説明

株価指数先物取引システム

【課題】現物の株式取引における株価指数自体を取引対象とすることができる株価指数先物取引システムを提供する。
【解決手段】現物の株式取引における株価指数を取引対象とする株価指数先物取引システムにおける取引日終了後の日々の値洗い処理において、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、該取引日から翌取引日まで期間の金利相当額及び配当相当額を、未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行するとともに、当該一取引日における現物の株式取引における株価指数の終値を用いて未決済建玉の差金損益を算出する清算処理を遂行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融先物取引システムに関し、詳しくは、株価指数先物取引における株価指数先物取引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、東証株価指数(TOPIX(登録商標))や日経平均株価(登録商標)などの株価指数を取引対象(原資産)とし、将来の一定期日に株価指数を現時点で決めた価格で取引することを約束する株価指数先物取引がある。代表的なものとして例えば、東証株価指数先物取引、日経平均株価先物取引(日経225先物取引)などがある。
【0003】
この株価指数は、現物の株式取引における株価に基づいて、所定の算出方法により算出される指数であり、株価指数先物取引を上場する者が独自に算出したり、情報ベンダーが提供する指数である。例えば、東証株価指数は、東証(登録商標)1部上場の全銘柄の時価総額の合計を全銘柄で除算した指数であり、時価総額(株価×発行済み株式数)は株価が上がると必然的に上がるため、時価総額の高い銘柄の影響を受ける指数である。一方、日経平均株価は、株式会社日本経済新聞社が東証1部上場の銘柄から選択した225銘柄の平均株価であり、上場されている全銘柄ではなく、選択された各銘柄の株価の影響を受ける指数である。
【0004】
そして、取引対象である株価指数は、株式などの現物の株式取引のように実体が存在しないことから、転売・買戻しによる差金決済、取引期日における特別清算指数(SQ値、最終清算指数ともいう)による差金決済により決済(清算)される。
【0005】
【非特許文献1】「指数先物取引制度概要」,株式会社東京証券取引所,http://www.tse.or.jp/rules/topixf/topixf7.html
【非特許文献2】「株価指数先物取引のすべて」,株式会社大阪証券取引所,http://www.ose.or.jp/futures/doc_punf/pu_sa.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら従来の株価指数先物取引は、上述のように将来の一定期日に株価指数を現時点で決めた価格で取引することを約束する取引であり、取引において約定した建玉(未決済建玉)が決済されるまでの間、決済されるまでの保有日数に応じて金利が発生する。このため、取引期日までの金利分の金額が含まれた先物価格(株価指数)で取引されることが一般的である。
【0007】
日経平均株価先物取引を一例に説明すると、現物の株式取引における日経平均株価の値動きが10000円前後で推移している場合、日経平均株価先物取引における直近の限月の先物価格は、金利分が上乗せされた10020円前後で推移することになる。すなわち、日経平均株価先物取引の先物価格(先物株価指数)は、取引対象である日経平均株価に金利分の金額が上乗せされて価格形成がなされ、現物取引における株式の日経平均株価指数と乖離した状態となっている。
【0008】
また、株式は、企業の業績等に応じて余剰金の一部を分配する配当金を受けることができ、この配当金の授受は現物の株式取引における株価に影響を及ぼす。このため、日経平均株価先物取引では、上述の金利に加えてこの配当金が考慮された先物価格によって取引がなされる。
【0009】
このように従来の日経平均株価先物取引では、日経平均株価を取引対象としているにもかかわらず、その現物の株式取引における日経平均株価と乖離した先物価格(先物指数)による決済処理や清算処理がなされており、実質的に現物の株式取引における日経平均株価の数値自体を取引対象としていなかった。
【0010】
また、日経平均株価先物取引では、株価指数に金利や配当金が含まれているため、金利や配当金を個別に把握することは難しく、現物の株式取引における日経平均株価との乖離を適切に把握することができなかった。
【0011】
また、従来の日経平均株価先物取引は、限月取引であり、保有する建玉を次の限月に繰り延べる際に限月交代のための取引を行う必要があるため、取引コスト及び手続等が取引参加者にとって負担となっていた。
【0012】
そこで、本発明の目的は、現物の株式取引における株価指数自体を取引対象とする株価指数先物取引システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの側面における株価指数先物取引システムは、現物の株式取引における株価指数を取引対象とする株価指数先物取引システムであって、株価指数先物を取引する注文者の注文者端末からの注文情報に含まれるビット情報及びオファー情報に基づいて、株価指数先物価格に相当する取引指数のビット値及びオファー値とその取引数量を含む取引レート情報を生成し、ネットワークを介して注文者端末に提供する取引レート提供部と、注文情報を受信し、該注文情報と取引レート情報とに基づいた株価指数先物取引処理を遂行する取引制御部と、現物の株式取引における株価指数の終値、各注文者の未決済建玉、未決済建玉を繰り越した際に適用される金利、及び現物の株式取引における株価指数を構成する銘柄に対する配当金に関する情報を格納する取引データベースと、取引日終了後の日々の値洗い処理において、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、該取引日から翌取引日までの期間の金利相当額及び該取引日の配当相当額を算出し、算出された金利相当額及び配当相当額を未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行するとともに、当該取引日における現物の株式取引における株価指数の終値を用いて未決済建玉の差金損益を算出する清算処理部と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、上記清算処理部は、上記金利に基づいて各注文者の未決済建玉に対する金利相当額を算出し、買い方の金利相当額を売り方へ支払う処理を遂行するように構成することができる。
【0015】
また、上記清算処理部は、配当相当額の値洗い処理が遂行される日が予め設定された配当金の配当権利付最終日の翌日であるか否かを判別し、配当権利付最終日の翌日の取引日終了後の値洗い処理において、配当権利付最終日までに保有していた未決済建玉の数量及び配当金に基づいて算出される配当相当額を、買い方が売り方から受け取る処理を遂行するように構成することができる。
【0016】
また、上記清算処理部は、注文者端末から未決済建玉についての転売・買戻しによる決済申請に応答し、未決済建玉の約定価格と転売・買戻しの決済価格との差額のみに基づく差金決済を遂行するように構成することができる。
【0017】
また、上記取引レート提供部は、金利相当額又は/及び配当相当額が指数として除外された現物の株式取引における株価指数自体を取引指数とする取引レート情報を生成するように構成することができる。
【0018】
また、上記清算処理部は、新規に成立した未決済建玉に対し、当該取引が成立した取引日の現物の株式取引における株価指数の終値を清算価格として約定価格との第1差金損益を算出する第1値洗い差金損益処理と、値洗い処理の当日の現物の株式取引における株価指数の終値と前日の現物の株式取引における株価指数の終値との第2差金損益を算出する第2値洗い差金損益処理とを遂行するように構成でき、第1差金損益及び第2差金損益の合計額を上記差金損益として算出することができる。
【0019】
また、上記清算処理部は、差金損益、金利相当額及び配当相当額を合計した株価指数差金を注文者の証拠金情報及び現金授受額に反映するように構成することができる。
【0020】
また、上記金利は、未決済建玉の買い建玉及び売り建玉の双方に共通に適用される政策金利(無担保コール翌日物誘導目標の金利)を適用することができる。
【0021】
また、上記株価指数先物取引システムにおける株価指数先物取引は、取引期日を毎取引日とする限日取引とすることができる。
【0022】
また、上記清算処理部は、注文者が保有する未決済建玉についての訂正要請に応答し、訂正が要求された未決済建玉について既に受け渡しされた金利相当額及び配当相当額を、訂正要請を受信した日の値洗い処理に反映する訂正処理を遂行するように構成することができる。
【0023】
また、本発明の他の側面における情報処理装置は、注文者端末がネットワークを通じて接続可能であって、現物の株式取引における株価指数を取引対象とする株価指数先物取引を提供する情報処理装置であって、株価指数先物を取引する注文者端末からの注文情報に含まれるビット情報及びオファー情報に基づいて、株価指数先物価格に相当する取引指数のビット値及びオファー値とその取引数量を含む取引レート情報を生成し、注文者端末に提供する取引レート提供部と、注文情報を受信し、該注文情報と前記取引レート情報とに基づいた株価指数先物取引処理を遂行する取引制御部と、現物の株式取引における株価指数の終値、各注文者の未決済建玉、未決済建玉を繰り越した際に適用される金利、及び現物の株式取引における株価指数を構成する銘柄に対する配当金に関する情報を格納する取引データベースと、取引日終了後の日々の値洗い処理において、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、該取引日から翌取引日までの期間の金利相当額及び該取引日の配当相当額を算出し、算出された金利相当額及び配当相当額を未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行するとともに、当該取引日における現物の株式取引における株価指数の終値を用いて未決済建玉の差金損益を算出する清算処理部と、を有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の他の側面におけるプログラムは、注文者端末がネットワークを通じて接続可能であって、現物の株式取引における株価指数を取引対象とする株価指数先物取引を提供する情報処理装置で実行されるプログラムであって、上記情報処理装置に、株価指数先物を取引する注文者端末からの注文情報に含まれるビット情報及びオファー情報に基づいて、株価指数先物価格に相当する取引指数のビット値及びオファー値とその取引数量を含む取引レート情報を生成し、前記注文者端末に提供する機能と、注文情報を受信し、該注文情報と取引レート情報とに基づいた株価指数先物取引処理を遂行する機能と、現物の株式取引における株価指数の終値、各注文者の未決済建玉、未決済建玉を繰り越した際に適用される金利、及び現物の株式取引における株価指数を構成する銘柄に対する配当金に関する情報を格納する機能と、取引日終了後の日々の値洗い処理において、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、該取引日から翌取引日までの期間の金利相当額及び該取引日の配当相当額を算出し、算出された金利相当額及び配当相当額を未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行するとともに、当該取引日における現物の株式取引における株価指数の終値を用いて未決済建玉の差金損益を算出する機能と、を実現させるためのプログラムである。
【0025】
また、本発明の他の側面における情報処理装置は、現物の株式取引における株価指数を取引対象とする株価指数先物取引を提供する株価指数先物取引システムの清算処理を遂行する情報処理装置であって、株価指数先物取引の取引日終了後の日々の値洗い処理において、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、未決済建玉を繰り越した際に適用される金利及び現物の株式取引における株価指数を構成する銘柄に対する配当金に関する情報を用いて該取引日から翌取引日までの期間の金利相当額及び該取引日の配当相当額を算出し、算出された金利相当額及び配当相当額を未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行するとともに、当該取引日における現物の株式取引における株価指数の終値を用いて未決済建玉の差金損益を算出することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の他の側面における清算処理プログラムは、現物の株式取引における株価指数を取引対象とする株価指数先物取引を提供する株価指数先物取引システムの清算処理を遂行する情報処理装置で実行される清算処理プログラムであって、上記情報処理装置に、株価指数先物取引の取引日終了後の日々の値洗い処理において、取引日終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、未決済建玉を繰り越した際に適用される金利及び現物の株式取引における株価指数を構成する銘柄に対する配当金に関する情報を用いて、該取引日から翌取引日までの期間の金利相当額及び該取引日の配当相当額を算出する機能と、算出された金利相当額及び配当相当額を未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行する機能と、当該取引日における現物の株式取引における株価指数の終値を用いて未決済建玉の差金損益を算出する機能と、を実現させるための株価指数先物取引における清算処理プログラムである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、取引日終了後の日々の値洗い処理において、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、当該取引日から翌取引日までの期間の金利相当額及び配当相当額を算出し、これらを未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行するとともに、当該取引日における現物の株式取引における株価指数の終値を用いた未決済建玉の差金損益による値洗い処理を遂行するため、現物の株式取引における株価指数自体を取引対象とする株価指数先物取引を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の株価指数先物取引システムは、例えば、現物の株式取引における株価指数である日経平均株価(登録商標)を指数とする株価指数先物取引であり、現物の株式取引における株価指数自体を取引対象とした先物取引を提供する。すなわち、従来の日経平均株価先物取引の株価指数は、上述のように現物の株式取引における日経平均株価と乖離したものであり、かつ先物取引における終値を清算価格としている点において、本発明は大きく相違する。以下の実施形態では、代表的な現物の株式取引における株価指数として日経平均株価を適用して説明するが、日経平均株価に限らず、TOPIX(登録商標)等の他の現物の株式取引における株価指数を用いることができる。
【0029】
また、上述のように本発明の株価指数先物取引は、従来の日経平均株価先物取引とは異なり、3月限、6月限、9月限、12月限などの限月取引ではなく、取引期日(取引最終日)を日々の取引終了時点の当該取引日とした限日取引、言い換えれば、取引期日を毎取引日として取引日終了時点の未決済建玉が繰り延べられる取引である。そして、本発明の清算処理では、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、該取引日から翌取引日までの期間の金利相当額及び該取引日の配当相当額を、未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行し、かつ当該取引日における現物の株式取引における日経平均株価の終値を用いた未決済建玉の差金損益による日々の値洗い処理を遂行し、現物の株式取引における株価指数自体を取引対象とする株価指数先物取引を提供する(差金損益に対して建玉に付随する金利や配当を別枠で処理し、現物の株式取引における日経平均株価の終値を清算価格とした差金損益と別枠で処理された金利や配当に係る相当額とに基づいて、最終的な資金授受の金額を算出する)。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の株価指数先物取引が適用された株価指数先物取引システムの概略図である。
【0031】
図1に示すように本実施形態の株価指数先物取引システム100は、取引所が保有するコンピュータ等の情報処理装置により構成され、株価指数先物取引に参加する取引業者が保有する取引業者サーバ200及び証券会社、銀行、商社、ブローカー、保険会社、一般投資家等の各注文者が操作する注文者端末300が、インターネットや所定の専用通信回線等のネットワークNを介して接続可能に構成されている。注文者は、注文者端末300を通じ、取引業者サーバ200を介して又はネットワークNを介して株価指数先物取引システム100に直接接続することができる。注文者端末300は、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話機等の移動通信端末装置などの表示装置、通信機能及び演算機能を備えた情報処理端末である。
【0032】
本実施形態の株価指数先物取引システムでは、注文者が委託した取引業者を通じた受託取引と取引所に対して注文者が直接取引を行う直接取引とを支援することができる。例えば、本実施形態の株価指数先物取引システム100は、取引業者を通じた取引(受託取引)を支援するためのASP機能を提供する受託取引支援ASPサーバ等を別途備えることもできる。つまり、該ASPサーバが、株価指数先物取引を遂行するための表示画面、情報、その他インターフェース等の機能を取引業者サーバ200を経由して複数の注文者端末300に提供することができる。また、取引業者を介さずに取引所に対して直接取引を遂行する場合も、注文者端末300に株価指数先物取引を遂行するための表示画面、情報、その他インターフェース等の機能を提供し、注文者端末300からの株価指数先物取引遂行を支援する機能を備えることができる。
【0033】
図2は、株価指数先物取引システム100の構成ブロック図であり、取引業者サーバ200及び注文者端末300との通信制御を行うとともに、外部機関が運営するシステムやサーバとの通信制御を行う通信制御部101、注文者端末300から直接に又は取引業者サーバ200を経由して送信される注文情報を受信し、現物の株式取引における日経平均株価を株価指数とする株価指数先物取引処理を遂行する取引制御部103、注文者端末300から送信された注文情報に基づいて取引レート情報を生成して各注文者端末300に提供する取引レート提供部104、所定の取引時間終了後の清算処理を遂行する清算処理部105、注文者及び取引業者(取引参加者)の認証制御を遂行する認証制御部106、取引レート情報や取引出来高情報などを外部機関に提供する情報提供部107、取引業者と取引委託契約を締結した注文者及び取引所での直接取引を遂行する注文者(取引業者を含む取引参加者)の顧客情報(個人情報、取引条件情報等)を管理する顧客管理部1080、及び株価指数先物取引における取引情報(注文情報、注文履歴情報、約定情報、証拠金情報、入出金情報、取引レート情報、現物の株式取引における日経平均株価、現物の株式取引における日経平均株価の終値、現物の株式取引における日経平均株価の前日比、政策金利(無担保コール翌日物誘導目標の金利)、現物の株式取引における日経平均株価を構成する銘柄に対する配当金に関する情報等)を記憶する取引データベース109を備える。そして、これら各部全体は、制御部(CPU)102により制御される。
【0034】
なお、取引データベース109に格納される現物の株式取引における日経平均株価、現物の株式取引における日経平均株価の終値、現物の株式取引における日経平均株価の前日比、政策金利(無担保コール翌日物誘導目標の金利)、現物の株式取引における日経平均株価を構成する銘柄に対する配当金に関する情報は、情報提供先から取引所に対して自動的に送信され、制御部102等が取引データベース109に格納するように構成することができる。
【0035】
取引制御部103は、注文者端末300からの注文情報(新規の売り/買い注文、転売・買戻しによる決済注文など)を受信し、各注文者の複数の買い注文及び売り注文の中から当該注文情報にマッチングする取引レートとの間での注文の成否を決定する処理(マッチング処理及び約定処理)を行い、これら処理結果を注文者端末300に送信するとともに取引データベース109に格納する。また、決済注文の場合、取引制御部103による約定処理後、清算処理部105が、決済注文に付随して又は個別に注文者端末から未決済建玉についての転売・買戻しによる決済申請を受信し、これに応答して未決済建玉の約定価格と転売・買戻しの決済価格との差額と、当該建玉の金利相当額の累積値及び配当相当額の累積値に基づく差金決済を遂行する。なお、決済方式は、FIFO方式を適用することができ、保有している買い建玉(売り建玉)について反対の売り建玉(買い建玉)が約定した場合、自動的に最も古い買い建玉から順番に決済されることになる。この場合において、清算処理部105は、買い建玉の約定価格に対して売り建玉の約定価格を決済価格として、その差額のみに基づく差金決済を遂行する。
【0036】
取引レート提供部104は、株価指数先物を取引する注文者の注文者端末300からの注文情報に含まれるビット情報及びオファー情報に基づいて、株価指数先物価格に相当する取引指数のビット値及びオファー値とその取引数量を含む取引レート情報を生成し、ネットワークNを介して注文者端末300に生成した取引レート情報を提供する。生成された取引レート情報は、取引データベース109に格納される。ここで、取引レート提供部104は、後述する金利相当額及び配当相当額が指数として除外された日経平均株価自体を取引指数とする取引レート情報を生成する。図3(b)は、取引レート情報が表示された取引レート画面の一例を示す図である。
【0037】
清算処理部105は、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉(取引日当日に約定した建玉及び取引日以前に約定して繰り延べされた建玉を含む)に対し、取引日終了後の日々の値洗い処理(清算処理)を遂行する。値洗いは、株価指数先物取引における未決済建玉について清算価格により日々評価替えを行う処理であり、本実施形態では、当該取引日から翌取引日までの期間の各未決済建玉に対する金利相当額及び該取引日における配当相当額を算出し、これら相当額を未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理と、当該取引日における現物の株式取引における日経平均株価の終値を用いた未決済建玉の差金損益を算出する処理とを遂行する。
【0038】
ここで、金利相当額とは、株価指数先物取引における建玉についてロールオーバー(当限の建玉を手仕舞うと同時に翌限で同一内容の建玉を保有すること)がなされたことにより予定されていた差金決済の取引期日が繰り延べられた結果、当該建玉について繰り延べられた日数に応じて発生する利息である。
【0039】
つまり、本実施形態では取引期日を毎取引日とする限日取引であるため、清算処理部105は、日々の値洗い処理において転売・買い戻しによる差金決済がなされなかった当該取引日限の未決済建玉を手仕舞うと同時に翌日の取引日限とする同一内容の建玉を発生させ、翌日の取引日を決済期限とする建玉の繰り越しを行う。このとき、取引終了時点の当該取引日から翌取引日までの期間に金利相当額が発生する。したがって、この繰り越しの際の繰り延べられた日数に応じた建玉一枚当りの金利相当額(政策金利×清算価格(現物の株式取引における日経平均株価の終値)×取引単位(100円)×(日数÷365))として算出することができ、算出された金利相当額を買い方(買い建玉を保有する者)が売り方(売り建玉を保有する者)へ支払う処理を遂行する。なお、この政策金利は、未決済建玉の買い建玉及び売り建玉の双方に共通に適用される(同じ金利が適用される)。
【0040】
配当相当額とは、現物の株式取引における日経平均株価を構成する銘柄に配当金の支払が見込まれる場合、見込まれる配当金の支払いが日経平均株価に与える理論上の影響値(日経平均ベースの配当落ち)に相当する額である。
【0041】
清算処理部105は、配当金の配当権利付最終日の翌日の取引日終了後の値洗い処理において、配当権利付最終日までに保有していた未決済建玉の数量及び配当金に基づいて配当相当額を算出し、算出された配当相当額を買い方が売り方から受け取る(売り方が買い方に支払う)処理を遂行する。具体的には、建玉一枚当りの配当相当額は、配当相当額×取引単位(100円)で算出することができる。配当金の配当権利付き最終日の翌日以外の取引日における日々の値洗い処理では、配当相当額を0円として計算するように構成することができる。このとき、清算処理部105は、配当相当額の値洗い処理が遂行される日が取引データベース109に予め設定・登録された配当金の配当権利付最終日の翌日であるか否かを判別し、配当権利付最終日の翌日の取引日終了後の値洗い処理において、配当相当額の算出及び授受の処理を遂行するように構成することができる。また、値洗い処理が遂行される日により判別以外にも、取引データベース109への配当金に関する情報の入力をトリガーとしたり、システム管理者等が配当権利付最終日の翌日の値洗い処理において、これらの処理を遂行するように指示入力することも可能である。
【0042】
そして、清算処理部105は、現物の株式取引における日経平均株価の終値を清算価格として算出された差金損益、上述の金利相当額及び配当相当額を合計した株価指数差金を算出し、この株価指数差金を値洗い結果として注文者の証拠金情報及び現金授受額に反映し、取引データベース109を更新する。
【0043】
また、本実施形態の清算処理部105は、日々の値洗い処理における清算価格が、現物の株式取引における日経平均株価の終値であることから、新規に成立した未決済建玉に対し、当該取引が成立した取引日の現物の株式取引における日経平均株価の終値と約定価格との引直損益(第1差金損益)を算出する第1値洗い差金損益処理と、前日までに取引が成立した未決済建玉に対し、値洗い処理の当日の現物の株式取引における日経平均株価の終値と前日の現物の株式取引における日経平均株価の終値との更新損益(第2差金損益)を算出する第2値洗い差金損益処理とを遂行するように構成することができる。
【0044】
すなわち、本実施形態の清算処理は、取引日終了後の日々の値洗い処理において日々の現物の株式取引における日経平均株価の終値を清算価格とするため、建玉についての差金損益は、取引が成立した日の当該建玉の約定価格と清算価格との差金(引直損益)と、前日までに取引が成立した建玉についての日経平均株価の終値と前日の日経平均株価の終値との差金(更新損益)を合計した値が、日々の値洗い処理における未決済建玉の差金損益となる。
【0045】
したがって、建玉がロールオーバーされる際、一度引直差金が算出された後は、現物の株式取引における日経平均株価の終値の前日比(更新損益)のみを取引データベース109に格納しておけば(前日比(更新損益)のみを用いることで)、建玉の約定価格を用いた差金算出処理を行う必要なく、日々の値洗い処理における差金損益を算出することができる(図5参照)。
【0046】
図3(a)は、本実施形態の株価指数先物取引の取引概要を示す図であり、図4は、本実施形態の値洗い処理を説明した模式図である。図4に示すように、現物の株式取引の日経平均株価の値動きに対し、本実施形態の値洗い処理は、転売・買戻しが行われなかった建玉又は新規に約定した建玉に係る金利相当額が、取引日毎の日々の値洗い処理において差金損益に含まれることなく別途算出され、株価指数差金に含まれた形で証拠金等に反映される。また、別途算出していることから、差金損益と個別に、金利相当額を未決済建玉毎に提示することもできる。
【0047】
また、権利付き最終日と同じ取引日、図4の例では、権利付き最終日(3月27日)の取引終了時点における建玉について、権利付き最終日の翌日の配当権利落ち日(3月28日)の値洗い処理で配当相当額が、差金損益に含まれることなく別途算出され、株価指数差金に含まれた形で証拠金等に反映される。また、別途算出していることから、差金損益と個別に、配当相当額を未決済建玉毎に提示することもできる。
【0048】
次に、本実施形態の株価指数先物取引システム100の処理遷移について、図6及び図7を参照して詳細に説明する。
【0049】
注文者は、株価指数先物取引を行うにあたり、自身のコンピュータ(注文者端末300)から取引業者サーバ200を経由して、若しくは直接株価指数先物取引システム100にアクセスし、株価指数先物取引を遂行するためにログインする(ステップS301,S201)。なお、注文者と取引業者は、注文者端末300及び取引業者サーバ200を介して、顧客情報登録処理、注文者識別ID及びパスワードの発行処理、注文者(取引業者)の与信審査処理、口座開設処理などを事前に行い、注文者は、取引業者から取引開始権限が付与されている。これらの認証処理は、認証制御部106により遂行される。
【0050】
認証制御部106は、注文者からの取引開始要求に応答して認証処理を遂行し(ステップS102)、認証がOKである場合、取引制御部103及び取引レート提供部104が当該注文者に対する取引処理を開始する(ステップS103)。
【0051】
取引制御部103は、図3(a)に示す取引概要情報を注文者端末300に送信するとともに、取引レート提供部104が、取引価格(株価指数)及び取引数量を注文者端末300に提供する(図3(b)参照)。なお、本実施形態の取引レートは、為替取引のように特定のマーケットメーカーによるビット情報/オファー情報に基づいて生成されるのではなく、各注文者の注文情報(ビット情報/オファー情報)に基づいて価格形成が成される従来の競争売買(オークション)方式により取引価格が形成される。
【0052】
注文者は、取引レート画面を参照しながら不図示の注文画面から取引価格(株価指数)及び取引数量を入力し、注文情報を取引業者サーバ200を経由して株価指数先物取引システム100に送信する。注文情報を受信した取引制御部103は、各注文者の複数の買い注文及び売り注文の中から当該注文情報にマッチングする取引レートとの間での注文の成否の決定処理(マッチング処理及び約定処理)を行い(ステップS105)、これら処理結果を注文者端末300に送信する(ステップS107)。また、このとき取引制御部103は、該決定処理に際してこれらの注文情報、取引結果情報などを取引データベース109に格納する。なお、清算処理部105は、転売・買戻しによる決済注文を受信した場合、差金決済処理を遂行する(ステップS106)。
【0053】
また、取引業者サーバ200は、ステップS202において注文者端末300からの注文情報を受信した際、取引業者サーバ200に予め登録されている顧客情報に基づく与信処理、例えば、注文内容が証拠金情報等に基づく取引条件と合致するかなどの与信処理を行うことができる。この与信処理の結果、注文者端末300から送信された注文情報が取引条件等に合致しない場合には、注文情報にエラー情報が含まれるとして、注文者端末300に対して注文情報エラー通知を送信する。例えば、証拠金及びレバレッジの関係等から設定される取引可能上限金額を超えている場合、その注文を受け付けないようにすることができる。
【0054】
続いて、図7に示すように、取引所によって任意に定められた取引時間終了(マーケットクローズ)時刻になった場合、株価指数先物取引システム100は、株価指数先物取引のマーケットクローズ処理を遂行する(ステップS108)。このマーケットクローズ処理は、日々の取引価格の変化により評価損が発生した場合、証拠金の積み増しが必要となるため、取引開始時間から取引終了時間までに取引された又は前日から繰り越された保有する未決済の建玉を確定させ、各注文者の未決済建玉の評価替え(値洗い)を行うための清算処理である。このため、株価指数先物取引システム100は、未決済建玉の評価替えを行うための基準価格となる清算価格を算出する(ステップS109)。
【0055】
具体的には、清算処理部105は、取引データベース109に格納されている当該取引日の現物の株式取引における日経平均株価の終値を清算価格として決定し、当該取引日における政策金利及び配当金に関する情報を更新(登録)する(ステップS110)。
【0056】
その後、清算処理部105は、値洗い処理を遂行し(ステップS111)、値洗い処理の結果(値洗い情報)を取引業者サーバ200を介して注文者端末300に送信する(ステップS112)。
【0057】
図8は、本実施形態の清算処理の処理フローを示したフローチャートである。図8に示すように株価指数先物取引システム100の清算処理部105は、マーケットクローズ後に、現物の株式取引における日経平均株価の終値を清算価格とする値洗い処理を各注文者が保有する建玉について遂行する。
【0058】
まず、清算処理部105は、現物の株式取引におけるこの日の日経平均株価の終値をネットワークNを介して受信し、該日経平均株価の終値を値洗い処理を行う処理当日の清算価格として取引データベース109に格納する(ステップS801)。また、この日の政策金利及び配当金に関する情報を更新(登録)する(ステップS802)。
【0059】
次に、清算処理部105は、取引データベース109を参照し、各注文者の未決済建玉を抽出して、日経平均株価の終値を用いた当該未決済建玉の差金損益を算出する(ステップS803)。また、清算処理部105は、取引期日を取引終了時点の取引日とした未決済建玉に対する金利相当額及び配当相当額を算出する(ステップS804,S805)。
【0060】
その後、清算処理部105は、算出された金利相当額を買い方(買い建玉を保有する者)から売り方(売り建玉を保有する者)へ支払う処理、言い換えれば、買い建玉に対する金利相当額をマイナスとし、売り建玉に対する金利相当額をプラスとして、買い建玉の金利相当額を売り建玉の金利相当額に割り当て、買い方及び売り方の間で金利相当額の受け渡す処理を遂行する(ステップS806)。
【0061】
同様に清算処理部は、算出された配当相当額を売り方(売り建玉を保有する者)から買い方(買い建玉を保有する者)へ支払う処理、言い換えれば、買い建玉に対する配当相当額をプラスとし、売り建玉に対する配当相当額をマイナスとして、売り建玉の配当相当額を買い建玉の配当相当額に割り当て、買い方及び売り方の間で配当相当額の受け渡す処理を遂行する(ステップS807)。
【0062】
そして、清算処理部105は、日経平均株価の終値を清算価格として算出された差金損益、上述の金利相当額及び配当相当額を合計した株価指数差金を算出し(ステップS808)、この株価指数差金を値洗い結果として注文者の証拠金情報及び現金授受額に反映し、取引データベース109を更新する(ステップS809)。
【0063】
このように本実施形態の株価指数先物取引は、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、該取引日から翌取引日までの期間の金利相当額及び該取引日の配当相当額を、当該未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行し、かつ当該取引日における現物の株式取引における平均株価の終値を用いた未決済建玉の差金損益による日々の値洗い処理を遂行するので、現物の株式取引における株価指数自体を取引対象とする株価指数先物取引を提供することが可能となる。
【0064】
すなわち、取引対象である日経平均株価に金利や配当金に関連する指数が含まれず、現物の株式取引における日経平均株価自体を取引対象とした株価指数先物取引を実現することが可能となる。
【0065】
したがって、従来の日経平均株価先物取引では、株価指数に金利や配当金が含まれているため、金利や配当金を個別に把握することは難しく、現物の株式取引における日経平均株価指数との乖離を適切に把握することができなかったが、本実施形態の株価指数先物取引では、株価指数に金利や配当金が含まれていないため、日経平均株価自体を取引することができるとともに、株価指数と独立して金利や配当金を容易に把握することができる。
【0066】
また、本実施形態の株価指数先物取引は、取引期日を取引終了時点の一取引日とする限日取引であるため、従来の日経平均株価先物取引のように保有する建玉を次の限月に繰り延べる際に限月交代のための取引を行う必要がなく、取引コスト及び手続等を低減することができる。
【0067】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態における株価指数先物取引システムの訂正処理の処理遷移を示すフローチャートであり、上記第1実施形態の株価指数先物取引システムが、未決済建玉の訂正機能を具備する実施形態である。
【0068】
訂正処理の一例としてギブアップシステムの利用がある。このギブアップとは、本来は取引の清算(証拠金および損益の管理を含む)を他の取引参加者に行わせる制度であるが、該ギブアップシステムは一度約定した建玉を訂正する訂正処理のツールとして利用される。従来の先物取引においても一般的に適用される制度である。本実施形態では、このギブアップシステムを利用した建玉の訂正処理を清算処理部105が具備している。
【0069】
通常、従来の先物取引では、単純に訂正を申告した取引参加者(注文執行取引参加者)から訂正先に指定され、該申告を承認した取引参加者(清算執行取引参加者)にて清算がなされ、それに伴う差金等の修正を行うことで処理することができたが、本実施形態の株価指数先物取引は、従来の処理に加え、建玉に係る金利及び配当金を注文執行取引参加者と清算執行取引参加者との間で受け渡しする必要がある。つまり、日々の値洗い処理において取引期日を取引終了時点の一取引日とした(限日取引)未決済建玉に対する金利相当額及び配当相当額を、当該未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行しているため、既に値洗い処理がなされた未決済建玉が訂正される場合、注文執行取引参加者が授受した未決済建玉に対する金利相当額及び配当相当額を、訂正先である清算執行取引参加者との間で調整する必要がある。
【0070】
そこで、清算処理部105は、注文者が保有する未決済建玉についての訂正要請に応答し、訂正が要求された未決済建玉について既に(過去に)受け渡しされた金利相当額及び配当相当額を、訂正要請を受信した日の値洗い処理に反映する訂正処理を遂行する。
【0071】
具体的には、清算処理部105は、訂正処理要求があった場合に、該要求に含まれる訂正する建玉、建玉訂正先の情報に基づいて訂正建玉、訂正建玉数及び訂正先を決定する(ステップS901)。決定された訂正建玉について適用された金利及び配当金に関する情報を取引データベース109から取得し、訂正建玉数に基づく金利相当額及び配当相当額を算出する(ステップS902)。そして、訂正先の清算執行取引参加者に訂正建玉数、訂正建玉の金利相当額及び配当相当額を割り当てる処理を遂行する(ステップS903)。
【0072】
すなわち、訂正建玉が買い建玉であれば、訂正建玉数についての金利相当額を注文執行参加者から清算執行取引参加者に支払い、売り建玉であれば注文執行取引参加者から清算執行取引参加者に支払うように金利相当額を割り当てる。また、訂正建玉数についての配当相当額も同様に、訂正建玉が買い建玉であれば、注文執行取引参加者から清算執行取引参加者に支払い、売り建玉であれば清算執行取引参加者から注文執行取引参加者に支払うように配当相当額を割り当てる。そして、清算処理部105は、値洗い処理において算出する株価指数差金に訂正建玉分の金利相当額及び配当相当額に含めて各々の取引参加者の証拠金に反映する(ステップS904)。
【0073】
なお、この訂正処理におけるステップS901からステップS903は、値洗い処理に含めて遂行するように構成することができ、また、値洗い処理と独立してギブアップシステムを利用した訂正の要求があった際に遂行するによう構成することができる。
【0074】
以上、本発明を好ましい実施形態に則して説明したが、上記実施形態における情報処理装置は、ハードウェア構成として上述以外にも、キーボード、マウス、スキャナー等の操作入力手段、液晶ディスプレイ等の表示手段、プリンタ、スピーカなどの出力手段、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置(ハードディスク等)等を備えることが可能であり、注文者端末においてもこれらの手段を備えることができる。各手段に制御は、全体の制御を司る制御手段(CPU)により遂行される。
【0075】
また、本発明の株価指数先物取引システムは、図2に示す各部を各々異なるサーバ装置等の情報処理装置で実現し、ネットワーク等の通信回線を介して複数の情報処理装置が接続されたシステムとして構成することもできる。すなわち、各処理部及びデータベース毎に分散されたシステム構成とすることが可能である。
【0076】
また、上記実施形態の清算処理部105は、株価指数先物取引システム100から情報を受け取って清算処理を遂行する独立した清算処理装置として構成することも可能である。
【0077】
また、本発明の株価指数先物取引の各処理ステップ及び清算処理の各ステップは、コンピュータで実行可能なプログラムとして提供することも可能であり、当該プログラムがインストールされたコンピュータは、本発明の株価指数先物取引及び清算処理を遂行する情報処理装置として動作することが可能である。例えば、不図示の補助記憶装置に当該プログラムが格納され、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出された該プログラムを制御部が実行し、コンピュータに本発明の株価指数先物取引及び清算処理の各処理を動作させることができる。また、本発明のプログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された状態で提供可能である。コンピュータ読取可能な記録媒体としては、CD−ROM等の光ディスク、DVD−ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
【0078】
そして、本発明の詳細な説明では具体的な実施形態に則して説明したが、本発明の技術分野において熟練した当業者にとっては、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想及びその領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更させることができる。すなわち、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきであり、発明を実施するための最良の形態により制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1実施形態における株価指数先物取引システムの概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態における株価指数先物取引システムの構成ブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態における株価指数先物取引を説明するための図であり、(a)は、取引概要を示す図、(b)は取引レート情報(取引レート画面)を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態における株価指数先物取引の値洗い処理を説明した模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態における未決済建玉の一例を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態における株価指数先物取引システムの処理遷移を示すフローチャートである。
【図7】図6に続く本発明の第1実施形態における株価指数先物取引システムの処理遷移を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態における株価指数先物取引システムにおける清算処理の処理遷移を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態における株価指数先物取引システムの訂正処理の処理遷移を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
100 株価指数先物取引システム
101 通信制御部
102 制御部(CPU)
103 取引制御部
104 取引レート提供部
105 清算処理部
106 認証制御部
107 情報提供部
108 顧客管理部
109 取引データベース
200 取引業者サーバ
300 注文者端末
N ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現物の株式取引における株価指数を取引対象とする株価指数先物取引システムであって、
株価指数先物を取引する注文者の注文者端末からの注文情報に含まれるビット情報及びオファー情報に基づいて、株価指数先物価格に相当する取引指数のビット値及びオファー値とその取引数量を含む取引レート情報を生成し、ネットワークを介して前記注文者端末に提供する取引レート提供部と、
前記注文情報を受信し、該注文情報と前記取引レート情報とに基づいた株価指数先物取引処理を遂行する取引制御部と、
前記現物の株式取引における株価指数の終値、各注文者の未決済建玉、前記未決済建玉を繰り越した際に適用される金利、及び前記株価指数を構成する銘柄に対する配当金に関する情報を格納する取引データベースと、
取引日終了後の日々の値洗い処理において、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、該取引日から翌取引日までの期間の金利相当額及び該取引日の配当相当額を算出し、前記算出された金利相当額及び配当相当額を未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行するとともに、当該取引日における前記現物の株式取引における株価指数の終値を用いて未決済建玉の差金損益を算出する清算処理部と、
を有することを特徴とする株価指数先物取引システム。
【請求項2】
前記清算処理部は、前記金利に基づいて各注文者の未決済建玉に対する前記金利相当額を算出し、前記買い方の金利相当額を前記売り方へ支払う処理を遂行することを特徴とする請求項1に記載の株価指数先物取引システム。
【請求項3】
前記清算処理部は、前記配当相当額の値洗い処理が遂行される日が予め設定された前記配当金の配当権利付最終日の翌日であるか否かを判別し、前記配当権利付最終日の翌日の取引日終了後の値洗い処理において、前記配当権利付最終日までに保有していた未決済建玉の数量及び前記配当金に基づいて算出される前記配当相当額を、前記買い方が前記売り方から受け取る処理を遂行することを特徴とする請求項1又は2に記載の株価指数先物取引システム。
【請求項4】
前記清算処理部は、前記注文者端末から前記未決済建玉についての転売・買戻しによる決済申請に応答し、前記未決済建玉の約定価格と前記転売・買戻しの決済価格との差額のみに基づく差金決済を遂行することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の株価指数先物取引システム。
【請求項5】
前記取引レート提供部は、前記金利相当額又は/及び配当相当額が指数として除外された前記現物の株式取引における株価指数自体を取引指数とする前記取引レート情報を生成することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の株価指数先物取引システム。
【請求項6】
前記清算処理部は、新規に成立した未決済建玉に対し、当該取引が成立した取引日の現物の株式取引における株価指数の終値を清算価格として約定価格との第1差金損益を算出する第1値洗い差金損益処理と、前記値洗い処理の当日の現物の株式取引における株価指数の終値と前日の現物の株式取引における株価指数の終値との第2差金損益を算出する第2値洗い差金損益処理とを遂行し、
前記第1差金損益及び第2差金損益の合計額を前記差金損益として算出することを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の株価指数先物取引システム。
【請求項7】
前記清算処理部は、前記差金損益、前記金利相当額及び前記配当相当額を合計した株価指数差金を前記注文者の証拠金情報及び現金授受額に反映することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の株価指数先物取引システム。
【請求項8】
前記金利は、前記未決済建玉の買い建玉及び売り建玉の双方に共通に適用される政策金利(無担保コール翌日物誘導目標の金利)であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の株価指数先物取引システム。
【請求項9】
前記株価指数先物取引は、取引期日を毎取引日とする限日取引であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の株価指数先物取引システム。
【請求項10】
前記清算処理部は、前記注文者が保有する未決済建玉についての訂正要請に応答し、訂正が要求された未決済建玉について既に受け渡しされた前記金利相当額及び前記配当相当額を、前記訂正要請を受信した日の前記値洗い処理に反映する訂正処理を遂行することを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の株価指数先物取引システム。
【請求項11】
注文者端末がネットワークを通じて接続可能であって、現物の株式取引における株価指数を取引対象とする株価指数先物取引を提供する情報処理装置であって、
株価指数先物を取引する前記注文者端末からの注文情報に含まれるビット情報及びオファー情報に基づいて、株価指数先物価格に相当する取引指数のビット値及びオファー値とその取引数量を含む取引レート情報を生成し、前記注文者端末に提供する取引レート提供部と、
前記注文情報を受信し、該注文情報と前記取引レート情報とに基づいた株価指数先物取引処理を遂行する取引制御部と、
前記現物の株式取引における株価指数の終値、各注文者の未決済建玉、前記未決済建玉を繰り越した際に適用される金利、及び前記現物の株式取引における株価指数を構成する銘柄に対する配当金に関する情報を格納する取引データベースと、
取引日終了後の日々の値洗い処理において、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、該取引日から翌取引日までの期間の金利相当額及び該取引日の配当相当額を算出し、前記算出された金利相当額及び配当相当額を未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行するとともに、当該取引日における前記現物の株式取引における株価指数の終値を用いて未決済建玉の差金損益を算出する清算処理部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項12】
注文者端末がネットワークを通じて接続可能であって、現物の株式取引における株価指数を取引対象とする株価指数先物取引を提供する情報処理装置で実行されるプログラムであって、前記情報処理装置に、
株価指数先物を取引する前記注文者端末からの注文情報に含まれるビット情報及びオファー情報に基づいて、株価指数先物価格に相当する取引指数のビット値及びオファー値とその取引数量を含む取引レート情報を生成し、前記注文者端末に提供する機能と、
前記注文情報を受信し、該注文情報と前記取引レート情報とに基づいた株価指数先物取引処理を遂行する機能と、
前記現物の株式取引における株価指数の終値、各注文者の未決済建玉、前記未決済建玉を繰り越した際に適用される金利、及び前記現物の株式取引における株価指数を構成する銘柄に対する配当金に関する情報を格納する機能と、
取引日終了後の日々の値洗い処理において、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、該取引日から翌取引日までの期間の金利相当額及び該取引日の配当相当額を算出し、前記算出された金利相当額及び配当相当額を未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行するとともに、当該取引日における前記現物の株式取引における株価指数の終値を用いて未決済建玉の差金損益を算出する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項13】
現物の株式取引における株価指数を取引対象とする株価指数先物取引を提供する株価指数先物取引システムの清算処理を遂行する情報処理装置であって、
前記株価指数先物取引の取引日終了後の日々の値洗い処理において、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、当該未決済建玉を繰り越した際に適用される金利及び前記現物の株式取引における株価指数を構成する銘柄に対する配当金に関する情報を用いて該取引日から翌取引日までの期間の金利相当額及び該取引日の配当相当額を算出し、前記算出された金利相当額及び配当相当額を未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行するとともに、当該取引日における前記現物の株式取引における株価指数の終値を用いて前記未決済建玉の差金損益を算出することを特徴とする情報処理装置。
【請求項14】
現物の株式取引における株価指数を取引対象とする株価指数先物取引を提供する株価指数先物取引システムの清算処理を遂行する情報処理装置で実行される清算処理プログラムであって、前記情報処理装置に、
前記株価指数先物取引の取引日終了後の日々の値洗い処理において、取引終了時点において注文者が保有する未決済建玉に対し、未決済建玉を繰り越した際に適用される金利及び前記現物の株式取引における株価指数を構成する銘柄に対する配当金に関する情報を用いて該取引日から翌取引日までの期間の金利相当額及び該取引日の配当相当額を算出する機能と、
前記算出された金利相当額及び配当相当額を未決済建玉の買い方及び売り方との間で受け渡す処理を遂行する機能と、
当該取引日における前記現物の株式取引における株価指数の終値を用いて未決済建玉の差金損益を算出する機能と、
を実現させるための清算処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−134661(P2010−134661A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309167(P2008−309167)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(501167611)株式会社東京金融取引所 (8)