説明

核酸分解酵素

【課題】 核酸分解酵素に適当なタグを付し、該タグを利用して核酸分解酵素を酵素反応系から除去し、最終的に、合成された目的タンパク質分子だけを核酸分子を含まない形で得ることが出来る方法の提供。
【解決手段】 特定のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列のカルボキシ末端に2から10個のヒスチジンからなるポリヒスチジンが付加されたアミノ酸配列からなる核酸分解酵素およびタグを付加した核酸分解酵素を利用して溶液中の核酸を分解し低分子化させ、分解反応途中もしくは終了後に、該タグを付した核酸分解酵素を特異的に認識結合する不溶性担体を加えることにより、前記核酸分解酵素を溶液中から除去することを含む、核酸分解反応の制御または終了方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸分解酵素の利用技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
核酸分解酵素をはじめ、多くの酵素の反応は、均一な溶液中で行われる場合が多い。溶液状態での酵素反応の制御、すなわち、酵素反応の途中もしくは終了後に反応の停止を行おうとする場合、何らかの方法で酵素を不活性化することが行われる。例えば、多くの酵素は高温で不活性化することから、加熱処理とか、酵素阻害剤を添加する、酸またはアルカリを多量に加え、酸またはアルカリ失活させるなどの処理が行われる。しかしながらこのような処理を施すことで、反応液中の目的とする反応物が変化したり、あるいはその後の処理に不都合が生じるなどの問題が生じることが多く、より温和な方法で酵素反応を制御できることが望ましいと考えられていた。例えば、試験管内タンパク質合成反応すなわちタンパク質の無細胞合成反応において、合成反応液中に必ず含まれる、トランスファーRNA、リボゾームRNA及びメッセンジャーRNAの量は目的とする合成されたタンパク質に比
較にならないほど多量であり、このRNAを如何にして取り除くかが問題となっている。そ
のため、核酸分解酵素によりRNAを低分子化することが行われるが、核酸分解酵素は安定
であるため、加えた核酸分解酵素を不活化することが新たな問題としてあげられていた。
【0003】
例えば、上記の試験管内タンパク質合成、すなわちタンパク質の無細胞合成において、合成系に添加する酵素等のタンパク質ファクターにタグをつけ、合成反応後、タンパク質ファクターにつけたタグの反応を利用して反応液から除去し、最終的に合成されたタンパク質だけ簡便に分離する方式が公知となっている(特許文献1および非特許文献1を参照)が、このような方式においては、分離されたタンパク質サンプル中に多量のRNA分子が
含まれ、再度のプロセスによりRNA分子を除去しなければならず、簡便性の特性を最大限
発揮できないことが問題として考えられるようになってきた。
【0004】
【特許文献1】特開2003-102495号公報
【非特許文献1】Shimizu Y. et al., (2001) Nature Biotechonology, vol.19, p.751-755
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来技術の問題を解消できる手段を提供することを目的とする。すなわち、核酸分解酵素に適当なタグを付し、該タグを利用して核酸分解酵素を酵素反応系から除去し、最終的に、合成されたタンパク質分子だけをRNA分子を含まない形で得ること
ができる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、試験管内タンパク質合成、すなわち無細胞合成系において、試験管内タンパク質合成反応終了後に、適当なタグを付した核酸分解酵素を添加し、共存するRNAを
分解し、高分子RNAを低分子化し、目的タンパク質と低分子化RNAの分子量の大幅な違いを利用してRNAと目的タンパク質を分離できることを見出した。さらに、タグを付した核酸
分解酵素を該タグの反応性を利用して高分子担体に結合させ除去することで、非常に簡便な方法で、試験管内タンパク質合成反応で合成された目的のタンパク質を高純度の形で得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の態様は以下のとおりである。
[1] 配列番号1で示されるアミノ酸配列のカルボキシ末端に2から10個のヒスチジンからなるポリヒスチジンが付加されたアミノ酸配列からなる核酸分解酵素。
[2] 配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる、ポリヒスチジンが6個のヒスチジンからなる[1]の核酸分解酵素。
[3] [1]の核酸分解酵素をコードし、且つ安定に核酸分解酵素の発現を可能とする、DNA。
[4] 配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる核酸分解酵素をコードし、且つ安定に核酸分解酵素の発現を可能とする、配列番号3で示される塩基配列からなるDNA。
[5] [1]または[2]の核酸分解酵素を利用して溶液中の核酸を分解し低分子化させ、分解反応途中もしくは終了後に、該核酸分解酵素を特異的に認識結合する不溶性担体を加えることにより、前記核酸分解酵素を溶液中から除去することを特徴とする、核酸分解反応の制御または終了方法。
[6] 不溶性担体が、ニッケルキレートを含有することを特徴とする、[5]の核酸分解反応の制御または終了方法。
[7] 試験管内タンパク質合成反応において反応溶液中の核酸を分解し低分子化させる、[5]または[6]の核酸分解反応の制御または終了方法。
[8] 試験管内タンパク質合成反応終了液に[1]または[2]の核酸分解酵素を加え、タンパク質合成反応溶液中に含まれる核酸を分解し低分子化した後に、分子サイズの違いにより低分子化した核酸を除去することを特徴とする、試験管内タンパク質合成反応溶液からの核酸の除去方法。
[9] 試験管内タンパク質合成反応終了液に[1]または[2]の核酸分解酵素を加え、タンパク質合成反応溶液中に含まれる核酸を分解し低分子化し、分解反応途中もしくは終了後に、該核酸分解酵素を特異的に認識結合する不溶性担体を加えることにより、前記核酸分解酵素を溶液中から除去し、次いで分子サイズの違いにより低分子化した核酸を除去することを特徴とする、試験管内タンパク質合成反応溶液からの合成タンパク質を精製する方法。
[10] 試験管内タンパク質合成反応を行わせる工程であって、試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターの一部または全部がポリヒスチジンを付加したものである工程、[1]または[2]の核酸分解酵素を添加し核酸を分解し低分子化する工程、前記核酸分解酵素を認識結合する不溶性担体を添加し、分画分子量10万〜50万の膜フィルターを用いて前記タンパク質ファクターおよび前記核酸分解酵素を除去する工程および分画分子量1000〜5000の膜フィルターを用いて低分子化核酸を除去する工程を含む、ハイスループットタンパク質合成方法。
[11] 試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターが、開始因子、延長因子、終結因子、アミノアシルtRNAシンテターゼ、メチオニルtRNAトランスフォルミナーゼ、RNAポリメラーゼを含む転写・翻訳に必要なタンパク質ファクターを含む[10]のハイス
ループットタンパク質合成方法。
[12] 試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターがさらに、キナーゼ、無機ピロフォスファターゼを含むエネルギー再生に必要なタンパク質ファクターを含む[1
1]のハイスループットタンパク質合成方法。
[13] [1]または[2]の核酸分解酵素およびポリヒスチジンを付加した試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターを含むハイスループットタンパク質合成キット。[14] 試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターが、開始因子、延長因子、終結因子、アミノアシルtRNAシンテターゼ、メチオニルtRNAトランスフォルミナーゼ、RNAポリメラーゼを含む転写・翻訳に必要なタンパク質ファクターを含む[13]のハイス
ループットタンパク質合成キット。
[15] 試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターがさらに、キナーゼ、無機ピロフォスファターゼを含むエネルギー再生に必要なタンパク質ファクターを含む[1
4]のハイスループットタンパク質合成キット。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、試験管内タンパク質合成により得られるタンパク質を単純な操作により核酸フリーで且つ純度の高い状態で且つ短い期間(1日程度)で得ることができる。従って、得られたタンパク質標品はそのままの状態で機能検査等に利用することができ、この操作を自動化することにより、タンパク質の多品種合成・利用のハイスループット化を可能とした。特に、転写、翻訳およびエネルギー再生に必要なタンパク質ファクターの総てを調製し添加して用いる再構成系の試験管内タンパク質合成において、上記タンパク質ファクターに本発明の核酸分解酵素と同じタグを付しておくことにより、核酸分解酵素のみならず、添加したタンパク質ファクターを一度の操作で同時に除去することができる。さらに、核酸分解酵素により合成溶液中の核酸を分解・低分子化することにより、分子量の差を利用して合成された目的タンパク質のみを容易に分離精製することができるので、試験管内タンパク質合成において、目的タンパク質のみを簡単な操作で分離精製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の核酸分解酵素は、Bacillus amyloliquefaciens由来のバルナーゼのカルボキシ末端にポリヒスチジン(ポリヒスチジンタグ)を付加した配列を有している。カルボキシ末端に結合するヒスチジンの数は、2〜10、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、好ましくは6〜10、さらに好ましくは6である。本発明の核酸分解酵素は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するBacillus amyloliquefaciens由来のバルナーゼのカルボキシ末端にヒスチジンを2〜10個付加したアミノ酸配列からなる。本発明の核酸分解酵素の1例として配列番号2にBacillus amyloliquefaciens由来のバルナーゼのカルボキシ末端に6個のヒスチジンからなるポリヒスチジンを付加したアミノ酸配列を示す。
【0010】
この配列番号1に示されるアミノ酸配列のカルボキシ末端にポリヒスチジンを有するタンパク質および配列番号2に示されるアミノ酸配列のタンパク質の作製は、配列番号3で示される塩基配列を有する遺伝子DNAを化学合成もしくはBacillus amyloliquefaciensの
染色体DNAから、PCR増幅により配列番号3で示される塩基配列を有する遺伝子部分を取り出した後、適宜塩基配列を付加することにより作製した後、これを適当な発現ベクターに組み込み大腸菌で発現させ、ポリヒスチジンに結合する不溶性担体、例えばニッケルキレートを含有する不溶性担体を用いたアフィニティクロマトグラフィーにより、均一な形で作製することができる。このような操作は、配列番号1から3の配列情報に基づいて当業者ならば容易に達成することができる。用いる不溶性担体としては、後記の本発明の核酸分解酵素の分離に用いるものを用いることができ、不溶性担体を充填したカラムを用いて分離精製すればよい。なお、配列番号3で示されるDNA配列は、配列番号2で示されるア
ミノ酸配列からなる核酸分解酵素を分泌発現させるための分泌シグナル遺伝子(23位から85位)およびリボゾーム結合配列(9位から15位)、更に、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる核酸分解酵素単独発現では、宿主が致死となるためこれを避けるための阻害剤タンパク質であるBacillus amyloliquefaciens由来のバルスタータンパク質をコードする配列(458位から730位)により構成されている。また、発現させる宿主としては、大腸菌に限定されず、例えば、枯草菌、好熱菌、酵母等、遺伝子の形質転換が安定にできる宿主が好適である。これらの宿主への上記DNA配列の導入及び宿主の培養は
公知の技術により行うことができる。
【0011】
本発明のポリヒスチジンを付加した核酸分解酵素を用いた核酸分解反応は、中性付近であれば、どのような溶液条件でも行うことができる。特に、試験管内タンパク質合成反応に用いられる溶液条件であれば、なんら問題なく反応を行わせることができる。
【0012】
本発明の核酸分解酵素は、カルボキシ末端にポリヒスチジン部分を含むことから、この
部分を特異的に認識する機能を有する固定化担体を用いて、特異的に結合させることにより、核酸分解酵素だけを反応液から固−液分離により、分離することができる。この結果、核酸分解酵素反応を停止することができる。このような結合用担体としては、特異的に結合する担体であればどのようなものでも利用可能であるが、例えば、ポリヒスチジンと強固に結合するニッケルキレートを含有する不溶性担体またはポリヒスチジンに結合し得る抗体の利用が好適である。用いる不溶性担体は、限定されないがセルロース系担体、アガロース系担体、ポリアクリルアミド系担体、デキストラン系担体、ポリスチレン系担体、ポリビニルアルコール系担体、ポリアミノ酸系担体、多孔性シリカ系担体等を用いることができ、公知の方法によりニッケルキレートや抗体を結合させればよい。不溶性担体は、市販のものを用いることができ、市販の担体としてSepharose 2B、Sepharose 4B、Sepharose 6B、CNBr-Activated 4B、AH-Sepharose 4B、CH-Sepharose4B、Activated CH-Sepharose 4B、Epoxy-activated Sepharose 6B、Activated thiol-Sepharose 4B、Sephadex、CM-Sephadex、ECH-Sepharose 4B、EAH-Sepharose 4B、NHS-activated SepharoseおよびThiopropyl Sepharose 6B等(以上、Amersham Pharmacia Biotech社製)、Bio-Gel A、Cellex、Cellex AE、Cellex-CM、Cellex PAB、Bio-Gel P、Hydrazide Bio-Gel P、Aminoethyl Bio-Gel P、Bio-Gel CM、Affi-Gel 10、Affi-Gel 15、Affi-Prep 10、Affi-Gel Hz、Affi-Prep Hz、Affi-Gel 102、CMBio-Gel A、Affi-Gel heparin、Affi-Gel 501およびAffi-Gel 601等(以上、Bio-Rad社製)、クロマゲルA、クロマゲルP、エンザフィックスP-HZ、エンザフィックスP-SHおよびエンザフィックスP-AB等(以上、和光純薬工業社製)、ならびにAE-Cellurose、CM-CelluroseおよびPAB Cellurose等(以上、Serva社製)を挙げることができる。また、ニッケル結合不溶性担体として、例えば、Nitrilotriacetic Acidタイ
プ、Iminodiacetic Acidタイプ等を挙げることができ、前者として、Ni-NTA(QIAGEN社製)、後者としてProBond column(Invitrogen社製)等がある。反応の停止においては、上記の結合用担体を反応液に加え、ポリヒスチジンを付加した配列からなる本発明の核酸分解酵素を担体に結合させる。この際の、結合条件は適宜設定することができる。次いで、遠心分離または適当なサイズの膜フィルターで担体を分離することにより溶液から、核酸分解酵素を除去することができ、これにより反応の停止を行うことができる。遠心分離は、核酸分解酵素が結合した担体を沈降させ得る条件で行えばよく、例えば数百g〜数千gの遠心力で数分から十数分遠心分離を行えばよい。また、分画分子量10〜30万程度の膜フィルターを用いた限外ろ過またはポアサイズ0.1μm程度以下の膜フィルターを用いた精密ろ過により分離することができる。さらに、核酸分解酵素および担体を分離した後の溶液から核酸分解酵素により分解されて低分子化したRNAを除去するには、分画分子量3000〜5000程度の膜フィルターを用いた限外ろ過を行えばよい。限外ろ過は市販の限外ろ過装置を
用いて行えばよく、例えば、sartorius社のセントリザルト(登録商標)、ウルトラザル
トカセット(登録商標)、Millipore社のセントリコン(登録商標)、マイクロコン(登
録商標)、ウルトラフリー(登録商標)、コスモバイオ社のセントリカット(登録商標)等がある。
【0013】
本発明の核酸分解酵素は、in vitroでRNAを分解し、反応後に核酸分解酵素を除去する
必要があるいかなる反応系にも用いることができる。この際、本発明の核酸分解酵素のみならず、反応に用いる酵素等の他のタンパク質ファクターにも同様に、ポリヒスチジンを付加しておくことにより、核酸分解酵素を含むタンパク質ファクターを一回の操作で除去することができる。特に試験管内タンパク質合成反応、即ち無細胞タンパク質合成反応系において、試験管内タンパク質合成反応を行わせた後、反応液中に多量に含まれるRNAを
分解除去するのに好適に用いることができる。試験管内タンパク質合成は、in vitroで、大腸菌や、コムギ胚芽からリボソーム、アミノアシルtRNA合成酵素、翻訳開始因子(translation initiation factor)、翻訳伸長因子(translation elongation factor)、翻訳終結因子(translation termination factor)等を含む無細胞翻訳抽出液(S 30エクストラクト)ならびにATP再生系、プロモーターおよび発現しようとする目的タンパク質をコ
ードする核酸を含むプラスミドまたは目的タンパク質をコードするmRNA、tRNA、RNAポリ
メラーゼ、RNAアーゼ阻害剤、ATP、GTP、CTP、UTP等のエネルギー源、緩衝剤、アミノ酸
、塩類、抗菌剤等を混合し、発現しようとする目的タンパク質をコードするDNAを鋳型と
して目的タンパク質を翻訳合成させる。試験管内タンパク質合成反応に用いられるタンパク質ファクターとして、転写および翻訳に用いられる合成酵素、ATP再生に用いられるキ
ナーゼ等が挙げられる。用いるプラスミドは限定されず、公知のものが用いられ、公知の遺伝子工学的手法により、適当なプロモーターやリボソーム結合部位等を導入して用いることができる。当業者ならば、本発明で用いるプラスミドを適宜選択し、また自ら設計して構築することができる。ATP再生系は限定されず、公知のリン酸ドナーおよびキナーゼ
の組合せを用いることができる。この組合せとして例えば、ホスホエノールピルビン酸(PEP)-ピルビン酸キナーゼ(PK)の組み合わせ、クレアチンリン酸(CP)-クレアチンキ
ナーゼ(CK)の組み合わせ、アセチルリン酸(AP)-アセテートキナーゼ(AK)の組み合
わせ等が挙げられ、これらの組合せでATP再生系を試験管内タンパク質合成系に加えれば
よい。プロモーターは本発明の試験管内タンパク質合成系で用いる微生物が有する内在性のプロモーターを用いてもよいし、外来性のプロモーターを用いてもよい。外来性のプロモーターを用いる場合で、試験管内タンパク質合成系で用いる微生物が有する内在性のポリメラーゼが転写出来ないプロモーターの場合、そのプロモーターに作用するRNAポリメ
ラーゼを本発明の系に添加する。例えば、プロモーターとしてT7プロモーターを用いる場合、T7 RNAポリメラーゼを添加する。プロモーターとしては、Trcプロモーター、T7プロ
モーター、Tacプロモーター等を用いることができる。緩衝剤としてはHepes-KOH、Tris-Acetateなどが挙げられ、塩類としては酢酸塩、グルタミン酸塩等が挙げられるがこれらには限定されない。それぞれの濃度は適宜決定すればよい。例えば、特表2000-514298、特
開2000-175695、特開2002-338597、Zubay, Annu. Rev. Genet. 7 267-287 [1973]、Pratt, Transcription and Translation - a practical approach, Henes, B. D. and Higgins, S. J. ed., IRL Press, Oxford. 179-209 [1984]、Kim et al., Eur. J. Biochem. 239
881-886 [1996]、Nakano et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 58 631-634 [1994]、Madin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 559-564 [2000])等の記載に従って行うことができる。
【0014】
また、フロー法によっても行うことができる。フロー法とは、タンパク質合成に際して、反応系から枯渇しやすい物質であるATP、GTP等をポンプ等で連続的に供給し、かつ、タンパク質合成を阻害する反応副産物を除去することで、タンパク質合成を長時間行わせる方法である。フロー法は、Spirin et al., Science 242 1162-1164 [1988])、Kim and Choi, Biotechnol. Prog. 12 645-649等に記載の方法で行うことができる。
【0015】
さらに、試験管内タンパク質合成は、細胞抽出液を利用せず、転写、翻訳およびエネルギー再生に必要なタンパク質ファクターをすべて別々に調製し、再構成して用いることもできる。この場合、例えばリボゾーム以外のタンパク質ファクターにポリヒスチジンを付加しておくことにより、ニッケルキレートを含有する不溶性担体を用いてタンパク質ファクターを除去し、さらにリボソームを限外ろ過により除去することができる。この再構成試験管タンパク質合成は、Nature Biotechnology, vol19, p.751-755, 2001または特開2003-102495号公報の記載に従って行うことができる。再構成試験管内タンパク質合成にお
いて、ポリヒスチジンが付加されているタンパク質ファクターとして、転写、翻訳およびエネルギー再生に必要な30種類以上のタンパク質があり、転写、翻訳に必要なタンパク質ファクターとして、開始因子、延長因子、終結因子、20種類のアミノアシルtRNAシンテターゼ、メチオニルtRNAトランスフォルミラーゼ、T7RNAポリメラーゼ等のRNAポリメラーゼが挙げられる。また、エネルギー再生に必要なタンパク質ファクターとして、クレアチンキナーゼ、アデニル酸キナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、アセテートキナーゼまたはヌクレオシドジフォスフェートキナーゼ(NDK)、ならびに転写・翻訳反応で生じる無機ピロリ
ン酸を分解する無機ピロフォスファターゼが挙げられる。開始因子として、大腸菌由来のIF1、IF2およびIF3が挙げられ、延長因子として、EF-Tu、EF-Ts、EF-Gが挙げられ、終結
因子として、RF1、RF2、RF3が挙げられる。さらに、タンパク質ファクターとしてリボソ
ームリサイクリング因子がある。これらのタンパク質ファクターの一部または全部にポリヒスチジンを付加しておけばよい。
【0016】
また、試験管内タンパク質合成は、市販の試験管内タンパク質合成キットまたは装置を用いて行うこともでき、市販のキットまたは装置として、東洋紡績株式会社製のPROTEIOSTM無細胞タンパク質合成キット、ポストゲノム研究所製のPURESYSTEM(登録商標)、ロシュ・ダイアグノスティックス社製のRTSプロテオマスター(登録商標)等がある。
【0017】
特に、上記のように再構成型の試験管内タンパク質合成反応は、酵素等のタンパク質合成に必要なすべてのタンパク質ファクターにヒスチジンタグを導入し、合成反応後にニッケルキレートを含有する不溶性担体で処理した後、膜フィルターを用いた遠心分画により、反応生成物である目的タンパク質以外のタンパク質成分を除去することにより、簡便にタンパク質としては純度の高い状態にすることができ、タンパク質合成におけるハイスループット化が期待される。しかしながら、このようにして得られたタンパク質溶液中には、多量のRNA成分が混入しており、そのままの状態では利用することが困難となっている
。このような手法を用いたタンパク質の多品種合成利用のハイスループット化を達成するためには、遠心分画のような簡便な方法でRNA除去を行う必要がある。このことを実現す
る方法として、本発明の核酸分解酵素の利用が上げられる。すなわち、試験管内タンパク質合成が終了した後、本発明の核酸分解酵素を加え、RNAを分解低分子化させた後、ニッ
ケルキレートを含有する不溶性担体で処理、分画分子量30万程度の膜フィルターを用いた遠心分画し、核酸分解酵素及びタンパク質合成に用いられたすべてのタンパク質成分を除去することにより、目的のタンパク質と低分子量の核酸を含む溶液を得て、これを、分子量5000程度の分子を透過させる膜フィルターを用い、遠心分画処理することにより、低分子RNAを除去し、目的のタンパク質だけをRNAを含まない状態で得ることができる。このことにより、タンパク質合成反応→核酸分解酵素の添加→不溶性担体の添加→分画分子量30万程度の膜フィルターを用いた遠心分画→分子量5000程度の分子を透過させる膜フィルター遠心分画という一連の工程が完結し、このような工程は分離工程においていわゆるクロマトグラフィーという操作を含まず、遠心分離操作で出来ることから、自動化・機械化は非常に容易である。従って、本発明に利用することによって、タンパク質の多品種合成・利用のハイスループット化が可能となるのである。
【0018】
本発明は、さらに本発明の核酸酵素およびポリヒスチジンを付加した試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターを含むハイスループットタンパク質合成キットを包含する。さらに、本発明は、本発明の核酸酵素およびポリヒスチジンを付加した試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターを含むハイスループットタンパク質合成自動化装置を包含する。
【実施例】
【0019】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0020】
本実施例に示した操作は、すべて分子生物学の実験書に記載されているスタンダードな実験方法もしくは、市販されている試薬キット等に添付されている操作マニュアルに忠実従って行うことができた例である。なお、PCR反応のプライマーとして用いた化学合成DNAはすべて受託合成会社へ合成を委託したものを用いた。
【0021】
〔実施例1〕配列番号2で示される核酸分解酵素の大腸菌での分泌発現
Bacillus amyloliquefaciensを培養し、培養菌体より染色体DNAを分離した。
このDNAを鋳型として、(1)5’-GCACAGGTTATCAACACGTTTGACGGGGT-3’(配列番号6)と
(2)5’-TCTGATTTTTGTAAAGGTCTGATAATGGT-3’(配列番号7)の2本のプライマーDNAを用いて、PCR法により、バルナーゼをコードするDNA配列を増幅、分離した(これをDNA1と称する)。また、(3)5’-ATGAAAAAAGCAGTCATTAACGGGGAAC-3’(配列番号8)と(4)5’-GGGAATTCTTAAGAAAGTATGATGGTGATGTCGCAGC-3’(配列番号9)の2本のプライマーDNAを用いて、PCR法により、バルナーゼ阻害タンパク質バルスターをコードするDNA配列を増幅、分離した(これをDNA2と称する)。更に、DNA1を鋳型として、(5)5’- ATGAAACAAAGCACTATTGCACTGGCACTCTTACCGTTACTGTTTACCCCTGTGACAAAAGCC-3’(配列番号10)と(6)5’- TCTTTAATGGTGGTGATGGTGATGGCCACCTCTGATTTTTGTAAAGGTCTGATAATGGTCCGTT-3’(配
列番号11)の2本のプライマーDNAを用いて、PCR法により、両末端を延長したDNA配列
を増幅、合成した(これをDNA3と称する。)。また、DNA2を鋳型として、(7)5’- AGAGGTGGCCATCACCATCACCACCATTAAAGAAAGGAGGACGCCATGAAAAAAGCAGTCATTA-3’(配列番号12
)と(2)5’- TCTGATTTTTGTAAAGGTCTGATAATGGT-3’(配列番号13)の2本のプライマーDNAを用いて、PCR法により、DNA配列を増幅、合成した(これをDNA4と称する。)。
【0022】
次に、DNA3とDNA4を同時に鋳型として、(8)5’- GGCGGATCCAAAAGGAGGAACTTCCATGAAACAAAGCACTATTGCACTGGCACTCTTACCGTTA-3’(配列番号14)と(2)5’- TCTGATTTTTGTAAAGGTCTGATAATGGT-3’(配列番号15)の2本のプライマーDNAを用いて、PCR法により、DNA3とDNA4とを結合し、且つ末端を延長したDNA配列(配列番号3で示される配列)を増幅、合成した。このようにして、増幅、合成して得られたDNAは、片側に制限酵素BamHI、もう片側に制限酵素EcoRIで切断される配列を持たせている。この切断配列を利用し、既に
、本発明者らが作製しているジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子の発現プラスミドpFOL1(pUC18を制限酵素HindIIIとEcoRIで切断して得られる配列に、DNA配列が配列番号4で、アミノ
酸配列が配列番号5で示されるジヒドロ葉酸還元酵素を高発現できる配列有するDNAを、
制限酵素HindIIIとEcoRIで切断し、両者を結合した配列を有する環状プラスミド)の制限酵素BamHIとEcoRI部位の間に、DNAリガーゼ反応により結合して得られる、組み換えプラ
スミドを作製し、これを大腸菌JM109株に形質転換法により、形質導入し、アンピシリン
及びトリメトプリムに対して耐性となった形質転換株をいくつか分離し、そのプラスミドを分離した。得られたプラスミドを用いてDNA配列の決定を行い、配列番号3で示されるDNAが導入されたプラスミドを得た。
【0023】
配列を確かめたプラスミドを、大腸菌JM109株に形質転換し、アンピシリン及びトリメ
トプリムに対して耐性となったコロニーを任意に一つ選び、これをアンピシリンを含む栄養培地で35℃で24時間培養した。培養後、遠心分離により菌体を取り除き、培養液を得た。これをニッケルキレートカラムをアプライした後、緩衝液で良く洗浄した。洗浄後、ヒスチジンを含む緩衝液で溶出されるタンパク質を集めた。透析によりタンパク質液中に含まれるヒスチジンを取り除き、これを精製タンパク標品とした。精製タンパク質標品は、SDSポリアクリルアミド電気泳動により分析した結果1本のタンパク質バンドとして得ら
れ、均一標品であった(図1)。得られた精製タンパク質標品の質量は、4重極質量分析機を用いた測定の結果、13320ダルトンであり、配列番号2のアミノ酸配列から計算される
分子量と一致した。また、アミノ末端側の配列は、プロテインシーケンサーを用いた配列決定により、Ala(1) Gln(2) Val(3) Ile(4) Asn(5)という結果が得られ
た。この結果も、配列番号2のアミノ酸配列と矛盾の無い配列であった。また、遺伝子発現に際して、分泌シグナルを付加していたが、得られたタンパク質は分泌シグナルが完全に除去された目的どおりのものであることが示された。
【0024】
〔実施例2〕配列番号2で示される核酸分解酵素を用いた試験管内タンパク質合成反応後の標品中に含まれるRNAの分解、低分子化
タンパク質合成用のキット(PURESYSTEM;ポストゲノム研究所より購入)を用いて、試験管内でジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をコードしている遺伝子からDHFRタンパク質を合成した後、それ以外のタンパク質成分を除去した(これを標品1とした)。標品1の紫外部の
吸収スペクトルを図2の曲線1(実線)に示す。スペクトルより示されるように、標品1には多くの核酸成分が含まれていることが判明した。
【0025】
標品1をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動し、銀染色した結果を図3、レーン1に
示す。この結果は、標品1に、高分子の核酸成分が多量に含まれていることを示している。
【0026】
標品1を、実施例1において得られた核酸分解酵素で処理し、高分子量の核酸成分を低分子化した(標品2とした)。図3レーン2に、標品2の電気泳動図を示すが、高分子の核酸成分が低分子化したことが示された。また、図2の曲線2(点線)は標品2の紫外部の吸収スペクトルを示しているが、分解に伴う深色効果が観察された。
【0027】
〔実施例3〕標品2からの核酸分解酵素と低分子化したRNAの除去
実施例2で得られた標品2から、核酸分解酵素を除去するため、以下のような処理を行う標品3を得た。100μlの反応液に、ニッケルキレートを含有する不溶性担体の懸濁液(Ni-NTA アガロース;QIAGEN社より購入)10μlを加え、4℃で1時間穏やかに攪拌することにより、タグ付の核酸分解酵素を不溶性の担体に吸着させた。その後、エンプティスピンカラム(マイクロバイオスピンエンプティカラム;BIO-RAD社より購入)に移し、遠心
機にセットし、1,500gの遠心力で3分間遠心することにより、溶液のみをカラムを通過させて回収した。
【0028】
次にこの溶液から、低分子のRNAを除去するため、遠心分画処理を行った。このために
、遠心限外濾過用のカップ(ULTRAFREE-MC 5,000NMWL Filter Unit;MILLIPORE社より購
入)を用いたが、この遠心濾過用のカップの底面には限外分子量が5,000の孔径を持つ再
生セルロース膜が張られていて、外向きに遠心力を加えることにより、カップ内の溶液を濾過できるようになっている。すなわち、遠心力を加えると、溶液内に含まれている分子量が5,000以下の低分子化合物は水分子とともに膜を通り抜けて排除されるが、分子量が5,000以上の分子はカップの中に保持されて残る。よって、このような遠心分画処理を行うことによって、分子量が約18,000のDHFRタンパク質から、低分子のRNAを分離除去するこ
とが可能である。実際には、以下のような処理を行った。上述した核酸分解酵素を除去した反応液100μlに10mM燐酸緩衝液(pH=7.0)300μlを加え、反応液の液量を400μlに増加させてから、遠心限外濾過用のカップにアプライし、遠心機にセットし、24℃で5,000gの遠心力で13分間遠心した。この操作の結果、始めカップ内にあった400μlの溶液は200μlにまで減少していたので、この操作に伴い、溶液に含まれていたRNA分子の1/2が除去されたことになる。次に、カップ内に残っていた溶液200μlに燐酸緩衝液200μlを加えて400μlに増加させ、再び24℃で5,000gの遠心力で13分間遠心した。結果、400μlの溶液は200μlに減少しており、この操作によって最初のRNA分子のさらに1/4が除去されたことになる。以下同様の操作を続けることにより、任意の量のRNA分子を除去できるが、本実施例では10回この操作を繰り返した。ただし、最後の遠心操作においては、遠心時間を8分間延長
し、カップに残る溶液の量が100μlに減少するまで濾過した後、残っていた溶液を回収した(標品3とした)。
【0029】
標品3の紫外部の吸収スペクトルを図2の曲線3(2点破線)及び図2中の挿入図曲線3に示す。スペクトルより示されるように、標品3においては核酸成分が取り除かれていることが明らかとなった。図3レーン3に、標品3の電気泳動図を示すが、合成されたDHFRタンパク質(矢印で示す)のみが含まれていることが示された。
【0030】
実施例2および実施例3でしめした一連の処理を行うことによって、RNA分子をほぼ完
全に除去した純度の高い合成DHFRタンパク質を得られることが分かった。また、280nmの
吸光度の値から、得られたDHFRタンパク質の濃度は約0.03μg/μlであることが判明した

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】発現、精製の結果得られた核酸分解酵素のSDSポリアクリルアミド電気泳動による解析の結果を示す図である。図中1のレーンは分子量マーカータンパク質を示し、それぞれのバンドの分子量を示している(単位:キロダルトン)。図中2は、精製して得られた核酸分解酵素を示す。
【図2】得られた標品の紫外部の吸収スペクトルを示す図である。図中縦軸は吸光度、横軸は波長(nm)をあらわす。曲線1(実線)、曲線2(点線)および曲線3(2点破線)はそれぞれ標品1、標品2、標品3のスペクトルを示す。図中挿入図は、標品3のスペクトルの拡大図を示す。
【図3】標品1、標品2、標品3のSDSポリアクリルアミド電気泳動による解析の結果を示す図である。図中レーン1、レーン2、レーン3はそれぞれ標品1、標品2、標品3を示す。レーンMは、分子量マーカータンパク質を示し、それぞれのバンドの分子量を左側に示している(単位:キロダルトン)。合成されたDHFRタンパク質のバンドの位置を右側の矢印で示している。
【配列表フリーテキスト】
【0032】
配列番号2〜15 合成

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で示されるアミノ酸配列のカルボキシ末端に2から10個のヒスチジンからなるポリヒスチジンが付加されたアミノ酸配列からなる核酸分解酵素。
【請求項2】
配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる、ポリヒスチジンが6個のヒスチジンからなる請求項1記載の核酸分解酵素。
【請求項3】
請求項1記載の核酸分解酵素をコードし、且つ安定に核酸分解酵素の発現を可能とする、DNA。
【請求項4】
配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる核酸分解酵素をコードし、且つ安定に核酸分解酵素の発現を可能とする、配列番号3で示される塩基配列からなるDNA。
【請求項5】
請求項1または2に記載の核酸分解酵素を利用して溶液中の核酸を分解し低分子化させ、分解反応途中もしくは終了後に、該核酸分解酵素を特異的に認識結合する不溶性担体を加えることにより、前記核酸分解酵素を溶液中から除去することを特徴とする、核酸分解反応の制御または終了方法。
【請求項6】
不溶性担体が、ニッケルキレートを含有することを特徴とする、請求項5記載の核酸分解反応の制御または終了方法。
【請求項7】
試験管内タンパク質合成反応において反応溶液中の核酸を分解し低分子化させる、請求項5または6に記載の核酸分解反応の制御または終了方法。
【請求項8】
試験管内タンパク質合成反応終了液に請求項1または2に記載の核酸分解酵素を加え、タンパク質合成反応溶液中に含まれる核酸を分解し低分子化した後に、分子サイズの違いにより低分子化した核酸を除去することを特徴とする、試験管内タンパク質合成反応溶液からの核酸の除去方法。
【請求項9】
試験管内タンパク質合成反応終了液に請求項1または2に記載の核酸分解酵素を加え、タンパク質合成反応溶液中に含まれる核酸を分解し低分子化し、分解反応途中もしくは終了後に、該核酸分解酵素を特異的に認識結合する不溶性担体を加えることにより、前記核酸分解酵素を溶液中から除去し、次いで分子サイズの違いにより低分子化した核酸を除去することを特徴とする、試験管内タンパク質合成反応溶液からの合成タンパク質を精製する方法。
【請求項10】
試験管内タンパク質合成反応を行わせる工程であって、試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターの一部または全部がポリヒスチジンを付加したものである工程、請求項1または2に記載の核酸分解酵素を添加し核酸を分解し低分子化する工程、前記核酸分解酵素を認識結合する不溶性担体を添加し、分画分子量10万〜50万の膜フィルターを用いて前記タンパク質ファクターおよび前記核酸分解酵素を除去する工程および分画分子量1000〜5000の膜フィルターを用いて低分子化核酸を除去する工程を含む、ハイスループットタンパク質合成方法。
【請求項11】
試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターが、開始因子、延長因子、終結因子、アミノアシルtRNAシンテターゼ、メチオニルtRNAトランスフォルミナーゼ、RNAポ
リメラーゼを含む転写・翻訳に必要なタンパク質ファクターを含む請求項10記載のハイスループットタンパク質合成方法。
【請求項12】
試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターがさらに、キナーゼ、無機ピロフォスファターゼを含むエネルギー再生に必要なタンパク質ファクターを含む請求項11記載のハイスループットタンパク質合成方法。
【請求項13】
請求項1または2に記載の核酸分解酵素およびポリヒスチジンを付加した試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターを含むハイスループットタンパク質合成キット。
【請求項14】
試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターが、開始因子、延長因子、終結因子、アミノアシルtRNAシンテターゼ、メチオニルtRNAトランスフォルミナーゼ、RNAポ
リメラーゼを含む転写・翻訳に必要なタンパク質ファクターを含む請求項13記載のハイスループットタンパク質合成キット。
【請求項15】
試験管内タンパク質合成に必要なタンパク質ファクターがさらに、キナーゼ、無機ピロフォスファターゼを含むエネルギー再生に必要なタンパク質ファクターを含む請求項14記載のハイスループットタンパク質合成キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−166779(P2006−166779A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363233(P2004−363233)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度経済産業省中小企業支援型研究開発制度「ハイスループット対応生体外タンパク質合成キットの開発」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】