説明

核酸の抽出方法

アルカリ試薬とそれに続く酸性溶液、および細胞やウィルスを破壊するために初めにいかなる溶解もせずに、全血を含む生物サンプルから核酸を遊離させることのできる固相結合材料の使用を伴う、生物サンプルからの核酸、特にRNAの、迅速で簡便な抽出と単離のための方法と材料である。細胞もしくはウィルスを溶解させるための洗浄剤やカオトロピック物質は不要であり、使用されない。ウィルス、バクテリアおよびホ乳類のゲノムRNAが、本発明の方法を用いて得ることができる。本方法により得られたRNAは、RT−PCRなどの下流のプロセスでの使用に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体由来の材料からの核酸、特にリボ核酸の簡便な捕捉・抽出方法に有用な材料に関する。
【背景技術】
【0002】
医学研究、医療診断、薬剤探索に応用される現代分子生物学の方法論において、リボ核酸(RNA)の研究が採用されることが増えてきている。RNAはメッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、およびリボソーマルRNA(rRNA)として存在する。ノーザンブロッティング、リボヌクレアーゼ防御法およびRT−PCRといったいくつかの現代分子生物学の技法は、分析の前に、分解していない純粋なRNAが単離されることを必要とする。特定のmRNA配列の存在やmRNAの発現量の研究は一般的なものになった。mRNAの分析、特にマイクロアレイを使ったものは分子生物学研究において非常に強力なツールである。サンプル中のmRNA配列の量を測定することで、個々の遺伝子の正もしくは負の制御が測定される。mRNAの量は外部刺激や疾病の状態の相関として評価することができる。例えば、p53mRNAの量の変化は様々な細胞タイプにおけるガンと明確に関連付けられてきた。
【0003】
加えて、HIV、HCV、西ナイル熱ウィルス、ウマ脳炎ウィルスおよびエボラウィルスを含む、ヒトの健康に多大な影響を与える多くのウィルスがRNAゲノムを有する。体液や組織からウィルスRNAを素早く、きれいに抽出できることはウィルス研究と感染病の診断と治療において重要である。
【0004】
現在のRNA抽出法は、多様な技法の1つである細胞の破壊、即ち溶解する方法から始まり、RNAを溶液中に遊離させ、そして内在性RNaseによる分解からRNAを保護する。溶解はRNAを、DNAやタンパク質とともに遊離させるが、次の段階でRNAはこれらから分離されなくてはならない。その後、RNAは溶解するよう処理されるか、または沈殿するよう処理される。細胞溶解、RNAの溶解およびRNase阻害を同時に行うためにカオトロピックなグアニジウム塩を使用することは、Chirgwin et al,Biochem.,18,5294−5299(1979)に開示されている。他
の方法では、低pH中でフェノール/クロロホルムにより抽出をすることにより、可溶化RNAをタンパク質とDNAから分離する(D.M.Wallace,Meth.Enzym.,15,33−41(1987))。一般的に使用されるワンステップRNA単離法は、4Mのグアニジウム塩、酢酸ナトリウム(pH4)、フェノールおよびクロロホルム/イソアミルアルコールで連続的に細胞を処理することを含む。サンプルは遠心され、RNAはアルコールの添加により上層から沈殿する(P.Chomczynski,Anal.Biochem.,162,156−159(1987))。米国特許4,843,155には、フェノールと酸性pHのグアニジウム塩の安定した混合物が細胞に加えられる方法が記載されている。クロロホルムによる相分離の後、水性相中のRNAはアルコールを加えての沈殿により回収される。
【0005】
他の方法としては、熱したフェノールを細胞懸濁液に加えることによるアルコール沈殿(T.Maniatis et al,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1982))、細胞を溶解、細胞質中のRNAを遊離させるためのアニオン性または非イオン性界面活性剤の使用、およびバナジルリボ核酸複合体およびジエチルピロカーボネートなどのRNase阻害剤の使用(L.G.Davis et al,“Guanidine Isothiocyanate Preparation of Total RNA”and“RNA Preparation:Mini Method”in Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier,New York,pp.130−138(1991))が挙げられる。
【0006】
ガラスや他の固相に結合させることによる生物試料からのDNAとRNAの両方の単離方法は、米国特許5,234,809(Boom et al)に開示されている。血清や尿などの生物試料中に存在する細胞は、EDTAと界面活性剤TritonX−100を含むTris−HCl(pH8.0)中のグアニジウムチオシアネートの高濃度(>5M)溶液にさらすことで溶解される。DNAおよびRNAと可逆的な複合体を形成する珪藻土もしくはシリカ粒子とインキュベーションすることにより、DNAおよびRNAは生物試料から精製された。
【0007】
Gillespie米国特許5,155,018には、DNA、タンパク質、炭水化物や他の細胞の構成材料も含むことのできる、生物学的に活性のあるRNAを生物試料から単離、精製するための手順が提供されている。RNAは、高濃度で酸性のカオトロピック塩からなる結合溶液の存在下において、生物試料を細かく分解されたガラスまたは珪藻土と接触させることにより単離される。これらの条件のもと、RNAは選択的にシリカ粒子材料と結合することが主張されているが、その後にDNAを除去するため固体材料をエタノール塩溶液で処理することも開示されている。その後、他の研究者により、DNAによるコンタミネーションが起こることが確かめられた。粒子に結合したRNAは、サンプル中に含まれる他の生体物質から容易に分離することができる。粒子に結合したRNAは、非特異的に吸着した物質を除くために洗浄されることが好ましい。結合したRNAは希釈した塩緩衝液による溶出で粒子から遊離され、十分に純粋で、生物学的に活性のあるRNAが回収される。RNAの選択的な結合という主張には疑義があるが、溶出液中のDNAを破壊するためにヌクレアーゼを加えることもまた開示されている。Kuroita et al.米国特許5,990,302には、サンプル、カオトロオープ、リチウム塩、酸性溶液、核酸キャリアーを混合することによるGillespireのRNA単離法の派生法が提供されている。Ekenberg米国特許6,218,531にはRNAをシリカ固相に結合させる前にクリアーな溶解液を形成するため、RNAと混入物質を含む溶液を希釈緩衝液と混合するという、もうひとつの発展型が提供されている。洗浄は、DNAとタンパク質の沈殿によって影響を受ける。希釈緩衝液は水であってもよいが、中性pHのSSCのような緩衝液や塩を含むものが好ましく、SDSのような洗浄剤を含むことがさらに好ましい。
【0008】
1価のカチオン性界面活性剤の単量体が細胞を溶解するのと同時に、溶液からRNAとDNAを沈殿させることができることが米国特許5,010,183と5,985,572に記載されている。これらの特許文献中においてRNAは初め不溶性にされる。’183特許の方法において、40%尿素と他の添加剤を含む第四級アンモニウム界面活性剤が細胞懸濁液に加えられ、その混合物が遠心される。ペレットはエタノール中に再懸濁され、そこから核酸は塩を加えることにより沈殿する。
【0009】
Michelsen et al.米国特許6,355,792には、6.5より低いpHの緩衝液で液体サンプルを酸性化し、その酸性溶液を水酸基を有する無機酸化物材料と接触させ、核酸が結合した固体材料を液体から分離し、かつ、pHが7.5〜11、好ましくは8〜8.5のアルカリ溶液によって溶出することによる核酸の単離方法が開示されている。この酸性溶液は、イオン性洗浄剤、カオトロープを含まず、いずれのイオンも0.2M未満である。実施例は、捕捉前に核酸が溶液中に遊離していることを前提とする方法を使用することを反映している。
【0010】
WO00/66783と欧州特許1206571B1には、核酸を含むと思われるサンプルを7より低いpHの下、水溶性で弱塩基性のポリマーと接触させ、サンプル中に存在するすべての核酸が結合した弱塩基性のポリマーの水不溶性沈殿を形成し、その水不溶性沈殿をサンプルから分離し、沈殿物を塩基と接触させて溶液のpHを7よりも上げ、それにより核酸を弱塩基性のポリマーから遊離することによる、水溶性サンプル中の遊離した、細胞外の核酸を単離する方法が開示されている。該ポリマーは、酸性pHではプロトン化されpHを上げると中和されるアミン基を含む。
【0011】
Backus et al.米国特許5,582,988と欧州特許0707077B1には、7より低いpHの下、核酸を含むと思われる溶解液を、溶解液中の核酸すべてと結合して弱塩基性のポリマーの水不溶性沈殿を形成するのに十分な量の水溶性かつ弱塩基性のポリマーと接触させること、その水不溶性沈殿を溶解液から分離すること、また、その沈殿を塩基に接触させて溶液のpHを7よりも上げ、それにより前記核酸を前記弱塩基性のポリマーから遊離すること、という手順を含む溶解液からの核酸を得るための方法が開示されている。
【0012】
Heath米国特許5,973,137には、アニオン性洗浄剤、キレート剤、6より低いpHの緩衝液からなる細胞溶解試薬でサンプルを処理することによって、生物サンプルからほとんど分解されていないRNAを単離するための方法が開示されている。アニオン性洗浄剤の役割は、タンパク質を変性させることであると言われているのに加えて、細胞を溶解し、そして/またはタンパク質と脂質を可溶化することであると言われている。全血からRNAを単離するとき、赤血球細胞はNH4Cl、NaHCO3およびEDTAを含む試薬によって初めに溶解され、白血球細胞は分離され、タンパク質−DNA沈殿試薬の存在の下、溶解される。後者は代表的には高濃度の酢酸や塩酸などのナトリウム塩またはカリウム塩溶液である。最後の段階として、RNAを含む上清は低級アルコールの添加により沈殿させられる。酵母やグラム陽性バクテリアからのRNAの単離は、核酸を遊離させるための調整として細胞を消化するために、細胞を溶解する酵素、グリセロール、塩化カルシウムの使用をさらに必要とする。
【0013】
Collis米国特許5,973,138には、酸性溶液中における常磁性粒子の懸濁液に対しての核酸の可逆的な結合のための方法が開示されている。この方法で開示された粒子は、むき出しの鉄酸化物、鉄硫化物もしくは鉄塩化物であった。酸性溶液は粒子の鉄分の正への帯電を促進し、それにより、核酸の負に荷電したリン酸基への結合を増進すると言われている。関連する米国特許6,433,160には、酸性溶液がグリシンHClを含む、類似した方法が開示されている。
【0014】
Bhikhabhai米国特許6,410,274には、a)細胞の溶解、b)二価金属イオンによる染色体DNAとRNAの大部分の沈殿、c)沈殿の除去、d)アニオン交換樹脂による溶解液の精製(pH4〜6の酸性の緩衝液を使用し、続けてよりアルカリ性の緩衝液を使用)、第二のイオン交換樹脂によるプラスミドのさらなる精製、を含む、不溶性マトリックス上での分離によるプラスミドDNAの精製方法が開示されている。
【0015】
Cros et al.米国特許6,737,235には、カチオン基を有する親水性で橋かけ架橋されたポリアクリルアミドポリマーを含む、もしくはそれに被覆された粒子を用いた核酸の単離方法が開示されている。カチオン基は、低pHにおけるポリマー上のアミン基のプロトン化により形成される。核酸は低pHで低イオン強度の緩衝液中で結合し、高イオン強度の緩衝液中で遊離する。ポリマーは、25〜45度の低い臨界溶解温度を有していなくてはならない。脱着は、アルカリ性pHとより高い温度によっても促進される。
【0016】
Simms米国特許6,875,857には、非イオン性界面活性剤IGEPAL、EDTA、アニオン性界面活性剤SDSおよび高濃度の2−メルカプトエタノールを含む試薬混合物を用いた、植物試料からのRNAの単離方法とその試薬が開示されている。
【0017】
Sprenger−Haussels米国特許7,005,266には、サンプルをホモジェナイズし、その後にホモジェナイズされたサンプルを、pHが2〜7で、100mMより高い塩濃度で、ポリビニルピロリジンなどのフェノール中和物質、必要に応じて洗浄剤およびキレート剤を含む溶液で処理して、溶解液を形成することによる、核酸処理酵素阻害剤(例えばstool)を含むサンプルからの核酸の精製、安定化または単離のための方法が開示されている。この溶解液はその後従来のシリカ系の固相材料により処理される。
【0018】
いくつかの特許と出願に、結合材上のアミン基のプロトン化状態を変化させる結合溶液と溶出溶液との間のpHの変化により調節される、結合材への核酸の可逆的な捕捉が開示されている。例えば、米国特許6,270,970、6,310,199、5,652,348、5,945,520、WO96/09116、WO99/029703、欧州特許1234832A3、1036082B1、米国出願公開2001/0018513、2003/0008320、2003/0054395がある。同様に、Bayer et al.米国特許6,447,764には、カチオン中でプロトン化された、橋かけ架橋されてないポリマー微細粒子に対する可逆的な結合、溶媒からのそれらの分離、アニオン性有機物の遊離のためのpHの上昇による粒子の脱プロトン化、による、核酸を含むアニオン性有機物の水性環境からの単離方法が開示されている。
【0019】
Kausch et al.米国特許5,665,582には、可逆的なポリマーの固体支持体への設置、可逆的なリンカーのポリマーへの接着、結合組成物による生物試料の可逆的なリンカーへの結合、からなる、生物試料の固体支持体への可逆的なアンカー方法が開示されている。該結合組成物は核酸、抗体、抗イディオタイプ抗体またはプロテインAを含み、可逆的に生物試料を固体支持体にアンカーする。生物試料は核酸であってもよい。
【0020】
Burgoyne米国特許5,756,126には、遺伝子試料サンプルの保存のための乾燥固体媒体が開示されている。この媒体は、固体マトリックスと該マトリックスに吸着した混合物を含む。この混合物は、弱塩基、キレート剤、アニオン性洗浄剤を含む。
【0021】
Fomovskaia et al.米国特許6,746,841には、アニオン性界面活性剤で被覆された、細胞溶解用固体マトリックスを含む乾燥した基体を提供すること、サンプルを上記基体に適用させること、核酸を捕捉すること、を部分的に含む核酸の精製方法が開示されている。RNAの捕捉への使用は特に開示も例示もされていない。
【0022】
Hollander et al.米国出願公開20040014703には、第四級アンモニウム塩または第四級ホスホニウム塩化合物と、有機カルボン酸、アンモニウム硫酸塩または酸性pHのリン酸塩などのプロトンドナーを含む混合物によるRNAの安定化が開示されている。
【0023】
GB 2419594A1には、アミノ界面活性剤と場合により非イオン性界面活性剤によって核酸を安定化することが開示されている。
【0024】
Augello米国特許6,602,718、6,617,170、6,821,789、米国出願公開2005/0153292には、遺伝子の発現誘導や核酸分解の抑制もしくは防止による、全血などの生物試料、RNAおよび/またはDNAを保存する方法が開示されている。遺伝子の発現誘導防止剤は、安定剤、酸性物質を含んでいてもよい。カチオン性洗浄剤は好ましい安定剤である。後者の試薬は細胞を溶解し、洗浄剤との複合体として核酸の沈殿を引き起こす。
【0025】
米国特許6,916,608には、アルコールおよび/またはケトンをジメチルスルフォキシドとの混合物として含む核酸を安定化するための混合物と方法が開示されている。
【0026】
米国特許6,204,375と6,528,641には、pH4〜8のアンモニウム硫酸塩などの塩溶液を細胞に加えることにより、細胞のRNA成分を安定化する方法が開示されている。塩溶液は、細胞を透過し、細胞のタンパク質を伴うRNAの沈殿を引き起こし、RNAを核に近寄らせないようにして、分解を防ぐ。
【0027】
上記のRNAの単離方法の、多くの段階を含み煩わしいという性質が医療行為におけるRNAの使用を面倒なものにしている。RNAの単離方法は、RNAをRNaseなどのヌクレアーゼにより分解される前に、細胞のタンパク質やDNAから分離することの困難さに打ち勝つ必要がある。これらのヌクレアーゼは、保護されてないRNAを素早く分解するのに十分な量の血中に存在する。従って、細胞からのRNAの単離方法はRNaseによる分解を防ぐことができるものでなくてはならない。本技術分野において、素早く、シンプルな、生物試料からのRNAの抽出方法への要求は今も存在している。そのような方法は、RNAの加水分解と分解を最小にし、様々な分析や下流のプロセスにおいて使用することが出来る。
【0028】
米国出願公開2005/0106576、2005/0106577、2005/0106589、2005/0106602、2005/0136477、2006/0234251および仮出願S/N60/771,510には、生物試料からのRNAを含む核酸の抽出のための方法、材料が開示されている。この方法は、細胞やウィルスの破砕のために独自なクラスの固体材料を使用し、化学的な細胞溶解処理を必要としない。
【0029】
発明の要約
ひとつの側面において、本発明は、アルカリ試薬とその後に続く酸性溶液、および固相結合材料の使用を含む、生物サンプルからの核酸の迅速で簡便な抽出と単離のための新規な方法を提供する。本発明の実施において使用される固相結合材料は、迅速に核酸を捕捉することができる。前記固相結合材料は、第四級アンモニウム基、第四級ホスホニウム基、第三級スルホニウム基を含んでいてもよい。
【0030】
他の側面においては、本発明は、アルカリ試薬とその後に続く酸性溶液の使用を含み、また、マトリックス部分と、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウムおよび第三級スルホニウム基から選択されるオニウム基を含み、さらに前記マトリックス部と前記オニウム基とを介する切断可能なリンカーとを含む固相結合材料の使用を含む、生物サンプルからのDNAの抽出および/または精製のための方法を提供する。
【0031】
他の側面においては、本発明は、アルカリ試薬とその後に続く酸性溶液の使用を含み、また、マトリックス部分と、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウムおよび第三級スルホニウム基から選択されるオニウム基を含み、さらに前記マトリックス部と前記オニウム基とを介する切断可能なリンカーとを含む固相結合材料の使用を含む、生物サンプルからのRNAの抽出および/または精製のための方法を提供する。
【0032】
発明の詳細な説明
定義
アルキル−1個以上の水素原子以外の置換基で置換されていてもよい、1〜20個の炭素原子を含む、分岐した、直鎖状のまたは環状の炭化水素基。ここで使用される低級アルキルとは8個までの炭素原子を含むアルキル基のことを言う。
アラルキル−アリール基で置換されたアルキル基。
アリール−1個以上の水素原子以外の置換基で置換されていてもよい、1から5個の炭素環式芳香族環を含む、芳香族環含有基。
生物材料もしくは生物サンプル−全血、抗血液凝固処理された全血、血漿、血清、組織、細胞、細胞成分、ウィルスを含む。
細胞材料−無傷細胞または、動物、植物またはバクテリア由来の無傷細胞を含む組織を含む材料。細胞は無傷であっても、活発に代謝をしている細胞であっても、アポトーシスを起こしている細胞であっても、死んでいる細胞であってもよい。
細胞核酸成分−細胞材料中に見出される核酸であり、ゲノムDNAやRNA、また、ウィルスやプラスミドを含む感染性物質からの核酸など他の核酸であってもよい。
磁性粒子−粒子、微粒子、またはビーズであって外部の磁界に反応するものである。粒子はそれ自身磁気を帯びていても、常磁性であっても、超常磁性であってもよい。超常磁性体または強磁性体材料を使用したとき、外部の磁石または磁界に引き寄せられることができる。粒子は、磁気に反応性があり、1以上の非磁気反応性層に囲まれている、固体の中心部分を有することができる。磁気反応部は互い違いに周りを取り巻く層であってもよく、または磁気反応部が非磁気反応中心部分の中に配された粒子であってもよい。
核酸−ポリヌクレオチドはDNA、RNA、またはPNAなどの合成DNA類似体であってもよい。一本鎖の化合物、および、これら3つのタイプの鎖のうちのいずれの組み合わせの二本鎖の化合物もこの用語の範囲に含まれる。
遊離、溶出−溶液もしくは混合物との接触により、固相結合材料の表面または細孔に結合した材料の大部分を除去すること
RNA−メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソーマルRNA(rRNA)を含むが、これらに限定されるものではない。
サンプル−核酸を含んでいる、もしくは含むと考えられる液体。本発明の方法において使用されることのできる代表的なサンプルは、集められた血液標本において通常みられるような抗凝固処理されたものであってもよい血液、血漿、血清、尿、精液、唾液などの体液、細胞培養液、組織抽出物などを含む。他のタイプのサンプルとして、溶剤、海水、工業用水サンプル、食物サンプル、土壌や水などの環境サンプル、植物試料、真核生物、バクテリア、プラスミド、ウィルス、カビ、原核生物由来の細胞が含まれる。
固相(結合)材料−核酸分子を誘引することのできる表面を有する材料。材料は、粒子、微小粒子、ナノ粒子、繊維、ビーズ、メンブレン、フィルター、またはテストチューブやマイクロウェルなどの支持体といった形であってよい。
置換された−基上の1個以上の水素原子が、水素原子以外の置換基で置き換えられたことを指す。置換基について言及するときに、他に明確な示唆がないときは複数箇所での置換も存在しうることを意図していることに注意すべきである。
【0033】
本発明は、生物サンプルから核酸(NA)を得るための迅速で簡便な方法に関する。本方法は、アルカリ試薬とその後に続く酸性溶液、およびサンプルからNAを吸着する固相結合材料を使用する。上記固相結合材料は、細胞やウィルスを破壊するために初めにいかなる予備的な溶解も行うことなく、生物サンプルから直接NAを遊離させることのできるものが好適に選択される。固相結合材料の作用を介してNAが直接酸性環境中に遊離し、その後遊離したRNAが酸性条件下で固相結合材料上に迅速に捕捉されることにより、分解は最小限に抑えられる。さらに、本発明者は、グアニジウム塩、高濃度カオトロープまたはRNase阻害タンパク質および抗体などのRNaseを不活性化する化合物やタンパク質の添加に頼ることなく、活性RNaseを有するサンプルからリボ核酸を回収することが可能であることを見出した。
【0034】
本発明の一実施形態において、アルカリ試薬による処理から始まるプロセスにより、NAは生物サンプルから抽出される。他の実施形態においては、サンプルは初めにプロテアーゼで処理されてもよい。アルカリ条件へさらすことで生物サンプルのNA成分はその一部もしくはすべてが遊離する。これは、少なくとも一部において、細胞膜やウィルスタンパクの被覆の破壊により起こる可能性がある。加えて、アルカリ条件は、ヌクレアーゼ活性を減少させる点において有益である。RNAは、塩基性環境下において極端に不安定であると広く考えられている。ヌクレオチド間のホスホジエステル結合の自律的加水分解が、塩基触媒の下で素早く起こると考えられている。しかしながら驚くべきとことに、本発明者は、単純なアルカリ処理と同時に、例え界面活性剤がなくとも、細胞ソースもしくはDNAウィルスとRNAウィルスの両方を含むウィルスから、核酸を遊離させることが可能であることを見出した。遊離したNAは、その後酸性環境中に置かれ、粒子により捕捉される。これらの条件は、サンプル中に存在するヌクレアーゼを阻害もしくは不活化し、NAの回収を可能にするのに十分である。本発明は、RNAを含む核酸が、首尾よくアルカリ溶液中に遊離され、他のアルカリ溶液を使って固相結合材料に捕捉されそして固相結合材料から解放されることが可能なことを認めるものである。アルカリ溶液は生物サンプルからNAを遊離させることができるが、固相結合材料もまた同様の作用を果たし、さらにNAを生物サンプルから遊離させる。この能力を持つ固相結合材料を本発明の方法を実施するのに使用することが好ましい。
【0035】
実際において、本方法は、タンパク質−NA複合体、無傷細胞およびウィルスからDNAと特にはRNAを捕捉、抽出するのに有用である。NAは、本発明のプロセスに従い、核酸を含むいずれの生物サンプルからも、特には無傷細胞およびウィルスから、抽出することができる。これらの試料の一般的なソースとしては、バクテリア培養液もしくはペレット、血液、尿、細胞、そして尿、唾液、精液、CSF、血液、血漿、血清または組織ホモジェネ−トなどの体液が含まれるがこれらに限定されるものではない。本発明の方法は、他のいずれの予備的な手順に供する必要なしに、生細胞、死細胞またはアポトーシスを起こしている無傷細胞および組織、または培養されたバクテリア、植物もしくは動物の培養細胞系列、を含むサンプルに適用することができる。特に、予備的な破砕または溶解は一切行う必要がない。生物体液や細胞培養液といった懸濁液中の細胞からのRNAの抽出は、例えば、低速遠心で細胞をペレットにし、培地を廃棄することから始めることができる。RNAは、本技術分野において一般的に知られている組織破壊の方法、例えば手動のホモジェナイザーやWaring blenderなどの自動化ホモジェナイザー、他の組織ホモジェナイザーを用いたホモジェナイズにより、無傷組織または器官から抽出することができる。ホモジェナイズされたものはチーズクロスなどの粗いフィルターに通されるか、または低速遠心されて大きい粒子状物質が除かれる。
【0036】
本発明の方法は迅速であり、代表的にはたった数分しか完遂に要しない。重要なことに、本方法により得られるNAは、医療や他の下流での使用に有用であるほどに十分に純粋なものである。本方法により取り出されたDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、配列決定、クローニング、サザンブロッティングなどの方法において使用できる。本方法により取り出されたRNAは、逆転写酵素の単独使用や、逆転写の後に続いてのポリメラーゼ連鎖反応増幅(RT−PCR)、RNAブロット分析やin vitro翻訳などの方法において使用できる。有利なことに、本方法の使用に先立って細胞を単離する必要はなく、簡単な装置のみが本方法の実施には必要である。本発明の方法に従ってサンプルを処理する前に、予備的な溶解やエタノール沈殿のステップは必要ない。細胞やウィルスを溶解するための洗浄剤やカオトロピック物質は不要であり、使用されない。
【0037】
本発明の一実施形態において、細胞および/またはウィルスを含む液体などの、NAを有する選択された生物サンプルは、アルカリ試薬と簡単に混ぜ、混合液を形成する。サンプルとアルカリ試薬は、混合液中でほんの数秒間接触するだけでよい。他の処置は必要ない。その後、混合液は酸性溶液と混合される。サンプルと酸性溶液は、混合液中でほんの数秒間接触するだけでよい。混合液の形成と同時に、もしくは形成の後に、混合液は、細胞やウィルスを破壊するために初めにいかなる予備的な溶解も行うことなく、生物サンプルから直接NAを遊離させることができるものとして選択された固相結合材料と一緒にされる。粒子の作用を介してRNAが直接酸性環境中に遊離し、その後遊離したRNAが酸性条件下で該粒子に迅速に捕捉されることで、RNAの分解は最小限に抑えられる。上清は除かれ、核酸を含む固相結合材料は必要に応じて1以上の洗浄溶液で洗浄される。所望により、その後固相結合材料はRNAを分離するために溶出に供される。一実施形態において、固相や粒子からRNAを溶出するためにアルカリ溶液が使用される。代表的に、本目的に望ましいアルカリ濃度は、10−4M以上であり、好ましくは約1mMから約1Mである。
【0038】
他の実施形態において、本発明の方法は、必要であれば、アウリントリカルボン酸、DTT、DEPCなどのRNase阻害剤を用いることができる。当業者はこの目的のために他のRNase阻害剤を選択することもできる。
【0039】
すべての手順は遠心機のような特殊化した装置の必要なく、単一の容器内もしくは単一の支持体上で連続して迅速に行うことができる。本方法は、多くのサンプルを連続して又は同時並行で処理するための自動化されたプラットホームに適用可能である。すべての結合、洗浄ステップは、好ましくは短時間で行われ、1分を超えないのが好ましい。洗浄ステップは、好ましくは10秒以内で行うことができる。溶出は1分を超えないのが好ましい。典型的な手順として、1.5mL微小遠心チューブ内で、RNAソースを含む100μLのサンプルが100μLのアルカリ試薬と混ぜられ、ボルテックスで簡単に攪拌される。その後、100μLの酸性溶液が加えられて、チューブがボルテックスにより簡単に攪拌される。酸性溶液中の磁性結合微小粒子が加えられ、混合液は30秒間ボルテックスされる。磁性ラック上で、上清が粒子から分離される。粒子は200μLの酸性溶液で2回、200μLの水で2回洗浄される。洗浄された粒子はアルカリ溶出液中で1分間ボルテックスにより攪拌され、RNAが溶出される。
【0040】
アルカリ試薬
一実施形態において本発明の方法で使用されるアルカリ試薬は穏やかものから強いアルカリ水溶液であってもよい。濃度が10−4M以上の、より好ましくは10−3M以上の、さらに好ましくは10−2M以上の水溶性のアルカリ化合物の溶液が効果的である。かかる溶液は10以上のpHを有する必要がある。代表的な化合物として、アルカリ金属酸化物および水酸化物、アルカリ土類酸化物および水酸化物、アルカリ金属カーボネート、NHOH、第一級、第二級、第三級アミン、第四級アンモニウム水酸化物、第四級ホスホニウム水酸化物、およびRSで表されるチオラート塩(式中、Mはアルカリ金属イオンであり、Rは1から20個の炭素原子を有する有機基である)、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なチオラート塩として、アルキルチオラート、置換アルキルチオラート、アリールチオラート、置換アリールチオラート、複素環式チオラート、チオカルボキシラート、ジチオカルボキシラート、キサンタート、チオカーバメートおよびジチオカーバメートなどが挙げられる。化合物の例示として、

が挙げられる。
【0041】
固相材料
一実施形態において、本発明のRNA抽出法は、素早くRNAを結合させるための固相結合材料を使用し、それによりサンプル中の他の構成物質からのRNAの分離を可能にする。固相結合材料は、細胞やウィルスを破壊するために初めにいかなる予備的な溶解も行うことなく、生物サンプルから直接核酸を遊離させることのできるものが選択される。本発明の方法中の核酸結合のための材料は、サイズ、形状、有孔性および機械的性状が明確に定められたマトリックスを含む。前記マトリックスは粒子、微小粒子、繊維、ビーズ、メンブレンや、テストチューブやマイクロウェルなどの他の支持体といった形状であってもよい。多数の特有の材料とそれらの調製法が本出願人の米国特許出願の出願公開2005/0106576、2005/0106577、2005/0106589、2005/0106602、2005/0136477、2006/0234251および仮出願S/N60/771,510に記載されている。
【0042】
一実施形態において、固相結合材料はさらにその表面もしくは表面近辺に、様々な長さの核酸分子の捕捉と結合を可能にする、共有結合により結合した核酸結合部分を含む。表面というのは、固相結合材料の外部周辺部だけでなく、固相結合材料内のアクセス可能なすべての多孔部分も意味する。
【0043】
他の実施形態において、固相結合材料はさらにその表面もしくは表面近辺に、様々な長さの核酸分子の捕捉と結合を可能にする、非共有結合により結合した核酸結合部分を含む。非共有結合により結合した核酸結合部分は、反対に荷電した固体表面の残基に対する静電気的引力もしくは、表面との疎水性相互作用により、固体マトリックスと結合する。
【0044】
共有結合または非共有結合により結合した核酸結合基を有するこれらのマトリックスの材料は、任意適当な物質とすることができる。好ましいマトリックスの材料は、シリカ、ガラス、不溶性合成ポリマー、不溶性多糖および金属、金属酸化物、金属硫化物から選択される金属性材料、並びにシリカ、ガラス、合成ポリマーや不溶性多糖により被覆された磁性反応材料、から選択される。例示される材料は、細胞を破砕して核酸を誘引する役割を果たす、表面に共有結合した機能的官能基により被覆もしくは機能付与されたシリカベース材料を含む。表面が適当に機能付与された炭化水素ベース材料、並びにこの表面の機能性を有する重合体も例示に含まれる。核酸結合基として働く表面の機能的な官能基は、細胞構造の完全性を破壊することができ、固体支持体への核酸の誘引を引き起こすことのできるいずれの基でもよい。そのような官能基は、ヒドロキシル、シラノール、カルボキシル、アミノ、アンモニウム、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム塩、以下に記載される第三級スルホニウム塩タイプの材料を含むがこれらに限定はされない。中でも第四級アンモニウム、第四級ホスホニウムまたは第三級スルホニウム塩基を有する材料が好ましい。
【0045】
様々なものに適用するために、固相材料は粒子の形状であることが好ましい。粒子は約50μmよりも小さいサイズであることが好ましく、約10μmより小さいことがより好ましい。微小な粒子はより速く溶液中に分散し、より大きい表面/体積率を有する。より大きな粒子とビーズもまた、重力沈殿や遠心分離が採用される方法においては有用である。2以上のサイズの異なる粒子の混合物は、いくつかの使用例においては有利となり得る。
【0046】
さらに固相結合材料は、通常、常磁性もしくは超磁性の微小粒子の形態である、磁性反応部分を含むことができる。該磁性反応部分は、磁界による誘引および操作を可能にする。そのような磁性微小粒子は一般的に、通常、吸着又は共有結合による結合層に囲まれて磁性部分が防護されている、磁性金属酸化物または金属硫化物のコアを含む。核酸結合基は、該層に共有結合により結合することができ、その結果、固相結合材料表面を覆う。磁性金属酸化物コアは、好ましくは鉄酸化物または鉄硫化物であり、鉄は2価でも3価でも両方であってもよい。有機ポリマー層内に取り囲まれた磁性粒子が、例えば、米国特許4,654,267、5,411,730、5,091,206、非特許文献Tetrahedron Lett.,40(1999),8137−8140、に開示されている。数種類の異なったタイプの殻を有する、被覆された磁性粒子が市販されている。この殻は、米国出願公開2005/0106576、2005/0106577、2005/0106589、2005/0106602、2005/0136477、2006/0234251に教示されているように、機能付与されている。
【0047】
市販されている磁性シリカ又は磁性ポリマー粒子は、本発明において有用な磁性固相結合材料の調製の開始物質として使用可能である。表面にカルボキシル基を有する適当なタイプのポリマー粒子が、商品名SeraMag(登録商標)(Seradyn)、BioMag(登録商標)(Polysciences and Bangs Laboratories)として知られている。適当なタイプの磁性シリカ粒子が商品名MagneSil(登録商標)(Promega)として知られている。表面にカルボキシル基またはアミノ基を有する磁性シリカ粒子はChemicell GmbH(Berlin)から入手可能である。
【0048】
片方の末端にトリアルコキシシラン基を有するリンカー基は、金属性材料またはシリカやガラス被覆の磁性粒子など被覆された金属性材料の表面に接着可能である。トリアルコキシシラン化合物は、式R1−Si(OR)3で表わされ、式中Rは低級アルキルであり、R1は直鎖、分岐鎖、環から選ばれる有機基であり、1から100個の原子を含むものが好ましい。これら原子は好ましくは、C、H、B、N、O、S、Si、P、ハロゲン、アルカリ金属、から選択される。代表的なR1基は3−アミノプロピル、2−シアノエチルおよび2−カルボキシエチルに加えて、以下でより詳細に説明される切断可能な残基を有する基である。好適な実施形態において、トリアルコキシシラン化合物は、切断可能な中央部と反応性の末端部を有し、末端部においては、反応性基は第三級アミン、第三級ホスフィンまたは有機スルフィドとの反応により一段階で第四級または第三級オニウム塩に変換可能である。
【0049】
かかるリンカー基は、金属性粒子やガラス、シリカ被覆された金属性粒子の表面に、フッ素イオンを用いたプロセスにより導入可能であることが明らかにされてきた。反応は低級アルコール、トルエンなどの芳香族溶媒を含む、有機溶媒中で行うことができる。適当なフッ素源は、そのような有機溶媒に対して相当の溶解性を有し、フッ化セシウムとフッ化テトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
【0050】
本発明の方法において有用な固相結合材料中に含有される核酸結合(NAB)基は、2つの作用を果たすことができる。NAB基は様々な長さと塩基組成や塩基配列を有する核酸、ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドを誘引、結合する。また、NAB基はある程度において、核酸を細胞の囲いから遊離させる働きをすることができる。核酸結合基として、例えば、カルボキシル、アミン、第三級または第四級オニウム基またはこれらのうち2以上の基が混合したもの、が挙げられる。アミン基はNH2、アルキルアミンおよびジアルキルアミン基であってよい。好ましい核酸結合基として、第四級トリアルキルアンモニウム基(−NR3+)を含む第三級または第四級オニウム基(-QR2+またはQR3+)、トリアルキルホスホニウムまたはトリアリールホスホニウムまたはアルキル−、アリール−ホスホニウム基が混ざったものを含むホスホニウム基(−PR3+)、および第三級スルホニウム基(−SR2+)が挙げられる。固相結合材料はここで記載されている核酸結合基を2種類以上含有することができる。2種以上のサイズの粒子の混合物を使用することができる。NAB基を有するかもしくは有さない、様々な他の固相結合材料と、上記固相結合材料の混合物も使用することができる。第三級、第四級オニウム基(QR2+またはQR3+)であって、式中R基が4個以上の炭素原子のアルキル基を表わすものを有する固相材料は、核酸との結合において特に効果的であるが、1個の炭素原子のアルキル基もアリール基と同程度に有用である。そのような固相材料は、非常に強く結合核酸を保持し、本願発明の技術分野において既知の、溶出に用いられるほとんどの条件下では、核酸の除去や溶出は起きない。低、高両方のイオン強度の、既知の殆どの溶出条件は、結合核酸の除去には効果的ではない。DEAEやPEI基を含む従来の陰イオン交換樹脂とは違い、第三級または第四級オニウム固相材料は、反応溶液のpHに関わらず正に荷電したままである。
【0051】
好適な実施形態においては、選択的に切断可能な結合を介して核酸結合基がマトリックスに結合した固相結合材料が使用される。該結合を切断することにより、いかなる結合核酸も固相材料から効果的に引き離される。該結合は、特異的に切断可能な結合を切断するのが目的の核酸を破壊することのない、化学的な手段、酵素による手段、または光化学的な手段、もしくは他のいずれの手段によっても、切断することができる。そのような切断可能な固相材料は、上記で記載したマトリックスを含む固体支持部を含む。核酸の誘引と結合のための核酸結合(NAB)部は、切断可能なリンカー部によって、固体支持部の表面に結合される。切断可能なリンカーを有する適当な材料は、米国特許出願公開2005/0106576、2005/0106577、2005/0106589、2005/0106602、2005/0136477、2006/0234251および仮出願S/N60/771,510に記載されており、これらは引用文献とされている。
【0052】
切断可能なリンカー部は好適には、直鎖、分岐鎖、環、から選択される有機基であり、1から100個の原子を含む。該原子は好ましくは、C、H、B、N、O、S、Si、P、ハロゲン、アルカリ金属から選択される。リンカー基の例として、加水分解により切断可能な基が挙げられる。カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、チオエステル、カーボネートエステル、チオカーボネートエステル、ウレタン、イミド、スルホンアミド、スルホンイミド、スルホネートエステルも例として含まれる。好適実施形態において、切断可能な結合は水性のアルカリ溶液により処理される。ホスフィンやエタンチオール、メルカプトエタノール、DTTなどのチオールなど様々な試薬により切断される、ジスルフィド(S−S)結合といった、還元的に切断を受ける基が、他のクラスのリンカー基の例として挙げられる。他の代表的な基として、ペルオキシド(O−O)結合を有する有機基が挙げられる。ペルオキシド結合は、チオール、アミンおよびホスフィンにより切断可能である。他の代表的な切断可能な基として、酵素により切断可能なリンカー基が挙げられる。例として、エステラーゼやハイドロラーゼにより切断されるエステル、プロテアーゼやペプチダーゼにより切断されるアミドやペプチド、グリコシダーゼにより切断されるグリコシド基が挙げられる。他の切断可能な基の代表例として、切断可能な1,2−ジオキセタン部分が挙げられる。そのような材料として、熱により分解し、または、化学的な試薬もしくは酵素試薬により断片化するジオキセタン部分が挙げられる。保護基を除去し、オキシアニオンを生成すると、ジオキセタン環の分解が促進される。断片化は、周知のプロセスに従って、C−C結合に加えて、ペルオキシドのO−O結合の切断により起こる。切断可能なジオキセタンは多数の特許文献、非特許文献に記載されている。代表的な例が、米国特許4,952,707、5,707,559、5,578,253、6,036,892、6,228,653、6,461,876に記載されている。

【0053】
他の切断可能なリンカー基として、不安定な1,2−ジオキセタン部分に変換することができる電子豊富なC−C二重結合が挙げられる。O、S又はN原子による1つ以上の置換基が、二重結合上に結合する。一重項酸素と電子豊富な二重結合との反応により不安定な1,2−ジオキセタン環基を形成し、ジオキセタン環基は室温で速やかに断片化して2つのカルボニル断片を生成する。

【0054】
切断可能なリンカー基を保持する他の基の固相材料は、米国特許6,858,733、6,872,828に記載されているように、切断可能な部分としてケテンジチオアセタールを有する。ケテンジチオアセタールは、ペルオキシダーゼと過酸化水素による酸化反応で二重結合が切断される。

【0055】
切断可能な部分は、アクリダン環上に置換基を有する類似も含めて、図示する構造をとることができ、式中、R、R、Rはそれぞれ、C、N、O、S、P、Si、ハロゲン原子から選択される、1から約50個の非水素原子を含む有機基であり、RaとRbは共に結合して環を形成していてもよい。切断可能なリンカー基を有する固相材料の他の基としては、ニトロ置換芳香族エーテルやエステルなどの光により切断可能なリンカー基を有するものが挙げられる。オルトーニトロベンジルエステルは、周知の反応に従って、紫外光により切断される。

他の多くの切断可能な基は、当業者にとり明白である。
【0056】
酸性溶液
本発明の方法で使用される酸性溶液は、通常、中性pH以下のpHを有するいずれの水溶液も包含する。溶液は、好ましくは1〜5のpHを有し、さらに好ましくは約2〜4のpHである。酸は有機でも、無機でもよい。塩酸、硫酸、過塩素酸などの無機酸は有用である。モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびアミノ酸を含む有機酸、及びそれらの塩を使用することができる。代表的な酸として、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、グリシンおよびアラニンが挙げられる。塩は、いずれの水溶性の対イオンも有することができ、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類イオンである。遷移金属塩を含む酸性溶液も本発明の実施に使用することができる。好ましい遷移金属として、Fe、Mn、Co、Cu、Zn塩を挙げることができる。
【0057】
化学的な溶解によるRNAの抽出のための他の方法とは違い、本方法の酸性溶液は、洗浄剤や、グアニジウム塩等のカオトロピック物質などの化学的な溶解試薬を含有しない。DMF、DMSOなどの、これら両方の能力の中で機能する有機溶媒も使用しない。他の溶性の添加物を加えず、固相結合材料と組合わせた酸性溶液は、サンプルにRNaseが含まれてさえいれば、該サンプルから無傷のRNAを十分に抽出することができる。
【0058】
サンプルと酸性溶液は、サンプルおよび酸性溶液の混合物と固相とを一緒にするステップと同時に混ぜることができる。サンプルおよび酸性溶液の混合物と固相との混合は、固相を酸性溶液に加えることにより行われる。他の方法として、サンプルは先ず初めに酸性溶液と混ぜられ、混合物を形成し、その後固相と該混合物を一緒にする。
【0059】
洗浄溶液
本発明の実施において有用な洗浄溶液は、使用するならば、結合RNAからそれ以外の構成物質を除くのを補助することができる。一実施形態において、洗浄溶液は、結合ステップで使われた酸性溶液と同様もしくはそれに類似したものとすることができる。おそらく残存RNase活性を取り除くために、酸性溶液で洗浄することが都合の良いということが明らかにされている。溶出前に酸を中和すべく、水や中性pHの緩衝液でのさらなる洗浄を行うことができる。水と緩衝液は、RNase活性を有さないように調製や処理を施されなくてはならない。
【0060】
一実施形態において、結合RNAを溶液中に遊離させる試薬と固相とを接触させることにより、結合RNAは固相から溶出される。該溶液は、遊離されたRNAを溶解し、十分に保護する必要がある。溶液中に溶出されたRNAは下流の分子生物学のプロセスに適用可能なものである必要がある。他の実施形態において、固相結合材料から核酸を遊離する試薬は、固相結合材料にある切断可能なリンカー基の切断により、溶出されたRNAを下流の分子生物学のプロセスに適用可能なものにしている。該試薬は、好ましくは、少なくとも10−4Mの強アルカリの水性溶液である。アルカリ金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、アルカリ金属カーボネートおよびアルカリ金属酸化物の、濃度が少なくとも10−4Mの溶液が、切断された固相からRNAを迅速に切断・溶出するのに効果的である。切断可能な基がジスルフィド(S−S)基であるとき、溶出/切断試薬は、例えばエタンチオール、メルカプトエタノール、DTTなどのチオールやホスフィンなどのジスルフィド還元試薬を含有する。切断可能な基がペルオキシド(O−O)結合であるとき、溶出/切断試薬は、例えば、チオール、アミン、ホスフィンなどの還元剤を含有する。切断可能な基が酵素により切断されるものであるとき、溶出/切断試薬は適当な酵素を含有する。エステルはエステラーゼもしくはハイドロラーゼを必要とし、アミドもしくはペプチド結合はプロテアーゼまたはペプチダーゼを必要とし、グリコシド基はグリコシダーゼを必要とする。切断可能な基が1,2−ジオキセタン部分であるとき、該ジオキセタンは熱により切断され、溶出試薬は上記のアルカリ溶液であってよい。切断可能な基が誘発可能な1,2−ジオキセタン部分であるとき、溶出/切断試薬は、保護基を除去して不安定なオキシアニオンを生成するのを介して基の切断を誘導する、化学的もしくは酵素的な試薬を含有する。切断可能な基が不安定な1,2−ジオキセタンに変換可能な電子豊富なC−C二重結合であるとき、溶出/切断試薬は、光感受性色素などの1重項酸素発生源を含有する。そのような色素は、可視光と酸素分子と反応して1重項の活性化した酸素を生成することが当業者に知られており、そのような色素としては、ローズベンガル、エオシンY、アリザリンレッドS、コンゴレッドおよびオレンジG、フルオレセイン色素、ローダミン色素、エリスロシンB、クロロフィリン3ナトリウム塩、ヘミン塩、ヘマトポルフィリン、メチレンブルー、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、フラーレンがある。
【0061】
他の実施形態において、第四級オニウムNAB基を有する固相結合材料からRNAを遊離するための試薬は、米国特許出願の出願公開2005/0106589に開示された組成物から選択される。
【0062】
溶出ステップは室温で行うことができるが、いずれの好都合な温度であってもよい。溶出温度は、本方法の核酸単離法の成否にとり重要ではない。周囲環境と同じ温度が好ましいが、温度を上げると溶出効率が上がる場合がある。
【0063】
発明のキット
他の実施形態において、本発明の方法を実施するためのキットが提供される。本発明に従ってサンプルからリボ核酸を単離するためのキットは、いかなる予備的な溶解もせずに、生物サンプルから直接核酸を遊離させることのできるものとして選択された、少なくとも1つの固相結合材料、アルカリ試薬および酸性溶液を含む。固相結合材料は、粒子、微小粒子、磁性粒子、繊維、ビーズ、メンブレン、テストチューブやマイクロウェルといった形態をとることができるマトリックスを含む。マトリックスは、場合によっては切断可能なリンカーを介して、共有結合または非共有結合によって核酸結合部と連結される。
【0064】
核酸結合部は、カルボキシル基、NH基、アルキルアミン基、ジアルキルアミン基、トリアルキルアンモニウム基を含む第四級アンモニウム基、トリアルキルホスホニウム基を含む第四級ホスホニウム基、トリアリールホスホニウム、アルキル・アリールホスホニウム基の混合、第三級スルホニウム基から選択される、1以上のタイプの基を含む。
【0065】
アルカリ試薬は、穏やかなものから強いアルカリの水性溶液であってもよい。濃度が少なくとも10−4Mの水溶性化合物の溶液、より好ましくは10−3M、さらに好ましくは10−2Mのものが効果的である。代表的な化合物として、アルカリ金属酸化物および水酸化物、アルカリ土類酸化物および水酸化物、アルカリ金属カーボネート、NHOH、第一級、第二級および第三級アミン、第四級アンモニウム水酸化物、第四級ホスホニウム水酸化物、そしてRSで表されるチオラート塩(式中、Mはアルカリ金属イオンであり、Rは1から20個の炭素原子を有する有機基である)、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なチオラート塩として、アルキルチオラート、置換アルキルチオラート、アリールチオラート、置換アリールチオラート、複素環式チオラート、チオカルボキシラート、ジチオカルボキシラート、キサンタート、チオカーバメートおよびジチオカーバメートなどが含まれる。
【0066】
本発明のキットの1つの要素を構成する酸性溶液は、通常、中性以下のpHの水溶液のいずれをも含む。好ましくは溶液は1〜5のpHを有し、さらに好ましくは約2〜4である。酸は無機であっても有機であってもよい。塩酸、硫酸、過塩素酸などの無機酸は有用である。モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、アミノ酸を含む有機酸及びそれらの塩も使用することができる。代表的な酸として、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、グリシン、アラニンが挙げられる。塩は、いずれの水溶性の対イオンも有することができ、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属である。遷移金属塩を含む酸性溶液も本発明の実施に使用することができる。好ましい遷移金属として、Fe、Mn、Co、CuおよびZn塩を挙げることができる。
【0067】
キットはさらに溶出試薬と、1以上の任意の洗浄緩衝液と、従来のものと同様のキットの他の構成物、例えば使用説明書、手順、緩衝液、希釈液、を含んでいてもよい。溶出試薬は、少なくとも10−4M、好ましくは約1mM〜1Mの濃度のアルカリ金属水酸化物溶液またはアンモニウム水酸化物溶液などの強アルカリ水性溶液、ホスフィンやエタンチオールやメルカプトエタノールを含むチオール、もしくはDTTなどのジスルフィド還元剤、チオール、アミンやホスフィンなどのペルオキシド還元剤、エステラーゼ、ハイドロラーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、グリコシダーゼやペルオキシダーゼなどの酵素から選択することができる。固相結合材料が、電子豊富なアルケン基などの、一重項酸素発生源との反応により切断可能なリンカー基を含む実施形態においては、キットに上述した光感受性の色素を含めることができる。
【実施例】
【0068】
実施例1 RNAの単離に有用な固相材料
トリブチルホスホニウムNAB基と、切断可能なアリールチオエステル結合により、機能付与された磁性粒子の合成。

a)磁鉄鉱の調製。5Lのフラスコ内で、3Lの水(type1)中にアルゴンガスを1時間注入した。アルゴン雰囲気下、濃縮されたNHOH(28%,180mL)を加えた。1M HCl中の2M FeCl 50mLと、1M HCl中の1M FeCl 200mLとの混合物を、漏斗により約1時間以上かけて加えた。固体を、500〜600mLを外部にディスク状の磁石をつけたフラスコに注ぎ、各回毎にデカントで上清を廃棄することにより2つのフラスコに集めた。固体を、500〜600mLの水(type1)の中で超音波により分散させ、その後磁石で引き寄せて、上清を廃棄することにより洗浄した。上清のpHが約8.5以下になるまでこのプロセスを繰り返した。2つのフラスコの内容物を一緒にし、磁鉄鉱を合計約500mL中に貯蔵した。
b)500mLフラスコに3−(メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(149.8g)を加え、アルゴンを除いた。氷浴中にフラスコを設置した後、アクリロイロキシトリメチルシラン(119.6g)をシリンジを通してゆっくりと加えた。反応液を5分間攪拌し、氷浴を除き、攪拌を2時間続けた。生成物をさらなる精製をすることなく使用した。
c)磁鉄鉱の被覆。5.0gの磁鉄鉱を含有するステップa)からの磁鉄鉱スラリーを140mLの水(type1)で希釈し、混合物を超音波処理した。エタノール(1.25L)を15分後に加えた。濃縮されたNHOH(28%,170mL)を30〜45分後に加えた。エタノールに溶解した、ステップb)からの1.5gのシリルエステルと13.5gのSi(OEt)を三回に分けて90分間隔で反応液に加えた。90分後、20〜30mLのエタノールに溶解した3.75gのシリルエステル化合物をその後加え、混合物を攪拌し、90分間超音波処理した。攪拌は一晩続けた。混合物は2個の1Lフラスコに500mLずつ移し、粒子は磁気によって分離した。固体は250mLメタノールで4回、250mLの水(type1)で2回、水(type1)で希釈したpH1のHCl 250mLで1回(混合物を磁石に接触させる前に10分間)、250mLの水(type1)で4回、250mLのメタノールで4回、次いで250mLのアセトンで2回、連続的に洗浄した。固体は一晩空気乾燥した。このステップの間にシリルエステルの加水分解が起こり、カルボン酸基が生成した。
d)前ステップで得られた、カルボン酸で機能付与された磁性粒子(1.0g)を、30mLの塩化チオニル中に入れ、4時間還流した。過剰の塩化チオニルを磁性固体からデカントした。粒子をCHClで数回洗浄し、次のステップに回した。
e)50mLのCHClに懸濁された、酸性の塩化物イオンで機能付与されたステップd)からの粒子を0.22gの1,4−ベンゼンジチオールと0.52mLのジイソプロピルエチルアミンで処理した。混合物を5分間超音波処理し、オービタルシェイカーで一晩振盪した。固体は磁気による分離を利用して、CHCl、1:1 CHCl/CHOH、CHOH、1:1 CHCl/CHOH、CHClで連続的に洗浄した。固体を一晩空気乾燥した。
f)これまでのステップの粒子(約0.9g)と25mLのCHClの混合物を0.81gのトリブチルホスフィンで処理した。混合物を5分間超音波処理し、オービタルシェイカーで一晩振盪した。固体は磁気による分離を利用して、CHCl、1:1 CHCl/CHOH、CHOH、1:1 CHCl/CHOH、CHClで連続的に洗浄した。固体は一晩空気乾燥した。
g)これまでのステップの粒子(約0.8g)と25mLのCHClの混合物を0.25gの4−塩化クロロメチルベンゾイルと0.52mLのジイソプロピルエチルアミンで処理した。混合物を5分間超音波処理し、オービタルシェイカーで一晩振盪した。固体はCHCl、1:1 CHCl/CHOH、CHOH、1:1 CHCl/CHOH、CHClで連続的に洗浄した。固体を集めて、一晩空気乾燥した。
h)これまでのステップの粒子(約0.7g)と25mLのCHClの混合物を0.41gのトリブチルホスフィンで処理した。混合物を5分間超音波処理し、オービタルシェイカーで計7日間振盪した。固体は磁気による分離を利用して、1:1 CHCl/CHOH、CHOHで洗浄した。固体を集めて、乾燥した。
【0069】
実施例2 より大きな粒子サイズの固相材料
トリブチルホスホニウムNAB基と切断可能なアリールチオエステル結合により機能付与された磁性粒子の合成。

a)500mLフラスコに3−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン(149.8g)を入れ、アルゴンでパージした。フラスコを氷浴に設置した後、シリンジを介してゆっくりとアクリロイロキシトリメチルシラン(119.6g)を加えた。反応液を5分間攪拌し、氷浴を除き、更に攪拌を2時間続けた。生成物はそれ以上精製することなく使用した。
b)市販の磁鉄鉱(Strem cat.No.93−2616 1−5μm)5.0gを140mLの水(type1)と1.25Lのエタノールで希釈した。濃縮したNHOH(28%,170mL)を30〜45分後に加えた。エタノールに溶解した、ステップa)からの1.5gのシリルエステルと13.5gのSi(OEt)を三回に分けて90分間隔で反応液に加えた。90分後、20〜30mLのエタノールに溶解した3.75gのシリルエステル化合物をその後加え、混合物を攪拌し、90分間超音波処理した。攪拌は一晩続けた。混合物は2個の1Lフラスコに500mLずつ移し、粒子は磁気によって分離した。固体は250mLメタノールで4回、250mLの水(type1)で2回、水(type1)で希釈したpH1のHCl 250mLで1回(混合物を磁石に接触させる前に10分間)、250mLの水(type1)で4回、250mLのメタノールで4回、次いで250mLのアセトンで2回、連続的に洗浄した。固体は一晩空気乾燥した。このステップの間にシリルエステルの加水分解が起こり、カルボン酸基が生成した。
d)前ステップで得られた、カルボン酸で機能付与された磁性粒子(1.0g)を、30mLの塩化チオニル中に入れ、4時間還流した。過剰の塩化チオニルを磁性固体からデカントした。粒子をCHClで数回洗浄し、次のステップに回した。
e)50mLのCHClに懸濁された、酸性の塩化物イオンで機能付与されたステップd)からの粒子を0.22gの1,4−ベンゼンジチオールと0.52mLのジイソプロピルエチルアミンで処理した。混合物を5分間超音波処理し、オービタルシェイカーで一晩振盪した。固体は磁気による分離を利用して、CHCl、1:1 CHCl/CHOH、CHOH、1:1 CHCl/CHOH、CHClで連続的に洗浄した。固体を一晩空気乾燥した。
f)これまでのステップの粒子(約0.9g)と25mLのCHClの混合物を0.81gのトリブチルホスフィンで処理した。混合物を5分間超音波処理し、オービタルシェイカーで一晩振盪した。固体は磁気による分離を利用して、CHCl、1:1 CHCl/CHOH、CHOH、1:1 CHCl/CHOH、CHClで連続的に洗浄した。固体は一晩空気乾燥した。
g)これまでのステップの粒子(約0.8g)と25mLのCHClの混合物を0.25gの塩化4−クロロメチルベンゾイルと0.52mLのジイソプロピルエチルアミンで処理した。混合物を5分間超音波処理し、オービタルシェイカーで一晩振盪した。固体は1:1 CHCl/CHOH、CHOHで連続的に洗浄した。固体を集めて、一晩空気乾燥した。
h)これまでのステップの粒子(約0.7g)と25mLのCHClの混合物を0.41gのトリブチルホスフィンで処理した。混合物を5分間超音波処理し、オービタルシェイカーで計7日間振盪した。固体は磁気による分離を利用して、CHCl、1:1 CHCl/CHOH、CHOH、1:1 CHCl/CHOH、CHClで連続して洗浄した。固体を集めて、乾燥した。
【0070】
実施例3 機能付与した磁性ポリマーの合成

a)25mgの固体を含む、Dynal MyOne(登録商標)磁性COOHビーズを磁石を用いてデカントした。ビーズをその後、1mLの水で3回、1mLのCHCNで3回洗い、4時間乾燥した。ビーズを1mLのCHClに懸濁し、28.8mgのEDCを加えて30分間振盪した。1,4−ベンゼンジチオール(30mg)を混合物に加えた。チューブを1分間超音波処理し、一晩振盪した。上清を除き、ビーズを磁石を利用して、1mLのCHClで4回、1mLの1:1 MeOH:CHClで1回、1mLのMeOHで4回、1mLのCHClで4回洗浄した。
b)ビーズを1mLのCHClに懸濁し、140μLのトリブチルホスフィンを加えた。反応液を1分間ボルテックスし、計3日間振盪した。磁石を利用して溶媒をデカントした。ビーズは磁気を用いて、1mLのCHClで4回、1mLの1:1 MeOH:CHClで1回、1mLのMeOHで4回、1mLの1:1 MeOH:CHClで1回、1mLのCHClで4回洗浄した。
c)1mLのCHCl中の、これまでのステップの粒子の混合物(約25mg)を20mgの塩化4−クロロメチルベンゾイルと52μLのジイソプロピルエチルアミンで処理した。混合物を10秒ボルテックスし、5分間超音波処理し、オービタルシェイカーで一晩振盪した。固体を磁石による分離を利用して、1mLのCHClで4回、1mLの1:1 MeOH:CHClで1回、1mLのMeOHで4回、1mLの1:1 MeOH:CHClで1回、1mLのCHClで4回、連続的に洗浄した。
d)これまでのステップの粒子の混合物(25mg)と1mLのCHClを30mgのトリブチルホスフィンで処理した。混合物を2分間超音波処理し、オービタルシェイカーで計6日間振盪した。固体は磁石による分離を利用して、1mLのCHClで4回、1mLのMeOHで3回、そして1mLの水で2回、連続的に洗浄した。1mLの水を加えて、ビーズ(25mg/mL)のストックソリューションとした。
【0071】
実施例4 機能付与した磁性ポリマーの合成

a)リンカーの調製:1,4−ベンゼンジチオール(11.97g)を300mLのCHClに溶解し、溶液を−78℃に冷却した。8.86gの4−クロロメチルベンゾイルクロライドと3.8mLのピリジンを100mLのCHClに溶解した溶液を1時間以上かけて滴下した。反応溶液を室温まで暖め、一晩放置した。検査の後、1gの不純物を含んだ固体生成物を洗浄して200mgの純粋な生成物を得た。ろ過クロマトグラフィーによって追加分を単離することができた。

b)1.07mLのSera−Mag(登録商標)磁性カルボキシレート修飾微小粒子の懸濁液(Seradyn)(合計50mgの粒子を含む)からの磁性粒子を磁気を用いて集め、上清をデカントした。次に、ビーズを1mLの水で3回、1mLのCHCNで3回、そして1mLのCHClで3回洗浄した。ビーズを3.6mLのCHClに懸濁し、60mgのEDCを加えて30分間振盪した。
c)ステップa)からのリンカー60mgの400μLのDMF溶液を混合物に加えた。チューブを1分間超音波処理し、一晩振盪した。ビーズを25mgずつに分けてその後の処理を行った。上清を除き、磁気を用いながら、1mLのCHClで4回、1mLの1:1 MeOH:CHClで1回、1mLのMeOHで4回、1mLのCHClで4回ビーズを洗浄した。
d)ステップc)からの粒子は10mLのCHClで懸濁し、75μLのトリブチルホスフィンを加えた。反応混合物を1分間ボルテックスし、計7日間振盪した。磁石を利用して、溶媒をデカントした。ビーズは磁気を用いながら、1mLのCHClで3回、1mLの1:1 MeOH:CHClで1回、1mLのMeOHで4回、1mLの水で2回洗浄した。1mLの水を加えて、ビーズ(25mg/mL)のストックソリューションとした。
【0072】
実施例5 アルカリ試薬の調製

代表的な調製手順
上記の1〜6のナトリウム塩化合物を、対応する中性のチオールから下記の一般的な合成法によって調製した。
合成1
250mLフラスコに、アルゴンで20分間パージされた乾燥したTHFを入れた。次に2.00g(0.0130mol)のDTTを加え、続けて0.471g(0.0118mol)のNaH(60%鉱油懸濁液)を加えた。混合液はアルゴン下で一晩攪拌した。反応混合液を濾過し、固体をTHF(50mL×3回)で洗浄した後ヘキサン(100mL×3回)で洗浄し、真空下で乾燥して1.12gの上記化合物1を白色固体として得た。
H NMR(400MHz,DO):δ2.38(m,2H),2.50(m,2H),3.45(t,2H)ppm.
合成2
H NMR(400MHz,d−DMSO):δ6.28(t,1H),6.79(m,1H),6.88(d,1H),7.73(d,1H)ppm.
合成3
H NMR(400MHz,d−DMSO):δ2.97(t,2H),3.78(t,2H)ppm.
合成4
H NMR(400MHz,d−DMSO):δ3.29(s,3H),6.32(s,1H),6.60(s,1H)ppm.
合成5
H NMR(400MHz,d−DMSO):δ2.24(t,4H),3.08(t,4H)ppm.
合成6
H NMR(400MHz,DO):δ2.57(t,2H),3.52(t,2H)ppm.
【0073】
実施例6 使用された他のアルカリ試薬

【0074】
実施例7 ルシフェラーゼRNAの回収
RNAの回収における本方法の有用性を示し、様々な条件と試薬の相対的な効率性を評価するために、簡単な試験システムを用いた。100μLのアルカリ試薬と100μLのウシ胎児血清(FBS)の混合液を作製した。1μg/μLのルシフェラーゼRNAを2μL加え、混合液を5秒間ボルテックス混合した。100μLの酸性溶液を加え、混合液を10秒間ボルテックス混合した。混合液を実施例1の粒子2mgと混ぜ、30秒間ボルテックス混合した。磁性ラック上で粒子から液体を除き、粒子を、200μLのクエン酸ナトリウム0.3M、pH3の洗浄溶液で2回、200μLの0.1%DEPC処理水で2回、連続的に洗浄した。RNAは、粒子を50μLの50mM NaOHと混ぜ、1分間ボルテックス混合し、溶出液を取り出すことにより、抽出した。初めの結合反応の上清を、溶液から取り除かれて粒子に結合したRNAの量を決定するために、エチジウム染色ゲル上で蛍光染色により分析した。溶出液は、本方法により抽出されたRNAの量と質を決定するために、エチジウム染色ゲル上で蛍光染色により分析した。以下の溶液の使用により、多量のRNAを結合し、結合RNAを多量に溶出することができた。
アルカリ試薬 酸性溶液
Bu4P+OH- 0.05M 酢酸 0.1M
Bu4P+OH- 0.1M 酢酸 0.15M
Bu4P+OH- 0.2M 酢酸 0.3M
化合物3 0.2M 酢酸 0.3M
化合物4 0.2M 酢酸 0.3M
化合物7 0.2M 酢酸 0.3M
化合物8 0.2M 酢酸 0.3M
化合物9 0.2M 酢酸 0.3M
【0075】
実施例8 大腸菌培養液からのRNAの抽出
培地中で生育している大腸菌からのRNA回収における本方法の有用性を示し、様々な条件と試薬の相対的な効率性を評価するために簡単な試験システムを用いた。
200μLの大腸菌培養液をペレットにし、培地を除いた。ペレットを100μLのアルカリ試薬と混ぜ、ピペッティングを10回行って混合した。得られた溶液を100μLの酸性試験溶液と混ぜ、10秒間ボルテックスした。該溶液を0.3M pH3のクエン酸ナトリウム100μL中の実施例1の粒子2mgと混ぜ、30秒間ボルテックスした。磁性ラック上で粒子から液体を除き、粒子を、200μLのクエン酸ナトリウム0.3M、pH3の洗浄溶液で2回、200μLの0.1%DEPC処理水で2回、連続的に洗浄した。粒子を50mM NaOHと20mM、pH8.8 trisの溶液50μLと混ぜ、1分間ボルテックスし、溶液を取り出すことによりRNAを単離した。初めの結合反応の上清を、溶液から取り除かれて粒子に結合したRNAの量を決定するために、エチジウム染色ゲル上で蛍光染色により分析した。溶出液は、本方法により抽出されたRNAの量と質を決定するために、エチジウム染色ゲル上で蛍光染色により分析した。以下の溶液を用いることにより、多量の無傷RNAとゲノムDNAを回収できた。一方で、0.1%DEPC処理水中でペレットの結合と粒子の洗浄を行った場合は、分解したRNAしか得られなかった。
アルカリ試薬 酸性溶液
NaOH 0.05M クエン酸ナトリウム 0.3M pH3.0
NaOH 0.05M 酢酸 0.1M
Bu4P+OH- 0.05M クエン酸ナトリウム 0.3M pH3.0
Bu4P+OH- 0.05M 酢酸 0.1M
Bu4P+OH- 0.1M 酢酸 0.15M
Bu4P+OH- 0.2M 酢酸 0.3M
【0076】
実施例9 血漿中のArmored RNAからのRNAの抽出
Armored RNA(登録商標、Asuragen Inc.,Austin,TX)はタンパク質で被覆されたssRNAであり、擬似ウィルス粒子に相当する。gag領域からの配列とウィルス被覆タンパク質を含む、HIV−B配列のArmored RNAを、複合サンプルからRNAを単離するための本発明の方法をテストするために使用した。
血漿中のArmored RNAからRNAを抽出する代表的な手順は以下の通りである。
当業者は、特定のパラメーターを加減することが可能であり、それらも本発明の範囲内と見なされる。100μLのクエン酸抗凝固処理済み血漿またはEDTA抗凝固処理済み血漿(Equitech−Bio,Inc.,Kerrville,TX)中にArmored RNA 5μL(50000コピーが含まれる)が含まれる105μLの溶液を、100μLのアルカリ試薬(例えば、50mM NaOH)と混合し、その混合液をボルテックスにより軽く混ぜ合わせた。1分後、該混合液を、100μLの酸性溶液(例えば、0.3M KOAc、pH4.0)に入った2mgの実施例1の粒子と混合し、スラリーを30秒間ボルテックス混合した。該粒子を磁性ラック上で分離し、200μLの酸性溶液(例えば、0.3M KOAc、pH4.0)で2回、200μLの0.1%DEPC処理水で2回、連続的に洗浄した。該粒子を50μLの50mM NaOHとともに1分間ボルテックス混合し、溶液を取り出すことにより、RNAを溶出した。105μLの血漿/Armored RNAを、試験溶液の代わりに200μLの0.1%DEPC処理水と2mgの該粒子で混合したコントロールを比較例とした。
RNA含有溶出液を、gag遺伝子配列を増幅するためのプライマーセットを用いたRT−PCR増幅に供した。増幅反応は、増幅と検出にiCycler装置(Bio−Rad)を用いて、iScript(登録商標)One−Step RT−PCR kit with SYBR(登録商標)Green(Bio−Rad)で行った。
以下の条件により増幅可能なRNAの回収を行うことができた。
アルカリ試薬 試験溶液
Bu4P+OH-0.1M グルタラート 0.3M pH3.2
Bu4P+OH-0.1M スクシナート 0.3M pH3.8
NaOH0.05M+tris0.02M,pH8 酢酸 0.1M
NaOH0.05M+tris0.02M,pH8 酢酸亜鉛 0.05M pH4
【0077】
実施例10 血清中のArmored RNAからのRNAの抽出
血清中のArmored RNAからRNAを抽出する代表的な手順は以下の通りである。100μLのウシ胎児血清(FBS、Invitrogen)に入った5μLのArmored RNA(50000コピーが含まれる)が含まれる105μLの溶液を、100μLのアルカリ試薬(例えば、50mM NaOH)と混合し、混合液をボルテックスにより軽く混ぜ合わせた。1分後、該混合液を、100μLの酸性溶液(例えば、0.3M KOAc、pH4.0)中の実施例1の粒子2mgと混合し、スラリーを30秒間ボルテックス混合した。該粒子を磁性ラック上で分離し、200μLの酸性溶液(例えば、0.3M KOAc、pH4.0)で2回、200μLの0.1%DEPC処理水で2回、連続的に洗浄した。該粒子を50μLの50mM NaOHとともに1分間ボルテックス混合し、溶液を取り出すことにより、RNAを溶出した。105μLの血清/Armored RNAを、試験溶液ではなく200μLの0.1%DEPC処理水と2mgの該粒子で混合したコントロールを比較例とした。
RNA含有溶出液を、gag遺伝子配列を増幅するためのプライマーセットを用いたRT−PCR増幅に供した。増幅反応は、増幅と検出にiCycler装置(Bio−Rad)を用いて、iScript(登録商標)One−Step RT−PCR kit with SYBR(登録商標)Green(Bio−Rad)で行った。
以下の条件により増幅可能なRNAの回収を行うことができた。(MES=HOCHCHNa,Comp.6)
アルカリ試薬 試験溶液
NaOH 0.05M グリシン 0.3M pH2.5
NaOH 0.05M KOAc 0.3M pH4.0
NaOH 0.01M クエン酸Na 0.3M pH3.0
NaOH 0.02M クエン酸Na 0.3M pH3.0
NaOH 0.03M クエン酸Na 0.3M pH3.0
NaOH 0.04M クエン酸Na 0.3M pH3.0
NaOH 0.05M クエン酸Na 0.3M pH3.0
BuOH 0.05M クエン酸Na 0.3M pH3.0
BuOH 0.1M クエン酸Na 0.3M pH3.0
MES 0.05M クエン酸Na 0.3M pH3.0
BuOH 0.04M クエン酸Na 0.3M pH3.0
BuOH 0.05M クエン酸Na 0.3M pH3.0
BuOH 0.05M クエン酸Na 0.3M pH3.5
BuOH 0.1M クエン酸Na 0.3M pH3.5
BuOH 0.2M クエン酸Na 0.3M pH3.5
BuOH 0.5M クエン酸Na 0.3M pH3.5
NaOH 0.05M クエン酸Na 0.3M pH3.5
NaOH 0.1M クエン酸Na 0.3M pH3.5
NaOH 0.2M クエン酸Na 0.3M pH3.5
BuOH 0.05M クエン酸Na 0.3M pH3.5
BuOH 0.1M クエン酸Na 0.3M pH3.5
BuOH 0.2M クエン酸Na 0.3M pH3.5
BuOH 0.1M KOAc 0.3M pH4.0
BuOH 0.1M グルタラートNa 0.3M pH3.2
BuOH 0.1M スクシナートNa 0.3M pH3.8
【0078】
実施例11 Armored RNAからのRNAの抽出
これまでの実施例の方法におけるいくつかのパラメーターの変更を行った。
1.血漿/血清サンプルとアルカリ試薬の接触を10秒間程もしくは5分間程の時間で行うことができた。
2.実施例2の粒子を実施例1の粒子の代わりに使用することができた。
3.RNAを、50mM NaOH+20mM Tris,pH8.8で溶出することができた。
【0079】
実施例12
実施例1、2、3および4の固相結合材料をそれぞれ使用し、様々なアルカリ試薬と酸性溶液を用いて、実施例7〜11におけるRNA抽出のためのいずれの手順も首尾よく行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞もしくはウィルスを1以上含む生物サンプルからリボ核酸を抽出する方法において、
a)サンプルをアルカリ試薬と接触させて第一混合液を形成すること、
b)前記第一混合液を酸性溶液と接触させて第二混合液を形成すること、
b)前記第二混合液を、初めにいかなる予備的な溶解も行うことなく生物サンプルから直接リボ核酸を遊離させることのできるものとして選択された固相結合材料と混合し、混合の際、カオトロピック剤や洗浄剤を溶解を行うために使用せず、混合することによって前記固相結合材料が細胞およびウィルスの溶解を引き起こしてリボ核酸を遊離させること、
c)前記固相結合材料上にリボ核酸を結合させること、
を含むことを特徴とするリボ核酸の抽出方法。
【請求項2】
d)リボ核酸が結合した前記固相結合材料からサンプルを分離すること、
e)1以上の洗浄溶液によって前記固相結合材料を任意に洗浄すること、
f)前記固相結合材料と、溶液中に結合RNAを遊離させるための試薬とを接触させることにより、該固相結合材料から前記結合リボ核酸を溶出させること、
をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第二混合液の形成ステップを、前記第二混合液と前記固相結合材料との混合ステップと同時に行う請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第二混合液を、前記第二混合液と前記固相結合材料との混合ステップより前に形成する請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記固相結合材料が、粒子、微小粒子、繊維、ビーズ、メンブレン、テストチューブおよびマイクロウェルから選択される請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記固相結合材料が、マトリックス部と核酸結合部とを含み、前記マトリックス部が、シリカ、ガラス、不溶性合成ポリマー、不溶性多糖、金属、金属酸化物および金属硫化物から選択される請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記マトリックス部が、シリカ、ガラス、合成ポリマーもしくは不溶性多糖で被覆された、直径10μm未満の磁気反応性微小粒子から選択される請求項6記載の方法。
【請求項8】
リボ核酸の捕捉と結合を可能にする、共有結合により結合された核酸結合部を前記固相結合材料がさらに含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
共有結合により導入され、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム基、第四級アンモニウム塩基、第四級ホスホニウム塩基および第三級スルホニウム塩基から選択される表面官能基であって、細胞を破壊し、核酸を誘引する役割を果たす表面官能基で機能付与された、シリカベースまたはポリマー性の材料を前記固相結合材料がさらに含む請求項8記載の方法。
【請求項10】
第四級トリアルキルアンモニウム基、第四級トリアルキルホスホニウム基、第四級トリアリールホスホニウム基、アルキル・アリール基が混合した第四級ホスホニウム基および第三級スルホニウム基から選択される、複数の核酸結合基から前記核酸結合部が構成される請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記核酸結合基が、基内のアルキル基がそれぞれ4個以上の炭素原子を有し、細胞とウィルスの溶解を引き起こしてリボ核酸を遊離させる、第四級トリアルキルアンモニウム基および第四級トリアルキルホスホニウム基から選択される請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記固相結合材料が、選択的に切断可能な結合を通じてマトリックスに結び付けられた核酸結合基を含む請求項6記載の方法。
【請求項13】
前記固相結合材料が、選択的に切断可能な結合を通じてマトリックスに結び付けられた核酸結合基を含む請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記固相結合材料が、磁性粒子マトリックスに切断可能なアリールチオエステル結合を通じて結合されているトリブチルホスホニウム核酸結合基を有する磁性粒子を含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記固相結合材料が、下記式、

(式中、Mは共有結合で結び付けられたリンカー基で機能付与されたシリカベースの磁性粒子である)で表される請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記アルカリ試薬が、濃度が少なくとも10−4MでありpHが少なくともおよそ10である水溶性アルカリ化合物の溶液を含み、前記酸性溶液が、pHが1〜5の範囲である水溶液を含む請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記アルカリ化合物が、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類酸化物、アルカリ土類水酸化物、アルカリ金属カーボネート、NHOH、第一級、第二級および第三級アミン、第四級アンモニウム水酸化物、第四級ホスホニウム水酸化物および、式RS(式中、Mはアルカリ金属イオンであり、Rは1〜20個の炭素原子を含む)で表され、アルキルチオラート、置換アルキルチオラート、アリールチオラート、置換アリールチオラート、複素環式チオラート、チオカルボキシラート、ジチオカルボキシラート、キサンタート、チオカーバメートおよびジチオカーバメートから選択されるチオラート塩から選択され、前記酸性溶液が、ピリジニウム塩、無機酸、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびアミノ酸から選択される無機もしくは有機酸の水溶液、またはこれらの酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類塩、遷移金属塩、NH塩、第四級アンモニウム塩および第四級ホスホニウム塩から選択されるもの水溶液を含む請求項16記載の方法。
【請求項18】
工程a)の前に前記サンプルをプロテアーゼと接触させる請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記生物サンプルが、バクテリア培養液、バクテリア培養液からペレット化された細胞、血液、血漿、血清、尿、唾液、精液、CSF、植物細胞、動物細胞および組織ホモジェネートから選択される請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記生物サンプルがウィルスを含む請求項18記載の方法。

【公表番号】特表2009−527228(P2009−527228A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555501(P2008−555501)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/062270
【国際公開番号】WO2007/098379
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(504236547)ルミゲン インク (4)
【Fターム(参考)】