柑橘類の水分制御栽培方法及び柑橘類の水分ストレス測定具
【課題】適当な水分ストレスを与えて、果実の品質を向上させることが出来る、新規な柑橘類の水分制御栽培方法及び柑橘類の水分ストレス測定具を提供することを、目的とする。
【解決手段】柑橘類の液胞発達期において、果実の硬さを手指で触取すると共に、果実を模した合成樹脂製の果実モデル12を用いて硬さの触感を比較することにより、果樹における水分ストレスの適否を判断し、その判断結果に基づいて土壌水分をコントロールする。
【解決手段】柑橘類の液胞発達期において、果実の硬さを手指で触取すると共に、果実を模した合成樹脂製の果実モデル12を用いて硬さの触感を比較することにより、果樹における水分ストレスの適否を判断し、その判断結果に基づいて土壌水分をコントロールする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘類の水分制御栽培方法及びそれに用いることが出来る柑橘類の水分ストレス測定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、温州蜜柑等の柑橘類の栽培においては、高糖度な果実を生産するために、灌水や水切り(灌水の制限)といった水管理が効果的であることが知られている。具体的には、果実の成育後半から成熟期にかけて灌水を制限し、適度な水分ストレスを樹体に与えることが提案されている。
【0003】
そこにおいて、人工的に灌水を制限する方法としては、ビニールハウス内で栽培する方法が知られている。しかしながら、ハウス栽培は、ビニールハウスの建設費が高価であることに加えて、ハウス内での温度管理や水分管理にかなりの労力がかかることから、あまり普及していないのが現状である。
【0004】
一方、露地栽培では、降雨量をコントロールすることが不可能である。それ故、収穫前の天候によって果実の品質が左右されていた。
【0005】
そこで、特許文献1(特開平5−15262号公報)等に記載の如き栽培方法が提案されている。具体的には、通気性を有する防水フィルムで果実の成育後半から成熟期にかけて土面を被覆して土壌水分を管理する栽培方法である。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の栽培方法で土壌水分を管理したとしても、適度な水分ストレスが樹体に与えられているか否かは生産者が判断しなければならない。そして、過度な水分ストレスを樹体に与えてしまった場合には、樹体の勢いを低下させてしまう。その結果、果実の成長が阻害されたり、翌年の新枝や新芽の成長が阻害される。最悪の場合には、樹体そのものが枯死することもある。それ故、水分ストレスが適当であるか否かの判断は極めて重要である。
【0007】
そこにおいて、水分ストレスの指標としては、葉の巻き具合や葉色,果実の肥大等の外観上の変化が挙げられる。そして、従来では、このような外観上の変化から生産者が水分ストレスを判断して灌水時期や灌水量を決定していた。
【0008】
しかしながら、このような水分ストレスの判断方法は熟練を要するものであり、誰にでも出来るものではない。また、実際の天候の影響を考慮して、判断を適宜修正する必要があり、勘や経験に頼ったものになり易い。それ故、判断のばらつきや不確実さがあった。
【0009】
なお、特許文献2(特開2005−308733号公報)には、みかん等の農作物の水分ストレスをその葉の色からスペクトル分析して定量的に計測する方法が開示されている。しかしながら、計測に用いる装置が複雑且つ高価であり、手軽に水分ストレスの測定をすることが難しいという問題があった。
【0010】
【特許文献1】特開平5−15262号公報
【特許文献2】特開2005−308733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、適当な水分ストレスを与えて、果実の品質を向上させることが出来る、新規な柑橘類の水分制御栽培方法及び柑橘類の水分ストレス測定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0013】
柑橘類の水分制御栽培方法に関する本発明は、農地の表面を通気性防水シートで覆うと共に灌水システムを設け、土壌水分をコントロールして栽培する柑橘類の水分制御栽培方法であって、液胞発達期において、果実の硬さを手指で触取すると共に、果実を模した合成樹脂製の果実モデルを用いて果実と果実モデルにおける硬さの触感を比較することにより果樹における水分ストレスの適否を判断し、その判断結果に基づいて土壌水分をコントロールすることを、特徴とする。
【0014】
このような本発明に係る柑橘類の水分制御栽培方法に従えば、果実モデルと果実の硬さの触感を比較するという極めて簡単な方法によって、果樹における水分ストレスの適否を判断することが出来る。これにより、水分ストレスの適否の判断を手軽に行うことが可能となる。
【0015】
従って、本発明に係る柑橘類の水分制御栽培方法においては、水分ストレスの適否の判断を頻繁に行う等して、果樹における水分ストレスの適否を的確に判断することにより、適当な水分ストレスを果樹に与えることが可能となる。その結果、果実の品質を向上させることが出来る。
【0016】
なお、柑橘類の水分制御栽培方法に関する本発明において、「灌水システム」は、従来から公知の各種設備からなるシステムが採用可能であり、例えば特開2005−204662号公報等に記載の点滴式(ドリップ式)の灌水システム等が好適に採用されるが、それに限定されるものでない。例えば、灌水用の送水管を地表に敷設する他、灌水用の送水管を地中に埋めて液の吐出口を地中に設置したり、灌水用の送水管を地面から上方に空中設置して液の吐出口を空中設置することも出来る。また、送水管の吐出口から水等を吐出させる灌水システムの他、スプリンクラー等を用いて散布する灌水システム等を採用することも可能である。更にまた、このような灌水システムにおける灌水量の調節も、各種条件下で自由に設定可能であって限定されるものでなく、例えば特開2002−300818号公報等に記載のように日照時間に応じて灌水を調節する他、土壌の水分や温度等を検出するセンサを用いてその検出信号に基づいて灌水調節することも可能である。また、灌水システムでの灌水に際しては、水だけでなく、液肥等も適宜に与えることが出来る。
【0017】
また、柑橘類の水分制御栽培方法に関する本発明において、「土壌水分をコントロールする」に際しては、上述の灌水システムで灌水したり、灌水システムによる灌水を中止したり、灌水システムによる灌水量を調節したりすることに限定されるものではない。例えば、灌水システムとは別途の手段(例えば、バケツやホース等)で、特別に灌水することにより、土壌水分をコントロールしても良い。また、通気性防水シートを捲って雨水を与える等することで、土壌水分をコントロールしても良い。
【0018】
さらに、柑橘類の水分制御栽培方法に関する本発明において、果実を模した果実モデルを採用するのは、果実と果実モデルの硬さの触感を比較する際の、感触に影響する条件を略同じにするためである。従って、硬さの触感に影響しない要素、具体的には色や水分量,材質等は、果実と相違していても良く、それらが相違する果実モデルも、本発明における果実を模したものである。なお、果実と果実モデルにおいて、質量は硬さの触感に直接影響しないことから必ずしも略同じにする必要はないが、手で持った時の重量感を考慮すると略同じにした方が望ましい。
【0019】
そこにおいて、本発明に係る柑橘類の水分制御栽培方法では、果実モデルを、互いに異なる硬さで複数種類準備しておいて、それら複数種類の果実モデルと果実との触感による硬さの比較によって果樹における水分ストレスの適否を判断する態様が、好適に採用される。
【0020】
かかる態様に従えば、触感による硬さの比較の基準を複数設定することが出来る。これにより、果実の硬さを幾つかの評価基準と比較することが可能となる。その結果、果樹に適度な水分ストレスが与えられているか否かの判断の正確さを向上させることが出来る。即ち、単一の硬さの一つの果実モデルだけを用いて、それと果実との硬さが等しいか否かを判断する作業に比して、複数の果実モデルを準備して何れの果実モデルの硬さとが一番近いかを判断する作業の方が、人の触感の特性上の理由から容易で速やかに作業出来、しかも正確に判断することが出来るのである。
【0021】
また、本発明に係る柑橘類の水分制御栽培方法においては、果実モデルと果実との触感による硬さの比較に基づく果樹における水分ストレスの適否の判断を、日没後に行う態様が、好適に採用される。かかる態様に従えば、水分ストレスの程度に応じて果実に表れる硬さに違いが出やすくなる。その結果、果樹における水分ストレスの適否の判断に対する信頼性をより一層向上させることが出来る。
【0022】
一方、柑橘類の水分ストレス測定具に関する本発明は、柑橘類の液胞発達期における果実を模して合成樹脂材料でそれぞれ形成されて硬さが相互に異ならされた複数種類の果実モデルの組み合わせから構成されており、これら複数種類の果実モデルの硬さが果実の栽培時に果樹へ与えられる水分ストレスの程度に応じて果実に表れる硬さを模して設定されていることを、特徴とする。
【0023】
このような本発明に従う構造とされた柑橘類の水分ストレス測定具においては、果実モデルと果実の硬さの触感を比較するという極めて簡単な方法で、果樹における水分ストレスの適否を判断することが出来る。その結果、果樹における水分ストレスの適否の判断を手軽に行うことが可能となる。
【0024】
そこにおいて、本発明に係る柑橘類の水分ストレス測定具では、果実モデルが複数設けられており、しかも、これら複数の果実モデルが互いに異なる硬さを有している。これにより、果実の硬さを、幾つかの果実モデルと比較することが可能となる。その結果、果樹に適当な水分ストレスが与えられているか否かの判断の正確さを向上させることが出来る。
【0025】
また、各果実モデルが果実を模した形状とされている。これにより、果実モデルと果実の触感による硬さ比較に際しての条件を略同じにすることが可能となる。その結果、判断の正確さに対する信頼性をより一層高めることが出来る。
【0026】
なお、柑橘類の水分ストレス測定具に関する本発明において、「果実を模して」とは、前述の柑橘類の水分制御栽培方法に関する本発明での「果実を模した」と同様に定義される。
【0027】
さらに、本発明に係る柑橘類の水分ストレス測定具においては、複数の果実モデルには、適当な水分ストレスが与えられた状態で果実に表れる硬さを模した基準果実モデルと、基準果実モデルよりも水分ストレスが強い状態で果実に表れる硬さを模した高基準果実モデルと、基準果実モデルよりも水分ストレスが弱い状態で果実に表れる硬さを模した低基準果実モデルのうちの少なくとも二つが含まれていることが望ましい。これにより、灌水の必要があるか否かの見極めが容易になる。即ち、単一の硬さの一つの果実モデルだけを用いた硬さの判断に比して、複数の果実モデルの硬さの何れに近いかを判断する作業の方が容易であることは前述のとおりであり、特に適度な水分ストレスと過度な水分ストレスと不足した水分ストレスとの3種類の中から、果実モデルを少なくとも二種類選択することで、かかる判断を一層容易且つ速やかに行うことが可能となる。より好適には、これら3種類の硬さの果実モデルの全てを組み合わせてセットで採用し、果実との触感を相互比較するようにされる。
【0028】
更にまた、本発明に係る柑橘類の水分ストレス測定具においては、複数の果実モデルの硬さを外見から識別するための硬さ識別手段が設けられていることが望ましい。これにより、適切な果実モデルを容易に選択することが出来る。
【0029】
そこにおいて、硬さ識別手段は、複数の果実モデルを互いに異なる色に着色することで構成されていることが望ましい。これにより、果実モデルの硬さや形状,大きさ等に影響を与えることなく、各果実モデルに識別力を与えることが出来る。
【0030】
また、本発明においては、複数の果実モデルを連結する連結部材が設けられていることが望ましい。これにより、複数の果実モデルを一纏めにして取り扱うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0032】
図1には、本発明の一実施形態としての柑橘類の水分ストレス測定具10が示されている。かかる水分ストレス測定具10は、複数(本実施形態では、三つ)の果実モデル12を備えている。
【0033】
より詳細には、各果実モデル12は、柑橘類の液胞発達期における果実を模した形状とされており、合成樹脂材料で形成されている。なお、合成樹脂材料としては、弾性を有するものが好適に採用される。例えば、シリコーン等が採用され得る。また、本実施形態では、実際の果実から作った成形型を使用して、各果実モデル12を成形した。なお、各果実モデル12は、柑橘類の液胞発達期における果実の赤道面の外径寸法と略同じ外径寸法を有する球形状であっても良い。
【0034】
そこにおいて、各果実モデル12は硬さが異なっている。各果実モデル12の硬さの違いは、人が手で握り比べても判る程度に設定されている。具体的には、各果実モデル12の硬さは、果実の栽培時に果樹へ与えられる水分ストレスの程度に応じて果実に表れる硬さを模して設定されている。特に、本実施形態では、三つの果実モデル12のうちの一つが、適度な水分ストレスが与えられた状態で果実に表れる硬さを模した基準果実モデル14とされている。かかる基準果実モデル14の硬さは、デュロメーターESE型(JIS K 6253 タイプE準拠)で赤道面を測定した場合の測定値が好ましくは68°〜75°、より好ましくは70°〜73°に設定されている。また、残りの二つの果実モデル12のうち一つは、基準果実モデル14よりも水分ストレスが強い状態で果実に表れる硬さを模した高基準果実モデル16とされている。かかる高基準果実モデル16の硬さは、デュロメーターESE型で赤道面を測定した場合の測定値が好ましくは58°〜65°、より好ましくは60°〜63°に設定されている。更に、他の一つは、基準果実モデル14よりも水分ストレスが弱い状態で果実に表れる硬さを模した低基準果実モデル18とされている。かかる低基準果実モデル18の硬さは、デュロメーターESE型で赤道面を測定した場合の測定値が好ましくは78°〜85°、より好ましくは80°〜83°に設定されている。即ち、三つの果実モデル14,16,18は、互いに異なる水分ストレスの状態を示しているのである。そこにおいて、採用する三つの果実モデル14,16,18は、相互間の硬さの差が、5°〜15°の範囲で設定されていることが望ましい。即ち、基準果実モデル14と高基準果実モデル16との硬度差を5°〜15°の範囲にすると共に、基準果実モデル14と低基準果実モデル18との硬度差を5°〜15°の範囲にすることが望ましい。蓋し、5°より小さい硬度差は、人の直接の触感で直ちに判別し難くなるおそれがある一方、15°を超える硬度差では、判定精度が低下するおそれがあるからである。
【0035】
なお、図面上では明らかでないが、本実施形態では、三つの果実モデル14,16,18に対して互いに異なる着色が施されている。これにより、各果実モデル14,16,18に識別力が付与されている。即ち、本実施形態では、三つの果実モデル14,16,18に対して互いに異なる着色を施すことで硬さ識別手段が構成されている。
【0036】
また、本実施形態では、三つの果実モデル14,16,18が連結部材としての連結チューブ20によって連結されている。連結チューブ20は、プラスチック材料によって形成されており、略一定の断面形状でストレートに延びている。なお、本実施形態では、連結チューブ20の形成材料として、ポリエチレンが採用されている。また、連結チューブ20は、各果実モデル14,16,18の硬さに影響を与えない程度の外径寸法とされている。
【0037】
このような連結チューブ20は、三つの果実モデル14,16,18を串刺しにするようにして、三つの果実モデル14,16,18に組み付けられている。これにより、三つの果実モデル14,16,18が連結チューブ20によって連結されている。その結果、三つの果実モデル14,16,18を一纏めにして取り扱うことが出来る。
【0038】
そこにおいて、本実施形態では、連結チューブ20で連結された三つの果実モデル14,16,18は、低基準果実モデル18,基準果実モデル14,高基準果実モデル16の順番で、連結チューブ20の長手方向一端側から他端側へ並んでいる。即ち、三つの果実モデル14,16,18は、連結チューブ20の長手方向一端から他端へ行くに従って水分ストレスが強くなっていることを示している。
【0039】
なお、本実施形態では、連結チューブ20の長手方向他方の端部にリング状部材としての係止リング22が設けられている。これにより、水分ストレス測定具10を吊るして保管することが出来る。
【0040】
このような構造とされた水分ストレス測定具10においては、果実モデル14,16,18の硬さと果樹における水分ストレスが対応している。従って、果実と果実モデル14,16,18を握り比べることにより、果樹における水分ストレスの適否を判断することが出来る。
【0041】
特に本実施形態では、互いに異なる硬さに設定された三つの果実モデル14,16,18が設けられていることから、果樹における水分ストレスの程度として互いに異なる三つのレベルが示されていることになる。従って、水分ストレスの適否の判断に対する信頼性を向上させることが出来る。
【0042】
また、本実施形態では、三つの果実モデル14,16,18に対して互いに異なる着色を施すことにより、三つの果実モデル14,16,18を識別出来るようにしている。従って、形状や大きさ、更には、硬さへの影響を回避しつつ、各果実モデル14,16,18に識別力を付与することが出来る。
【0043】
そして、上述の如き構造とされた水分ストレス測定具10は、灌水を制御する柑橘類の栽培方法に用いることが出来る。例えば、通気性防水シートで農地の表面を覆うと共に、点滴式(ドリップ式)等の適当な灌水システムを設けて、土壌水分をコントロールして栽培する方法に用いることが出来る。
【0044】
具体的には、柑橘類の液胞発達期に、果実モデル14,16,18と果実の硬さの触感を比較して、果樹における水分ストレスの適否を判断する。例えば、果実が灌水基準果実モデル14よりも軟らかい場合に、果樹における水分ストレスが適当であると判断するのであれば、果実と灌水基準果実モデル14を握り比べて、果実の硬さが灌水基準果実モデル14よりも軟らかい場合に、果樹における水分ストレスが適当と判断する。
【0045】
その際、果実と他の果実モデル16,18の硬さを比べることで、判断の正確さを増すことが出来る。具体的には、上述の如く水分ストレスの判断基準が設定されている場合、果実と高基準果実モデル16を握り比べれば、果実の硬さが基準果実モデル14よりも柔らかくなっていることが判り易くなる。また、果実と低基準果実モデル18を握り比べれば、果実の硬さが基準果実モデル14よりも硬いことが判り易くなる。
【0046】
なお、水分ストレスの判断基準を二つの果実モデル12の間、例えば、基準果実モデル14と低基準果実モデル18の間や、基準果実モデル14と高基準果実モデル16の間に設定しても良い。この場合も、果実を二つの果実モデル12と握り比べることによって、判断の正確さを増すことが出来る。
【0047】
そして、この判断結果に基づいて、土壌水分をコントロールする。例えば、水分ストレスが適当或いは過度であれば、灌水システムで果樹に灌水し、水分ストレスが足りないのであれば、果樹に灌水せずに、水分ストレスが適当になるまで待つ。
【0048】
このような柑橘類の水分制御栽培方法においては、果実モデル14,16,18と果実の硬さの触感を比較するという手軽な方法によって果実における水分ストレスの適否を的確に判断することが出来るので、土壌水分のコントロールを的確に行うことが出来る。その結果、適当な水分ストレスを与えて、果実の品質の向上を図ることが可能となる。
【0049】
また、上述の如き水分ストレス測定具10を用いれば、複数の果実モデル14,16,18が互いに異なる硬さを有していることから、果実と果実モデル14,16,18の握り比べに際して、幾つかの果実モデル12と果実の硬さを比較することが出来る。その結果、水分ストレスの適否の判断に対する信頼性を向上させることが可能となる。
【0050】
さらに、水分ストレスの適否の判断を日没後に行えば、水分ストレスによる果実の触感の違いがはっきりとするので、水分ストレスの適否の判断に対する信頼性の更なる向上を図ることが出来る。
【実施例】
【0051】
先ず、手で感じる硬さとデュロメーターによる測定結果との間に相関関係があるか否かを調べた。具体的には、24本の果樹のそれぞれから果実を採取し、室内で果実の硬さを手の感触とデュロメーターで調べた。なお、かかる調査は、平成19年の8月から9月中旬(8月2日,8日、9日,14日,15日,21日,22日,30日,9月5日,13日,19日)の間において、日の出頃に相当する5時頃(早朝)と、13時頃(日中)と、直射日光が当たらなくなった18時30分頃(日没後)に行った。また、デュロメーターによる測定は、デュロメーターESE型で果実の赤道面を測定することで行った。一方、果実の手で感じる硬さは、果実を手で握り指先で感じる硬さを5段階で評価した。具体的には、握っても硬くて殆ど凹まないものを「5」、僅かに凹んでやや柔らかく「5」との差が明らかに感じられるものを「3」、かなり凹み柔らかいと感じられるものを「1」とした。かかる調査によって得られた、手で感じる硬さとデュロメーターによる測定結果との相関関係を、図2に示す。また、平成19年8月21日から22日にかけて果実の硬さの変化を測定した。その結果を図3に示す。
【0052】
図2から明らかなように、手で感じる硬さとデュロメーターによる測定結果との間には、高い相関関係が見られる。また、図3から明らかなように、早朝から日没後までの変化をみても、手で感じる硬さとデュロメーターによる測定結果はよく似た推移を示す。
【0053】
次に、果実の硬さを水分ストレスの指標とするのに適した時期を調べた。具体的には、湿潤管理を行った果樹のうち3本の果樹からそれぞれ果実を三つずつ採取し、室内で果実の硬さと着色歩合と果肉色を測定した。かかる調査は、平成19年の8月から9月中旬(8月2日,8日、9日,14日,15日,21日,22日,30日,9月5日,13日,19日)の間において、日の出頃に相当する5時頃(早朝)に行った。湿潤管理は、1〜2日間隔で果樹一本毎に50リットルずつ潅水して行った。果実の硬さの測定は、デュロメーターESE型で果実の赤道面を測定することで行った。果実の手で感じる硬さは、果実を手で握り指先で感じる硬さを5段階で評価した。評価基準は、先の試験と同じである。かかる調査によって得られた結果を、図4及び図5に示す。なお、図4は、極早生温州での調査結果を示しており、図5は、早生温州での調査結果を示している。
【0054】
図4の結果から明らかなように、極早生温州の湿潤管理果樹においては、果実の硬さは8月下旬まで略横ばいの状態であったが、9月に入って果実の着色と果肉色が進むと共に急激に軟化した。即ち、極早生温州では、8月下旬までは果実の硬さが硬く安定していることになる。従って、極早生温州では、8月下旬までならば、果実の硬さを水分ストレスの指標として利用することが出来る。
【0055】
また、図5の結果から明らかなように、早生温州の湿潤管理果樹においては、果実の硬さは9月上旬までは略横ばいの状態であったが、9月中旬になって果肉色が進むと共に急激に軟化した。即ち、早生温州では、9月上旬までは果実の硬さが硬く安定していることになる。従って、早生温州では、9月上旬までならば、果実の硬さを水分ストレスの指標として利用することが出来る。
【0056】
次に、果実の硬さと水ポテンシャルとの関係について調べた。果実の硬さについては、日の出頃に相当する5時頃(早朝)と、13時頃(日中)と、直射日光が当たらなくなった18時30分頃(日没後)に、採取した極早生温州の果実の硬さを室内において手の感触とデュロメーターで調べた。水ポテンシャルについては、圃場で早朝に測定した。なお、かかる調査は、平成19年の8月から9月中旬(8月2日,8日、9日,14日,15日,21日,22日,30日,9月5日,13日,19日)の間に行った。果実の硬さの測定は、早朝のみ実施した日がある。また、デュロメーターによる測定は、デュロメーターESE型で果実の赤道面を測定することで行った。一方、果実の手で感じる硬さは、果実を手で握り指先で感じる硬さを5段階で評価した。評価基準は、先の試験と同じである。また、水ポテンシャルは、プレッシャーチャンバー法で測定した。
【0057】
なお、本発明において、日没とは、樹木に直射日光が照射しなくなった時をいう。また、本発明において、日没後とは、好適には日没〜2時間の範囲内、より好適には日没の10分後〜1時間までの間をいう。蓋し、直射日光が照射しなくなった直後は、それまで直射日光が照射していたことによる熱等の影響があり、日没から2時間経過した後では、時間が経過し過ぎており、何れの場合も測定精度が低下する傾向にあるからである。因みに、上記18時30分は、樹木に直射日光が照射しなくなった時に相当する頃である。
【0058】
そして、上述の調査の結果を基にして、調査期間別の水ポテンシャルと果実の硬さの関係を調べた。その結果を表1に示す。また、翌日の早朝の最大水ポテンシャルと果実の硬さの測定時刻との関係を調べた。その結果を図6及び図7に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1から明らかなように、8月末までは水ポテンシャルと果実の硬さに高い関係が認められた。従って、極早生温州については、8月末まで果実の硬さを水分ストレスの調査に利用することが出来る。また、図6及び図7から明らかなように、水分ストレスの指標とされている早朝の最大水ポテンシャルと果実の硬さとの関係については、手の感触とデュロメーターによる測定の両方において、日没後に最も高い関係が見られる。即ち、日没後に果実の硬さを調べれば、翌朝の最大水ポテンシャルが推定できる。
【0061】
続いて、本実施形態の水分ストレス測定具10を構成する果実モデル12の製造方法について、説明する。8月の上旬に極早生温州の横径43mmの果実から型をとり、市販の4種類のシリコーンを用いて、硬さの異なる4種類の果実モデルを製造した。また、参考のために、直径が43mmの球状の果実モデルについても、同様に製造した。そして、これらの果実モデルの硬さをデュロメーターで測定した。具体的には、デュロメーターESE型で果実モデルの赤道面を測定した。その測定結果を表2に示す。
【0062】
なお、果実モデル12の大きさとして、横径43mmを採用したのは、果実モデル12と果実の握り比べをする時期において、横径43mmが最も一般的な外観形状だからである。
【0063】
【表2】
【0064】
また、別試験で調査した日没後の果実の硬さと翌朝の最大水ポテンシャルのグラフに対して蜜柑型の果実モデルの硬さをプロットし、蜜柑型の果実モデルの硬さが最大ポテンシャルのどの位置に当てはまるかを調べた。その結果を図8に示す。
【0065】
表2に示されているように、蜜柑型の果実モデルも球状の果実モデルも、硬さのばらつきは比較的少ない。また、図8に示されているように、硬さレベルAのシリコーンゴムで形成した蜜柑型の果実モデルでは、最大水ポテンシャルが−1.3〜−1.6Mpa付近を示した。硬さレベルBのシリコーンゴムで形成した蜜柑型の果実モデルでは、最大水ポテンシャルが−0.8〜−1.0Mpa付近を示した。硬さレベルCのシリコーンゴムで形成した蜜柑型の果実モデルでは、最大水ポテンシャルが−0.3〜−0.4Mpa付近を示した。
【0066】
すなわち、これら3種類の果実モデル12の硬さは、実際の果実の硬さの変動幅に分布している。また、日没後の果実の硬さと翌朝の最大水ポテンシャルの関係に当てはめてみると、硬さレベルAのシリコーンゴムで形成した果実モデル12が強めの水分ストレスが果樹に与えられている状態での果実の硬さを示しており、硬さレベルBのシリコーンゴムで形成した果実モデル12が一般的に灌水が必要とされる水分ストレスが果樹に与えられている状態での果実の硬さを示しており、硬さレベルCのシリコーンゴムで形成した果実モデル12が果樹における水分ストレスが殆どない状態での果実の硬さを示している。
【0067】
そして、この結果に基づいて、硬さレベルAのシリコーンゴムで形成された果実モデル12を硬さ指数レベル2の高基準果実モデル16、硬さレベルBのシリコーンゴムで形成された果実モデル12を硬さ指数レベル3の基準果実モデル14、硬さレベルCのシリコーンゴムで形成された果実モデル12を硬さ指数レベル4の低基準果実モデル18とした。
【0068】
続いて、本実施形態の水分ストレス測定具10を用いて、果樹における水分ストレスの適否を判断し、その判断結果に基づいて土壌水分をコントロールする栽培方法で栽培された果実の品質について調べた。かかる調査は、灌水基準の異なる六つの区域で行った(表3参照)。なお、各区域は、北向き緩傾斜地とされており、その広さは36平方メートル、植樹本数は6本である。
【0069】
【表3】
【0070】
区域Aには、朝8時頃に果実の硬さが指数レベル4未満の場合に潅水するという灌水基準が設定されていた。区域Bには、日没後の18時30分頃に果実の硬さが指数レベル3未満の場合に灌水するという灌水基準が設定されていた。区域Cには、日没後の18時30分頃に果実の硬さが指数レベル4未満の場合に灌水するという灌水基準が設定されていた。区域Dには、昼13時頃に指数レベル2程度の場合に灌水するという灌水基準が設定されていた。そして、これらの区域A,B,C,Dでは、灌水基準に達した場合、果樹毎に50リットルずつ灌水した。区域Eでは、特別な灌水基準は設定せずに、1〜2日毎に灌水をした。区域Fでは、特別な灌水基準は設定せずに、自然状態のままにしておいた。区域A,B,C,Dでは、平成19年7月30日から収穫終了日まで通気性防水シート(所謂マルチ)を樹冠下に敷設した。区域E,Fでは、マルチを使用しなかった。灌水基準のチェックは、8月2日から2日に一回を基本に朝と昼と日没後の3度実施した。そして、基準に達した場合は、点滴灌水施設により、灌水を実施した。なお、灌水基準に従った灌水は9月1日までで、それ以降は晴天が三日連続した場合に灌水を行った。具体的には、9月5日と11日に、全てのマルチ処理区域(区域A,B,C,D)において、果樹毎に50リットルずつ灌水した。
【0071】
また、果実の品質については、一本の果樹から採取した三つの果実について、10日間隔で調査した。なお、9月21日及び10月1日は、一本の果樹から採取した七つの果実について調査した。
【0072】
調査時間毎の指数レベルの推移を、図9乃至11に示す。また、果実の品質の推移を、図12及び13に示す。更に、平成19年9月21日に調べた果実の品質を、表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
図9乃至11から明らかなように、日没後における硬さチェックが、区域の違いによる差が最も大きく、水分ストレスの差を捕らえ易い。また、表4や図12から明らかなように、マルチ処理区域(区域A,B,C,D)では、収穫時の糖度が何れも10.5以上となった。なお、この年は乾燥が激しかったので、区域Fにおいても、糖度が10以上になった。また、表4や図13から明らかなように、クエン酸は、区域Cが9月21日時点で1.0%となっていた。その他のマルチ処理区域(区域A,B,D)は、区域Cよりも0.2%程度高かった。
【0075】
これらの結果から明らかなように、本実施形態の水分ストレス測定具10を用いて、果樹における水分ストレスの適否を判断すれば、高品質な果実を生産出来ることが判る。
【0076】
以上、本発明の一実施形態と幾つかの実施例について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態や実施例における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0077】
例えば、水分ストレス測定具における果実モデルの数は二つであっても良いし、四つ以上であっても良い。また、果実モデルは、連結部材によって連結されている必要はない。
【0078】
更に、連結部材は、複数の果実モデルのそれぞれを貫通するように配設されている必要はない。例えば、各果実モデルにおいて上方に開口する上側凹所と下方に開口する下側凹所をそれぞれ形成して、ロッド状の連結部材の一端部を一方の果実モデルの下側凹所に嵌め入れると共に、他端部を他方の果実モデルの上側凹所に嵌め入れることにより、複数の果実モデルを連結部材で連結しても良い。或いは、複数の果実モデルを貫通する釣り糸で複数の果実モデルを連結しても良い。この場合、釣り糸によって連結部材が構成される。なお、釣り糸で複数の果実モデルを連結する場合には、釣り糸において外部に露出している部分に合成樹脂製(例えば、ポリエチレン製)のチューブを外挿しても良い。これにより、果実モデル間の距離を適当な長さに設定することが出来る。
【0079】
更にまた、硬さ識別手段は、果実モデルの表面に文字や記号等で表示しても良い。また、連結部材の表面に表示された文字や記号等で硬さ識別手段を構成しても良い。更に、複数の果実モデルが、水分ストレス測定具を壁等に吊るしておくためのリング状部材に対して、各別に鎖や紐等で連結されている場合には、果実モデルをリング状部材に連結するための鎖や紐等の長さを互いに異ならせることで、硬さ識別手段を構成しても良い。
【0080】
また、前記実施形態において、複数の果実モデル12が二つの果実モデル12で構成されていてもよい。例えば、基準果実モデル14と高基準果実モデル16の組み合わせであっても良いし、基準果実モデル14と低基準果実モデル18の組み合わせであっても良いし、低基準果実モデル18と高基準果実モデル16の組み合わせであっても良い。
【0081】
さらに、前記実施形態において、適当な挟み具を用いて硬さを比べても良い。例えば、力が弱い者や障害をもつ者が硬さの比較をする場合や、より高精度な硬さ比較が必要な場合に、簡単に使用できる挟み具を用いて、その反力に基づいて硬さ比較をしても良い。
【0082】
また、果実を模した果実モデルは、果実の硬さを手指で触取する方法に応じて、「模した具体的形状」が相違しても良い。例えば、果実の横径方向だけに力を加えて触取して果実モデルと比較するのであれば、少なくとも果実の赤道面の外径寸法と略同じ外径寸法を有する例えば円筒形状の果実モデル等も、果実を模した果実モデルとして採用可能である。なお、果実モデルが模す果実は、栽培される自然物としての果実であるから、その果実の種類や作柄等に対応して、果実モデルの大きさや形状が異なる。
【0083】
更にまた、液胞発達期を過ぎた後においても、硬さ比較による水分ストレスの適否の判断をしても良い。また、液胞発達期では、果実が緑色をしていることから、果実が成熟して、その色が薄緑色になったり、黄色味を帯びてくると、液胞発達期を過ぎたことが判る。従って、果実の色に基づいて、水分ストレスの適否の判断のための硬さ比較をすべきか否かを判断しても良い。
【0084】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態としての水分ストレス測定具を示す正面図。
【図2】手で感じる硬さとデュロメーターによる測定結果との相関関係を示すグラフ。
【図3】1日における果実の硬さの変化を示すグラフ。
【図4】湿潤管理下での極早生温州における果実の硬さの推移を示すグラフ。
【図5】湿潤管理下での早生温州における果実の硬さの推移を示すグラフ。
【図6】翌日の早朝の最大水ポテンシャルとデュロメーターによる果実の硬さの測定時刻との関係を示すグラフ。
【図7】翌日の早朝の最大水ポテンシャルと手の感触による果実の硬さの測定時刻との関係を示すグラフ。
【図8】蜜柑型の果実モデルの硬さと最大ポテンシャルとの位置関係を示すグラフ。
【図9】朝に測定した指数レベルの推移を示すグラフ。
【図10】昼に測定した指数レベルの推移を示すグラフ。
【図11】日没後に測定した指数レベルの推移を示すグラフ。
【図12】果実の糖度の推移を示すグラフ。
【図13】果実のクエン酸の推移を示すグラフ。
【符号の説明】
【0086】
10:水分ストレス測定具,12:果実モデル,14:灌水基準モデル,16:高基準果実モデル,18:低基準果実モデル,20:連結チューブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘類の水分制御栽培方法及びそれに用いることが出来る柑橘類の水分ストレス測定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、温州蜜柑等の柑橘類の栽培においては、高糖度な果実を生産するために、灌水や水切り(灌水の制限)といった水管理が効果的であることが知られている。具体的には、果実の成育後半から成熟期にかけて灌水を制限し、適度な水分ストレスを樹体に与えることが提案されている。
【0003】
そこにおいて、人工的に灌水を制限する方法としては、ビニールハウス内で栽培する方法が知られている。しかしながら、ハウス栽培は、ビニールハウスの建設費が高価であることに加えて、ハウス内での温度管理や水分管理にかなりの労力がかかることから、あまり普及していないのが現状である。
【0004】
一方、露地栽培では、降雨量をコントロールすることが不可能である。それ故、収穫前の天候によって果実の品質が左右されていた。
【0005】
そこで、特許文献1(特開平5−15262号公報)等に記載の如き栽培方法が提案されている。具体的には、通気性を有する防水フィルムで果実の成育後半から成熟期にかけて土面を被覆して土壌水分を管理する栽培方法である。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の栽培方法で土壌水分を管理したとしても、適度な水分ストレスが樹体に与えられているか否かは生産者が判断しなければならない。そして、過度な水分ストレスを樹体に与えてしまった場合には、樹体の勢いを低下させてしまう。その結果、果実の成長が阻害されたり、翌年の新枝や新芽の成長が阻害される。最悪の場合には、樹体そのものが枯死することもある。それ故、水分ストレスが適当であるか否かの判断は極めて重要である。
【0007】
そこにおいて、水分ストレスの指標としては、葉の巻き具合や葉色,果実の肥大等の外観上の変化が挙げられる。そして、従来では、このような外観上の変化から生産者が水分ストレスを判断して灌水時期や灌水量を決定していた。
【0008】
しかしながら、このような水分ストレスの判断方法は熟練を要するものであり、誰にでも出来るものではない。また、実際の天候の影響を考慮して、判断を適宜修正する必要があり、勘や経験に頼ったものになり易い。それ故、判断のばらつきや不確実さがあった。
【0009】
なお、特許文献2(特開2005−308733号公報)には、みかん等の農作物の水分ストレスをその葉の色からスペクトル分析して定量的に計測する方法が開示されている。しかしながら、計測に用いる装置が複雑且つ高価であり、手軽に水分ストレスの測定をすることが難しいという問題があった。
【0010】
【特許文献1】特開平5−15262号公報
【特許文献2】特開2005−308733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、適当な水分ストレスを与えて、果実の品質を向上させることが出来る、新規な柑橘類の水分制御栽培方法及び柑橘類の水分ストレス測定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0013】
柑橘類の水分制御栽培方法に関する本発明は、農地の表面を通気性防水シートで覆うと共に灌水システムを設け、土壌水分をコントロールして栽培する柑橘類の水分制御栽培方法であって、液胞発達期において、果実の硬さを手指で触取すると共に、果実を模した合成樹脂製の果実モデルを用いて果実と果実モデルにおける硬さの触感を比較することにより果樹における水分ストレスの適否を判断し、その判断結果に基づいて土壌水分をコントロールすることを、特徴とする。
【0014】
このような本発明に係る柑橘類の水分制御栽培方法に従えば、果実モデルと果実の硬さの触感を比較するという極めて簡単な方法によって、果樹における水分ストレスの適否を判断することが出来る。これにより、水分ストレスの適否の判断を手軽に行うことが可能となる。
【0015】
従って、本発明に係る柑橘類の水分制御栽培方法においては、水分ストレスの適否の判断を頻繁に行う等して、果樹における水分ストレスの適否を的確に判断することにより、適当な水分ストレスを果樹に与えることが可能となる。その結果、果実の品質を向上させることが出来る。
【0016】
なお、柑橘類の水分制御栽培方法に関する本発明において、「灌水システム」は、従来から公知の各種設備からなるシステムが採用可能であり、例えば特開2005−204662号公報等に記載の点滴式(ドリップ式)の灌水システム等が好適に採用されるが、それに限定されるものでない。例えば、灌水用の送水管を地表に敷設する他、灌水用の送水管を地中に埋めて液の吐出口を地中に設置したり、灌水用の送水管を地面から上方に空中設置して液の吐出口を空中設置することも出来る。また、送水管の吐出口から水等を吐出させる灌水システムの他、スプリンクラー等を用いて散布する灌水システム等を採用することも可能である。更にまた、このような灌水システムにおける灌水量の調節も、各種条件下で自由に設定可能であって限定されるものでなく、例えば特開2002−300818号公報等に記載のように日照時間に応じて灌水を調節する他、土壌の水分や温度等を検出するセンサを用いてその検出信号に基づいて灌水調節することも可能である。また、灌水システムでの灌水に際しては、水だけでなく、液肥等も適宜に与えることが出来る。
【0017】
また、柑橘類の水分制御栽培方法に関する本発明において、「土壌水分をコントロールする」に際しては、上述の灌水システムで灌水したり、灌水システムによる灌水を中止したり、灌水システムによる灌水量を調節したりすることに限定されるものではない。例えば、灌水システムとは別途の手段(例えば、バケツやホース等)で、特別に灌水することにより、土壌水分をコントロールしても良い。また、通気性防水シートを捲って雨水を与える等することで、土壌水分をコントロールしても良い。
【0018】
さらに、柑橘類の水分制御栽培方法に関する本発明において、果実を模した果実モデルを採用するのは、果実と果実モデルの硬さの触感を比較する際の、感触に影響する条件を略同じにするためである。従って、硬さの触感に影響しない要素、具体的には色や水分量,材質等は、果実と相違していても良く、それらが相違する果実モデルも、本発明における果実を模したものである。なお、果実と果実モデルにおいて、質量は硬さの触感に直接影響しないことから必ずしも略同じにする必要はないが、手で持った時の重量感を考慮すると略同じにした方が望ましい。
【0019】
そこにおいて、本発明に係る柑橘類の水分制御栽培方法では、果実モデルを、互いに異なる硬さで複数種類準備しておいて、それら複数種類の果実モデルと果実との触感による硬さの比較によって果樹における水分ストレスの適否を判断する態様が、好適に採用される。
【0020】
かかる態様に従えば、触感による硬さの比較の基準を複数設定することが出来る。これにより、果実の硬さを幾つかの評価基準と比較することが可能となる。その結果、果樹に適度な水分ストレスが与えられているか否かの判断の正確さを向上させることが出来る。即ち、単一の硬さの一つの果実モデルだけを用いて、それと果実との硬さが等しいか否かを判断する作業に比して、複数の果実モデルを準備して何れの果実モデルの硬さとが一番近いかを判断する作業の方が、人の触感の特性上の理由から容易で速やかに作業出来、しかも正確に判断することが出来るのである。
【0021】
また、本発明に係る柑橘類の水分制御栽培方法においては、果実モデルと果実との触感による硬さの比較に基づく果樹における水分ストレスの適否の判断を、日没後に行う態様が、好適に採用される。かかる態様に従えば、水分ストレスの程度に応じて果実に表れる硬さに違いが出やすくなる。その結果、果樹における水分ストレスの適否の判断に対する信頼性をより一層向上させることが出来る。
【0022】
一方、柑橘類の水分ストレス測定具に関する本発明は、柑橘類の液胞発達期における果実を模して合成樹脂材料でそれぞれ形成されて硬さが相互に異ならされた複数種類の果実モデルの組み合わせから構成されており、これら複数種類の果実モデルの硬さが果実の栽培時に果樹へ与えられる水分ストレスの程度に応じて果実に表れる硬さを模して設定されていることを、特徴とする。
【0023】
このような本発明に従う構造とされた柑橘類の水分ストレス測定具においては、果実モデルと果実の硬さの触感を比較するという極めて簡単な方法で、果樹における水分ストレスの適否を判断することが出来る。その結果、果樹における水分ストレスの適否の判断を手軽に行うことが可能となる。
【0024】
そこにおいて、本発明に係る柑橘類の水分ストレス測定具では、果実モデルが複数設けられており、しかも、これら複数の果実モデルが互いに異なる硬さを有している。これにより、果実の硬さを、幾つかの果実モデルと比較することが可能となる。その結果、果樹に適当な水分ストレスが与えられているか否かの判断の正確さを向上させることが出来る。
【0025】
また、各果実モデルが果実を模した形状とされている。これにより、果実モデルと果実の触感による硬さ比較に際しての条件を略同じにすることが可能となる。その結果、判断の正確さに対する信頼性をより一層高めることが出来る。
【0026】
なお、柑橘類の水分ストレス測定具に関する本発明において、「果実を模して」とは、前述の柑橘類の水分制御栽培方法に関する本発明での「果実を模した」と同様に定義される。
【0027】
さらに、本発明に係る柑橘類の水分ストレス測定具においては、複数の果実モデルには、適当な水分ストレスが与えられた状態で果実に表れる硬さを模した基準果実モデルと、基準果実モデルよりも水分ストレスが強い状態で果実に表れる硬さを模した高基準果実モデルと、基準果実モデルよりも水分ストレスが弱い状態で果実に表れる硬さを模した低基準果実モデルのうちの少なくとも二つが含まれていることが望ましい。これにより、灌水の必要があるか否かの見極めが容易になる。即ち、単一の硬さの一つの果実モデルだけを用いた硬さの判断に比して、複数の果実モデルの硬さの何れに近いかを判断する作業の方が容易であることは前述のとおりであり、特に適度な水分ストレスと過度な水分ストレスと不足した水分ストレスとの3種類の中から、果実モデルを少なくとも二種類選択することで、かかる判断を一層容易且つ速やかに行うことが可能となる。より好適には、これら3種類の硬さの果実モデルの全てを組み合わせてセットで採用し、果実との触感を相互比較するようにされる。
【0028】
更にまた、本発明に係る柑橘類の水分ストレス測定具においては、複数の果実モデルの硬さを外見から識別するための硬さ識別手段が設けられていることが望ましい。これにより、適切な果実モデルを容易に選択することが出来る。
【0029】
そこにおいて、硬さ識別手段は、複数の果実モデルを互いに異なる色に着色することで構成されていることが望ましい。これにより、果実モデルの硬さや形状,大きさ等に影響を与えることなく、各果実モデルに識別力を与えることが出来る。
【0030】
また、本発明においては、複数の果実モデルを連結する連結部材が設けられていることが望ましい。これにより、複数の果実モデルを一纏めにして取り扱うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0032】
図1には、本発明の一実施形態としての柑橘類の水分ストレス測定具10が示されている。かかる水分ストレス測定具10は、複数(本実施形態では、三つ)の果実モデル12を備えている。
【0033】
より詳細には、各果実モデル12は、柑橘類の液胞発達期における果実を模した形状とされており、合成樹脂材料で形成されている。なお、合成樹脂材料としては、弾性を有するものが好適に採用される。例えば、シリコーン等が採用され得る。また、本実施形態では、実際の果実から作った成形型を使用して、各果実モデル12を成形した。なお、各果実モデル12は、柑橘類の液胞発達期における果実の赤道面の外径寸法と略同じ外径寸法を有する球形状であっても良い。
【0034】
そこにおいて、各果実モデル12は硬さが異なっている。各果実モデル12の硬さの違いは、人が手で握り比べても判る程度に設定されている。具体的には、各果実モデル12の硬さは、果実の栽培時に果樹へ与えられる水分ストレスの程度に応じて果実に表れる硬さを模して設定されている。特に、本実施形態では、三つの果実モデル12のうちの一つが、適度な水分ストレスが与えられた状態で果実に表れる硬さを模した基準果実モデル14とされている。かかる基準果実モデル14の硬さは、デュロメーターESE型(JIS K 6253 タイプE準拠)で赤道面を測定した場合の測定値が好ましくは68°〜75°、より好ましくは70°〜73°に設定されている。また、残りの二つの果実モデル12のうち一つは、基準果実モデル14よりも水分ストレスが強い状態で果実に表れる硬さを模した高基準果実モデル16とされている。かかる高基準果実モデル16の硬さは、デュロメーターESE型で赤道面を測定した場合の測定値が好ましくは58°〜65°、より好ましくは60°〜63°に設定されている。更に、他の一つは、基準果実モデル14よりも水分ストレスが弱い状態で果実に表れる硬さを模した低基準果実モデル18とされている。かかる低基準果実モデル18の硬さは、デュロメーターESE型で赤道面を測定した場合の測定値が好ましくは78°〜85°、より好ましくは80°〜83°に設定されている。即ち、三つの果実モデル14,16,18は、互いに異なる水分ストレスの状態を示しているのである。そこにおいて、採用する三つの果実モデル14,16,18は、相互間の硬さの差が、5°〜15°の範囲で設定されていることが望ましい。即ち、基準果実モデル14と高基準果実モデル16との硬度差を5°〜15°の範囲にすると共に、基準果実モデル14と低基準果実モデル18との硬度差を5°〜15°の範囲にすることが望ましい。蓋し、5°より小さい硬度差は、人の直接の触感で直ちに判別し難くなるおそれがある一方、15°を超える硬度差では、判定精度が低下するおそれがあるからである。
【0035】
なお、図面上では明らかでないが、本実施形態では、三つの果実モデル14,16,18に対して互いに異なる着色が施されている。これにより、各果実モデル14,16,18に識別力が付与されている。即ち、本実施形態では、三つの果実モデル14,16,18に対して互いに異なる着色を施すことで硬さ識別手段が構成されている。
【0036】
また、本実施形態では、三つの果実モデル14,16,18が連結部材としての連結チューブ20によって連結されている。連結チューブ20は、プラスチック材料によって形成されており、略一定の断面形状でストレートに延びている。なお、本実施形態では、連結チューブ20の形成材料として、ポリエチレンが採用されている。また、連結チューブ20は、各果実モデル14,16,18の硬さに影響を与えない程度の外径寸法とされている。
【0037】
このような連結チューブ20は、三つの果実モデル14,16,18を串刺しにするようにして、三つの果実モデル14,16,18に組み付けられている。これにより、三つの果実モデル14,16,18が連結チューブ20によって連結されている。その結果、三つの果実モデル14,16,18を一纏めにして取り扱うことが出来る。
【0038】
そこにおいて、本実施形態では、連結チューブ20で連結された三つの果実モデル14,16,18は、低基準果実モデル18,基準果実モデル14,高基準果実モデル16の順番で、連結チューブ20の長手方向一端側から他端側へ並んでいる。即ち、三つの果実モデル14,16,18は、連結チューブ20の長手方向一端から他端へ行くに従って水分ストレスが強くなっていることを示している。
【0039】
なお、本実施形態では、連結チューブ20の長手方向他方の端部にリング状部材としての係止リング22が設けられている。これにより、水分ストレス測定具10を吊るして保管することが出来る。
【0040】
このような構造とされた水分ストレス測定具10においては、果実モデル14,16,18の硬さと果樹における水分ストレスが対応している。従って、果実と果実モデル14,16,18を握り比べることにより、果樹における水分ストレスの適否を判断することが出来る。
【0041】
特に本実施形態では、互いに異なる硬さに設定された三つの果実モデル14,16,18が設けられていることから、果樹における水分ストレスの程度として互いに異なる三つのレベルが示されていることになる。従って、水分ストレスの適否の判断に対する信頼性を向上させることが出来る。
【0042】
また、本実施形態では、三つの果実モデル14,16,18に対して互いに異なる着色を施すことにより、三つの果実モデル14,16,18を識別出来るようにしている。従って、形状や大きさ、更には、硬さへの影響を回避しつつ、各果実モデル14,16,18に識別力を付与することが出来る。
【0043】
そして、上述の如き構造とされた水分ストレス測定具10は、灌水を制御する柑橘類の栽培方法に用いることが出来る。例えば、通気性防水シートで農地の表面を覆うと共に、点滴式(ドリップ式)等の適当な灌水システムを設けて、土壌水分をコントロールして栽培する方法に用いることが出来る。
【0044】
具体的には、柑橘類の液胞発達期に、果実モデル14,16,18と果実の硬さの触感を比較して、果樹における水分ストレスの適否を判断する。例えば、果実が灌水基準果実モデル14よりも軟らかい場合に、果樹における水分ストレスが適当であると判断するのであれば、果実と灌水基準果実モデル14を握り比べて、果実の硬さが灌水基準果実モデル14よりも軟らかい場合に、果樹における水分ストレスが適当と判断する。
【0045】
その際、果実と他の果実モデル16,18の硬さを比べることで、判断の正確さを増すことが出来る。具体的には、上述の如く水分ストレスの判断基準が設定されている場合、果実と高基準果実モデル16を握り比べれば、果実の硬さが基準果実モデル14よりも柔らかくなっていることが判り易くなる。また、果実と低基準果実モデル18を握り比べれば、果実の硬さが基準果実モデル14よりも硬いことが判り易くなる。
【0046】
なお、水分ストレスの判断基準を二つの果実モデル12の間、例えば、基準果実モデル14と低基準果実モデル18の間や、基準果実モデル14と高基準果実モデル16の間に設定しても良い。この場合も、果実を二つの果実モデル12と握り比べることによって、判断の正確さを増すことが出来る。
【0047】
そして、この判断結果に基づいて、土壌水分をコントロールする。例えば、水分ストレスが適当或いは過度であれば、灌水システムで果樹に灌水し、水分ストレスが足りないのであれば、果樹に灌水せずに、水分ストレスが適当になるまで待つ。
【0048】
このような柑橘類の水分制御栽培方法においては、果実モデル14,16,18と果実の硬さの触感を比較するという手軽な方法によって果実における水分ストレスの適否を的確に判断することが出来るので、土壌水分のコントロールを的確に行うことが出来る。その結果、適当な水分ストレスを与えて、果実の品質の向上を図ることが可能となる。
【0049】
また、上述の如き水分ストレス測定具10を用いれば、複数の果実モデル14,16,18が互いに異なる硬さを有していることから、果実と果実モデル14,16,18の握り比べに際して、幾つかの果実モデル12と果実の硬さを比較することが出来る。その結果、水分ストレスの適否の判断に対する信頼性を向上させることが可能となる。
【0050】
さらに、水分ストレスの適否の判断を日没後に行えば、水分ストレスによる果実の触感の違いがはっきりとするので、水分ストレスの適否の判断に対する信頼性の更なる向上を図ることが出来る。
【実施例】
【0051】
先ず、手で感じる硬さとデュロメーターによる測定結果との間に相関関係があるか否かを調べた。具体的には、24本の果樹のそれぞれから果実を採取し、室内で果実の硬さを手の感触とデュロメーターで調べた。なお、かかる調査は、平成19年の8月から9月中旬(8月2日,8日、9日,14日,15日,21日,22日,30日,9月5日,13日,19日)の間において、日の出頃に相当する5時頃(早朝)と、13時頃(日中)と、直射日光が当たらなくなった18時30分頃(日没後)に行った。また、デュロメーターによる測定は、デュロメーターESE型で果実の赤道面を測定することで行った。一方、果実の手で感じる硬さは、果実を手で握り指先で感じる硬さを5段階で評価した。具体的には、握っても硬くて殆ど凹まないものを「5」、僅かに凹んでやや柔らかく「5」との差が明らかに感じられるものを「3」、かなり凹み柔らかいと感じられるものを「1」とした。かかる調査によって得られた、手で感じる硬さとデュロメーターによる測定結果との相関関係を、図2に示す。また、平成19年8月21日から22日にかけて果実の硬さの変化を測定した。その結果を図3に示す。
【0052】
図2から明らかなように、手で感じる硬さとデュロメーターによる測定結果との間には、高い相関関係が見られる。また、図3から明らかなように、早朝から日没後までの変化をみても、手で感じる硬さとデュロメーターによる測定結果はよく似た推移を示す。
【0053】
次に、果実の硬さを水分ストレスの指標とするのに適した時期を調べた。具体的には、湿潤管理を行った果樹のうち3本の果樹からそれぞれ果実を三つずつ採取し、室内で果実の硬さと着色歩合と果肉色を測定した。かかる調査は、平成19年の8月から9月中旬(8月2日,8日、9日,14日,15日,21日,22日,30日,9月5日,13日,19日)の間において、日の出頃に相当する5時頃(早朝)に行った。湿潤管理は、1〜2日間隔で果樹一本毎に50リットルずつ潅水して行った。果実の硬さの測定は、デュロメーターESE型で果実の赤道面を測定することで行った。果実の手で感じる硬さは、果実を手で握り指先で感じる硬さを5段階で評価した。評価基準は、先の試験と同じである。かかる調査によって得られた結果を、図4及び図5に示す。なお、図4は、極早生温州での調査結果を示しており、図5は、早生温州での調査結果を示している。
【0054】
図4の結果から明らかなように、極早生温州の湿潤管理果樹においては、果実の硬さは8月下旬まで略横ばいの状態であったが、9月に入って果実の着色と果肉色が進むと共に急激に軟化した。即ち、極早生温州では、8月下旬までは果実の硬さが硬く安定していることになる。従って、極早生温州では、8月下旬までならば、果実の硬さを水分ストレスの指標として利用することが出来る。
【0055】
また、図5の結果から明らかなように、早生温州の湿潤管理果樹においては、果実の硬さは9月上旬までは略横ばいの状態であったが、9月中旬になって果肉色が進むと共に急激に軟化した。即ち、早生温州では、9月上旬までは果実の硬さが硬く安定していることになる。従って、早生温州では、9月上旬までならば、果実の硬さを水分ストレスの指標として利用することが出来る。
【0056】
次に、果実の硬さと水ポテンシャルとの関係について調べた。果実の硬さについては、日の出頃に相当する5時頃(早朝)と、13時頃(日中)と、直射日光が当たらなくなった18時30分頃(日没後)に、採取した極早生温州の果実の硬さを室内において手の感触とデュロメーターで調べた。水ポテンシャルについては、圃場で早朝に測定した。なお、かかる調査は、平成19年の8月から9月中旬(8月2日,8日、9日,14日,15日,21日,22日,30日,9月5日,13日,19日)の間に行った。果実の硬さの測定は、早朝のみ実施した日がある。また、デュロメーターによる測定は、デュロメーターESE型で果実の赤道面を測定することで行った。一方、果実の手で感じる硬さは、果実を手で握り指先で感じる硬さを5段階で評価した。評価基準は、先の試験と同じである。また、水ポテンシャルは、プレッシャーチャンバー法で測定した。
【0057】
なお、本発明において、日没とは、樹木に直射日光が照射しなくなった時をいう。また、本発明において、日没後とは、好適には日没〜2時間の範囲内、より好適には日没の10分後〜1時間までの間をいう。蓋し、直射日光が照射しなくなった直後は、それまで直射日光が照射していたことによる熱等の影響があり、日没から2時間経過した後では、時間が経過し過ぎており、何れの場合も測定精度が低下する傾向にあるからである。因みに、上記18時30分は、樹木に直射日光が照射しなくなった時に相当する頃である。
【0058】
そして、上述の調査の結果を基にして、調査期間別の水ポテンシャルと果実の硬さの関係を調べた。その結果を表1に示す。また、翌日の早朝の最大水ポテンシャルと果実の硬さの測定時刻との関係を調べた。その結果を図6及び図7に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1から明らかなように、8月末までは水ポテンシャルと果実の硬さに高い関係が認められた。従って、極早生温州については、8月末まで果実の硬さを水分ストレスの調査に利用することが出来る。また、図6及び図7から明らかなように、水分ストレスの指標とされている早朝の最大水ポテンシャルと果実の硬さとの関係については、手の感触とデュロメーターによる測定の両方において、日没後に最も高い関係が見られる。即ち、日没後に果実の硬さを調べれば、翌朝の最大水ポテンシャルが推定できる。
【0061】
続いて、本実施形態の水分ストレス測定具10を構成する果実モデル12の製造方法について、説明する。8月の上旬に極早生温州の横径43mmの果実から型をとり、市販の4種類のシリコーンを用いて、硬さの異なる4種類の果実モデルを製造した。また、参考のために、直径が43mmの球状の果実モデルについても、同様に製造した。そして、これらの果実モデルの硬さをデュロメーターで測定した。具体的には、デュロメーターESE型で果実モデルの赤道面を測定した。その測定結果を表2に示す。
【0062】
なお、果実モデル12の大きさとして、横径43mmを採用したのは、果実モデル12と果実の握り比べをする時期において、横径43mmが最も一般的な外観形状だからである。
【0063】
【表2】
【0064】
また、別試験で調査した日没後の果実の硬さと翌朝の最大水ポテンシャルのグラフに対して蜜柑型の果実モデルの硬さをプロットし、蜜柑型の果実モデルの硬さが最大ポテンシャルのどの位置に当てはまるかを調べた。その結果を図8に示す。
【0065】
表2に示されているように、蜜柑型の果実モデルも球状の果実モデルも、硬さのばらつきは比較的少ない。また、図8に示されているように、硬さレベルAのシリコーンゴムで形成した蜜柑型の果実モデルでは、最大水ポテンシャルが−1.3〜−1.6Mpa付近を示した。硬さレベルBのシリコーンゴムで形成した蜜柑型の果実モデルでは、最大水ポテンシャルが−0.8〜−1.0Mpa付近を示した。硬さレベルCのシリコーンゴムで形成した蜜柑型の果実モデルでは、最大水ポテンシャルが−0.3〜−0.4Mpa付近を示した。
【0066】
すなわち、これら3種類の果実モデル12の硬さは、実際の果実の硬さの変動幅に分布している。また、日没後の果実の硬さと翌朝の最大水ポテンシャルの関係に当てはめてみると、硬さレベルAのシリコーンゴムで形成した果実モデル12が強めの水分ストレスが果樹に与えられている状態での果実の硬さを示しており、硬さレベルBのシリコーンゴムで形成した果実モデル12が一般的に灌水が必要とされる水分ストレスが果樹に与えられている状態での果実の硬さを示しており、硬さレベルCのシリコーンゴムで形成した果実モデル12が果樹における水分ストレスが殆どない状態での果実の硬さを示している。
【0067】
そして、この結果に基づいて、硬さレベルAのシリコーンゴムで形成された果実モデル12を硬さ指数レベル2の高基準果実モデル16、硬さレベルBのシリコーンゴムで形成された果実モデル12を硬さ指数レベル3の基準果実モデル14、硬さレベルCのシリコーンゴムで形成された果実モデル12を硬さ指数レベル4の低基準果実モデル18とした。
【0068】
続いて、本実施形態の水分ストレス測定具10を用いて、果樹における水分ストレスの適否を判断し、その判断結果に基づいて土壌水分をコントロールする栽培方法で栽培された果実の品質について調べた。かかる調査は、灌水基準の異なる六つの区域で行った(表3参照)。なお、各区域は、北向き緩傾斜地とされており、その広さは36平方メートル、植樹本数は6本である。
【0069】
【表3】
【0070】
区域Aには、朝8時頃に果実の硬さが指数レベル4未満の場合に潅水するという灌水基準が設定されていた。区域Bには、日没後の18時30分頃に果実の硬さが指数レベル3未満の場合に灌水するという灌水基準が設定されていた。区域Cには、日没後の18時30分頃に果実の硬さが指数レベル4未満の場合に灌水するという灌水基準が設定されていた。区域Dには、昼13時頃に指数レベル2程度の場合に灌水するという灌水基準が設定されていた。そして、これらの区域A,B,C,Dでは、灌水基準に達した場合、果樹毎に50リットルずつ灌水した。区域Eでは、特別な灌水基準は設定せずに、1〜2日毎に灌水をした。区域Fでは、特別な灌水基準は設定せずに、自然状態のままにしておいた。区域A,B,C,Dでは、平成19年7月30日から収穫終了日まで通気性防水シート(所謂マルチ)を樹冠下に敷設した。区域E,Fでは、マルチを使用しなかった。灌水基準のチェックは、8月2日から2日に一回を基本に朝と昼と日没後の3度実施した。そして、基準に達した場合は、点滴灌水施設により、灌水を実施した。なお、灌水基準に従った灌水は9月1日までで、それ以降は晴天が三日連続した場合に灌水を行った。具体的には、9月5日と11日に、全てのマルチ処理区域(区域A,B,C,D)において、果樹毎に50リットルずつ灌水した。
【0071】
また、果実の品質については、一本の果樹から採取した三つの果実について、10日間隔で調査した。なお、9月21日及び10月1日は、一本の果樹から採取した七つの果実について調査した。
【0072】
調査時間毎の指数レベルの推移を、図9乃至11に示す。また、果実の品質の推移を、図12及び13に示す。更に、平成19年9月21日に調べた果実の品質を、表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
図9乃至11から明らかなように、日没後における硬さチェックが、区域の違いによる差が最も大きく、水分ストレスの差を捕らえ易い。また、表4や図12から明らかなように、マルチ処理区域(区域A,B,C,D)では、収穫時の糖度が何れも10.5以上となった。なお、この年は乾燥が激しかったので、区域Fにおいても、糖度が10以上になった。また、表4や図13から明らかなように、クエン酸は、区域Cが9月21日時点で1.0%となっていた。その他のマルチ処理区域(区域A,B,D)は、区域Cよりも0.2%程度高かった。
【0075】
これらの結果から明らかなように、本実施形態の水分ストレス測定具10を用いて、果樹における水分ストレスの適否を判断すれば、高品質な果実を生産出来ることが判る。
【0076】
以上、本発明の一実施形態と幾つかの実施例について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態や実施例における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0077】
例えば、水分ストレス測定具における果実モデルの数は二つであっても良いし、四つ以上であっても良い。また、果実モデルは、連結部材によって連結されている必要はない。
【0078】
更に、連結部材は、複数の果実モデルのそれぞれを貫通するように配設されている必要はない。例えば、各果実モデルにおいて上方に開口する上側凹所と下方に開口する下側凹所をそれぞれ形成して、ロッド状の連結部材の一端部を一方の果実モデルの下側凹所に嵌め入れると共に、他端部を他方の果実モデルの上側凹所に嵌め入れることにより、複数の果実モデルを連結部材で連結しても良い。或いは、複数の果実モデルを貫通する釣り糸で複数の果実モデルを連結しても良い。この場合、釣り糸によって連結部材が構成される。なお、釣り糸で複数の果実モデルを連結する場合には、釣り糸において外部に露出している部分に合成樹脂製(例えば、ポリエチレン製)のチューブを外挿しても良い。これにより、果実モデル間の距離を適当な長さに設定することが出来る。
【0079】
更にまた、硬さ識別手段は、果実モデルの表面に文字や記号等で表示しても良い。また、連結部材の表面に表示された文字や記号等で硬さ識別手段を構成しても良い。更に、複数の果実モデルが、水分ストレス測定具を壁等に吊るしておくためのリング状部材に対して、各別に鎖や紐等で連結されている場合には、果実モデルをリング状部材に連結するための鎖や紐等の長さを互いに異ならせることで、硬さ識別手段を構成しても良い。
【0080】
また、前記実施形態において、複数の果実モデル12が二つの果実モデル12で構成されていてもよい。例えば、基準果実モデル14と高基準果実モデル16の組み合わせであっても良いし、基準果実モデル14と低基準果実モデル18の組み合わせであっても良いし、低基準果実モデル18と高基準果実モデル16の組み合わせであっても良い。
【0081】
さらに、前記実施形態において、適当な挟み具を用いて硬さを比べても良い。例えば、力が弱い者や障害をもつ者が硬さの比較をする場合や、より高精度な硬さ比較が必要な場合に、簡単に使用できる挟み具を用いて、その反力に基づいて硬さ比較をしても良い。
【0082】
また、果実を模した果実モデルは、果実の硬さを手指で触取する方法に応じて、「模した具体的形状」が相違しても良い。例えば、果実の横径方向だけに力を加えて触取して果実モデルと比較するのであれば、少なくとも果実の赤道面の外径寸法と略同じ外径寸法を有する例えば円筒形状の果実モデル等も、果実を模した果実モデルとして採用可能である。なお、果実モデルが模す果実は、栽培される自然物としての果実であるから、その果実の種類や作柄等に対応して、果実モデルの大きさや形状が異なる。
【0083】
更にまた、液胞発達期を過ぎた後においても、硬さ比較による水分ストレスの適否の判断をしても良い。また、液胞発達期では、果実が緑色をしていることから、果実が成熟して、その色が薄緑色になったり、黄色味を帯びてくると、液胞発達期を過ぎたことが判る。従って、果実の色に基づいて、水分ストレスの適否の判断のための硬さ比較をすべきか否かを判断しても良い。
【0084】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態としての水分ストレス測定具を示す正面図。
【図2】手で感じる硬さとデュロメーターによる測定結果との相関関係を示すグラフ。
【図3】1日における果実の硬さの変化を示すグラフ。
【図4】湿潤管理下での極早生温州における果実の硬さの推移を示すグラフ。
【図5】湿潤管理下での早生温州における果実の硬さの推移を示すグラフ。
【図6】翌日の早朝の最大水ポテンシャルとデュロメーターによる果実の硬さの測定時刻との関係を示すグラフ。
【図7】翌日の早朝の最大水ポテンシャルと手の感触による果実の硬さの測定時刻との関係を示すグラフ。
【図8】蜜柑型の果実モデルの硬さと最大ポテンシャルとの位置関係を示すグラフ。
【図9】朝に測定した指数レベルの推移を示すグラフ。
【図10】昼に測定した指数レベルの推移を示すグラフ。
【図11】日没後に測定した指数レベルの推移を示すグラフ。
【図12】果実の糖度の推移を示すグラフ。
【図13】果実のクエン酸の推移を示すグラフ。
【符号の説明】
【0086】
10:水分ストレス測定具,12:果実モデル,14:灌水基準モデル,16:高基準果実モデル,18:低基準果実モデル,20:連結チューブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農地の表面を通気性防水シートで覆うと共に灌水システムを設け、土壌水分をコントロールして栽培する柑橘類の水分制御栽培方法であって、
液胞発達期において、果実の硬さを手指で触取すると共に、該果実を模した合成樹脂製の果実モデルを用いて該果実と該果実モデルにおける硬さの触感を比較することにより果樹における水分ストレスの適否を判断し、その判断結果に基づいて土壌水分をコントロールすることを特徴とする柑橘類の水分制御栽培方法。
【請求項2】
前記果実モデルを、互いに異なる硬さで複数種類準備しておいて、それら複数種類の果実モデルと前記果実との触感による硬さの比較によって果樹における水分ストレスの適否を判断する請求項1に記載の柑橘類の水分制御栽培方法。
【請求項3】
前記果実モデルと前記果実との触感による硬さの比較に基づく果樹における水分ストレスの適否の判断を、日没後に行う請求項1又は2に記載の柑橘類の水分制御栽培方法。
【請求項4】
柑橘類の液胞発達期における果実を模して合成樹脂材料でそれぞれ形成されて硬さが相互に異ならされた複数種類の果実モデルの組み合わせから構成されており、これら複数種類の果実モデルの硬さが該果実の栽培時に果樹へ与えられる水分ストレスの程度に応じて該果実に表れる硬さを模して設定されていることを特徴とする柑橘類の水分ストレス測定具。
【請求項5】
前記複数の果実モデルには、適度な水分ストレスが与えられた状態で前記果実に表れる硬さを模した基準果実モデルと、該基準果実モデルよりも水分ストレスが強い状態で該果実に表れる硬さを模した高基準果実モデルと、該基準果実モデルよりも水分ストレスが弱い状態で該果実に表れる硬さを模した低基準果実モデルのうちの少なくとも二つが含まれている請求項4に記載の柑橘類の水分ストレス測定具。
【請求項6】
前記複数の果実モデルの硬さを外見から識別するための硬さ識別手段が設けられている請求項4又は5に記載の柑橘類の水分ストレス測定具。
【請求項7】
前記複数の果実モデルを互いに異なる色に着色することで前記硬さ識別手段が構成されている請求項6に記載の柑橘類の水分ストレス測定具。
【請求項8】
前記複数の果実モデルを連結する連結部材が設けられている請求項4乃至7の何れか1項に記載の柑橘類の水分ストレス測定具。
【請求項1】
農地の表面を通気性防水シートで覆うと共に灌水システムを設け、土壌水分をコントロールして栽培する柑橘類の水分制御栽培方法であって、
液胞発達期において、果実の硬さを手指で触取すると共に、該果実を模した合成樹脂製の果実モデルを用いて該果実と該果実モデルにおける硬さの触感を比較することにより果樹における水分ストレスの適否を判断し、その判断結果に基づいて土壌水分をコントロールすることを特徴とする柑橘類の水分制御栽培方法。
【請求項2】
前記果実モデルを、互いに異なる硬さで複数種類準備しておいて、それら複数種類の果実モデルと前記果実との触感による硬さの比較によって果樹における水分ストレスの適否を判断する請求項1に記載の柑橘類の水分制御栽培方法。
【請求項3】
前記果実モデルと前記果実との触感による硬さの比較に基づく果樹における水分ストレスの適否の判断を、日没後に行う請求項1又は2に記載の柑橘類の水分制御栽培方法。
【請求項4】
柑橘類の液胞発達期における果実を模して合成樹脂材料でそれぞれ形成されて硬さが相互に異ならされた複数種類の果実モデルの組み合わせから構成されており、これら複数種類の果実モデルの硬さが該果実の栽培時に果樹へ与えられる水分ストレスの程度に応じて該果実に表れる硬さを模して設定されていることを特徴とする柑橘類の水分ストレス測定具。
【請求項5】
前記複数の果実モデルには、適度な水分ストレスが与えられた状態で前記果実に表れる硬さを模した基準果実モデルと、該基準果実モデルよりも水分ストレスが強い状態で該果実に表れる硬さを模した高基準果実モデルと、該基準果実モデルよりも水分ストレスが弱い状態で該果実に表れる硬さを模した低基準果実モデルのうちの少なくとも二つが含まれている請求項4に記載の柑橘類の水分ストレス測定具。
【請求項6】
前記複数の果実モデルの硬さを外見から識別するための硬さ識別手段が設けられている請求項4又は5に記載の柑橘類の水分ストレス測定具。
【請求項7】
前記複数の果実モデルを互いに異なる色に着色することで前記硬さ識別手段が構成されている請求項6に記載の柑橘類の水分ストレス測定具。
【請求項8】
前記複数の果実モデルを連結する連結部材が設けられている請求項4乃至7の何れか1項に記載の柑橘類の水分ストレス測定具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図8】
【公開番号】特開2010−136642(P2010−136642A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314243(P2008−314243)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(594156880)三重県 (58)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(594156880)三重県 (58)
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