以下のようにして測定することができる。
[トルエンによる膨潤度比の測定方法]
(i)メタノールを入れたビーカーに架橋共重合体を入れ、真空脱気する。この架橋共重合体をカラムに充填し、脱気した脱塩水を通液して、架橋共重合体中のメタノールを水に置換する。この架橋共重合体をメスシリンダーに10.0ml正確に取り、秤量瓶に移し、50℃で真空乾燥し、樹脂の重量を測定する。前記測定値より、架橋共重合体1.0gあたりの体積を算出する。
(ii)真空乾燥により得られた前記架橋共重合体を25mlのメスシリンダーに入れ、乾燥重量を測定する。前記メスシリンダー中に、トルエンを加え、80℃で2時間保持し、膨潤した樹脂の体積を測定する。トルエン中での乾燥重量あたりの体積を測定し、「トルエン膨潤状態での架橋共重合体の体積」とする。
(iii)トルエンによる膨潤度比=トルエン膨潤状態での架橋共重合体の体積/水膨潤状態での架橋共重合体の体積として、算出する。
[2−4]不純物残留量
本発明の架橋共重合体は、下記溶出試験で測定される不純物残留量が20mg/L以下、好ましくは10mg/L以下、さらに好ましくは1mg/L以下である。不純物残留量は小さいほどよく、大きすぎると医薬品、食品用途に使用するには好ましくない。上述のように不純物残留量を一層低減するためには、上述の製造方法により製造する、過熱水蒸気処理を行うこと等の方法を採用するのが好ましい。
[溶出試験]
i)室温(約25℃)下、脱塩水を十分に通液した架橋共重合体10.0mlにアセトン50mlをSV2で通液する。
ii)通液したアセトン全量中に含まれる不純物を分析し、不純物残留量を測定する。
iii)不純物残留量を架橋重合体1リットル当たりに換算して算出する。
【0054】
前記不純物残留量は、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やガスクロマトグラフィー(GC)により測定、評価することができる。
[3]合成吸着剤
本発明の合成吸着剤は、上述の方法により本発明の重合体を製造する際に、その重合条件を調整することにより、適切な多孔構造を有する多孔性の重合体とすることにより、製造される。
[3−1]合成吸着剤となる重合体
本発明の合成吸着剤としては、上述した本発明の重合体を使用する。その種類としては、架橋共重合体が用いられる。
【0055】
架橋共重合体の種類は特に制限されず、目的とする合成吸着剤の用途に応じて選択すれば良い。中でも、スチレンとジビニルベンゼンとの架橋共重合体であることが特に好ましい。
架橋共重合体の構造としては、多孔性(ポーラス型、ハイポーラス型)の架橋共重合体が用いられる。その細孔径等の細孔特性は、目的とする合成吸着剤の用途、特に吸着対象物のサイズに応じて適宜調整すればよい。一般的に、医薬品等の低分子量物質等の吸着を目的とする場合、その細孔半径は通常2nm以上、好ましくは3nm以上、また、通常50nm以下、好ましくは30nm以下の範囲である。また、ペプチドやたんぱく質等の吸着を目的とする場合、その細孔径は通常2nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下の範囲である。
【0056】
なお、本発明の重合体は何れか一種を単独で使用しても良く、二種以上を任意の組み合わせで使用してもよい。また、本発明の重合体と他の重合体とを併用しても良い。
[3−2]合成吸着剤の性質
本発明の合成吸着剤は、使用時における溶出物の発生が少ない。これは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やガスクロマトグラフィー(GC)により評価することがで
きる。
【0057】
具体的に、本発明の合成吸着剤は、合成医薬品、漢方薬、ペプチド、蛋白質、ポリフェノール誘導体の吸着・精製、果汁の吸着、精製、ガス吸着剤等の用途に使用することが可能である。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[1]実施例、比較例の製造、準備
下記の実施例、および比較例1の重合は、窒素導入管、圧力計、熱電対のための保護管、モノマー投入口、圧力センサーを取り付けた3Lの耐圧重合缶をオイルに浸した状態で行った。
[1−1]実施例1
前記3Lの耐圧性重合缶に、80℃で恒量値に達するまで真空乾燥したスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤である三菱化学社製「ダイヤイオンHP20」を、100.0g投入した。次に、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(t-Butylperoxy-2-ethylhexylmonocarbonate)、パーブチルE(日本油脂社製、以下、「PBE」と称する。)0.50g、80%ジビニルベンゼン(ダウ社製。以下、「DVB」と称することがある。)10.0g、トルエン(国産化学社製 特級試薬。以下、「TL」と称することがある。)140gの溶液を調整し加えた。溶液添加の際は、三角ロートを用いて、一度(約10秒程度で)に投入した。室温で0.5時間攪拌し、前記合成吸着剤を膨潤させた後、各温度に昇温し、120℃で4時間保持し、追重合を行った。
【0059】
重合終了後、冷却し、重合缶の内圧をパージした。上澄み液を濾過し、溶液をサンプリングした。抜き出し管を用いて溶液を抜き出した。見かけ上は、前記重合体がさらさらする程度まで溶媒を除去できた。その後、3Lの4つ口フラスコに移し、重合体中に残留する溶媒を水蒸気蒸留により除去した。
[1−2]実施例2
脱塩水673ml、5重量%ポリビニルアルコール(Aldrich社製。以下、「PVA」と称することがある。)15mlを重合缶に仕込んだ後、DVB(Dow社製 純度57%)(Aldrich社製)145g、スチレン(Aldrich製)5.1g、ポリスチレン(Aldrich品)57kd 8.5g、TL(国産化学社製)225gを調製したモノマー溶液を重合缶に仕込んだ。室温で0.5時間攪拌したのち、80℃で4時間保持した。冷却後、重合体を取り出し、水洗した後、再度前記重合体を重合缶に仕込んだ。
【0060】
脱塩水673ml、5重量%PVA15ml、DVB(純度80%)15g、TL 202.5g、パーブチルE 0.25gを調製したモノマー溶液を反応缶に仕込んだ。室温で0.5時間攪拌し、前記重合体を膨潤させた後、120℃で4時間保持した。
重合終了後、冷却し、重合缶の内圧をパージした。その後、3Lの4つ口フラスコに移し、重合体中に残留する溶媒を除去した。25℃から80℃まで2時間で昇温し、80℃〜112℃まで2℃/時間で昇温した。さらに115℃で3時間留出させた後、112℃で3時間、水蒸気を放出した。
[1−3]実施例3
脱塩水673ml、5重量%ポリビニルアルコール(Aldrich社製。以下、「PVA」と称することがある。)15mlを反応缶に仕込んだ後、DVB(Dow社製 純度63%)(Aldrich社製)145g、ポリスチレン57kd 8.5g、TL(国産化学社製)225g、
パーオクタO(1,1,3,3,-Tetramehylbutyl peroxy-2-ethylhexanoate)(日本油脂社製、以下、「POO」と称する。)1.0gを調製したモノマー溶液を反応缶に仕込んだ。室温で0.5時間攪拌したのち、80℃で8時間保持した。引き続き、サンノプコ社製消泡剤SN470の溶液1.0%溶液を10ml滴下した。更に、DVB(純度80%)15g、TL 202.5g、POO 0.25gを調製したモノマー溶液を反応缶に仕込んだ。室温で0.5時間攪拌し、重合体を膨潤させた後、120℃で4時間保持した。
【0061】
重合終了後、冷却し、重合缶の内圧をパージした。その後、3Lの4つ口フラスコに移し、樹脂中に残留する溶媒を除去した。25℃から80℃まで2時間で昇温し、80℃〜112℃まで2℃/時間で昇温した。さらに115℃で3時間留出させた後、112℃で3時間、水蒸気を放出した。
[1−4]実施例4
3Lの重合缶に、3重量%PVA(日本合成化学社製「GH−20」)水溶液32.4ml、および脱塩水976mlを加えた。一方、モノマー相は、80.4重量%DVB(Dow社製81重量%DVB)199.0g、スチレンモノマー1.00g、TL(国産化学社製特級)370.0gを溶解した溶液を調製した。パーオクタO(1,1,3,3,-Tetramehylbutyl peroxy-2-ethylhexanoate)1.366gをモノマー溶液に添加し、室温で攪拌した。
【0062】
オイルに漬けた反応缶を25℃に温度調節した。前記モノマー溶液を三角漏斗を用いて重合缶に投入した。添加後、30分間130rpmで攪拌し、予備分散した。その後、80℃まで90分で昇温し、80℃で4時間、(前段)重合した。
反応缶内を大気圧に戻した後、抜き出し管を用いて水相を抜き出した。その後、重合前の水相に相当する量のラボ脱塩水を加え、2,3分攪拌した。終了後、再度抜き出し管を用いて、水洗した水相溶液を抜き出した。この操作を3回繰り返し、水相中のPVA溶液を除去した。
【0063】
終了後、1回目の水相に相当する脱塩水を加え、200rpmで攪拌し重合ポリマー
を分散しながら、DVB(純度80%)20g、TL 270g、パーオクタO 0.5gを調製したモノマー溶液を反応缶に3分で滴下した。室温で0.5時間攪拌し、重合体を膨潤させた後、120℃で4時間保持し、追重合を終了した。重合終了後、反応器を放冷した。反応缶から重合体を取り出した。取り出した前記重合体を、1Lの脱塩水で5回水洗した。
【0064】
得られた前記重合体を3Lの4つ口フラスコに移し、脱塩水を加え、攪拌し、加熱した。昇温すると樹脂中に残留する溶媒が留出し、更に昇温し溶媒が留出しなくなるまで、内温100℃で水蒸気蒸留をした。
[1−5]実施例5
実施例1で得られた重合体600mlを、内径44mmφ×48cmのSUS製カラムに充填し、200℃の過熱水蒸気を6kg/hで8時間通気した。得られた重合体の水分含有率は0.1%であった。得られた重合体の細孔物性、一般性能、重合体中の残留量は別紙に示した。
[1−6]実施例6
実施例4で得られた水切りした重合体600mlを、内径44mmφ×48cmのSUS製カラムに充填し、200℃の過熱水蒸気を6kg/hで8時間通気した。得られた重合体の水分含有率は0.1%であった。得られた重合体の細孔物性、一般性能、重合体中の残留量は別紙に示した。
[1−7]比較例1
3Lの重合缶に、3重量%PVA水溶液35ml、および脱塩水988mlを加えた。一方、モノマー相は、DVB(Aldrich製63重量%DVB)175.0g、スチレンモノマー25.0g、2−エチル−1−ヘキサノール(東京化成製特級)150.0gを溶解した溶液を調製した。75%BPO1.9gをモノマー溶液に添加して、室温で攪拌溶解した。
【0065】
オイルに漬けた反応缶を25℃に温度調節した。前記モノマー溶液を三角漏斗を用いて重合缶に投入した。添加後、30分間130rpmで攪拌し、予備分散をした。その後、80℃まで90分で昇温し、80℃で10時間重合した。終了後、反応缶を冷却した。
得られた重合体を3Lの4つ口フラスコに移し、脱塩水を加え、攪拌し、加熱した。重合体中に残留する溶媒が留出し、更に昇温し溶媒が留出しなくなるまで、内温100℃で水蒸気蒸留をした。
[1−8]比較例2
ロームアンドハース社製合成吸着剤「アンバーライトXAD4」を比較例2として、実施例と同様、後述の評価を行った。
[1−9]比較例3
ロームアンドハース社製合成吸着剤「アンバーライトXAD16」を比較例3として、実施例と同様、後述の評価を行った。
[1−10]比較例4
三菱化学社製合成吸着剤「セパビーズSP700」を比較例4として、実施例と同様、後述の評価を行った。
[1−11]比較例5
三菱化学社製合成吸着剤「セパビーズSP70」を比較例5として、実施例と同様、後述の評価を行った。
[2]評価
[2−1]ビニル基の定量
ビニル基の定量は、ラマン分光法を用いて行った。即ち、サーモエレクトロン社製「Nicolet Almerga XR」を用いて、乾燥させた重合体のラマンスペクトルを測定した。残存二重結合に由来する1630cm−1のピークを定量し、残存二重結合量を算出した。結果を表1に示す。
[2−2]表面積
各架橋共重合体における表面積は窒素吸着法を採用し、マイクロメトリクス社製「フローソーブ2300型」を用いて測定した。
[2−3]乾燥時における水による膨潤度比(以下、適宜「水膨潤度比」という。)
(i)メタノールを入れたビーカーに架橋共重合体を入れ、脱気した。この架橋共重合体をカラムに充填し、脱気した脱塩水を通液して、架橋共重合体中のメタノールを水に置換した。この架橋共重合体を50℃で真空乾燥した。得られた架橋共重合体をメスシリンダーに入れ、乾燥状態での体積を測定した。
(ii)乾燥状態の前記架橋共重合体にメタノールを加え、スラリー状態にして、カラムに流し込んだ。前記カラムに50%メタノール水溶液を3BV通液し、更に脱塩水で10BV通液して、架橋共重合体中のメタノールを水に置換した。
【0066】
水に置換した架橋共重合体を取り出し、再度メスシリンダーに移し、水膨潤状態での体積を測定した。
(iii)乾燥時における水による膨潤度比=水膨潤状態での架橋共重合体の体積/乾燥状態での架橋共重合体体積として、算出した。
結果を表1に示す。
[2−4]トルエンによる膨潤度比(以下、適宜「TL膨潤度比」という。)
(i)メタノールを入れたビーカーに架橋共重合体を入れ、真空脱気した。この架橋共重合体をカラムに充填し、脱気した脱塩水を通液して、架橋共重合体中のメタノールを水に置換した。この架橋共重合体をメスシリンダーに10.0ml正確に取り、秤量瓶に移し、50℃で真空乾燥し、樹脂の重量を測定した。前記測定値より、架橋共重合体1.0gあたりの体積を算出した。
(ii)真空乾燥により得られた前記架橋共重合体を25mlのメスシリンダーに入れ、乾燥重量を測定した。前記メスシリンダー中に、トルエンを加え、80℃で2時間保持し、膨潤した樹脂の体積を測定した。トルエン中での乾燥重量あたりの体積を測定し、「トルエン膨潤状態での架橋共重合体の体積」とした。
(iii)トルエンによる膨潤度比=トルエン膨潤状態での架橋共重合体の体積/水膨潤状態での架橋共重合体の体積として、算出した。
[2−5]重量平均粒子径
各架橋共重合体の重量平均粒子径の測定は、以下の手順で行った。
【0067】
<重量平均粒子径測定法>
篩目の径が1180μm、850μm、710μm、600μm、425μm、300μmの篩を、下方になる程、篩目の径が小さくなる様に積み重ねた。この積み重ねた篩をバットの上に置き、最上段に積み重ねられた1180μmの篩の中に架橋共重合体を約100mL入れた。
【0068】
水道水につないだゴム管から樹脂上にゆるやかに水を注ぎ小粒を下の方へ篩別した。1180μmの篩の中に残った架橋共重合体は、さらに以下の方法により、厳密に小粒を篩別した。即ち、別のバットの1/2位の深さまで水を満たし、1180μmの篩を前記バットの中で上下及び回転運動を与えて動揺させることを繰り返し、小粒を篩別した。
前記バットの中の小粒は次の850μmの篩の上へ戻し、また1180μmの篩の上に残った架橋共重合体はさらに別のバットに採取した。篩の目に架橋共重合体が詰まっていれば、篩をバットに逆に置き、水道水につないだゴム管に密着させ、水を強く流して篩の目に詰まった架橋共重合体を取り出した。取り出した架橋共重合体は、1180μmの篩上に残った架橋共重合体を採取したバットに移し、合計をメスシリンダーで容積を測定した。この容積をa(mL)とする。1180μmの篩を通った架橋共重合体は850μm、710μm、600μm、425μm、300μmの篩についてそれぞれ同様の操作を行い、メスシリンダーを用いて容積b(mL)、c(mL)、d(mL)、e(mL)、f(mL)を求め、最後に300μmの篩を通った架橋共重合体の容積をメスシリンダーで測定しg(mL)とした。
【0069】
V=a+b+c+d+e+f+gとし、a/V×100=a’(%)、b/V×100=b’(%)、c/V×100=c’(%)、d/V×100=d’(%)、e/V×100=e’(%)、f/V×100=f’(%)、g/V×100=g’(%)を算出した。
前記a’〜g’より片軸に各篩の残留分累計(%)、他の軸に篩目の径(mm)をとり、これを対数確率紙上にプロットする。残留分の多い順に3点を取り、この3点を出来るだけ満足するような線を引き、この線から残留分累計が50%に相当する篩目の径(mm)を求め、これを重量平均粒子径とした。
【0070】
なお、上記重量平均粒子径の算出法は、三菱化学株式会社イオン交換樹脂事業部発行「ダイヤイオンI基礎編」第14版(平成11年9月1日)第139〜141頁に記載される公知の算出法である。
[2−6]細孔容積
各架橋共重合体の細孔容積は、窒素吸着法を採用し、マイクロメトリクス社製ASAP2400型を用いて測定した。
[2−7]残留成分、および留出液の分析
200mlのビーカーにHPLC用アセトン150mlを加え、この中へ室温(約25℃)下、脱塩水を十分に通液した架橋共重合体10.0mlを加えた。アセトンのスラリー溶液を超音波洗浄器に入れ、10分間脱気した。このスラリー溶液をガラスカラムに充填した。溶離液を三角フラスコに回収し、更に50mlのアセトンを室温でSV2で通液した。全量回収したアセトン溶液をバイアルに入れ、HPLCとGCで定量分析し、重合体中の残留成分を分析した。不純物残留量を架橋重合体1リットル当たりに換算して算出した。
トルエン(TL)、スチレン(St)、ジビニルベンゼン(DVB)、エチルビニルベンゼン(EVB)、ジエチルベンゼン(DEB)の各不純物残留量を表1に示す。
分析条件
HPLC装置
HPLC装置:Agilent 1100シリーズ
溶離液 :50%AcCN 水溶液(0分)→(4%/分)→100%AcCN
(10分)→100%AcCN(5分hold)→17.5分で分析
終了
Post time5.0分
流速 :0.500ml/分(一定)
分析カラム :ODSカラム Eclipse XDB−C18 3.5μm
3.0mmID×150mm
検出波長 :200nm
カラム温度 :40℃

GC分析条件
GC装置 :Agilent 6850シリース゛
昇温条件 :50℃→8℃/分→300℃(0分hold) 分析時間約
31.3分
分析カラム :HP−5 50m×0.20mmID、0.33μm
19091J−105
キャリアガス :He 40cm/S
検出器 :FID
Injector温度:200℃
検出器温度 :250℃
スプリット比 :25/1
注入量 :1.00μL inアセトン
【0071】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の架橋共重合体の製造方法によれば、製品としての架橋共重合体の溶出物を効率よく低減できる上、高収量が実現される。また、本発明の架橋共重合体およびこれを用いて形成された吸着剤は、溶出物の発生が少ないため、高品質である。よって、当該分野における産業上の利用可能性は極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)モノビニル芳香族モノマーと架橋性芳香族モノマーを共重合させて架橋共重合体(A)を得る工程
(2)前記の共重合させた架橋共重合体(A)を溶媒で膨潤させる工程
(3)前記の膨潤させた架橋共重合体(A)を加熱する工程
を含むことを特徴とする架橋共重合体(B)の製造方法。
【請求項2】
前記(3)前記の膨潤させた架橋共重合体(A)を加熱する工程の後に、(4)架橋重合体(A)を水蒸気と接触させる工程
を含む請求項1に記載の架橋共重合体(B)の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の架橋共重合体(B)の製造方法によって製造されたことを特徴とする架橋共重合体。
【請求項4】
ビニル基含有量が0.5mmol/g以上であり、表面積が500m/g以上であり、かつ乾燥時における水による膨潤度比が1.05以下であることを特徴とする架橋共重合体。
【請求項5】
表面積が500m/g以上であり、乾燥時における水による膨潤度比が1.05以下であり、かつ下記溶出試験で測定される不純物残留量が20mg/L以下であることを特徴とする架橋共重合体。
[溶出試験]
i)室温(約25℃)下、脱塩水を十分に通液した架橋共重合体10.0mlにアセトン50mlをSV2で通液する。
ii)通液したアセトン全量中に含まれる不純物を分析し、不純物残留量を測定する。
iii)不純物残留量を架橋重合体1リットル当たりに換算して算出する。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の架橋共重合体を含むことを特徴とする吸着剤。

【公開番号】特開2009−73969(P2009−73969A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245323(P2007−245323)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】