説明

架橋性組成物、その調製方法およびその使用

【課題】架橋性組成物、その調製方法およびその使用を提供する。
【解決手段】少なくともその1つがカルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有するエラストマーに基づく新規の架橋性組成物が提供され、これらの架橋性組成物は、金属イオンの特別の不飽和有機塩と、フリーラジカル供与体の役割を果たす架橋系とを含有する。本架橋性組成物から、優れた物理特性を有する架橋エラストマーが得られる。新規の架橋性組成物は、幅広い用途を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有するエラストマーと、金属イオンの特別の有機塩と、フリーラジカル供与体に基づく架橋系とを含有する架橋性組成物に関する。本発明は更に、該架橋性組成物の調製およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
液体形態で加工することができるか、またはできるだけ溶媒を含有しないか、あるいは低い溶媒含量を有し、そして硬化または加硫後に加硫エラストマーの通常の特性を有する加硫可能な組成物が要求されている。特に、低粘性形態で加工することができ、加硫後に高い熱安定性および調整可能な物理特性を有し、従って、シリコーンゴムまたはポリウレタンなどの液体形態で加工可能な通常の系の特性と、例えば、HNBR、EVM、ACMおよびAEMゴムなどの高性能エラストマーの特性とを兼ね備えた材料が要求されている。また、第1に、高温または高せん断下で非常に低い粘度を有するが、第2に、室温で負荷を受けたときに十分な安定性を備えた材料も特に必要とされている。この特性を兼ね備えることによって、一方ではこれらの材料は通常の方法(押出、射出、カレンダー加工、加圧)で成形されて、例えば、ハイド(hide)、ライニングストリップまたはライニングボディなどの少しの間室温で寸法安定性である物体を与えることができると共に、これらの材料はそのまま使用されるが、より高い温度での低粘度を獲得し、そして通常は「液体形態で」加工できることが意味されるであろう。
【特許文献1】EP−A−0933381号明細書
【特許文献2】米国特許第5,157,083号明細書
【特許文献3】国際公開第01/77185号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、加工温度で低粘度を有すると同時に、室温で負荷を受けたときに安定性を有し、そして更に、加硫後に高い熱安定性および高レベルの物理特性を有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
驚くことに、特定された粘度範囲内で、カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を含有するエラストマーと、金属イオンの特別の不飽和カルボン酸塩およびフリーラジカル架橋系とを組み合わせることによって、所望の特性プロファイルを有し、本発明による目的を達成する加硫可能な組成物が得られ、これらは、続いて行われるエラストマーの加硫または不飽和カルボン酸塩の重合の後に、金属および通常の極性基材(ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエポキシド、多価アルコール、ポリ酸、ならびにこれらの誘導体および混合物など)に関して高い接着効果を有する、高強度であると同時に弾性の製品であるという点で上記の要求を満たす加硫物をもたらすことが分かった。
【0005】
本発明は、
(1)少なくともその1つがカルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有する1つまたは複数のエラストマーと、
(2)一般式(I)
(Ry−x/yx+ (I)
(式中、Ry−は、y個のカルボキシラート基を含有するα,β−不飽和C〜C14−カルボキシラートを表し、
yは、値1、2、3または4を表すことができ、
xは、2、3または4であり、そして
Mは、2価、3価または4価の金属である)の1つまたは複数の異なる塩と、
(3)フリーラジカル供与体の役割を果たす1つまたは複数の架橋剤と、
を含有する架橋性組成物であって、
(a)前記エラストマー(1)、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合には全てのエラストマー(1)を合わせた混合物が、ASTM標準D1646に従って測定される際に1〜35の範囲のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を有し、
(b)前記架橋性組成物が、
(i)ゴムプロセスアナライザー(RPA)において60℃、1Hzおよび10%の振幅で測定される際に30000Pasよりも大きい複素粘度η
(ii)RPAにおいて60℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.4よりも大きい複素粘度の振幅依存性変化、
(iii)RPAにおいて、η(60℃、1Hzおよび10%の振幅)対η(130℃、1Hzおよび10%の振幅)の比として測定される際に6よりも大きい複素粘度の温度依存性変化、ならびに
(iv)RPAにおいて130℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.5未満の複素粘度の振幅依存性変化を有し、
前記(i)〜(iv)の全ての場合において複素粘度(η)に対して記載された値が、いずれの場合も複素粘度の数学的な絶対値を示すことを特徴とする架橋性組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
上記複素粘度は全て、それぞれの場合に記載した条件下で、アルファ・テクノロジーズ(Alpha Technologies)からのゴムプロセスアナライザー(RPA2000)において測定される。アルファ・テクノロジーズのゴムプロセスアナライザーおよびその動作は、当業者には明白に知られている。これは、ゴム混合物の粘弾性特性および加工挙動を研究するための振動レオメーターである。
【0007】
好ましい架橋性組成物は、
(1)10〜94重量%の、少なくともその1つがカルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有する1つまたは複数のエラストマーと、
(2)5〜89重量%の、一般式(I)
(Ry−x/yx+ (I)
(式中、Ry−は、y個のカルボキシラート基を含有するα,β−不飽和C〜C14−カルボキシラートを表し、
yは、値1、2、3または4を表すことができ、
xは、2、3または4であり、そして
Mは、2価、3価または4価の金属である)の1つまたは複数の塩と、
(3)1〜20重量%の、フリーラジカル供与体の役割を果たす1つまたは複数の架橋剤と、
を含有し、前記成分(1)、(2)および(3)の合計が100重量%以下である架橋性組成物であって、
(a)前記エラストマー(1)、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合には全てのエラストマー(1)を合わせた混合物が、ASTM標準D1646に従って測定される際に1〜35の範囲のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を有し、
(b)前記架橋性組成物が、
(i)ゴムプロセスアナライザー(RPA)において60℃、1Hzおよび10%の振幅で測定される際に30000Pasよりも大きい複素粘度η
(ii)RPAにおいて60℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.4よりも大きい複素粘度の振幅依存性変化、
(iii)RPAにおいて、η(60℃、1Hzおよび10%の振幅)対η(130℃、1Hzおよび10%の振幅)の比として測定される際に6よりも大きい複素粘度の温度依存性変化、ならびに
(iv)RPAにおいて130℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.5未満の複素粘度の振幅依存性変化を有し、
前記(i)〜(iv)の全ての場合において複素粘度(η)に対して記載された値が、いずれの場合も複素粘度の数学的な絶対値を示すことを特徴とする架橋性組成物である。
【0008】
特に好ましい架橋性組成物は、
(1)30〜84重量%の、少なくともその1つがカルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有する1つまたは複数のエラストマーと、
(2)14〜68重量%の、一般式(I)
(Ry−x/yx+ (I)
(式中、Ry−は、y個のカルボキシラート基を含有するα,β−不飽和C〜C14−カルボキシラートを表し、
yは、値1、2、3または4を表すことができ、
xは、2、3または4であり、そして
Mは、2価、3価または4価の金属である)の1つまたは複数の塩と、
(3)2〜15重量%の、フリーラジカル供与体としての1つまたは複数の架橋剤と、
を含有し、前記成分(1)、(2)および(3)の合計が100重量%以下である架橋性組成物であって、
(a)前記エラストマー(1)、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合には全てのエラストマー(1)を合わせた混合物が、ASTM標準D1646に従って測定される際に1〜35の範囲のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を有し、
(b)前記架橋性組成物が、
(i)ゴムプロセスアナライザー(RPA)において60℃、1Hzおよび10%の振幅で測定される際に30000Pasよりも大きい複素粘度η
(ii)RPAにおいて60℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.4よりも大きい複素粘度の振幅依存性変化、
(iii)RPAにおいて、η(60℃、1Hzおよび10%の振幅)対η(130℃、1Hzおよび10%の振幅)の比として測定される際に6よりも大きい複素粘度の温度依存性変化、ならびに
(iv)RPAにおいて130℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.5未満の複素粘度の振幅依存性変化とを有し、
前記全ての場合において複素粘度(η)に対して記載された値が、いずれの場合も複素粘度の数学的な絶対値を示すことを特徴とする架橋性組成物である。
【0009】
上述の全ての実施形態において、本発明による架橋性組成物は、成分(4)として、84重量%以下、好ましくは4〜64重量%、そして特に好ましくは10〜40重量%の1つまたは複数の更なる助剤、例えば、充填剤、繊維、本発明のエラストマー(1)による定義の範囲内でないポリマー、油、安定化剤、加工助剤、可塑剤、追加の重合性モノマー、ダイマー、トリマーまたはオリゴマー、あるいは加硫活性剤などを任意で含有することができ、前記成分(1)、(2)、(3)および(4)の合計は100重量%である。
【0010】
本発明による架橋性組成物は、その特性がニュートン流体に似ていることを特徴とする。これは、加工温度(例えば、130℃)において、せん断があっても複素粘度(このために、本願では常に複素粘度の数学的な絶対値が記載される)の著しい変化を示さないことを意味する。しかしながら室温では、架橋性組成物は加工温度のときよりも実質的に高い粘度を示し、せん断において明白な非ニュートン挙動(すなわち、せん断による粘度の低下)を示す。
【0011】
本発明による架橋性組成物は、
(i)ゴムプロセスアナライザー(RPA)において60℃、1Hzおよび10%の振幅で測定される際に30000Pasよりも大きい、好ましくは40000Pasよりも大きい複素粘度η
(ii)RPAにおいて60℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.4よりも大きい、好ましくは1.6よりも大きい複素粘度の振幅依存性変化、
(iii)RPAにおいて、η(60℃、1Hzおよび10%の振幅)対η(130℃、1Hzおよび10%の振幅)の比として測定される際に6よりも大きい、好ましくは8よりも大きい複素粘度の温度依存性変化、ならびに
(iv)RPAにおいて130℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.5未満、好ましくは1.4未満の複素粘度の振幅依存性変化を有し、
前記(i)〜(iv)の全ての場合において複素粘度(η)に対して記載された値は、いずれの場合も複素粘度の数学的な絶対値を示す。
【0012】
RPAにおいて60℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.4よりも大きい、好ましくは1.6よりも大きい複素粘度の振幅依存性変化(ii)(粘度の低下)の値は、非ニュートン挙動を有する充填ゴム混合物の典型的な挙動が存在することを意味する。
【0013】
RPAにおいて、η(60℃、1Hzおよび10%の振幅)対η(130℃、1Hzおよび10%の振幅)の比として測定される際に6よりも大きい、好ましくは8よりも大きい複素粘度の温度依存性変化(iii)(粘度の低下)の値は、温度の上昇時に、非ニュートン挙動からほぼニュートン挙動への遷移が生じることを意味する。
【0014】
RPAにおいて130℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.5未満、好ましくは1.4未満の複素粘度の振幅依存性変化(iv)(粘度の低下)の値は、加工温度においてほぼニュートン挙動が存在することを意味する。
【0015】
1つまたは複数の典型的なエラストマーをエラストマー(1)として使用することができる。
【0016】
決定的に重要なのは、使用されるエラストマーの少なくとも1つが、ポリマー鎖に結合したカルボキシル基および/またはカルボキシラート基を含有することである。
【0017】
通常、エラストマー(1)、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合にはエラストマー(1)の混合物は、100重量%のエラストマー(1)を基準として、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合にはエラストマー(1)の全混合物を基準として、0.5〜15重量%の結合カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を含有する。
【0018】
エラストマー(1)、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合にはエラストマー(1)の混合物は、好ましくは、100重量%のエラストマー(1)を基準として、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合にはエラストマー(1)の全混合物を基準として、0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜7重量%、そして特に1.5〜6重量%の結合カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を含有する。
【0019】
これらのカルボキシル基またはカルボキシラート基は、エラストマーのポリマー鎖に沿ってランダムに分配されていてもよいし、鎖の末端に存在してもよい。
【0020】
カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を含有する適切なエラストマー(1)は、例えば、
1.カルボキシル化ニトリルゴム(XNBRと省略されることもある)、
2.水素化カルボキシル化ニトリルゴム(HXNBRと省略されることもある)、
3.EPM、EPDM、HNBR、EVA、EVM、SBR、NRまたはBRに基づく無水マレイン酸(「MAH」)グラフト化ゴム、
4.カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴム(XSBRと省略されることもある)、
5.遊離カルボキシル基を有するAEM、
6.遊離カルボキシル基を有するACM、
および上述のポリマーの所望の混合物である。
【0021】
使用されるエラストマー(1)、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合には全てのエラストマー(1)の全混合物のムーニー粘度(ML1+4、100℃で測定)は、1〜35の範囲、好ましくは2〜25の範囲、特に好ましくは5〜20の範囲である。ムーニー粘度は、ASTM標準D1646に従って測定される。
【0022】
前記エラストマーのいくつかは市販されているが、更に、全ての場合において文献により当業者が利用可能である調製方法で得ることができる。
【0023】
カルボキシル化ニトリルゴム(XNBRと省略されることもある)とは、少なくとも1つの不飽和ニトリルと、少なくとも1つの共役ジエンと、カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を含有する少なくとも1つの更なるターモノマーとのターポリマーであるゴムを意味すると理解される。
【0024】
使用されるα,β−不飽和ニトリルは既知のどのα,β−不飽和ニトリルでもよく、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはこれらの混合物などの(C〜C)−α,β−不飽和ニトリルが好ましい。アクリロニトリルが特に好ましい。
【0025】
共役ジエンはどのタイプでもよい。好ましくは、(C〜C)共役ジエンが使用される。1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレンまたはこれらの混合物が特に好ましい。特に、1,3−ブタジエンおよびイソプレンまたはこれらの混合物が好ましい。1,3−ブタジエンは、非常に特に好ましい。
【0026】
カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を含有する使用可能なモノマーは、例えば、α,β−不飽和カルボン酸またはそのエステルである。酸としてのフマル酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸、ならびにこれらのエステルが好ましい。適切なエステルは、例えば、フマル酸および/またはマレイン酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルおよび2−エチルヘキシルモノエステル、ならびに/あるいはアクリル酸および/またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルおよび2−エチルヘキシルエステルである。カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を含有する使用可能なその他のモノマーは、不飽和ジカルボン酸、あるいはエステル、アミド、または無水物(例えば、無水マレイン酸など)などのその誘導体である。
【0027】
カルボキシル化ニトリルゴムは、カルボキシル基を含有する1つまたは複数のモノマーか、あるいはカルボキシラート基を含有する1つまたは複数のモノマーのいずれかを有するポリマーでよい。しかしながら、カルボキシル基を含有する1つまたは複数のモノマーと、カルボキシラート基を含有する1つまたは複数のモノマーとを同時に有するポリマーであってもよい。
【0028】
例えば、ブタジエンと、アクリロニトリルと、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはフマル酸および/またはマレイン酸;ならびに/あるいはフマル酸および/またはマレイン酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルおよび2−エチルヘキシルモノエステル;ならびに/あるいはアクリル酸および/またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルおよび2−エチルヘキシルエステルとのポリマーが適切である。
【0029】
例えば、ブタジエンと、アクリロニトリルと、カルボキシル基、特に、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸またはメタクリル酸を含有するモノマーとのポリマーが好ましい。
【0030】
更に、ブタジエンと、アクリロニトリルと、カルボキシル基、特に、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸またはメタクリル酸を含有するモノマーと、カルボキシラート基、特に、フマル酸またはマレイン酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルまたは2−エチルヘキシルモノエステル、あるいはアクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルまたは2−エチルヘキシルエステルを含有するモノマーとのポリマーも好ましい。
【0031】
XNBRポリマー中の共役ジエンとα,β−不飽和ニトリルの割合は、広範囲で変化し得る。共役ジエンの割合、あるいは共役ジエン(複数)の合計の割合は、通常、全ポリマーを基準として40〜90重量%の範囲であり、好ましくは55〜75重量%の範囲である。α,β−不飽和ニトリルの割合、あるいはα,β−不飽和ニトリル(複数)の合計の割合は、通常、全ポリマーを基準として9.9〜60重量%、好ましくは15〜50重量%である。追加のモノマーは、全ポリマーを基準として0.1〜40重量%、好ましくは1〜30重量%の量で存在する。全てのモノマーの割合は、いずれの場合も、全部で100重量%を示す。
【0032】
上記のモノマーの重合によるXNBRの調製は、当業者には十分によく知られており、文献(例えば、EP−A−0933381号明細書および米国特許第5,157,083号明細書、日本ゼオン(Nippon Zeon))に広範囲にわたって記載されている。
【0033】
特に低粘性タイプのXNBRを得るために、出発のXNBRに、文献から公知のメタセシス反応による分子量の低下を受けさせることが有用であると判明した。
【0034】
水素化カルボキシル化ニトリルゴム(HXNBRと省略されることもある)は、様々な経路で得ることができる。例えば、カルボキシル基を含有する化合物をHNBRにグラフトさせることが可能である。これらは更に、上記のカルボキシル化ニトリルゴムXNBRの水素化によって得ることもできる。このような水素化カルボキシル化ニトリルゴムは、例えば国際公開第01/77185号パンフレットに記載されている。
【0035】
本願との関連では、「水素化」または「水素化された」は、カルボキシル化ニトリルゴム中に元々存在する二重結合の少なくとも50%、好ましくは75%、特に好ましくは85%が転化されたことを意味すると理解される。
【0036】
従って、水素化カルボキシル化ニトリルゴムHXNBRは、少なくとも1つの不飽和ニトリルと、少なくとも1つの共役ジエンと、カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を含有する少なくとも1つの更なるターモノマーとに基づき、XNBR中に元々存在する二重結合の少なくとも50%が飽和されているカルボキシル化ニトリルゴムXNBRである。
【0037】
適切なHXNBRは、例えば、ブタジエンと、アクリロニトリルと、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはフマル酸および/またはマレイン酸;ならびに/あるいはフマル酸および/またはマレイン酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルおよび/または2−エチルヘキシルモノエステル;ならびに/あるいはアクリル酸および/またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルおよび/または2−エチルヘキシルエステルとから得られるXNBRに基づく水素化カルボキシル化ニトリルゴムである。
【0038】
適切なHXNBRは更に、例えば、ブタジエンと、アクリロニトリルと、カルボキシル基、特にフマル酸、マレイン酸、アクリル酸またはメタクリル酸を含有するモノマーとから得られるXNBRに基づく水素化カルボキシル化ニトリルゴムである。
【0039】
適切なHXNBRは更に、例えば、ブタジエンと、アクリロニトリルと、カルボキシル基、特にフマル酸、マレイン酸、アクリル酸またはメタクリル酸を含有するモノマーと、カルボキシラート基、特に、フマル酸およびマレイン酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルまたは2−エチルヘキシルモノエステル、あるいはアクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルまたは2−エチルヘキシルエステルを含有するモノマーとから得られるXNBRに基づく水素化カルボキシル化ニトリルゴムである。
【0040】
原則として、均一または不均一水素化触媒を用いてXNBRの水素化を実行することが可能である。
【0041】
国際公開第01/77185号パンフレットに記載されるように、例えば、「ウィルキンソン(Wilkinson)」触媒((PPhRhCl)として知られる触媒またはその他の触媒などの均一触媒を用いて、水素との反応を実行することが可能である。ニトリルゴムの水素化のための方法は既知である。通常、ロジウムまたはチタンが触媒として使用されるが、金属としての、あるいは好ましくは金属化合物の形態である白金、イリジウム、パラジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、コバルトまたは銅を使用することも可能である(例えば、米国特許第3,700,637号明細書、独国特許第2539132号明細書、EP−A−134023号明細書、DE−A−3541689号明細書、DE−A−3540918号明細書、EP−A−298386号明細書、DE−A−3529252号明細書、DE−A−3433392号明細書、米国特許第4,464,515号明細書および米国特許第4,503,196号明細書を参照)。
【0042】
均一相における水素化のための適切な触媒および溶媒は以下に記載されており、DE−A−2539132号明細書およびEP−A−0471250号明細書にも開示されている。
【0043】
例えば、ロジウム含有触媒の存在下で選択的な水素化を達成することができる。例えば、一般式
(RB)RhX
の触媒を使用することが可能であり、式中、Rは同一または異なり、C〜C−アルキル基、C〜C−シクロアルキル基、C〜C15−アリール基またはC〜C15−アラルキル基である。Bは、リン、ヒ素、硫黄またはスルホキシド基S=Oであり、Xは、水素またはアニオン、好ましくはハロゲン、特に好ましくは塩素または臭素であり、lは、2、3または4であり、mは2または3であり、そしてnは1、2または3、好ましくは1または3である。好ましい触媒は、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)クロリドおよびトリス(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)クロリド、ならびに式(CP)RhHのテトラキス(トリフェニルホスフィン)ロジウムヒドリド、そしてトリフェニルホスフィンが完全にまたは部分的にトリシクロヘキシルホスフィンで置換された、対応する化合物である。触媒は、少量で用いることができる。ポリマーの重量を基準として0.01〜1重量%の範囲、好ましくは0.03〜0.5重量%の範囲、特に好ましくは0.1〜0.3重量%の範囲の量が適切である。
【0044】
通常、式RBの配位子である共触媒と一緒に触媒を使用することが好都合であり、R、mおよびBは上記の意味を有する。好ましくは、mは3であり、Bはリンであり、基Rは、同一でも異なっていてもよい。これらは、好ましくは、トリアルキル、トリシクロアルキル、トリアリール、トリアラルキル、ジアリール−モノアルキル、ジアリール−モノシクロアルキル、ジアルキル−モノアリール、ジアルキル−モノシクロアルキル、またはジシクロアルキル−モノアリール基を含む共触媒である。
【0045】
共触媒の例は、例えば、米国特許第4,631,315号明細書に見出されるはずである。好ましい共触媒は、トリフェニルホスフィンである。共触媒は、好ましくは、水素化すべきニトリルゴムの重量を基準として0.3〜5重量%の範囲、より好ましくは0.5〜4重量%の範囲の量で使用される。更に、ロジウム含有触媒と共触媒との重量比は、好ましくは、1:3〜1:55の範囲、より好ましくは1:5〜1:45の範囲である。水素化すべきニトリルゴム100重量部を基準として、0.1〜33重量部の共触媒、好ましくは0.5〜20重量部、非常に特に好ましくは1〜5重量部、特に、水素化すべきニトリルゴム100重量部を基準として2重量部よりも多く、5重量部よりも少ない共触媒が使用されるのが適切である。
【0046】
この水素化の実際的な手順は、米国特許第6,683,136号明細書から、当業者には十分によく知られている。通常は、水素化すべきニトリルゴムを、トルエンまたはモノクロロベンゼンなどの溶媒中で100〜150℃および50〜150バールの圧力で2〜10時間、水素で処理することによって実施される。
【0047】
対応するカルボキシル化ニトリルゴムの水素化による水素化カルボキシル化ニトリルゴムの調製のための不均一触媒の使用は、通常、パラジウムに基づく担持触媒を必要とする。
【0048】
カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有する1つまたは複数のエラストマー(1)に加えて、カルボキシル基またはカルボキシラート基を持たない更なるエラストマー(1)が存在してもよいが、ただし、本発明による組成物中の全てのエラストマー(1)の混合物が、1〜35の範囲のムーニー粘度(ML1+4、100℃)という重要な特徴を満たすことを条件とする。
【0049】
例えば、カルボキシル基またはカルボキシラート基を持たないエラストマー(1)として、NBRおよびHNBRを使用することができる。
【0050】
NBRは、少なくとも1つのα,β−不飽和ニトリルと、少なくとも1つの共役ジエンとのコポリマーであるゴムを意味すると理解される。
【0051】
使用可能なα,β−不飽和ニトリルは、既知のα,β−不飽和ニトリルであり、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、またはこれらの混合物などの(C〜C)−α,β−不飽和ニトリルが好ましい。アクリロニトリルが特に好ましい。
【0052】
共役ジエンはどのタイプでもよい。好ましくは、(C〜C)共役ジエンが使用される。1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレンまたはこれらの混合物が特に好ましい。特に、1,3−ブタジエンおよびイソプレンまたはこれらの混合物が好ましい。1,3−ブタジエンは、非常に特に好ましい。
【0053】
水素化ニトリルゴムHNBRは、XNBRからのHXNBRの調製について上記で説明したのと類似の方法で、NBRタイプから得ることができる。
【0054】
成分(2)
成分(2)は、一般式(I)
(Ry−x/yx+ (I)
(式中、Ry−は、y個のカルボキシラート基を含有するα,β−不飽和C〜C14−カルボキシラートを表し、
yは、値1、2、3または4を表すことができ、
xは、2、3または4であり、そして
Mは、2価、3価または4価の金属である)の1つまたは複数の塩を含む。
【0055】
一般式(I)中のMは、好ましくは、Mg、Ca、Zn、Fe、Al、Ti、Pb、B、Sc、Yt、SnまたはHfを表し、特に好ましくは、Mg、Ca、Zn、Fe、Al、TiまたはPbを表す。
【0056】
一般式(I)中の基Ry−は、好ましくは、y個のカルボキシラート基を含有するα,β−不飽和C〜C−カルボキシラートであり、yは、値1、2、3または4であると仮定できる。特に好ましくは、Ry−は、アクリラート、メタクリラート、クロトナート、イソクロトナート、ソルビナート、フマラートまたはマレアートあるいはこれらの混合物を表す。
【0057】
成分(3)
成分(3)としては、1つまたは複数のフリーラジカル供与体が架橋剤として使用される。ペルオキシド化合物、アジド、光開始剤、レドックス開始剤またはこれらの組み合わせは、フリーラジカル供与体として使用することができる。
【0058】
適切なフリーラジカル供与体(3)は、例えば、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルペルベンゾアート、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブテン、4,4−ジ−tert−ブチルペルオキシノニルバレラート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、メチルエチルケトンペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカルボナート、ポリ(tert−ブチルペルオキシカルボナート)、エチル3,3−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブチラート、エチル3,3−ジ(tert−アミルペルオキシ)ブチラート、n−ブチル4,4−ジ(tert−ブチルペルオキシ)バレラート、2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルペルオキシベンゾアート、tert−ブチルペルオキシアセタート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシイソブチラート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシピバラート、tert−アミルペルオキシピバラート、tert−ブチルペルオキシネオデカノアート、クミルペルオキシネオデカノアート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルペルオキシネオデカノアート、tert−ブチルペルオキシベンゾアート、tert−ブチルペルオキシアセタート、tert−アミルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシイソブチラート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、クミルペルオキシネオデカノアート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルペルオキシネオデカノアート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン、(3−ジ−tert−アミル)ペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−アミルヒドロペルオキシド、クモールヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ヒドロペルオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシドおよびペルオキソ二硫酸カリウムなどのペルオキシド化合物である。
【0059】
適切なフリーラジカル供与体(3)は、例えば、アジドとしての2,2−アゾビスメチルエチルアセトニトリルであり、更に適切なアジドは、例えば、デュポン(DuPont)から「バゾ(Vazo)(登録商標)フリーラジカル開始剤」というキーワードで、そしてワコー・スペシャルティ・ケミカルズ(Wako Specialty Chemicals)から「フリーラジカルアゾ開始剤」として得ることができる更なる市販のアゾ開始剤およびフリーラジカル開始剤である。
【0060】
適切なフリーラジカル供与体(3)の例として、以下の光開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイルフェニルカルビノール、メチルフェニルグリオキシラート、4,4’−ジアジドビフェニル、4,4’−ジアジドベンゾフェノン、4,4’−ジアジドビフェニルオキシド、4,4’−ジアジド−ジスルホニルビフェニル、アジドベンゼン、4−アジド安息香酸、1,2−ビス(4−アジドフェニル)エチレン、4−アミノフェニル−4’−アジドフェニルメタン、2,6−ジ(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノン、ベンゾフェノンオキシム、アセトフェノン、ブロモアセトフェノン、シクロヘキサノン、ジフェニルモノスルフィド、ジベンゾチアゾリルジスルフィド、s−アシルジチオカルバマート、m,m’−アゾキシスチレン、ベンジルジメチルケタール、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、エチル4−ジメチルアミノベンゾアート(EPD)、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパン−1−オン、イソプロピルチオキサントン(ITX)、および2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オンも挙げることができる。
【0061】
以下のレドックス開始剤、Fe(II)/ヒドロペルオキシド、ペルオキシド/第3級アミン、ペルオキソ二硫酸塩/チオ硫酸塩、ヒドロペルオキシド/チオ硫酸塩も適切なフリーラジカル供与体(3)の例として挙げることができる。
【0062】
成分(4)
本発明による架橋性組成物は、更に、成分(4)として更なる構成要素を含有してもよい。
・カーボンブラック、シリカ、タルク、チョークまたは二酸化チタン、カオリン、ベントナイト、カーボンナノチューブ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムまたはテフロン(登録商標)(後者は、粉末形態であるのが好ましい)などの、ゴム産業において通常の充填剤、
・エラストマー(1)の本発明による定義の範囲内でないポリマー、
・油、
・可塑剤、
・加工助剤、
・安定化剤および酸化防止剤、
・染料、
・有機および無機繊維および繊維パルプを含む繊維、
・加硫活性剤、
・追加の重合性モノマー、ダイマー、トリマーまたはオリゴマー。
【0063】
本発明による組成物では、酸化防止剤の使用が所望されることがある。通常の酸化防止剤の例としては、p−ジクミルジフェニルアミン(ナウガード(Naugard)(登録商標)445)、ブルカノックス(Vulkanox)(登録商標)DDA(スチレン化ジフェニルアミン)、ブルカノックス(登録商標)ZMB2(メチルメルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩)、ブルカノックス(登録商標)HS(重合された1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン)、およびイルガノックス(Irganox)(登録商標)1035(チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナマートまたはチオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート)が挙げられる。
【0064】
本発明は更に、全ての成分(1)〜(3)と、任意で成分(4)とを混合することによって、本発明による架橋性組成物を調製する方法に関する。
【0065】
成分が互いに混合される順序は基本的に重要ではないが、いずれの場合も、使用可能な混合装置に適合される。
【0066】
成分(1)、(2)、(3)、そして任意で(4)の混合は、温度に依存して、ゴム産業において通常の典型的な混合系の使用により達成され得る。a)混合ロールまたはインターナルミキサーの形の不連続混合装置、およびb)混合押出機などの連続混合装置を用いることができる。
【0067】
これは、本発明による架橋性混合物の非ニュートン挙動の温度範囲で適切であるが、混合物のニュートン挙動の範囲内のより高い温度でも達成され得る。しかしながら、接着剤産業において通常の装置の使用も可能である。
【0068】
ゴム加工産業において通常の上記の混合装置によって、完全な混合を達成するために十分に高いせん断力をここで加えることができるので、約30〜40℃の範囲の所定のミキサー温度で成分(1)、(2)および(3)、そして任意で(4)の混合を行うことは、特に有用であると証明された。
【0069】
あるいは、混合は、より高い温度で、適切な装置においても達成され得る。個々の場合では、まず成分(1)および(2)、そして任意で(4)を混合し、最後になって初めてフリーラジカル供与体(3)を混合することが必要なこともある。これは、例えば、混合物が基材上/モールド内に出てくる直前に、ノズルの末端部分の混合ユニット内で行うことができる。PUまたはシリコーンゴムに基づく通常の2成分系と類似するこのような反応性混合は、従来の高性能ゴムについてはこれまで記載されていない。なぜなら、従来の高性能ゴムは、このために必要とされる低粘性形態では存在しなかったからである。従って、出てくる成形材料は、負荷を受けたときの高い安定性を冷却時に急速に獲得し、そのため、次に行われる加工過程(例えば、次に行われる接着による過程など)を直接妨害しないので、ここでは更に、PUおよびシリコーンゴムよりも優れた、本発明による組成物の特定の利点が存在する。
【0070】
実際には、架橋性組成物は、本発明による成分を混合した後に、例えば、いわゆる「混練シート(milled sheet)」、エンドレスストリップまたはエンドレスボディの形態で、あるいはペレットまたは顆粒として得られる。これらは、続いて加圧されるか、あるいはモールド内で射出成形されることが可能であり、使用されるフリーラジカル供与体に応じた適切な条件下で架橋される。
【0071】
本発明は更に、上記のタイプの本発明による架橋性組成物に、エネルギー入力を受けさせることによる、少なくともその1つがカルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有する架橋エラストマーの調製に関する。
【0072】
エネルギー入力は、架橋性組成物において選択される架橋剤(3)のタイプに応じて熱エネルギーまたは放射エネルギーの形で達成され得る。
【0073】
本発明による架橋性組成物の架橋の間に、架橋剤(3)は、まず成分(2)の不飽和酸の重合をもたらし、更に、使用されるエラストマー(1)の間の架橋およびエラストマー(1)とのフリーラジカル架橋をもたらす。
【0074】
本発明は更に、本発明による混合物の架橋によって得ることができ、少なくともその1つがカルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有する架橋エラストマーに関する。
【0075】
架橋エラストマーは、DIN53504に準拠する引張り試験において測定される際に10MPaよりも大きい強度を有し、更に、DIN53505に準拠して測定される際に60ショアAよりも大きい硬度を有する。
【0076】
フリーラジカル供与性架橋剤によって不可逆的に架橋されるこれらのエラストマーは、驚くことに、低粘度にもかかわらず、これまではHNBR、EVM、ACM、AEMなどの高性能ゴムに基づく高粘性混合物から出発したときだけに加硫後に得られるような、優れた動的機械特性および強度を有することを特徴とする。特性のこの組み合わせの結果として、完全に新規の成分群および適用形態および使用が考えられる。これらは、本発明による低粘性混合物に基づく高モジュラス加硫物である。加工におけるこの特性プロファイルおよび加硫物特性を有する製品は市場において知られておらず、技術的に記載されてない。
【0077】
本発明による架橋性組成物は、多数の異なる製品の製造に使用することができ、そのうちのいくつかは以下に記載される。
【0078】
1.弾性接着材料
本発明は、弾性接着材料としての架橋性組成物の使用に関する。
【0079】
弾性接着材料は、一般に、エポキシド、ジオール、イソシアナート、およびカルボン酸を含む複合系に基づく。弾性化は通常、低分子量の無定形ジオールによって、あるいは低分子量のエラストマー添加剤を用いて行われる。通常の系は、約100℃までは高強度を有する。構成要素の融点に依存して、より高い温度では強度は実質的に低下する。これらの接着剤は全て加水分解に対して敏感であり、中程度にしか耐油性でなく、そのためその使用分野において制限される。
【0080】
液体形態で適用されるが、冷たい部品上では寸法安定形態にある、顕著な弾性特性を有する高強度の接着材料の調製のために、本発明による架橋性組成物は特に適する。加圧し、そしてエネルギー入力により架橋させた後、金属と金属の間、金属と極性高温熱可塑性樹脂との間、金属と布/コードとの間、布/コードと熱可塑性樹脂との間、布/コードとゴムとの間、布/コードと布/コードとの間には、これらの弾性接着材料から出発して、優れた接着層が可能である。本発明による架橋性組成物に基づく接着材料は更に、優れた耐油性および熱安定性も特徴とする。
【0081】
2.含浸材料
本発明は更に、含浸材料としての本発明による架橋性組成物の使用に関する。
【0082】
このために、本発明による架橋性組成物は含浸すべき基材上に適用され、次にエネルギー入力によって架橋される。
【0083】
本発明による架橋性組成物の基材への適用は、例えば布の含浸の場合には、a)本発明による架橋性組成物での直接的な適用(含浸)によって、あるいはb)本発明による架橋性組成物中で布をこすることによる被覆によってもたらすことができる。
【0084】
この方法を行うことによって、難しい品質の高価なラテックスコーティング系および複雑で環境的に問題のある溶液プロセスを置き換えることができるか、あるいは非常に高濃度の溶液を調製することができるので、次には溶媒の量を節約することができ、そして多くの場合溶媒のリサイクル容量によって制限される製造容量を拡大することができる。ラテックスの適用と比較して、本発明による架橋性組成物の実質的な利点は、ラテックスを活性化するために必要とされる材料の予熱が必要ないことである。このように含浸された布の使用分野は、例えば、全てのタイプのベルト、膜、ベローズ、空気バネ、ゴム製筋肉(ラバーマッスル)およびホースである。
【0085】
3.例えば歯付ベルトまたは駆動ベルトの形態であるベルト
本発明は、ベルト、好ましくは歯付ベルトまたは駆動ベルトの製造のための本発明による架橋性組成物の使用に関する。
【0086】
例えば歯付ベルト形態のベルトの当業者に知られている典型的な製造は、以下の方法に従って行われる。ネガティブな歯部を有するドラムを、まだ柔軟性のある布(通常はポリアミド糸に基づく)で被覆する。このドラム上に、コード(通常は、鋼、真ちゅう、ポリアラミド、ガラスまたは炭素繊維に基づく)をきつく巻きつける(コードフィラメント間隔約0.05〜1mm)。この巻きつけられたコードの上に、ゴム混合物の層/混練シートを配置する。必要に応じて、ゴム混合物上に更なる布を張ってもよい。最後に半弾性膜で被覆されたドラムを、加硫オートクレーブに移動する。ゴム層はコード層を通して歯部の空洞内に押し付けられ、布は、歯部の外縁を形成する。ゴム層の厚さは、歯部の空洞が充填され、コード層より上の所望の層厚が得られるような厚さである。加圧後、加硫/架橋プロセスを開始する。ベルトの製造のためのドラムは通常0.5〜2.5m幅であるが、ベルトは通常1〜30cmの幅を有するので、架橋後、ベルトはすぐに所望の幅に切断することができる。ベルトの背面部(コード層の上にあるベルトの部分)は次に、研磨または更なる処理を行うこともできる。記載される方法に従う市販のベルトは、通常、単一の混合物に基づいて製造される。このことの欠点は、歯部および背面部が異なる要求を満たさなければならないことである。したがって、歯部は、多くの場合、非常に高モジュラスおよび高強度を有さなければならない(例えば、従来の自動車モデルにおいてエンジン制御のための駆動ベルトとして使用される歯付ベルトに適用される)が、例えば、小さい偏向ローラーの回りを回転する間の破断を回避するために背面部はむしろ柔軟性でなければならない。これらの部分的に正反対の要求は、適切な混合物の選択を制限する。原則として、加硫の前に、下側の層が高モジュラス加硫物を生じ、背面層が低モジュラス加硫物を生じるように混練シート層の混合組成物を選択することが可能である。困難なのは、これらの層が加圧中に混合されてはならないことである。事実上、高モジュラス加硫物は、比較的高粘性の混合物(例えば、高い補強充填剤含量を有する、さもなければ製品の必要とされる動的特性およびモジュラスは到達されない)に基づくのが一般的であるが、低モジュラス加硫物は、比較的低粘性の混合物(低い補強充填剤含量を有する)に基づく。順番に積み重ねられたこのような混練シートを、コード層を通して歯部の中に加圧している間に、こうして得られたベルト機能にとって重大な混合が必然的に生じる。このことから、1段階の製造方法による、大きく異なる粘度の少なくとも2つの混合物を含むこのようなベルトは市場には存在しない。
【0087】
更に、当業者に知られているのは、ベルトの上記の製造上の利点を可能にする2段階法であり、歯部および背面部の特性が異なる混合物を可能にする。この方法では、歯付き底部は、手作業により、混合物片/押出物で部分的に構成され、背面部のための混練シートは、その後始めて別の第2のステップで施され、次に上記のように更に加工される。この方法は、2段階法が必要であると共に、この方法のために特別の成分が要求されるという主要な欠点を有する。全体的に、この方法は最初に説明した方法よりも実質的に非経済的である。
【0088】
本発明に従って特別の架橋性組成物を使用することにより、今、より経済的な上記の1段階法と、より複雑な2段階法との利点を結合することが可能にされた。これは、本発明に従って、架橋後に動的に安定な高モジュラス加硫物を与える、極めて低粘性の混合物を提供する可能性によって達成される。背面混合物は、従来の混合組成物に基づいていてもよく、粘度は、歯部のための本発明による架橋性組成物よりも実質的に高い。2つの層の混合物の粘度の大きな差(高温/高せん断における)は、背面部に提供される高粘性層が、その前で歯部の充填のために提供される層を押圧することを可能にし、主要な背面部は歯部の空洞内に混ざることはない。
【0089】
本発明による架橋性組成物のこの使用で特に有利なのは、本発明による低粘性組成物が室温でまだ十分な強度(グリーン強度)を有し、ベルトを製造するために必要な安定した混練シートが、本発明による組成物から室温でも製造することができるので、歯付ベルトを、通常の装置を用いて通常の方法に従って構築できることである。
【0090】
4.ロールカバー
本発明は更に、ロールカバーの製造のための本発明による組成物の使用に関する。
【0091】
例えば、輸送、製紙または鉄鋼産業において使用されるような高モジュラスロールカバーは、当業者に知られているように、通常、ゴム加硫物に基づいて製造される。極度の硬度およびモジュラスという所要の特性を達成するために、非常に高粘性の混合物が通常必要とされる。これらの混合物は、混練シートとしてロール本体上に層状に配置されるか、あるいは直接押出成形される。高モジュラスおよび硬度によって生じる粘度、従って充填度は限界になりやすい。混合物を含む非常に高粘性の混練シートは、加硫中にもはや混ざらないことが多く、製品中にクラックおよび応力が予め形成され、従って早期の破損を形成しもたらす。高モジュラスロールカバーを製造するために当業者に知られているもう1つの方法は、液体形態で適用されるポリウレタン混合物から出発し、その場での硬化(反応性架橋、結晶化、熱可塑性ポリウレタン(TPU)への変換による)の後、極度の硬度および非常に良好な動的安定性を有する。しかしながら、これらの製品は、動的機械特性が100℃よりも高い温度で非常に大きく低下し、更に、とりわけ加水分解のために、非常に広い範囲の媒体に対して劣った安定性しかもたないという問題を有する。この原因は、熱可塑性(TPUはTPEからなる材料の種類に属する;結晶性部分の軟化後に特性は実質的に失われる)と、酸および塩基、ならびにエステル、芳香族油および脂肪に対する化学的不安定性とである。
【0092】
一方で、このようなロールカバーを製造するための本発明による架橋性組成物を用いることによって、100℃よりも高い温度および/または高せん断で本発明による組成物をロール本体に適用することが可能である。非常に低粘性、場合によっては「液体」の出発材料、すなわち負荷を受けてもやはり十分な安定性を有する本発明による架橋性組成物は、加硫のためにロールに適用され、加硫後に、顕著な物理特性、高モジュラスおよび強度を有する製品をもたらす。非「液体」のまだ加工可能な適用形態において、加工性を損なうことなく、上記の応力クラックがロールカバーにおいて生じることなく、従来の系よりも実質的に高い充填度を達成することがここでは可能である。
【0093】
5.熱可塑性加硫物
本発明は更に、熱可塑性加硫物の調製のための架橋性組成物の使用に関する。
【0094】
エラストマーベースの架橋性組成物に加えて、ここでは1つまたは複数の熱可塑性ポリマーが更に使用される。
【0095】
動的架橋による熱可塑性加硫物の調製において、初めは熱可塑性粒子がエラストマーマトリックス中に分散して存在しており、エラストマー粒子が架橋形態で存在し、熱可塑性マトリックス中に分散されている相構造を与える相反転の動力学的方法は、決定的に重要である。できるだけ小さい粒径を有するできるだけ均一な粒子構造が達成される(製品の良好な動的機械特性のための基本的な前提条件として)ことを保証するために、熱可塑性溶融物の粘度およびゴム相の粘度は、できるだけ同程度の大きさでなければならない。粘度の差が大きすぎると、1〜50μmよりも大きいゴム相の粒径だけが到達され、これは、所望の製品の乏しい特性をもたらすだけである。これらの粘度を適応させるために、大量の可塑剤が使用されることが多く、これはもちろん、エラストマー相の特性の悪化をもたらす。油安定性加硫物では、可塑剤およびエラストマーの相溶性は乏しいことが多いため、大量の可塑剤(混合物の粘度を低下させるために使用される部分的に相溶性の油)の使用は所望されない。何故なら、可塑剤用量が過度に多い場合には、これらは部品から押出され、部品の光学的な品質の低下を導くおそれがある。
【0096】
本発明による架橋性組成物を用いることによって、今、非常に低粘性であるがそれでも上記の欠点を克服する顕著な物理特性を有する、高度に極性の油安定性エラストマー相を提供することが可能である。すなわち、光学特性および機械特性を同時に保持しながら、優れた加工特性および相分布が達成される。
【0097】
本発明による組成物において使用することができるポリアミドは、ポリマー主鎖中に、アミド結合(−C(=O)−NH−)によって結合されたモノマー単位を含有するホモポリマーまたはコポリマーである。使用可能なポリアミドの例は、ポリカプロラクタム(ナイロン(登録商標)6)、ポリラウロラクタム(ナイロン(登録商標)12)、ポリヘキサメチレンアジぺート(ナイロン(登録商標)6,6)、ポリヘキサメチレンアゼラアミド(ナイロン(登録商標)6,9)、ポリヘキサメチレンセバクアミド(ナイロン(登録商標)6,10)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン(登録商標)6,IP)、ポリアミノウンデカン酸(ナイロン(登録商標)11)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン(登録商標)4,6)、ならびにカプロラクタム、ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸のコポリマー(ナイロン(登録商標)6,66)、そしてポリパラフェニレンテレフタルアミドなどのアラミドである。ポリアミドの多くは、120〜260℃の範囲の軟化点および融点を有する。ポリアミドは、好ましくは、高分子量を有し、結晶性である。
【0098】
本発明による組成物において使用することができるポリエステルは、ポリマー主鎖中に、エステル基(−C(=O)−O−)によって結合されたモノマー単位を有するホモポリマーまたはコポリマーである。例えば、ホモポリエステルとして、ヒドロキシカルボン酸系またはジヒドロキシジカルボン酸系を使用することができる。前者は、ω−ヒドロキシカルボン酸の重縮合または環状エステル(ラクトン)の開環重合によって調製することができる。後者は、2つの相補的なモノマー、例えばジオールおよび飽和または不飽和ジカルボン酸の重縮合によって調製することができる。
【0099】
ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(オキシ−1,2−エタンジイルオキシカルボニル−1,4−フェニレンカルボニル)、ポリ(1,4−ジメチレンシクロヘキサンテレフタラート)、ポリ(ブチレンテレフタラート)、ポリ(テトラメチレンテレフタラート)、ポリ(オキシ−1,4−ブタンジイルオキシカルボニル−1,4−フェニレンカルボニル)が使用され得る(ウルマン工業化学百科事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry) Copyright(著作権)2002 DOI:10.1002/14356007.a21 227 Article Online Posting Date:2000年6月15日も参照)。
【0100】
本発明による組成物において使用することができるポリイミドは、ポリマー主鎖中に、イミド基によって結合されたモノマー単位を含有するホモポリマーまたはコポリマーである。イミド基は、線状または環状単位で存在することができる。適切なポリイミドの融点は、150〜260℃の範囲である(Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaA.によるウルマン工業化学百科事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry) Copyright(著作権)2002 DOI:10.1002/14356007.a21 253も参照)。
【0101】
本発明による組成物において使用可能なポリプロピレンは、150℃よりも高い融点、および高い結晶化度を有する全てのポリプロピレンである。
【0102】
本発明による組成物において使用可能なポリエーテルは、ポリマー主鎖中に、エーテル基(C−O−C)によって結合されたモノマー単位を含有し、約150℃超、および約260℃未満の融点を特徴とするホモポリマーまたはコポリマーである。
【0103】
6.成形物品
本発明は更に、成形物品の製造のための本発明による架橋性組成物の使用に関する。
【0104】
成形物品は、通常、射出成形法または圧縮法で製造される。所望される構造が細かいほど、使用される材料の流動特性が満たさなければならない要求も高くなる。ここで、高強度および高モジュラスと組み合わせられた細かい構造は、当業者に知られている難題である。流動特性は、多くの場合、加工助剤によって改善することができる。加工助剤は、加工過程中に混合物の表面と接触し、モールドとの接触表面を湿潤させる。このようにして壁への接着が低減され、流動挙動が改善される。しかしながら、この利点は、部品の表面の汚れの増大も伴うことが多く、従って後者は、追加のクリーニング工程を受けなければならず、従って、モールドの使用時間が減少し、モールドの中断時間が増大される。
【0105】
ここで高流動性が加硫後の優れた特性と組み合わされるので、本発明による組成物はこの問題への解法を提供する。
【0106】
以下は、成形物品の製造方法として、ここで例として記載され得る。
【0107】
A インプレースガスケッティング
いわゆる「インプレースガスケッティング(in−place gasketing)」は、一般にはポリウレタンまたはシリコーンゴムに基づく通常は非常に低粘性、場合によっては液体の出発材料が、液体形態で加工され、モールドに注入され、次に反応性架橋が行われる方法である。いずれの系も、HNBR、EVM、AEMおよびACMなどの他の高性能エラストマーと比較して、100℃よりも高い使用温度において、乏しい物理特性、および極性媒体中での膨潤に対する低い安定性しか示さず、この理由により、油に対する安定性がほとんどなく、機械的な負荷のない系の範囲に、潜在的に可能な使用は制限される。
【0108】
本発明による組成物を用いると、比較的高温および/または高せん断において低粘度であるために、インプレースガスケッティングにより複合系を充填することができ、かつ予備的な層の冷却が存在する場合には、負荷を受けたときの安定性が生じ、この負荷を受けたときの安定性は、シーリング部分の寸法の重大な損失を伴わずに、下流側での架橋プロセスを可能にする。加硫の後、これらの製品は高い熱安定性と、油に対する安定性と、優れた動的機械特性とを示す。従って、これらは、液体系の利点と、高粘性の高性能エラストマーの混合物に基づく利点とを兼ね備えている。
【0109】
B プラスチック−ゴム共射出成形
プラスチック−ゴム共射出成形は、まずプラスチック/熱可塑性成分が熱可塑性モールドに射出成形される方法である。これは、同じ機械内のターンテーブルモールド(turntable mould)中で、ゴム射出装置へ移送され、次にゴムが射出され、一方の面が熱可塑性モールドと接触し、他方の面が金属モールドと接触して加硫される。この方法は、複合の熱可塑性−ゴム成形物品を単一のステップで射出および結合させることができるので有利である。複合成分、例えば、複雑なゴム加硫物シーリング要素を有する成形された熱可塑性物品の製造に重要なのは、ゴム混合物の流動性および加硫ゴムの特性プロファイル、ならびに2つの成分間の接着である。例えばシリコーンゴムに基づく極めて流動性のゴム混合物はモールドの良好な充填を示すが、接着および加硫特性は非常に限定されたものである。その高粘度のために、従来のゴム混合物は、複雑な空洞を充填するのが困難なことが多い。従来の系の更なる困難は、例えばシリコーンまたはポリウレタンゴムの反応性架橋系の場合に可能であるようなサイクル時間の達成である。というのは、例えば、高温での適用が必要とされるAEMゴムの場合のように、適切な過酸化物またはアミン架橋系を用いる架橋時間は比較的長いからである。プレキュアおよびフルキュアの調和は、ここでは常に困難である。特に高粘性材料の場合にはモールドの充填を可能にするためにできるだけ長いプレキュア時間が必要であり、ゴム−プラスチック共射出成形方法におけるサイクル時間を短く保持するためには短いフルキュア時間が必要である。何故なら、ゴムの加硫プロセスは、この方法において時間を決定する因子だからである。
【0110】
本発明によるこの方法では、本発明による組成物の使用により、モールドの優れた充填および優れた加硫特性の両方、高接着性ならびに比較的短いサイクル時間が可能になる。
【0111】
上記のより広い使用の可能性に加えて、本発明による架橋性組成物は、以下の特別の用途のため、例えば、発泡成形物品、シーリング接着材料のための成形物品、フラットパッキング(ソフトマテリアルシールとも呼ばれる)、ジョイントパッキング(中実または発泡)、摩擦およびブレーキライニング、クラッチライニングの製造のため、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂材料およびエポキシ樹脂材料の弾性化のための添加剤として、熱可塑性樹脂および熱硬化性プラスチックの衝撃性改良のため、シリンダヘッドガスケット、シリンダヘッドカバーガスケット、ホース、膜、シール、ベローズ、ゴム製筋肉、シート金属コーティング、溶媒を含有しないまたは溶媒含量が低い接着系の製造のため、別の接着層を用いない布の接着結合のため、高モジュラスを有する布の上部層、ゴム−金属接着系として、表面接着のため、粉末ゴムのかわりの回路基板の無溶媒での柔軟化のため、被覆金属シール、搬送ベルトもしくはベルトのための補修用混合物として、無端ベルトもしくはベルトの結合のための接着剤混合物として、そしてスクリーン印刷法によって製造される製品のためにも使用することができる。
【0112】
本発明の発明的主題は、個々の特許請求の範囲の主題だけでなく、個々の特許請求の範囲の相互の組み合わせにも起因する。同じことが、説明において開示される全てのパラメータおよびその所望の組み合わせにも適用できる。
【0113】
[実施例]
使用した主な混合装置は、直径200mmのロールを有し、30℃に冷却したトロエスター(Troester)からのタイプWNU3のロール装置を有する混合ロールであった。エラストマーを最初に導入し、(2)、次に(4)、そして(3)の順で更なる成分を全て添加した(以下に示される成分のリストを参照)。安定な混練シートが得られるように、ロールの速度および摩擦を制御した。約5分の混合時間の後、混合を終了し、製品を混練シートとしてロールから取り出した。次に、プラテンプレスにおいて、これらの混練シートの加硫を180℃で15分間行った。
【0114】
使用成分:
1.テルバン(Therban)(登録商標)AT−XT VP KA 8889
カルボキシル化水素化ニトリルゴム、ACN含量:33重量%、ムーニー粘度ML1+4、100℃:タイプa)10MEまたはタイプb)25ME、残留二重結合含量:3.5%。
ここで使用されるエラストマーは、ランクセス・ドイチュランド社(Lanxess Deutschland GmbH)からのテルバン(登録商標)XT VP KA 8889(XNBR)のメタセシス、そしてその後の水素化によって調製した。
2.テルバン(登録商標)XT VP KA 8889
ランクセス・ドイチュランド社からのカルボキシル化水素化ニトリルゴム、ACN含量:33%、ムーニー粘度ML1+4、100℃:78ME、残留二重結合含量:3.5%。
このエラストマーは、ランクセス・ドイチュランド社から市販されている。
3.サートマー(Sartomer)(登録商標)SR633
サートマー(Sartomer)からのジアクリル酸亜鉛
4.スターテックス(Statex)N330
コロンビアン・ケミカル・カンパニー(Columbian Chemical Company)からのカーボンブラック
5.カーボンブラック(Carbon black)IRB7
産業基準カーボンブラック7
6.酸化亜鉛IRM91
産業基準ZnO
7.レノフィット(Rhenofit)(登録商標)OCD
ラインケミー(Rheinchemie)からのオクチル化可能なジフェニルアミン(老化防止剤)
8.レノフィット(登録商標)TAC/S
ラインケミーからのシアヌル酸トリアリル(加硫活性剤)
9.パーカドックス(Perkadox)(登録商標)14−40 B−GR
アクゾ・ノーベル・ケミカルズB.V.(Akzo Nobel Chemicals B.V.)からのビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン
10.ブルカノックス(Vulkanox)(登録商標)ZMB2/C5
ランクセス・ドイチュランド社からの亜鉛メルカプトベンゾイミダゾール安定化剤
【0115】
以下の表において記載される全ての量「phr」は、ゴム100部に対する部数を示す。エラストマー成分は100phrに相当する。
【0116】
アルファ・テクノロジーズ(Alpha Technologies)からのゴムプロセスアナライザー(RPA2000)において、複素粘度η、および温度または振幅の関数としての複素粘度の変化の決定を行った。
【0117】
加硫測定は、モンサントレオメーター(Monsanto Rheometer)MDR2000において、180℃の試験温度で15分の試験時間にわたって行った。
【0118】
実施例1〜9:
以下の表において、全ての比較例は、それぞれの実施例番号の後の*によって特徴付けられる。
【0119】
【表1】

【0120】
【表2】

【0121】
【表3】

【0122】
【表4】

【0123】
本発明による組成物4および5だけが、上記のように、高温(130℃)における「液体」加工性と、低温(60℃)における標準のゴム様加工性とを示す。本発明による組成物だけが、180℃の架橋温度よりも低い温度における液体加工性と組み合わせて、高モジュラス、高硬度および高強度などの優れた物理特性を示す。本発明による組成物だけが、極めて高い架橋密度および極めて低い加工粘度にもかかわらず、(MDR測定から分かるように)架橋後に非常に低いtanδ値を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)少なくともその1つがカルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有する1つまたは複数のエラストマーと、
(2)一般式(I)
(Ry−x/yx+ (I)
(式中、Ry−は、y個のカルボキシラート基を含有するα,β−不飽和C〜C14−カルボキシラートを表し、
yは、値1、2、3または4を表すことができ、
xは、2、3または4であり、そして
Mは、2価、3価または4価の金属である)の1つまたは複数の異なる塩と、
(3)フリーラジカル供与体の役割を果たす1つまたは複数の架橋剤と、
を含む架橋性組成物であって、
(a)前記エラストマー(1)、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合には全てのエラストマー(1)を合わせた混合物が、ASTM標準D1646に従って測定される際に1〜35の範囲のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を有し、
(b)前記架橋性組成物が、
(i)ゴムプロセスアナライザー(RPA)において60℃、1Hzおよび10%の振幅で測定される際に30000Pasよりも大きい複素粘度η
(ii)RPAにおいて60℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.4よりも大きい複素粘度の振幅依存性変化、
(iii)RPAにおいて、η(60℃、1Hzおよび10%の振幅)対η(130℃、1Hzおよび10%の振幅)の比として測定される際に6よりも大きい複素粘度の温度依存性変化、ならびに
(iv)RPAにおいて130℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.5未満の複素粘度の振幅依存性変化を有し、
前記(i)〜(iv)の全ての場合において複素粘度(η)に対して記載された値が、いずれの場合も複素粘度の数学的な絶対値を示すことを特徴とする架橋性組成物。
【請求項2】
(1)10〜94重量%の、少なくともその1つがカルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有する1つまたは複数のエラストマーと、
(2)5〜89重量%の、一般式(I)
(Ry−x/yx+ (I)
(式中、Ry−は、y個のカルボキシラート基を含有するα,β−不飽和C〜C14−カルボキシラートを表し、
yは、値1、2、3または4を表すことができ、
xは、2、3または4であり、そして
Mは、2価、3価または4価の金属である)の1つまたは複数の塩と、
(3)1〜20重量%の、フリーラジカル供与体の役割を果たす1つまたは複数の架橋剤と、
を含有し、前記成分(1)、(2)および(3)の合計が100重量%以下である架橋性組成物であって、
(a)前記エラストマー(1)、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合には全てのエラストマー(1)を合わせた混合物が、ASTM標準D1646に従って測定される際に1〜35の範囲のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を有し、
(b)前記架橋性組成物が、
(i)ゴムプロセスアナライザー(RPA)において60℃、1Hzおよび10%の振幅で測定される際に30000Pasよりも大きい複素粘度η
(ii)RPAにおいて60℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.4よりも大きい複素粘度の振幅依存性変化、
(iii)RPAにおいて、η(60℃、1Hzおよび10%の振幅)対η(130℃、1Hzおよび10%の振幅)の比として測定される際に6よりも大きい複素粘度の温度依存性変化、ならびに
(iv)RPAにおいて130℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.5未満の複素粘度の振幅依存性変化を有し、
前記(i)〜(iv)の全ての場合において複素粘度(η)に対して記載された値が、いずれの場合も複素粘度の数学的な絶対値を示すことを特徴とする請求項1に記載の架橋性組成物。
【請求項3】
(1)30〜84重量%の、少なくともその1つがカルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有する1つまたは複数のエラストマーと、
(2)14〜68重量%の、一般式(I)
(Ry−x/yx+ (I)
(式中、Ry−は、y個のカルボキシラート基を含有するα,β−不飽和C〜C14−カルボキシラートを表し、
yは、値1、2、3または4を表すことができ、
xは、2、3または4であり、そして
Mは、2価、3価または4価の金属である)の1つまたは複数の塩と、
(3)2〜15重量%の、フリーラジカル供与体の役割を果たす1つまたは複数の架橋剤と、
を含有し、前記成分(1)、(2)および(3)の合計が100重量%以下である架橋性組成物であって、
(a)前記エラストマー(1)、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合には全てのエラストマー(1)を合わせた混合物が、ASTM標準D1646に従って測定される際に1〜35の範囲のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を有し、
(b)前記架橋性組成物が、
(i)ゴムプロセスアナライザー(RPA)において60℃、1Hzおよび10%の振幅で測定される際に30000Pasよりも大きい複素粘度η
(ii)RPAにおいて60℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.4よりも大きい複素粘度の振幅依存性変化、
(iii)RPAにおいて、η(60℃、1Hzおよび10%の振幅)対η(130℃、1Hzおよび10%の振幅)の比として測定される際に6よりも大きい複素粘度の温度依存性変化、ならびに
(iv)RPAにおいて130℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.5未満の複素粘度の振幅依存性変化を有し、
前記(i)〜(iv)の全ての場合において複素粘度(η)に対して記載された値が、いずれの場合も複素粘度の数学的な絶対値を示すことを特徴とする請求項1に記載の架橋性組成物。
【請求項4】
前記組成物が、成分(4)として、84重量%以下、好ましくは4〜64重量%、そして特に好ましくは10〜40重量%の1つまたは複数の更なる助剤を含有し、好ましくは、充填剤、繊維、請求項1に記載のエラストマー(1)の定義の範囲内でないポリマー、油、安定化剤、加工助剤、可塑剤、追加の重合性モノマー、ダイマー、トリマーまたはオリゴマー、あるいは加硫活性剤を含有し、前記成分(1)、(2)、(3)および(4)の合計が100重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項5】
(i)ゴムプロセスアナライザー(RPA)において60℃、1Hzおよび10%の振幅で測定される際に30000Pasよりも大きい、好ましくは40000Pasよりも大きい複素粘度η
(ii)RPAにおいて60℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.4よりも大きい、好ましくは1.6よりも大きい複素粘度の振幅依存性変化、
(iii)RPAにおいて、η(60℃、1Hzおよび10%の振幅)対η(130℃、1Hzおよび10%の振幅)の比として測定される際に6よりも大きい、好ましくは8よりも大きい複素粘度の温度依存性変化、ならびに
(iv)RPAにおいて130℃で、η(1Hzおよび10%の振幅)対η(1Hzおよび100%の振幅)の比として測定される際に1.5未満、好ましくは1.4未満の複素粘度の振幅依存性変化を有し、
前記(i)〜(iv)の全ての場合において複素粘度(η)に対して記載された値が、いずれの場合も複素粘度の数学的な絶対値を示すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項6】
前記エラストマー(1)、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合にはエラストマー(1)の全混合物が、100重量%のエラストマー(1)を基準として、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合にはエラストマー(1)の全混合物を基準として、0.5〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜7重量%、そして特に1.5〜6重量%の結合カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項7】
1.カルボキシル化ニトリルゴム(XNBRと省略されることもある)、
2.水素化カルボキシル化ニトリルゴム(HXNBRと省略されることもある)、
3.EPM、EPDM、HNBR、EVA、EVM、SBR、NRまたはBRに基づく無水マレイン酸(「MAH」)グラフト化ゴム、
4.カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴム(XSBRと省略されることもある)、
5.遊離カルボキシル基を有するAEM、または
6.遊離カルボキシル基を有するACM、
および前記ポリマーの所望の混合物が、カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を含有するエラストマー(1)として使用される請求項1〜6のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項8】
ASTM標準D1646に従って測定される際に、使用されるエラストマー(1)、あるいは複数のエラストマー(1)が使用される場合には全てのエラストマー(1)の混合物のムーニー粘度(ML1+4、100℃で測定)が、2〜25、好ましくは5〜20の範囲である請求項1〜7のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのα,β−不飽和ニトリルと、少なくとも1つの共役ジエンと、カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を含有する少なくとも1つの更なるターモノマーとのターポリマーであるカルボキシル化ニトリルゴム(XNBR)が、成分(1)として使用される請求項1〜8のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項10】
ブタジエンと、アクリロニトリルと、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはフマル酸および/またはマレイン酸;ならびに/あるいはフマル酸および/またはマレイン酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルまたは2−エチルヘキシルモノエステル;ならびに/あるいはアクリル酸および/またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルまたは2−エチルヘキシルエステルとのポリマーを含むカルボキシル化ニトリルゴム(XNBR)が、成分(1)として使用される請求項1〜9のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項11】
ブタジエンと、アクリロニトリルと、カルボキシル基を含有するモノマー、特に、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸またはメタクリル酸と、カルボキシラート基を含有するモノマー、特に、フマル酸またはマレイン酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルまたは2−エチルヘキシルモノエステル、あるいはアクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルまたは2−エチルヘキシルエステルとのポリマーを含むカルボキシル化ニトリルゴム(XNBR)が、成分(1)として使用される請求項1〜10のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項12】
水素化カルボキシル化ニトリルゴム(HXNBRと省略されることもある)が成分(1)として使用される請求項1〜11のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれか一項に記載のカルボキシル化ニトリルゴムの水素化によって得ることができる水素化カルボキシル化ニトリルゴムが、成分(1)として使用される請求項1〜12のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項14】
カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有する1つまたは複数のエラストマー(1)に加えて、カルボキシル基および/またはカルボキシラート基を持たない更なるエラストマー(1)が、成分(1)として使用される請求項1〜13のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項15】
NBRおよびHNBRが、成分(1)として使用される請求項14に記載の架橋性組成物。
【請求項16】
一般式(I)
(Ry−x/yx+ (I)
(式中、Ry−は、y個のカルボキシラート基を含有するα,β−不飽和C〜C14−カルボキシラートを表し、
yは、値1、2、3または4を表すことができ、
xは、2、3または4であり、そして
Mは、2価、3価または4価の金属であり、Mg、Ca、Zn、Fe、Al、Ti、Pb、B、Sc、Yt、SnまたはHafを表す)の1つまたは複数の塩が、成分(2)として使用される請求項1〜15のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項17】
成分(2)において、一般式(I)中の基Ry−が、y個のカルボキシラート基を含有するα,β−不飽和C〜C−カルボキシラートを表し、yは、値1、2、3または4であると仮定することができ、そして、一般式(I)中のRy−が、好ましくは、アクリラート、メタクリラート、クロトナート、イソクロトナート、ソルバート、フマラートまたはマレアートあるいはこれらの混合物を表す請求項1〜16のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項18】
ペルオキシド化合物、アジド、光開始剤、レドックス開始剤またはこれらの混合物の形である1つまたは複数の架橋剤が、成分(3)として使用される請求項1〜17のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項19】
ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルペルベンゾアート、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブテン、4,4−ジ−tert−ブチルペルオキシノニルバレラート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、メチルエチルケトンペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカルボナート、ポリ(tert−ブチルペルオキシカルボナート)、エチル3,3−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブチラート、エチル3,3−ジ(tert−アミルペルオキシ)ブチラート、n−ブチル4,4−ジ(tert−ブチルペルオキシ)バレラート、2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルペルオキシベンゾアート、tert−ブチルペルオキシアセタート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシイソブチラート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシピバラート、tert−アミルペルオキシピバラート、tert−ブチルペルオキシネオデカノアート、クミルペルオキシネオデカノアート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルペルオキシネオデカノアート、tert−ブチルペルオキシベンゾアート、tert−ブチルペルオキシアセタート、tert−アミルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシイソブチラート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、クミルペルオキシネオデカノアート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルペルオキシネオデカノアート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン(3−ジ−tert−アミル)ペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−アミルヒドロペルオキシド、クモールヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ヒドロペルオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシドおよびペルオキソ二硫酸カリウムからなる群からのペルオキシド化合物が、成分(3)として使用される請求項1〜18のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項20】
アジドとしての2,2−アゾビスメチルエチルアセトニトリルが、成分(3)として使用される請求項1〜18のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項21】
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイルフェニルカルビノール、メチルフェニルグリオキシラート、4,4’−ジアジドビフェニル、4,4’−ジアジドベンゾフェノン、4,4’−ジアジドビフェニルオキシド、4,4’−ジアジド−ジスルホニルビフェニル、アジドベンゼン、4−アジド安息香酸、1,2−ビス(4−アジドフェニル)エチレン、4−アミノフェニル−4’−アジドフェニルメタン、2,6−ジ(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノン、ベンゾフェノンオキシム、アセトフェノン、ブロモアセトフェノン、シクロヘキサノン、ジフェニルモノスルフィド、ジベンゾチアゾリルジスルフィド、s−アシルジチオカルバマート、m,m’−アゾキシスチレン、ベンジルジメチルケタール、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、エチル4−ジメチルアミノベンゾアート(EPD)、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパン−1−オン、イソプロピルチオキサントン(ITX)、および2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オンからなる群からの光開始剤が、成分(3)として選択される請求項1〜18のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項22】
Fe(II)/ヒドロペルオキシド、ペルオキシド/第3級アミン、ペルオキソ二硫酸塩/チオ硫酸塩、ヒドロペルオキシド/チオ硫酸塩からなる群からのレドックス開始剤が、成分(3)として選択される請求項1〜18のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項23】
全ての成分(1)〜(3)と、任意で(4)とを混合することによる、請求項1〜22のいずれか一項に記載の架橋性組成物の調製方法。
【請求項24】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の架橋性組成物に、好ましくは熱エネルギーまたは放射エネルギーの形のエネルギー入力を受けさせることによって、その少なくとも1つがカルボキシル基および/またはカルボキシラート基を有する架橋エラストマーを調製する方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法によって得ることができる架橋エラストマー。
【請求項26】
弾性接着材料として、含浸材料として、ベルト、好ましくは歯付ベルトまたは駆動ベルトの製造のため、あるいはロールカバー、熱可塑性加硫物または成形物品の製造のための、請求項1〜22のいずれか一項に記載の架橋性組成物の使用。

【公開番号】特開2007−100089(P2007−100089A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−268571(P2006−268571)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】