柔道指導用補助具
【課題】練習者が投げの動きに入る前に相手のバランスを崩し、相手を不安定な状態にする動きを容易に理解することができる柔道指導用補助具を提供する。
【解決手段】柔道指導用補助具1は、本体部4に形成され、投技を掛ける人である取り8が左右の手で各々把持する取り側把持部6,6と、本体部4から、投技を掛けられる人である受け9側に突出した状態で形成され、受け9が左右の手で各々把持する受け側把持部7,7とを備え、取り側把持部6,6の間隔は受け側把持部7,7の間隔よりも広く形成され、受け側把持部7,7は受け9側に斜めに傾き、かつ下方に斜めに傾いており、取り8と受け9とが向かい合って、取り8が取り側把持部6,6を把持し、受け9が受け側把持部7,7を把持したとき、受け側把持部7,7を把持した受け9の手は親指側10が受け9の手前側に傾き、かつ下方に傾くので、両肘が広がって脇が開き体が浮き上がり気味になる。
【解決手段】柔道指導用補助具1は、本体部4に形成され、投技を掛ける人である取り8が左右の手で各々把持する取り側把持部6,6と、本体部4から、投技を掛けられる人である受け9側に突出した状態で形成され、受け9が左右の手で各々把持する受け側把持部7,7とを備え、取り側把持部6,6の間隔は受け側把持部7,7の間隔よりも広く形成され、受け側把持部7,7は受け9側に斜めに傾き、かつ下方に斜めに傾いており、取り8と受け9とが向かい合って、取り8が取り側把持部6,6を把持し、受け9が受け側把持部7,7を把持したとき、受け側把持部7,7を把持した受け9の手は親指側10が受け9の手前側に傾き、かつ下方に傾くので、両肘が広がって脇が開き体が浮き上がり気味になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔道指導者が、投技を掛けるときに相手のバランスを崩して不安定な状態をつくりだす動き、および安全な受け身を指導するために用いる柔道指導用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、組み手を行う相手がいない場合や自己の身長及び体重に見合った相手がいない場合に、柔道技の練習をするためのトレーニング装置が記載されている。練習者は操作部を揺動させ、脚部を刈る、払う、または跳ね上げる動作に合わせて、操作部及び又は脚部を変位させて柔道技の練習を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−26153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるトレーニング装置では、練習者は操作部を揺動させ、脚部を刈る、払う、または跳ね上げる動作に合わせて、操作部および脚部を変位させることができるが、脚部を刈る、払うなどの動作に入る前に、相手のバランスを崩さなければならない。バランスが崩されて不安定になった相手の状態に応じて、脚部を刈る、払うなどの動作に入る。相手のバランスを崩し不安定な状態にする動きは技を掛けるために重要であるが、練習者がこの動きを理解しにくいという問題があった。
【0005】
さらに、受け身は自分の身を守る技術であるが、転倒したときに受ける衝撃の逃がし方に指導の重点が置かれていた。しかし、予測していない動きをされたときにバランスを崩して転倒するのであり、相手の動きの勢いや動きの方向を察知し、自分の体勢と照らし合わせてバランスを保つことができるかを瞬時に判断しなければならない。バランスを保つことができないと判断した場合には、安全な受身を行うために、自分が倒れる勢い、方向および姿勢をイメージしたうえで、相手の投げの動きに応じた受け身をしなければならない。
【0006】
本発明の目的は、練習者が、投げの動きに入る前に相手のバランスを崩し、相手を不安定な状態にする動きを容易に理解することができ、さらに、自分が倒れる勢い、方向および姿勢をイメージしたうえで、相手の投げの動きに応じた受け身を容易に理解することができるとともに転倒時の恐怖感を軽減することができる柔道指導用補助具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、本体部に形成され、投技を掛ける人である取り8が左右の手で各々把持する取り側把持部6,6と、本体部4から、投技を掛けられる人である受け9側に突出した状態で形成され、受け9が左右の手で各々把持する受け側把持部7,7とを備えた柔道指導用補助具であって、取り側把持部6,6の間隔は受け側把持部7,7の間隔よりも広く形成され、受け側把持部7,7は受け9側に斜めに傾き、かつ下方に斜めに傾いており、取り8と受け9とが向かい合って、取り8が取り側把持部6,6を把持し、受け9が受け側把持部7,7を把持したとき、受け側把持部7,7を把持した受け9の手は親指側10が受け9の手前側に傾き、かつ下方に傾くものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、パイプ材を用いて形成され、本体部4は直線部2と直線部2の両端から伸延する側端部3,3とで形成され、受け側把持部7,7は側端部3,3の端部から突出した直線部5,5に形成されるものである。
【発明の効果】
【0009】
受けが受け側把持部を把持したとき、受けの手は親指側が受けの手前側に傾き、かつ下方に傾いており、両肘が広がって脇が開き体が浮き上がり気味になるので、練習者は、投げの動きに入る前に相手のバランスを崩し、相手を不安定な状態にする動きを容易に理解することができ、さらに、自分が倒れる勢い、方向および姿勢をイメージしたうえで、相手の投げの動きに応じた安全な受け身を容易に理解することができるとともに転倒時の恐怖感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】柔道指導用補助具の平面図である。
【図2】柔道指導用補助具の正面図である。
【図3】柔道指導用補助具の側面図である。
【図4】柔道指導用補助具の断面図である。
【図5】柔道指導用補助具の斜視図である。
【図6】柔道指導用補助具を把持した状態を示す平面図である。
【図7】柔道指導用補助具を把持した状態を示す側面図である。
【図8】柔道指導用補助具を把持した状態を示す斜視図である。
【図9】取りが柔道指導用補助具を斜め上に引き出した状態を示す斜視図である。
【図10】取りが右脚を引いて体を沈み込ませた状態を示す斜視図である。
【図11】取りが伸び上がって腰を回した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について図1〜図11に基づいて説明する。以後に説明において、投技を掛ける人を取り8と呼び、投技を掛けられる人を受け9と呼ぶこととする。
【0012】
取り8が受け9に投技を掛けるとき、取り8は投げの動きに入る前に受け9のバランスを崩し、バランスが崩されて不安定になった受け9の状態に応じた技を掛ける。投技を掛けるために受け9のバランスを崩して不安定な状態をつくりだす動きを、くずしと呼ぶこととする。
【0013】
本発明に係る柔道指導用補助具1は、柔道指導者が、くずしについて指導するときに用いられる。柔道指導用補助具1はパイプ状の材料を曲げて形成され、長尺な直線部2と、直線部2の両端から伸延する側端部3,3とで形成される本体部4を備える。側端部3,3の端部には、受け9側に突出した状態で形成される直線部5,5を備える。直線部5,5は、受け9側に斜めに傾き、かつ下方に斜めに傾いている。
【0014】
柔道指導用補助具1は、本体部4が略水平面上に位置し、直線部5,5が斜め下方に突出した状態で、取り8と受け9との双方によって把持される。取り8は、直線部2の両端を左右の手で把持する。取り8が把持する把持部を取り側把持部6,6という。受け9は、本体部4から受け9側に斜めに傾き、かつ斜め下方に突出した直線部5,5の端部を把持する。受け9が把持する把持部を受け側把持部7,7と呼ぶ。受け9が受け側把持部7,7を順手で把持したとき、親指側10が受け9の手前に傾き、さらに下方に傾く。取り側把持部6,6の間隔は受け側把持部7,7の間隔よりも広く形成されるので、取り8は受け9が受け側把持部7,7を把持する力に抗して柔道指導用補助具1を容易に傾けることができる。
【0015】
柔道指導用補助具1の使い方について説明する。図8は、取り8と受け9とが柔道指導用補助具1を把持した状態を示す斜視図である。取り8が柔道指導用補助具1の取り側把持部6,6を把持して自然体で立つ。受け9は取り8と向かい合うように取り8の正面に立ち、柔道指導用補助具1の受け側把持部7,7を把持する。受け9は柔道指導用補助具1を胸から肩の位置で保持する。受け側把持部7,7は、受け9側に斜めに傾き、かつ本体部4から斜め下方に突出している直線部5,5に形成されるので、受け9が受け側把持部7,7を把持したとき、受け9の手は親指側10が受け9の手前側に傾き、かつ下方に傾き、両肘が広がって脇が開き、体が浮き上がり気味になる。
【0016】
取り8と受け9とは肩に力を入れないようにして、タイミングを合わせて体を上下させる。このとき取り8と受け9とは1,2,3と声を出してもよい。図9は取り8が柔道指導用補助具1を斜め上に引き出した状態を示す斜視図である。取り8は、沈み込んで伸び上がるタイミングを利用して、全身を使って柔道指導用補助具1を斜め上に引き出し、引き出した瞬間に柔道指導用補助具1を強く握る。そうすると、受け9は大きく前方に伸び上がって不安定な状態になる。
【0017】
次に、取り8が歩きながら柔道指導用補助具1を引き出す場合について説明する。取り8が柔道指導用補助具1の取り側把持部6,6を把持して自然体で立つ。受け9は取り8と向かい合うように正面に立ち、柔道指導用補助具1の受け側把持部7,7を把持して胸から肩の位置で柔道指導用補助具1を保持する。取り8と受け9とは肩に力を入れないようにする。取り8と受け9とが向かい合った状態で、タイミングを合わせて移動する。取り8は左足から後ろに下がり、受け9は右足から前に出る。取り8は後に下がるタイミングで柔道指導用補助具1を一気に斜め上に引き出し、柔道指導用補助具1を引き出す瞬間に柔道指導用補助具1の取り側把持部6,6を強く握る。そうすると、受け9は大きく前方に伸び上がって不安定な状態になる。
【0018】
次に、取り8が沈み込んだ状態から伸び上がる場合について説明する。取り8が柔道指導用補助具1の取り側把持部6,6を把持して自然体で立つ。受け9は取り8と向かい合うように正面に立ち、柔道指導用補助具1の受け側把持部7,7を把持して胸から肩の位置で柔道指導用補助具1を保持する。取り8と受け9とは肩に力を入れないようにする。取り8は右脚を大きく引いて体を沈み込ませて、受け9を前方下側に引き込む(図10参照)。受け9は前方下側に引かれる力に抵抗して体を起こそうとするので、取り8は受け9が体を起こそうとする力を利用して、肘を外に開きながら全身を使ってフィギュアスケートのジャンプをするように大きく上に伸び上がる。取り8は上に伸び上がる瞬間に柔道指導用補助具1を強く握る。そうすると、受け9は大きく前方に伸び上がって爪先立ちとなり、不安定な状態になる。
【0019】
さらに、受け9が不安定になった瞬間に、取り8も力を抜いた状態で伸び上がって腰を回す(図11参照)。取り8は、右肘を畳みながら背負い投げを行うように腰を回すことができ、あるいは右肘を立てて払い腰や内股を行うように足を踏み変えて腰を回すことができる。または、右肘を立てて大外刈りを行うように腰を回すことができる。そうすると、受け9はさらに不安定な状態になる。
【0020】
受け側把持部7,7は、受け9側に斜めに傾き、かつ本体部4から斜め下方に突出しているので、受け側把持部7,7を把持した受け9は、両肘が広がって脇が開き、体が浮き上がり気味になる。取り8は、受け9の体を沈みこませ、受け9が体を起こそうとする力を利用して前方に伸び上がらせて不安定な状態にするが、柔道指導用補助具1の受け側把持部7,7を把持した受け9は、両肘が広がって脇が開き、体が浮き上がり気味になっているので、取り8は容易に受け9を不安定な状態にすることができる。取り8は受け9を容易に不安定な状態にして投げの動きに入ることができる。
【0021】
受け9は、取り8の動きの勢いや動きの方向を察知し、自分の体勢と照らし合わせてバランスを保つことができるかを瞬時に判断する。受け9がバランスを保つことができないと判断した場合には、自分が倒れる勢い、方向および姿勢をイメージしたうえで、取り8の投げの動きに応じた受け身をする。このように受け9は安全な受身を容易に理解することができるとともに、転倒時の恐怖感を軽減することができる。
【0022】
なお、本実施の形態において、柔道指導用補助具1としてパイプ状の材料を曲げて形成され表面が樹脂で覆われたものが用いられているが、これに限定されるものではない。たとえば柔道指導用補助具1は取り側把持部6,6と受け側把持部7,7とを備えた樹脂成型品であっても良い。
【0023】
このように、柔道指導用補助具1は、本体部4に形成され、投技を掛ける人である取り8が左右の手で各々把持する取り側把持部6,6と、本体部4から、投技を掛けられる人である受け9側に突出した状態で形成され、受け9が左右の手で各々把持する受け側把持部7,7とを備え、取り側把持部6,6の間隔は受け側把持部7,7の間隔よりも広く形成され、受け側把持部7,7は受け9側に斜めに傾き、かつ下方に斜めに傾いており、取り8と受け9とが向かい合って、取り8が取り側把持部6,6を把持し、受け9が受け側把持部7,7を把持したとき、受け側把持部7,7を把持した受け9の手は親指側10が受け9の手前側に傾き、かつ下方に傾くので、両肘が広がって脇が開き体が浮き上がり気味になり、練習者は、投げの動きに入る前に相手のバランスを崩し、相手を不安定な状態にする動きを容易に理解することができ、また、自分が倒れる勢い、方向および姿勢をイメージしたうえで、相手の投げの動きに応じた安全な受身を容易に理解することができるとともに、転倒時の恐怖感を軽減することができる。
【0024】
さらに、柔道指導用補助具1は、パイプ材を用いて形成され、本体部4は直線部2と直線部2の両端から伸延する側端部3,3とで形成され、受け側把持部7,7は側端部3,3の端部から突出した直線部5,5に形成されるので、製造コストの削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 柔道指導用補助具
2,5 直線部
3 側端部
4 本体部
6 取り側把持部
7 受け側把持部
8 取り
9 受け
10 親指側
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔道指導者が、投技を掛けるときに相手のバランスを崩して不安定な状態をつくりだす動き、および安全な受け身を指導するために用いる柔道指導用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、組み手を行う相手がいない場合や自己の身長及び体重に見合った相手がいない場合に、柔道技の練習をするためのトレーニング装置が記載されている。練習者は操作部を揺動させ、脚部を刈る、払う、または跳ね上げる動作に合わせて、操作部及び又は脚部を変位させて柔道技の練習を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−26153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるトレーニング装置では、練習者は操作部を揺動させ、脚部を刈る、払う、または跳ね上げる動作に合わせて、操作部および脚部を変位させることができるが、脚部を刈る、払うなどの動作に入る前に、相手のバランスを崩さなければならない。バランスが崩されて不安定になった相手の状態に応じて、脚部を刈る、払うなどの動作に入る。相手のバランスを崩し不安定な状態にする動きは技を掛けるために重要であるが、練習者がこの動きを理解しにくいという問題があった。
【0005】
さらに、受け身は自分の身を守る技術であるが、転倒したときに受ける衝撃の逃がし方に指導の重点が置かれていた。しかし、予測していない動きをされたときにバランスを崩して転倒するのであり、相手の動きの勢いや動きの方向を察知し、自分の体勢と照らし合わせてバランスを保つことができるかを瞬時に判断しなければならない。バランスを保つことができないと判断した場合には、安全な受身を行うために、自分が倒れる勢い、方向および姿勢をイメージしたうえで、相手の投げの動きに応じた受け身をしなければならない。
【0006】
本発明の目的は、練習者が、投げの動きに入る前に相手のバランスを崩し、相手を不安定な状態にする動きを容易に理解することができ、さらに、自分が倒れる勢い、方向および姿勢をイメージしたうえで、相手の投げの動きに応じた受け身を容易に理解することができるとともに転倒時の恐怖感を軽減することができる柔道指導用補助具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、本体部に形成され、投技を掛ける人である取り8が左右の手で各々把持する取り側把持部6,6と、本体部4から、投技を掛けられる人である受け9側に突出した状態で形成され、受け9が左右の手で各々把持する受け側把持部7,7とを備えた柔道指導用補助具であって、取り側把持部6,6の間隔は受け側把持部7,7の間隔よりも広く形成され、受け側把持部7,7は受け9側に斜めに傾き、かつ下方に斜めに傾いており、取り8と受け9とが向かい合って、取り8が取り側把持部6,6を把持し、受け9が受け側把持部7,7を把持したとき、受け側把持部7,7を把持した受け9の手は親指側10が受け9の手前側に傾き、かつ下方に傾くものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、パイプ材を用いて形成され、本体部4は直線部2と直線部2の両端から伸延する側端部3,3とで形成され、受け側把持部7,7は側端部3,3の端部から突出した直線部5,5に形成されるものである。
【発明の効果】
【0009】
受けが受け側把持部を把持したとき、受けの手は親指側が受けの手前側に傾き、かつ下方に傾いており、両肘が広がって脇が開き体が浮き上がり気味になるので、練習者は、投げの動きに入る前に相手のバランスを崩し、相手を不安定な状態にする動きを容易に理解することができ、さらに、自分が倒れる勢い、方向および姿勢をイメージしたうえで、相手の投げの動きに応じた安全な受け身を容易に理解することができるとともに転倒時の恐怖感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】柔道指導用補助具の平面図である。
【図2】柔道指導用補助具の正面図である。
【図3】柔道指導用補助具の側面図である。
【図4】柔道指導用補助具の断面図である。
【図5】柔道指導用補助具の斜視図である。
【図6】柔道指導用補助具を把持した状態を示す平面図である。
【図7】柔道指導用補助具を把持した状態を示す側面図である。
【図8】柔道指導用補助具を把持した状態を示す斜視図である。
【図9】取りが柔道指導用補助具を斜め上に引き出した状態を示す斜視図である。
【図10】取りが右脚を引いて体を沈み込ませた状態を示す斜視図である。
【図11】取りが伸び上がって腰を回した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について図1〜図11に基づいて説明する。以後に説明において、投技を掛ける人を取り8と呼び、投技を掛けられる人を受け9と呼ぶこととする。
【0012】
取り8が受け9に投技を掛けるとき、取り8は投げの動きに入る前に受け9のバランスを崩し、バランスが崩されて不安定になった受け9の状態に応じた技を掛ける。投技を掛けるために受け9のバランスを崩して不安定な状態をつくりだす動きを、くずしと呼ぶこととする。
【0013】
本発明に係る柔道指導用補助具1は、柔道指導者が、くずしについて指導するときに用いられる。柔道指導用補助具1はパイプ状の材料を曲げて形成され、長尺な直線部2と、直線部2の両端から伸延する側端部3,3とで形成される本体部4を備える。側端部3,3の端部には、受け9側に突出した状態で形成される直線部5,5を備える。直線部5,5は、受け9側に斜めに傾き、かつ下方に斜めに傾いている。
【0014】
柔道指導用補助具1は、本体部4が略水平面上に位置し、直線部5,5が斜め下方に突出した状態で、取り8と受け9との双方によって把持される。取り8は、直線部2の両端を左右の手で把持する。取り8が把持する把持部を取り側把持部6,6という。受け9は、本体部4から受け9側に斜めに傾き、かつ斜め下方に突出した直線部5,5の端部を把持する。受け9が把持する把持部を受け側把持部7,7と呼ぶ。受け9が受け側把持部7,7を順手で把持したとき、親指側10が受け9の手前に傾き、さらに下方に傾く。取り側把持部6,6の間隔は受け側把持部7,7の間隔よりも広く形成されるので、取り8は受け9が受け側把持部7,7を把持する力に抗して柔道指導用補助具1を容易に傾けることができる。
【0015】
柔道指導用補助具1の使い方について説明する。図8は、取り8と受け9とが柔道指導用補助具1を把持した状態を示す斜視図である。取り8が柔道指導用補助具1の取り側把持部6,6を把持して自然体で立つ。受け9は取り8と向かい合うように取り8の正面に立ち、柔道指導用補助具1の受け側把持部7,7を把持する。受け9は柔道指導用補助具1を胸から肩の位置で保持する。受け側把持部7,7は、受け9側に斜めに傾き、かつ本体部4から斜め下方に突出している直線部5,5に形成されるので、受け9が受け側把持部7,7を把持したとき、受け9の手は親指側10が受け9の手前側に傾き、かつ下方に傾き、両肘が広がって脇が開き、体が浮き上がり気味になる。
【0016】
取り8と受け9とは肩に力を入れないようにして、タイミングを合わせて体を上下させる。このとき取り8と受け9とは1,2,3と声を出してもよい。図9は取り8が柔道指導用補助具1を斜め上に引き出した状態を示す斜視図である。取り8は、沈み込んで伸び上がるタイミングを利用して、全身を使って柔道指導用補助具1を斜め上に引き出し、引き出した瞬間に柔道指導用補助具1を強く握る。そうすると、受け9は大きく前方に伸び上がって不安定な状態になる。
【0017】
次に、取り8が歩きながら柔道指導用補助具1を引き出す場合について説明する。取り8が柔道指導用補助具1の取り側把持部6,6を把持して自然体で立つ。受け9は取り8と向かい合うように正面に立ち、柔道指導用補助具1の受け側把持部7,7を把持して胸から肩の位置で柔道指導用補助具1を保持する。取り8と受け9とは肩に力を入れないようにする。取り8と受け9とが向かい合った状態で、タイミングを合わせて移動する。取り8は左足から後ろに下がり、受け9は右足から前に出る。取り8は後に下がるタイミングで柔道指導用補助具1を一気に斜め上に引き出し、柔道指導用補助具1を引き出す瞬間に柔道指導用補助具1の取り側把持部6,6を強く握る。そうすると、受け9は大きく前方に伸び上がって不安定な状態になる。
【0018】
次に、取り8が沈み込んだ状態から伸び上がる場合について説明する。取り8が柔道指導用補助具1の取り側把持部6,6を把持して自然体で立つ。受け9は取り8と向かい合うように正面に立ち、柔道指導用補助具1の受け側把持部7,7を把持して胸から肩の位置で柔道指導用補助具1を保持する。取り8と受け9とは肩に力を入れないようにする。取り8は右脚を大きく引いて体を沈み込ませて、受け9を前方下側に引き込む(図10参照)。受け9は前方下側に引かれる力に抵抗して体を起こそうとするので、取り8は受け9が体を起こそうとする力を利用して、肘を外に開きながら全身を使ってフィギュアスケートのジャンプをするように大きく上に伸び上がる。取り8は上に伸び上がる瞬間に柔道指導用補助具1を強く握る。そうすると、受け9は大きく前方に伸び上がって爪先立ちとなり、不安定な状態になる。
【0019】
さらに、受け9が不安定になった瞬間に、取り8も力を抜いた状態で伸び上がって腰を回す(図11参照)。取り8は、右肘を畳みながら背負い投げを行うように腰を回すことができ、あるいは右肘を立てて払い腰や内股を行うように足を踏み変えて腰を回すことができる。または、右肘を立てて大外刈りを行うように腰を回すことができる。そうすると、受け9はさらに不安定な状態になる。
【0020】
受け側把持部7,7は、受け9側に斜めに傾き、かつ本体部4から斜め下方に突出しているので、受け側把持部7,7を把持した受け9は、両肘が広がって脇が開き、体が浮き上がり気味になる。取り8は、受け9の体を沈みこませ、受け9が体を起こそうとする力を利用して前方に伸び上がらせて不安定な状態にするが、柔道指導用補助具1の受け側把持部7,7を把持した受け9は、両肘が広がって脇が開き、体が浮き上がり気味になっているので、取り8は容易に受け9を不安定な状態にすることができる。取り8は受け9を容易に不安定な状態にして投げの動きに入ることができる。
【0021】
受け9は、取り8の動きの勢いや動きの方向を察知し、自分の体勢と照らし合わせてバランスを保つことができるかを瞬時に判断する。受け9がバランスを保つことができないと判断した場合には、自分が倒れる勢い、方向および姿勢をイメージしたうえで、取り8の投げの動きに応じた受け身をする。このように受け9は安全な受身を容易に理解することができるとともに、転倒時の恐怖感を軽減することができる。
【0022】
なお、本実施の形態において、柔道指導用補助具1としてパイプ状の材料を曲げて形成され表面が樹脂で覆われたものが用いられているが、これに限定されるものではない。たとえば柔道指導用補助具1は取り側把持部6,6と受け側把持部7,7とを備えた樹脂成型品であっても良い。
【0023】
このように、柔道指導用補助具1は、本体部4に形成され、投技を掛ける人である取り8が左右の手で各々把持する取り側把持部6,6と、本体部4から、投技を掛けられる人である受け9側に突出した状態で形成され、受け9が左右の手で各々把持する受け側把持部7,7とを備え、取り側把持部6,6の間隔は受け側把持部7,7の間隔よりも広く形成され、受け側把持部7,7は受け9側に斜めに傾き、かつ下方に斜めに傾いており、取り8と受け9とが向かい合って、取り8が取り側把持部6,6を把持し、受け9が受け側把持部7,7を把持したとき、受け側把持部7,7を把持した受け9の手は親指側10が受け9の手前側に傾き、かつ下方に傾くので、両肘が広がって脇が開き体が浮き上がり気味になり、練習者は、投げの動きに入る前に相手のバランスを崩し、相手を不安定な状態にする動きを容易に理解することができ、また、自分が倒れる勢い、方向および姿勢をイメージしたうえで、相手の投げの動きに応じた安全な受身を容易に理解することができるとともに、転倒時の恐怖感を軽減することができる。
【0024】
さらに、柔道指導用補助具1は、パイプ材を用いて形成され、本体部4は直線部2と直線部2の両端から伸延する側端部3,3とで形成され、受け側把持部7,7は側端部3,3の端部から突出した直線部5,5に形成されるので、製造コストの削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 柔道指導用補助具
2,5 直線部
3 側端部
4 本体部
6 取り側把持部
7 受け側把持部
8 取り
9 受け
10 親指側
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に形成され、投技を掛ける人である取り8が左右の手で各々把持する取り側把持部6,6と、
本体部4から、投技を掛けられる人である受け9側に突出した状態で形成され、受け9が左右の手で各々把持する受け側把持部7,7とを備えた柔道指導用補助具であって、
取り側把持部6,6の間隔は受け側把持部7,7の間隔よりも広く形成され、受け側把持部7,7は受け9側に斜めに傾き、かつ下方に斜めに傾いており、
取り8と受け9とが向かい合って、取り8が取り側把持部6,6を把持し、受け9が受け側把持部7,7を把持したとき、受け側把持部7,7を把持した受け9の手は親指側10が受け9の手前側に傾き、かつ下方に傾く柔道指導用補助具。
【請求項2】
パイプ材を用いて形成され、
本体部4は直線部2と直線部2の両端から伸延する側端部3,3とで形成され、
受け側把持部7,7は側端部3,3の端部から突出した直線部5,5に形成される請求項1に記載の柔道指導用補助具。
【請求項1】
本体部に形成され、投技を掛ける人である取り8が左右の手で各々把持する取り側把持部6,6と、
本体部4から、投技を掛けられる人である受け9側に突出した状態で形成され、受け9が左右の手で各々把持する受け側把持部7,7とを備えた柔道指導用補助具であって、
取り側把持部6,6の間隔は受け側把持部7,7の間隔よりも広く形成され、受け側把持部7,7は受け9側に斜めに傾き、かつ下方に斜めに傾いており、
取り8と受け9とが向かい合って、取り8が取り側把持部6,6を把持し、受け9が受け側把持部7,7を把持したとき、受け側把持部7,7を把持した受け9の手は親指側10が受け9の手前側に傾き、かつ下方に傾く柔道指導用補助具。
【請求項2】
パイプ材を用いて形成され、
本体部4は直線部2と直線部2の両端から伸延する側端部3,3とで形成され、
受け側把持部7,7は側端部3,3の端部から突出した直線部5,5に形成される請求項1に記載の柔道指導用補助具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−22031(P2013−22031A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156186(P2011−156186)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(594082947)日本被服工業株式会社 (3)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(594082947)日本被服工業株式会社 (3)
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