説明

柱状構造物用プランター

【課題】柱状構造物の外周面を伝って流れる雨水をプランターの内部に導入可能とする柱状構造物用プランターを提供する。
【解決手段】柱状構造物用プランター1は、電柱の外周面に取り付けられ、2つの有底の容器体10を合体して構成されるものである。容器体10は、電柱の外周面に当接可能な凹状に形成された内壁部4と、下部が縮径されるようにテーパー状に形成された外壁部6と、内壁部4と外壁部6の両端を連接する側壁部5と、該容器体10の底面を構成する底面部7とを備え、内壁部4の上部に電柱2の軸方向に沿って上端まで延びると共に、上方に向かうにつれて内壁部4の肉厚を徐々に薄くする取水溝8aが設けられ、外壁部6及び底面部7下部にスリット状の排水孔9を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状の構造物に取り付けられ植物栽培や観賞用に用いられる柱状構造物用プランターに関する。
【背景技術】
【0002】
柱状の構造物の一例である電柱は、そのほとんどがコンクリート製であるため、他の構造物と同様に熱を蓄積してヒートアイランド現象に影響を及ぼしている。このようなヒートアイランド現象を軽減するため、街の緑化や美化を図る活動が行われており、たとえば、電柱に取り付け可能なプランターを用いて植物栽培が行われている。
【0003】
具体的には、円形状、楕円形状、四角形状又は多角形状のポールの外形に沿って当接されるように形成されたポール側壁部と、前記ポール側壁部の各端部に一体形成され1乃至複数の接続固定部を有する側壁部と、前記側壁部の各側面端部に一体形成された外壁部と、前記各壁部の下部に一体形成された底面部と、を備えたポール用プランターが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平成9−009791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のポール用プランターは、上部の開口部以外に給水経路が無く、電柱の外周面を伝って流れる雨水を効率よく給水することができないため植物が枯れてしまう不都合がある。
また、たとえば、ポールの上側と下側に位置するようにプランターを設置した場合には、上側のプランターが下側のプランターの雨水の流入を遮るため、植物が枯れるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、柱状構造物の外周面を伝って流れる雨水をプランターの内部に効率よく導入可能とする柱状構造物用プランターを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の柱状構造物用プランターは、柱状構造物の外周面に取り付けられ、2つの容器体を合体させて構成される柱状構造物用プランターであって、前記容器体は、柱状構造物の外周面に当接可能な凹状に形成された内壁部と、下部が縮径されるようにテーパー状に形成された外壁部と、前記内壁部と前記外壁部の両端を連接する側壁部と、該容器体の底面を構成する底面部とを備えて構成され、前記内壁部の上部に前記柱状構造物の軸方向に沿って上端まで延びると共に、上方に向かうにつれて内壁部の肉厚を徐々に薄くする取水溝を設け、前記外壁部の下部及び前記底面部にスリット状の排水孔を形成したことを特徴としている。
【0008】
したがって、内壁部の上部に柱状構造物の軸方向に沿って上端まで延びると共に、上方に向かうにつれて内壁部の肉厚を徐々に薄くするように形成された取水溝を設けたことで、柱状構造物の外周面を伝って流れる雨水を取水溝を介して効率的に容器体の内側に導くことができ、また、前記外壁部の下部及び前記底面部にスリット状の排水孔が形成されているので、容器体内に導かれた水を排水孔から排水し、その排水された水を柱状構造物の外周面を伝って再び流すことが可能となる。したがって、排水された水が再び下側に取り付けられた柱状構造物用プランターの取水溝を介して容器体の内側に導かれるため、下側に取り付けた柱状構造物用プランターの植物が枯れることを防止できる。
【0009】
尚、前記内壁部を、前記外壁部よりも上方へ延出し、前記取水溝を内壁部の前記外壁部よりも延出した部分に設けるようにすることが好ましい。
【0010】
このように取水溝を内壁部の外壁部よりも延出した部分に設けることで、プランター内に入れる土等が取水溝に入り込んで塞ぐことがなく、また、バンド等の固定具をその部分に回し留めて容器体を柱状構造物に固定する場合においても、取水溝を介して取水を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、本発明に係る柱状構造物用プランターによれば、内壁部の上部に柱状構造物の軸方向に沿って上端まで延びると共に、上方に向かうにつれて内壁部の肉厚を徐々に薄くする取水溝が設けられ、また外壁部の下部及び底面部にスリット状の排水孔が形成されているので、柱状構造物の外周面を伝って流れる雨水を取水溝を介して効率的に容器体の内側に導くことができ、管理者が植物の給水管理を行うことなく栽培が可能となる。また、容器体内に導かれた水を排水孔から排水し、その排水された水を柱状構造物の外周面を伝って再び流すことが可能となる。したがって、排水された水が再び下側に取り付けられた柱状構造物用プランターの取水溝を介して容器体の内側に導かれるため、下側に取り付けた柱状構造物用プランターの植物が枯れることを防止できる。
【0012】
また、取水溝を、外壁部よりも上方へ延出した内壁部の上部に設けるようにすれば、取水溝がプランター内に入れる土等で塞がれることがなく、また、外壁部よりも上方へ延出した内壁部の部分に、容器体を柱状構造物に固定するバンド等の取付具を回し留めた場合でも、取水溝と取付具との間に隙間が確保されることとなるので、柱状構造物の外周面を伝って上方から流れ落ちる水を取水溝を介して容器内に導入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に係る柱状構造物用プランターを電柱に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、柱状構造物用プランターを示す斜視図である。
【図3】図3(a)は、柱状構造物用プランターを背面から見た斜視図であり、(b)は、内壁部と円柱体との間に介在される内壁面調整部材を示す斜視図である。
【図4】図4は、柱状構造物用プランターを真上から見た平面図である。
【図5】図5は、2つの柱状構造物用プランターを電柱に取り付けた状態を示す図であり、(a)は、その斜視図であり、(b)は、(a)におけるA−A線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の柱状構造物用プランターについて図面を参照して説明する。
【実施例】
【0015】
図1において、柱状構造物用プランター1は、観賞用植物が植えられる左右に分割された2つの容器体10を合体させて構成されるもので、これら2つの容器体10を円柱状の電柱2を挟み込むように電柱2の外周面に取り付け、上下の2箇所でステンレスバンド11を回し留めて電柱2に固定するようにしている。
【0016】
図2及び図3(a)に示すように、容器体10は、電柱2に当接されるように形成された内壁部4と、内壁部4の両側縁に一体に形成された側壁部5と、各側壁部5の内壁部4から離れた縁側に円弧状に一体形成され、上部から下端に向かって縮径されるように形成された外壁部6と、各壁部4,5,6の下部に一体形成された底面部7と、内壁部4の下端に一体形成された垂下部4aと、から構成され、上端に、内壁部4、側壁部5、外壁部6によって囲まれて上方に開口する開口部3が形成されている。
【0017】
内壁部4は、外壁部6よりも上方へ延出して形成されると共に、電柱2の外周面に密着して取り付けられるよう凹状に形成されている。この凹状の形状は、電柱2のテーパー角に合わせて下方に向かうほど徐々に拡径された断面円弧状に形成され、電柱2の所望の取り付け位置に合わせた曲率半径に設定されている。
【0018】
尚、直径が一定であるポール等の円柱体に設置する場合には、内壁部4の円柱体と接する面を鉛直にする必要があるため、図3(b)に示されるような内壁面調整部材20を内壁部4と電柱2の外周面との間に嵌入するとよい。
ここで、内壁面調整部材20は、容器体10の形状に合わせて、例えば半割れ状に形成されているもので、内壁部4のテーパー角に合わせて下方へ向かうほど拡径された外面21と、取り付けられる円柱体の外径に一致する内径を有する内面22とを有し、厚みが下方へ向かうほど肉厚に形成されている。
【0019】
また、外壁部6よりも延出した内壁部4の部位(以下、突出部8という)には、電柱2の軸方向に沿って上端まで延びると共に、上方に向かって内壁部4の肉厚を徐々に薄くする取水溝8aが外周面に形成されている。このため、取水溝8aは、上方に向かって拡径する半円錐状に形成されると共に電柱の外周面を流れ落ちる雨水を導入し易くするよう傾斜されている。
【0020】
外壁部6の下部及びこれに続く底面部7には、容器体10で植栽する根の発育異常を防止するとともに内部の余剰な水分を排水する排水孔9が設けられている。この排水孔9は、容器体10の周方向に所定の間隔で複数形成されているもので、外壁部6の下部に鉛直方向に延設されると共に底面部7の径方向に延設されて、全体としてL字型をなすスリット状に形成されている。
【0021】
そして、図4及び図5にも示すように、ステンレスバンド11を内壁部4の突出部8の周囲に取水溝8aの中程を覆うように回し留めると共に垂下部4aの周囲に回し留めることで、対をなす容器体10を電柱2に固定するようにしている。このため、突出部8の取水溝8aの一部はステンレスバンド11で覆われることになるが、取水溝8aとステンレスバンド11との間には隙間が形成されることになるので、取水溝8aによる水の導入がステンレスバンド11によって妨げられることはない。
【0022】
以上の構成において、柱状構造物用プランター1を電柱2の外周面に上下方向で所定の間隔を空けて取り付けた場合について、図5(a)及び(b)を参照して雨水の流れを説明すると、先ず、電柱2の外周面を上方から流れ落ちる雨水は、上側の柱状構造物用プランター1の突出部8に形成された取水溝8aを介してプランター内部に導入され、その後、排水孔9から外部へ排水される。この際、取水溝8aは、上下に延設されて突出部8の上端に至るまで設けられ、また、上方へ向かうほど内壁部4の肉厚を薄くするように形成されているので、電柱2の外周面を流れ落ちる雨水をスムーズに取水溝8aに導き、効率よくプランター内部へ導くことが可能となる。また、排水孔9が外壁部6の下部及び底面部7に形成されているので、プランター内部の照度が向上して植物の根の発育異常を回避すると共に、プランターの内部を通過した雨水を電柱2の外周面に再び導くことが可能となる。
【0023】
そして、上側の柱状構造物用プランター1を通過した雨水は、下側の柱状構造物用プランター1においても、突出部8に形成された取水溝8aを介してプランター内部に導入され、その後、排水孔9から電柱2の外周面に沿って外部へ排水される。
【0024】
このため、電柱2の外周面を伝って流れる雨水を取水溝8aを介して効率的に容器体10の内側に導くことができるので、植栽に必要となる水分の確保が可能になると共に、管理者の給水作業を必要とせずに植栽することが可能となる。また、容器体内に導かれた水を排水孔9から排水し、その排水された水を電柱2の外周面に再び流すことが可能となるので、排水された水が下側に取り付けられた柱状構造物用プランター1の取水溝8aを介して容器体10の内側に導かれることになり、下側に取り付けた柱状構造物用プランター1の植物が枯れることを防止することが可能となる。
【0025】
さらに、取水溝8aは、突出部8の外周面に形成されているので、プランター内に入れる土等で塞がれてしまうことがなく、また、容器体10を電柱2に固定するためのステンレスバンド11が突出部8に取り付けられる場合でも、取水溝8aとステンレスバンド11との間に隙間が確保されることになるので、電柱2の外周面を伝って上方から流れ落ちる水を取水溝8aを介して容器内に導入することが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1 柱状構造物用プランター
2 電柱
4 内壁部
5 側壁部
6 外壁部
8 突出部
8a 取水溝
9 排水孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状構造物の外周面に取り付けられ、2つの容器体を合体させて構成される柱状構造物用プランターであって、
前記容器体は、柱状構造物の外周面に当接可能な凹状に形成された内壁部と、下部が縮径されるようにテーパー状に形成された外壁部と、前記内壁部と前記外壁部の両端を連接する側壁部と、該容器体の底面を構成する底面部とを備えて構成され、
前記内壁部の上部に前記柱状構造物の軸方向に沿って上端まで延びると共に、上方に向かうにつれて内壁部の肉厚を徐々に薄くする取水溝を設け、
前記外壁部の下部及び前記底面部にスリット状の排水孔を形成したことを特徴とする柱状構造物用プランター。
【請求項2】
前記内壁部は、前記外壁部よりも上方へ延出し、
前記取水溝は、前記内壁部の前記外壁部よりも延出した部分に設けられていることを特徴とする請求項1記載の柱状構造物用プランター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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