説明

核酸の精製方法及びこの方法の実施に使用する配合物及びキット

媒体に含まれる1以上の核酸を精製するために、アセトアミド、1以上のアセトアミド誘導体又はアセトアミド及び1以上のアセトアミド誘導体の組み合わせと共にグアニジンチオシアナートを含む配合物が用いられる。特に、少なくとも1つの核酸をそのin vivo細胞環境から分離させ、結合マトリックスに結合させるために、少なくとも1つの核酸を含む媒体が結合マトリックス及び配合物と混合される。結合マトリックス及びそれに結合した少なくとも1つの核酸は、次いで、実質的に混合された媒体及び配合物の残りから分離され、次いで少なくとも1つの核酸は結合マトリックスから溶離されて、実質的に精製された形態で少なくとも1つの核酸が得られる。単一の媒体から異なる核酸を選択的に精製する場合には、異なる核酸とそれぞれが適合する複数の結合マトリックスを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許出願第12/549806号(出願日:2009年8月28日)に基づく優先権を主張する(参照によりその内容の全体が本願に組み込まれる)。
本発明は、1以上の核酸の精製方法及びこの方法の実施に使用する配合物及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
核酸の精製は、科学的手順に重要な役割を果たしている。生体液(例えば、ヒト血液、血清)、培養細胞ばかりでなく、植物、動物及びヒト組織ならびに他の試料に含まれる一本鎖及び二本鎖DNAの、多くの既知の精製方法がある。しかしながら、これらの方法は、大変低い収率しか得ることができず、大量の試料から少量の核酸を抽出しようと試みる場合、必ずしもうまくいくとは限らない。既知の方法は、例えば、Nargessi, U.S. Pat. No. 6,855,499 (2005); Tereba et al., U.S. Pat. No. 6,673,631 (2004); McKernan et al., U.S. Pat. No. 6,534,262 (2003); Taylor et al., J. Chromatography A, 890:159-166 (2000); Ahn et al., BioTechniques, 29:466-468 (2000); Scott Jr. et al., Lett. Appl. Microbiol., 31:95-99 (2000); Lin et al., BioTechniques, 29:460-466 (2000); Smith et al., U.S. Pat. No. 6,027,945 (2000); Mrazek et al., Acta Univ. Palacki. Olomuc., Fac. Med. 142:23-28 (1999); Hawkins, U.S. Pat. No. 5,898,071 (1999);及びHawkins, U.S. Pat. No. 5,705,628 (1998) に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、前述の文献に記載されている公知の方法より改善されている。
【0004】
一側面において、本発明は、媒体(medium)、例えば全血、血漿、又は、ヒト、植物もしくは動物から得られる組織細胞培養物に含まれる少なくとも1つの核酸、例えばデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、及び/又はペプチド核酸(PNA)の精製方法に関する。本方法は、(a)少なくとも1つの核酸をそのin vivo細胞環境から分離させ、少なくとも1つの結合マトリックスと結合させるために、少なくとも1つの核酸を含む媒体と少なくとも1つの結合マトリックス及び配合物を混合し、(b)実質的に混合された媒体及び配合物の残りから、結合マトリックス及びそれに結合した少なくとも1つの核酸を分離し、(c)結合マトリックスから少なくとも1つの核酸を溶離し、それによって実質的に精製された形態で少なくとも1つの核酸を得る段階を含む。
【0005】
核酸がそのin vivo細胞環境から分離され、1以上の科学的手順、例えば、特に遺伝物質の単離、ポリメラーゼ連鎖反応、電気泳動、配列決定及びクローニングに有用な形態で得られた場合に、核酸は“実質的に精製された形態”であるとみなされる。
【0006】
前述の方法に用いられる配合物は、ある量のグアニジンチオシアナートならびにある量の(i)アセトアミド、(ii)1以上のアセトアミド誘導体又は(iii)アセトアミド及び1以上のアセトアミド誘導体の組み合わせを含む。好ましいアセトアミド誘導体はメチルアセトアミド及びジメチルアセトアミドを含む。本明細書においては、場合により、グアニジンチオシアナートを“GTC”と呼び、グアニジンチオシアナートとアセトアミド及び/又は1以上のアセトアミド誘導体の組み合わせを“GTC-A”と呼ぶ。
【0007】
上記の方法において、配合物中に存在するGTCとアセトアミド及び/又はアセトアミド誘導体(単数又は複数)のそれぞれの量は、少なくとも1つの核酸をそのin vivo細胞環境から分離させ、結合マトリックスに結合させるのに十分である。好ましくは、GTC配合物中の濃度はおおよそ1.7M〜おおよそ4.3Mであり、より好ましくは、おおよそ4.0M〜おおよそ4.3Mである。好ましくは、配合物中のアセトアミド及び/又はアセトアミド誘導体(単数又は複数)の濃度はおおよそ5.0M〜おおよそ7.5Mであり、より好ましくは、おおよそ5.0M〜おおよそ7.1Mである。
【0008】
前述の方法において、精製しようとする核酸のタイプに応じて、任意の数の公知の結合マトリックスを用いることができる。当業者は、目的とする核酸と適合する結合マトリックスを選択することができる。適切な結合マトリックスの例は、限定するものではないが、常磁性セルロース粒子、常磁性カルボキシセルロース粒子、常磁性シトラスペクチン粒子、常磁性リンゴペクチン粒子、常磁性ゼオライト粒子、常磁性シリカ粒子、セルロース膜、シリカ膜、酢酸セルロースカラム、ナイロン膜カラム、PVDF膜カラム、ポリプロピレンカラム、HIGH PURE(登録商標)スピンカラム(Roche-Diagnostics社より入手可能、商品番号1828665)及び除去カラムを含む。
【0009】
上記の方法に用いる配合物と媒体との容量比は、好ましくは1:1〜30:1であり、より好ましくは1.5:1〜8:1である。結合マトリックスと媒体との容量比は、好ましくは0.005:1〜0.5:1であり、より好ましくは0.2:1〜0.4:1である。当業者は、いくつかある変数の中で特に、目的とする核酸(単数又は複数)に応じて、これらの好ましい範囲内又は範囲外で、割合、配合物の濃度及び用いる結合マトリックスのタイプを選択することができる。従って、本発明は、これらの好ましい範囲に限定されない。
【0010】
場合により、1以上の追加の成分を、媒体、結合マトリックス及び配合物に混合することができる。例えば、核酸のその媒体からの分離を容易にするために、細胞構造の分解及び溶解を補助する1以上の酵素を用いることができる。適切な追加の成分の例は、限定するものではないが、プロテイナーゼK(Promega社より入手可能、カタログ商品番号V3021)、β-メルカプトエタノール(BME)、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオスレイトール(DTT)(Sigma社より入手可能、カタログ商品番号43815)、1-チオグリセロール(1-TG)(SIGMA-ALDRICH(登録商標)より入手可能、カタログ商品番号M2172)、ジギトニン、溶解液、CHAPS(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート、SIGMA-ALDRICH(登録商標)より入手可能、カタログ商品番号C3023)、TERGITOL(登録商標)タイプNP-9(26-(4-ノニルフェノキシ)-3,6,9,12,15,18,21,24-オクタオキサヘキサコサン-1-オール、SIGMA-ALDRICH(登録商標)より入手可能、カタログ商品番号np9)及びトリトン(登録商標)X-100(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール、マサチューセッツ州ウォルサムのThermo Scientific社より入手可能、カタログ商品番号BP151)を含む。これらの追加の成分をどのように用いるかは決定的ではない。例えば、それらは、配合物中に組み込むこともできるし、媒体が結合マトリックス及び/又は配合物と混合される前か後に媒体に添加することもできる。
【0011】
本方法はまた、1つの媒体に含まれる少なくとも2つの異なる核酸を精製するために用いることもできる。これには、前述のように、少なくとも2つの異なる核酸を含む媒体と、媒体に含まれる第1核酸と適合する第1結合マトリックス、媒体に含まれる第2核酸と適合する第2結合マトリックス及びGTC-A配合物を混合することを含む。これにより、第1及び第2核酸がそのin vivo細胞環境から分離されて、それぞれ第1及び第2結合マトリックスに結合する。第1結合マトリックス及びそれに結合した第1核酸ならびに第2結合マトリックス及びそれに結合した第2核酸のそれぞれは、次いで、実質的に混合された媒体及び配合物の残りから分離される。更にまた、第1核酸は第1結合マトリックスから溶離され、第2核酸は第2結合マトリックスから溶離される。それによって、第1及び第2核酸のそれぞれは、実質的に精製された形態で得られる。
【0012】
場合により、媒体に含まれる第1核酸が第1結合マトリックスに結合した後に、第2核酸及び配合物を含む媒体を移すことができる。これに続いて、媒体に含まれる第2核酸の結合と適合する第2結合マトリックスに残った媒体が移動され、次いで、それぞれ第1及び第2結合マトリックスから、第1及び第2核酸のそれぞれが分離される。
【0013】
他の側面において、本発明は、最終溶離段階は必ずしも必要ではないが、この段階を排除するものではないという条件下での上記の方法に関する。従って、結合マトリックス及びそれに結合した核酸を保存することもでき、かつ/又は結合マトリックスから核酸を溶離することを含むことも含まないこともできる科学的手順の後の使用に移すこともできる。
【0014】
他の側面において、本発明は、核酸の精製及び/又は結合マトリックスへの核酸の結合に使用するキットに関する。キットは、前述のように、結合マトリックス及びGTC-A配合物を含む。好ましくは、キットにおける結合マトリックスと配合物との容量比は1:400〜1:1である。結合マトリックスと配合物の比は、特に、目的とする核酸(単数又は複数)及び用いる結合マトリックスのタイプに応じて、好ましい範囲内及び範囲外で変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】下記の実施例2に従って行った電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図2】下記の実施例3及び4に従って行った電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図3A】下記の実施例5に従って行った電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図3B】下記の実施例5に従って行った電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図4】下記の実施例6に従って行った電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図5】下記の実施例7に従って行った電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図6】下記の実施例8に従って行った電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図7A】下記の実施例9に従って行った電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図7B】下記の実施例9に従って行った電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図8】下記の実施例10に従って行った電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図9A】下記の実施例11に従って行った電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図9B】下記の実施例11に従って行った電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図10】下記の実施例12に従って調製した血液カードの結果を示す写真である。
【図11】下記の実施例12に従って行った電気泳動分析の結果を示す写真である。
【0016】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
以下は、限定するものではない、本発明の好ましい実施態様である。特記しない限り、全体を通じて、すべての用量、pHレベル及び濃度は室温でのものである。
【0017】
核酸
本発明を用いて精製することができる核酸は、限定するものではないが、DNA(一本鎖、二本鎖、共有結合閉鎖状及び弛緩型環状)、RNA(一本鎖及び二本鎖)、PNAならびに前述のハイブリッドを含む。
【0018】
核酸含有媒体
本明細書において、用語“媒体”は、他の非核酸材料、例えば生体分子(例えば、タンパク質、多糖、脂質、低分子量酵素阻害薬、オリゴヌクレオチド、プライマー、鋳型)、ポリアクリルアミド、微量金属、有機溶媒などに加えて少なくとも1つの核酸を含む、天然に存在するか又は科学的に操作された任意の生体物質を含む。天然に存在する媒体の例は、限定するものではないが、全血、血漿及び他の体液ばかりでなく、ヒト、植物又は動物から得られる組織細胞培養物を含む。科学的に操作された媒体の例は、限定するものではないが、溶解物、アガロース及び/又はポリアクリルアミドゲルから溶離された核酸試料、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅もしくはDNAサイズ選択手順のいずれかから得られたDNA分子の複数の種を含む溶液及び配列決定反応後に得られた溶液を含む。
【0019】
結合マトリックス
好都合には、本発明において、1以上の結合マトリックスを用いることができる。本明細書においては、用語“結合マトリックス”は、核酸に結合できる任意の形態を含む。当業者は、目的とする核酸(単数又は複数)のために適切な結合マトリックスを選択することができるであろう。
【0020】
適切な結合マトリックスの例は、MAGAZORB(登録商標)常磁性粒子(Promega社より入手可能、ウィスコンシン州マディソン、カタログ商品番号MB1001)、GENFIND(登録商標)粒子(BECKMAN-COULTER(登録商標)より入手可能、カリフォルニア州フラートン)、MAGNESIL(登録商標)ブルー常磁性シリカ粒子(Promega社より入手可能、カタログ商品番号A2201)、ゼオライト粒子(Bitnerら、米国特許出願公開第2007/0172855号明細書、その全体が参照により本願に組み込まれる)及び常磁性リンゴ又はシトラスペクチン粒子(以下の実施例1を参照のこと)を含む。他の適切な結合マトリックスは、限定するものではないが、常磁性シリカ粒子、セルロース膜、シリカ膜又はカラム、例えば酢酸セルロースカラム、ナイロン膜カラム、PVDF膜カラム、ポリプロピレンカラム、ピュアスピンカラム及び、DNA IQ(登録商標)スピンバスケット(Promega社より入手可能、カタログ商品番号V1221)に使用する除去カラムを含む。より具体的には、適切なカラムは、DNA-IQ(登録商標)カラム、SVカラム、Corningスピンカラム(Corning of Corningより入手可能、ニューヨーク、カタログ商品番号8160)、ナイロン膜Corningスピンカラム(Corningより入手可能、カタログ商品番号8169)、ポリプロピレンスピンカラムにおけるPVDF膜(Millipore Ultrafree-MCより入手可能、マサチューセッツ州べバリー、カタログ商品番号VFC30GVNB)、DNA-IQ(登録商標)カラムにおけるポリプロピレン膜(Corningより入手可能、カタログ商品番号AN0604700)、HIGH PURE(登録商標)Spin Filterチューブ(インディアナ州インディアナポリスのRocheより入手可能、カタログ商品番号1828665)及び除去カラム(Promega社より入手可能、カタログ商品番号Z568A)を含む。Schleicher & Schuellセルロースカード(Keeneより入手可能、ニューハンプシャー州、カタログ商品番号GB003)もまた、特に、下流手順における後の使用のために核酸を保存及び/又は移動させる場合に有用な結合マトリックスを提供する。
【0021】
結合マトリックスと媒体との容量比は、好ましくは0.005:1〜0.5:1であり、より好ましくは0.2:1〜0.4:1である。当業者は、いくつかある要素の中で特に、目的とする核酸(単数又は複数)及び結合マトリックスのタイプに応じて、これらの好ましい範囲内又は範囲外で最適の割合を選択することができる。
【0022】
GTC-A配合物
GTC-A配合物は、目的とする核酸をそのin vivo細胞環境から分離させるための溶解及び/又は結合溶液として機能し、結合マトリックスが存在する場合は、核酸の結合マトリックスへの結合を容易にする。上記のように、配合物は、GTC及びアセトアミド及び/又は1以上のアセトアミド誘導体を含む。GTC及びアセトアミド及び/又は1以上のアセトアミド誘導体は、一緒に、又は順次に試料媒体に添加されることができる。順次添加の例として、例えば、細胞を溶解するために第1溶液中の試料媒体にGTCを添加することができ、例えば、結合マトリックスへのDNA又はRNAの結合を促進するための結合溶液として、アセトアミド及び/又は1以上のアセトアミド誘導体を第2溶液に添加することができる。
【0023】
以下の実施例で示すように、他の塩(単数又は複数)及びアミドの組み合わせ、例えばグアニジン塩酸塩(Promega社より入手可能、カタログ商品番号H5381)、グアニジン塩酸塩及びアセトアミド、GTC単独又はアセトアミド単独は、核酸の精製に比較的効果がない。驚くべきことに、GTC単独もアセトアミド単独も核酸の精製に効果がないにもかかわらず、GTC及びアセトアミド及び/又はアセトアミド誘導体(単数又は複数)の組み合わせは極めて効果的である。
【0024】
GTC-A配合物中に存在するGTC及びアセトアミド及び/又はアセトアミド誘導体(単数又は複数)のそれぞれの量は、種々の濃度の調整することができる。GTC配合物中の濃度は、好ましくはおおよそ1.7M〜おおよそ4.3Mであり、より好ましくはおおよそ4.0M〜おおよそ4.3Mである。配合物中のアセトアミド及び/又はアセトアミド誘導体(単数又は複数)の濃度は、好ましくはおおよそ5.0M〜おおよそ7.5Mであり、より好ましくはおおよそ5.0M〜おおよそ7.1Mである。
【0025】
配合物と媒体との割合は、限定するものではないが、多くの変数に依存し、それには、配合物の濃度、目的とする核酸(単数又は複数)、結合マトリックスが用いられる場合のそのタイプを含む。配合物と媒体との好ましい容量比は1:1〜30:1である。より好ましい容量比は1.5:1〜8:1である。
【0026】
GTCには、Promega社より入手可能、カタログ商品番号V2791を購入することができる。アセトアミドには、SIGMA-ALDRICH(登録商標)より入手可能、カタログ商品番号A0500-500Gを購入することができる。前述のように、GTCはアセトアミド誘導体とともに用いることができる。好ましいアセトアミド誘導体は、メチルアセトアミド(ACROS of Fair Lawnより入手可能、ニュージャージー州、カタログ商品番号126141000)及びジメチルアセトアミド(SIGMA-ALDRICH(登録商標)より入手可能、カタログ商品番号D5511)を含む。場合により、例えばHEK293組織細胞からRNAを精製する場合は、GTC及びアセトアミド又はGTC及びN-メチルアセトアミドの使用よりもGTC及びN,N-ジメチルアセトアミドの使用の方が好ましい。
【0027】
場合により、GTC-A配合物は、更に1以上の追加の成分、例えば、プロテイナーゼK、β-メルカプトエタノール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、ジチオスレイトール、1-TG、ジギトニン、溶解液、CHAPS、TERGITOL(登録商標)タイプNP-9及びトリトン(登録商標)X-100を含むことができる。
【0028】
溶解及び/又は結合溶液として使用できることに加えて、GTC-A配合物は、以下の方法の記載に従って、不純物を除去するために洗浄液として使用することもできる。
【0029】
キット
GTC-A配合物は、キットにおいて、核酸の精製に用いることができる1以上の結合マトリックスと混合することができる。好ましくは、キットにおける結合マトリックスと配合物との容量比は1:400〜1:1である。結合マトリックスと配合物との比は、キットの特定の中身及びキットが対象とする用途に応じて、この好ましい範囲内又は範囲外で変化させることができる。キットは、第1容器にGTCを含み、第2容器にアセトアミド及び/又は1以上のアセトアミド誘導体を含むことができ、これらは、キットにおいて、核酸の精製に用いることができる1以上の結合マトリックスと混合される。あるいは、GTCならびにアセトアミド及び/又は1以上のアセトアミド誘導体は、単一の容器中で混合されることもできる。1以上の結合マトリックスは、上記の容器の1つに混合されることもできるし、核酸の精製に使用できるキットにおいて、別途の品目として提供することもできる。
【0030】
好都合には、キットは、それぞれが異なるタイプの核酸と適合する2以上のタイプの結合マトリックスを含むことできる。その場合において、キットは、種類の異なる核酸の選択的精製に用いることができる。
【0031】
第1法
好ましい一実装において、本発明は、媒体に含まれる少なくとも1つの核酸の精製方法に関する。少なくとも1つの核酸をそのin vivo細胞環境から分離させ、少なくとも1つの結合マトリックスに結合させるために、少なくとも1つの核酸を含む媒体が、少なくとも1つの結合マトリックス及びGTC-A配合物と混合される。媒体、結合マトリックス及びGTC-A配合物は、任意の順序で、あるいは同時に混合されることができる。次いで、結合マトリックス及びそれに結合した少なくとも1つの核酸を、例えば、磁性ラックの使用、遠心分離又は濾過により、実質的に混合された媒体及び配合物の残りから分離される。場合により、この時点で、任意の不純物を除去するために、結合した結合マトリックス及び核酸の組み合わせを、GTC-A配合物を含む任意の適切な洗浄液で洗浄することができる。その後、少なくとも1つの核酸は結合マトリックスから溶離され、それによって少なくとも1つの核酸が実質的に精製された形態で得られる。この溶離段階は、前述の段階後直ちにおこなうこともできるし、後に行うこともできる。結合マトリックスから核酸を後に溶離することを選択することによって、下流での活性のために核酸を保存することができる
【0032】
更に詳細には、溶離段階は、結合マトリックスから核酸を分離するために溶出緩衝液を用い、その後、実質的に精製された核酸が溶出緩衝液に含まれる。適切な溶出緩衝液は、限定するものではないが、ヌクレアーゼフリー水又は水溶液、例えば、トリス(登録商標)-HCl、トリス酢酸、ショ糖及びホルムアミド溶液を含む。好ましい溶出緩衝液はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むトリス(登録商標)緩衝液である。より好ましくは、溶出緩衝液は、約10mMトリス(登録商標)(pH8.0)及び約1mM EDTA HEPES(登録商標)(pH7.5)である。適切な低イオン強度の溶出緩衝液が用いられる場合、結合マトリックスからの核酸の溶離は素早く行われる(例えば、30秒以下で)。
【0033】
精製後、限定するものではないが、遺伝物質の単離、ポリメラーゼ連鎖反応、電気泳動、配列決定、クローニングなどを含む公知のいくつかの科学的手順のいずれかに核酸を用いることができる。
【0034】
本方法は、単一の媒体に含まれる少なくとも2つの異なる核酸を精製するために用いることもできる。これには、前述のように、少なくとも2つの異なる核酸を含む媒体と、媒体に含まれる第1核酸との結合に適合する第1結合マトリックス及び媒体に含まれる第2核酸との結合に適合する第2結合マトリックスならびにGTC-A配合物とを混合することを含む。これにより、第1及び第2核酸はそのin vivo細胞環境から分離され、それぞれ第1及び第2結合マトリックスに結合される。第1結合マトリックス及びそれに結合した第1核酸ならびに第2結合マトリックス及びそれに結合した第2核酸のそれぞれは、次いで、実質的に混合された媒体及び配合物の残りから分離される。次いで、第1結合マトリックスから第1核酸が溶離され、第2核酸が第2結合マトリックスから溶離され、それによって、実質的に精製された形態で第1及び第2核酸のそれぞれが得られる。あるいは、本方法は、少なくとも2つの異なる核酸を含む媒体と媒体に含まれる第1核酸との結合に適合する第1結合マトリックス(例えば、DNAとの結合に適合するDNA-IQ(登録商標)粒子)を混合し、次いで、第1核酸を枯渇させて残った溶液(例えば、DNA-IQ(登録商標)粒子へのDNAの結合後に残ったRNA)を、残った核酸との結合に適合する第2結合マトリックス(例えば、常磁性ゼオライト粒子)に移し、それによって、実質的に精製された形態で第1及び第2核酸のそれぞれを得ることを含む。
【0035】
第2法
他の実装において、本発明は、本方法において必ずしも結合マトリックスから核酸を溶離する必要がないという条件下での前述の方法に関する。むしろ、結合マトリックス及びそれに結合した核酸(単数又は複数)は、保存することもでき、かつ/又は、結合マトリックスからの核酸(単数又は複数)の溶離を含むことも含まないこともできる科学的手順の後の使用に移すこともできる。
【0036】
この方法は、結合マトリックスとしてSchleicher & Schuellセルロースカードを用いる場合に特に有用である。精製された核酸が必要な場合には、セルロースカードを穴あけ器で打ち抜いて、それに結合した核酸を溶離して科学的手順に使用することができる。
【実施例1】
【0037】
本実施例において、本発明の特定の実施形態において結合マトリックスとして使用するのに適した常磁性リンゴ又はシトラスペクチン粒子を以下のように製造した:
1.ビーカー中で、0.5gのFe3O4粒子(磁鉄鉱、SIGMA-ALDRICH(登録商標)より入手可能、ミズーリ州セントルイス、カタログ商品番号31,006-9)と1.0gのリンゴペクチン粒子(SIGMA-ALDRICH(登録商標)より入手可能、カタログ商品番号P8471)又はシトラスペクチン粒子(SIGMA-ALDRICH(登録商標)より入手可能、カタログ商品番号P9135)を水8mlに混合する。
2.最初に56%KOH 3.0mlを加えて、混合物のpHを調節する。約21℃で5分間混合した後、pH紙を用いて混合物のpHを断続的に試験し、3.0M HClを3.3ml加えてpHを下げる。得られたpHは約3でなければならない。次いで、pH4.8を有する1.32M KOAcを3.5ml加え、得られた混合物のpHが4〜5であるようにする。
3.混合物を終夜約21℃で放置する。一部の大きな(例えば、1〜2cm3)粒子が生成し、ビーカーの底部に沈殿する。混合物の残りをチューブに注いで移し、大きな粒子を含むビーカーに“大”というラベルを貼る。
4.混合物の残りを含むチューブを磁性ラック上に置き、混合物を磁化する。2分後、チューブの側壁に引き付けられなかった混合物の部分を他のチューブに注いで移す。側壁に引き付けられた粒子を含むチューブに“主要”というラベルを貼る。およそ大きさが約0.6μm〜約80μmのおおよそ3mlの“主要”粒子があるはずである。
5.混合物の残りを含むチューブを磁性ラック上に戻し、混合物を磁化する。10分後、チューブの側壁に引き付けられなかった混合物の部分を注ぎ捨てる。側壁に引き付けられた粒子を含むチューブに“一番刈り”というラベルを貼る。おおよそ1.5mlの“一番刈り”粒子があるはずである。
6.残留KOAc及び/又は残留ペクチン粒子を除去するために、“大(large)”“主要(main)”及び“一番刈り(first cut)”粒子をナノピュア水で3回洗浄する。各洗浄に関して、ナノピュア水10mlを加えて粒子をセットし、粒子を沈殿させ、次いでナノピュア水を注ぎ捨てる。
【0038】
常磁性ペクチン粒子の3つのセット(“大”“主要”及び“一番刈り”)はいずれも結合マトリックスとして使用できる。しかしながら、以下の実施例においては、“主要”粒子のみを用いる。
【実施例2】
【0039】
本実施例では、ヒト全血試料からDNAを精製する試みにおいて、異なる9つの溶解-結合配合物を用いた。あるものは他のものよりも好結果を示した。以下の手順を用いた:
1. 1.5mlプラスチックチューブ9個のそれぞれにMAGAZORB(登録商標)常磁性粒子50μlを加え、次いでヒト全血(Bioreclamation社より入手可能、ニューヨーク州ヒックスヴィル、カタログ商品番号HMPLEDTA3)200μlを加えて9つの試料、1〜9を調製する。
2.以下の9つの配合物の1つ800μlを、以下のように試料1〜9の異なる1つに加える:(a)試料1には5.0Mアセトアミドを加える;(b)試料2には2.6Mグアニジン塩酸塩(GHCl)を加える;(c)試料3には2.6M GHCl及び5.0Mアセトアミドの混合物を加える;(d)試料4には2.6M GTCを加える;(e)試料5には、2.6M GTC及び5.0Mアセトアミドの混合物を加える;(f)試料6には4.3M GHCl及び5.0Mアセトアミドの混合物を加える;(g)試料7には、6.5M GHClを加える;(h)試料8には9.0Mアセトアミドを加える;そして(i)試料9には、4.3M GTC及び5.0Mアセトアミドの混合物を加える。繰り返しピペッティングによって各試料を十分に混合する。
3.各試料を約21℃で10分間放置し、次いで試料の残りからMAGAZORB(登録商標)常磁性粒子を分離するために磁性ラック上に各試料を置く。上清を除去、廃棄し、MAGAZORB(登録商標)常磁性粒子のみを残す。
4.磁性ラックから試料1〜9のそれぞれを取り除き、RNA洗浄液(Promega社より入手可能、カタログ商品番号Z3091)800μlでMAGAZORB(登録商標)常磁性粒子を洗浄し、ピペッティングによって粒子を溶液に混合する。試料の残りからMAGAZORB(登録商標)常磁性粒子を分離するために、磁性ラック上に各試料を戻す。再度、上清を除去、廃棄し、MAGAZORB(登録商標)常磁性粒子のみを残す。
5.2回目に、MAGAZORB(登録商標)常磁性粒子を洗浄するために、段階4を繰り返す。
6.磁性ラック上、約21℃の温度で、試料1〜9を20分間空気乾燥させる。
7.磁性ラックから試料を除去し、約56℃の温度で各試料にヌクレアーゼフリー水200μlを加えることによってMAGAZORB(登録商標)常磁性粒子からDNAを溶離する。各試料を20分間時々ボルテックスしてMAGAZORB(登録商標)常磁性粒子からDNAをヌクレアーゼフリー水に放出させることによって試料を溶離させ、磁性ラック上に試料を戻す。
8.ブルー/オレンジ6Xローディングダイ(Promega社より入手可能、カタログ商品番号G190)を用い、試料1〜9のそれぞれからDNA含有ヌクレアーゼフリー水10μlを、15%TBE-尿素ゲル(INVITROGEN社より入手可能、カリフォルニア州カールスバッド、カタログ商品番号EC68852BOX)を含むアガロースゲル電気泳動レーン9つのそれぞれ1つにロードする。10番目のレーンには何も添加しない。11番目のレーンには、対照として役に立つゲノムDNA標準品(Promega社より入手可能、カタログ商品番号G3041)を添加する。12番目のレーンには、尺度として役に立つ分子量標準の100bp DNAラダー(Promega社より入手可能、カタログ商品番号G2101)10μlを添加する。
9.ブロモフェノールブルー色素を用いて120ボルトで約3時間、又はブロモフェノールブルー色素がゲル底部のスリットに到達するまで電気泳動を行う。SYBR(登録商標)Gold(INVITROGEN社より入手可能、カタログ商品番号S11494)で各レーンを15分間染色し、ALPHA INNOTECH FLUOROCHEM(登録商標)イメージングシステムを用い、特に、1. ex488/em526. 2. PMT 450の設定でAmersham TYPHOON(登録商標)プラットフォームを用いてすべてのレーンをデジタル画像化する。
【0040】
図1は、実施例2に従って調製した試料の電気泳動分析の結果を示す。図1において、レーンは左から右へ1〜12と番号付けされている。レーン1〜9は、それぞれ試料1〜9の結果を示す。レーン10は試料を含まない;レーン11はゲノムDNA標準品を示す。レーン12は分子量標準の100bp DNAラダーを示す。
【0041】
図1に示すように、ヒト全血の場合は、アセトアミド単独(レーン1及び8)、GHCl単独(レーン2及び7)、GTC単独(レーン4)又はアセトアミド及びGHClの組み合わせ(レーン3及び6)は、実質的なDNA精製が行われなかった。驚くべきことに、GTC単独又はアセトアミド単独では有効ではなかったにもかかわらず、GTC及びアセトアミド(レーン5及び9)の組み合わせを用いた場合、実質的なDNA精製が行われた。
【実施例3】
【0042】
本実施例において、以下の手順を用いて、4つの異なる結合マトリックスのそれぞれと共にGTC-A配合物を用いてヒト全血試料からDNAを精製した:
1.2.7M GTC及び6.8Mアセトアミドからなる“L1”800μlを1.5mlプラスチックチューブ8個のそれぞれに加えることによって8つの試料、1〜8を調製する。
2.各試料に20mg/mlプロテイナーゼK 20μlを加え、ピペッティングによって試料を混合する。
3.各試料にヒト全血100μlを加え、ピペッティングによって6回混合する。
4.各試料を約56℃の温度で5分間インキュベートし、ピペッティングによって各試料を混合し、次いで、約56℃で更に5分間各試料をインキュベートする。
5.試料1〜8のそれぞれに前述の結合マトリックス4つを以下のように加える:(a)試料1及び2のそれぞれに、MAGAZORB(登録商標)常磁性粒子40μl(1.9mg)を加える;(b)試料3及び4のそれぞれに、常磁性カルボキシセルロースGENFIND(登録商標)粒子3μlを加える;(c)試料5及び6のそれぞれに、“主要”常磁性シトラスペクチン粒子(実施例1から)40μl(2.8mg)を加える;(d)試料7及び8のそれぞれにMAGNESIL(登録商標)ブルー常磁性シリカ粒子40μl(4.2mg)を加える。各試料をピペッティングによって混合し、試料を約21℃の温度で10分放置する。
6.試料を磁性ラック上に置くことによって試料を磁化する。過剰な流体を除去し、各試料に関して磁化された粒子のみを残すようにする。
7.磁性ラックから試料を除去し、L1 500μlを加え、ピペッティングによって混合することにより各試料を洗浄する。次いで磁性ラック上に試料を戻すことによって試料を磁化する。過剰な流体を除去し、各試料に関して磁化された粒子のみを残すようにする。
8.段階7の手順に従って、L1 500μlを用いて2回目及び3回目の洗浄を繰り返す。
9.L1の代わりにAlcohol Wash、Bloodを用いる以外は、上記の段階7の洗浄手順に従って、Alcohol Wash、Blood(Promega社より入手可能、カタログ商品番号MD1411)500μlを用いて、各試料を更に1回洗浄する。
10.磁性ラック上で、約21℃の温度で、試料を10分間空気乾燥させる。
11.磁性ラックから試料を除去し、各試料に10mMトリス(登録商標)HCl(pH8.0)200μlを加えることによって、粒子からDNAを溶離する。各試料を10分間時々ボルテックスして粒子からDNAをトリス(登録商標)HClに放出させることによって試料を溶離させ、次いで磁性ラック上に試料を置く。
12.ブルー/オレンジ6Xローディングダイを用い、15%TBE-尿素ゲルを含むアガロースゲル電気泳動レーン8つのそれぞれ1つに試料1〜8のそれぞれからDNA含有トリス(登録商標)HCl8μlをロードする。
13.ブロモフェノールブルー色素を用いて120ボルトで約3時間又はブロモフェノールブルー色素がゲル底部のスリットに到達するまで電気泳動を行う。SYBR(登録商標)Goldを用いて各レーンを15分間染色し、ALPHA INNOTECH FLUOROCHEM(登録商標)イメージングシステムを用い、特に設定:1.ex488/em526.2.PMT450でのAmersham TYPHOON(登録商標)プラットフォームを用いてすべてのレーンをデジタル画像化する。
【0043】
図2は実施例3に従って調製した試料の電気泳動分析の結果を示す。図2において、レーンは左から右へ1〜12と番号付けされている。レーン1〜8は、それぞれ、試料1〜8の結果を示す。(レーン9〜12は以下で説明する実施例4に関連する)。
【0044】
図2に示すように、ヒト全血の場合は、実施例3に従って調製されたすべての試料は、ゲノムDNAの実質的な精製を達成した。常磁性カルボキシセルロースGENFIND(登録商標)粒子(レーン3及び4)によって得られたより少ない量のDNAは、1試料あたりに用いた少量(3μl)の粒子に帰せられると考えられる。
【実施例4】
【0045】
本実施例において、ヒト全血試料からのDNAは、2つの異なる結合マトリックスの1つと共にGTC-A配合物を用いて放出された。以下の手順を用いた:
1.1.5mlプラスチックチューブ4個のそれぞれに4.0M GTC、5.0Mアセトアミド、20%(容量/容量)1-TG、0.64%(重量/容量)CHAPS、0.64%(容量/容量)TERGITOL(登録商標)タイプNP-9及び0.16%(容量/容量)トリトン(登録商標)X-100からなる“DX”800μlを加えることによって4つの試料、1〜4を調製する。
2.各試料に20mg/mlプロテイナーゼK20μlを加え、試料をピペッティングによって混合する。
3.各試料にヒト全血500μlを加え、ピペッティングによって10回混合する。
4.約21℃で10分間各試料をインキュベートし、ピペッティングによって各試料を混合し、次いで約21℃で更に10分間各試料をインキュベートする。
5.以下のように、試料1〜4に以下の結合マトリックスの1つを加える:(a)試料1及び2のそれぞれにMAGAZORB(登録商標)常磁性粒子100μl(4.8mg)を加える;(b)試料3及び4のそれぞれに“主要”常磁性シトラスペクチン粒子(実施例1から)100μl(7mg)を加える。ピペッティングによって各試料を混合し、試料を約21℃で10分間放置する。
6.磁性ラック上に試料を置くことによって試料を磁化する。過剰な流体を除去し、各試料に関して磁化された粒子のみを残すようにする。
7.磁性ラックから試料を除去し、DX 500μlを加え、ピペッティングによって混合することにより各試料を洗浄する。次いで磁性ラック上に試料を戻すことによって試料を磁化する。過剰な流体を除去し、各試料に関して磁化された粒子のみを残すようにする。
8.各試料に関して、毎回DX 500μlを用いて更に8回、段階7の洗浄手順を繰り返す。
9.DXの代わりにAlcohol Wash、Bloodを用いる以外は段階7の洗浄手順を用いて、Alcohol Wash、Blood 500μlを用いて各試料を2回洗浄する。
10.磁性ラック上、約21℃で20分間、試料を空気乾燥させる。
11.磁性ラックから試料を除去し、各試料に10mMトリス(登録商標)HCl(pH8.0)200μlを加えることによって、粒子からDNAを溶離する。試料を10分間、試料を時々ボルテックスして粒子からトリス(登録商標)HClにDNAを放出させ、磁性ラック上に試料を置く。
12.ブルー/オレンジ6Xローディングダイを用い、15%TBE-尿素ゲルを含むアガロースゲル電気泳動レーン4つのそれぞれ1つに、試料1〜4のそれぞれからDNA含有トリス(登録商標)HCl 8μlをロードする。
13.ブロモフェノールブルー色素を用いて120ボルトで約3時間又はブロモフェノールブルー色素がゲル底部のスリットに到達するまで電気泳動を行う。SYBR(登録商標)Goldを用いて各レーンを15分間染色し、ALPHA INNOTECH FLUOROCHEM(登録商標)イメージングシステムを用い、特に設定:1. ex488/em526. 2. PMT 450でのAmersham TYPHOON(登録商標)プラットフォームを用いてすべてのレーンをデジタル画像化する。
【0046】
図2のレーン9〜12は、それぞれ、試料1〜4の電気泳動分析の結果を示す(図2のレーン1〜8は、上記の実施例3に関連する)。
【0047】
図2に示すように、ヒト全血の場合は、実施例4に従って調製した試料のすべては実質的なDNA精製が行われた。MAGAZORB(登録商標)常磁性粒子を用いた精製は、平均してDNA 4.5μg(レーン9及び10)であり、“主要”常磁性シトラスペクチン粒子を用いた精製は、平均してDNA 4.9μg(レーン11及び12)であった。
【実施例5】
【0048】
本実施例において、RNアーゼ活性の選択的インヒビターを含む異なるGTC-A配合物を用いてヒト血漿試料からのRNAを精製した。以下の手順を用いた:
1.本実施例において、1.5mlプラスチックチューブ23個において、23の試料、1〜23を調製する。
2.チューブ17個のそれぞれに、4.3M GTC、6.0Mアセトアミド、0.8%CHAPS(重量/容量)、0.8%TERGITOL(登録商標)np-9(容量/容量)、0.2%トリトン(登録商標)X-100(容量/容量)及び、表示された最終濃度にした以下のインヒビターの中の表示された1つ:(a)試料3には0.008%BME(容量/容量);(b)試料4には0.016%BME(容量/容量);(c)試料5には0.032%BME(容量/容量);(d)試料6には0.064%BME(容量/容量);(e)試料7には12.5mg/ml TCEP;(f)試料8には25mg/ml TCEP;(g)試料9には50mg/ml TCEP;(h)試料10には100mg/ml TCEP;(i)試料11には125mM DTT;(j)試料12には200mM DTT;(k)試料16には12.5%1-TG(容量/容量);(l)試料17には20%1-TG(容量/容量);(m)試料18には33%1-TG(容量/容量);(n)試料19には330mM DTT;(o)試料20には12.5%1-TG(容量/容量)及び0.016%BME(容量/容量)の混合物;(p)試料21には20%1-TG(容量/容量)及び0.032%BME(容量/容量)の混合物;ならびに(q)試料22には12.5%1-TG(容量/容量)及び125mM DTTの混合物、からなる配合物800μlを加えることによって試料3〜12及び16〜22を調製する。
3.試料3〜12及び16〜22のそれぞれに、ルシフェラーゼコントロールRNA(Promega社より入手可能、カタログ商品番号L4561)1.0μlを加え、ピペッティングによって試料を混合する。
4.試料3〜12及び16〜22のそれぞれにヒト血漿(Bioreclamation社より入手可能、ニューヨーク州ヒックスヴィル、カタログ商品番号HMPLEDTA3)200μlを加え、ピペッティングによって試料を混合する。
5.一方で、他のチューブ6個に以下:(a)試料1にはルシフェラーゼコントロールRNA 1μl及びヒト血漿200μl;(b)試料13にはルシフェラーゼコントロールRNA 1μl(c)試料14には約-20℃の温度でルシフェラーゼコントロールRNA1μl;(d)試料23にはヒト血漿200μl;ならびに(e)試料2及び15のそれぞれには無添加、を加えることによって試料1、2、13〜15及び23を調製する。
6.試料1〜23のそれぞれを、約21℃で5分間放置する。次いで、各試料にMAGAZORB(登録商標)常磁性粒子2μl(1mg)を加え、次いでピペッティングによって各試料を混合する。
7.試料を約21℃で3分間放置し、次いで磁性ラック上に試料2分間置く。2分後、試料から上清を除去し、粒子のみを残す。
8.試料1〜23のそれぞれに、ブルー/オレンジローディングダイ(Promega社より入手可能、カタログ商品番号G1881)8μlを加え、それらをピペッティングによって混合することによって粒子を再懸濁する。
9.各試料に関して、段階8を更に5回繰り返す。
10.ブルー/オレンジ6Xローディングダイを用いて、15%TBE-尿素ゲルを含む23のアガロースゲル電気泳動レーンのそれぞれ1つに試料1〜23のそれぞれ8μlをロードする。
11.ブロモフェノールブルー色素を用いて120ボルトで約3時間又はブロモフェノールブルー色素がゲル底部のスリットに到達するまで電気泳動を行う。SYBR(登録商標)Goldを用いて各レーンを15分間染色し、ALPHA INNOTECH FLUOROCHEM(登録商標)イメージングシステムを用い、特に設定:1. ex488/em526. 2. PMT 450でのAmersham TYPHOON(登録商標)プラットフォームを用いてすべてのレーンをデジタル画像化する。
【0049】
図3A及び3Bに、実施例5に従って調製した23の試料の電気泳動分析の結果を示す。図3Aにおいて、レーンは左から右へ1〜12と番号付けされている。図3Bにおいて、レーンは左から右へ13〜24と番号付けされている。レーン1〜23は、それぞれ試料1〜23の結果を示す。レーン24は空である。
【0050】
図3A及び3Bに示すように、特定のインヒビターの存在にもかかわらず、GTC-A配合物はRNAの精製に有効であった。更に、GTC-Aに加えて特定のインヒビターを使用することにより、溶解過程中にRNアーゼによるRNAの分解を抑制すると同時に、RNAの選択的精製が可能になる。特に、BME単独を含むGTC-A配合物(レーン3〜6)は、より大きなサイズのRNAの精製に有効であった。RNアーゼのインヒビターとして作用して、GTC-A及び漸増濃度のBMEの組み合わせによりRNAの分解が抑制された。TCEPを含むGTC-A配合物(レーン7〜10)もまたRNA分解を抑制し、BMEを含むGTC-A配合物を用いて結合させた場合よりも、MagaZorb(登録商標)常磁性粒子に結合したRNAはより少なかった。しかしながら、TCEPを含むGTC-A配合物を用いてMAGAZORB(登録商標)常磁性粒子に結合させたRNAは、BMEを含むGTC-A配合物を用いて結合させたRNAよりも平均分子量が高かった。GTC-A配合物に加えた1-TG(レーン16〜18及び20)もまた、BMEを含むGTC-A配合物を用いて得た場合よりもより大きいサイズのRNAの精製をもたらした。33%1-TG(レーン18)は、12.5%1-TG(レーン16)よりもより優れたRNアーゼの抑制を示した。BME単独、TCEP単独及び1-TG単独を含むGTC-A配合物はすべて、有効なRNアーゼの抑制を示した。同様に、GTC-A配合物への1-TG及びBMEの両方の組み入れ(レーン8)もまた、有効なRNアーゼ抑制を示した。
【0051】
ヒト血漿に加えたルシフェラーゼコントロールRNA(レーン13及び14)は、GTC-A配合物を用いた場合、MAGAZORB(登録商標)常磁性粒子に結合した。対照的に、添加されたヒト血漿が存在しない場合(レーン1)には、ルシフェラーゼRNAは明らかには分解されていないことが示された。しかしながら、ヒト血漿の添加(レーン23)によりRNA分解が引き起こされた。
【実施例6】
【0052】
本実施例において、大きさが約25bほどの小さなDNAが、GTC-A配合物を用いてヒト全血試料から精製された。以下の手順を用いた:
1.ヒト全血200μl及び“D1”800μl(後者は、4.3M GTC/5.9Mアセトアミドの混合物10mlにCHAPS 0.7g、TERGITOL(登録商標)タイプNP-9 400μl及びトリトン(登録商標)X-100 400μlを加えることによって調製される)を1.5mlプラスチックチューブ12個のそれぞれに加えることによって12の試料、1〜12を調製する。
2.試料1〜10のそれぞれに100bp DNAラダー 10μlを加える.
3.繰り返しピペッティングによって試料1〜12のそれぞれを十分に混合する。
4.試料1〜12のそれぞれにMAGAZORB(登録商標)常磁性粒子30μlを加え、ピペッティングによって各試料を再度混合する。
5.約21℃で20分間各試料をインキュベートする。
6.MAGAZORB(登録商標)常磁性粒子を回収するために、試料1〜12のそれぞれにプラスチックスリーブ内に含まれるマグネットバーを挿入する。
7.回収したMAGAZORB(登録商標)常磁性粒子を有するスリーブ/マグネットバーを除去する。
8.それぞれが“W1”溶液(2.6M GTC及び7.1Mアセトアミドの混合物)500μlを含む新しいチューブにスリーブ/マグネットバー及び回収した試料1〜12の粒子を入れる。プラスチックスリーブから磁石を抜き取り、次いで、スリーブとW1溶液を混合することによって、試料1〜12の粒子を再懸濁する。全部で30秒間、プラスチックスリーブにマグネットバーを再挿入し、次いで、回収したMAGAZORB(登録商標)常磁性粒子を有するスリーブ/マグネットバーを除去する。
9.各試料に関してW1 500μlを用いて、段階7を更に2回、全部で3回の洗浄を繰り返す。
10.試料1及び2のそれぞれに関して、段階7を、W1を用いて、更に4回、全部で7回洗浄を繰り返す。
11.試料3及び4のそれぞれに関して、W1の代わりにMAGAZORB(登録商標)DNA Binding Solution 500μlを用いて、段階7を更に4回繰り返す。
12.試料5及び6のそれぞれに関して、W1の代わりにAlcohol Wash、Blood(BW洗浄液)(Promega社より入手可能、カタログ商品番号MB1001)溶液500μlを用いて更に4回段階7を繰り返す。
13.それぞれがWIZARD(登録商標)ゲノムDNA再水和溶液(Promega社より入手可能、カタログ商品番号A7963)40μlを含む新しいチューブに、それぞれスリーブ/マグネットバー及び回収した試料1〜12の粒子を入れる。プラスチックスリーブから磁石を抜き取り、次いで、WIZARD(登録商標)ゲノムDNA再水和溶液とスリーブを混合することによって試料1〜12の粒子を再懸濁する。
14.試料2及び4のそれぞれに100bp DNA(試料内で100bpバンドを強調するために)0.3μlを加える。
15.試料6及び8のそれぞれに200bp DNA(試料内で200bpバンドを強調するために)0.3μlを加える。
16.試料10及び12のそれぞれに300bp DNA(試料内で300bpバンドを強調するために)0.3μlを加える。
17.試料4、5、7、8、11及び12のそれぞれに300bp DNA(試料内で300bpバンドを強調するために)4μlを加える。
18.ブルー/オレンジ6Xローディングダイを用いて、15%TBE-尿素ゲルを含む12のアガロースゲル電気泳動レーンのそれぞれ1つに試料1〜12のそれぞれ8μlをロードする。
19.ブロモフェノールブルー色素を用いて120ボルトで約3時間又はブロモフェノールブルー色素がゲル底部のスリットに到達するまで電気泳動を行う。SYBR(登録商標)Goldで各レーンを15分間染色し、ALPHA INNOTECH FLUOROCHEM(登録商標)イメージングシステムを用い、特に、設定:1. ex488/em526. 2. PMT 450でのAmersham TYPHOON(登録商標)プラットフォームを用いてすべてのレーンをデジタル画像化する。
【0053】
図4は、実施例6に従って調製した12の試料の電気泳動分析の結果を示す。図4において、レーンは左から右へ1〜12と番号付けされている。レーン1〜12は、それぞれ試料1〜12の結果を示す。
【0054】
図4に示すように、結合マトリックスと組み合わせたGTC-A配合物は、だいたい25塩基から20キロ塩基対又はそれ以上のゲノムDNAを精製するのに適切である。具体的には、レーン2及び10は、長さ約25塩基であり、22及び29塩基のオリゴプライマーがゲルの底部に移動したDNAの精製を示す。BW洗浄液を用いずに得た25bpよりも、BW洗浄液を用いた場合(レーン5及び6)の方が、約75bpのより大きなサイズのDNAの精製が行われた。更にまた、3つすべて精製方法において、GTC-A配合物に結合したDNAバンドを加えた結果として、例えば、100bpバンドと200bpバンドとの間及び200bpと300bpバンドの間に認められるDNAバンドが存在する。
【実施例7】
【0055】
本実施例において、GTC-A配合物を用いて組織培養細胞からの核酸を精製した。以下の手順を用いた:
1.1.5mlプラスチックチューブ6個のそれぞれに、4.0M GTC、5.0Mアセトアミド、20%(容量/容量)1-チオ-グリセロール、0.64%(重量/容量)CHAPS、0.64%(容量/容量)TERGITOL(登録商標)タイプNP-9及び0.16%(容量/容量)トリトン(登録商標)X-100の混合物600μlを加えることによって6つの試料、1〜6を調製する。
2.試料1及び2のそれぞれにHeLa細胞200μl(2×106細胞)を加え、ピペッティングによって試料を混合する。
3.試料3にGIBCO(登録商標)DMEM媒体中のHeLa細胞100μl(1×106細胞)(INVITROGEN社より入手可能、カタログ商品番号11965092)を加え、ピペッティングによって試料を混合する。
4.試料4及び5のそれぞれにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞150μl(2×106細胞)を加え、ピペッティングによって試料を混合する。
5.試料6にGIBCO(登録商標)F-12plus 10% FBS媒体)中のCHO細胞75μl(1×106細胞)を加え、ピペッティングによって試料を混合する。
6.試料1〜6のそれぞれを約21℃の温度で10分間インキュベートし、次いで、それぞれがセルロース膜カラムを含むDNA IQ(登録商標)スピンバスケットチューブ6個のそれぞれ1つに試料を入れる。
7.約21℃で5分間試料1〜6を放置し、12,000×g(倍重力)で1分間試料を遠心分離する。
8.各チューブからカラムを除去し、次いで、それぞれの新しい1.5mlチューブに試料1〜6カラムを入れる。試料1〜6のそれぞれに4.0M GTC、5.0Mアセトアミド及び20%(容量/容量)1-TGの500μlの混合物を加え、次いで、12,000×gで1分間各試料を遠心分離する。
9.段階8を二度目に繰り返す。
10.段階8で用いた4.0M GTC、5.0Mアセトアミド及び20%(容量/容量)1-TGの混合物500μlの代わりに2.6M GTC及び7.1Mアセトアミドの混合物500μlを用いて、段階8を更に2回繰り返した。
11.試料2及び5のみに関しては、段階8に用いた4.0M GTC、5.0Mアセトアミド及び20%(容量/容量)1-TGの混合物500μlの代わりにSV Total RNA Wash 500μlを用いて、段階8を更に1回繰り返した。
12.それぞれの新しい1.5mlチューブに試料1〜6のそれぞれを入れ、各チューブにヌクレアーゼフリー水50μlを加える。
13.約21℃で2分間試料1〜6を放置し、次いで12,000×gで1分間試料を遠心分離する。以前の洗浄液からキャリーオーバーしたGTC-Aの量を減らすために、ヌクレアーゼフリー水に試料を溶離する。
14.核酸収率を最大化するために、試料1〜6からカラムを除去し、それぞれの新しい1.5mlチューブにそれを入れることによって、さらなる6つの試料、7〜12を調製する。
15.試料7〜12のそれぞれにヌクレアーゼフリー水100μlを加え、ついで約56℃で15分間試料をインキュベートする。
16.12,000×gで1分間試料7〜12を遠心分離する。ヌクレアーゼフリー水に試料を溶離する。
17.試料1に100bp DNAラダー2μlを加える(対照として役立つ分子量参照マーカーを提供する)
18.ブルー/オレンジ6Xローディングダイを用いて、10%TBE-尿素ゲル(INVITROGEN社より入手可能、カリフォルニア州カールスバッド、カタログ商品番号EC68752BOX)を含む12のアガロースゲル電気泳動レーンのそれぞれ1つに試料1〜12のそれぞれを5μlロードする。
17.ブロモフェノールブルー色素を用いて120ボルトで約3時間又はブロモフェノールブルー色素がゲル底部のスリットに到達するまで電気泳動を行う。SYBR(登録商標)Goldで各レーンを15分間染色し、ALPHA INNOTECH FLUOROCHEM(登録商標)イメージングシステムを用い、特に設定:1. ex488/em526. 2. PMT 450でのAmersham TYPHOON(登録商標)プラットフォームを用いてすべてのレーンをデジタル画像化する。
【0056】
図5に、実施例7に従って調製した試料の電気泳動分析の結果を示す。図5において、レーンは左から右へ1〜12と番号付けされている。レーン1は試料1の結果を示す;レーン2は試料2の結果を示す;レーン3は試料3の結果を示す;レーン4は試料7の結果を示す;レーン5は試料8の結果を示す;レーン6は試料9の結果を示す;レーン7は試料4の結果を示す;レーン8は試料5の結果を示す。レーン9は試料6の結果を示す;レーン10は試料10の結果を示す;レーン11は試料11の結果を示す;レーン12は試料12の結果を示す。
【0057】
図5に示すように、組織培養細胞の場合は、GTC-A配合物の使用により、実施例7に従って調製した試料のそれぞれからゲノムDNA及び全RNAの精製が可能になる。
【実施例8】
【0058】
本実施例において、GTC-A配合物を用いて組織培養細胞試料からの細胞質RNAを精製した。以下の手順を用いた:
1.GIBCO(登録商標)DMEM媒体でヒト胎児腎臓293(HEK293)組織培養細胞を増殖させる。1×gで5×106個のHEK293細胞4mlを沈殿させ、次いでピペッティングによって増殖媒体を除去し、50μlに約2×107個の細胞が含まれるようにする。次いで、細胞50μlを1.5mlプラスチックチューブに入れ、5分間氷上に置く。
2.段階1からの細胞50μlに、RNASIN(登録商標)Plus(1μl当たり40単位)(Promega社より入手可能、カタログ商品番号1232)6μlを加える。次いで、この細胞に100mM EDTA 100mM HEPES(登録商標)(pH7.5)(氷冷した)中のジギトニンを120μg/mlで100μl加える。内容物をボルテックスして10秒間混合し、次いで氷冷しながら20分間インキュベートする。77μg/mlジギトニンでのインキュベーションにより、細胞の核膜を溶解させずに細胞質膜の溶解が促進される。
3.段階2からの懸濁液を約4℃、13,000×gで5分間遠心分離して、核及び細胞の破片をペレットにする。
4.以下:(a)試料1及び2のそれぞれに関して、4.0M GTC、5.0Mアセトアミド、20%(容量/容量)1-TGの混合物400μl及びMAGAZORB(登録商標)常磁性粒子10μl;ならびに(b)試料3及び4のそれぞれに関して、DNA-IQ(登録商標)カラムならびに4.0M GTC、5.0Mアセトアミド及び20%(容量/容量)1-TGの混合物400μl、を含む1.5mlプラスチックチューブに、段階3からの懸濁液の上清40μlを分配することによって4つの試料、1〜4を調製する。
5.試料3及び4のそれぞれをピペッティングによって混合し、約21℃の温度で20秒間沈殿させ、次いで13,000×gで1分間試料3及び4を遠心分離する。試料3及び4のカラム通過液を除去し、それを新しい1.5mlチューブに入れる。次いで、試料3及び4のカラム通過液にMAGNESIL(登録商標)ブルー10μlを加える。
6.段階5からの4つの試料をピペッティングによって混合し、それを約21℃で5分間インキュベートする。試料1〜4のそれぞれを磁石上に置く。試料からの粒子の分離後、チューブの側面に引き付けられた粒子からの上清を捨てる。
7.試料1〜4のそれぞれの残存粒子を4.0M GTC、5.0Mアセトアミド及び20%(容量/容量)1-TGの混合物400μlで洗浄する。
8.磁性粒子を含む試料を磁気スタンド上に置き、磁化し、チューブの側面に引き付けられた粒子から上清を捨てる。
9.段階5からのDNA-IQ(登録商標)カラムを新しい1.5mlチューブに移す。SV RNA洗浄液400μlを用いてカラムを洗浄する。試料2〜4に関して、この洗浄プロセスを更に1回繰り返す。
10.常磁性粒子を含む4つの試料すべてを磁気スタンド上に置き、上清を捨て、試料を10分間空気乾燥させる。
11.DNA-IQ(登録商標)カラムを新しい1.5mlチューブに入れ、これらに試料5及び6と番号を付ける。
12.試料1〜6のそれぞれを、約21℃の温度で10分間、1試料あたりヌクレアーゼフリー水40μlで溶離する。常磁性粒子を含む試料を磁性ラック上に置く。
13.ブルー/オレンジ6Xローディングダイを用いて、15%TBE-尿素ゲルを含む別々のアガロースゲル電気泳動レーンに各チューブからの試料10μlをロードする。
14.ブロモフェノールブルー色素を用いて120ボルトで約3時間又はブロモフェノールブルー色素がゲル底部のスリットに到達するまで電気泳動を行う。SYBR(登録商標)Goldで各レーンを15分間染色し、ALPHA INNOTECH FLUOROCHEM(登録商標)イメージングシステムを用い、特に設定:1. ex488/em526. 2. PMT 450でのAmersham TYPHOON(登録商標)プラットフォームを用いてすべてのレーンをデジタル画像化する。
【0059】
図6は実施例8に従って調製した試料の電気泳動分析の結果を示す。レーン1は、DNA配列を比較するための100bp DNAラダーを示す;レーン2は、非精製核酸のマーカーとして役に立つ、最初の細胞質RNA上清10μlの結果を示す。レーン3は試料3の結果を示す;レーン4は試料4の結果を示す;レーン5は試料1の結果を示す。レーン6は試料2の結果を示す;レーン7は試料5の結果を示す;レーン8は試料6の結果を示す;レーン9はDNA配列を比較するための100bp DNAラダーを示す;レーン10は試料7の結果を示す;レーン11は試料8の結果を示す;レーン12は空である。
【0060】
図6に示すように、MAGAZORB(登録商標)常磁性セルロース粒子又はMAGNESIL(登録商標)常磁性シリカ粒子のいずれかを用い、GTC-アセトアミド配合物及びSV RNA Washを用いてRNAが精製される。更に、レーン7及び8においてリボソームRNA及びtRNAバンドが認識でき、これはGTC-Aを用いての精製を示している。更にまた、約21℃の温度で20秒間という短い試料インキュベーション時間でのセルロースカラムを介しての細胞質RNA試料の通過(レーン3及び4)により、核DNAが実質的に除去される。これは細胞質RNAの実質的な除去なしで達成されたが、このことは、MAGNESIL(登録商標)粒子を用いたその後の精製(レーン10及び11)によって明らかにされた。
【実施例9】
【0061】
本実施例において、本発明と共に使用するのに適したさらなる結合マトリックスを決定するために、GTC-A配合物を用い、種々の結合マトリックスを活用して組織培養細胞試料からDNA又はRNAを精製した。以下の手順を用いた:
1.DMEM媒体で増殖させた2.3×107 HEK293細胞を、50mlプラスチックチューブ中、1000×gで5分間遠心分離する。上清をデカントし、ペレット化した細胞をボルテックスして混合する。
2.HEK293細胞を溶解するために、4.0M GTC、5.0Mアセトアミド、20%(容量/容量)1-TG、0.64%(重量/容量)CHAPS、0.64%(容量/容量)TERGITOL(登録商標)タイプNP-9及び0.16%(容量/容量)トリトン(登録商標)X-100の混合物8mlを加える。均一な混合物が得られるまでボルテックスして溶解物を得る。
3.示された以下の結合マトリックスの1つ:(a)試料1及び2に関しては、DNA-IQ(登録商標)カラムにおけるセルロース膜;(b)試料3及び4に関しては、SVカラムにおけるシリカ膜;(c)試料5及び6に関しては、Corning(登録商標)スピンカラムにおける酢酸セルロース膜;(d)試料7及び8に関しては、Corning(登録商標)スピンカラムにおけるナイロン膜;(e)試料9及び10に関しては、ポリプロピレンスピンカラムにおけるPVDF膜;(f)試料11及び12に関しては、DNA-IQ(登録商標)カラムにおけるポリプロピレン膜;(g)試料13及び14に関しては、High Pure(登録商標)Spinフィルターチューブ;(h)試料15及び16に関しては、除去カラム;(i)試料17及び18に関しては、常磁性ゼオライト粒子10μl(3.4mg);(j)試料19及び20に関しては、MAGAZORB(登録商標)常磁性粒子20μl(1mg);(k)試料21及び22に関しては、MAGNESIL(登録商標)ブルー10μl(1mg);ならびに(l)試料23及び24に関しては、DNA-IQ(登録商標)常磁性粒子50μl(5mg)、を1.5mlプラスチックチューブに加えることによって24の試料、1〜24を調製する。
4.試料1〜24のそれぞれにHEK293溶解物300μlを加える。
5.約21℃で10分間、試料1〜24のすべてをインキュベートする。次いで、上清から粒子を分離するために、粒子を含む試料17〜24を磁性ラック上に置く。次いで上清を捨てる。
6.13,000×gで5分間、カラム試料1〜16を遠心分離する。PVDFカラム(試料9及び10)では、溶液の約半分のみが膜を通過することに注意のこと。従って、通過液に加えて、未処理の流体が捨てられる。
7.1.7M GTC及び7.5Mアセトアミドの混合物400μl中の粒子試料17〜24のそれぞれをピペッティングによって再懸濁し、次いで磁性ラック上に粒子試料を戻す。上清を捨てる。
8.GTC-A配合物の代わりにSV RNA洗浄液400μlを用いて段階7を更に3回繰り返す。3回目のRNA洗浄液を捨てた後、約21℃の温度で20分間、粒子試料を空気乾燥する。次いで、ヌクレアーゼフリー水40μlに核酸を溶離する。
9.1.7M GTC及び7.5Mアセトアミドの混合物400μlでカラム試料1〜16のそれぞれを洗浄し、次いで13,000×gで5分間遠心分離する。カラム通過液を捨てる。
10.SV RNA洗浄液400μlで2回カラム試料1〜16のそれぞれを洗浄し、次いで、13,000×gで5分間遠心分離し、次いでカラム通過液を捨てる。次いで13,000×gで1分間カラム試料を遠心分離してカラムの乾燥を確実にし、次いでヌクレアーゼフリー水40μlで各カラム試料を溶離する
11.約-20℃で16時間、すべての試料1〜24を保存する。
13.試料17〜24の磁気分離後、ブルー/オレンジ6Xローディングダイを用いて、15%TBE-尿素ゲルを含む24のアガロースゲル電気泳動レーンのそれぞれ1つに各試料10μlをロードする。
14.ブロモフェノールブルー色素を用いて120ボルトで約3時間又はブロモフェノールブルー色素がゲル底部のスリットに到達するまで電気泳動を行う。SYBR(登録商標)Goldで各レーンを15分間染色し、ALPHA INNOTECH FLUOROCHEM(登録商標)イメージングシステムを用い、特に、設定:1. ex488/em526. 2. PMT 450でのAmersham TYPHOON(登録商標)プラットフォームを用いてすべてのレーンをデジタル画像化した。
【0062】
図7A及び7Bは、実施例9に従って調製した試料の電気泳動分析の結果を示す。図7Aにおいて、レーンは左から右へ1〜12と番号付けされている。図7Bにおいて、レーンは左から右へ13〜24と番号付けされている。レーン1〜24は、それぞれ試料1〜24の結果を示す。
【0063】
図7A及び7Bに示すように、ゲノムDNAは、酢酸セルロースカラム、PVDFカラム、DNA-IQ(登録商標)常磁性粒子及びMAGNESIL(登録商標)ブルー粒子を用いて精製された。更に、MAGAZORB(登録商標)常磁性粒子は、少量のRNAばかりでなくゲノムDNAも精製した。RNA及びDNAは、共にSVシリカカラム、ナイロン膜カラム、ポリプロピレン膜カラム、High Pure(登録商標)スピンカラム、除去カラム及び常磁性ゼオライト粒子を用いて精製され、それらは顕著なtRNAバンドを示した。
【0064】
更にまた、本実施例は、最初に結合マトリックスに核酸を結合させ、次いで遂次洗浄中に核酸を保持させ、手順の最後に核酸を溶離させるためのスクリーニング法を示す。例えば、以前の実施例は、MAGAZORB(登録商標)常磁性粒子へのDNA及びRNAの両方の結合を示したが、本実施例においては(SV RNA Washを用いる洗浄によって)、RNAは溶離においてそれほど顕著ではなかった。従って、核酸の結合のための結合マトリックスをスクリーニングするためには、結合マトリックスへの核酸の保持を確実にするために、最初のGTC-A配合物のみで洗浄することができる。本実施例により、洗浄段階において、結合マトリックスへ核酸を保持させる能力の尺度が明らかとなった。更に、本実施例はまた、結合マトリックスから核酸が溶離されることを必要とした。結合マトリックスがDNA又はRNAに結合しているという必要条件に加えて、核酸は、2つの異なる溶液での洗浄中に結合したままでいなければならず、精製の終わりに結合マトリックスから核酸を溶離させなければならない。3つの必要条件があるにも関わらず、GTC-A配合物を用いれば、すべての結合マトリックスが核酸(単数又は複数)を精製する能力を示すことが示されている。
【実施例10】
【0065】
本実施例において、同じ組織培養細胞試料からのDNA及びRNAをGTC-A配合物を用いて精製した。以下の手順を用いた:
1DMEM媒体で増殖させた1.6×107 HEK293細胞を、15mlプラスチックチューブ中、1000×gで5分間遠心分離する。
2.DX6mlを加えて細胞を溶解する。次いで、均一な混合物が得られるまで、繰り返しピペッティングによって溶解物を混合する。
3.それぞれがDNA-IQ(登録商標)粒子50μl(5mg)を含む1.5mlプラスチックチューブ2個のそれぞれに段階2からの溶解物400μlを加えることによって2つの試料、1及び2を調製する。試料を混合し、次いで約21℃で10分間インキュベートする。
4.磁性ラックを用いて試料1及び2のそれぞれにおける粒子を磁化する。
5.それぞれが常磁性ゼオライト粒子10μl(3.4mg)を含む新しいチューブに、それぞれ試料1及び2からの上清を移すことによって、2つのさらなる試料、3及び4を調製する。ここでは、試料1及び2は、DNA-IQ(登録商標)粒子から上清を引いたものからなる。
6.試料3及び4のそれぞれを約21℃の温度で10分間混合しインキュベートする。次いで、磁性ラックを用いて試料3及び4のそれぞれにおける粒子を磁化し、試料3及び4のそれぞれから上清を除去する。
7.4.0M GTC、5.0Mアセトアミド及び20%(容量/容量)1-TGの混合物800μlで試料1〜4のそれぞれを洗浄する。次いで、SV RNA洗浄液800μlで更に3回、試料のそれぞれを洗浄する。
8.試料1〜4における粒子を磁化し、上清を除去し、次いで約21℃の温度で20分間粒子を空気乾燥させる。
9.粒子から核酸を溶離させるために、約21℃の温度で10分間ヌクレアーゼフリー水40μl中で試料1〜4のそれぞれにおける粒子を溶離する。
10.ブルー/オレンジ6Xローディングダイを用いて、15%TBE-尿素ゲルを含むアガロースゲル電気泳動レーン4つのそれぞれ1つに試料1〜4のそれぞれ10μlをロードする。
11.ブロモフェノールブルー色素を用いて120ボルトで約3時間又はブロモフェノールブルー色素がゲル底部のスリットに到達するまで電気泳動を行う。SYBR(登録商標)Goldで各レーンを15分間染色し、ALPHA INNOTECH FLUOROCHEM(登録商標)イメージングシステムを用い、特に、設定:1. ex488/em526. 2. PMT 450でのAmersham TYPHOON(登録商標)プラットフォームを用いてすべてのレーンをデジタル画像化する。
【0066】
図8は、実施例10に従って調製した試料のアガロースゲル電気泳動分析の結果を示す。図8において、レーンは左から右へ1〜12と番号付けされている。レーン1及び2は、それぞれ試料1及び2の結果を示す;レーン3はブランクである;レーン4及び5は、それぞれRNアーゼONEで消化した試料1及び2を示す;レーン6はPromega 100BP DNAラダーを含む;レーン7及び8は、それぞれ試料3及び4の結果を示す;レーン9はブランクである;レーン10及び11は、それぞれ、Promega RQ1 RNアーゼ不含DNアーゼで消化した試料3及び4を示す;レーン12はPromegaゲノムDNA標準品を含む。
【0067】
図8に示すように、DNA-IQ(登録商標)粒子を用いてゲノムDNAが精製され、同じ媒体から、常磁性ゼオライト粒子を用いてRNAが精製された。従って、第1結合マトリックスと第2結合マトリックスの適用の間にさらなる溶液又は条件を加えることなく、DNAに結合する第1結合マトリックス及びRNAに結合する第2結合マトリックスを用いて同じ媒体からDNA及びRNAを精製できる。
【実施例11】
【0068】
本実施例において、GTC及びアセトアミド、N-メチルアセトアミド又はN,N-ジメチルアセトアミドを含むGTC-A配合物を用いて、組織培養細胞媒体からRNAを精製した。以下の手順を用いた。
1.GIBCO(登録商標)DMEM媒体で増殖させた1.5×106 HEK293組織培養細胞25mlを1×g、約21℃で60分間沈殿させ、次いでピペッティングによって増殖媒体上清を除去し、1.5ml中に約3.7×107細胞(100μlあたり約2.5×106細胞)が含まれるようにした。
2.1.5mlプラスチックチューブ12個のそれぞれ1つに以下:(a)試料1〜6に関しては、HEK293組織培養細胞100μl;(b)試料7〜12に関しては、ヒト全血100μl、を加えることによって、12の試料、1〜12を調製する。
3.試料2、4、6、8、10及び12のそれぞれにPromega100塩基対ラダー10μlを加える。
4.示されたGTC-A配合物:(a)試料1、2、7及び8のそれぞれに関して、4.0M GTC、5.0Mアセトアミド及び20%(容量/容量)1-TGの混合物300μl;(b)試料3、4、9及び10のそれぞれに関して、4.0M GTC、5.0M N-メチルアセトアミド及び10%(容量/容量)1-TGの混合物500μl;ならびに(c)試料5、6、11及び12のそれぞれに関して、4.0M GTC、5.0M N,N-ジメチルアセトアミド及び10%(容量/容量)1-TGの混合物500μl、を各試料に加える。
5.試料1〜12のそれぞれをボルテックスして混合し、次いで試料を約21℃で5分間インキュベートする。
6.DNA-IQ(登録商標)セルロースミニカラムを含むそれぞれの1.5mlプラスチックチューブの1つに試料1〜12のそれぞれを移し、次いで11,000×gで2分間試料を遠心分離する。
7.試料1〜12DNA-IQ(登録商標)セルロースミニカラムのそれぞれを新しい1.5mlチューブに移し、次いで、段階4で用いる同じGTC-A配合物500μlで各ミニカラムを洗浄する。
8.ヌクレアーゼフリー水40μlで試料1〜12のそれぞれを溶離し、次いでミニカラムを除去する。
9.試料1〜12から除去したミニカラムを、それぞれ新しい1.5mlチューブに入れることによって、12のさらなる試料、13〜24を調製する。
10.ヌクレアーゼフリー水40μlで試料13〜24のそれぞれを溶離し、次いでミニカラムを捨てる。
11.ブルー/オレンジ6Xローディングダイを用いて、15%TBE-尿素ゲルを含む24のアガロースゲル電気泳動レーンのそれぞれ1つに試料1〜24のそれぞれ10μlをロードする。
12.ブロモフェノールブルー色素を用いて120ボルトで約3時間又はブロモフェノールブルー色素がゲル底部のスリットに到達するまで電気泳動を行う。SYBR(登録商標)Goldで15分間各レーンを染色し、ALPHA INNOTECH FLUOROCHEM(登録商標)イメージングシステムを用い、特に、設定:1. ex488/em526. 2. PMT 450でのAmersham TYPHOON(登録商標)プラットフォームを用いてすべてのレーンをデジタル画像化する。
【0069】
図9A及び9Bは、実施例11に従って調製した試料の電気泳動分析の結果を示す。図9Aにおいて、レーンは左から右へ1〜12と番号付けされる。図9Bにおいて、レーンは左から右へ13〜24と番号付けされる。レーン1〜24は、それぞれ試料1〜24の結果を示す。
【0070】
図9A及び9Bに示すように、DNA及びRNAはミニカラムにおけるセルロース膜に結合し、GTC及びアセトアミド、GTC及びN-メチルアセトアミドならびにGTC及びN,N-ジメチルアセトアミドを用いて精製され、このことは、アセトアミドの誘導体が、GTCと組み合わせて核酸を精製することに用いることもできることを示している。
【実施例12】
【0071】
本実施例において、ヒト全血から精製されたDNAを、結合マトリックスとして役立つ血液カードに結合させた。更に、血液カード上で血液試料を洗浄することができ、血液カードパンチの溶離によって精製された核酸を得ることができる。以下の手順を用いた:
1.1.5mlプラスチックチューブ2個のそれぞれに、4.0M GTC、5.0Mアセトアミド、20%(容量/容量)1-TG、0.64%(重量/容量)CHAPS、0.64%(容量/容量)TERGITOL(登録商標)タイプNP-9及び0.16%(容量/容量)トリトン(登録商標)X-100の混合物200μlを加えることによって2つの試料、1及び2を調製する。
2.試料1及び2のそれぞれにヒト全血100μlを加える。
3.試料2にPromega 100bpラダー10μlを加える。
4.約21℃の温度で試料1及び2のそれぞれをピペッティングによって十分に混合する。
5.10μlきざみで、Schleicher & Schuellセルロースカード上に試料1及び2のそれぞれをスポットし、セルロースカードによって以前の添加が吸収されて初めて継続的な添加を行う。全試料(試料1に関して300μl、試料2に関して310μl)がセルロースカードに塗布されるまで続ける。
6.核酸を比較するために、ヒト全血100μlにRNAマーカー(Promega社より入手可能、カタログ商品番号G3191)10ulを加えたものをセルロースカード上にスポットする。
7.試料2のスポットに、以前の添加がセルロースカードに吸収されて初めて、継続的な添加を行って、10μlきざみで2.6M GTC及び7.1Mアセトアミドの混合物150μlを添加する。得られた血液スポットは、比較的白色の中心ならびに、ヘモグロビン及び他の細胞の破片を含む赤い同心円を有するはずである。
8.試料1及び2スポットのそれぞれから約2mm×2mmの中央パンチを得、次いで、各中心の外側約5mmから約2mm×2mmの第2パンチを得る。
9.ヌクレアーゼフリー水20μlに4つのパンチのそれぞれを溶離する。
10.ブルー/オレンジ6Xローディングダイを用いて、15%TBE-尿素ゲルを含むアガロースゲル電気泳動レーン4つのそれぞれ1つに、4つのパンチのそれぞれからの溶離液10μlをロードする。
11.ブロモフェノールブルー色素を用いて120ボルトで約3時間又はブロモフェノールブルー色素がゲル底部のスリットに到達するまで電気泳動を行う。SYBR(登録商標)Goldで各レーンを15分間染色し、ALPHA INNOTECH FLUOROCHEM(登録商標)イメージングシステムを用い、特に、設定:1. ex488/em526. 2. PMT 450でのAmersham TYPHOON(登録商標)プラットフォームを用いてすべてのレーンをデジタル画像化する。
【0072】
図10は、実施例12に従って調製したSchleicher & Schuellセルロースカードを示す。左のスポットは試料1に対応し;中央のスポットは試料2に対応し;右のスポットは血液プラスRNAマーカーに対応する。
【0073】
図11は、実施例12に従って調製した4つの溶離液の電気泳動分析の結果を示す。図11において、レーンは左から右へ1〜12と番号付けされている。レーン1は、試料1の中央パンチの結果を示す;レーン3は、試料1の第2パンチの結果を示す;レーン5は、試料2の中央パンチの結果を示す;レーン7は、試料2の第2パンチの結果を示す;レーン9は、Promega 100bp DNAラダーを示す;レーン11は、PromegaゲノムDNA標準品を示す;そして残りのレーンは空である。
【0074】
図11に示すように、試料1及び2のそれぞれに関して、第2パンチよりも実質的に多いDNAが中央パンチから得られた。更にまた、50塩基対に至るまでのサイズのDNAは、中央血液塗布スポットに保持されることができ、ヌクレアーゼフリー水で溶離されることができる。
【0075】
特定の具体的な典型的な実施形態で本発明を説明してきたが、本開示に照らせば、さらなる多くの修飾及び改変は当業者には明らかであろう。従って、具体的に説明した以外の方法で本発明を実施できることが理解されるべきである。このように、本発明の典型的な実施形態は、あらゆる点で例示と考えられるべきであり、制限するものと考えてはならず、前述の説明によるよりはむしろ、本発明の範囲は、本願によって裏付けられる任意の請求項によって決定されると考えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
in vivo細胞環境に存在する核酸の精製方法であって、核酸及びin vivo細胞環境が媒体に含まれる前記方法において、
(a)核酸を含む媒体と結合マトリックス及び配合物とを混合する工程であって、前記配合物が、
(b)グアニジンチオシアナート;及び
(c)アセトアミド又は1以上のアセトアミド誘導体又はアセトアミド及び1以上のアセトアミド誘導体の組み合わせ、
を含み、前記配合物中に存在するグアニジンチオシアナートならびにアセトアミド、アセトアミド誘導体又はアセトアミド及びアセトアミド誘導体の組み合わせの量は、核酸をそのin vivo細胞環境から分離させ、結合マトリックスに結合させるのに十分である工程、
(d)実質的に混合された媒体及び配合物の残りから結合マトリックス及びそれに結合した核酸を分離する工程、
(e)結合マトリックスから核酸を溶離し、それによって実質的に精製された形態で核酸を得る工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
アセトアミド誘導体が、N-メチルアセトアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記配合物中のグアニジンチオシアナートの濃度が、おおよそ1.7M〜おおよそ4.3Mであり、該配合物中のアセトアミド、アセトアミド誘導体又はアセトアミド及びアセトアミド誘導体の組み合わせの濃度が、おおよそ5.0M〜おおよそ7.5Mである、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
第2核酸が前記媒体に存在する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)第2核酸に結合することができる第2結合マトリックスと、請求項1記載の段階(b)後に残った混合された媒体の残りとを混合する工程であって、第2核酸は第2結合マトリックスに結合する工程、
(b)実質的に混合された媒体及び配合物の残りから第2結合マトリックス及びそれに結合した第2核酸を分離する工程、
(c)第2結合マトリックスから第2核酸を溶離し、それによって実質的に精製された形態で第2核酸を得る工程、
を更に含む方法。
【請求項5】
前記結合マトリックスが、常磁性セルロース粒子、常磁性カルボキシセルロース粒子、常磁性シトラスペクチン粒子、常磁性リンゴペクチン粒子、常磁性ゼオライト粒子、常磁性シリカ粒子、セルロース膜、シリカ膜、酢酸セルロースカラム、ナイロン膜カラム、PVDF膜カラム、ポリプロピレンカラム及び除去カラムからなる群から選択される1以上の材料を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)が、1以上の追加の成分を媒体、前記結合マトリックス及び前記配合物と混合することを更に含み、ここで1以上の追加の成分が、プロテイナーゼK、β-メルカプトエタノール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、ジチオスレイトール、1-チオグリセロール、ジギトニン、溶解液、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート、26-(4-ノニルフェノキシ)-3,6,9,12,15,18,21,24-オクタオキサヘキサコサン-1-オール及び4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
in vivo細胞環境に存在する核酸を結合マトリックスに結合させる方法であって、核酸及びin vivo細胞環境が媒体に含まれる方法において、核酸を含む媒体と結合マトリックス及び配合物とを混合する工程であって、前記配合物が、
(a)グアニジンチオシアナート;ならびに
(b)アセトアミド又は1以上のアセトアミド誘導体又はアセトアミド及び1以上のアセトアミド誘導体の組み合わせを含み、
前記配合物中に存在するグアニジンチオシアナート、アセトアミド、アセトアミド誘導体又はアセトアミド及びアセトアミド誘導体の組み合わせの量が、核酸をそのin vivo細胞環境から分離させ、結合マトリックスに結合させるのに十分であることを特徴とする方法。
【請求項8】
アセトアミド誘導体が、N-メチルアセトアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記配合物中のグアニジンチオシアナートの濃度が、おおよそ1.7M〜おおよそ4.3Mであり、該配合物中のアセトアミド、アセトアミド誘導体又はアセトアミド及びアセトアミド誘導体の組み合わせの濃度が、おおよそ5.0M〜おおよそ7.5Mである、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記配合物中のグアニジンチオシアナートの濃度が、おおよそ4.0M〜おおよそ4.3Mであり、該配合物中のアセトアミド、アセトアミド誘導体又はアセトアミド及びアセトアミド誘導体の組み合わせの濃度が、おおよそ5.0M〜おおよそ7.1Mである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記配合物と前記媒体との容量比が、1:1〜30:1であり、結合マトリックスと媒体との容量比が、0.005:1〜0.5:1である、請求項7、8、9又は10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記配合物と前記媒体との容量比が、1.5:1〜8:1であり、前記結合マトリックスと前記媒体との容量比が、0.2:1〜0.4:1である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記結合マトリックスが、常磁性セルロース粒子、常磁性カルボキシセルロース粒子、常磁性シトラスペクチン粒子、常磁性リンゴペクチン粒子、常磁性ゼオライト粒子、常磁性シリカ粒子、セルロース膜、シリカ膜、酢酸セルロースカラム、ナイロン膜カラム、PVDF膜カラム及びポリプロピレンカラムからなる群から選択される1以上の材料を含む、請求項7、8、9、10、11又は12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
結合マトリックス及び配合物を含むキットであって、前記配合物が、グアニジンチオシアナートならびに(i)アセトアミド又は(ii)1以上のアセトアミド誘導体又は(iii)アセトアミド及び1以上のアセトアミド誘導体の組み合わせを含み、ここで少なくとも1つの核酸を含む媒体が、結合マトリックス及び配合物と混合される場合、配合物中に存在するグアニジンチオシアナート及びアセトアミド、アセトアミド誘導体、又はアセトアミド及びアセトアミド誘導体の組み合わせの量が、核酸及びin vivo細胞環境が媒体に含まれるin vivo細胞環境に存在する核酸をそのin vivo細胞環境から分離させ、結合マトリックスに結合させるのに十分であることを特徴とするキット。
【請求項15】
前記アセトアミド誘導体が、N-メチルアセトアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる群から選択される、請求項14記載のキット。
【請求項16】
前記配合物中のグアニジンチオシアナートの濃度がおおよそ1.7M〜おおよそ4.3Mであり、配合物中のアセトアミド、アセトアミド誘導体又はアセトアミド及びアセトアミド誘導体の組み合わせの濃度が、おおよそ5.0M〜おおよそ7.5Mである、請求項14又は15に記載のキット。
【請求項17】
前記配合物中のグアニジンチオシアナートの濃度が、おおよそ4.0M〜おおよそ4.3Mであり、該配合物中のアセトアミド、アセトアミド誘導体、又はアセトアミド及びアセトアミド誘導体の濃度の組み合わせが、おおよそ5.0M〜おおよそ7.1Mである、請求項14、15又は16のいずれか1項に記載のキット。
【請求項18】
前記キットにおける結合マトリックスと配合物との容量比が、1:400〜1:1である、請求項14、15、16又は17のいずれか1つに記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−502934(P2013−502934A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527066(P2012−527066)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/047137
【国際公開番号】WO2011/026027
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】