説明

根菜収穫機

【課題】下部コンベア上で選別コンベア側に根菜の主根を横送りするときに、主根から引き千切られずに残った葉部が横送りローラ終端部にある横送りローラと搬送面との隙間を調節するストッパに噛み込んでしまい、詰まりを発生させていた。
【解決手段】引き抜き搬送装置(8)の後部下方に、平ベルト(72a)と斜めローラ(72b)より構成した葉部切断後の根菜の残葉処理装置(72)を配置した根菜収穫機において、前記斜めローラ(72b)の排出側と反対側に、平ベルト(72a)の高さ調節機構(75)を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、根菜類、特に人参を収穫する根菜収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大根や人参等を収穫する自走式根菜収穫機は公知となっており、クローラ式走行装置上部の左右一側に運転席を配置し、他側に進行方向と平行に引抜きコンベアを配置し、この引抜きコンベアの前部に鍬状のサブソイラーからなる掘起し装置を配置して、この掘起し装置を土中に挿入して、下方より根菜を掘り起こし、引抜きコンベアのベルトにて根菜の葉部分を両側より挟持して斜め上方に搬送しながら引抜き、搬送部後端にカッターを配置して、該カッターにより根菜の葉の根元部を切断し、下部コンベアに落下した根菜を、選別コンベアに受渡し、該選別コンベアにより選別後の根菜を収集物積載部(収穫物載せ台)にある収納容器に収納するように構成されている。また、上記下部コンベアにおいては、コンベア上に所定の隙間を設けて斜めに横送りローラを配設し、該横送りローラの回転と下部コンベアの搬送駆動によって、根菜が側部の選別コンベア上に落下するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−23826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
根菜の葉部を挟持しながら吊下げ姿勢でカッター部まで搬送し、根菜の葉部の根元を切断する構成では、引抜きベルトにて挟持されなかった根菜の葉部は、根部の外側に垂れ下がったままでカッターによる切断処理ができないため、下部コンベア上には葉部が完全に切断処理された根菜の根部に混じって、切り残した葉部付きの根菜の根部も落とされる。そして下部コンベア上で選別コンベア側に根菜の根部を横送りするとき、この横送りローラ(斜めローラ)と下部コンベアとの隙間に切り残した葉部が挟まり引き千切られることになり、主根のみ持ち上げコンベアへ搬送されるのであるが、主根から引き千切られずに残った葉部(葉茎)が横送りローラ終端部(選別コンベア受継ぎ部)にある横送りローラと搬送面との隙間を調節するストッパに噛み込んでしまい、詰まりが発生することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、引き抜き搬送装置の後部下方に、平ベルトと斜めローラより構成した葉部切断後の根菜の残葉処理装置を配置した根菜収穫機において、前記斜めローラの排出側と反対側に、平ベルトの高さ調節機構を配置したものである。
【0006】
請求項2においては、前記高さ調節機構は駆動ギヤケースに支持ステーを支持し、該支持ステーに高さ調節ボルトを螺装し、該調節ボルト下部にベルト受部材を配置したものである。
【0007】
請求項3においては、前記斜めローラの前部に落下緩衝部材を配置し、該落下緩衝部材を斜めローラの排出側と反対側に下がるように傾斜して配置したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、引き抜き搬送装置の後部下方に、平ベルトと斜めローラより構成した葉部切断後の根菜の残葉処理装置を配置した根菜収穫機において、前記斜めローラの排出側と反対側に、平ベルトの高さ調節機構を配置したことにより斜めローラと平ベルトの間隔を略一定に保つことができ、両者の摩擦による摩耗を防止することができる。またストッパを斜めローラの両側に設けると、茎葉がストッパに引っ掛かっていたが、この引っ掛かりをなくして詰まりを防止できる。
【0010】
請求項2においては、前記高さ調節機構は駆動ギヤケースに固定した支持ステーに支持され、該支持ステーに高さ調節ボルトを螺装し、該調節ボルト下部にベルト受部材を配置したことにより簡単な構成で支持することができ、剛性もアップできる。
【0011】
請求項3においては、前記斜めローラの前部に落下緩衝部材を配置し、該落下緩衝部材を斜めローラの排出側と反対側に下がるように傾斜して配置したことにより落下した根菜は斜めローラの排出側と反対側にガイドされて、高さ調節機構側の斜めローラに当接して排出され、隙間が正確な側で残葉が処理される。
また、根菜は落下緩衝部材の傾斜により左に寄って落ちるため、その後部に配置した斜めローラでは、左始端側から右終端に移動して排出され、斜めローラの全幅を有効に利用して残葉の処理ができる。
また、落下緩衝部材上に落ちた人参は側方に跳ねて移動するため、その次に落下してくる根菜は、先に落下した根菜と衝突することはなく、根菜同士が当接して傷付くことを防止できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1から図4によって、本発明に係る根菜収穫機の全体的な構成から説明する。
図1は人参収穫用として構成された根菜収穫機の全体側面図、図2は同じく平面概略図、図3は同じく正面概略図、図4は根菜収穫機全体の伝動系統図、図5はベルト受部材の配置構成を示す平面図、図6は残葉処理装置の側面図、図7はベルト受部材を示す側面図、図8は落下緩衝部材を示す平面図、図9は同じく後面図、図10は同じく側面図、図11はシュータシタを示す平面図、図12は同じく後面図、図13は同じく側面図である。
【0013】
図1から図4において、自走式根菜収穫機は、左右のクローラ(1a)(1b)を備える自走の車体(A)に、抜き上げ作業部(B)と選別コンベア部(C)及び収穫物載せ台(D)を装設して構成され、自走車は、左右のクローラ(1a)(1b)の各々の駆動輪(2)(2)に動力伝達するトランスミッション(3)を、搭乗運転部(4)の機械室(5)内に搭載したエンジン(6)の出力軸に連動連結し、エンジン(6)の動力でもって、左右のクローラ(1a)(1b)を回転駆動して走行し、運転操作を搭乗運転部(4)において行う乗用型に構成されている。
【0014】
そして、搭乗運転部(4)が、一方のクローラ(1b)側の車体前部上方に配設されると共に、その搭乗運転部(4)の横側部、つまり、他方のクローラ(1a)側に前後向きの抜き上げ作業部(B)が設けられ、さらに、その抜き上げ作業部(B)の終端部下方の後部車体上に、抜き上げ作業部(B)と平行に残葉処理装置(72)と、抜き上げ作業部(B)とは直交する車幅方向に向け、残葉処理装置(72)の後部下方から右上がりに昇降可能に傾斜して配設される持ち上げコンベア(73)よりなる選別コンベア部(C)が配設され、選別コンベア部(C)の移送終端側、即ち、搭乗運転部(4)を挟んで、前記抜き上げ作業部(B)とは反対側の車体横外側方に収穫物載せ台(D)が配設される。また、前記搭乗運転部(4)と選別コンベア部(C)の間には選別作業を行う補助者が座る補助作業者用座席(50)が設けられている。
【0015】
また、抜き上げ作業部(B)は、同作業部(B)の進行方向前端部に位置する茎葉分捌整姿装置(7)と、その茎葉分捌整姿装置(7)の後背下部から車体の後部上方に掛けて、前低後高に傾設される抜き上げ移送装置(引き抜き搬送装置)(8)と、抜き上げ移送装置(8)の挟持移送路(8a)(図3図示)の始端部付近に位置するチゼル(9)と、抜き上げ移送装置(8)の移送終端部付近に連係させて設置される葉茎切断装置(11)及び排葉装置(12)等によって構成されており、これらの諸装置からなる抜き上げ作業部(B)の全体が後述する回動支点部(19)を支点にして、シーソー状に上下回動するように成されている。なお、抜き上げ作業部(B)には、その抜き上げ移送装置(8)の移送中途部下方に根切断装置(10)を装設している。
【0016】
抜き上げ作業部(B)の茎葉分捌整姿装置(7)は、左右のケーシング(13)から水平横向きに突出する横回しタイン(14)を備えた茎葉掻き込み機構(15)と、左右一側のケーシング(13)の外側前部位に直交状に併設するケーシング(16)の前上面から突出して後上方に移行する縦回しタイン(17)を備えた分葉機構(18)とで構成されて、抜き上げ圏内の根菜野菜茎と、抜き上げ圏外の根菜の葉茎とを分葉機構(18)で分け捌き、分け捌かれた抜き上げ圏内の根菜の葉茎を茎葉掻き込み機構(15)で持って抜き上げ移送装置(8)の挟持移送路(8a)の始端部に掻き込むように構成されている。
【0017】
抜き上げ移送装置(8)は、水平横向きの回動支点部(19)を中心にして上下回動可能なブラケット(20)に保持された支持フレーム(21)の前端部に装着する左右一対の始端側輪体(22)(22)と、支持フレーム(21)の後端部に配設する左右一対の終端側輪体(23)(23)と、始端側および終端側輪体(22)(23)間の支持フレーム(21)に配設する複数の中間輪体(24)群とに、左右の挟持搬送無端帯(25)(25)を各々掛回して、これらの両無端帯(25)(25)の対向面間に前記挟持移送路(8a)を形成し、該挟持移送路(8a)が、他方(左方)のクローラ(1a)の外縁より外側において、平面視で車体(A)の進行方向と平行状となるように位置するものとなっている。(図3に図示)また、各々の挟持搬送無端帯(25)は、Vプーリ構造の始端側輪体(22)等に掛回するVベルトの外周に軟弾性材からなる挟持帯部間に、根菜の茎葉を挟持するように構成されている。
【0018】
さらに、チゼル(9)は、上下の枢軸(26)(27)を中心にして上下回動する上リンク(28)と下リンク(29)とからなる平行リンク機構の前端に連結した縦支持杆(30)の下端に取付けられ、縦支持杆(30)から垂下する縦刃の下端から横側方に横刃を屈曲形成して構成される。
【0019】
そして、図1及び図2に見られるように、上方の枢軸(26)に嵌着したプーリ(31)と前記エンジン(6)の出力軸に設けた出力プーリ(32)とにベルトを掛回するとともに、枢軸(26)に嵌着する偏心ボス(図示省略)に上リンク(28)の基端を連結して、偏心ボスの回転により上リンク(28)を揺動させて、根菜の地中部(主根)の適宜下方の土中に横刃が進入位置したチゼル(9)を、上下及び前後又は、上下或いは前後に振動させるように構成され、また、下リンク(29)の基端と車体(A)との間に伸縮シリンダ(33)が介装され、該伸縮シリンダ(33)の伸縮作動によって上下リンク(28)(29)を昇降作動させるように構成されている。
【0020】
また、図1と図2及び図4に示す如く、前記回動支点軸(19)を同芯に設けた、横向き伝動筒(34)の外端部から、前上方にパイプフレーム(35)を連設し、該パイプフレーム(35)の先端から車体内方(右方)向きに、茎葉分捌整姿装置(7)の茎葉掻き込み機構(15)に動力伝達する伝動パイプ(36)を連結すると共に、そのパイプフレーム(35)の外端から前方に延びる伝動ケース(37)と、それに連接する横ケース(38)を介して、茎葉分捌整姿装置(7)の分葉機構(18)を連設している。
【0021】
そして上側の枢軸(26)に嵌着するプーリ(39)と、前記回動支点軸(19)の内方端(右端)に嵌着したプーリ(40)にベルトを掛回して、前記枢軸(26)から回動支点部(19)に動力伝達し、さらに、回動支点部(19)からパイプフレーム(35)、伝動パイプ(36)、伝動ケース(37)及び横ケース(38)内の伝動機構を介して、茎葉掻き込み機構(15)及び分葉機構(18)に伝動して、それぞれを回転駆動するように構成されている。
【0022】
又、前記回動支点軸(19)の外端部(左端部)に嵌着したプ−リ(41)からベルト(42)を介して後部伝動ケ−ス(43)に動力伝達し、抜き上げ移送装置(8)における左右一対の終端側輪体(23)(23)の支軸に伝動して、抜き上げ移送装置(8)の挟持搬送無端帯(25)(25)をそれぞれ所期の方向に回転駆動するとともに、抜き上げ移送装置(8)の挟持搬送無端帯(25)(25)によって挟持搬送される根菜の葉茎を受け継ぎ挟持して水平後方に搬送する排葉装置(12)と、根菜が排葉装置(12)によって移送されている間にその葉茎を切断する葉茎切断装置(11)とに動力伝達して両装置(12)(11)をも駆動するように構成される。
【0023】
なお、排葉装置(12)は上下に併設する挟持移送無端帯機構(44a)(44b)からなり、各々の挟持移送無端帯機構(44a)(44b)の挟持搬送路始端部を挟持移送路(8a)の終端後背部に近接位置させ、さらに、下方の挟持移送無端帯機構(44b)の前部下側から挟持移送路(8a)の後背面に臨ませて左右一対の案内杆(45)を前延させて、抜き上げ移送装置(8)により吊持移送される根菜の主根の上端を左右一対の案内杆(45)で規制しながら誘導し、根菜の主根より上方の葉茎を挟持移送無端帯機構(44a)(44b)の挟持搬送路始端部に的確に受け継がせるように構成され、又、挟持移送無端帯機構(44a)(44b)の挟持搬送路終端部には、葉茎切断装置(11)によって切断された根菜の葉茎を、根菜抜き取り後の圃場に落流させる排葉ガイド板(46)が連設されている。該上方の挟持移送無端帯機構(44a)(44b)は弾性無端帯により構成したベルトにより構成している。
【0024】
また、葉茎切断装置(11)は、駆動ケース(47)から上方に突出する左右の回転縦軸(48)(48)と回転刃(49)(49)によりディスク刃に構成されている。該葉茎切断装置(11)を前記上方の挟持移送無帯体機構(44a)(44a)と左右の挟持移送無端帯機構(44b)(44b)の下側に近接させて、更に、肩揃え無端帯66の後端に近づけて配置し、該両回転刃(49)(49)の重合部分に切断作用部を形成し、この切断作用部によって、根菜の主根の上端付近から上方の葉茎を切断するように構成されている。
【0025】
さらに、選別コンベア部(C)の残葉処理装置(72)は抜き上げ移送装置(8)の後部下方における葉茎切断装置(11)の下方に、前後方向に平ベルト(72a)が配置される。該平ベルト(72a)は前後平行に軸心が左右方向に配置されたローラが配置され、該ローラ間に平ベルト(72a)が巻回されて、該平ベルト(72a)上に葉茎切断後の根菜の主根が落下するように配置している。この落下位置には、後述する落下緩衝部材(81)が設けられ、その後部上に斜めローラ(72b)が配置され、該斜めローラ(72b)は平ベルト(72a)上面と所定の隙間をあけて配置され、左前から右後方に斜めに配置される。また、斜めローラ(72b)始端部には、前記隙間を調節する高さ調節機構(75)が配置されている。そして、平ベルト(72a)と斜めローラ(72b)を回転駆動することにより、落下した主根を後方へ搬送し、斜めローラ(72b)により持ち上げコンベア(73)の左下部の始端側に落下するように案内している。このとき、前記葉茎切断装置(11)により全て切断できない葉茎が主根に残っている場合があり、この未処理葉茎は後方への搬送途中で平ベルト(72a)と斜めローラ(72b)の間に挟まり引き千切られることになり、主根のみ持ち上げコンベア(73)へ搬送されるのである。残葉処理装置(72)で処理された葉茎は、平ベルト(72a)終端部からシュータシタ(90)を経て圃場に落流される。
前記持ち上げコンベア(73)は、残葉処理装置(72)の後部から右側方に落下する根菜の主根を受け止めて、抜き上げ作業部(B)の反対側(進行方向右側)の車体側部に配置した収穫物載せ台(D)上のコンテナまたは収納袋(フレコンバッグ)等の収納体に向けて搬送するもので、持ち上げコンベア(73)は、左右両端のローラ間に平ベルトを巻回し、該平ベルトの外周には平板状のスラット(79)を所定間隔ごとに前後方向に立設し、前出のトランスミッション(3)のPTO軸(51)から伝動機構(52)を経て入力部(53)に伝達される動力でもって平ベルトを斜め上方向に回転駆動されるように構成されている。そして、根菜の主根群がスラットとスラットの間に落下して、コンベアの移送終端部に向けて移送される間に、その主根群のうちの不良なものを人為的に選別して取り除き、コンベアの移送終端部に達した主根の良品のみを収穫物載せ台(D)上に吊り下げた収納袋(54)に収容するようになっている。
【0026】
なお、収穫物載せ台(D)は、抜き上げ作業部(B)とは左右反対側の車体横側部に起立回倒自在にヒンジ装着される台板によって構成され、作業時には、台板を車体横側方に張り出す水平姿勢に維持して、水平姿勢の台板上に収納袋(54)を載置するように構成されている。
【0027】
また、茎葉掻き込み機構(15)および分葉機構(18)からなる茎葉分捌整姿装置(7)は、回動支点軸(19)を中心にして上下回動する抜き上げ移送装置(8)と一体的に上下回動するように枠組支持され、その一体的に上下回動する枠組体から前向きに突出する支持杆(55)の前端に装着した接地輪(56)によって、対地支持されている。
【0028】
前出の伸縮シリンダ(33)を伸長作動させて、平行リンク機構を上昇回動させると、前記平行リンク機構の下リンク(29)の側面に設けた、押し上げ用の回転ローラ(57)が、茎葉掻き込み機構(15)の支持フレームの下面側に設けた側面視『ヘ』字状のガイドレール(58)の下面に沿って移動し、単一の伸縮シリンダ(33)の伸長動でもって、チゼル(9)と共に茎葉分捌整姿装置(7)及び抜き上げ移送装置(8)の下端が地面から大きく上昇するようになっている。
【0029】
以上のような根菜収穫機によって作業する際は、伸縮シリンダ(33)の作動により抜き上げ作業部(B)の前部を作業姿勢に降下させ、その抜き上げ作業部(B)の茎葉掻き込み機構(15)の掻き込み作用路及び抜き上げ移送装置(8)の挟持移送路(8a)の始端部が、圃場に条列する根菜に合致するように条合わせして、抜き上げ作業部(B)の各部を作動させながら車体(A)を前進させる。
【0030】
すると、分葉機構(18)の縦回しタイン(17)が抜き上げ圏内の根菜の葉茎と抜き上げ圏外の根菜の葉茎とを分け捌き、分け捌かれた抜き上げ圏内の根菜の葉茎を、茎葉掻き込み機構(15)の横回しタイン(14)が引起し整姿しながら抜き上げ移送装置(8)の挟持移送路(8a)の始端部に掻き込み誘導する。
【0031】
そして、抜き上げ移送装置(8)の挟持移送路(8a)に達した根菜の葉茎が挟持移送路(8a)に挟持されて斜め後上方に揚上されることにより、根菜の主根が土中から抜き上げられるのであるが、その際には、抜き上げ作業部(B)の対地降下によって、根菜の主根の適宜下方位置にまで突入するチゼル(9)が振動し、土中を掘削して土壌を膨軟にするから根菜の主根は軽微な力で抜き上げられる。
【0032】
抜き上げ移送装置(8)の挟持移送路(8a)に葉茎を挟持され吊持状態で斜め後上方に揚上移送される途中で、根菜の主根の先端の細い根、所謂、尻尾が根切断装置(10)により切断される。そして更に後上方へ搬送されると、根菜の主根の上端は、案内杆(45)の下面側により拘束されて略水平後方に移行し、それより上方の葉茎は排葉装置(12)の挟持移送無端帯機構(44a)(44b)により挟持されて後送され、その途上に、葉茎切断装置(11)の回転刃(49)(49)の切断作用部で切断され、切断された葉茎は挟持移送無端帯機構の後終端部から排葉ガイド板(46)を経て圃場に落流される。また、葉茎の切断によって吊持を解かれた根菜の主根は、選別コンベア部(C)の残葉処理装置(72)に落ちて後方へ搬送され、後部の斜めローラ(72b)により残葉が処理されて側方へ搬送され、持ち上げコンベア(73)の始端側に落下させる。該持ち上げコンベア(73)上に落下した主根は右斜め上方へ搬送され、この搬送途中において、コンベア上で選別作用を受けて、選別後の良品が収納袋(54)に収容される。
【0033】
ところで、上述した一連の作業を行うに当たって、抜き上げ作業部(B)が作業体勢で降下されると抜き上げ移送装置(8)の前部は地面に至近に位置し、又、過剰な降下状態になれば、抜き上げ移送装置(8)の前部が地面に接触或いは地中に突っ込むようなこととなり、このような体勢のもとで、左右の挟持搬送無端帯(25)(25)が回動移行するゆえに、その回動移行によって泥土や小石等が抜き上げ移送装置(8)の始端部に巻き込まれて、始端側輪体(22)(22)の上面やVプーリ溝に付着体積し、左右の挟持搬送無端帯(25)(25)を損傷させたり、脱輪させたりすることなり易いので、このような不具合を回避する手段を、抜き上げ移送装置(8)の前部に施している。図4において、根切断装置(10)の駆動機構が図示されている。横向き伝動筒(34)から突出した回動支点部(19)の軸の上にプーリ(87)を固定し、該プーリ(87)からベルト(88)を介して、ベベルギア軸(74)に上のプーリ(86)動力伝達し、該ベベルギア軸(74)から根切断装置(10)のディスク切断刃を回転駆動すべく構成している。
【0034】
次に、本発明の特徴である選別コンベア部(C)の残葉処理装置(72)について説明する。
図5はベルト受部材の配置構成を示す平面図、図6は残葉処理装置の側面図、図7はベルト受部材を示す側面図、図8は落下緩衝部材を示す平面図、図9は同じく後面図、図10は同じく側面図、図11はシュータシタを示す平面図、図12は同じく後面図、図13は同じく側面図である。
【0035】
残葉処理装置(72)は、上述したように抜き上げ移送装置(8)の後部下方における葉茎切断装置(11)の下方に、前後方向に平ベルト(72a)が配置される。該平ベルト(72a)は前後平行に軸心が左右方向に配置されたローラが配置され、該ローラ間に平ベルト(72a)が巻回されて、該平ベルト(72a)上に葉茎切断後の根菜の主根が落下するように配置している。この落下位置には、後述する落下緩衝部材(81)が設けられ、その後部上に斜めローラ(72b)が配置され、該斜めローラ(72b)は平ベルト(72a)上面である搬送面と所定の隙間をあけて配置され、左前から右後方に斜めに配置されるように構成されている。
【0036】
また、残葉処理装置(72)は機体前後方向に平行な左右一対のコンベアフレーム(71)(71)が両側に設けられ、該コンベアフレーム(71)(71)の前後両側に前記ローラが配置され、該コンベアフレーム(71)(71)の前後中途部の内側に取り付けブラケット(76)(76)が斜めローラ(72b)の前下方に固定されている。該取り付けブラケット(76)(76)間に枢支軸(78)が斜めローラ(72b)と平行に横架され、該枢支軸(78)にベルト受部材(80)が斜めローラ(72b)の下側で、かつ平行に配置されるように、両側が回動自在に枢支されている。該ベルト受部材(80)は開放部を下向きに設けた断面視「コ」字状のフレームからなり、前記残葉処理装置(72)の内部、つまり、平ベルト(72a)の上下の搬送部と非搬送部の間で左右の前記コンベアフレーム(71)の間に斜めに配置されている。即ち、ベルト受部材(80)は搬送面の下方より前記斜めローラ(72b)側に押し当てる押圧部材として配設されている。
【0037】
また、前記ベルト受部材(80)の両端間の枢支軸(78)上に直角に一体固定したバネ取付けブラケット(101)と、左コンベアフレーム(71)に取付けたブラケット(103)にアジャストナット(104)を介して枢支軸(78)と直角方向に出入れ自在に取付けるアジャストボルト(105)との間にバネ力調節自在にバネ(100)を張設し、枢支軸(78)と一体にベルト受部材(80)を枢支軸(78)回りで常時上向きに回動付勢し、枢支軸(78)と平行なベルト受部材(80)を平ベルト(72a)の搬送面の下面(裏側)から弾力的に押し当て、前記平ベルト(72a)の搬送面の上面(表面)を前記ローラ(72b)に押し当てるように構成している。
【0038】
そして、搬送上流側のベルト受部材(80)に高さ調節機構(75)が連結されている。つまり、高さ調節機構(75)は持ち上げコンベア(73)と左右反対側の残葉処理装置(72)側部に配設されている。
該高さ調節機構(75)は、高さ調節ボルト(75a)とアーム(75b)からなり、該アーム(75b)は平面視「へ」字状に構成されて、一端(右側)が前記ベルト受部材(80)の後端部に取り付けられている。また、アーム(75b)の他端(左側)は、略水平な板状部(75d)を形成している。前記高さ調節ボルト(75a)の上部は支持ステー(70)に固設したナット(75c)に螺装され、高さ調節ボルト(75a)の下部は先端部が丸みを帯びた形状である押さえ部(102)を設けている。このような構成において、前記バネ(100)により常時上向きに回動付勢されているベルト受部材(80)に一体固定されているアーム(75b)の板状部(75d)が、前記押さえ部(102)と常時当接し、該高さ調節ボルト(75a)を回動することにより、押さえ部(102)がアーム(75b)の板状部(75d)の上昇高さを規制することで、ベルト受部材(80)を上下に回動させて、所定の位置に固定できるようにしている。つまり前記押さえ部(102)がベルト受部材(80)の上昇回動のストッパとして作用し、前記平ベルト(72a)の搬送面の高さ調整を可能としているのである。
【0039】
前記支持ステー(70)の一端(左側)はブラケット(77)を介してコンベアフレーム(71)の外側に固定されると同時に、該ブラケット(77)はステー(84)を介して駆動ギヤケース(85)に固定されている。この一側のコンベアフレーム(71)の外側部で高さ調節ボルト(75a)を螺装している。前記支持ステー(70)の他端(右側)は支持プレート(83)の前後中途部に固定され、該支持プレート(83)の前部は斜めローラ(72b)の右側を回転自在に支持し、後部は後側の駆動ローラの支持部まで延設されて、ブラケットを介して右側のコンベアフレーム(71)の外側面に固定されている。
このようにして、支持ステー(70)は残葉処理装置(72)の平ベルト(72a)上方で横架され、搬送下流側の右側の支持ステー(70)と斜めローラ(72b)は支持プレート(83)により平ベルト(72a)から浮いた状態で支持され、持ち上げコンベア(73)側への排出時に残葉等が引っ掛からないようにしている。
また、支持ステー(70)の左側(搬送上流側)にベルト受部材(80)の高さ調節機構(75)が配置されるとともに、ブラケット(77)を介して斜めローラ(72b)の駆動ギヤケース(85)とコンベアフレーム(71)に固定され、高さ調節機構(75)側の剛性が高くなるようにし、ベルト受部材(80)の後部が高さ調節機構(75)により常時規制されるように配設されている。
【0040】
このような構成において、平ベルト(72a)と斜めローラ(72b)を回転駆動することにより、落下した主根を後方へ搬送し、斜めローラ(72b)により持ち上げコンベア(73)の左下部の始端側に落下するように案内している。このとき、前記葉茎切断装置(11)により全て切断できない葉茎が主根に残っている場合があり、この未処理葉茎は後方への搬送途中で平ベルト(72a)と斜めローラ(72b)の間に挟まり引き千切られることなり、主根のみ持ち上げコンベア(73)へ搬送されるのである。本発明においては、斜めローラ(72b)始端部(上流側端部)に高さ調節機構(75)を設けており、高さ調節ボルト(75a)を回動することでベルト受部材(80)の上下方向の調整を行い、適宜平ベルト(72a)搬送面と斜めローラ(72b)との隙間幅を調整可能としており、隙間を略一定の間隔に保つことが可能となっている。そのため、両者の摩耗も極力少なくできる。また斜めローラ(72b)終端部には障害物となる高さ調節ボルト等(ストッパ)がなく主根から引き千切られずに残った茎葉の引っかかり等による滞留がなくスムーズに持ち上げコンベア(73)へと流れることとなり、引き千切られた葉部は後部へ送り排出するのである。
つまり、本発明により排出側となる斜めローラ(72b)終端部ではなく、その反対側の斜めローラ(72b)始端部に平ベルト(72a)搬送面と斜めローラ(72b)との隙間調整するためのベルト受部材(80)の高さ調整機構(75)を設けたことで、茎葉の引っ掛かりを防ぎスムーズに主根を持ち上げコンベア(73)に搬送することができる。また、作業者が引っかかった茎葉を手で取り除くことも無くなくなるため残葉処理装置(72)の取り扱い上の安全性が増すのである。
【0041】
すなわち、引き抜き搬送装置(8)の後部下方に、平ベルト(72a)と斜めローラ(72b)より構成した葉部切断後の根菜の残葉処理装置(72)を配置した根菜収穫機において、前記斜めローラ(72b)の排出側と反対側に、平ベルト(72a)の高さ調節機構(75)を配置したことにより斜めローラ(72b)と平ベルト(72a)の間隔を略一定に保つことができ、両者の摩擦による摩耗を防止することができる。また高さ調節機構(75)であるストッパを斜めローラ(72b)の両側に設けると、茎葉がストッパに引っ掛かっていたが、この引っ掛かりをなくして詰まりを防止できる。
【0042】
また、前記高さ調節機構(75)は駆動ギヤケース(85)よりステー(84)、ブラケット(77)を介して支持ステー(70)を支持し、該支持ステー(70)に高さ調節ボルト(75a)を螺装し、該調節ボルト(75a)下部にベルト受部材(80)を配置したことにより簡単な構成で支持することができる。また、剛性もアップできる。
【0043】
また、残葉処理装置(72)は、図8から図10に示すように斜めローラ(72b)の前部において葉茎切断装置(11)の下方となる部分に落下緩衝部材(81)を設けている。該落下緩衝部材(81)は右側のコンベアフレーム(71)に固定支持しており、斜めローラ(72b)の排出側と反対側(左側)に下がるように傾斜して配置する板状心材(81b)と、該板状心材(81b)の上側に適当な隙間を設けて略平行に配置し、上端部を前側に逆U字形に折り曲げ、かつ、下端部を前側にU字形に折り曲げ、上下端部を板状心材(81b)に固着するゴム板(81a)からなり、機体左方に向く斜面をゴム板(81a)にて弾性変形可能な緩衝斜面に形成した中空の落下緩衝部材(81)を形成している。但し、落下緩衝部材(81)の構成は上記構成に限定するものではなく、落下時の衝撃を吸収できる部材であればよく、発泡部材やスポンジ等で構成することも可能である。
また、図9、図10に示すように残葉処理装置(72)の左側面より上方に平ベルト(72a)搬送面に対して略垂直状態で緩衝壁(82)を設けている。
【0044】
このような構成において、葉茎切断装置(11)で葉茎の切断によって吊持を解かれた根菜の主根は残葉処理装置(72)の前部上方に配置した落下緩衝部材(81)上に落下する。このとき、緩衝斜面にて受け止められ、ゴム板(81a)製の緩衝斜面を凹み変形(弾性変形)させることにより落下による衝撃をやわらげて残葉処理装置(72)の左側へと落ちるように主根をガイドする。このとき、勢い良く落下して左側へ跳ねても緩衝壁(82)で主根を受け止めて、こぼれないようにし、斜めローラ(72b)始端部側へ流れるようにしている。このようにしたことで、落下してくる根菜の主根は左側方へ跳ねることから、次々に落下してくる主根と当接して傷めることがなく、また、主根は茎葉部側が太くて重く、後方へ搬送されながら茎葉部が切断されるため、落下時に茎葉部側が後方を向いて落下し、図8に示すように、茎葉部側が後方を向いて左側に寄って順序良く後方へ搬送され、斜めローラ(72b)の排出側の反対側となる斜めローラ(72b)始端部から順序良く搬送することが可能となり、残葉が搬送面と斜めローラ(72b)との隙間にうまく導かれ正確かつ効率よく残葉処理を可能とし、斜めローラ(72b)の左側(始端)から右側(終端)に渡り搬送されて残葉処理ができ、残葉処理性能を向上させている。
【0045】
すなわち、前記斜めローラ(72b)の前部に落下緩衝部材(81)を配置し、該落下緩衝部材(81)を斜めローラ(72b)の排出側と反対側に下がるように傾斜して配置したことにより落下した根菜は斜めローラ(72b)の排出側と反対側にガイドされて、高さ調節機構(75)側の斜めローラ(72b)に当接して排出され、隙間が正確な側で残葉が処理される。
また、根菜は落下緩衝部材(81)の傾斜により左に寄って落ちるため、その後部に配置した斜めローラ(72b)では、左始端側から右終端に移動して排出され、斜めローラ(72b)の全幅を有効に利用して残葉の処理ができる。
また、落下緩衝部材(81)上に落ちた人参は側方に跳ねて移動するため、その次に落下してくる根菜は、先に落下した根菜と衝突することはなく、根菜同士が当接して傷付くことを防止できるのである。
【0046】
また、残葉処理装置(72)の後端部には、図11から図13に示すような斜めローラ(72b)で引き千切られた茎葉等を圃場へ排出するためのシュータシタ(90)を機体後端部に設けている。該シュータシタ(90)は、平面視略四角形の板材であり使用時は図12に示すように右下方に傾斜して固定部材(90c)に引っ掛けて固定して配置され、残葉を右下方へ落下させるようにしている。シュータシタ(90)の左端部には機体前後方向と平行に支持ステー(90a)が固着されており、該支持ステー(90a)は前後方向の支点軸(90b)に枢支されており、上下方向に回動可能としている。また前後方向の支点軸(90b)の前端は左右方向の支点軸(90d)に枢支され、上下に回動可能としている。
【0047】
このように構成したことで、使用時はシュータシタ(90)を放出搬送面を右下方に傾けて車体(A)後端部に設けた固定部材(90c)に引っ掛けて配置する。使用後に収納する場合には、固定部材(90c)から外して支点軸(90b)を中心に放出搬送面が水平状態となるように上方に回動し、続けて支点軸(90d)を中心にシュータシタ(90)後端部を上に持ち上げて略垂直状態になるように畳み、この状態で固定することで収納状態とする。このように構成することで機体の前後長を短くしてコンパクト化を可能とし、使用するたびに着け外しを行う必要があった従来のシュータシタと比べて手間が省ける。
なお、本実施例ではシュータシタ(90)を略垂直状態に折りたたんだ際に開放防止のためのロック機構として止め具等を用いて固定できるように構成している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】人参収穫用として構成された根菜収穫機の全体側面図。
【図2】同じく平面概略図。
【図3】同じく正面概略図。
【図4】根菜収穫機全体の伝動系統図。
【図5】ベルト受部材の配置構成を示す平面図。
【図6】残葉処理装置の側面図。
【図7】ベルト受部材を示す側面図。
【図8】落下緩衝部材を示す平面図。
【図9】同じく後面図。
【図10】同じく側面図。
【図11】シュータシタを示す平面図。
【図12】同じく後面図。
【図13】同じく側面図。
【符号の説明】
【0049】
A 車体
8 引き抜き搬送装置
70 支持ステー
72 残葉処理装置
72a 平ベルト
72b 斜めローラ
75 高さ調節機構
75a 高さ調節ボルト
80 ベルト受部材
81 落下緩衝部材
85 駆動ギヤケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き抜き搬送装置の後部下方に、平ベルトと斜めローラより構成した葉部切断後の根菜の残葉処理装置を配置した根菜収穫機において、前記斜めローラの排出側と反対側に、平ベルトの高さ調節機構を配置したことを特徴とする根菜収穫機。
【請求項2】
前記高さ調節機構は駆動ギヤケースに支持ステーを支持し、該支持ステーに高さ調節ボルトを螺装し、該調節ボルト下部にベルト受部材を配置したことを特徴とする根菜収穫機。
【請求項3】
前記斜めローラの前部に落下緩衝部材を配置し、該落下緩衝部材を斜めローラの排出側と反対側に下がるように傾斜して配置したことを特徴とする根菜収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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