染色体外核酸のインビトロ増幅のための方法及び組成物
本発明は、核酸のインビトロ増幅のための、及び、特に1キロベース又はそれ以上の分子量を有する染色体外核酸分子の増幅のための組成物及び方法を提供する。これに関して、プライマー、低イオン強度増幅バッファー、低共溶媒含有バッファー、及び混合したポリメリゼーション/ライゲーション反応バッファーの設計及び使用を記載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2003年11月26日に出願された米国仮出願第60/525,459号、表題:METHODS AND COMPOSITIONS FOR IN VITRO AMPLIFICATION OF EXTRACHROMOSOMAL NUCLEIC ACIDベースの優先権の利益を主張し、当該優先権基礎出願をここに全体として本願明細書中に援用する。
【0002】
本発明の分野
本発明は、一般的に、染色体外核酸のインビトロ増幅のための方法及び組成物に関し、そして、より特にプラスミド及び他の核酸様分子のインビトロ増幅に関する。
【背景技術】
【0003】
核酸分子、特に、長さ1キロベースより大きい核酸分子、例えば、染色体外DNAであって、例えば、プラスミドDNA、の相当量の製造能力は、バイオテクノロジー及び臨床研究における多くの川下使用の基本的要件であるのと同様、分子生物学の多くのプロトコールにとって必須である。例えば、より高分子量の核酸分子は、クローニング実験、DNAシークエンシング反応、制限消化反応、及びその後のライゲーション反応において、しばしば好まれ、そして、これらの使用は、全て又はある程度、出発DNA原料の質と量に依存する。そのようなものとして、大量の良質な、特に染色体外DNAに関する核酸分子及び特にプラスミドDNAの信頼性のある製造方法についての必要性があり、そしてあり続けるであろう。
【0004】
大量の核酸を製造する優れたアプローチは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を経由するものである。PCR法は、テンプレート核酸の急激な増加に役立つ、便利なインビトロ増幅方法である。しかしながら、PCR法は、低分子量核酸標的であって、例えば2kb未満の増幅のために伝統的に使用され、そして、長さ1kb超の核酸分子の増幅において、不満の残る結果(質及び量の両方について)を典型的に招く。一般的に、1プラスkb核酸分子の満足な水準及び/又は質の増幅の失敗は、ポリメラーゼの無能であって、大量のヌクレオチドを正確に増幅できないこと、及び/又は生成物の全長を増幅するために必要な時間のために、より長いテンプレートを保持することができないことが原因である。いくつかのアプローチが、これらのより高分子量の分子を増幅するためのPCR法を改良するために実施され、PCR緩衝(バッファリング)能力を改良すること、例えば、トリシン−NH4又はトリシン−KOHの当該反応ミックスへの統合、DMSO様PCRエンハンサーの当該反応ミックスへの統合、及び当該ポリメラーゼ酵素自体の改良を含む。PCRバッファーの改良に関して、当該含有物は、当該バッファーのイオン強度、及び当該ポリメラーゼ自体の忠実度に重大な影響を与え、そしてそれ故、増幅におけるいくつかの結果物の増大は、当該忠実度を犠牲にして、しばしば生じる。当該ポリメラーゼ酵素自体に関する改良について、改良のいくつかのレベルは、忠実度及び前進性を手に入れ得るが、しかし、しばしば当該変化を正当であると証明しないほどの高価なハイブリッド蛋白質を組み込むという犠牲を払うことになる。
【0005】
さらに最近、閉環状核酸分子を増幅するために新しい増幅技術が開発され、10kbプラスミドの増幅もまた記載されているけれども、特に1〜2kbの範囲で実施される。特に、単一の“増幅”反応であって、増幅間ライゲーション反応(LDA)と呼ばれる反応が、熱安定性ポリメラーゼ、熱安定性リガーゼ、及びエネルギー源の混合物を含み開発された(米国特許第6,620,597号を参照のこと。)。当該特許に挙げられるデータに基づいて、10〜20kbの範囲内におけるより大きい核酸分子が、この技術により無事に増幅され得るかどうかはわからず、そしてより注目すべきことは、より小さい標的を含む、増幅標的の忠実度が、大量の増幅された塩基を与える核酸分子のいずれかの利用のために受け入れられるとの実証がないことである。LDAは、重合(ポリメリゼーション)をライゲーション・バッファリング条件と連合するので、ライゲーションが効率的でなくなるであろうと予測される。
【0006】
結果として、大量の染色体外核酸分子、例えば、プラスミド、BACs、コスミッド、YACsなどであって、適切な複製シグナルを有するものは、まだ一般的に、宿主細胞を培養することにより製造し、続いて本分野においてよく知られる方法、例えば、ミニプレップ又はマキシプレップ由来のプロトコールを使用して、標的分子を精製する。特に、標的宿主細胞を、染色体外核酸分子で形質転換し、選択的圧力に置き、当該染色体外核酸をかくまい及び維持することを確かなものとし、そして次いで、当該宿主細胞を、要求される染色体外核酸の期待量を提供するために十分なレベルまで培養する。一旦成培養したならば、宿主細胞を溶解し、そして内容物を可溶化させる。次いで、当該染色体外核酸を、いくつか一般に使用される化学又は酵素の方法を経由し、宿主細胞蛋白質、RNA、ゲノムDNA、及び他の高分子の混合物から分離する。
【0007】
一般的に、染色体外核酸の大量製造の全過程は、相当大きな労働力、多大な時間、及び特定の実験装置を要する、すなわち、宿主細胞増殖プラットフォーム、宿主細胞増殖培地を滅菌するために必要な装置(又は当該培地を購入するための必要な手段)、より大きな回転遠心分離機、オートクレイブ、パイレックス(登録商標)容器、滅菌済みチューブなどである。そのように、染色体外核酸分子の製造は、宿主細胞を扱う十分な時間及び装備を有する研究所、及び細胞の培養及びそれらを維持する余裕のある研究所によるものとしばしば限定される。加えて、これらの培養及び精製方法は、宿主細胞内で又は培養不可能な宿主細胞では複製しない標的核酸分子に適応しない。さらに、このように製造された染色体外核酸は、エンドトキシンのかなり高いレベルで、しばしば単離される。そのようなものとして、ミニプレップ/マキシプレップ方法を経由し単離される染色体外核酸は、エンドトキシン感受性酵素の使用を要求する、その後の使用についてしばしば満足できない。
【0008】
加えて、染色体外核酸の慣習的な培養及び精製方法は、多くの相互に連結し複雑な要因に依存し変化し得、当該要因は、以下の:各宿主細胞内に含まれる染色体外核酸分子の大きさ(塩基対)及び数(1細胞当りのコピー数)、当該核酸製造のために使用される宿主細胞の型/株、当該宿主細胞の成長率、及び当該宿主細胞から当該染色体外核酸の単離前に、当該宿主細胞が成長を可能とする時間量を含む。例えば、低コピー染色体外核酸の製造は、同様の増殖及び回収条件下での高コピー染色体外核酸分子のレベルよりかなり低い量をもたらす。そのようなものとして、染色体外核酸を製造するために使用される慣習的な方法は、生成物の矛盾した量をもたらす。総合すれば、染色体外核酸の製造の慣習的な方法は、結果物の有効性及び信頼性と同様、手順の容易さ及び値ごろ感共に改良の余地がある。
【0009】
そのようなものとして、単純で一貫性があり、及び時間的有効性がある、核酸分子製造方法について、本分野において継続的必要性があり、ここで当該核酸分子とは、特に長さ1kb超の核酸分子であって、染色体外核酸分子を含むものであり、当該継続的必要性は、そこに使用され得る試薬及びプライマーの改良についてと同様である。特に、十分量の染色体外核酸を製造するための方法及び試薬の必要性があり、ここで、当該必要性は、慣習的方法にある、時間、費用、及び非一貫性を消去することであり、これらの高分子量核酸分子における、例えば、ほとんどの染色体外要素における、PCR法に関連する限定と同様なことである。
【0010】
このような背景に対して、本発明が開発された。
【発明の開示】
【0011】
本発明の要約
本発明は、染色体外核酸のインビトロ増幅のための組成物及び方法、特に、少なくとも約1kb、そしてより好ましくは約2〜30kbの分子量を有する染色体外核酸であって、例えばプラスミドDNAのインビトロ増幅を提供する。本発明に関する増幅方法は、直鎖状又は環状の一本又はニ本鎖テンプレートDNAにおいて実施され得、増幅生成物、すなわちアンプリコン(増幅単位)は、通常、直鎖である。好ましい態様において、当該方法は、二本鎖環状テンプレートDNAを使用する。
【0012】
本明細書において例証する通り、本発明が提供する方法及び組成物の結果物であるアンプリコンの忠実度は、優れており、そして結果生成物は、大幅にエンドトキシン・レベルを低減している。当該対象方法を使用して形成される直鎖生成物は、直鎖生成物あるいは、標準ライゲーション反応の使用又は宿主細胞インビボ・ライゲーション過程の利用により、さらに括られ閉環状核酸分子として利用され得る。あるいは、反応条件により、核酸分子の実質的に同時に起こる増幅及びライゲーションを提供し、結果として、同様の反応バッファー中の閉環生成物を提供する。さらに、直鎖状生成物は、追加の増幅反応のためのテンプレートとして標的とされ得る。
【0013】
ある態様において、環状核酸テンプレートを増幅する方法であって、当該テンプレートを熱安定性ポリメラーゼ、個々のヌクレオチド、及び当該テンプレート内の共通領域に対して相補的なフォワード及びリバース・プライマーを含む反応混合物と接触させることを含み、ここで、当該共通領域は、好ましくは長さ80〜150塩基対である、当該方法が提供される。ある態様において、当該両プライマーの両5’末端は、当該テンプレートの両反対鎖と、約10〜50塩基対離れて、さらに好ましくは0〜25塩基対離れてハイブリダイズする。本明細書に記載の通り、両プライマーが当該テンプレートとハイブリダイズさせられるとき、当該フォワード・プライマーの5’末端は、一般的には、当該リバース・プライマーの5’末端と近位し、当該リバース・プライマーの3’末端と遠位となるであろう。特に好ましい態様においては、当該共通領域は、染色体外核酸内の保存領域であって、例えば、複製起点である。当該反応混合物は、弱有機塩基及び弱有機酸を含む反応バッファーをさらに含み得る。
【0014】
本発明は、染色体外DNAのインビトロ増幅を実施するための改良された試薬もまた提供し、ここで当該試薬は、増幅及びそれに続くライゲーション反応を支持する溶液、及び増幅とライゲーションの混合反応を支持する溶液であって、すなわち、同時にポリメラーゼ及びリガーゼの酵素活性のために適切な環境を提供するものを含む。
【0015】
ある態様において、本発明に関する組成物は、高い発展的増幅と同様、高い忠実度を支持する、優れたバッファリング能力を有するバッファリング・システムを含む。ある態様において、エピソーム遺伝的要素を増幅するための組成物は、熱安定性ポリメラーゼ、弱有機塩基、弱有機酸、マグネシウム含有化合物、及び約3mM〜300mMの濃度を有する塩を含む。典型的に、当該組成物のpHは、当該弱有機塩基と当該弱有機酸との混合により、pH約7.9〜pH約8.9、及び好ましくはpH8.8〜8.9に変えられる。さらに他の態様においては、本発明のバッファリング・システムは、当該増幅反応間の促進されたMg2+濃度バッファリング能力を提供する。
【0016】
他の態様において、本発明は、対象方法に使用するためのフォワード及びリバース・プライマー対であって、ニ重鎖環状核酸テンプレートの両反対鎖において、約50塩基対内、より好ましくは約10塩基対内、さらにより好ましくは約0〜5塩基対内で、互いに近接近してハイブリダイズする5’末端を有する当該プライマー対を提供する。好ましい態様において、両プライマーがそれぞれのテンプレート鎖とハイブリダイズさせられるとき、当該フォワード・プライマーの5’末端は、当該リバース・プライマーの5’末端と近位にあり、当該環状テンプレートの円周周囲の当該リバース・プライマーの3’末端と遠位となる。特に好ましい態様において、フォワード及びリバース・プライマーは、それぞれ、当該テンプレートのセンス及びアンチセンス鎖上の隣接塩基対とハイブリダイズするように提供される。
【0017】
さらに他の態様において、ユニバーサル・プライマーが、エピソーム遺伝的要素の特定の群であって、当該所望の群の保存領域、例えば、細菌プラスミドの複製起点、の一部と相補的な配列を有するものを増幅する場合における使用のために提供される。当該対象組成物及び方法において使用のために企図される保存領域は、例えば、細菌の複製起点、酵母2μ起点、薬剤耐性遺伝子、及びプロモーター配列を含む。新規プライマーの位置及び向きの双方は、異なる染色体外核酸分子の多くの例示的プライマー対を提供する。
【0018】
他の態様において、染色体外DNA、例えばプラスミドDNAであって、低エンドトキシン・レベルを有するものの多重コピーを製造する方法が、提供される。当該対象方法は、着目のプラスミドをかくまう細胞コロニーの、1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらにより好ましくは1〜5個、最も好ましくは1〜3個のコロニーを採取すること、及び当該採取された細胞を、増幅及び場合によりライゲーション組成物と接触させることを含み、ここで当該組成物は、以下の:当該プラスミドの保存領域内の反対鎖に対して相補的な配列を有するフォワード及びリバース・プライマー;pH約7.9〜約8.9で弱有機酸及び弱有機塩基を有するバッファー;熱安定性ポリメラーゼ;場合により熱安定性リガーゼ;及び変性温度、アニーリング温度、伸長温度、及び場合によりライゲーション温度を通す複数サイクルとしての熱サイクル組成物を含み、ここで当該増幅したDNAの一部は、閉環状プラスミドDNAである。
【0019】
さらに他の態様において、1個のコロニーから閉環状プラスミドDNAの当該インビトロ増幅の方法が提供され、ここで当該プラスミドは複製起点を有する。当該方法は、採取された細胞からのプラスミドDNAを、以下の:
熱安定性ポリメラーゼ、個々のヌクレオチド及び当該プラスミドDNAの複製起点と相補的なフォワードとリバース・プライマーであって、ここで、当該フォワード・プライマーは、複製起点内の当該プラスミドのセンス鎖とハイブリダイズし、及び当該リバース・プライマーは、複製起点内の当該プラスミドのアンチセンス鎖とハイブリダイズする当該両プライマー;及び、
当該プラスミドDNAの新しい直鎖コピーの重合を促進するための熱サイクルの結果として生じる対象反応混合物、
を含む組成物と接触させることを含む。場合により、本明細書にさらに記載される通り、当該新しく形成された直鎖コピーは、増幅ステップと同時に又は続いて、括られ、閉環状プラスミドDNAとなり得る。
【0020】
本発明のこれらの及び様々な他の特徴及び優位は、以下の詳細な説明の見解及び添付の請求項の所見から理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の詳細な説明
定義
以下の定義は、本明細書においてよく使用される用語の理解を促進するために提供され、ここに開示する範囲を制限する意味はない。
【0022】
本明細書中に使用される、用語“アンチセンス”は、標的“センス”ポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド配列をいう。
【0023】
本明細書中に使用される、用語“ビシン”又は“N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン”は、一般式C6H13NO4を有する化合物をいい、当該化合物の誘導体及び塩を含む。ビシンは、Hampton Research,Aliso Viejo,CA,製品番号HR2−509から購入され得る。
【0024】
本明細書中に使用される、用語“染色体外核酸”は、組み込まれた及び組み込まれないエピソーム遺伝的要素をいい、例えば、あるDNAウイルスであり、天然プラスミド、プラスミド由来型クローニング及び発現ベクター、天然バクテリアファージ及びクローニング及び発現ファージ、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、2μDNA、2μ由来酵母シャトルベクター、ミトコンドリアDNA、コスミド、ファージミド、トランスポゾンなどと同様である。
【0025】
本明細書中に使用される、用語“核酸”又は“NA”は、デオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)の両方をいい、その改良された及び/又は機能化されたバージョンと同様である。同様に、本明細書中に使用される用語“ヌクレオチド”は、リボ核酸及びデオキシリボ核酸の個々の構成単位を、ヌクレオシド及びヌクレオチド類似物と同様に含み、そして、標識されたヌクレオチドの如き改良ヌクレオチドも含む。加えて、“ヌクレオチド”は、天然には生じない類似構造体を含み、例えば、糖、リン酸塩、及び/又は塩基ユニットが、欠如する又は他の化学構造体により置き換えられるものを含む。それ故、当該用語“ヌクレオチド”は、個々のペプチド核酸(PNA)(Nielsen et al.,Bioconjug.Chem.1994;5(1):3−7))の構成単位及びロックト核酸(LNA)(Braaasch and Corey,Chem.Biol.2001;8(1):1−7)の構成単位を、他の構成単位と同様、包含する。
【0026】
本明細書中に使用される、用語“ポリヌクレオチド”、“オリゴヌクレオチド”又は文法上それに等しい語は、共に共有結合する、少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。いわゆる当業者により理解されるであろう通り、糖−リン酸骨格の種々の修飾は、生理環境におけるそのような分子の安定性を増大するために行われ、化学的修飾であって、例えば、ホスホロチオエイト又はメチルホスホネイトを含む。さらに、そのような分子は、例えば標識の付加の促進を目的とする異なる固有性を有する1又は複数の分子、とのカップリングにより機能化される。
【0027】
本明細書中に使用される、用語“核酸配列”は、核酸の鎖に沿ったヌクレオチドの順序又は配列をいう。ある場合において、これらのヌクレオチドの順序は、対応するポリペプチド鎖に沿ってアミノ酸の順序を決定し得る。このように、当該ヌクレオチド配列は、アミノ酸配列をコードする。当該核酸配列は、規定のように、一本鎖又は二本鎖であり、又は二本鎖及び一本鎖配列の双方の一部を含み得る。当該核酸配列は、DNA、ゲノムDNA及びcDNAの両方、RNA、又はハイブリッドからなり、ここで当該配列は、デオキシリボ−及びリボ−核酸のいずれかの組み合わせ、及びウラシル(U)、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)、イノシン、キサタニン(Xathanine)、ヒポキサタニン(Hypoxathanine)、イソシトシン、イソグアニンなどを含む塩基のいずれかの組み合わせを含む。
【0028】
本明細書中に使用される、用語“環状核酸テンプレート”又は“環状テンプレート”は、環状核酸分子、及び好ましくは異種の染色体外環状核酸配列であって、例えば、ベクター及び発現カセットなどであって、典型的には、約2kb〜45kb、ある意味では2kb〜25kb、及び他の意味では2kb〜10kbの分子量を有するものをいう。好ましい態様において、本発明の環状核酸分子は、プラスミドを含み、ここで、当該プラスミドは、複製起点又はレプリケーター、選択マーカー、及びクローニング部位を含む。ある例において、当該環状核酸は、スーパーコイルである。当該環状核酸テンプレートは、大抵のエピソーム遺伝的要素、例えば、プラスミド、コスミド、PACs、BACs、YACs、ホスミド、及びその他の分子を含み得る。
【0029】
本明細書中に使用される、用語“相補的”又は“相補”は、塩基対ルールにより関連付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)に関して使用される。例えば、“A−G−T”配列は、“T−C−A”配列に対して相補的である。相補は、“部分的”となり得、核酸の塩基のいくつかのみが、塩基対ルールに従って、適合する。又は、核酸間の“完全”又は“全体”相補があり得る。本分野においてよく知られるように、核酸鎖間の相補の度合いは、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効果及び長さに大きな影響を有する。この事は、増幅反応において特に重要であり、核酸間の結合に依存する検出方法と同様である。
【0030】
本明細書中に使用される、用語“プライマー”は、オリゴヌクレオチドであって、精製された制限消化のような自然に生じるものであろうと、合成的に製造するものであろうと、核酸鎖に対して相補的なプライマー伸長生成物の合成が導かれる条件下(すなわち、核酸及びDNAポリメラーゼの如き誘発剤の存在下、及び好適な温度とpHの下)に置かれたとき、合成の開始点として作用することができるものをいう。当該プライマーは、増幅における最大効率のために、好ましくは一本鎖であるが、あるいは二本鎖にもなり得る。もし二本鎖の場合、当該プライマーは、伸長生成物の製造のために使用される前に、まず、その二本鎖を分離するための処理をされる。好ましくは、当該プライマーは、オリゴデオキシリボ核酸である。当該プライマーは、誘発剤の存在下、伸長生成物の合成を準備するために十分に長くなくてはならない。当該プライマーの的確な長さは、温度、プライマーの源、及びある方法の使用であって、本分野においてよく知られるようなものを含む、多くの因子に依存するであろう。
【0031】
プライマーは、当該テンプレートの特定の配列の鎖に対して相補的であるように選択される。プライマーは、プライマー伸長の発生のためのテンプレート鎖とハイブリダイズするために、十分に相補的でなければならない。プライマー配列は、当該テンプレートの正確な配列を反映する必要はない。例えば、本明細書中に記載の通り、非相補的ポリヌクレオチド断片は、当該鎖と実質相補的である残りのプライマー配列とともに、当該プライマーの5’末端に付随させられ得る。非相補的な塩基又はより長い配列は、当該プライマー内に分散させられ得る、ただし、当該プライマー配列は、当該テンプレート配列と特異的にハイブリダイズするために十分相補的であって、その結果、所定の温度で、当該プライマーの伸長生成物の合成のためのテンプレート・プライマー複合体を形成することを条件とする。ハイブリダイゼーションの条件は、Sambrook et al.,Eds.,“Molecular Cloning,A Laboratory Manual”第3版(Cold Spring Harbor Laboratory Press 2001)において記載される標準的なものであり、そして本明細書中においてより詳細に述べる。
【0032】
本明細書中に使用される、用語“発現”は、宿主細胞内において生ずる転写及び翻訳をいう。当該宿主細胞内のDNA分子の発現レベルは、当該細胞内に存在する対応するmRNA量又は当該宿主細胞により製造されるDNAにエンコードされる蛋白質量のどちらかに基づいて決定される。本発明の文中における用語“発現”のさらなる詳細は、Sambrook et al.,supraの概説により入手できる。
【0033】
本明細書中に使用される、用語“宿主細胞”又は“宿主細胞群”は、異種ポリヌクレオチド分子、例えばプラスミド・ベクターを発現する又は発現できる細胞をいう。本発明の宿主細胞は、生物工学的及び分子生物学的及び臨床的背景を含むいくつかの使用を有する、ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドを発現する。本発明における好適な宿主細胞の例は、細菌性細胞、酵母細胞、昆虫及び哺乳類細胞を非制限的に含む。そのような細胞の特異例は、様々な他の細菌性細胞起源と同様、E.Coli DH105α細胞を含み、例えば、当該E.Coli株:DH10b細胞、XL1Blue細胞、XL2Blue細胞、Top10細胞、HB101細胞、及びDH12S細胞、及びサッカロミセス、ピチア、クルベロミセス(Kluveromyces)を含む属からの酵母宿主細胞を含む。
【0034】
本明細書中に使用される、本発明の目的としての用語“単離された”及び“精製された”は、互換性があり、そしてポリヌクレオチド又はポリペプチド、例えば染色体外核酸であって、細胞残屑であって例えば高分子量DNA、RNA、及び他の蛋白質から分離されたものをいう。これは、DNAを含む細胞残屑から分離されるであろう、単離されたRNAサンプルを含むであろう。
【0035】
本明細書中に使用される、用語“PHRED”又は“PHREDスコア”は、DNA配列の質を測るために使用するソフトウェアプログラムをいう。当該ソフトウェアは、CodonCode Corporation,0.020425.cバージョンから購入される。本発明の目的のために、600のPHRED q20スコアは、精度>98.5%で約730塩基に対するものと等価である。
【0036】
本明細書中に使用される、用語“プラスミド”は、非染色体性の、細菌のある型において見出された核酸の環状鎖をいう。好ましくは、環状二本鎖核酸分子である。本発明において有用な例示的プラスミドは、pGEM、pTZ、pUC19、pUC18、pBS2、pEGFP、pBR322などを含む。
【0037】
本明細書中に使用される、用語“プライマー”は、一本鎖オリゴヌクレオチドであって、適切な条件下、すなわち、組成物、バッファー及び温度といった条件下、テンプレートの引き起こすNA合成の開始ポイントとして作用する。本発明に関するプライマーの長さは、以下により詳細に記載される。プライマーは、当該テンプレートの正確な配列を反映する必要はなく、例えば、複製起点の一部でよいが、しかし、テンプレートとハイブリダイズするために、十分に相補的でなければならない。フォアード・プライマーは、二本鎖テンプレートに沿って5’から3’方向にハイブリダイズするプライマーであり、リバース・プライマーは、第1鎖と比較して3’から5’方向に相補鎖とハイブリダイズするプライマーである。
【0038】
本明細書中に使用される、用語“選択マーカー”は、標的染色体外DNAを選択するために典型的に使用される、染色体外DNA上の遺伝子をいう。選択マーカーは、例えば、代謝拮抗物質抵抗性をコードする遺伝子であって、例えば、メトトレキサートに対する抵抗性を与えるDEFR蛋白質(Wigler et al.,1980,Proc Natl Acad Sci USA,77:3567;O’Hare et al.,1981,Proc Natl Acad Sci USA,78:1527)、ミコフェノ−ル酸に対する抵抗性を与えるGFP蛋白質(Mulligan&Berg,1981,PNAS USA,78:2072)、抗生物質抵抗性、すなわち、アミノグリコシドG−418に対する抵抗性を与えるネオマイシン耐性マーカー(Calberre−Garapin et al.,1981,J Mol Biol,150:1)である。
【0039】
本明細書中に使用される、用語“厳密さ”は、ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションが起こる下での、温度、イオン強度、溶媒などといった条件をいう。ハイブリダイゼーションは、当該増幅過程のアニーリング・ステップの間に、当該プライマーとテンプレートDNAの間で生ずる過程である。
【0040】
本明細書中に使用される、用語“ベクター”、“染色体外ベクター”又は“発現ベクター”は、環状ポリヌクレオチド分子であって、通常は二本鎖であって、挿入部位を有し又は標的異種ポリヌクレオチドを挿入されているものをいう。当該異種ポリヌクレオチド分子は、当該宿主細胞内において天然に発見される又はされないかもしれず、そして、例えば、当該宿主細胞内において天然に存在する異種ポリヌクレオチドの1又は複数の追加のコピーかもしれない。当該ベクターは、外来のポリヌクレオチド分子を好適な宿主細胞内に輸送するために適応させられる。一旦宿主細胞内に入ると、当該ベクターは、宿主染色体に組み入れられ得るかもしれない。当該ベクターは、場合により、導入されたDNAからのmRNAの転写促進するための要素と同様、当該組み入れられたポリヌクレオチド分子を含む選択細胞のための追加要素を含む。本発明の方法において有用なベクターの例は、プラスミド、バクテリオファージ、コスミド、レトロウイルス、及び人工染色体を非制限的に含む。
【0041】
本明細書中に使用される、用語“弱有機酸”は、ビシン、トリシン、TAPSO、CAPSO、EPPS、Hepes、CHES、Taurin、MOPS、AMPSOなどをいい、これらを非制限的に含む。
【0042】
本明細書中に使用される、用語“弱有機塩基”は、トリス、ビス−トリス、イミダゾール、及びビス−トリス−プロパンなどをいい、これらを非制限的に含む。一般に、弱有機塩基は、本発明の目的のために、pH8〜9を有する、とはいえ、8及び9超のわずかな変化は、本開示の範囲内に包含される。
【0043】
用語“近位”及び“遠位”は、相互に関連して本明細書中に使用される。AがBと近位であり、Cと遠位であるとして言及される場合、A〜Bの距離が、A〜Cの距離よりも少ないことをいう。
【0044】
本発明において提供される当該組成物及び方法は、核酸の増幅、及び環状核酸テンプレートであって、例えば特に染色体外核酸の増幅における有意な使用を見出す。本分野においてよく知られるように、増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応法に基づき、当該PCR法は、一般的に、1)高温での二本鎖核酸テンプレートの変性;2)より低い温度での当該テンプレート核酸へのプライマーのアニーリング;3)DNAポリメラーゼ、好ましくは熱安定性DNAポリメラーゼを使用するプライマーの伸長、を含む。例えば、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;及び同第4,965,188号を参照し、それらのそれぞれの内容を参考により本願明細書中に援用する。本明細書中に記載される通り、当該アニーリング期及び当該伸長期は、同じ又は異なる温度で起こるかもしれず、そして、好ましくは、同じ温度で達成される。本発明は、これらの方法を促進するプライマー及びバッファーであって、結果として、その後のシークエンシング、クローニング、及び検出試験における使用のための高い忠実度を有するアンプリコンを生ずる当該プライマー及びバッファーを提供する。
【0045】
プライマー選択
本発明のプライマーの設計及び選択は、全染色体外核酸、例えば、プラスミド及びコスミド、を増幅するためのプライマーを含む。本発明のプライマー対は、本分野においてよく知られるように、二本鎖テンプレートの両反対鎖にアニールするために設計される。しかしながら、各プライマーが標的挿入部分を囲うように設計され、及び各プライマーの3’末端が互いに近位である、慣習的PCRプライマー対とはちがい、本発明のプライマーは、フォワード(すなわちセンス)プライマーの5’末端が当該リバース(すなわちアンチセンス)プライマーの5’末端と近位し、及び当該リバース・プライマーの3’末端と遠位となるように、テンプレート標的の反対鎖においてアニールするために設計される。それ故、当該両プライマーの5’末端は、好ましくは、同一の150塩基対領域内でハイブリダイズし、より好ましくは、互いの約80〜100塩基対内で、さらにより好ましくは、25〜50塩基対内、及び最も好ましくは互いに近接近内であって、例えば25塩基対又はそれより少なくハイブリダイズする。
【0046】
ある態様において、各プライマーの5’末端は、すき間ゼロ又はすき間なし配置で出発するように、テンプレートの反対鎖上の隣接塩基対とハイブリダイズし、これを図1Aに示す。この特別の態様は、全エピソ−ム遺伝的要素の増幅に有用であり、ここで、当該エピソーム遺伝的要素は、天然において環状であり、すなわち、プラスミド、コスミド、BACsなどである。他の態様において、各プライマーの5’末端は、染色体外DNA要素の隣接鎖上で重複することができ、ここで、当該テンプレートの各鎖の追加配列が増幅されるようにする必要があり、これを図1Bに示す。他の態様において、図1Cに示すように、1又は両方のプライマーが、追加の配列を当該アンプリコンに導入するために当該5’末端の非相補的伸長を含む。他の態様において、すき間(ギャップ)は、当該エピソーム遺伝的要素の隣接鎖上の各プライマーの5’末端の間に導入され得、結果として、当該増幅生成物から各プライマーの5’末端間の配列を除去する。図1−2(1D)を参照のこと。このように、本発明が提供する組成物及び方法を使用して、増幅反応は、元々の染色体外核酸配列を維持するために実施され又は加えられ又は結果物としてのアンプリコンから標的配列を除去され得る。好ましい態様は、全染色体外核酸を増幅させることを構想する。
【0047】
すき間ゼロ配置を有するプライマー設計(図1A)は、当該テンプレートの増幅生成物の正確な配列が所望される場合に、一般的に好ましい、しかしながら、すき間配置は、増幅生成物内に標的配列が要求されないとき、すなわち、選択マーカー又は他の標的配列がもはや要求されないときに、使用され得る(図1−2(1D))。当該重複設計は、増幅される当該追加の配列が、当該標的テンプレートエピソーム遺伝的要素の末端又は両末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を導入するために当該制限エンドヌクレアーゼ部位を提供するときに、一般的に使用される(図1B)。
【0048】
さらに好ましい態様において、本発明は、ユニバーサル・プライマーを提供する。本明細書中において使用されるように、ユニバーサル・プライマーは、標的DNA内の高保存領域と相補的である標準化プライマーであり、例えば、環状テンプレート分子内に高保存領域を有する、閉環状核酸であって、例えば、プラスミドのための複製起点配列をいう。本発明のユニバーサル・プライマーは、当該エピソーム遺伝的要素が共通標的配列、例えば、共通複製起点配列を有している限り、プラスミド、コスミド、及び他の高分子量染色体外核酸分子の増幅に有用であることに留意すべきである。核酸分子の増幅のためのユニバーサル・プライマー標的の例証となる実例は、以下の:大多数のベクターの内に見られるプロモーター配列、大多数のベクターの内に見られる薬剤耐性遺伝子、例えば、アンピシリン遺伝子(Amp)、コスミド及びラムダファージ内に見られるコス部位、細菌の複製起点、及びミトコンドリアDNA内に見られるいくつかのミトコンドリア遺伝子の高保存領域を含む。表1は、本発明に関するユニバーサル・プライマー設計の実例となる部位を提供する。
【0049】
表1:ユニバーサル・プライマー設計のための標的ハイブリダイゼーション部位
【表1】
【0050】
以下の説明は、細菌の複製起点内の標的テンプレートのために設計された実例となるユニバーサル・プライマーに焦点を合わせる。本態様におけるユニバーサル・プライマーは、約10〜75連続塩基対、及び好ましくは約15〜約40連続塩基対、及び最も好ましくは約20〜30連続塩基対であって、着目のプラスミドの複製起点配列の一部と相補的である当該塩基対を有する、いずれかのプライマーを含む。
【0051】
これらの同一プライマーの長さは、他のユニバーサル・プライマー、すなわち非複製起点、の設計において、一般的に有用であることに留意すべきである。驚くべきことに、プラスミドの当該複製起点は、ユニバーサル・プライマー設計のための優れた標的である。例えば、約668塩基対ColE1複製起点は、一般に使用される全プラスミドの90%超で存在する。ユニバーサル・プライマーは、当該668bp領域(表2、配列番号:1)内のどこにでもハイブリダイズするように設計され得る。当該ColE1複製起点を有するプラスミドに加えて、他の重要なプラスドファミリー又はグループは、“ファージ型”プラスミド、例えば、ラムダ、p13.p10であって、保存された複製起点もまた有するものを含む。
【0052】
表2:ColE1複製起点(センス鎖)(配列番号:第1)
【表2】
【0053】
好ましくは、ある態様において、当該フォワード及びリバース・プライマーは、複製起点内の反対鎖上で、テール−トゥ−テール法(すなわち、5’末端と5’末端)において、ハイブリダイズするために設計される(複製起点の配列として上記表1を参照のこと。)。好ましい態様において、当該プライマー対は、隣接塩基対であって、すなわち、当該テンプレート・プラスミドDNAの、当該センス鎖とハイブリダイズするときのフォワード・プライマーの5’末端と、アンチセンス鎖とハイブリダイズするときのリバース・プライマーの5’末端との間に入る塩基対が0塩基対である当該隣接塩基対、とハイブリダイズするために設定される。他の態様において、当該2つのプライマー・テール(尾)は、当該dsDNAの向こう側で、プライマー由来の塩基対の内のいくつでも重複させることができる。重複構造は、以下に詳細に記載するように、本発明の増幅されたニ重鎖アンプリコン内に優れた制限エンドヌクレアーゼ標的を与え、あるいは、プライマー伸長は、制限部位又は他の有用な配列を当該結果物アンプリコン内に導入するために使用され得る。例えば、伸長されたプライマー・テールは、まれな制限酵素の制限部位を含みことができ、それ故、当該アンプリコン内に当該部位を組み入れることができる。
【0054】
さらに詳細に、最適のユニバーサル・プライマー対の設計は、高保存領域、例えば標的プラスミドの複製起点、内の、例えばColE1ベースのプラスミドの668塩基対複製起点内の、選択プライマー配列に基づく。プラスミドの典型的プライマー設計は、約20bp〜約150bpの二本鎖テンプレート領域内のテール−トゥ−テール設計(すなわち、隣接5’末端)を有する。当該プライマー対の各プライマーは、当該二本鎖プラスミド分子の反対鎖とアニールし、及び一般的に15〜40bpの長さである。より長いプライマー分子が、本発明の態様において使用され得るが、しかし、これらの分子は40超塩基のプライマー対の限界値であり、安定性及び特異性に関する最小限の又は有害な影響に因ることに留意すべきである。
【0055】
当該複製起点内のユニバーサル・プライマーを設計するための初期パラメーターは、例えば、当該複製起点内の唯一の保存領域を捜すことを一般的に含む。提案されるプライマーは、プライマー設計プログラム、例えばベクターNTI(InforMAX,Golden,CO)を使用して、適度なTm、パリンドローム配列、−ΔGなどについて分析される。二次構造は、補助的なプログラム、例えばVisual OMP(DNA Software,Ann Arbor,Michigan)を使用して共同分析される。次いで、適度なTm、より低い二次構造、多量体形成のより低い可能性などを有するプライマー設計は、標的プラスミドに関するさらなる試験により選択される。
【0056】
適切な設計を有するプライマー対は、相補的プラスミド鎖に付き、そして伸長する能力のために、実験的に使用される。プラスミドプライマー対は、本発明のバッファリング条件下(すなわち、より低い塩濃度、より低い全体的イオン強度、及び核酸の二本鎖領域を安定させるための試薬の含有)で、当該高保存領域内、例えば複製起点と、アニールするために設計される。さらに、プライマー対は、当該ポリメラーゼがアニールしたプライマーから増幅するのと同温度で、当該テンプレート配列上で安定してアニールするために設計され得る。これは、2ステップ増幅サイクルを許容し、3ステップ増幅サイクルとは対照的であり、そして、もはや異なるプライマー・アニーリング温度を要求されない。この事は、より一層の特異性にとって特に重要であり、その場合、本発明のプライマーは、より高温でアニールし、そしてその結果、より低温の非特異的結合をさける。さらに、2ステップ増幅サイクルは、かかる時間が相当に短く、そしてより少ない非特異的生成物形成の結果となる。
【0057】
他の態様において、フォワード及びリバース・プライマーは、共通領域内の反対鎖上のそれらの5’末端で重複するようにさらに設計され、そして特に、付着末端を生成するために、アンプリコン上に制限消化部位を作り出すように、適度な酵素活性の下、5’末端で十分重複するように設計される。例えば、4塩基対の重複するプライマーから増幅されるアンプリコンは、促進されるライゲーションのための4塩基対付着末端を有するであろう。実例となる例において、いくつかの制限酵素についての制限部位は、複製起点の668bp領域の間中に位置づけられる。ある例は、DrdI 10mer部位である。当該プラスミド対は、当該DrdI制限部位を表す10bpの重複を含むように設計されるであろう。この重複プライマー構造から増幅される生成物は、DrdIで処理され、当該二本鎖アンプリコンの3’及び5’末端に相反しない突出部を作るであろう(特定の酵素が、当該アンプリコンの末端で切ることができると仮定すれば。)。ある態様において、当該プライマー対は、認識配列としての2又は3の非特異的な余剰5’塩基を有するために、重複するように設計される。
【0058】
一般的に、本発明のプライマーは、当該環状核酸テンプレート上の隣接標的配列と相補的となるように設計され、それは、ハイブリダイゼーションが、当該サイクル反応のアニーリング・ステップの間に起こり得るためである。このように、相補性は、完全である必要ではない;プライマー配列とその対応する標的配列とのハイブリダイゼーションに干渉するであろう、いくつかの塩基の不一致が、あるかもしれない。しかしながら、もし非相補性の程度が激しく、プライマーとその標的とのハイブリダイゼーションが最も低い厳密条件下でさえ起こり得ないならば、当該プライマー配列は、当該標的配列と相補的でないとみなされる。このように、本明細書における“実質的相補性”は、プライマー配列が、当該選択される反応条件下、特異的にハイブリダイズするために、その標的配列の対応領域に対して十分に相補的である状態を記載することを意図している。
【0059】
以下の記載は、複製起点プライマー対の適した設計のために必要なパラメーターのいくつかを説明する。ハイブリダイゼーションは、一本鎖の核酸鎖にアニールするプライマー能力に一般的に依存し、ここで当該一本鎖の核酸鎖は、当該ハイブリダイズした付加化合物の融解温度付近の環境において、実質的に相補的な配列を有する。他の要因が一定に保たれると仮定して、DNA配列(プライマー及びテンプレート)の対同士間の相補性のより高い度合い、ハイブリダイゼーションのための潜在性を維持する間に使用され得るより高い相対温度に、一般的に留意すべきである。
【0060】
一般的に、プライマーの長さ及びGC含量は、ハイブリダイゼーション複合体の融点温度(Tm)を決定し、そしてそれ故、プライマー及びテンプレートの特異的ハイブリダイゼーションを得るために必要なハイブリダイゼーション条件を明らかにすることに貢献する。これらの要因は、本分野におけるいわゆる当業者においてよく知られており、そして実験的に試験され得る。当該Tmは、(定義されるイオン強度及びpH下において)、ハイブリダイゼーション複合体の50%がプライマーとテンプレートとの間に存在する温度である。核酸のハイブリダイゼーションは、いわゆる当業者によく知られており、広範囲の説明は、Sambrook et al.,supra内に見出される。厳密条件は、定義されるイオン強度及びpHで、特異的配列のためのTmで又はTm超で、一般的に定義される。典型的に、G−C塩基対は、適度な含有量で維持されるべきである。例えば、おおよそ50%のG+C含量を伴う20塩基対プライマーは、約56℃〜62℃のTm値を有する。Tmについてのさらに洗練されたモデルが有用であり、そしてそれらの利用は、もしG−C組み合わせ相互作用、隣接ヌクレオチド、溶媒効果などを考慮する必要がある際に、より適するかもしれない。
【0061】
一般的に、標的テンプレート分子とのユニバーサル・プライマーの特異性は、プライマーの長さ及び増幅反応のアニーリング温度により制御される。当該環状核酸に結合するプライマーは、一般的に、天然に生ずるヌクレオチドからなるだろうが、しかし、ある場合において1又は複数のヌクレオチドを含み得、ここで、当該ヌクレオチドは、天然にはない特徴、例えば、改良された糖ユニット又は糖ユニットの欠如;リン酸塩の1又は複数の酸素原子が硫黄、炭素、及び/又は窒素原子などで置換される、改良された糖−リン酸塩鎖;改良された塩基又は塩基ユニットの欠如;又は、合成的な有利性、当該試験条件下の安定性、酵素分解に対する耐性などを提供し得る他の改良などを有する。ある態様において、Tm値に重大な影響を与えない改良されたヌクレオチドは、当該プライマーに含まれる。他の態様において、改良されたヌクレオチドは、対応する特異性の維持を伴うより短いプライマーの長さの設計を考慮すれば、Tmに影響を及ぼす。
【0062】
本発明のユニバーサル・プライマー・ポリヌクレオチド分子は、酵素分解に耐性を有する化学的に改良された塩基もまた含み得る。例えば、本発明のユニバーサル・プライマーは、エンドヌクレアーゼ活性経由の分解耐性のための改良を組み入れるよう設計され得る。ある態様において、ユニバーサル・プライマーは、ポリメラーゼの校正活性による分解に耐性を有するように改良され得、その結果、当該ユニバーサル・プライマーが、当該ポリメラーゼ酵素と同じ溶液内に保持されることを可能とし、すなわち、当該ユニバーサル・プライマーは、多くの校正DNAポリメラーゼに関する3’−5’エキソヌクレアーゼ校正活性による分解に耐性を有するように改良され得る(Vent,Pfu,Klenow fragment and T7DNA polymerase)。
【0063】
プライマー改良の実例となる例は、以下の:1又は複数の化学的に改良された塩基、例えば、n−1位置でLNAを有するように設計されたプライマーを組み入れることを含む(Examples and Di Giusto et al.,(2004)Nucletic Acid Research,32(3):e32を参照のこと。)。追加の実例となる改良を表3に示す。表3に示される態様の内のいくつかにおいて、当該プライマーは、校正ヌクレアーゼ活性、当該プライマーを非伸長可能にさせること、を阻害するように可逆的に改良される。本発明のユニバーサル・プライマーが適切な逆転技術を経由して本発明のインビトロ増幅反応における使用のために準備される際、当該改良は除去される(表3を参照のこと。)。
【0064】
表3:校正活性存在下における、安定性増大のためのプライマー改良
【表3】
【0065】
プライマーの結合において使用される溶液は、さらに詳細に論じられるであろう、しかしながら、溶液は、当該染色体外DNAに対する当該プライマー、例えばプラスミドDNAの複製起点に対するプライマー、のアニーリングのために本発明において提供される。
【0066】
上記で論じたパラメーターを使用する、標的プラスミド・ファミリーの複製起点内のプライマー設計は、適度な長さのオリゴヌクレオチドになる。これらのオリゴヌクレオチド組成物は、化学的に改良された核酸の使用を通じ又は非改良核酸分子の使用を単純に通じ得る。どちらの場合においても、本発明において製造されたオリゴヌクレオチドは、当該標的複製起点を有するプラスミドと共に、使用のために保存され得る。このように、当該プライマー対は、同じ複製起点を共有するプラスミドの標的クラスに対して普遍的である。この同様の独創的な論理的根拠は、多数のテンプレート標的に対する他のユニバーサル・プライマー対の設計のために使用され得る。
【0067】
上記議論のように、自然には普遍的ではないけれども、プライマーは、複製起点を有しない標的テンプレート分子に対しての使用のために設計され得ることも想像し得る。これらのプライマーは、本分野において知られるような標的テンプレートの主要な標的領域に対して設計され得るであろう。設計についての、同様の一般的パラメーターは、上記議論の通り適用されるであろう。
【0068】
ポリメラーゼ反応バッファー
本発明の態様は、培養細胞中の閉環状核酸分子、すなわちプラスミドDNA、コスミドDNAなどの増幅を含む、例えばエピソーム遺伝的要素といった、インビトロ増幅を補助する組成物を含む。好ましい態様において、当該核酸分子は、典型的に約1kb〜40kb、さらに典型的に約2kb〜25kbであり、そして約2kb〜20kbであり得る。本発明において使用される増幅反応バッファーは、慣習的な長距離PCR反応バッファーと比較して、より低いイオン強度を一般的に有し、pH8.0〜9.0、及び好ましくはpH8.8〜8.9の範囲を典型的に有する。加えて、本発明の組成物は、典型的に、共溶媒の低濃度を唯一要求する、すなわち、長距離PCRにおいて慣習的に使用されるよりも相当低い共溶媒の濃度であって、例えば、DMSOのより低い濃度であり、当該反応バッファーの低イオン強度に因る。当該低共溶媒の要求は、相性の良い酵素の安定性(当該バッファーの低イオン強度に因る。)を許容するが、しかし、負の共溶媒問題、例えば当該溶媒の存在下におけるより低い酵素忠実度を避ける。さらに、本発明の組成物は、Mg2+バッファリング特性を、Mg2+イオン濃度の広範囲において最適のポリメラーゼ活性を考慮しつつ、一般的に提供する。
【0069】
本発明の態様は、10〜150μM弱有機塩基、10〜50μM弱有機酸、1〜4mM酢酸マグネシウム、2〜20mM(NH)2SO4、50〜200μM dNTPs、及び0.1〜5ユニット又はそれ以上の好熱性ポリメラーゼを含む溶液をも提供する。好ましい態様は、1又は複数のポリメラーゼ・エンハンサーであって、例えば、トレハロース、ソルビトール、DMSO又はソルビトール、トレハロース及び/又はDMSOの混合物を、特にもし当該増幅標的がGC豊富であるなら、含む。DMSO及びその他の似たような溶媒は、全て含む際、最小濃度、典型的には1%未満(慣習的バッファーは、約5%共溶媒を含む。)で保持されることに留意すべきである。上記に簡単に議論されるように、pH8.9〜9.0のバッファーに対する弱有機酸及び弱有機塩基の使用は、当該溶液イオン強度を増大する傾向を排除し、そして共溶媒のより高い濃度の必要性を排除し、その結果、当該ポリメラーゼの忠実度を最大化することにも留意すべきである。加えて、特に弱有機酸の利用は、大抵の増幅反応のための1.5〜8mMの範囲の好ましいMg++濃度内のバッファリングMg++濃度で、非常に効果的であることが判明し得る。特に、本明細書中で議論される当該濃度範囲内のビシンの使用は、バッファリングMg++濃度(ビシンは、Mg++キレート剤である。)で、優れていると判明する。
【0070】
本発明の好ましいバッファー態様は、pH約8〜9、好ましくは約8.80〜8.90、及び最も好ましくは約8.85を提供する量で混合される、弱有機塩基及び弱有機酸の混合物を典型的に含む。
【0071】
本発明の他の好ましい態様において、当該バッファーは、30mMビシン、200mMトリス、4〜10mM(最適なのは、6mM)硫酸アンモニウム、2.5mMマグネシウムイオン、pH8.85〜8.90の組み合わせを含む。
【0072】
ある態様において、本発明における温度サイクル条件は、3ステップのサイクル過程、変性期、アニーリング期、及び伸長期を含む。当該温度サイクル条件は、それぞれの増幅反応のスタート時に、最初の変性ステップ又は酵素活性化ステップを含み得る、例えば、ホット・スタートPCRである(米国特許第6,667,165号、その内容全てを本願明細書中に援用する。)。サイクル条件の温度範囲は、テンプレート核酸の長さ、テンプレートのGC含量、プライマーの長さと配列、及び共溶媒に依存する。ある態様において、当該最初の変性条件は約5分間、その後約90〜95℃で10秒間〜1分間の変性ステップ、その後約45〜70℃で20秒間のアニーリング・ステップ、その後約65〜75℃で1分間〜10分間の十分に続く伸長ステップである。当該サイクルは、20〜40回繰り返され得る。
【0073】
本発明の態様は、2ステップ温度サイクル過程を含む。当該過程は、約90〜95℃で10秒間〜1分間続く変性ステップ、その後約60〜72℃で約1〜10分間続くアニーリング及び伸長ステップである。最初の変性ステップは、上記のように(約5分間)含まれ得る。本態様での使用のためのプライマーは、同等の温度で、アニールし及び伸長するように設計される。当該ステップは、20〜40回繰り返され得る。
【0074】
加えて、温度サイクルは、宿主細胞から直接のプラスミドDNA(他のエピソーム遺伝的要素と同様)インビトロ増幅に対して、非常に効果的/効率的である。表4は、標的染色体外DNA、例えばエピソーム遺伝的要素、すなわち、pUC19プラスミドの、インビトロ増幅バッファーの態様の成分の典型的な組み合わせを示す。
【0075】
表4:増幅反応バッファー
【表4】
【0076】
本発明の態様は、精製されたDNAから、グリセロール・ストックから、及びコロニー採取細胞から直接の、染色体外DNA、すなわちプラスミドの増幅を支持する。ある態様において、当該コロニー採取細胞は、少量の水(5〜15μl)中に再懸濁され、又は本発明のPCRバッファー・ミックスに直接加えられる。
【0077】
表4に示される通り、多くの好熱性ポリメラーゼ酵素が、標的核酸を増幅するために使用され得る。増幅バッファーの低イオン強度及び共溶媒の最小値は、慣習的に効果の無い長距離PCR好熱性ポリメラーゼ酵素の使用を許容する。このように、大抵の好熱性ポリメラーゼI酵素は、本発明の態様において使用され得、Taq、Tth、Pfu、及びTmaを含む。好熱性ポリメラーゼIII酵素システムは、テンプレートDNAを増幅するためにも使用され得、例えば、米国特許第6,238,905号、又は同第6,555,349号に記載される酵素サブユニットを使用して実施され、そして当該米国特許の双方の内容全てを本願明細書中に援用する。本発明における使用のための、ある好熱性ポリメラーゼは、Eppendorf Triple Master Enzymeの商標名の下販売される。
【0078】
本発明の態様は、増幅された核酸分子を、閉環状核酸分子生成物の中に操作する方法を提供する。当該増幅反応が完結し、適切な量の生成物が製造された後、ライゲーション反応は、閉環状DNAの中に、一定割合の当該製造物を環状にするために実施され得る。
【0079】
ある態様において、本発明の方法を使用して増幅される分子は、当該生成物の各末端で組み込まれる相補的な“付着”末端を出すために処理され得る。増幅された核酸分子への付着末端の付加は、いくつかの知られた技術の内いずれか1つ、すなわち、制限酵素での消化又は各末端での対応するオリゴヌクレオチドを接合するライゲーションを経由して達成され得る。次いで、付着末端を有する当該増幅生成物は、標準的リガーゼ反応条件を使用する標準的ライゲーション反応を経由して、環状にさせられる。当該リガーゼは、非好熱性又は好熱性となり得る。多くの塩基が、当該“付着末端”を形成するために、本態様におけるプラスミドに付加されることに留意すべきである。典型的に、高分子量テンプレートは、プラスミド、コスミド、BAC又はYAC、好ましくはプラスミドの配列の一部又は全部を含み、それは、当該増幅/ライゲーション反応が、標準的、インビボ由来の製造及び精製手順を置き換えるためである。
【0080】
他の態様において、唯一の制限酵素部位が、標的プラスミド内に位置する。当該制限部位は、好ましくは当該標的プラスミドの配列内にたった1つ存在し、そして、プライマーは、当該制限酵素認識部位を重複するように設計される。次いで、製造されたアンプリコンは、適切な制限酵素で処理され、当該設計した制限部位内に付着末端を製造する。当該アンプリコン付着末端は、環状生成物を製造するために続いて起こるライゲーションを可能とする。
【0081】
本明細書中に説明される反応は、本分野におけるいわゆる当業者により十分に理解されるのと同様に、様々な方法において遂行され得る。当該反応の構成は、同時に、又は連続して、任意の順序で、追加され得る。加えて、当該反応は、様々な他の試薬であって、追加のバッファー、無害の蛋白質(例えば、アルブミン)、洗浄剤などを含み、最適なプライマーのアニーリング及び増幅を促進するため、及び/又は非特異的相互作用を低減するために使用され得る当該試薬を含む。試験のその特異性又有効性は別のやり方で改良された試薬、例えば、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などもまた使用され得、サンプル製造方法、及び当該標的の精製に依存する。
【0082】
ある反応ミックスにおける重合(ポリメリゼーション)及びライゲーション酵素
他の態様において、ポリメラーゼ及びリガーゼ酵素は、同一の反応バッファー内に含まれ、そして核酸は、当該同一の反応バッファー内で、増幅されライゲートされる。最適な1ステップの重合(ポリメリゼーション)/ライゲーションのための典型的な反応のpHは、約7〜9であり、好ましくは約8〜9であり、最も好ましくは約8.3〜8.6である。表5は、増幅及びライゲーション反応が実質的に同時に行われる態様の成分の典型的な組み合わせを示す。
【0083】
表5:組み合わされた増幅及びライゲーション反応バッファー
【表5】
【0084】
当該増幅及びライゲーション反応において使用するためのポリメラーゼは、上記の通りであり、及び、慣習的長距離PCRにおいて有用な、大抵のポリメラーゼの組み合わせ、例えば、ポリメラーゼI及び校正酵素を含む。polIIIからの、好ましくは好熱種からのpolIIIからの、ポリメラーゼ酵素は、本発明の方法において使用され得ることにも留意すべきである。本発明の使用のための特異的ポリメラーゼ酵素は、サーマス・サーモフィルス、サーマス・アクアチクス、及びサーモトーガ・マリティーナからのポリメラ−ゼIを含む(使用のための特定の生成物は、Eppendorf Triple Master enzyme、ABI RT−PCRキット酵素、及びRoche Expand enzymeキットを含む。)。本発明において有用なリガーゼ酵素は、好熱性リガーゼ酵素、例えば、Tscリガーゼ(Prokaria、製品番号第 Dllg 119)を含む。最終的に、上記留意の通り、各ユニバーサル・プライマーの約0.4μMを、当該核酸がプラスミド又は他の化合物である際に選択される当該テンプレートとの反応において、含む。場合により、約1mMのDTT又は他の剤が還元剤として添加される。上記のように、重合(ポリメリゼーション)のエンハンサーは、先の態様において記載した通り、似たような濃度において、当該反応物に添加されもする。
【0085】
温度サイクル・パラメーターは、典型的には、上記のようなパラメーターである。ある態様において、ライゲーション・ステップ、インキュベーション時間、及び温度が含まれ得る。ある好ましい温度サイクル態様において、当該サイクル・パラメーターは、最初の変性ステップ(93℃で2分間)、その後94℃まで加熱して94℃で20秒間を20サイクルの加熱ステップ、その後、68℃で3分30秒間の最終サイクルを含む。上記複数のサイクルは、典型的に20〜30サイクルであり、好ましくは25〜30サイクルである。
【0086】
反応効率は、ポリメラーゼ/リガーゼ反応によって変わるが、しかし、当該アンプリコンの少なくとも約5%又はそれ以上は、反応の間、ライゲートされ、共有結合した、環状DNA生成物に転換され得る。
【0087】
本発明の方法及び組成物を組込む試験
本発明の態様は、当該プライマー、増幅反応バッファー、及び直接的インビトロ増幅及びライゲーション反応を組み込む試験を提供する。本発明の方法についての標的テンプレートDNAは、染色体外DNA、細菌のコロニー、突っついたDNA、及びグリセロール・ストック内に保存された細菌のコロニーを含む。
【0088】
本発明のある態様において、標的宿主細胞から直接的な、プラスミドのインビトロ増幅が提供される。この過程は、宿主細胞内のプラスミドDNAを複製するための必要性、すなわち、ミニプレップ、マキシプレップなどと置き換えることができる。当該方法は、着目のプラスミドDNAを含む標的コロニー細胞を突っつくことを含む。当該細胞は、水中(又は同等の水媒体)に再懸濁されるか又は反応ミックスに直接提供されるかのどちらかである。本発明の増幅反応は、上記の通りである。アンプリコンは、当該ポリメラーゼ反応バッファーを使用する記載通りの続く反応において、又は組み合わせた増幅/ライゲーション反応バッファー(双方とも上記の通り)を使用する同一の反応内において、のどちらかで、環状にさせられ得る。本発明の方法及び組成物を使用して形成されるような環状生成物は、多くの周知の手順の内のいずれか1つ(例えば、Maniatisを参照のこと。)を使用して単離され得る。このように、プラスミドDNAの高い忠実度の増幅は達成され、それ故、プラスミドDNAのインビボ製造及び精製の必要性を緩和する。
【0089】
他の試験において、本発明の方法及び組成物は、特異的な染色体外DNA分子を同定するために使用され得る。重要なことには、本発明の組成物及び方法は、標的組織において見出される唯一のプラスミド配列についての増幅及びその結果としての試験のために使用され得、例えば、特異的細胞型においてのみ見出される配列を同定するための本発明の組成物及び方法の使用である。特に、標的細胞は、収集され、そして、熱処理(要求される場合)でひびを入れられ、そしていずれかにある染色体外DNAが本発明のプライマー及び組成物を使用して増幅される。増殖された染色体外DNAは、正確に等しい大きさとなり、特異的マーカーに関連する証拠となる遺伝子パターンに対して配列され又は試験される。同定方法は、スクリーニング過程を効率化でき、そして、時間及び特別な装置を要する“未知の”有機体を成長させる必要性を除去するであろう。
【0090】
本発明の他の態様において、同一の方法及び組成物は、大きな標的配列、すなわち10〜20kbの配列を、腫瘍細胞の生体検査の間に除去された細胞内で、同定するために使用され得、例えば、プライマーが、p53遺伝子の3’及び5’末端内で使用され、特異的“ホットスポット(突然変異多発領域)”の代わりにp53遺伝子の完全配列を増幅し、そして患者の全遺伝子のマップを提供するために当該遺伝子の配列決定をする。標的がん遺伝子及び腫瘍サプレッサー遺伝子は、腫瘍診断に使われるであろう。これらの態様は、ユニバーサル・プライマーの使用には依存しないが、むしろ、本発明の独創的なバッファーの高い忠実度に依存する。当該分析から得られるデータは、次いで、何故ある一定の細胞が制御を失い成長を続けるのか、について追加情報を提供するためと同様、患者の生存性の預言者として使用されるであろう。あるいは、一連の長距離、高忠実度PCRは、がんと診断されたことのない患者が、既知のがん遺伝子及び腫瘍サプレッサー遺伝子内に暗示的変異を有するのかどうか決定するために“健康な細胞”上で実施され得る。再度、この情報は、臨床設定という状況で有用となるであろう。この長距離高忠実度PCRの型は、ウイルス因子、細菌因子、マイコプラズマなどの同定に対する多くの臨床設定という状況で使用され得る。
【0091】
他の態様において、長距離PCR法及び本発明の組成物は、親由来の染色体領域内の特異的な一連の多型部位としての個人のハプロタイプを、本発明のPCRプライマーを再設計することにより測定するために使用され得る。(先の態様のように、当該独創的な特徴は、ユニバーサル・プライマー対又は染色体外DNA要素を要求しないことに留意すべきである。)もしハプロタイプであることを是正するための価値ある情報を提供するならば、本発明のPCR態様の促進される発展性及び忠実度を使用して、質の高い、高分子量の、多型部位アンプリコンの生産が得られ、そして、確実に配列決定され得る。ハプロタイプの利用は、ゲノム治療が発見され、そして臨床試験において試験されるにつれて、医学的な診断及び予後において有用となり得るであろう。
【0092】
他の態様において、本発明の方法及び組成物は、シークエンシングのための標的染色体外DNAの十分量を製造するために使用される。例えば、本発明の方法及び組成物を使用して製造されたアンプリコンは、大きな、挿入物含有のプラスミド・ベクターに関する標準的シークエンシング・プロトコールを使用して、直接的に配列決定され得る(実施例4を参照のこと。)。さらに、中間段階のゲル分析は、シークエンシングに先立ってプラスミドの存在を測定するために、アンプリコンに関して実行され得る。これらの態様は、能率化し、そして当該過程に対してより高い質を提供する。
【0093】
他の態様において、本発明の方法及び組成物は、DNAクローニングの利用を促進するために使用される。例えば、本発明のインビトロ増幅されたプラスミドは、組換えDNA手段を実行するために使用され得、そしてそれは、培養すること、細菌細胞から染色体外DNAを選択し、及び/又は精製すること無しで行われる。
【0094】
増幅及びライゲーションキット
本発明の態様は、上記核酸増幅方法の実行のためのキットを提供する。キットは、線状にした染色体外DNAの生成を導き、又は同時に起こる増幅及びライゲーションで環状染色体外DNA生成物を産生することを導き得る。
【0095】
本発明のある態様において、当該キットは、本発明の実施に必要な、1又は複数のチューブ、バッファリング組成物、増幅反応物質及び、場合により、リガーゼ反応ミックスを含む。当該キットの好ましい態様は、本発明のユニバーサル・プライマー対であって、分離チューブ中に含まれるものか、適切な上記反応ミックスと一体化するもののどちらかをさらに含む。当該プライマー対は、着目の染色体外DNA標的の特定型であって、例えば、ColE1複製起点を基本とするプラスミド、2μを基本とする複製起点、及びp10様複製起点として指定されるキット中で販売され得る。同様の手配が、酵母を基本とする、BACを基本とする又はそのようなシステムに適用され得る。本発明のキットは、場合により、当該増幅された生成物に対する付着末端の結合を必要とするオリゴヌクレオチドを、分子等級純水、収集チューブ、アガロース又は他の検出用材料、96及び他のマルチ−ウェル・プレート、ピペットチューブ、PCRサイクラー、微少遠心機、保護手袋、保護眼鏡などと同様、含む。
【0096】
あるいは、キットは、本発明の混合された増幅及びライゲーション溶液、すなわち、同一のチューブ内の当該溶液を含み得る。例えば、当該キットは、当該反応バッファーが本発明の増幅及びライゲーション反応バッファーと一致する反応バッファーとなり得る場合を除く上記成分の全てを含み得る。
【0097】
ある態様において、当該キットは、当該アンプリコンが、閉環状核酸か直鎖状核酸かどうか決定するための反応生成物のサンプルを試験する場合に使用するための制限エンドヌクレアーゼ酵素をも含む。当該キットは、エンドヌクレアーゼ酵素及び部位が各キット内で対応する場合に一体化したエンドヌクレアーゼ制限部位を有するユニバーサル・プライマーを含む態様のための、制限エンドヌクレアーゼ酵素も含み得る。
【0098】
最大の安定性のために、当該キットは、適した凍結乾燥された成分を含み得る。
【0099】
本発明を一般的に記載することについて、同様のことが、以下の実施例について参照することにより、より簡単に理解されるだろう、ここで、以下の実施例は、実例として提供し限定して意図されることは無い。
【実施例】
【0100】
実施例1:プラスミドDNAの増幅のためのユニバーサル・プライマーの同定
多くの一般に使用されるプラスミド、例えば、pGEM、pUC18、pUC19、pBR322などに対する配列アラインメント及び比較を、NCBIデータベースにおけるBLASTアラインメント・プログラムを用いて実施した。配列アラインメント・データの試験により、試験されたプラスミド配列の大半の一致位置領域が明らかとなり、当該領域は約668塩基対の長さであった。既知の配列と比較した配列一致の測定を実施し、当該配列がColE1複製起点の配列と全体的に一致することを示した(表2を参照のこと。)。さらなる調査において、この一致領域を含むプラスミドが、実際、E.Coli天然プラスミド、ColE1由来のプラスミドであることを決定した。表6にColE1複製起点を含むプラスミドの部分的な表を提供する。
【0101】
表6:ColE1複製起点含有プラスミド
【表6】
【0102】
本発明に関する、ユニバーサル・プライマーを、この高い一致領域内の部位とハイブリダイズするために設計した。最初に、プライマーを、複製起点内の塩基の配列とハイブリダイズするように設計した(表2を参照のこと。)。本発明の温度及びイオン強度条件を考慮したプライマー設計は、長距離コロニーPCRにおいて有用であることが示された。フォワード及びリバース・プライマーを、増幅反応間で全プラスミド配列が増幅されることが確実とするためにテール−トゥ−テール(各プライマーの5’末端が、反対鎖の塩基上に隣接するように位置し、そして反対方向を向く)でハイブリダイズするように設計した。
【0103】
インビトロ増幅反応のためのユニバーサル・プライマーの設計が、各標的プラスミドに対して各プライマー対を設計するためにかかる時間及びコストを低減し、及び当該プラスミドの全配列が増幅されることを確実にしたことを理由として、さらなる検討を実施してプライマー対を最適化した。ユニバーサル・プライマーを、その長さ及び当該複製起点内のハイブリダイゼーションの位置について改良した。表7に、本発明における使用のためのいくつかのプライマー対設計を示す(同一の原理は他のプラスミド・ファミリーについても該当し、例えば、ファージ、例えば、ラムダ、p13、p10など(表1を参照のこと。)に由来する、プラスミドのための複製起点配列の使用に留意すべきである。)。
【0104】
表7:本発明における使用のための実例となるプライマー対
【表7】
【0105】
標的プラスミドを増幅する能力について可能なユニバーサル・プライマーを特定し、そして試験するために、実験を計画した。上記特定されたプライマー領域を使用して、可能なプライマー対を、20、22、25又は30bpsの長さを有するよう設計し、Vector NTI及びVisual OMPプログラムの組み合わせを通じて分析に供した。プライマー対を、5’末端の隣接鎖上の(反対方向における)5’末端に対する位置が、その間に塩基を有さない又は各プライマー配列を重複するように、設計した。増幅反応を、2ステップサイクル反応(95℃及び68℃)における各プライマー対の0.3μMを使用して、本明細書に記載する独創的な長距離PCRバッファー条件、特に、30mMのビシン・トリス、6mMの(NH4)SO4、200μMのdNTPs、2.5mMのMg2+、エンハンサー(DMSO、ソルビトール、及びトレハロースの組み合わせ)、及び2.5ユニットのTriplemaster酵素をpH8.9で利用して、実施した。
【0106】
20mer(s)(配列番号:2)
5’−ctgaagccagttaccttcgg−3’
【0107】
20mer(as)(配列番号:3)
5’−cagagcgcagataccaaat−3’
【0108】
22mer(s)(配列番号:4)
5’−ctgaagccagttaccttcggaa−3’
【0109】
22mer(as)(配列番号:5)
5’−cagagcgcagataccaaatact−3’
【0110】
25mer(s)(配列番号:6)
5’−ctgaagccagttaccttcggaaaaa−3’
【0111】
25mer(as)(配列番号:7)
5’−cagagcgcagataccaaatactgtc−3’
【0112】
30mer(s)(配列番号:8)
5’−ctgaagccagttaccttcggaaaaagagtt−3’
【0113】
30mer(as)(配列番号:9)
5’−cagagcgcagataccaaatactgtccttct−3’
【0114】
図2に示すように、プライマーを設計した複製起点は、6つの実例となるプラスミドの全配列を増幅するための優れたプライマー部位を提供し、当該6つのプラスミドは、pEGFP(レーン1)、pEGFP(レーン2)、pSP64+DHFR(レーン4)、pBSK+MT4(レーン5)、pTZ18(レーン6)、及びpTZ18+IL2(レーン8)である。これは、特に、十分な増幅生成物を示す、試験したプライマー全ての全長に該当する。この実施例は、本発明の態様に関する“ユニバーサル・プライマー”の有用性を示す。
【0115】
実施例2:プラスミドDNAは、一晩の培養から直接的に増幅され得る。
いくつかの染色体外DNA要素の内の1つを含む細胞のコロニーを突っつき、水中に再懸濁し、そして直接、本発明の増幅反応バッファー及びユニバーサル・プライマーに添加した。染色体外DNA:pEGFP(レーン1及び2)、pSP64+DHFR(レーン4)、pBSK+MT4(レーン5)、pTZ18(レーン6)、及びpTZ18+IL2(レーン8)を、本分野においてよく知られるように、化学的反応性のあるE.Coli細胞の中に形質転換し、そしてアンピシリンを含むアガープレート上にストリーキングした。コロニー・ピック細胞を、以下のいずれか、増幅バッファーに直接的に添加、水5μl中に再懸濁し当該増幅反応に2.5μl添加、水10μl中に再懸濁し当該増幅反応に2.5μl添加、水15μl中に再懸濁し当該増幅反応に2.5μl添加又は、水10μl中に再懸濁を行い、95℃で5分間加熱し、そして当該増幅反応に2.5μl添加した。
【0116】
増幅反応を、30mMのビシン・トリス、6mMの(NH4)SO4、200μMのdNTPs、2.5mMのMg2+、エンハンサー(DMSO、ソルビトール、及びトレハロースの組み合わせ)、2.5ユニットのTriplemaster酵素をpH8.9で有する25μl中で実施した。増幅サイクル条件は:(1)93℃で2分間、(2)94℃で20秒間(3)68℃で3分間、及び(4)1分30秒であり、24サイクル繰り返した。
【0117】
図3に示すように、再懸濁した突っついたコロニーDNAは、本発明の増幅反応バッファー、プライマー、及び条件のための優れたテンプレートを提供した。5μl中の再懸濁されたコロニーは、多量の増幅された染色体外DNAを提供した。増幅反応における使用の前に細胞を加熱することは、もしあれば、小さな改良を提供した。加えて、多数のエピソーム遺伝的要素を、本発明のユニバーサル・プライマーを使用して、及び当該定義された2ステップPCRサイクル条件を大抵の3ステップPCRサイクル条件と比較しながら使用して、増幅した。
【0118】
この実施例は、コロニー・ピック細胞から直接標的プラスミドを増幅することついての本発明の有用性を示す。いずれの場合にも、多量のプラスミドDNAを、本発明の改良PCR反応バッファーの一態様を使用して、かなり短時間で、増幅した。さらに、本発明のユニバーサル・プライマーは、2サイクルPCR反応を可能にするための特異性及び敏感性を提供し、それ故、標的テンプレート上でPCRを実施するために必要な時間を短縮することを提供する。
【0119】
実施例3:プラスミドDNAは、精製されたプラスミドDNA、グリセロール・ストック又はコロニー・ピック細胞から直接的に増幅される。
精製されたプラスミドDNA(Eppendorf Maxiprepを使用して精製、製品♯955150066)、グリセロール・ストック又は培養された細胞のいずれかからの標的染色体外DNAを、本発明の方法及び組成物を使用して増幅した。増幅バッファー及びプライマー(UniOri30、表7)は、実施例1及び2において記載された通りであり、そしてEppendorf Triple Masterポリメラーゼの1.25ユニットを含む。当該反応において使用されたテンプレートDNAは、精製した染色体外DNAの2.5ng、グリセロール・ストックの2.5μl、15μlの水に再懸濁されたアガープレートから突っついたコロニー2.5μlのいずれかである。4つの異なるユニバーサル・プライマー濃度を、当該増幅反応内(0.3μM、0.15μM、0.075μM、及び0.6μM)での各要素源(精製、グリセロール、及び培養)について使用したことにも留意すべきである。各源からのエピソーム遺伝的要素は、以下:レーン1−pEGFP、レーン2−pTTQ、レーン4−pSP64+DHFR、レーン5−pBSK+MT4、レーン6−pTZ18、及びレーン8pTZ18+IL2を含む。各結果増幅反応からの生成物又はアンプリコンを1%エチジウム・ブロマイドで染色したアガロースゲル上に、各反応物の1/3を流すことにより、視覚化した。
【0120】
図4に示す通り、本発明のバッファー及びプライマーは、異なるColE1ベースのプラスミドについての、及びいくつかの異なる源(精製、グリセロール・ストック、及び突っついた培養)からの、長距離PCRの補助における有効性を示す。加えて、いくつかの異なるユニバーサル・プライマー濃度は、全長エピソーム遺伝的要素の全長の優れた増幅を支持した。
【0121】
当該実施例は、グリセロール・ストック又は水中に再懸濁した突っついた培養細胞から直接的に標的DNAを増幅する有用性を示す。このデータは、各プライマー、多くのエピソーム遺伝的要素から増幅反応を準備することもまた示す。
【0122】
実施例4:増幅されたエピソーム遺伝的要素DNAは、優れたシークエンシング特性を有する。
一連の形質転換された化学的反応性のあるE.Coli宿主細胞を、標的染色体外DNAの直接的コロニー増殖のために採取した。標的要素を、本発明の方法及び組成物を使用してコロニー・ピック細胞から直接増幅したか、Qiagenミニプレップ・キットを使用して最初に精製したかのいずれかにより増幅した。増幅された標的DNAを、次に、ABI Big−Dye Chemisyry及び関連装置を使用してシークエンシングし、そしてPHRED標準を使用して入手した。培養及び精製手段を経由して準備されたDNAを、メーカー推薦ステップ(Quiagenコントロール)を使用して準備したことに留意すべきである。
【0123】
増幅反応条件を、30mMのビシン、200mMのトリス、6mMの硫酸アンモニウム、2.5mMのマグネシウムイオン、100μMのdNTPs、0.3μMのUniOri30 ユニバーサル・プライマー対、エンハンサー・セット(トレハロース、ソルビトール、DMSO)、2.5ユニットのTriple Master酵素をpH8.85〜8.9で実施した。増幅されたDNAの量を、1/4反応でM13フォワード・シークエンシング・プライマーを使用して、シークエンシングした。
【0124】
図5及び表8に示す通り、実施例となるプラスミド・テンプレート及びシークエンシング結果物の視覚化は、本発明の方法及び組成物が、高品質の優れた増殖産生を提供することを示す。このデータは、本発明のユニバーサル・プライマーを使用して、インビトロ増殖されたDNAを、追加の増幅後精製ステップの必要性のないシークエンシング反応において直接的に使用し得ることもまた示す。しかしながら、テンプレート量が低減するにつれて、シークエンシングの質が増大することに留意すべきであり、余分なdNTPs及びユニバーサル・プライマーがシークエンシング反応に緩衝しそうであることを示唆している。総合すると、本発明は、高い忠実度で、pUC19、pGEM、及びpTZ+IL2を増幅するために使用し得るユニバーサル・プライマーを提供する。
【0125】
表8:シークエンシング分析
【表8】
【表9】
【0126】
図5及び表8からのデータは、強い増幅産生が、当該エピソーム遺伝的要素をシークエンシングするための過剰なシークエンシング・テンプレートを提供することを示し、それは、大量の出発材料を、Qiagenキット(余分なdNTPs及びプライマーを除去するため)を使用して精製するか、他の精製ステップかのいずれかに供すべきであり、又は余分なdNTPs及びプライマーを希釈してなくすために希釈して減らすべきである。当該増幅サンプルの希釈が、シークエンシングのために十分な品質のプラスミドであるか確かめるために、及び増殖反応が全長エピソーム遺伝的要素を提供するか確かめるために、一連の試験を、同一の増幅バッファー及びユニバーサル・プライマーのセットを使用して実施したが、しかし、当該増幅反応内のプライマー対の量及びシークエンシング量を、改良した。
【0127】
表9において示されるように、当該増幅反応における、より小さいプライマー・レベル、及びコロニー・ピック細胞からの増幅生成物のより少ない量は、高品質シークエンシングを支持し、及び本発明の方法及び組成物が、全長エピソーム遺伝的要素の増幅を提供することを見出すことを再度支持した。pGEMの配列決定された部分を標準pGEM配列と比較した際、本方法及び組成物の忠実度は、優れていたことに留意すべきである(98.5%正確度が、ABIシークエンシングガイドラインにより決定される通り優良品質と考えられていることに留意すべきである。)。
【0128】
表9:様々なプライマー濃度及び希釈量
【表10】
【表11】
【0129】
当該先の結果は、慣習的培養及び精製技術による高品質のエピソームの又は染色体外のDNA製造のための代替物又は関連物としての本発明の有用性を示す。PHRED及び精度スコアの双方は、本発明の方法及び組成物が、全長エピソーム遺伝的要素DNAを直接的に増幅するために使用され得ることを示す。配列決定されたpGEMの一部は、当該増幅されたDNAが、高品質でミニプレップ製造されたDNAと等価であることを示した。
【0130】
実施例5:インビトロ増幅された閉環状プラスミドDNA
反応バッファーを、コロニーから直接的なプラスミドDNAのインビトロ増幅のために、及びさらに、同一反応内で、当該増幅したプラスミドDNAをライゲーシングし、閉環DNAに戻すために最適化した。当該増幅及びライゲーション反応は同一バッファー内で生じ、そしてそれ故、1ステップと考慮される。
【0131】
増幅バッファーは、以下の7.5mMの酢酸マグネシウム、10mMの塩化アンモニウム、1mMのDTT、1mMのβ−NAD、500μMのdNTPs、0.4μMのセンス及びアンチセンス・ユニバーサル・プライマー(表5を参照のこと。)、2ユニットのTriple Master Enzymeミックス、及び(+リガーゼ反応のために)約0.019μgのTsc DNA リガーゼ(Prokariya)を有し、“1×”バッファーとして混合した。再懸濁されたコロニーを増幅バッファーと混合し(+又は−リガーゼ)、直鎖プラスミドDNAを増幅するか、又は増幅しそして当該プラスミドDNAを閉環状DNAにライゲートするかのいずれかを行う。温度サイクル条件は、最初の変性ステップ、93℃で20秒間、93℃で20秒間を28サイクル、58℃で20秒間、そして68℃で2分間のステップを含んだ。
【0132】
図6A及び6Bに示すように、インビトロ増幅されたプラスミドDNAの目立つ量が、ライゲートされ環状種となっている。図6Aは、ポリメラーゼ及びリガーゼを同一の1ステップ反応に添加したとき、ライゲートされた生成物を得たこと、及びライゲートされた種の増量を当該反応内のポリメラーゼ増量で形成したことを示す。図6Bは、ライゲートされた種の僅かな増大のみが、増量で生じたことを示す。この実施例は、1コロニーを突っつくことから直接的な1ステップの増幅/ライゲーション反応を提供する際の、本発明の有用性を示す。
【0133】
実施例6:1ステップ増幅/ライゲーション反応は、環状生成物を製造する。
以下の実施例を、ライゲートされたプラスミド環状型を1ステップ増殖/ライゲーション反応において製造したこと確認するために、実施した。化学的反応性のあるE.Coli細胞を、単一部位で1.68Kbのラムダ挿入物を有するpUC19プラスミドで、形質転換した。コロニーを突っつき、そして本発明の1ステップ増殖/ライゲーション反応を実施した、簡潔には:各2μlのコロニー・ピックを、7.5mMの酢酸マグネシウム、10mMの塩化アンモニウム、1mMのDTT、1mMのβ−NAD、500μMのdNTPs、0.4μMのリバース及びフォアード・ユニバーサル・プライマー(表5を参照のこと。)、及び2ユニットのTriple Master Enzymeミックス(Eppendorf、製品番号#954140229号)を有する50μl反応量の中に入れた。リガーゼを含むサンプルは、0.019μgTsc DNA リガーゼ(Prokariya)もまた含んだ。温度サイクル条件は、最初の変性ステップ、93℃で20秒間、93℃で20秒間を28サイクルのステップ、58℃で20秒間、そして68℃で2分間のステップを含んだ。
【0134】
図7に示すように、上記反応条件は、結果として、閉環状生成物を製造した。このことは、ポリメラーゼ/リガーゼ促進反応バッファーについての本発明の有用性を再度、示した。
【0135】
実施例7:本発明のバッファーMg2+の増幅バッファー
増幅バッファーを、上記実施例2及び3と同様に、Mg2+の様々な濃度条件下で、本発明の組成物及び方法がMg2+バッファリング能を提供するように、実施した。上記のように、いくつかの異なる染色体外DNA要素を、表5に記載の増幅反応混合物におけるUniOri30プライマー対を使用して、増幅した。サイクル条件は、上記実施例2におけるものであり、2ステップPCRプログラムを使用した。
【0136】
Mg2+濃度を2.5mMから6mMに増大し、本発明のビシン含有バッファーが、より高いMg2+濃度に対して抵抗性を有することを示した(ビシンはMg2+キレート剤として知られる)。
【0137】
図8に示すように、本発明の増幅バッファーは、高レベルのポリメラーゼ活性を支持する一方、増幅反応の間、広範囲のMg2+イオン濃度を支持する。この結果は、各異なる染色体外DNA要素について見出される。
【0138】
実施例8:UniOri30プライマー対は2ステップPCRを支持する。
一連の増幅反応を、pBSK+NT4プラスミドに関して、UniOri20、UniOri22、UniOri25又はUniOri30プライマー対のいずれかを使用して実施し、共通のアニーリング及び伸長条件が得られるのかどうかを確定した。反応バッファー条件を、上記実施例において記載された通りにし、テンプレート1ng及び0.3μM又は各々のプライマー対を使用した。2ユニットのTriple Master ポリメラーゼを、各反応において使用した。サイクル条件は、93℃で2分間、94℃で20秒間、及び55℃〜72℃にわたるアニーリングのための様々な温度勾配を含む。伸長ステップを、5分30秒間実施した。図9Aに示すように、UniOri30のみが65℃超のアニーリングを支持し、その温度は、大抵の好熱性ポリメラーゼ酵素が、準備されたテンプレートの伸長をやめることに要する最小温度である。重要な事に、UniOri30は、実際には、大抵の酵素ポリメラーゼ活性化温度、すなわち、68〜72℃でさえ、テンプレートDNAにアニールした。
【0139】
上記データから推測するに、2ステップPCRサイクル条件は、Triple Master ポリメラーゼ及びUniOri30を、68℃のアニーリング及び伸長温度で使用すること、であっても可能であろう。図9Bに示すように、いくつかの標的プラスミドを、UniOri30プライマー対、そして93℃で2分間、94℃で20秒間、及び68℃で6分間のサイクルを使用して、効果的に増加した。各反応を、25サイクル(左側)又は30サイクル(右側)のいずれかで実施した。上記実施例は、2サイクルPCRを使用する、エピソーム遺伝的要素を増幅することについての、本発明の有用性を示す。
【0140】
実施例9:コロニー・ピック細胞から増幅されたDNAは、主にエンドトキシンなしである。
コロニー・ピック細胞からの標的染色体外DNAを、本発明の方法及び組成物を使用して増幅した。例えば、増幅反応を、実施例2に実質的に示される通り、実施した。当該増幅生成物中のエンドトキシン・レベルを、本分野において知られる試験により測定し、そして、Qiagen ET−free Midiprepにより単離されたDNA量の実質的に等量で存在するエンドトキシン・レベルと比較した。このQuiagenキットは、少なくともある程度、最低値でエンドトキシン・レベルを保つ能力として、販売され/設計されていることに留意すべきである。
【0141】
図10に記載のデータが示すように、本発明の方法及び組成物を使用して、細胞から直接増幅されたDNAは、Qiagen ET−free方法及び組成物を使用して単離されたDNA内に見出されるレベルと比較して、相当低いエンドトキシン・レベルを示す。さらに具体的に、図10に示される最初の2つのバー、Q B1及びQ GrをQuiagenミニプレップ、FP B1、FP Gr及びFP プールを米国特許出願公開第10/387,646(‘646)号に記載の通り製造した。EFと標識されたバーは、エンドトキシンなしのQiagen midiprepで、そして続く4つのバーは、‘646出願において実施されたようにサンプルからエンドトキシンを除去しようと試みて使用された回転装置で実施された(C18[50%PerfectPure Tip様組成物];400C[50%Tosoh Butyl 400C];C4[Macherey−Nagel C4残基];及び2122[100%gur2122焼結粒子])。残りの3つのバーは、実施例2における方法及び組成物を使用して製造されるようなサンプルである。4A−Cは、増幅DNAを示すことに失敗したものであることに留意すべきである。
【0142】
この実施例におけるデータは、トランスフェクション及びその他の手順の間の細胞培養に影響を与えるエンドトキシンを重要な理由として、主にエンドトキシンなしの環境を維持しながら、コロニー・ピック細胞から標的DNAを直接増幅することの有用性を実証する。このように、本発明の方法及び組成物を使用して増幅した標的DNAは、優れたトランスフェクション、形質転換、及び他の手順のために使用する増幅生成物を提供する。
【0143】
実施例10:改良ユニバーサル・プライマーは、ポリメラーゼ校正活性に対して抵抗性がある。
本発明の組成物を、LNA改良ユニバーサル・プライマーを使用して、標的プラスミドDNAの増幅のために使用した。ユニバーサル・プライマー対を、当該プラスミドの複製起点内にハイブリダイズするように設計し、そしてさらに、当該対の各オリゴヌクレオチドを、n−1位置でロック核酸を含むように設計した。LNA改良プライマーは、校正DNAポリメラーゼ酵素に関連するエキソヌクレアーゼ活性に対する重大な保護を提供することが先に示されている(Di Giusto et al.,supraを参照のこと)。非改良ユニバーサル・プライマー対を、当該改良ユニバーサル・プライマー対と比較するために製造した。
【0144】
インビトロ増幅反応を、表10に示す通りの反応条件を使用して、上記のように実施した。
【0145】
表10:LNA改良ユニバーサル・プライマー対
【表12】
【0146】
図11に示すデータは、LNA改良プライマー(表10(a)を参照のこと)が、伸長可能であり、そしてプライマー分解に対する実質的保護を提供することを実証する(プラスミドの量、識別及び宿主細胞も表10aに記載されることに留意すべきである。)。
【0147】
表10(a):プラスミドサンプル及びLNAプライマーについてのプライマー改良の識別
【表13】
【表14】
【0148】
実施例11:標的プラスミドDNAの増幅及びシークエンシング
一連の異なる宿主細胞であって、異なるプラスミドで形質転換された各細胞を、直接コロニーを突っつくことにより採取した。コロニー・ピック培養物を水中に1対10で希釈し、そしてプラスミドDNAを、本発明の方法及び組成物を使用して、増殖させそして配列決定した(宿主細胞/プラスミド型の組み合わせの概観について表11を、増幅反応条件について表12を、シークエンシング・データについて表13を参照のこと。)。
【0149】
増幅された標的DNAを、ABI Big−Dye Chemistry関連装置を使用して配列決定し、PHRED標準を使用して記録した。ABI3700及びABI3100シークエンシング機器を、この実施例に関連して、両方使用したことに留意すべきである。
【0150】
この実施例からのデータは、その後のシークエンシングのために、コロニー・ピックから直接的に標的プラスミドDNAを増幅することにより得た、優れた結果を示す。本発明の態様を、本発明の増幅反応を使用して、当該宿主細胞から直接的に標的細胞内にかくまわれた、プラスミド又は他の染色体外DNAの標的部分を直接配列決定するために使用し得る。
【0151】
表11:プラスミド識別パネル
【表15】
【表16】
【0152】
上記各プラスミド生成物(表11を参照のこと。)を、本実施例の記載通りの方法及び組成物を使用して試験したけれども、プラスミド、pFastBac、pQE Xa、pCR−TOPC、及びpGEXを使用して得たデータのみを、以下の表13に示した。インビトロ増幅反応条件を表12に簡単に取りまとめていることに留意すべきである。
【0153】
表12:プラスミド増幅のための反応混合物
【表17】
【0154】
表13に示されるように、多数の異なる宿主細胞によりかくまわれたプラスミドDNAは、本発明のユニバーサル・プライマーを使用して増幅され、そして、本発明の態様に関連して、正確に配列決定され得る。本発明のユニバーサル・プライマーを使用する宿主細胞又はプラスミドの同定にかかわらず、同一の増幅バッファーを使用することにも留意すべきである。
【0155】
表13:シークエンシング分析
【表18】
【表19】
【0156】
本実施例は、本発明のユニバーサル・プライマー及び増幅バッファーが、一連の異なる宿主細胞/プラスミド型の組み合わせに関して、増幅されそして配列決定される準備ができているプラスミドDNAを提供するために使用され得ることを例証する。シークエンシング反応は、増幅されたプラスミドDNAに関して直接的に実施され得、ここで、DNA(450超のPHREDスコアは、適したシークエンシング精度を示す)の高品質は、予測され、そして本実施例において示される。
【0157】
本発明は、特別な実施例を参考として記載する。これらの実施例は、いかなる場合においても本発明を限定するものではない。本明細書における開示目的は、本発明の範囲内に含まれる、本発明に対する様々な変化及び改良が行われることと理解する。多くの他の変化は、いわゆる当業者により容易に提示させ得るであろうが、ここに開示し及び添付の請求項に定義されるような本発明の精神で包含し得る。
【0158】
本明細書は、特許、特許出願、及び刊行物からの多数の引用を含み、それらの内容全てを本願明細書中に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1−1】図1A−Cは、いくつかのプライマーの向きの設計を説明するフローダイアグラム:本発明に関する(1A)テール−トゥ−テール;(1B)重複;(1C)テールに制限部位を組み込むプライマーである。
【図1−2】図1−2は、いくつかのプライマーの向きの設計を説明するフローダイアグラム:本発明に関する(1D)ギャップ配置を有するプライマーである。
【図2】図2は、本発明に関する、増幅バッファー及び長さの変化する新規プライマー対の態様を使用して形成されたアンプリコンを示す、染色されたアガロースゲルである。いくつかの異なるエピソ−ム遺伝的要素を6つの異なるユニバーサル・プライマー対の内の1つを使用して、増幅した。
【図3】図3は、いくつかの異なるエピソ−ム遺伝的要素のための当該増幅バッファー及び新規プライマー対の態様を使用して形成されたアンプリコンを示す、染色されたアガロースゲルである。増幅反応を、再懸濁したコロニーピック細胞に関して直接実施した。
【図4】図4は、いくつかのテンプレート源−精製されたプラスミドDNA、再懸濁コロニーDNA、及びグリセロール・ストックDNAからの当該増幅バッファー及び新規プライマー対の態様を使用して形成されたアンプリコンを示す、染色されたアガロースゲルである。
【図5】図5は、いくつかの源からの当該増幅バッファー及び新規プライマー対の態様を使用して形成されたアンプリコンの産生を示す、染色されたアガロースゲルである。DNAを、当該増幅されたDNAの質を例証するために、ABI標準条件を使用してシークエンシング(配列決定)した。
【図6A】図6Aは、コロニーピック・プラスミドDNAに関して、直接的に1ステップ増幅及びライゲーション反応を実施することの有効性を説明する、染色されたアガロースゲルである。図6Aは、本発明の組成物及び方法を使用して、pUC19標的についてのTscDNAの標準濃度におけるポリメラーゼ滴定を示す。
【図6B】図6Bは、コロニーピック・プラスミドDNAに関して、直接的に1ステップ増幅及びライゲーション反応を実施することの有効性を説明する、染色されたアガロースゲルである。図6Bは、本発明の組成物及び方法を使用する、ポリメラーゼ(TripleMaster)(登録商標)の標準濃度におけるTscDNAリガーゼ滴定を示す。
【図7】図7は、pUC19細胞に関して、直接的に1ステップ増幅及びライゲーション反応を実施することの有効性を説明する、染色されたアガロースゲルである。これらの結果より、TscDNAリガーゼの存在下、共有結合した環状プラスミドを形成することが示唆される。この実験において、DpnI消化に対する抵抗性が、DNAを増幅したベクターにより実証された。精製されたプラスミドDNAはメチル化され、そしてそれ故、DpnIにより開裂され、一方、ベクター増幅DNAはメチル化されなかった。
【図8】図8は、Mg2+の増加量の存在下、当該増幅バッファー及び新規プライマー対の態様を使用して形成されるアンプリコンの産生を示す、染色されたアガロースゲルである。
【図9A】図9Aは、異なる長さのプライマー(A)における増幅反応のアニーリング・プロセスの温度依存、及び本発明の態様に関する2ステップPCR法の最適化を示す染色されたアガロースゲルである。
【図9B】図9Bは、異なる長さのプライマー(A)における増幅反応のアニーリング・プロセスの温度依存、及び本発明の態様に関する2ステップPCR法の最適化を示す染色されたアガロースゲルである。
【図10】図10は、本発明に関する方法及び組成物を使用して、細胞から直接的に増幅したDNAを示す、染色されたアガロースゲルである。
【図11】図11は、本発明の態様に関する、LNA改良プライマーを使用して増幅されたDNAを示す、染色されたアガロースゲルである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2003年11月26日に出願された米国仮出願第60/525,459号、表題:METHODS AND COMPOSITIONS FOR IN VITRO AMPLIFICATION OF EXTRACHROMOSOMAL NUCLEIC ACIDベースの優先権の利益を主張し、当該優先権基礎出願をここに全体として本願明細書中に援用する。
【0002】
本発明の分野
本発明は、一般的に、染色体外核酸のインビトロ増幅のための方法及び組成物に関し、そして、より特にプラスミド及び他の核酸様分子のインビトロ増幅に関する。
【背景技術】
【0003】
核酸分子、特に、長さ1キロベースより大きい核酸分子、例えば、染色体外DNAであって、例えば、プラスミドDNA、の相当量の製造能力は、バイオテクノロジー及び臨床研究における多くの川下使用の基本的要件であるのと同様、分子生物学の多くのプロトコールにとって必須である。例えば、より高分子量の核酸分子は、クローニング実験、DNAシークエンシング反応、制限消化反応、及びその後のライゲーション反応において、しばしば好まれ、そして、これらの使用は、全て又はある程度、出発DNA原料の質と量に依存する。そのようなものとして、大量の良質な、特に染色体外DNAに関する核酸分子及び特にプラスミドDNAの信頼性のある製造方法についての必要性があり、そしてあり続けるであろう。
【0004】
大量の核酸を製造する優れたアプローチは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を経由するものである。PCR法は、テンプレート核酸の急激な増加に役立つ、便利なインビトロ増幅方法である。しかしながら、PCR法は、低分子量核酸標的であって、例えば2kb未満の増幅のために伝統的に使用され、そして、長さ1kb超の核酸分子の増幅において、不満の残る結果(質及び量の両方について)を典型的に招く。一般的に、1プラスkb核酸分子の満足な水準及び/又は質の増幅の失敗は、ポリメラーゼの無能であって、大量のヌクレオチドを正確に増幅できないこと、及び/又は生成物の全長を増幅するために必要な時間のために、より長いテンプレートを保持することができないことが原因である。いくつかのアプローチが、これらのより高分子量の分子を増幅するためのPCR法を改良するために実施され、PCR緩衝(バッファリング)能力を改良すること、例えば、トリシン−NH4又はトリシン−KOHの当該反応ミックスへの統合、DMSO様PCRエンハンサーの当該反応ミックスへの統合、及び当該ポリメラーゼ酵素自体の改良を含む。PCRバッファーの改良に関して、当該含有物は、当該バッファーのイオン強度、及び当該ポリメラーゼ自体の忠実度に重大な影響を与え、そしてそれ故、増幅におけるいくつかの結果物の増大は、当該忠実度を犠牲にして、しばしば生じる。当該ポリメラーゼ酵素自体に関する改良について、改良のいくつかのレベルは、忠実度及び前進性を手に入れ得るが、しかし、しばしば当該変化を正当であると証明しないほどの高価なハイブリッド蛋白質を組み込むという犠牲を払うことになる。
【0005】
さらに最近、閉環状核酸分子を増幅するために新しい増幅技術が開発され、10kbプラスミドの増幅もまた記載されているけれども、特に1〜2kbの範囲で実施される。特に、単一の“増幅”反応であって、増幅間ライゲーション反応(LDA)と呼ばれる反応が、熱安定性ポリメラーゼ、熱安定性リガーゼ、及びエネルギー源の混合物を含み開発された(米国特許第6,620,597号を参照のこと。)。当該特許に挙げられるデータに基づいて、10〜20kbの範囲内におけるより大きい核酸分子が、この技術により無事に増幅され得るかどうかはわからず、そしてより注目すべきことは、より小さい標的を含む、増幅標的の忠実度が、大量の増幅された塩基を与える核酸分子のいずれかの利用のために受け入れられるとの実証がないことである。LDAは、重合(ポリメリゼーション)をライゲーション・バッファリング条件と連合するので、ライゲーションが効率的でなくなるであろうと予測される。
【0006】
結果として、大量の染色体外核酸分子、例えば、プラスミド、BACs、コスミッド、YACsなどであって、適切な複製シグナルを有するものは、まだ一般的に、宿主細胞を培養することにより製造し、続いて本分野においてよく知られる方法、例えば、ミニプレップ又はマキシプレップ由来のプロトコールを使用して、標的分子を精製する。特に、標的宿主細胞を、染色体外核酸分子で形質転換し、選択的圧力に置き、当該染色体外核酸をかくまい及び維持することを確かなものとし、そして次いで、当該宿主細胞を、要求される染色体外核酸の期待量を提供するために十分なレベルまで培養する。一旦成培養したならば、宿主細胞を溶解し、そして内容物を可溶化させる。次いで、当該染色体外核酸を、いくつか一般に使用される化学又は酵素の方法を経由し、宿主細胞蛋白質、RNA、ゲノムDNA、及び他の高分子の混合物から分離する。
【0007】
一般的に、染色体外核酸の大量製造の全過程は、相当大きな労働力、多大な時間、及び特定の実験装置を要する、すなわち、宿主細胞増殖プラットフォーム、宿主細胞増殖培地を滅菌するために必要な装置(又は当該培地を購入するための必要な手段)、より大きな回転遠心分離機、オートクレイブ、パイレックス(登録商標)容器、滅菌済みチューブなどである。そのように、染色体外核酸分子の製造は、宿主細胞を扱う十分な時間及び装備を有する研究所、及び細胞の培養及びそれらを維持する余裕のある研究所によるものとしばしば限定される。加えて、これらの培養及び精製方法は、宿主細胞内で又は培養不可能な宿主細胞では複製しない標的核酸分子に適応しない。さらに、このように製造された染色体外核酸は、エンドトキシンのかなり高いレベルで、しばしば単離される。そのようなものとして、ミニプレップ/マキシプレップ方法を経由し単離される染色体外核酸は、エンドトキシン感受性酵素の使用を要求する、その後の使用についてしばしば満足できない。
【0008】
加えて、染色体外核酸の慣習的な培養及び精製方法は、多くの相互に連結し複雑な要因に依存し変化し得、当該要因は、以下の:各宿主細胞内に含まれる染色体外核酸分子の大きさ(塩基対)及び数(1細胞当りのコピー数)、当該核酸製造のために使用される宿主細胞の型/株、当該宿主細胞の成長率、及び当該宿主細胞から当該染色体外核酸の単離前に、当該宿主細胞が成長を可能とする時間量を含む。例えば、低コピー染色体外核酸の製造は、同様の増殖及び回収条件下での高コピー染色体外核酸分子のレベルよりかなり低い量をもたらす。そのようなものとして、染色体外核酸を製造するために使用される慣習的な方法は、生成物の矛盾した量をもたらす。総合すれば、染色体外核酸の製造の慣習的な方法は、結果物の有効性及び信頼性と同様、手順の容易さ及び値ごろ感共に改良の余地がある。
【0009】
そのようなものとして、単純で一貫性があり、及び時間的有効性がある、核酸分子製造方法について、本分野において継続的必要性があり、ここで当該核酸分子とは、特に長さ1kb超の核酸分子であって、染色体外核酸分子を含むものであり、当該継続的必要性は、そこに使用され得る試薬及びプライマーの改良についてと同様である。特に、十分量の染色体外核酸を製造するための方法及び試薬の必要性があり、ここで、当該必要性は、慣習的方法にある、時間、費用、及び非一貫性を消去することであり、これらの高分子量核酸分子における、例えば、ほとんどの染色体外要素における、PCR法に関連する限定と同様なことである。
【0010】
このような背景に対して、本発明が開発された。
【発明の開示】
【0011】
本発明の要約
本発明は、染色体外核酸のインビトロ増幅のための組成物及び方法、特に、少なくとも約1kb、そしてより好ましくは約2〜30kbの分子量を有する染色体外核酸であって、例えばプラスミドDNAのインビトロ増幅を提供する。本発明に関する増幅方法は、直鎖状又は環状の一本又はニ本鎖テンプレートDNAにおいて実施され得、増幅生成物、すなわちアンプリコン(増幅単位)は、通常、直鎖である。好ましい態様において、当該方法は、二本鎖環状テンプレートDNAを使用する。
【0012】
本明細書において例証する通り、本発明が提供する方法及び組成物の結果物であるアンプリコンの忠実度は、優れており、そして結果生成物は、大幅にエンドトキシン・レベルを低減している。当該対象方法を使用して形成される直鎖生成物は、直鎖生成物あるいは、標準ライゲーション反応の使用又は宿主細胞インビボ・ライゲーション過程の利用により、さらに括られ閉環状核酸分子として利用され得る。あるいは、反応条件により、核酸分子の実質的に同時に起こる増幅及びライゲーションを提供し、結果として、同様の反応バッファー中の閉環生成物を提供する。さらに、直鎖状生成物は、追加の増幅反応のためのテンプレートとして標的とされ得る。
【0013】
ある態様において、環状核酸テンプレートを増幅する方法であって、当該テンプレートを熱安定性ポリメラーゼ、個々のヌクレオチド、及び当該テンプレート内の共通領域に対して相補的なフォワード及びリバース・プライマーを含む反応混合物と接触させることを含み、ここで、当該共通領域は、好ましくは長さ80〜150塩基対である、当該方法が提供される。ある態様において、当該両プライマーの両5’末端は、当該テンプレートの両反対鎖と、約10〜50塩基対離れて、さらに好ましくは0〜25塩基対離れてハイブリダイズする。本明細書に記載の通り、両プライマーが当該テンプレートとハイブリダイズさせられるとき、当該フォワード・プライマーの5’末端は、一般的には、当該リバース・プライマーの5’末端と近位し、当該リバース・プライマーの3’末端と遠位となるであろう。特に好ましい態様においては、当該共通領域は、染色体外核酸内の保存領域であって、例えば、複製起点である。当該反応混合物は、弱有機塩基及び弱有機酸を含む反応バッファーをさらに含み得る。
【0014】
本発明は、染色体外DNAのインビトロ増幅を実施するための改良された試薬もまた提供し、ここで当該試薬は、増幅及びそれに続くライゲーション反応を支持する溶液、及び増幅とライゲーションの混合反応を支持する溶液であって、すなわち、同時にポリメラーゼ及びリガーゼの酵素活性のために適切な環境を提供するものを含む。
【0015】
ある態様において、本発明に関する組成物は、高い発展的増幅と同様、高い忠実度を支持する、優れたバッファリング能力を有するバッファリング・システムを含む。ある態様において、エピソーム遺伝的要素を増幅するための組成物は、熱安定性ポリメラーゼ、弱有機塩基、弱有機酸、マグネシウム含有化合物、及び約3mM〜300mMの濃度を有する塩を含む。典型的に、当該組成物のpHは、当該弱有機塩基と当該弱有機酸との混合により、pH約7.9〜pH約8.9、及び好ましくはpH8.8〜8.9に変えられる。さらに他の態様においては、本発明のバッファリング・システムは、当該増幅反応間の促進されたMg2+濃度バッファリング能力を提供する。
【0016】
他の態様において、本発明は、対象方法に使用するためのフォワード及びリバース・プライマー対であって、ニ重鎖環状核酸テンプレートの両反対鎖において、約50塩基対内、より好ましくは約10塩基対内、さらにより好ましくは約0〜5塩基対内で、互いに近接近してハイブリダイズする5’末端を有する当該プライマー対を提供する。好ましい態様において、両プライマーがそれぞれのテンプレート鎖とハイブリダイズさせられるとき、当該フォワード・プライマーの5’末端は、当該リバース・プライマーの5’末端と近位にあり、当該環状テンプレートの円周周囲の当該リバース・プライマーの3’末端と遠位となる。特に好ましい態様において、フォワード及びリバース・プライマーは、それぞれ、当該テンプレートのセンス及びアンチセンス鎖上の隣接塩基対とハイブリダイズするように提供される。
【0017】
さらに他の態様において、ユニバーサル・プライマーが、エピソーム遺伝的要素の特定の群であって、当該所望の群の保存領域、例えば、細菌プラスミドの複製起点、の一部と相補的な配列を有するものを増幅する場合における使用のために提供される。当該対象組成物及び方法において使用のために企図される保存領域は、例えば、細菌の複製起点、酵母2μ起点、薬剤耐性遺伝子、及びプロモーター配列を含む。新規プライマーの位置及び向きの双方は、異なる染色体外核酸分子の多くの例示的プライマー対を提供する。
【0018】
他の態様において、染色体外DNA、例えばプラスミドDNAであって、低エンドトキシン・レベルを有するものの多重コピーを製造する方法が、提供される。当該対象方法は、着目のプラスミドをかくまう細胞コロニーの、1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらにより好ましくは1〜5個、最も好ましくは1〜3個のコロニーを採取すること、及び当該採取された細胞を、増幅及び場合によりライゲーション組成物と接触させることを含み、ここで当該組成物は、以下の:当該プラスミドの保存領域内の反対鎖に対して相補的な配列を有するフォワード及びリバース・プライマー;pH約7.9〜約8.9で弱有機酸及び弱有機塩基を有するバッファー;熱安定性ポリメラーゼ;場合により熱安定性リガーゼ;及び変性温度、アニーリング温度、伸長温度、及び場合によりライゲーション温度を通す複数サイクルとしての熱サイクル組成物を含み、ここで当該増幅したDNAの一部は、閉環状プラスミドDNAである。
【0019】
さらに他の態様において、1個のコロニーから閉環状プラスミドDNAの当該インビトロ増幅の方法が提供され、ここで当該プラスミドは複製起点を有する。当該方法は、採取された細胞からのプラスミドDNAを、以下の:
熱安定性ポリメラーゼ、個々のヌクレオチド及び当該プラスミドDNAの複製起点と相補的なフォワードとリバース・プライマーであって、ここで、当該フォワード・プライマーは、複製起点内の当該プラスミドのセンス鎖とハイブリダイズし、及び当該リバース・プライマーは、複製起点内の当該プラスミドのアンチセンス鎖とハイブリダイズする当該両プライマー;及び、
当該プラスミドDNAの新しい直鎖コピーの重合を促進するための熱サイクルの結果として生じる対象反応混合物、
を含む組成物と接触させることを含む。場合により、本明細書にさらに記載される通り、当該新しく形成された直鎖コピーは、増幅ステップと同時に又は続いて、括られ、閉環状プラスミドDNAとなり得る。
【0020】
本発明のこれらの及び様々な他の特徴及び優位は、以下の詳細な説明の見解及び添付の請求項の所見から理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の詳細な説明
定義
以下の定義は、本明細書においてよく使用される用語の理解を促進するために提供され、ここに開示する範囲を制限する意味はない。
【0022】
本明細書中に使用される、用語“アンチセンス”は、標的“センス”ポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオチド配列をいう。
【0023】
本明細書中に使用される、用語“ビシン”又は“N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン”は、一般式C6H13NO4を有する化合物をいい、当該化合物の誘導体及び塩を含む。ビシンは、Hampton Research,Aliso Viejo,CA,製品番号HR2−509から購入され得る。
【0024】
本明細書中に使用される、用語“染色体外核酸”は、組み込まれた及び組み込まれないエピソーム遺伝的要素をいい、例えば、あるDNAウイルスであり、天然プラスミド、プラスミド由来型クローニング及び発現ベクター、天然バクテリアファージ及びクローニング及び発現ファージ、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、2μDNA、2μ由来酵母シャトルベクター、ミトコンドリアDNA、コスミド、ファージミド、トランスポゾンなどと同様である。
【0025】
本明細書中に使用される、用語“核酸”又は“NA”は、デオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)の両方をいい、その改良された及び/又は機能化されたバージョンと同様である。同様に、本明細書中に使用される用語“ヌクレオチド”は、リボ核酸及びデオキシリボ核酸の個々の構成単位を、ヌクレオシド及びヌクレオチド類似物と同様に含み、そして、標識されたヌクレオチドの如き改良ヌクレオチドも含む。加えて、“ヌクレオチド”は、天然には生じない類似構造体を含み、例えば、糖、リン酸塩、及び/又は塩基ユニットが、欠如する又は他の化学構造体により置き換えられるものを含む。それ故、当該用語“ヌクレオチド”は、個々のペプチド核酸(PNA)(Nielsen et al.,Bioconjug.Chem.1994;5(1):3−7))の構成単位及びロックト核酸(LNA)(Braaasch and Corey,Chem.Biol.2001;8(1):1−7)の構成単位を、他の構成単位と同様、包含する。
【0026】
本明細書中に使用される、用語“ポリヌクレオチド”、“オリゴヌクレオチド”又は文法上それに等しい語は、共に共有結合する、少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。いわゆる当業者により理解されるであろう通り、糖−リン酸骨格の種々の修飾は、生理環境におけるそのような分子の安定性を増大するために行われ、化学的修飾であって、例えば、ホスホロチオエイト又はメチルホスホネイトを含む。さらに、そのような分子は、例えば標識の付加の促進を目的とする異なる固有性を有する1又は複数の分子、とのカップリングにより機能化される。
【0027】
本明細書中に使用される、用語“核酸配列”は、核酸の鎖に沿ったヌクレオチドの順序又は配列をいう。ある場合において、これらのヌクレオチドの順序は、対応するポリペプチド鎖に沿ってアミノ酸の順序を決定し得る。このように、当該ヌクレオチド配列は、アミノ酸配列をコードする。当該核酸配列は、規定のように、一本鎖又は二本鎖であり、又は二本鎖及び一本鎖配列の双方の一部を含み得る。当該核酸配列は、DNA、ゲノムDNA及びcDNAの両方、RNA、又はハイブリッドからなり、ここで当該配列は、デオキシリボ−及びリボ−核酸のいずれかの組み合わせ、及びウラシル(U)、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)、イノシン、キサタニン(Xathanine)、ヒポキサタニン(Hypoxathanine)、イソシトシン、イソグアニンなどを含む塩基のいずれかの組み合わせを含む。
【0028】
本明細書中に使用される、用語“環状核酸テンプレート”又は“環状テンプレート”は、環状核酸分子、及び好ましくは異種の染色体外環状核酸配列であって、例えば、ベクター及び発現カセットなどであって、典型的には、約2kb〜45kb、ある意味では2kb〜25kb、及び他の意味では2kb〜10kbの分子量を有するものをいう。好ましい態様において、本発明の環状核酸分子は、プラスミドを含み、ここで、当該プラスミドは、複製起点又はレプリケーター、選択マーカー、及びクローニング部位を含む。ある例において、当該環状核酸は、スーパーコイルである。当該環状核酸テンプレートは、大抵のエピソーム遺伝的要素、例えば、プラスミド、コスミド、PACs、BACs、YACs、ホスミド、及びその他の分子を含み得る。
【0029】
本明細書中に使用される、用語“相補的”又は“相補”は、塩基対ルールにより関連付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)に関して使用される。例えば、“A−G−T”配列は、“T−C−A”配列に対して相補的である。相補は、“部分的”となり得、核酸の塩基のいくつかのみが、塩基対ルールに従って、適合する。又は、核酸間の“完全”又は“全体”相補があり得る。本分野においてよく知られるように、核酸鎖間の相補の度合いは、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効果及び長さに大きな影響を有する。この事は、増幅反応において特に重要であり、核酸間の結合に依存する検出方法と同様である。
【0030】
本明細書中に使用される、用語“プライマー”は、オリゴヌクレオチドであって、精製された制限消化のような自然に生じるものであろうと、合成的に製造するものであろうと、核酸鎖に対して相補的なプライマー伸長生成物の合成が導かれる条件下(すなわち、核酸及びDNAポリメラーゼの如き誘発剤の存在下、及び好適な温度とpHの下)に置かれたとき、合成の開始点として作用することができるものをいう。当該プライマーは、増幅における最大効率のために、好ましくは一本鎖であるが、あるいは二本鎖にもなり得る。もし二本鎖の場合、当該プライマーは、伸長生成物の製造のために使用される前に、まず、その二本鎖を分離するための処理をされる。好ましくは、当該プライマーは、オリゴデオキシリボ核酸である。当該プライマーは、誘発剤の存在下、伸長生成物の合成を準備するために十分に長くなくてはならない。当該プライマーの的確な長さは、温度、プライマーの源、及びある方法の使用であって、本分野においてよく知られるようなものを含む、多くの因子に依存するであろう。
【0031】
プライマーは、当該テンプレートの特定の配列の鎖に対して相補的であるように選択される。プライマーは、プライマー伸長の発生のためのテンプレート鎖とハイブリダイズするために、十分に相補的でなければならない。プライマー配列は、当該テンプレートの正確な配列を反映する必要はない。例えば、本明細書中に記載の通り、非相補的ポリヌクレオチド断片は、当該鎖と実質相補的である残りのプライマー配列とともに、当該プライマーの5’末端に付随させられ得る。非相補的な塩基又はより長い配列は、当該プライマー内に分散させられ得る、ただし、当該プライマー配列は、当該テンプレート配列と特異的にハイブリダイズするために十分相補的であって、その結果、所定の温度で、当該プライマーの伸長生成物の合成のためのテンプレート・プライマー複合体を形成することを条件とする。ハイブリダイゼーションの条件は、Sambrook et al.,Eds.,“Molecular Cloning,A Laboratory Manual”第3版(Cold Spring Harbor Laboratory Press 2001)において記載される標準的なものであり、そして本明細書中においてより詳細に述べる。
【0032】
本明細書中に使用される、用語“発現”は、宿主細胞内において生ずる転写及び翻訳をいう。当該宿主細胞内のDNA分子の発現レベルは、当該細胞内に存在する対応するmRNA量又は当該宿主細胞により製造されるDNAにエンコードされる蛋白質量のどちらかに基づいて決定される。本発明の文中における用語“発現”のさらなる詳細は、Sambrook et al.,supraの概説により入手できる。
【0033】
本明細書中に使用される、用語“宿主細胞”又は“宿主細胞群”は、異種ポリヌクレオチド分子、例えばプラスミド・ベクターを発現する又は発現できる細胞をいう。本発明の宿主細胞は、生物工学的及び分子生物学的及び臨床的背景を含むいくつかの使用を有する、ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドを発現する。本発明における好適な宿主細胞の例は、細菌性細胞、酵母細胞、昆虫及び哺乳類細胞を非制限的に含む。そのような細胞の特異例は、様々な他の細菌性細胞起源と同様、E.Coli DH105α細胞を含み、例えば、当該E.Coli株:DH10b細胞、XL1Blue細胞、XL2Blue細胞、Top10細胞、HB101細胞、及びDH12S細胞、及びサッカロミセス、ピチア、クルベロミセス(Kluveromyces)を含む属からの酵母宿主細胞を含む。
【0034】
本明細書中に使用される、本発明の目的としての用語“単離された”及び“精製された”は、互換性があり、そしてポリヌクレオチド又はポリペプチド、例えば染色体外核酸であって、細胞残屑であって例えば高分子量DNA、RNA、及び他の蛋白質から分離されたものをいう。これは、DNAを含む細胞残屑から分離されるであろう、単離されたRNAサンプルを含むであろう。
【0035】
本明細書中に使用される、用語“PHRED”又は“PHREDスコア”は、DNA配列の質を測るために使用するソフトウェアプログラムをいう。当該ソフトウェアは、CodonCode Corporation,0.020425.cバージョンから購入される。本発明の目的のために、600のPHRED q20スコアは、精度>98.5%で約730塩基に対するものと等価である。
【0036】
本明細書中に使用される、用語“プラスミド”は、非染色体性の、細菌のある型において見出された核酸の環状鎖をいう。好ましくは、環状二本鎖核酸分子である。本発明において有用な例示的プラスミドは、pGEM、pTZ、pUC19、pUC18、pBS2、pEGFP、pBR322などを含む。
【0037】
本明細書中に使用される、用語“プライマー”は、一本鎖オリゴヌクレオチドであって、適切な条件下、すなわち、組成物、バッファー及び温度といった条件下、テンプレートの引き起こすNA合成の開始ポイントとして作用する。本発明に関するプライマーの長さは、以下により詳細に記載される。プライマーは、当該テンプレートの正確な配列を反映する必要はなく、例えば、複製起点の一部でよいが、しかし、テンプレートとハイブリダイズするために、十分に相補的でなければならない。フォアード・プライマーは、二本鎖テンプレートに沿って5’から3’方向にハイブリダイズするプライマーであり、リバース・プライマーは、第1鎖と比較して3’から5’方向に相補鎖とハイブリダイズするプライマーである。
【0038】
本明細書中に使用される、用語“選択マーカー”は、標的染色体外DNAを選択するために典型的に使用される、染色体外DNA上の遺伝子をいう。選択マーカーは、例えば、代謝拮抗物質抵抗性をコードする遺伝子であって、例えば、メトトレキサートに対する抵抗性を与えるDEFR蛋白質(Wigler et al.,1980,Proc Natl Acad Sci USA,77:3567;O’Hare et al.,1981,Proc Natl Acad Sci USA,78:1527)、ミコフェノ−ル酸に対する抵抗性を与えるGFP蛋白質(Mulligan&Berg,1981,PNAS USA,78:2072)、抗生物質抵抗性、すなわち、アミノグリコシドG−418に対する抵抗性を与えるネオマイシン耐性マーカー(Calberre−Garapin et al.,1981,J Mol Biol,150:1)である。
【0039】
本明細書中に使用される、用語“厳密さ”は、ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションが起こる下での、温度、イオン強度、溶媒などといった条件をいう。ハイブリダイゼーションは、当該増幅過程のアニーリング・ステップの間に、当該プライマーとテンプレートDNAの間で生ずる過程である。
【0040】
本明細書中に使用される、用語“ベクター”、“染色体外ベクター”又は“発現ベクター”は、環状ポリヌクレオチド分子であって、通常は二本鎖であって、挿入部位を有し又は標的異種ポリヌクレオチドを挿入されているものをいう。当該異種ポリヌクレオチド分子は、当該宿主細胞内において天然に発見される又はされないかもしれず、そして、例えば、当該宿主細胞内において天然に存在する異種ポリヌクレオチドの1又は複数の追加のコピーかもしれない。当該ベクターは、外来のポリヌクレオチド分子を好適な宿主細胞内に輸送するために適応させられる。一旦宿主細胞内に入ると、当該ベクターは、宿主染色体に組み入れられ得るかもしれない。当該ベクターは、場合により、導入されたDNAからのmRNAの転写促進するための要素と同様、当該組み入れられたポリヌクレオチド分子を含む選択細胞のための追加要素を含む。本発明の方法において有用なベクターの例は、プラスミド、バクテリオファージ、コスミド、レトロウイルス、及び人工染色体を非制限的に含む。
【0041】
本明細書中に使用される、用語“弱有機酸”は、ビシン、トリシン、TAPSO、CAPSO、EPPS、Hepes、CHES、Taurin、MOPS、AMPSOなどをいい、これらを非制限的に含む。
【0042】
本明細書中に使用される、用語“弱有機塩基”は、トリス、ビス−トリス、イミダゾール、及びビス−トリス−プロパンなどをいい、これらを非制限的に含む。一般に、弱有機塩基は、本発明の目的のために、pH8〜9を有する、とはいえ、8及び9超のわずかな変化は、本開示の範囲内に包含される。
【0043】
用語“近位”及び“遠位”は、相互に関連して本明細書中に使用される。AがBと近位であり、Cと遠位であるとして言及される場合、A〜Bの距離が、A〜Cの距離よりも少ないことをいう。
【0044】
本発明において提供される当該組成物及び方法は、核酸の増幅、及び環状核酸テンプレートであって、例えば特に染色体外核酸の増幅における有意な使用を見出す。本分野においてよく知られるように、増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応法に基づき、当該PCR法は、一般的に、1)高温での二本鎖核酸テンプレートの変性;2)より低い温度での当該テンプレート核酸へのプライマーのアニーリング;3)DNAポリメラーゼ、好ましくは熱安定性DNAポリメラーゼを使用するプライマーの伸長、を含む。例えば、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;及び同第4,965,188号を参照し、それらのそれぞれの内容を参考により本願明細書中に援用する。本明細書中に記載される通り、当該アニーリング期及び当該伸長期は、同じ又は異なる温度で起こるかもしれず、そして、好ましくは、同じ温度で達成される。本発明は、これらの方法を促進するプライマー及びバッファーであって、結果として、その後のシークエンシング、クローニング、及び検出試験における使用のための高い忠実度を有するアンプリコンを生ずる当該プライマー及びバッファーを提供する。
【0045】
プライマー選択
本発明のプライマーの設計及び選択は、全染色体外核酸、例えば、プラスミド及びコスミド、を増幅するためのプライマーを含む。本発明のプライマー対は、本分野においてよく知られるように、二本鎖テンプレートの両反対鎖にアニールするために設計される。しかしながら、各プライマーが標的挿入部分を囲うように設計され、及び各プライマーの3’末端が互いに近位である、慣習的PCRプライマー対とはちがい、本発明のプライマーは、フォワード(すなわちセンス)プライマーの5’末端が当該リバース(すなわちアンチセンス)プライマーの5’末端と近位し、及び当該リバース・プライマーの3’末端と遠位となるように、テンプレート標的の反対鎖においてアニールするために設計される。それ故、当該両プライマーの5’末端は、好ましくは、同一の150塩基対領域内でハイブリダイズし、より好ましくは、互いの約80〜100塩基対内で、さらにより好ましくは、25〜50塩基対内、及び最も好ましくは互いに近接近内であって、例えば25塩基対又はそれより少なくハイブリダイズする。
【0046】
ある態様において、各プライマーの5’末端は、すき間ゼロ又はすき間なし配置で出発するように、テンプレートの反対鎖上の隣接塩基対とハイブリダイズし、これを図1Aに示す。この特別の態様は、全エピソ−ム遺伝的要素の増幅に有用であり、ここで、当該エピソーム遺伝的要素は、天然において環状であり、すなわち、プラスミド、コスミド、BACsなどである。他の態様において、各プライマーの5’末端は、染色体外DNA要素の隣接鎖上で重複することができ、ここで、当該テンプレートの各鎖の追加配列が増幅されるようにする必要があり、これを図1Bに示す。他の態様において、図1Cに示すように、1又は両方のプライマーが、追加の配列を当該アンプリコンに導入するために当該5’末端の非相補的伸長を含む。他の態様において、すき間(ギャップ)は、当該エピソーム遺伝的要素の隣接鎖上の各プライマーの5’末端の間に導入され得、結果として、当該増幅生成物から各プライマーの5’末端間の配列を除去する。図1−2(1D)を参照のこと。このように、本発明が提供する組成物及び方法を使用して、増幅反応は、元々の染色体外核酸配列を維持するために実施され又は加えられ又は結果物としてのアンプリコンから標的配列を除去され得る。好ましい態様は、全染色体外核酸を増幅させることを構想する。
【0047】
すき間ゼロ配置を有するプライマー設計(図1A)は、当該テンプレートの増幅生成物の正確な配列が所望される場合に、一般的に好ましい、しかしながら、すき間配置は、増幅生成物内に標的配列が要求されないとき、すなわち、選択マーカー又は他の標的配列がもはや要求されないときに、使用され得る(図1−2(1D))。当該重複設計は、増幅される当該追加の配列が、当該標的テンプレートエピソーム遺伝的要素の末端又は両末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を導入するために当該制限エンドヌクレアーゼ部位を提供するときに、一般的に使用される(図1B)。
【0048】
さらに好ましい態様において、本発明は、ユニバーサル・プライマーを提供する。本明細書中において使用されるように、ユニバーサル・プライマーは、標的DNA内の高保存領域と相補的である標準化プライマーであり、例えば、環状テンプレート分子内に高保存領域を有する、閉環状核酸であって、例えば、プラスミドのための複製起点配列をいう。本発明のユニバーサル・プライマーは、当該エピソーム遺伝的要素が共通標的配列、例えば、共通複製起点配列を有している限り、プラスミド、コスミド、及び他の高分子量染色体外核酸分子の増幅に有用であることに留意すべきである。核酸分子の増幅のためのユニバーサル・プライマー標的の例証となる実例は、以下の:大多数のベクターの内に見られるプロモーター配列、大多数のベクターの内に見られる薬剤耐性遺伝子、例えば、アンピシリン遺伝子(Amp)、コスミド及びラムダファージ内に見られるコス部位、細菌の複製起点、及びミトコンドリアDNA内に見られるいくつかのミトコンドリア遺伝子の高保存領域を含む。表1は、本発明に関するユニバーサル・プライマー設計の実例となる部位を提供する。
【0049】
表1:ユニバーサル・プライマー設計のための標的ハイブリダイゼーション部位
【表1】
【0050】
以下の説明は、細菌の複製起点内の標的テンプレートのために設計された実例となるユニバーサル・プライマーに焦点を合わせる。本態様におけるユニバーサル・プライマーは、約10〜75連続塩基対、及び好ましくは約15〜約40連続塩基対、及び最も好ましくは約20〜30連続塩基対であって、着目のプラスミドの複製起点配列の一部と相補的である当該塩基対を有する、いずれかのプライマーを含む。
【0051】
これらの同一プライマーの長さは、他のユニバーサル・プライマー、すなわち非複製起点、の設計において、一般的に有用であることに留意すべきである。驚くべきことに、プラスミドの当該複製起点は、ユニバーサル・プライマー設計のための優れた標的である。例えば、約668塩基対ColE1複製起点は、一般に使用される全プラスミドの90%超で存在する。ユニバーサル・プライマーは、当該668bp領域(表2、配列番号:1)内のどこにでもハイブリダイズするように設計され得る。当該ColE1複製起点を有するプラスミドに加えて、他の重要なプラスドファミリー又はグループは、“ファージ型”プラスミド、例えば、ラムダ、p13.p10であって、保存された複製起点もまた有するものを含む。
【0052】
表2:ColE1複製起点(センス鎖)(配列番号:第1)
【表2】
【0053】
好ましくは、ある態様において、当該フォワード及びリバース・プライマーは、複製起点内の反対鎖上で、テール−トゥ−テール法(すなわち、5’末端と5’末端)において、ハイブリダイズするために設計される(複製起点の配列として上記表1を参照のこと。)。好ましい態様において、当該プライマー対は、隣接塩基対であって、すなわち、当該テンプレート・プラスミドDNAの、当該センス鎖とハイブリダイズするときのフォワード・プライマーの5’末端と、アンチセンス鎖とハイブリダイズするときのリバース・プライマーの5’末端との間に入る塩基対が0塩基対である当該隣接塩基対、とハイブリダイズするために設定される。他の態様において、当該2つのプライマー・テール(尾)は、当該dsDNAの向こう側で、プライマー由来の塩基対の内のいくつでも重複させることができる。重複構造は、以下に詳細に記載するように、本発明の増幅されたニ重鎖アンプリコン内に優れた制限エンドヌクレアーゼ標的を与え、あるいは、プライマー伸長は、制限部位又は他の有用な配列を当該結果物アンプリコン内に導入するために使用され得る。例えば、伸長されたプライマー・テールは、まれな制限酵素の制限部位を含みことができ、それ故、当該アンプリコン内に当該部位を組み入れることができる。
【0054】
さらに詳細に、最適のユニバーサル・プライマー対の設計は、高保存領域、例えば標的プラスミドの複製起点、内の、例えばColE1ベースのプラスミドの668塩基対複製起点内の、選択プライマー配列に基づく。プラスミドの典型的プライマー設計は、約20bp〜約150bpの二本鎖テンプレート領域内のテール−トゥ−テール設計(すなわち、隣接5’末端)を有する。当該プライマー対の各プライマーは、当該二本鎖プラスミド分子の反対鎖とアニールし、及び一般的に15〜40bpの長さである。より長いプライマー分子が、本発明の態様において使用され得るが、しかし、これらの分子は40超塩基のプライマー対の限界値であり、安定性及び特異性に関する最小限の又は有害な影響に因ることに留意すべきである。
【0055】
当該複製起点内のユニバーサル・プライマーを設計するための初期パラメーターは、例えば、当該複製起点内の唯一の保存領域を捜すことを一般的に含む。提案されるプライマーは、プライマー設計プログラム、例えばベクターNTI(InforMAX,Golden,CO)を使用して、適度なTm、パリンドローム配列、−ΔGなどについて分析される。二次構造は、補助的なプログラム、例えばVisual OMP(DNA Software,Ann Arbor,Michigan)を使用して共同分析される。次いで、適度なTm、より低い二次構造、多量体形成のより低い可能性などを有するプライマー設計は、標的プラスミドに関するさらなる試験により選択される。
【0056】
適切な設計を有するプライマー対は、相補的プラスミド鎖に付き、そして伸長する能力のために、実験的に使用される。プラスミドプライマー対は、本発明のバッファリング条件下(すなわち、より低い塩濃度、より低い全体的イオン強度、及び核酸の二本鎖領域を安定させるための試薬の含有)で、当該高保存領域内、例えば複製起点と、アニールするために設計される。さらに、プライマー対は、当該ポリメラーゼがアニールしたプライマーから増幅するのと同温度で、当該テンプレート配列上で安定してアニールするために設計され得る。これは、2ステップ増幅サイクルを許容し、3ステップ増幅サイクルとは対照的であり、そして、もはや異なるプライマー・アニーリング温度を要求されない。この事は、より一層の特異性にとって特に重要であり、その場合、本発明のプライマーは、より高温でアニールし、そしてその結果、より低温の非特異的結合をさける。さらに、2ステップ増幅サイクルは、かかる時間が相当に短く、そしてより少ない非特異的生成物形成の結果となる。
【0057】
他の態様において、フォワード及びリバース・プライマーは、共通領域内の反対鎖上のそれらの5’末端で重複するようにさらに設計され、そして特に、付着末端を生成するために、アンプリコン上に制限消化部位を作り出すように、適度な酵素活性の下、5’末端で十分重複するように設計される。例えば、4塩基対の重複するプライマーから増幅されるアンプリコンは、促進されるライゲーションのための4塩基対付着末端を有するであろう。実例となる例において、いくつかの制限酵素についての制限部位は、複製起点の668bp領域の間中に位置づけられる。ある例は、DrdI 10mer部位である。当該プラスミド対は、当該DrdI制限部位を表す10bpの重複を含むように設計されるであろう。この重複プライマー構造から増幅される生成物は、DrdIで処理され、当該二本鎖アンプリコンの3’及び5’末端に相反しない突出部を作るであろう(特定の酵素が、当該アンプリコンの末端で切ることができると仮定すれば。)。ある態様において、当該プライマー対は、認識配列としての2又は3の非特異的な余剰5’塩基を有するために、重複するように設計される。
【0058】
一般的に、本発明のプライマーは、当該環状核酸テンプレート上の隣接標的配列と相補的となるように設計され、それは、ハイブリダイゼーションが、当該サイクル反応のアニーリング・ステップの間に起こり得るためである。このように、相補性は、完全である必要ではない;プライマー配列とその対応する標的配列とのハイブリダイゼーションに干渉するであろう、いくつかの塩基の不一致が、あるかもしれない。しかしながら、もし非相補性の程度が激しく、プライマーとその標的とのハイブリダイゼーションが最も低い厳密条件下でさえ起こり得ないならば、当該プライマー配列は、当該標的配列と相補的でないとみなされる。このように、本明細書における“実質的相補性”は、プライマー配列が、当該選択される反応条件下、特異的にハイブリダイズするために、その標的配列の対応領域に対して十分に相補的である状態を記載することを意図している。
【0059】
以下の記載は、複製起点プライマー対の適した設計のために必要なパラメーターのいくつかを説明する。ハイブリダイゼーションは、一本鎖の核酸鎖にアニールするプライマー能力に一般的に依存し、ここで当該一本鎖の核酸鎖は、当該ハイブリダイズした付加化合物の融解温度付近の環境において、実質的に相補的な配列を有する。他の要因が一定に保たれると仮定して、DNA配列(プライマー及びテンプレート)の対同士間の相補性のより高い度合い、ハイブリダイゼーションのための潜在性を維持する間に使用され得るより高い相対温度に、一般的に留意すべきである。
【0060】
一般的に、プライマーの長さ及びGC含量は、ハイブリダイゼーション複合体の融点温度(Tm)を決定し、そしてそれ故、プライマー及びテンプレートの特異的ハイブリダイゼーションを得るために必要なハイブリダイゼーション条件を明らかにすることに貢献する。これらの要因は、本分野におけるいわゆる当業者においてよく知られており、そして実験的に試験され得る。当該Tmは、(定義されるイオン強度及びpH下において)、ハイブリダイゼーション複合体の50%がプライマーとテンプレートとの間に存在する温度である。核酸のハイブリダイゼーションは、いわゆる当業者によく知られており、広範囲の説明は、Sambrook et al.,supra内に見出される。厳密条件は、定義されるイオン強度及びpHで、特異的配列のためのTmで又はTm超で、一般的に定義される。典型的に、G−C塩基対は、適度な含有量で維持されるべきである。例えば、おおよそ50%のG+C含量を伴う20塩基対プライマーは、約56℃〜62℃のTm値を有する。Tmについてのさらに洗練されたモデルが有用であり、そしてそれらの利用は、もしG−C組み合わせ相互作用、隣接ヌクレオチド、溶媒効果などを考慮する必要がある際に、より適するかもしれない。
【0061】
一般的に、標的テンプレート分子とのユニバーサル・プライマーの特異性は、プライマーの長さ及び増幅反応のアニーリング温度により制御される。当該環状核酸に結合するプライマーは、一般的に、天然に生ずるヌクレオチドからなるだろうが、しかし、ある場合において1又は複数のヌクレオチドを含み得、ここで、当該ヌクレオチドは、天然にはない特徴、例えば、改良された糖ユニット又は糖ユニットの欠如;リン酸塩の1又は複数の酸素原子が硫黄、炭素、及び/又は窒素原子などで置換される、改良された糖−リン酸塩鎖;改良された塩基又は塩基ユニットの欠如;又は、合成的な有利性、当該試験条件下の安定性、酵素分解に対する耐性などを提供し得る他の改良などを有する。ある態様において、Tm値に重大な影響を与えない改良されたヌクレオチドは、当該プライマーに含まれる。他の態様において、改良されたヌクレオチドは、対応する特異性の維持を伴うより短いプライマーの長さの設計を考慮すれば、Tmに影響を及ぼす。
【0062】
本発明のユニバーサル・プライマー・ポリヌクレオチド分子は、酵素分解に耐性を有する化学的に改良された塩基もまた含み得る。例えば、本発明のユニバーサル・プライマーは、エンドヌクレアーゼ活性経由の分解耐性のための改良を組み入れるよう設計され得る。ある態様において、ユニバーサル・プライマーは、ポリメラーゼの校正活性による分解に耐性を有するように改良され得、その結果、当該ユニバーサル・プライマーが、当該ポリメラーゼ酵素と同じ溶液内に保持されることを可能とし、すなわち、当該ユニバーサル・プライマーは、多くの校正DNAポリメラーゼに関する3’−5’エキソヌクレアーゼ校正活性による分解に耐性を有するように改良され得る(Vent,Pfu,Klenow fragment and T7DNA polymerase)。
【0063】
プライマー改良の実例となる例は、以下の:1又は複数の化学的に改良された塩基、例えば、n−1位置でLNAを有するように設計されたプライマーを組み入れることを含む(Examples and Di Giusto et al.,(2004)Nucletic Acid Research,32(3):e32を参照のこと。)。追加の実例となる改良を表3に示す。表3に示される態様の内のいくつかにおいて、当該プライマーは、校正ヌクレアーゼ活性、当該プライマーを非伸長可能にさせること、を阻害するように可逆的に改良される。本発明のユニバーサル・プライマーが適切な逆転技術を経由して本発明のインビトロ増幅反応における使用のために準備される際、当該改良は除去される(表3を参照のこと。)。
【0064】
表3:校正活性存在下における、安定性増大のためのプライマー改良
【表3】
【0065】
プライマーの結合において使用される溶液は、さらに詳細に論じられるであろう、しかしながら、溶液は、当該染色体外DNAに対する当該プライマー、例えばプラスミドDNAの複製起点に対するプライマー、のアニーリングのために本発明において提供される。
【0066】
上記で論じたパラメーターを使用する、標的プラスミド・ファミリーの複製起点内のプライマー設計は、適度な長さのオリゴヌクレオチドになる。これらのオリゴヌクレオチド組成物は、化学的に改良された核酸の使用を通じ又は非改良核酸分子の使用を単純に通じ得る。どちらの場合においても、本発明において製造されたオリゴヌクレオチドは、当該標的複製起点を有するプラスミドと共に、使用のために保存され得る。このように、当該プライマー対は、同じ複製起点を共有するプラスミドの標的クラスに対して普遍的である。この同様の独創的な論理的根拠は、多数のテンプレート標的に対する他のユニバーサル・プライマー対の設計のために使用され得る。
【0067】
上記議論のように、自然には普遍的ではないけれども、プライマーは、複製起点を有しない標的テンプレート分子に対しての使用のために設計され得ることも想像し得る。これらのプライマーは、本分野において知られるような標的テンプレートの主要な標的領域に対して設計され得るであろう。設計についての、同様の一般的パラメーターは、上記議論の通り適用されるであろう。
【0068】
ポリメラーゼ反応バッファー
本発明の態様は、培養細胞中の閉環状核酸分子、すなわちプラスミドDNA、コスミドDNAなどの増幅を含む、例えばエピソーム遺伝的要素といった、インビトロ増幅を補助する組成物を含む。好ましい態様において、当該核酸分子は、典型的に約1kb〜40kb、さらに典型的に約2kb〜25kbであり、そして約2kb〜20kbであり得る。本発明において使用される増幅反応バッファーは、慣習的な長距離PCR反応バッファーと比較して、より低いイオン強度を一般的に有し、pH8.0〜9.0、及び好ましくはpH8.8〜8.9の範囲を典型的に有する。加えて、本発明の組成物は、典型的に、共溶媒の低濃度を唯一要求する、すなわち、長距離PCRにおいて慣習的に使用されるよりも相当低い共溶媒の濃度であって、例えば、DMSOのより低い濃度であり、当該反応バッファーの低イオン強度に因る。当該低共溶媒の要求は、相性の良い酵素の安定性(当該バッファーの低イオン強度に因る。)を許容するが、しかし、負の共溶媒問題、例えば当該溶媒の存在下におけるより低い酵素忠実度を避ける。さらに、本発明の組成物は、Mg2+バッファリング特性を、Mg2+イオン濃度の広範囲において最適のポリメラーゼ活性を考慮しつつ、一般的に提供する。
【0069】
本発明の態様は、10〜150μM弱有機塩基、10〜50μM弱有機酸、1〜4mM酢酸マグネシウム、2〜20mM(NH)2SO4、50〜200μM dNTPs、及び0.1〜5ユニット又はそれ以上の好熱性ポリメラーゼを含む溶液をも提供する。好ましい態様は、1又は複数のポリメラーゼ・エンハンサーであって、例えば、トレハロース、ソルビトール、DMSO又はソルビトール、トレハロース及び/又はDMSOの混合物を、特にもし当該増幅標的がGC豊富であるなら、含む。DMSO及びその他の似たような溶媒は、全て含む際、最小濃度、典型的には1%未満(慣習的バッファーは、約5%共溶媒を含む。)で保持されることに留意すべきである。上記に簡単に議論されるように、pH8.9〜9.0のバッファーに対する弱有機酸及び弱有機塩基の使用は、当該溶液イオン強度を増大する傾向を排除し、そして共溶媒のより高い濃度の必要性を排除し、その結果、当該ポリメラーゼの忠実度を最大化することにも留意すべきである。加えて、特に弱有機酸の利用は、大抵の増幅反応のための1.5〜8mMの範囲の好ましいMg++濃度内のバッファリングMg++濃度で、非常に効果的であることが判明し得る。特に、本明細書中で議論される当該濃度範囲内のビシンの使用は、バッファリングMg++濃度(ビシンは、Mg++キレート剤である。)で、優れていると判明する。
【0070】
本発明の好ましいバッファー態様は、pH約8〜9、好ましくは約8.80〜8.90、及び最も好ましくは約8.85を提供する量で混合される、弱有機塩基及び弱有機酸の混合物を典型的に含む。
【0071】
本発明の他の好ましい態様において、当該バッファーは、30mMビシン、200mMトリス、4〜10mM(最適なのは、6mM)硫酸アンモニウム、2.5mMマグネシウムイオン、pH8.85〜8.90の組み合わせを含む。
【0072】
ある態様において、本発明における温度サイクル条件は、3ステップのサイクル過程、変性期、アニーリング期、及び伸長期を含む。当該温度サイクル条件は、それぞれの増幅反応のスタート時に、最初の変性ステップ又は酵素活性化ステップを含み得る、例えば、ホット・スタートPCRである(米国特許第6,667,165号、その内容全てを本願明細書中に援用する。)。サイクル条件の温度範囲は、テンプレート核酸の長さ、テンプレートのGC含量、プライマーの長さと配列、及び共溶媒に依存する。ある態様において、当該最初の変性条件は約5分間、その後約90〜95℃で10秒間〜1分間の変性ステップ、その後約45〜70℃で20秒間のアニーリング・ステップ、その後約65〜75℃で1分間〜10分間の十分に続く伸長ステップである。当該サイクルは、20〜40回繰り返され得る。
【0073】
本発明の態様は、2ステップ温度サイクル過程を含む。当該過程は、約90〜95℃で10秒間〜1分間続く変性ステップ、その後約60〜72℃で約1〜10分間続くアニーリング及び伸長ステップである。最初の変性ステップは、上記のように(約5分間)含まれ得る。本態様での使用のためのプライマーは、同等の温度で、アニールし及び伸長するように設計される。当該ステップは、20〜40回繰り返され得る。
【0074】
加えて、温度サイクルは、宿主細胞から直接のプラスミドDNA(他のエピソーム遺伝的要素と同様)インビトロ増幅に対して、非常に効果的/効率的である。表4は、標的染色体外DNA、例えばエピソーム遺伝的要素、すなわち、pUC19プラスミドの、インビトロ増幅バッファーの態様の成分の典型的な組み合わせを示す。
【0075】
表4:増幅反応バッファー
【表4】
【0076】
本発明の態様は、精製されたDNAから、グリセロール・ストックから、及びコロニー採取細胞から直接の、染色体外DNA、すなわちプラスミドの増幅を支持する。ある態様において、当該コロニー採取細胞は、少量の水(5〜15μl)中に再懸濁され、又は本発明のPCRバッファー・ミックスに直接加えられる。
【0077】
表4に示される通り、多くの好熱性ポリメラーゼ酵素が、標的核酸を増幅するために使用され得る。増幅バッファーの低イオン強度及び共溶媒の最小値は、慣習的に効果の無い長距離PCR好熱性ポリメラーゼ酵素の使用を許容する。このように、大抵の好熱性ポリメラーゼI酵素は、本発明の態様において使用され得、Taq、Tth、Pfu、及びTmaを含む。好熱性ポリメラーゼIII酵素システムは、テンプレートDNAを増幅するためにも使用され得、例えば、米国特許第6,238,905号、又は同第6,555,349号に記載される酵素サブユニットを使用して実施され、そして当該米国特許の双方の内容全てを本願明細書中に援用する。本発明における使用のための、ある好熱性ポリメラーゼは、Eppendorf Triple Master Enzymeの商標名の下販売される。
【0078】
本発明の態様は、増幅された核酸分子を、閉環状核酸分子生成物の中に操作する方法を提供する。当該増幅反応が完結し、適切な量の生成物が製造された後、ライゲーション反応は、閉環状DNAの中に、一定割合の当該製造物を環状にするために実施され得る。
【0079】
ある態様において、本発明の方法を使用して増幅される分子は、当該生成物の各末端で組み込まれる相補的な“付着”末端を出すために処理され得る。増幅された核酸分子への付着末端の付加は、いくつかの知られた技術の内いずれか1つ、すなわち、制限酵素での消化又は各末端での対応するオリゴヌクレオチドを接合するライゲーションを経由して達成され得る。次いで、付着末端を有する当該増幅生成物は、標準的リガーゼ反応条件を使用する標準的ライゲーション反応を経由して、環状にさせられる。当該リガーゼは、非好熱性又は好熱性となり得る。多くの塩基が、当該“付着末端”を形成するために、本態様におけるプラスミドに付加されることに留意すべきである。典型的に、高分子量テンプレートは、プラスミド、コスミド、BAC又はYAC、好ましくはプラスミドの配列の一部又は全部を含み、それは、当該増幅/ライゲーション反応が、標準的、インビボ由来の製造及び精製手順を置き換えるためである。
【0080】
他の態様において、唯一の制限酵素部位が、標的プラスミド内に位置する。当該制限部位は、好ましくは当該標的プラスミドの配列内にたった1つ存在し、そして、プライマーは、当該制限酵素認識部位を重複するように設計される。次いで、製造されたアンプリコンは、適切な制限酵素で処理され、当該設計した制限部位内に付着末端を製造する。当該アンプリコン付着末端は、環状生成物を製造するために続いて起こるライゲーションを可能とする。
【0081】
本明細書中に説明される反応は、本分野におけるいわゆる当業者により十分に理解されるのと同様に、様々な方法において遂行され得る。当該反応の構成は、同時に、又は連続して、任意の順序で、追加され得る。加えて、当該反応は、様々な他の試薬であって、追加のバッファー、無害の蛋白質(例えば、アルブミン)、洗浄剤などを含み、最適なプライマーのアニーリング及び増幅を促進するため、及び/又は非特異的相互作用を低減するために使用され得る当該試薬を含む。試験のその特異性又有効性は別のやり方で改良された試薬、例えば、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などもまた使用され得、サンプル製造方法、及び当該標的の精製に依存する。
【0082】
ある反応ミックスにおける重合(ポリメリゼーション)及びライゲーション酵素
他の態様において、ポリメラーゼ及びリガーゼ酵素は、同一の反応バッファー内に含まれ、そして核酸は、当該同一の反応バッファー内で、増幅されライゲートされる。最適な1ステップの重合(ポリメリゼーション)/ライゲーションのための典型的な反応のpHは、約7〜9であり、好ましくは約8〜9であり、最も好ましくは約8.3〜8.6である。表5は、増幅及びライゲーション反応が実質的に同時に行われる態様の成分の典型的な組み合わせを示す。
【0083】
表5:組み合わされた増幅及びライゲーション反応バッファー
【表5】
【0084】
当該増幅及びライゲーション反応において使用するためのポリメラーゼは、上記の通りであり、及び、慣習的長距離PCRにおいて有用な、大抵のポリメラーゼの組み合わせ、例えば、ポリメラーゼI及び校正酵素を含む。polIIIからの、好ましくは好熱種からのpolIIIからの、ポリメラーゼ酵素は、本発明の方法において使用され得ることにも留意すべきである。本発明の使用のための特異的ポリメラーゼ酵素は、サーマス・サーモフィルス、サーマス・アクアチクス、及びサーモトーガ・マリティーナからのポリメラ−ゼIを含む(使用のための特定の生成物は、Eppendorf Triple Master enzyme、ABI RT−PCRキット酵素、及びRoche Expand enzymeキットを含む。)。本発明において有用なリガーゼ酵素は、好熱性リガーゼ酵素、例えば、Tscリガーゼ(Prokaria、製品番号第 Dllg 119)を含む。最終的に、上記留意の通り、各ユニバーサル・プライマーの約0.4μMを、当該核酸がプラスミド又は他の化合物である際に選択される当該テンプレートとの反応において、含む。場合により、約1mMのDTT又は他の剤が還元剤として添加される。上記のように、重合(ポリメリゼーション)のエンハンサーは、先の態様において記載した通り、似たような濃度において、当該反応物に添加されもする。
【0085】
温度サイクル・パラメーターは、典型的には、上記のようなパラメーターである。ある態様において、ライゲーション・ステップ、インキュベーション時間、及び温度が含まれ得る。ある好ましい温度サイクル態様において、当該サイクル・パラメーターは、最初の変性ステップ(93℃で2分間)、その後94℃まで加熱して94℃で20秒間を20サイクルの加熱ステップ、その後、68℃で3分30秒間の最終サイクルを含む。上記複数のサイクルは、典型的に20〜30サイクルであり、好ましくは25〜30サイクルである。
【0086】
反応効率は、ポリメラーゼ/リガーゼ反応によって変わるが、しかし、当該アンプリコンの少なくとも約5%又はそれ以上は、反応の間、ライゲートされ、共有結合した、環状DNA生成物に転換され得る。
【0087】
本発明の方法及び組成物を組込む試験
本発明の態様は、当該プライマー、増幅反応バッファー、及び直接的インビトロ増幅及びライゲーション反応を組み込む試験を提供する。本発明の方法についての標的テンプレートDNAは、染色体外DNA、細菌のコロニー、突っついたDNA、及びグリセロール・ストック内に保存された細菌のコロニーを含む。
【0088】
本発明のある態様において、標的宿主細胞から直接的な、プラスミドのインビトロ増幅が提供される。この過程は、宿主細胞内のプラスミドDNAを複製するための必要性、すなわち、ミニプレップ、マキシプレップなどと置き換えることができる。当該方法は、着目のプラスミドDNAを含む標的コロニー細胞を突っつくことを含む。当該細胞は、水中(又は同等の水媒体)に再懸濁されるか又は反応ミックスに直接提供されるかのどちらかである。本発明の増幅反応は、上記の通りである。アンプリコンは、当該ポリメラーゼ反応バッファーを使用する記載通りの続く反応において、又は組み合わせた増幅/ライゲーション反応バッファー(双方とも上記の通り)を使用する同一の反応内において、のどちらかで、環状にさせられ得る。本発明の方法及び組成物を使用して形成されるような環状生成物は、多くの周知の手順の内のいずれか1つ(例えば、Maniatisを参照のこと。)を使用して単離され得る。このように、プラスミドDNAの高い忠実度の増幅は達成され、それ故、プラスミドDNAのインビボ製造及び精製の必要性を緩和する。
【0089】
他の試験において、本発明の方法及び組成物は、特異的な染色体外DNA分子を同定するために使用され得る。重要なことには、本発明の組成物及び方法は、標的組織において見出される唯一のプラスミド配列についての増幅及びその結果としての試験のために使用され得、例えば、特異的細胞型においてのみ見出される配列を同定するための本発明の組成物及び方法の使用である。特に、標的細胞は、収集され、そして、熱処理(要求される場合)でひびを入れられ、そしていずれかにある染色体外DNAが本発明のプライマー及び組成物を使用して増幅される。増殖された染色体外DNAは、正確に等しい大きさとなり、特異的マーカーに関連する証拠となる遺伝子パターンに対して配列され又は試験される。同定方法は、スクリーニング過程を効率化でき、そして、時間及び特別な装置を要する“未知の”有機体を成長させる必要性を除去するであろう。
【0090】
本発明の他の態様において、同一の方法及び組成物は、大きな標的配列、すなわち10〜20kbの配列を、腫瘍細胞の生体検査の間に除去された細胞内で、同定するために使用され得、例えば、プライマーが、p53遺伝子の3’及び5’末端内で使用され、特異的“ホットスポット(突然変異多発領域)”の代わりにp53遺伝子の完全配列を増幅し、そして患者の全遺伝子のマップを提供するために当該遺伝子の配列決定をする。標的がん遺伝子及び腫瘍サプレッサー遺伝子は、腫瘍診断に使われるであろう。これらの態様は、ユニバーサル・プライマーの使用には依存しないが、むしろ、本発明の独創的なバッファーの高い忠実度に依存する。当該分析から得られるデータは、次いで、何故ある一定の細胞が制御を失い成長を続けるのか、について追加情報を提供するためと同様、患者の生存性の預言者として使用されるであろう。あるいは、一連の長距離、高忠実度PCRは、がんと診断されたことのない患者が、既知のがん遺伝子及び腫瘍サプレッサー遺伝子内に暗示的変異を有するのかどうか決定するために“健康な細胞”上で実施され得る。再度、この情報は、臨床設定という状況で有用となるであろう。この長距離高忠実度PCRの型は、ウイルス因子、細菌因子、マイコプラズマなどの同定に対する多くの臨床設定という状況で使用され得る。
【0091】
他の態様において、長距離PCR法及び本発明の組成物は、親由来の染色体領域内の特異的な一連の多型部位としての個人のハプロタイプを、本発明のPCRプライマーを再設計することにより測定するために使用され得る。(先の態様のように、当該独創的な特徴は、ユニバーサル・プライマー対又は染色体外DNA要素を要求しないことに留意すべきである。)もしハプロタイプであることを是正するための価値ある情報を提供するならば、本発明のPCR態様の促進される発展性及び忠実度を使用して、質の高い、高分子量の、多型部位アンプリコンの生産が得られ、そして、確実に配列決定され得る。ハプロタイプの利用は、ゲノム治療が発見され、そして臨床試験において試験されるにつれて、医学的な診断及び予後において有用となり得るであろう。
【0092】
他の態様において、本発明の方法及び組成物は、シークエンシングのための標的染色体外DNAの十分量を製造するために使用される。例えば、本発明の方法及び組成物を使用して製造されたアンプリコンは、大きな、挿入物含有のプラスミド・ベクターに関する標準的シークエンシング・プロトコールを使用して、直接的に配列決定され得る(実施例4を参照のこと。)。さらに、中間段階のゲル分析は、シークエンシングに先立ってプラスミドの存在を測定するために、アンプリコンに関して実行され得る。これらの態様は、能率化し、そして当該過程に対してより高い質を提供する。
【0093】
他の態様において、本発明の方法及び組成物は、DNAクローニングの利用を促進するために使用される。例えば、本発明のインビトロ増幅されたプラスミドは、組換えDNA手段を実行するために使用され得、そしてそれは、培養すること、細菌細胞から染色体外DNAを選択し、及び/又は精製すること無しで行われる。
【0094】
増幅及びライゲーションキット
本発明の態様は、上記核酸増幅方法の実行のためのキットを提供する。キットは、線状にした染色体外DNAの生成を導き、又は同時に起こる増幅及びライゲーションで環状染色体外DNA生成物を産生することを導き得る。
【0095】
本発明のある態様において、当該キットは、本発明の実施に必要な、1又は複数のチューブ、バッファリング組成物、増幅反応物質及び、場合により、リガーゼ反応ミックスを含む。当該キットの好ましい態様は、本発明のユニバーサル・プライマー対であって、分離チューブ中に含まれるものか、適切な上記反応ミックスと一体化するもののどちらかをさらに含む。当該プライマー対は、着目の染色体外DNA標的の特定型であって、例えば、ColE1複製起点を基本とするプラスミド、2μを基本とする複製起点、及びp10様複製起点として指定されるキット中で販売され得る。同様の手配が、酵母を基本とする、BACを基本とする又はそのようなシステムに適用され得る。本発明のキットは、場合により、当該増幅された生成物に対する付着末端の結合を必要とするオリゴヌクレオチドを、分子等級純水、収集チューブ、アガロース又は他の検出用材料、96及び他のマルチ−ウェル・プレート、ピペットチューブ、PCRサイクラー、微少遠心機、保護手袋、保護眼鏡などと同様、含む。
【0096】
あるいは、キットは、本発明の混合された増幅及びライゲーション溶液、すなわち、同一のチューブ内の当該溶液を含み得る。例えば、当該キットは、当該反応バッファーが本発明の増幅及びライゲーション反応バッファーと一致する反応バッファーとなり得る場合を除く上記成分の全てを含み得る。
【0097】
ある態様において、当該キットは、当該アンプリコンが、閉環状核酸か直鎖状核酸かどうか決定するための反応生成物のサンプルを試験する場合に使用するための制限エンドヌクレアーゼ酵素をも含む。当該キットは、エンドヌクレアーゼ酵素及び部位が各キット内で対応する場合に一体化したエンドヌクレアーゼ制限部位を有するユニバーサル・プライマーを含む態様のための、制限エンドヌクレアーゼ酵素も含み得る。
【0098】
最大の安定性のために、当該キットは、適した凍結乾燥された成分を含み得る。
【0099】
本発明を一般的に記載することについて、同様のことが、以下の実施例について参照することにより、より簡単に理解されるだろう、ここで、以下の実施例は、実例として提供し限定して意図されることは無い。
【実施例】
【0100】
実施例1:プラスミドDNAの増幅のためのユニバーサル・プライマーの同定
多くの一般に使用されるプラスミド、例えば、pGEM、pUC18、pUC19、pBR322などに対する配列アラインメント及び比較を、NCBIデータベースにおけるBLASTアラインメント・プログラムを用いて実施した。配列アラインメント・データの試験により、試験されたプラスミド配列の大半の一致位置領域が明らかとなり、当該領域は約668塩基対の長さであった。既知の配列と比較した配列一致の測定を実施し、当該配列がColE1複製起点の配列と全体的に一致することを示した(表2を参照のこと。)。さらなる調査において、この一致領域を含むプラスミドが、実際、E.Coli天然プラスミド、ColE1由来のプラスミドであることを決定した。表6にColE1複製起点を含むプラスミドの部分的な表を提供する。
【0101】
表6:ColE1複製起点含有プラスミド
【表6】
【0102】
本発明に関する、ユニバーサル・プライマーを、この高い一致領域内の部位とハイブリダイズするために設計した。最初に、プライマーを、複製起点内の塩基の配列とハイブリダイズするように設計した(表2を参照のこと。)。本発明の温度及びイオン強度条件を考慮したプライマー設計は、長距離コロニーPCRにおいて有用であることが示された。フォワード及びリバース・プライマーを、増幅反応間で全プラスミド配列が増幅されることが確実とするためにテール−トゥ−テール(各プライマーの5’末端が、反対鎖の塩基上に隣接するように位置し、そして反対方向を向く)でハイブリダイズするように設計した。
【0103】
インビトロ増幅反応のためのユニバーサル・プライマーの設計が、各標的プラスミドに対して各プライマー対を設計するためにかかる時間及びコストを低減し、及び当該プラスミドの全配列が増幅されることを確実にしたことを理由として、さらなる検討を実施してプライマー対を最適化した。ユニバーサル・プライマーを、その長さ及び当該複製起点内のハイブリダイゼーションの位置について改良した。表7に、本発明における使用のためのいくつかのプライマー対設計を示す(同一の原理は他のプラスミド・ファミリーについても該当し、例えば、ファージ、例えば、ラムダ、p13、p10など(表1を参照のこと。)に由来する、プラスミドのための複製起点配列の使用に留意すべきである。)。
【0104】
表7:本発明における使用のための実例となるプライマー対
【表7】
【0105】
標的プラスミドを増幅する能力について可能なユニバーサル・プライマーを特定し、そして試験するために、実験を計画した。上記特定されたプライマー領域を使用して、可能なプライマー対を、20、22、25又は30bpsの長さを有するよう設計し、Vector NTI及びVisual OMPプログラムの組み合わせを通じて分析に供した。プライマー対を、5’末端の隣接鎖上の(反対方向における)5’末端に対する位置が、その間に塩基を有さない又は各プライマー配列を重複するように、設計した。増幅反応を、2ステップサイクル反応(95℃及び68℃)における各プライマー対の0.3μMを使用して、本明細書に記載する独創的な長距離PCRバッファー条件、特に、30mMのビシン・トリス、6mMの(NH4)SO4、200μMのdNTPs、2.5mMのMg2+、エンハンサー(DMSO、ソルビトール、及びトレハロースの組み合わせ)、及び2.5ユニットのTriplemaster酵素をpH8.9で利用して、実施した。
【0106】
20mer(s)(配列番号:2)
5’−ctgaagccagttaccttcgg−3’
【0107】
20mer(as)(配列番号:3)
5’−cagagcgcagataccaaat−3’
【0108】
22mer(s)(配列番号:4)
5’−ctgaagccagttaccttcggaa−3’
【0109】
22mer(as)(配列番号:5)
5’−cagagcgcagataccaaatact−3’
【0110】
25mer(s)(配列番号:6)
5’−ctgaagccagttaccttcggaaaaa−3’
【0111】
25mer(as)(配列番号:7)
5’−cagagcgcagataccaaatactgtc−3’
【0112】
30mer(s)(配列番号:8)
5’−ctgaagccagttaccttcggaaaaagagtt−3’
【0113】
30mer(as)(配列番号:9)
5’−cagagcgcagataccaaatactgtccttct−3’
【0114】
図2に示すように、プライマーを設計した複製起点は、6つの実例となるプラスミドの全配列を増幅するための優れたプライマー部位を提供し、当該6つのプラスミドは、pEGFP(レーン1)、pEGFP(レーン2)、pSP64+DHFR(レーン4)、pBSK+MT4(レーン5)、pTZ18(レーン6)、及びpTZ18+IL2(レーン8)である。これは、特に、十分な増幅生成物を示す、試験したプライマー全ての全長に該当する。この実施例は、本発明の態様に関する“ユニバーサル・プライマー”の有用性を示す。
【0115】
実施例2:プラスミドDNAは、一晩の培養から直接的に増幅され得る。
いくつかの染色体外DNA要素の内の1つを含む細胞のコロニーを突っつき、水中に再懸濁し、そして直接、本発明の増幅反応バッファー及びユニバーサル・プライマーに添加した。染色体外DNA:pEGFP(レーン1及び2)、pSP64+DHFR(レーン4)、pBSK+MT4(レーン5)、pTZ18(レーン6)、及びpTZ18+IL2(レーン8)を、本分野においてよく知られるように、化学的反応性のあるE.Coli細胞の中に形質転換し、そしてアンピシリンを含むアガープレート上にストリーキングした。コロニー・ピック細胞を、以下のいずれか、増幅バッファーに直接的に添加、水5μl中に再懸濁し当該増幅反応に2.5μl添加、水10μl中に再懸濁し当該増幅反応に2.5μl添加、水15μl中に再懸濁し当該増幅反応に2.5μl添加又は、水10μl中に再懸濁を行い、95℃で5分間加熱し、そして当該増幅反応に2.5μl添加した。
【0116】
増幅反応を、30mMのビシン・トリス、6mMの(NH4)SO4、200μMのdNTPs、2.5mMのMg2+、エンハンサー(DMSO、ソルビトール、及びトレハロースの組み合わせ)、2.5ユニットのTriplemaster酵素をpH8.9で有する25μl中で実施した。増幅サイクル条件は:(1)93℃で2分間、(2)94℃で20秒間(3)68℃で3分間、及び(4)1分30秒であり、24サイクル繰り返した。
【0117】
図3に示すように、再懸濁した突っついたコロニーDNAは、本発明の増幅反応バッファー、プライマー、及び条件のための優れたテンプレートを提供した。5μl中の再懸濁されたコロニーは、多量の増幅された染色体外DNAを提供した。増幅反応における使用の前に細胞を加熱することは、もしあれば、小さな改良を提供した。加えて、多数のエピソーム遺伝的要素を、本発明のユニバーサル・プライマーを使用して、及び当該定義された2ステップPCRサイクル条件を大抵の3ステップPCRサイクル条件と比較しながら使用して、増幅した。
【0118】
この実施例は、コロニー・ピック細胞から直接標的プラスミドを増幅することついての本発明の有用性を示す。いずれの場合にも、多量のプラスミドDNAを、本発明の改良PCR反応バッファーの一態様を使用して、かなり短時間で、増幅した。さらに、本発明のユニバーサル・プライマーは、2サイクルPCR反応を可能にするための特異性及び敏感性を提供し、それ故、標的テンプレート上でPCRを実施するために必要な時間を短縮することを提供する。
【0119】
実施例3:プラスミドDNAは、精製されたプラスミドDNA、グリセロール・ストック又はコロニー・ピック細胞から直接的に増幅される。
精製されたプラスミドDNA(Eppendorf Maxiprepを使用して精製、製品♯955150066)、グリセロール・ストック又は培養された細胞のいずれかからの標的染色体外DNAを、本発明の方法及び組成物を使用して増幅した。増幅バッファー及びプライマー(UniOri30、表7)は、実施例1及び2において記載された通りであり、そしてEppendorf Triple Masterポリメラーゼの1.25ユニットを含む。当該反応において使用されたテンプレートDNAは、精製した染色体外DNAの2.5ng、グリセロール・ストックの2.5μl、15μlの水に再懸濁されたアガープレートから突っついたコロニー2.5μlのいずれかである。4つの異なるユニバーサル・プライマー濃度を、当該増幅反応内(0.3μM、0.15μM、0.075μM、及び0.6μM)での各要素源(精製、グリセロール、及び培養)について使用したことにも留意すべきである。各源からのエピソーム遺伝的要素は、以下:レーン1−pEGFP、レーン2−pTTQ、レーン4−pSP64+DHFR、レーン5−pBSK+MT4、レーン6−pTZ18、及びレーン8pTZ18+IL2を含む。各結果増幅反応からの生成物又はアンプリコンを1%エチジウム・ブロマイドで染色したアガロースゲル上に、各反応物の1/3を流すことにより、視覚化した。
【0120】
図4に示す通り、本発明のバッファー及びプライマーは、異なるColE1ベースのプラスミドについての、及びいくつかの異なる源(精製、グリセロール・ストック、及び突っついた培養)からの、長距離PCRの補助における有効性を示す。加えて、いくつかの異なるユニバーサル・プライマー濃度は、全長エピソーム遺伝的要素の全長の優れた増幅を支持した。
【0121】
当該実施例は、グリセロール・ストック又は水中に再懸濁した突っついた培養細胞から直接的に標的DNAを増幅する有用性を示す。このデータは、各プライマー、多くのエピソーム遺伝的要素から増幅反応を準備することもまた示す。
【0122】
実施例4:増幅されたエピソーム遺伝的要素DNAは、優れたシークエンシング特性を有する。
一連の形質転換された化学的反応性のあるE.Coli宿主細胞を、標的染色体外DNAの直接的コロニー増殖のために採取した。標的要素を、本発明の方法及び組成物を使用してコロニー・ピック細胞から直接増幅したか、Qiagenミニプレップ・キットを使用して最初に精製したかのいずれかにより増幅した。増幅された標的DNAを、次に、ABI Big−Dye Chemisyry及び関連装置を使用してシークエンシングし、そしてPHRED標準を使用して入手した。培養及び精製手段を経由して準備されたDNAを、メーカー推薦ステップ(Quiagenコントロール)を使用して準備したことに留意すべきである。
【0123】
増幅反応条件を、30mMのビシン、200mMのトリス、6mMの硫酸アンモニウム、2.5mMのマグネシウムイオン、100μMのdNTPs、0.3μMのUniOri30 ユニバーサル・プライマー対、エンハンサー・セット(トレハロース、ソルビトール、DMSO)、2.5ユニットのTriple Master酵素をpH8.85〜8.9で実施した。増幅されたDNAの量を、1/4反応でM13フォワード・シークエンシング・プライマーを使用して、シークエンシングした。
【0124】
図5及び表8に示す通り、実施例となるプラスミド・テンプレート及びシークエンシング結果物の視覚化は、本発明の方法及び組成物が、高品質の優れた増殖産生を提供することを示す。このデータは、本発明のユニバーサル・プライマーを使用して、インビトロ増殖されたDNAを、追加の増幅後精製ステップの必要性のないシークエンシング反応において直接的に使用し得ることもまた示す。しかしながら、テンプレート量が低減するにつれて、シークエンシングの質が増大することに留意すべきであり、余分なdNTPs及びユニバーサル・プライマーがシークエンシング反応に緩衝しそうであることを示唆している。総合すると、本発明は、高い忠実度で、pUC19、pGEM、及びpTZ+IL2を増幅するために使用し得るユニバーサル・プライマーを提供する。
【0125】
表8:シークエンシング分析
【表8】
【表9】
【0126】
図5及び表8からのデータは、強い増幅産生が、当該エピソーム遺伝的要素をシークエンシングするための過剰なシークエンシング・テンプレートを提供することを示し、それは、大量の出発材料を、Qiagenキット(余分なdNTPs及びプライマーを除去するため)を使用して精製するか、他の精製ステップかのいずれかに供すべきであり、又は余分なdNTPs及びプライマーを希釈してなくすために希釈して減らすべきである。当該増幅サンプルの希釈が、シークエンシングのために十分な品質のプラスミドであるか確かめるために、及び増殖反応が全長エピソーム遺伝的要素を提供するか確かめるために、一連の試験を、同一の増幅バッファー及びユニバーサル・プライマーのセットを使用して実施したが、しかし、当該増幅反応内のプライマー対の量及びシークエンシング量を、改良した。
【0127】
表9において示されるように、当該増幅反応における、より小さいプライマー・レベル、及びコロニー・ピック細胞からの増幅生成物のより少ない量は、高品質シークエンシングを支持し、及び本発明の方法及び組成物が、全長エピソーム遺伝的要素の増幅を提供することを見出すことを再度支持した。pGEMの配列決定された部分を標準pGEM配列と比較した際、本方法及び組成物の忠実度は、優れていたことに留意すべきである(98.5%正確度が、ABIシークエンシングガイドラインにより決定される通り優良品質と考えられていることに留意すべきである。)。
【0128】
表9:様々なプライマー濃度及び希釈量
【表10】
【表11】
【0129】
当該先の結果は、慣習的培養及び精製技術による高品質のエピソームの又は染色体外のDNA製造のための代替物又は関連物としての本発明の有用性を示す。PHRED及び精度スコアの双方は、本発明の方法及び組成物が、全長エピソーム遺伝的要素DNAを直接的に増幅するために使用され得ることを示す。配列決定されたpGEMの一部は、当該増幅されたDNAが、高品質でミニプレップ製造されたDNAと等価であることを示した。
【0130】
実施例5:インビトロ増幅された閉環状プラスミドDNA
反応バッファーを、コロニーから直接的なプラスミドDNAのインビトロ増幅のために、及びさらに、同一反応内で、当該増幅したプラスミドDNAをライゲーシングし、閉環DNAに戻すために最適化した。当該増幅及びライゲーション反応は同一バッファー内で生じ、そしてそれ故、1ステップと考慮される。
【0131】
増幅バッファーは、以下の7.5mMの酢酸マグネシウム、10mMの塩化アンモニウム、1mMのDTT、1mMのβ−NAD、500μMのdNTPs、0.4μMのセンス及びアンチセンス・ユニバーサル・プライマー(表5を参照のこと。)、2ユニットのTriple Master Enzymeミックス、及び(+リガーゼ反応のために)約0.019μgのTsc DNA リガーゼ(Prokariya)を有し、“1×”バッファーとして混合した。再懸濁されたコロニーを増幅バッファーと混合し(+又は−リガーゼ)、直鎖プラスミドDNAを増幅するか、又は増幅しそして当該プラスミドDNAを閉環状DNAにライゲートするかのいずれかを行う。温度サイクル条件は、最初の変性ステップ、93℃で20秒間、93℃で20秒間を28サイクル、58℃で20秒間、そして68℃で2分間のステップを含んだ。
【0132】
図6A及び6Bに示すように、インビトロ増幅されたプラスミドDNAの目立つ量が、ライゲートされ環状種となっている。図6Aは、ポリメラーゼ及びリガーゼを同一の1ステップ反応に添加したとき、ライゲートされた生成物を得たこと、及びライゲートされた種の増量を当該反応内のポリメラーゼ増量で形成したことを示す。図6Bは、ライゲートされた種の僅かな増大のみが、増量で生じたことを示す。この実施例は、1コロニーを突っつくことから直接的な1ステップの増幅/ライゲーション反応を提供する際の、本発明の有用性を示す。
【0133】
実施例6:1ステップ増幅/ライゲーション反応は、環状生成物を製造する。
以下の実施例を、ライゲートされたプラスミド環状型を1ステップ増殖/ライゲーション反応において製造したこと確認するために、実施した。化学的反応性のあるE.Coli細胞を、単一部位で1.68Kbのラムダ挿入物を有するpUC19プラスミドで、形質転換した。コロニーを突っつき、そして本発明の1ステップ増殖/ライゲーション反応を実施した、簡潔には:各2μlのコロニー・ピックを、7.5mMの酢酸マグネシウム、10mMの塩化アンモニウム、1mMのDTT、1mMのβ−NAD、500μMのdNTPs、0.4μMのリバース及びフォアード・ユニバーサル・プライマー(表5を参照のこと。)、及び2ユニットのTriple Master Enzymeミックス(Eppendorf、製品番号#954140229号)を有する50μl反応量の中に入れた。リガーゼを含むサンプルは、0.019μgTsc DNA リガーゼ(Prokariya)もまた含んだ。温度サイクル条件は、最初の変性ステップ、93℃で20秒間、93℃で20秒間を28サイクルのステップ、58℃で20秒間、そして68℃で2分間のステップを含んだ。
【0134】
図7に示すように、上記反応条件は、結果として、閉環状生成物を製造した。このことは、ポリメラーゼ/リガーゼ促進反応バッファーについての本発明の有用性を再度、示した。
【0135】
実施例7:本発明のバッファーMg2+の増幅バッファー
増幅バッファーを、上記実施例2及び3と同様に、Mg2+の様々な濃度条件下で、本発明の組成物及び方法がMg2+バッファリング能を提供するように、実施した。上記のように、いくつかの異なる染色体外DNA要素を、表5に記載の増幅反応混合物におけるUniOri30プライマー対を使用して、増幅した。サイクル条件は、上記実施例2におけるものであり、2ステップPCRプログラムを使用した。
【0136】
Mg2+濃度を2.5mMから6mMに増大し、本発明のビシン含有バッファーが、より高いMg2+濃度に対して抵抗性を有することを示した(ビシンはMg2+キレート剤として知られる)。
【0137】
図8に示すように、本発明の増幅バッファーは、高レベルのポリメラーゼ活性を支持する一方、増幅反応の間、広範囲のMg2+イオン濃度を支持する。この結果は、各異なる染色体外DNA要素について見出される。
【0138】
実施例8:UniOri30プライマー対は2ステップPCRを支持する。
一連の増幅反応を、pBSK+NT4プラスミドに関して、UniOri20、UniOri22、UniOri25又はUniOri30プライマー対のいずれかを使用して実施し、共通のアニーリング及び伸長条件が得られるのかどうかを確定した。反応バッファー条件を、上記実施例において記載された通りにし、テンプレート1ng及び0.3μM又は各々のプライマー対を使用した。2ユニットのTriple Master ポリメラーゼを、各反応において使用した。サイクル条件は、93℃で2分間、94℃で20秒間、及び55℃〜72℃にわたるアニーリングのための様々な温度勾配を含む。伸長ステップを、5分30秒間実施した。図9Aに示すように、UniOri30のみが65℃超のアニーリングを支持し、その温度は、大抵の好熱性ポリメラーゼ酵素が、準備されたテンプレートの伸長をやめることに要する最小温度である。重要な事に、UniOri30は、実際には、大抵の酵素ポリメラーゼ活性化温度、すなわち、68〜72℃でさえ、テンプレートDNAにアニールした。
【0139】
上記データから推測するに、2ステップPCRサイクル条件は、Triple Master ポリメラーゼ及びUniOri30を、68℃のアニーリング及び伸長温度で使用すること、であっても可能であろう。図9Bに示すように、いくつかの標的プラスミドを、UniOri30プライマー対、そして93℃で2分間、94℃で20秒間、及び68℃で6分間のサイクルを使用して、効果的に増加した。各反応を、25サイクル(左側)又は30サイクル(右側)のいずれかで実施した。上記実施例は、2サイクルPCRを使用する、エピソーム遺伝的要素を増幅することについての、本発明の有用性を示す。
【0140】
実施例9:コロニー・ピック細胞から増幅されたDNAは、主にエンドトキシンなしである。
コロニー・ピック細胞からの標的染色体外DNAを、本発明の方法及び組成物を使用して増幅した。例えば、増幅反応を、実施例2に実質的に示される通り、実施した。当該増幅生成物中のエンドトキシン・レベルを、本分野において知られる試験により測定し、そして、Qiagen ET−free Midiprepにより単離されたDNA量の実質的に等量で存在するエンドトキシン・レベルと比較した。このQuiagenキットは、少なくともある程度、最低値でエンドトキシン・レベルを保つ能力として、販売され/設計されていることに留意すべきである。
【0141】
図10に記載のデータが示すように、本発明の方法及び組成物を使用して、細胞から直接増幅されたDNAは、Qiagen ET−free方法及び組成物を使用して単離されたDNA内に見出されるレベルと比較して、相当低いエンドトキシン・レベルを示す。さらに具体的に、図10に示される最初の2つのバー、Q B1及びQ GrをQuiagenミニプレップ、FP B1、FP Gr及びFP プールを米国特許出願公開第10/387,646(‘646)号に記載の通り製造した。EFと標識されたバーは、エンドトキシンなしのQiagen midiprepで、そして続く4つのバーは、‘646出願において実施されたようにサンプルからエンドトキシンを除去しようと試みて使用された回転装置で実施された(C18[50%PerfectPure Tip様組成物];400C[50%Tosoh Butyl 400C];C4[Macherey−Nagel C4残基];及び2122[100%gur2122焼結粒子])。残りの3つのバーは、実施例2における方法及び組成物を使用して製造されるようなサンプルである。4A−Cは、増幅DNAを示すことに失敗したものであることに留意すべきである。
【0142】
この実施例におけるデータは、トランスフェクション及びその他の手順の間の細胞培養に影響を与えるエンドトキシンを重要な理由として、主にエンドトキシンなしの環境を維持しながら、コロニー・ピック細胞から標的DNAを直接増幅することの有用性を実証する。このように、本発明の方法及び組成物を使用して増幅した標的DNAは、優れたトランスフェクション、形質転換、及び他の手順のために使用する増幅生成物を提供する。
【0143】
実施例10:改良ユニバーサル・プライマーは、ポリメラーゼ校正活性に対して抵抗性がある。
本発明の組成物を、LNA改良ユニバーサル・プライマーを使用して、標的プラスミドDNAの増幅のために使用した。ユニバーサル・プライマー対を、当該プラスミドの複製起点内にハイブリダイズするように設計し、そしてさらに、当該対の各オリゴヌクレオチドを、n−1位置でロック核酸を含むように設計した。LNA改良プライマーは、校正DNAポリメラーゼ酵素に関連するエキソヌクレアーゼ活性に対する重大な保護を提供することが先に示されている(Di Giusto et al.,supraを参照のこと)。非改良ユニバーサル・プライマー対を、当該改良ユニバーサル・プライマー対と比較するために製造した。
【0144】
インビトロ増幅反応を、表10に示す通りの反応条件を使用して、上記のように実施した。
【0145】
表10:LNA改良ユニバーサル・プライマー対
【表12】
【0146】
図11に示すデータは、LNA改良プライマー(表10(a)を参照のこと)が、伸長可能であり、そしてプライマー分解に対する実質的保護を提供することを実証する(プラスミドの量、識別及び宿主細胞も表10aに記載されることに留意すべきである。)。
【0147】
表10(a):プラスミドサンプル及びLNAプライマーについてのプライマー改良の識別
【表13】
【表14】
【0148】
実施例11:標的プラスミドDNAの増幅及びシークエンシング
一連の異なる宿主細胞であって、異なるプラスミドで形質転換された各細胞を、直接コロニーを突っつくことにより採取した。コロニー・ピック培養物を水中に1対10で希釈し、そしてプラスミドDNAを、本発明の方法及び組成物を使用して、増殖させそして配列決定した(宿主細胞/プラスミド型の組み合わせの概観について表11を、増幅反応条件について表12を、シークエンシング・データについて表13を参照のこと。)。
【0149】
増幅された標的DNAを、ABI Big−Dye Chemistry関連装置を使用して配列決定し、PHRED標準を使用して記録した。ABI3700及びABI3100シークエンシング機器を、この実施例に関連して、両方使用したことに留意すべきである。
【0150】
この実施例からのデータは、その後のシークエンシングのために、コロニー・ピックから直接的に標的プラスミドDNAを増幅することにより得た、優れた結果を示す。本発明の態様を、本発明の増幅反応を使用して、当該宿主細胞から直接的に標的細胞内にかくまわれた、プラスミド又は他の染色体外DNAの標的部分を直接配列決定するために使用し得る。
【0151】
表11:プラスミド識別パネル
【表15】
【表16】
【0152】
上記各プラスミド生成物(表11を参照のこと。)を、本実施例の記載通りの方法及び組成物を使用して試験したけれども、プラスミド、pFastBac、pQE Xa、pCR−TOPC、及びpGEXを使用して得たデータのみを、以下の表13に示した。インビトロ増幅反応条件を表12に簡単に取りまとめていることに留意すべきである。
【0153】
表12:プラスミド増幅のための反応混合物
【表17】
【0154】
表13に示されるように、多数の異なる宿主細胞によりかくまわれたプラスミドDNAは、本発明のユニバーサル・プライマーを使用して増幅され、そして、本発明の態様に関連して、正確に配列決定され得る。本発明のユニバーサル・プライマーを使用する宿主細胞又はプラスミドの同定にかかわらず、同一の増幅バッファーを使用することにも留意すべきである。
【0155】
表13:シークエンシング分析
【表18】
【表19】
【0156】
本実施例は、本発明のユニバーサル・プライマー及び増幅バッファーが、一連の異なる宿主細胞/プラスミド型の組み合わせに関して、増幅されそして配列決定される準備ができているプラスミドDNAを提供するために使用され得ることを例証する。シークエンシング反応は、増幅されたプラスミドDNAに関して直接的に実施され得、ここで、DNA(450超のPHREDスコアは、適したシークエンシング精度を示す)の高品質は、予測され、そして本実施例において示される。
【0157】
本発明は、特別な実施例を参考として記載する。これらの実施例は、いかなる場合においても本発明を限定するものではない。本明細書における開示目的は、本発明の範囲内に含まれる、本発明に対する様々な変化及び改良が行われることと理解する。多くの他の変化は、いわゆる当業者により容易に提示させ得るであろうが、ここに開示し及び添付の請求項に定義されるような本発明の精神で包含し得る。
【0158】
本明細書は、特許、特許出願、及び刊行物からの多数の引用を含み、それらの内容全てを本願明細書中に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1−1】図1A−Cは、いくつかのプライマーの向きの設計を説明するフローダイアグラム:本発明に関する(1A)テール−トゥ−テール;(1B)重複;(1C)テールに制限部位を組み込むプライマーである。
【図1−2】図1−2は、いくつかのプライマーの向きの設計を説明するフローダイアグラム:本発明に関する(1D)ギャップ配置を有するプライマーである。
【図2】図2は、本発明に関する、増幅バッファー及び長さの変化する新規プライマー対の態様を使用して形成されたアンプリコンを示す、染色されたアガロースゲルである。いくつかの異なるエピソ−ム遺伝的要素を6つの異なるユニバーサル・プライマー対の内の1つを使用して、増幅した。
【図3】図3は、いくつかの異なるエピソ−ム遺伝的要素のための当該増幅バッファー及び新規プライマー対の態様を使用して形成されたアンプリコンを示す、染色されたアガロースゲルである。増幅反応を、再懸濁したコロニーピック細胞に関して直接実施した。
【図4】図4は、いくつかのテンプレート源−精製されたプラスミドDNA、再懸濁コロニーDNA、及びグリセロール・ストックDNAからの当該増幅バッファー及び新規プライマー対の態様を使用して形成されたアンプリコンを示す、染色されたアガロースゲルである。
【図5】図5は、いくつかの源からの当該増幅バッファー及び新規プライマー対の態様を使用して形成されたアンプリコンの産生を示す、染色されたアガロースゲルである。DNAを、当該増幅されたDNAの質を例証するために、ABI標準条件を使用してシークエンシング(配列決定)した。
【図6A】図6Aは、コロニーピック・プラスミドDNAに関して、直接的に1ステップ増幅及びライゲーション反応を実施することの有効性を説明する、染色されたアガロースゲルである。図6Aは、本発明の組成物及び方法を使用して、pUC19標的についてのTscDNAの標準濃度におけるポリメラーゼ滴定を示す。
【図6B】図6Bは、コロニーピック・プラスミドDNAに関して、直接的に1ステップ増幅及びライゲーション反応を実施することの有効性を説明する、染色されたアガロースゲルである。図6Bは、本発明の組成物及び方法を使用する、ポリメラーゼ(TripleMaster)(登録商標)の標準濃度におけるTscDNAリガーゼ滴定を示す。
【図7】図7は、pUC19細胞に関して、直接的に1ステップ増幅及びライゲーション反応を実施することの有効性を説明する、染色されたアガロースゲルである。これらの結果より、TscDNAリガーゼの存在下、共有結合した環状プラスミドを形成することが示唆される。この実験において、DpnI消化に対する抵抗性が、DNAを増幅したベクターにより実証された。精製されたプラスミドDNAはメチル化され、そしてそれ故、DpnIにより開裂され、一方、ベクター増幅DNAはメチル化されなかった。
【図8】図8は、Mg2+の増加量の存在下、当該増幅バッファー及び新規プライマー対の態様を使用して形成されるアンプリコンの産生を示す、染色されたアガロースゲルである。
【図9A】図9Aは、異なる長さのプライマー(A)における増幅反応のアニーリング・プロセスの温度依存、及び本発明の態様に関する2ステップPCR法の最適化を示す染色されたアガロースゲルである。
【図9B】図9Bは、異なる長さのプライマー(A)における増幅反応のアニーリング・プロセスの温度依存、及び本発明の態様に関する2ステップPCR法の最適化を示す染色されたアガロースゲルである。
【図10】図10は、本発明に関する方法及び組成物を使用して、細胞から直接的に増幅したDNAを示す、染色されたアガロースゲルである。
【図11】図11は、本発明の態様に関する、LNA改良プライマーを使用して増幅されたDNAを示す、染色されたアガロースゲルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状核酸テンプレートの増幅方法であって、以下のステップ:
前記テンプレートを、熱安定性ポリメラーゼ、個々のヌクレオチド、そして前記テンプレート内の共通領域に対して相補的なフォアード及びリバース・プライマーを含む反応混合物と接触させるステップ;
変性期及び前記テンプレートの多数のアンプリコン(増幅単位)を製造するための伸長期を含む、複数のサイクルを通じて、前記反応混合物中の前記テンプレートを熱サイクルするステップ;
を含み、
ここで、上記共通領域内において、前記フォアード・プライマーの5’末端は、前記リバース・プライマーの5’末端の近位にあり、及び前記リバース・プライマーの3’末端より遠位にある、前記方法。
【請求項2】
前記環状核酸テンプレートが、染色体外核酸であり、及び前記共通領域が前記染色体外核酸内の保存領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記染色体外核酸がプラスミドであり、及び前記保存領域が複製起点である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記保存領域が、ColE1ベースのプラスミドの複製起点の一部である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記保存領域が、薬剤耐性をコードする遺伝子の一部である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記共通領域が、約80〜150塩基対の長さである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プライマーの5’末端が、約10〜50塩基対部分の前記テンプレートの反対鎖とハイブリダイズする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記両プライマーの両5’末端が、前記テンプレートの反対鎖上で、互いに隣接する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記両プライマーの両5’末端が、前記テンプレートの反対鎖上で、約1〜10塩基対単位で互いに重複する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記遺伝子がアンピシリン遺伝子である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記反応混合物が、pH7.8〜9.0であり、及び弱有機酸と弱有機塩基を含む反応バッファーをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
培養細胞由来の染色体外核酸のエンドトキシン・レベルを低減する方法であって、以下のステップ:
前記染色体外核酸を含む細胞の少なくとも1つのコロニーの採取するステップ;
水性溶媒中に当該細胞を懸濁させるステップ;及び
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法を使用して、当該染色体外核酸を増幅するステップ;
から本質的に成り、
ここで、前記アンプリコン(増幅単位)は、実質的にエンドトキシンなしである、前記当該方法。
【請求項13】
前記増幅ステップに先立ち、前記水性溶媒中の細胞を加熱する追加のステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記採取ステップにおいて、1〜5個の細胞コロニーを採取する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
保存領域を有する環状核酸テンプレートを増幅するための組成物であって、約10〜40塩基対の長さのフォワード及びリバース・プライマーを含み、
ここで、前記両プライマーが、前記保存領域内の前記テンプレートの両反対鎖に対し相補的であり、及び
ここで、当該フォワード・プライマーの5’末端が、当該テンプレートのアンチセンス鎖とハイブリダイズされる際の当該リバース・プライマーに近接近する、当該テンプレートのセンス鎖とハイブリダイズする、前記組成物。
【請求項16】
前記両プライマーが前記テンプレートの両反対鎖とハイブリダイズする際の前記テンプレートの円周周囲において、前記フォワード・プライマーの5’末端が、前記リバース・プライマーの5’末端の近位にあり、及び前記リバース・プライマーの3’末端と遠位にある、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記保存領域が、細菌の複製起点、酵母2μ起点、λcos部位、又は薬剤耐性遺伝子から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
表7から選択されるプライマー対を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
弱有機酸及び弱有機塩基を含み、及びpH約7.8〜9.0である、核酸テンプレートを増幅するための反応バッファー。
【請求項20】
前記弱有機酸が、ビシン、トリシン、TAPSO、CAPSO、EPPS、Hepes、CHES、Taurin、MOPS、AMPSO、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項19に記載のバッファー。
【請求項21】
前記弱有機塩基が、トリス、ビス−トリス、イミダゾール、及びトリス−プロパンからなる群より選択される、請求項19に記載のバッファー。
【請求項22】
約30mM〜約300mM塩の濃度で、塩をさらに含む、請求項19に記載のバッファー。
【請求項23】
約30mM〜約100mMの濃度を有する塩をさらに含む、請求項22に記載のバッファー。
【請求項24】
マグネシウム含有化合物をさらに含む、請求項19に記載のバッファー。
【請求項25】
前記バッファーのpHが約8.8〜約8.9である、請求項19に記載のバッファー。
【請求項26】
核酸テンプレートを増幅する方法であって、以下のステップ:
前記テンプレートを、熱安定性ポリメラーゼ、個々のヌクレオチド、及び請求項19〜25のいずれか1項に記載の反応バッファーにおける少なくとも1つのプライマーからなる反応混合物と接触させるステップ;及び
変性期及び前記テンプレートの多数のアンプリコン(増幅単位)を生成するための伸長期からなる、複数のサイクルを通じて、前記反応混合物中のテンプレートを熱サイクルするステップ;
を含む、前記方法。
【請求項27】
前記核酸テンプレートが、環状核酸テンプレートであり、そして前記反応混合物が、前記環状核酸テンプレート上で隣接した塩基対とハイブリダイズする5’末端を有するフォワード及びリバース・プライマーを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記環状核酸テンプレートが、染色体外核酸であり、そして、前記共通領域が、前記染色体外核酸内の保存領域である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項15〜18のいずれか1項に記載されるプライマー組成物、及び請求項19〜25のいずれか1項に記載の反応バッファーを含む、染色体外核酸を増幅するためのキット。
【請求項30】
前記フォワード及びリバース・プライマーが、各プライマー内のn−1の位置でロックト核酸(locked−nucleic acid)を有する、請求項29に記載のキット。
【請求項1】
環状核酸テンプレートの増幅方法であって、以下のステップ:
前記テンプレートを、熱安定性ポリメラーゼ、個々のヌクレオチド、そして前記テンプレート内の共通領域に対して相補的なフォアード及びリバース・プライマーを含む反応混合物と接触させるステップ;
変性期及び前記テンプレートの多数のアンプリコン(増幅単位)を製造するための伸長期を含む、複数のサイクルを通じて、前記反応混合物中の前記テンプレートを熱サイクルするステップ;
を含み、
ここで、上記共通領域内において、前記フォアード・プライマーの5’末端は、前記リバース・プライマーの5’末端の近位にあり、及び前記リバース・プライマーの3’末端より遠位にある、前記方法。
【請求項2】
前記環状核酸テンプレートが、染色体外核酸であり、及び前記共通領域が前記染色体外核酸内の保存領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記染色体外核酸がプラスミドであり、及び前記保存領域が複製起点である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記保存領域が、ColE1ベースのプラスミドの複製起点の一部である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記保存領域が、薬剤耐性をコードする遺伝子の一部である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記共通領域が、約80〜150塩基対の長さである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プライマーの5’末端が、約10〜50塩基対部分の前記テンプレートの反対鎖とハイブリダイズする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記両プライマーの両5’末端が、前記テンプレートの反対鎖上で、互いに隣接する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記両プライマーの両5’末端が、前記テンプレートの反対鎖上で、約1〜10塩基対単位で互いに重複する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記遺伝子がアンピシリン遺伝子である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記反応混合物が、pH7.8〜9.0であり、及び弱有機酸と弱有機塩基を含む反応バッファーをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
培養細胞由来の染色体外核酸のエンドトキシン・レベルを低減する方法であって、以下のステップ:
前記染色体外核酸を含む細胞の少なくとも1つのコロニーの採取するステップ;
水性溶媒中に当該細胞を懸濁させるステップ;及び
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法を使用して、当該染色体外核酸を増幅するステップ;
から本質的に成り、
ここで、前記アンプリコン(増幅単位)は、実質的にエンドトキシンなしである、前記当該方法。
【請求項13】
前記増幅ステップに先立ち、前記水性溶媒中の細胞を加熱する追加のステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記採取ステップにおいて、1〜5個の細胞コロニーを採取する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
保存領域を有する環状核酸テンプレートを増幅するための組成物であって、約10〜40塩基対の長さのフォワード及びリバース・プライマーを含み、
ここで、前記両プライマーが、前記保存領域内の前記テンプレートの両反対鎖に対し相補的であり、及び
ここで、当該フォワード・プライマーの5’末端が、当該テンプレートのアンチセンス鎖とハイブリダイズされる際の当該リバース・プライマーに近接近する、当該テンプレートのセンス鎖とハイブリダイズする、前記組成物。
【請求項16】
前記両プライマーが前記テンプレートの両反対鎖とハイブリダイズする際の前記テンプレートの円周周囲において、前記フォワード・プライマーの5’末端が、前記リバース・プライマーの5’末端の近位にあり、及び前記リバース・プライマーの3’末端と遠位にある、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記保存領域が、細菌の複製起点、酵母2μ起点、λcos部位、又は薬剤耐性遺伝子から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
表7から選択されるプライマー対を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
弱有機酸及び弱有機塩基を含み、及びpH約7.8〜9.0である、核酸テンプレートを増幅するための反応バッファー。
【請求項20】
前記弱有機酸が、ビシン、トリシン、TAPSO、CAPSO、EPPS、Hepes、CHES、Taurin、MOPS、AMPSO、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項19に記載のバッファー。
【請求項21】
前記弱有機塩基が、トリス、ビス−トリス、イミダゾール、及びトリス−プロパンからなる群より選択される、請求項19に記載のバッファー。
【請求項22】
約30mM〜約300mM塩の濃度で、塩をさらに含む、請求項19に記載のバッファー。
【請求項23】
約30mM〜約100mMの濃度を有する塩をさらに含む、請求項22に記載のバッファー。
【請求項24】
マグネシウム含有化合物をさらに含む、請求項19に記載のバッファー。
【請求項25】
前記バッファーのpHが約8.8〜約8.9である、請求項19に記載のバッファー。
【請求項26】
核酸テンプレートを増幅する方法であって、以下のステップ:
前記テンプレートを、熱安定性ポリメラーゼ、個々のヌクレオチド、及び請求項19〜25のいずれか1項に記載の反応バッファーにおける少なくとも1つのプライマーからなる反応混合物と接触させるステップ;及び
変性期及び前記テンプレートの多数のアンプリコン(増幅単位)を生成するための伸長期からなる、複数のサイクルを通じて、前記反応混合物中のテンプレートを熱サイクルするステップ;
を含む、前記方法。
【請求項27】
前記核酸テンプレートが、環状核酸テンプレートであり、そして前記反応混合物が、前記環状核酸テンプレート上で隣接した塩基対とハイブリダイズする5’末端を有するフォワード及びリバース・プライマーを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記環状核酸テンプレートが、染色体外核酸であり、そして、前記共通領域が、前記染色体外核酸内の保存領域である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項15〜18のいずれか1項に記載されるプライマー組成物、及び請求項19〜25のいずれか1項に記載の反応バッファーを含む、染色体外核酸を増幅するためのキット。
【請求項30】
前記フォワード及びリバース・プライマーが、各プライマー内のn−1の位置でロックト核酸(locked−nucleic acid)を有する、請求項29に記載のキット。
【図1−1】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−512020(P2007−512020A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541466(P2006−541466)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/039742
【国際公開番号】WO2005/054435
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(501186645)エッペンドルフ アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/039742
【国際公開番号】WO2005/054435
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(501186645)エッペンドルフ アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】
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