説明

柄経糸整経方法および柄経糸用部分整経機

【課題】 高品質の柄経糸を整経することができる柄経糸整経方法を提供する。
【解決手段】 柄経糸整経方法では、整経ドラム2の外周面に配置され、且つ前記整経ドラム2と平行に軸線方向に移動可能な搬送面5上に糸ガイド15によって糸11を給糸して糸層17を形成し、給糸中に前記糸ガイド15と前記搬送面5とを互いに相対的に移動させる。またこの柄経糸整経方法では、少なくとも1つの搬送面5上の糸層17の少なくとも1つのパラメータ(例えば、糸層17の高さ、糸層17の外周面19と整経ドラム2の軸線との平行度、及び糸層17の自由端面18の傾斜)が測定され、測定されたパラメータに応じて糸ガイド15と搬送面5との間の相対移動が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整経ドラムの外周面に配置され、且つ整経ドラムと平行に軸線方向に移動可能な搬送面上に、糸ガイドによって糸を給糸して糸層を形成し、給糸中に糸ガイドと搬送面とを互いに相対的に移動させる柄経糸整経方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、整経ドラムと複数の糸ガイドとを有し、整経ドラムの周面には整経ドラムの軸線と平行に移動可能な複数の搬送面が配置され、糸層を形成すべく糸ガイドによって搬送面上に糸を給糸することができ、糸ガイド及び搬送面が相対的に整経ドラムの軸線と平行に移動可能に構成されている柄経糸用部分整経機に関する。
【背景技術】
【0003】
前述の方法及び柄経糸用部分整経機は、例えば特許文献1により公知である。
【0004】
「短尺経糸」と呼ばれることもある柄経糸は、整経ドラムの一端面から少なくとも1本以上の糸を同時に整経ドラムの周面に巻き付け、更に搬送面、例えば無端環状の搬送ベルト上に積み重ねることによって整経される。1本の糸、又は同時に巻き付けられる複数本の糸が整経ドラムに巻き取られて所望の数の巻層になると、搬送面は、一端面から離れるように移動して次に給糸される糸、つまり後続する糸のためのスペースをあける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1445361号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
糸が整経ドラムに巻き取られるとき、各巻層は、半径方向において、ある糸層を他の糸層の真上に積み重ねることができない。積み重ねると、糸層の自由端面(糸層の固定されていない側の面)から糸が落下し、その糸に後続して形成される巻層が覆いかぶさるように巻き重ねられてしまう虞がある。巻き重なると、後で巻返す時、即ち整経ドラムから経糸を繰り出すときに様々な問題が生じて、経糸が糸切れすることがある。
【0007】
それ故に、糸を整経ドラムに巻き付けるとき、円錐状端面を有するように糸層を形成する。この端面の傾斜は、そこから糸が落下することをもはや危惧する必要がないように設計されている。この円錐状端面を形成するためには、糸を巻き付ける際に、糸ガイドと搬送面とを互いに相対的に移動させる必要がある。特に、複数本の糸を整経ドラムに同時に巻き取るとき、つまりいわゆる「糸帯」を形成するとき、整経ドラムの軸線に沿って極力正確に延びる外周面を有する糸層を糸帯によって形成することが後工程の繰り出しにとって重要である。この条件を満たさない場合、後工程において、各糸に全く異なる張力が作用している経糸が整経されることがある。このような経糸は、例えば、後に織物工場または編物工場で処理する際に困難が生じる。
【0008】
本発明は、高品質の柄経糸を整経することができる柄経糸整経方法および柄経糸用部分整経機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の柄経糸整経方法は、整経ドラムの外周面に配置され、且つ前記整経ドラムと平行に軸線方向に移動可能な搬送面上に、糸ガイドによって糸を給糸して糸層を形成し、給糸中に前記糸ガイドと前記搬送面とを互いに相対的に移動させる方法であって、少なくとも1つの搬送面上にある前記糸層の少なくとも1つのパラメータが測定され、測定されたパラメータに応じて前記糸ガイドと前記搬送面との間の相対移動が制御される方法である。
【0010】
本発明に従えば、糸がどのように整経ドラム上に給糸されているのかを点検し、糸層が所望の設定値を満たすように形成されているか否かに応じて糸ガイドと搬送面との間の相対移動が制御される。それ故、今まで以上に糸層の構成に影響を及ぼし得る。特に、整経ドラムの外周面に整経された柄経糸を後の作業においてより一層簡単に、且つ高品質で繰り出すといった方法で今まで以上に影響を及ぼし得る。
【0011】
前記発明において、相対移動を生じさせるために、糸ガイド、糸ガイドが移動可能に配置された給糸ユニット、搬送面、及び整経ドラムのうち少なくとも1つの構成群が、前記制御に基づいて移動させられることが好ましい。前記構成に従えば、所望の糸層を積み上げるために、これら複数の構成群を同時に制御してもよい。しかし、円錐状に傾斜した端面及び軸線に平行な外周面を有する糸層を形成するには、これら複数の構成群のうち少なくとも1つを移動させれば、十分である。
【0012】
前記発明において、前記整経ドラムは、前記糸が給糸されている間、回転するようになっており、前記パラメータの測定は、前記整経ドラムが所定回転位置に位置したときに限って行われることが好ましい。前記構成に従えば、例えば、整経ドラムの外周面に特定間隔をあけて搬送ベルトを配置して搬送面を実現する場合、多角形状を有する糸層が形成される。その場合、パラメータの測定を、例えば、搬送ベルトが測定装置の真下に位置することになる回転位置に整経ドラムが位置した時に限って行うようにすると、搬送ベルト上でパラメータを正確に測定することができる。大抵の場合、このような測定方法で、糸層の構成に関する十分な情報を得ることができ、それ故、相対移動を制御することができる。
【0013】
前記発明において、前記パラメータとしては、糸層の高さ、糸層の表面と整経ドラムの軸線との平行度、及び糸層の自由端面の傾斜角のうち少なくとも1つが使用されることが好ましい。なお、特定事例において、これら高さ、平行度及び傾斜のうち2つ又は3つをパラメータとして使用することが好ましいこともある。前記構成に従えば、例えば、糸層の表面が整経ドラムの軸線と平行に延在していないことが確認された場合、例えば整経ドラムの糸ガイドが設けられている側と反対側の端面に向かって傾斜しているとき、搬送面と糸ガイドとの間の相対移動を制御して、搬送面上で糸ガイドを僅かに移動させなければならない。また、糸層の表面に前述する傾斜とは逆向きに傾斜しているときは、糸ガイド及び搬送面の相対移動を制御して、糸が一層積み重なるようにしなければならない。他の用途としては、自由端面の傾斜を点検することがある。この傾斜が条件に「適合」していると、一般に、糸層の構成も設定値を満たしていると推定することができる。また、糸層の高さの連続的な測定により糸層の増加量を特定することができ、この増加量に応じて相対移動は制御することができる。
【0014】
前記発明において、隣接するように並べられた一連の糸帯によって糸層が形成され、最初の第1糸帯に関してだけパラメータを測定し、第1糸帯で使用された相対移動関数を後続するすべての糸帯に対して使用することが好ましい。前記構成に従えば、柄経糸用部分整経機において柄経糸は、経糸に含まれるすべての糸を隣接するように並べて同時に巻き取るという方法で整経することができない。むしろ、含まれるすべての糸のうちの1群の糸だけ取り出して、それらの糸を並べるようにして同時に巻くように処理される。並べて同時に巻かれるこれらの1群の糸は、「糸帯」とも称される。特にすべての糸帯が同様に形成されている場合、パラメータを監視し且つそれを制御変数として使用することによって、糸ガイドと搬送面との間の相対移動を第1糸帯に関してだけ確定すれば十分なことがある。次に、この相対移動の推移を記憶装置に格納し、後続する糸帯を形成するために使用することができる。当然、後続する糸帯に関して巻取り中もなお点検を行ってもよい。しかし、しばしば、実際に測定されたパラメータに応じて相対移動を制御する必要がない場合がある。それ故、処理能力を節約し、全体として均一な経糸を形成することができる。
【0015】
前記発明において、作業範囲の一端側に所定の傾斜角度を有する楔状当接面が付設されている搬送面を使用することが好ましい。前記構成に従えば、この傾斜角度は、糸層の軸線方向他端(自由端とは反対側の末端)の円錐体の傾斜に対応している。その場合、最初から直ちに所望の糸層の構成が得られる。すなわち、糸ガイドと搬送面との間の相対移動を制御するためのパラメータの測定が第1巻層から直ぐに行われる。
【0016】
本件発明の柄経糸用部分整経機は、整経ドラムと複数の糸ガイドとを有し、前記整経ドラムの外周面には前記整経ドラムの軸線と平行に移動可能な複数の搬送面が配置され、糸層を形成すべく前記糸ガイドによって前記搬送面上に糸を給糸することができ、前記糸ガイド及び前記搬送面が相対的に前記整経ドラムの前記軸線と平行に移動可能でであって、測定装置が設けられており、前記測定装置は、前記糸層の少なくとも1つのパラメータを測定し、且つ糸ガイドと搬送面との間の相対移動を制御する駆動制御装置と電気的に接続されているものである。
【0017】
上記発明に従えば、前記方法において述べたように、少なくとも1つの糸層に関するパラメータを測定し、糸層が所望の構成に形成されているか否かを測定装置によって確認することができる。糸層が所望の構成で形成されていない場合、糸ガイドと搬送面との間の相対移動量が変更される。相対移動は、一般的に、糸層の一端面に円錐状の構成を形成するために巻取り中に実施されている。糸層の構成が所望の設定値に適合しない場合、相対移動を大きく又は小さくする。
【0018】
前記発明において、前記搬送面の作業範囲の一端側には、所定の傾斜角度を有する楔状当接面が付設されていることが好ましい。前記構成に従えば、楔状当接面の傾斜角度は、糸層の他端面の円錐形状の傾斜角に対応している。楔状当接面は、楔状エレメント上に形成され、この楔状エレメントは、各搬送面に直接固着されている。なお、搬送面から切り離されて移動可能な機構に楔状当接面を形成し、そして、糸層を形成する時に、この機構を搬送面と共に移動させるようにしてもよい。
【0019】
前記発明において、相対移動を生じさせるために、糸ガイド、糸ガイドを移動可能に配置された給糸ユニット、搬送面、及び整経ドラムのうち少なくとも1つの構成群が移動可能になっていることが好ましい。前記構成に従えば、これら複数の構成群を同時に移動させることができるようになっているが、これら複数の構成群のうち1つだけを移動させる場合、制御が簡素になる。その場合、移動可能に構成されている他の構成群は、別の機能のために利用することができる。
【0020】
前記発明において、前記測定装置は、糸層の高さ、糸層の表面と整経ドラムの軸線との平行度、及び糸層の自由端面の傾斜の少なくとも1つのパラメータを測定することが好ましい。前記構成に従えば、例えば、糸層の表面が整経ドラムの軸線と平行に延在していない場合、糸ガイドと搬送面との間の相対移動をかなり大きく又は小さく、表面の平面度に応じて補正しなければならない。また、糸層の自由端面の傾斜が所望の設定値になっていない場合、同様の補正が行われる。
【0021】
前記発明において、前記測定装置は、レーザ測定装置であることが好ましい。前記構成に従えば、レーザ測定装置は、糸層の高さ、糸層周面の表面と整経ドラムの軸線との平行度、及び糸層の自由端の傾斜のうちの少なくとも1つを測定するための距離測定装置として利用することができる。レーザ測定装置は、比較的高い30μmの分解能又は精度を有することが好ましい。この程度の分解能又は精度を有していれば、通常使用される大抵の糸にとって十分に測定することができる。
【0022】
前記発明において、前記整経ドラムは、回転駆動装置と角度変換器とを有し、前記角度変換器は、前記測定装置と電気的に接続されていることが好ましい。前記構成に従えば、角度変換器は、測定装置を「クロック」する(同期させる)。すなわち、角度変換器は、パラメータを測定することのできる回転角度位置に整経ドラムが位置していることを測定装置に伝える。このような構成は、整経ドラムの外周面に所定間隔で分散配置されている搬送ベルトにより搬送面が形成されている場合に、特に有効である。というのも、このように搬送ベルトが配置されている場合、糸層は多角形状に形成される。測定装置は、1つの固定点との距離を測定するようになっており、整経ドラムが回転していると、他の位置における別の測定値を連続的に測定することになる。当然、変化するこれらの測定値を計算上補正してもよく、また測定装置を糸層の形状等に応じて移動させてもよい。しかし、整経ドラムの外周面の所定点でだけ測定を行うようにすることがより簡単である。
【0023】
前記発明において、前記測定装置は、前記整経ドラムの前記軸線と平行に変位可能に構成されていることが好ましい。前記構成に従えば、例えば24本又は48本の糸を隣接するように並べて形成される幅広の糸帯であっても点検することができる。このような糸帯を点検する場合、例えば測定装置を周期的に往復移動させて糸層の構成を監視すればよい。
【0024】
前記発明において、相対移動関数を記憶可能な記憶装置が設けられており、前記記憶装置は、前記駆動制御装置と電気的に接続されていることが好ましい。前記方法において述べたように、多くの場合、最初に巻き取られた糸帯に関する相対移動関数、即ち相対移動量の時間的推移を記録し、次にそれをすべての後続する糸帯に対して使用すればよい。その結果、均一性のきわめて高い糸層を得ることができる。この処理方式では、更に、相対移動を行なわせる少なくとも1つの駆動制御装置が均一に作動できるように相対移動関数を平滑化することが可能である。これにより熱発生の増加を回避することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高品質の柄経糸を整経することができる柄経糸整経方法および柄経糸用部分整経機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】柄経糸の整経を説明するための略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、図1を参照しながら、本件発明の好ましい実施形態について説明する。
【0028】
図1に概略が示されている柄経糸用部分整経機1は、整経ドラム2を備えており、この整経ドラム2が回転駆動装置3を有する。この回転駆動装置3によって、柄経糸の整経時に整経ドラム2は矢印4の方向に回転する。
【0029】
整経ドラム2の外周面には、複数の搬送ベルト5が配置されている。搬送ベルト5は、無端環状に形成されており、駆動制御装置30によって矢印6の方向に回動可能に構成されている。つまり、搬送ベルト5は、その外表面によって搬送面を形成し、この搬送面は、整経ドラム2の軸線7と平行に移動するようになっている。更に詳細に説明すると、搬送面は、柄経糸の整経時に、自由端8からその反対側であり、回転駆動装置3が配置されている末端9へと移動可能である。
【0030】
各搬送ベルト5には、楔状当接面10が上面に形成されている楔状エレメントが付設されている。最も単純な場合、楔状エレメントは、搬送ベルト5に直接固着されており、これにより搬送ベルト5と一緒に移動する。しかし、楔状エレメントは、搬送ベルト5から分離して配置されて、別の態様で搬送ベルト5と共に移動させるようにしてもよい。
【0031】
整経作業開始時に、楔状当接面10は、自由端8に隣接して配置されている。すなわち、搬送ベルト5は、巻取り開始前に相応する位置に配置されるように動かされている。
【0032】
柄経糸を整経するために、糸11は略示したクリール12から繰り出される。そのため、クリール12内に複数のボビン13が配置されている。更に、具体的に説明すると、一般的に、繰り出す1つの糸11に対して1つのボビン13が配置されている。
【0033】
糸11は、給糸ユニット14によって案内される。給糸ユニット14内には、クリール12から給糸される糸11毎に略示する糸ガイド15が1つずつ設けられている。各糸ガイド15は、給糸ユニット14によって案内される糸11を搬送ベルト5の搬送面に給糸して糸層17を形成するようになっている。また、各糸ガイド15は、給糸ユニット14に対して整経ドラム2の軸線7と平行に移動することができるようになっており、給糸ユニット14もまた、矢印16で示すように、その全体が整経ドラム2の軸線7と平行に移動できるようになっている。
【0034】
搬送ベルト5もまた、同様に移動し、そのように駆動されるようになっている。搬送ベルト5は、その外表面、即ち半径方向外側の面である搬送面が自由端8からその反対側の末端9へと移動するように動かされる。最後に、整経ドラム2は、その全体が軸線7と平行に変位できるように設けられている。このように搬送ベルト5、糸ガイド15及び給糸ユニット14が互いに相対移動可能に構成されている。
【0035】
図1に略示したように、楔状当接面10は、末端9側から自由端8側に向かって下方に傾斜しており、そこには、その面の傾斜と同じ勾配の円錐状端面18を有する糸層17が最終的に形成される。その場合、糸層17の外周面19(半径方向外側の面)は、整経ドラム2の軸線7と平行になっている。
【0036】
従来、このような円錐状端面18は、例えば一巻き毎に糸11の直径の3倍以上糸ガイド15を移動させることによって実現された。しかしながら、これによっては、糸層17の積み上げ、ひいては柄経糸巻取り体の積み上げることを直接保証されてはいない。
【0037】
それから、測定装置20が使用されている。測定装置20は、例えばレーザ測定装置が採用され、駆動制御装置30と電気的に接続されている。なお、レーザ測定装置は、通常使用される大抵の糸を十分に測定するべく、比較的高い30μmの分解能又は精度を有していることが好ましいが、このような分解能や精度を有するものでなくてもよい。測定装置20も、図1の双方向矢印21で示唆す
るように、整経ドラム2の軸線と平行に変位できるようになっている。
【0038】
測定装置20は、糸層17の外周面19と1つの固定点との間の距離を測定する。つまり、測定装置20によって、糸層17の層厚の増加量を測定することができる。パラメータである糸層17の厚さ又は高さを連続して測定することで判明する層厚の増加量に応じて、糸ガイド15と搬送ベルト5との間の相対移動量を決定することができる。この相対移動は、まさに巻き取られた糸帯、つまり同時に巻き取られる糸11全体が積み重ねられ、その積み重ねられたものの端面の傾斜角を楔状当接面10の角度に追従させるのに不可欠な動作である。
【0039】
確かに、この角度は、計算して予め定めることができる。このような角度の設定は、整経作業の開始前に行うことが好適であり、整経作業開始時において、第1の巻層又は若干数の巻層は、計算して設定した「送り」値、つまり糸ガイド15と搬送ベルト5との間の相対移動量に基づいて動かされる。次に、測定装置20で測定することにより、設定された送りによって、糸帯の各巻層が上に積み重なり、巻層が積み重なって形成される糸層の「前面」、即ち回転駆動装置3に側の面が楔状当接面10に当接し、これにより前記前面と反対側に形成される円錐状端面18が所望の円錐角に形成されるか否かを判断している。円錐状端面18が所望の円錐角で形成されている場合、設定された相対移動量(つまり、設定された送り値)で整経処理を継続する。円錐状端面18が所望の円錐角に形成されていない場合には、相対移動量(つまり、送り値)を変更しなければならない。以下の説明では、説明の便宜上、相対移動を「送り」と称する場合がある。糸層17の円錐状端面18の円錐角をかなり急峻である場合、送りを大きくしなければならない。他方、円錐角をかなり平坦である場合、送りを小さくしなければならない。
【0040】
また、上記機能に以下のような機能を選択的に又は付加的に追加することができる。即ち、測定装置20によって、糸層の外周面19と整経ドラム2の軸線7との平行度を測定し、糸層の外周面19が整経ドラム2の軸線7と平行に延在しているか否かも確認することができる。外周面19が末端9に向かって上り傾斜していることが確認されると、送り値を小さくしなければならない。他方、外周面19が末端9に向かって下り傾斜になっていると、送り値を大きくしなければならない。
【0041】
他の測定装置20の利用方法としては、円錐状端面18の傾きを監視することがある。測定装置20によって、パラメータである円錐状端面18の傾斜を測定し、円錐状端面18の傾きが当接面10の傾きと相違する場合、送りに対して相応する補正を行なう必要である。
【0042】
このように糸層17の厚み、糸層17の外周面の平行度、又は円錐状端面18の円錐角を所望の設定値にすることができるので、後工程である経糸の繰り出し作業を簡単に行うことができ、また高品質の経糸を形成することができる。なお、糸層17の厚み、糸層17の外周面の平行度、及び円錐状端面18の円錐角は、それら3つのパラメータのうち1つパラメータだけを使用すればよい場合もあれば、2つ又は3つのパラメータを使用することが好ましい場合もあり、パラメータの数は事例に応じて変更される。
【0043】
また、相対移動は、様々な方法で実現することができる。最も簡単な例として、1つの構成群だけを移動する。別の構成群は、整経ドラム2の軸線7の方向に動かないように保持される。
【0044】
例えば、糸ガイド15は、糸層17に円錐状端面を形成するために、移動させることができるようになっている。糸ガイド15を給糸ユニット14に対して固定し、給糸ユニット14が相応に移動するようになっている。糸ガイド15と給糸ユニット14が固定保持され、搬送ベルト5が移動できるようになっている。又は、糸ガイド15及び給糸ユニット14が固定保持され、搬送ベルト5が整経ドラム2上で固定保持され、この整経ドラム2全体が変位することができるようになっている。このように整経ドラム2全体が変位することにより、例えば24本又は48本の糸を隣接するように並べて形成される幅広の糸帯であっても点検することができる。この際、測定装置20を周期的に往復運動(矢符21参照)させて糸層17の構成を監視させるようにすることが好ましい。なお、これらの動作は駆動制御装置30によって実行される。
【0045】
なお、上述する種々の構成同士を互いに組合せることも当然可能である。
【0046】
搬送ベルト5は、整経ドラム2の端面の方(右側方、又は左側方)から見て多角形状に配置されている。このように配置することで、糸層17が側面視で多角形状になる。また、整経時(つまり、糸11の給糸中)に整経ドラム2が回転駆動装置3によって回転される場合、糸層17の多角形状に積み上げられているという理由だけで測定装置20と表面19との間の距離が恒久的に変化する。
【0047】
それにもかかわらず、所望のパラメータを簡単に得ることができるようにするために、整経ドラム2は角度変換器22を有している。この角度変換器22は、角度センサ23と協動して、測定装置20を「クロック」する(同期させる)。即ち、角度変換器22は、パラメータを測定することのできる回転角度位置に整経ドラム2が位置していることを測定装置に伝える。それに応じて、駆動制御装置30は、測定装置20の脇(横)を通過するときに、搬送ベルト5上に糸層17が載っていることを「検知する」。そして、測定装置20は、例えば搬送ベルト5が測定装置20の真下を通過する所定移回転位置に整経ドラム2が位置するときだけ測定値を記録する。このような断片的な測定であっても、糸層の構成に関する情報を十分に得ることができるので、処理能力を抑えつつ高品質な経糸を整経することができる。
【0048】
整経作業の間中、送りの調整、つまり糸ガイド15と搬送ベルト5との間の相対移動の連続的に監視し、また場合によっては再調整を行うことができる。
【0049】
しかし、多くの場合、第1糸帯に関してだけ必要な相対移動量が設定されれば間に合う。その場合、駆動制御装置30と電気的に接続されている記憶装置31に、回転数に対する相対移動量の推移(つまり、相対移動量の時間的推移(相対移動関数))を記録することができ、記録した推移は、後続する作業において、相対移動に関与するエレメント(給糸ユニット14,糸ガイド15、搬送ベルト5及び整経ドラム2等)を制御するために使用される。
【0050】
その際、一連の相対移動に関与する駆動制御装置30に過剰な負担がかかることを回避できるように、相対移動関数を平滑化してもよい。ここで、相対移動関数を平滑化するとは、例えば、変動する相対移動関数のピークを取り除くことを意味している。但し、平滑化をその意味に限定するものではない。
【0051】
なお、本発明は、実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 柄経糸用部分整経機
2 整経ドラム
3 回転駆動装置
5 搬送ベルト
7 軸線
10 楔状当接面
11 糸
14 給糸ユニット
15 糸ガイド
17 糸層
18 円錐状端面
20 測定装置
30 駆動制御装置
31 記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整経ドラム(2)の外周面に配置され、且つ前記整経ドラム(2)と平行に軸線方向に移動可能な搬送面(5)上に、糸ガイド(15)によって糸(11)を給糸して糸層(17)を形成し、給糸中に前記糸ガイド(15)と前記搬送面(5)とを互いに相対的に移動させる柄経糸整経方法において、
少なくとも1つの前記搬送面(5)上にある前記糸層(17)の少なくとも1つのパラメータが測定され、測定された前記パラメータに応じて前記糸ガイド(15)と前記搬送面(5)との間の相対移動が制御されることを特徴とする柄経糸整経方法。
【請求項2】
相対移動を生じさせるために、糸ガイド(15)、糸ガイド(15)が移動可能に配置された給糸ユニット(14)、搬送面(5)、及び整経ドラム(2)のうち少なくとも1つの構成群が、前記制御に基づいて移動させられることを特徴とする、請求項1記載の柄経糸整経方法。
【請求項3】
前記整経ドラム(2)は、前記糸(11)が給糸されている間、回転するようになっており、
前記パラメータの測定は、前記整経ドラム(2)が所定回転位置に位置したときに限って行われることを特徴とする、請求項1又は2記載の柄経糸整経方法。
【請求項4】
前記パラメータとしては、糸層(17)の高さ、糸層(17)の表面(19)と整経ドラム(2)の軸線との平行度、及び糸層(17)の自由端面(18)の傾斜角のうち少なくとも1つが使用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の柄経糸整経方法。
【請求項5】
隣接するように並べられた一連の糸帯によって前記糸層(17)が形成され、最初の第1糸帯に関してだけ前記パラメータが測定され、第1糸帯で使用された相対移動関数を後続するすべての糸帯に対して使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の柄経糸整経方法。
【請求項6】
作業範囲の一端側に所定の傾斜角度を有する楔状当接面(10)が付設されている搬送面(5)を使用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の柄経糸整経方法。
【請求項7】
整経ドラム(2)と複数の糸ガイド(15)とを有し、前記整経ドラム(2)の外周面には前記整経ドラム(2)の軸線(7)と平行に移動可能な複数の搬送面(5)が配置され、糸層(17)を形成すべく前記糸ガイドによって前記搬送面(5)上に糸(11)を給糸することができ、前記糸ガイド(15)及び前記搬送面(5)が相対的に前記整経ドラム(2)の前記軸線(7)と平行に移動可能である柄経糸用部分整経機において、
測定装置(20)が設けられており、
前記測定装置(20)は、前記糸層(17)の少なくとも1つのパラメータを測定し、且つ前記糸ガイド(15)と前記搬送面(5)との間の相対移動を制御する駆動制御装置(30)と電気的に接続されていることを特徴とする柄経糸用部分整経機。
【請求項8】
前記搬送面(5)の作業範囲の一端側には、所定の傾斜角度を有する楔状当接面(10)が付設されていることを特徴とする、請求項7記載の柄経糸用部分整経機。
【請求項9】
相対移動を生じさせるために、糸ガイド(15)、糸ガイド(15)が移動可能に配置された給糸ユニット(14)、搬送面(5)、及び整経ドラム(2)のうち少なくとも1つの構成群が移動可能になっていることを特徴とする、請求項7又は8記載の柄経糸用部分整経機。
【請求項10】
前記測定装置(20)は、糸層(17)の高さ、糸層(17)の表面(19)と整経ドラム(2)の軸線(7)との平行度、及び糸層(17)の自由端面(18)の傾斜の少なくとも1つのパラメータを測定することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項記載の柄経糸用部分整経機。
【請求項11】
前記測定装置(20)は、レーザ測定装置であることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項記載の柄経糸用部分整経機。
【請求項12】
前記整経ドラム(2)は、回転駆動装置(3)と角度変換器(22、23)とを有し、
前記角度変換器(22,23)は、前記測定装置(20)と電気的に接続されていることを特徴とする、請求項7〜11のいずれか1項記載の柄経糸用部分整経機。
【請求項13】
前記測定装置(20)は、前記整経ドラム(2)の前記軸線(7)と平行に変位可能に構成されていることを特徴とする、請求項7〜12のいずれか1項記載の柄経糸用部分整経機。
【請求項14】
前記相対移動の推移を表す相対移動関数を記憶可能な記憶装置(31)が設けられており、
前記記憶装置(31)は、前記駆動制御装置と電気的に接続され、
前記駆動制御装置は、前記記憶装置(31)に記憶される相対移動関数に基づいて、前記糸ガイド(15)と前記搬送面(5)との間の相対移動を制御していることを特徴とする、請求項7〜12のいずれか1項記載の柄経糸用部分整経機。


【図1】
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【公開番号】特開2011−74555(P2011−74555A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177894(P2010−177894)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(591008465)カール マイヤー テクスティルマシーネンファブリーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフツング (45)
【氏名又は名称原語表記】KARL MAYER TEXTILMASCHINENFABRIK GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】