説明

根菜類の収穫機

【課題】 傾斜した圃場での収穫作業であっても圃場に敷設した黒色フィルムを破損することなく被収穫物を収穫できる根菜類の収穫機を提供すること。
【解決手段】 収穫機1は、進行方向の一側部に大根を圃場から抜き取る抜取り搬送機構100と、大根の茎葉を直立させる茎葉掻起し機構200とを備えている。抜取り搬送機構は、無端帯に形成した搬送ベルトを平面視でベルトが同一平面上を回動するように回転軸を並列させて一対で設けたものである。茎葉掻起し機構は、抜取り搬送機構の先端部に設けられており、無端帯に形成し複数の掻起し爪を設けた第1の掻起しベルト210と第2の掻起しベルト230を有している。第2の掻起しベルトは、第1の掻起しベルトの前面に第1の掻起しベルトの回転方向に対し直交する方向に設けられている。これらの掻起しベルト210,230は単独又は連動して上下方向に移動可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、根菜類の収穫機に関するものであり、さらに詳しくは、主として大根を収穫するための収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された収穫機をはじめ、従来公知の大根収穫機は、茎葉部分を挟持して大根を圃場から引き抜くとともに茎葉を切断して集荷コンベアに大根を受け渡す引抜き搬送機構(特許文献1に記載の引き抜き搬送装置3,引き抜き処理部8,茎葉処理部9)と、該引抜き搬送機構の前方に設置される茎葉掻起し機構(特許文献1に記載の前処理装置10,縦回し式引起し機構22,横回し式引起し機構24)とを設けたものが知られている。
【0003】
大根収穫機が茎葉掻起し機構を備えているのは、朝方は直立していた茎葉が日中になって日差しが強くなり収穫直前になって横方向に広がった状態になってしまうので、引抜き搬送機構が茎葉の基端部を挟持し難くなるからであり、横方向に広がった茎葉を垂直方向に掻き起して引抜き搬送機構が茎葉を挟持し易いようにするためである。
【0004】
ところで、作付けされた大根列が前後方向に数十メートルも続いている圃場は、圃場自体が傾斜していることが多く、このような圃場で収穫機を運転して大根を収穫するには、茎葉掻起し機構が、収穫作業中、常に茎葉の基端部と対峙した位置に設定されていることが望ましい。
【0005】
茎葉掻起し機構は、作業を開始する直前に適切な位置に設定するが、作業途中で収穫機が傾斜地に達し圃場表面からの距離が設定時と異なってくると、圃場に敷設された黒色フィルム(所謂マルチフィルムと称される黒色のフィルム)を茎葉とともに掻き起してしまうことがある。黒色フィルムは、収穫作業が終れば廃棄するものであるから、掻起し機構によって掻き起されてもよいのであるが、黒色フィルムが、掻起し機構によって掻き起され、引抜き搬送機構に絡み付いてしまうと、その後の収穫作業に支障をきたすので、絡みついたフィルムを除去しなくてはならない。しかも、黒色フィルムの除去作業中は収穫作業を中断せざるを得ないので、収穫作業中は引抜き搬送機構等にフィルムが絡み付かないように配慮すべきである。
【0006】
特許文献1に記載の収穫機は、前処理装置10を構成する縦回し引起し機構22(本発明の第2の掻起しベルト230,240に相当)と横回し引起し機構24(本発明の第1の掻起しベルト210,220に相当)が一対で設けられているとともに、これら両機構の位置を上下方向に調整するためのハンドル手段25を備えている(明細書段落番号0022)。しかし特許文献1に記載の装置は、上記ハンドル手段25の操作により縦回し式及び横回し式引起し機構22,24が一体的に上下調整されるだけであり、傾斜した圃場に対応することができないものであった。このため、当該装置は作業途中で傾斜地に達した場合、傾斜方向に対応して茎葉を掻き起こして収穫作業を継続することが容易でなく、収穫作業中に圃場に敷設した黒色フィルムを大根と一緒に掻き起こしてしまうといった問題があった。
【0007】
また、従来知られた引抜き搬送機構は、先端の自由端が上下方向に回動可能になっているが、引抜き搬送機構の基端部近傍に茎葉切断機構が設けられているので、圃場から引抜かれた大根は、引抜き搬送機構が備える搬送ベルトに挟持されて搬送される途中で茎葉部分が切断され、当該抜き搬送機構の直下に設けられた集荷コンベアに受け渡すようになっている。従来技術では、引抜き搬送機構が支点軸を中心に回動自在であるから、引抜き搬送機構の作業姿勢を上下方向に調整した時に、引抜き搬送機構の終端位置と集荷コンベアの高さが変わってしまい集荷コンベアの中心位置に大根を受け渡せなないことがあった。集荷コンベアから脱落した大根は損傷して商品価値を失ってしまうことがある。
【0008】
従来公知の大根収穫作業機は、引抜き搬送機構が、基端部を支点軸によって回動自在に取付けられているので、茎葉を切断した大根を集荷コンベアに受け渡す高さが、当該引抜き搬送機構の高さ調整によって変ってしまうものであったから、大根を集荷コンベアの中心部に受け渡すことができないといった問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開平11−243741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、傾斜した圃場での収穫作業であっても圃場に敷設した黒色フィルムを破損することなく被収穫物を収穫できる根菜類の収穫機を提供することである。
【0011】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、被収穫物を集荷コンベアに対し確実に受け渡すことができる根菜類の収穫機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
解決手段の第1は、収穫機がクローラを有する自走車であって、進行方向の一側部に大根を圃場から抜き取る抜取り搬送機構と、大根の茎葉を直立させる茎葉掻起し機構を備えており、上記抜取り搬送機構が無端帯に形成された搬送ベルトを平面視でベルトが同一平面上を回動するように回転軸を並列させて一対で設けたものであり、上記茎葉掻起し機構が上記抜取り搬送機構の先端部に設けたものであり、当該茎葉掻起し機構は、いずれも無端帯に形成され複数の掻起し爪を設けた第1の掻起しベルトと第2の掻起しベルトを有し、上記第1の掻起しベルトが上記抜取り搬送機構の先端に正面視でベルトが正面視で同一平面上を回動するように回転軸を並列させて一対で設けられ、上記第2の掻起しベルトが上記第1の掻起しベルトの前面に当該第1の掻起しベルトの回転方向に対し直交する方向に設けられており、上記第1の掻起しベルト及び上記第2の掻起しベルトが単独で又は連動して上下方向に移動可能に設けられたことを特徴とするものである。
【0013】
解決手段の第2は、解決手段の第1において、抜取り搬送機構が、基端部を収穫機に回動可能に軸着した可動枠体に第1の搬送ベルトが平面視でベルトが同一平面上を回動するように回転軸を並列して一対で設け、該第1の搬送ベルトの基端部後方に当該第1の搬送ベルトとは別個に駆動される一対の第2の搬送ベルト及び第3の搬送ベルトを上下方向に位置させて当該収穫機に固定した固定枠体に設けられており、上記第2及び第3の搬送ベルトの間に大根の茎葉を切断する茎葉切断手段を設けたことを特徴とするものである。
【0014】
解決手段の第3は、解決手段の第1において、茎葉掻起し機構は、第1の掻起しベルトが抜取り搬送機構の一部となる可動枠体に正面視で縦方向に設けた一対の第1の軸保持筒体に摺動可能に設けた第1のベルト支持軸に装着されたものであり、第2の掻起しベルトが上記第1の掻起しベルトの前面に該第1の掻起しベルトの回転方向に対し直交する方向に設けると共に、縦方向に設けた一対の第2の軸保持筒体に摺動可能に設けた第2のベルト支持軸に装着したものであり、当該第1及び第2の掻起しベルトが単独又は連動して上下方向に移動可能に設けられたことを特徴とするものである。
【0015】
解決手段の第4は、解決手段の第3において、茎葉掻起し機構は、第1の掻起しベルトが第1のベルト支持軸に設けた駆動プーリーと従動プーリーに装着されており、第2の掻起しベルトが第1のベルト支持軸に設けた駆動プーリー及び従動プーリーに装着されており、上記第1及び第2の軸保持筒体と上記第1及び第2のベルト支持軸との間に流体シリンダ機構を設けたものであり、当該第1及び第2の掻起しベルトが単独又は連動して上下方向に移動可能に設けられたことを特徴とするものである。
【0016】
解決手段の第5は、解決手段の第4において、第1の掻起しベルトを装着するための第1の軸保持筒体と第2の掻起しベルトを装着するための第2の軸保持筒体を連結する連結金具が、上記第1の軸保持筒体に断面がコ字形を呈していて開放部が形成された第1の接続金具と第2の軸保持筒体に設けた上記第1の接続金具と同じ構造の第2の接続金具との間に挿入し、両端部を支軸により回動自在に取付けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1は、横方向に広がった大根の茎葉を直立させて抜取り搬送機構に送り込む茎葉掻起し機構が、掻起し爪を有する第1の掻起しベルトと第2の掻起しベルトを、一対でかつ前後方向に設けると共に、上記第1の掻起しベルトと第2の掻起しベルトを単独で又は連動して上下方向に移動可能に設けたものであるから、収穫作業中おいて圃場が傾斜している場合は、傾斜に沿って掻起しベルトの高さ調整ができるので、茎葉を引き起こす掻起しベルトが圃場に敷設された黒色フィルムを掻き起こすことがなく、引抜き搬送機構などの作業機械にフィルムを絡み付けずに収穫作業を行うことができるものである。
【0018】
請求項2は、第1の搬送ベルトの基端部後方に設けた第2の搬送ベルト及び第3の搬送ベルトの間に、茎葉切断手段を設けたものであるから、第1の搬送ベルトにより圃場から引抜き搬送された大根は、茎葉部分が搬送途中で切断されて集荷されるものである。
【0019】
請求項3は、茎葉掻起し機構が、第1の掻起しベルトと該第1の掻起しベルトと直交する第2の掻起しベルトを有し、第1及び第2の掻起しベルトが単独又は連動して上下方向に移動できるので、収穫作業において傾斜地が生じた時は圃場の傾斜に対応して各掻起しベルトの設定位置を調整することができるから、収穫作業中に圃場に敷設した黒色フィルムを引っ掛ける等の事故を防止できるものである。
【0020】
請求項4は、第1及び第2の掻起しベルトの移動調整を、流体シリンダ機構によって行うものであるから、運転者が収穫作業中に地形を見ながら調整できるものであって、調整作業中は収穫機の運転を停止する必要がないので、連続して収穫作業が行い得るから高い収穫能力を有するものである。
【0021】
請求項5は、第1の軸保持筒体と第2の軸保持筒体を連結する連結金具が、上記第1の軸保持筒体に設けられ断面がコ字形を呈していている第1の接続金具と、第2の軸保持筒体に設けた第2の接続金具との間に挿入し、両端部を支軸により回動自在に取付けたものであるから、第2の掻揚げベルトは、設定間隔及び取付け方向を任意に調整できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は収穫機の全体を示す概略側面図、図2は図1の平面図、図3は抜取り搬送機構の基端部を示す側面図、図4は第1ないし第3の搬送ベルトを示す斜視図、図5は茎葉掻起し機構を示す側面図である。図6は茎葉掻起し機構を示す平面図であって、Aは第2の掻起しベルトを平行に設定した場合を示し、Bは第2の掻起しベルトを傾斜させた場合を示している。図7は第1の掻起しベルトを示す正面図であって、Aは左右とのベルトを同じ高さに設定した場合を示し、Bはいずれか一方の高さを変更した場合を示している。図8は第2の掻起しベルトを示す正面図であって、Aは左右とのベルトを同じ高さに設定した場合を示し、Bはいずれか一方の高さを変更した場合を示している。
【0023】
図1から図4を参照して、収穫機1は、クローラ2を有する自走車であり、進行方向に向う一側部に大根の茎葉を挟持して大根を圃場から抜き取る抜取り搬送機構100と、該抜取り搬送機構100の先端部に圃場上に広がってしまった大根の茎葉を直立させる茎葉掻起し機構200を備えるものである。上記抜取り搬送機構100には、収穫機1の進行方向の後方となる基端部近傍に茎葉を切断する茎葉切断手段3を設けている。なお、4は抜取り搬送機構100の基端部後方に設けられ、当該抜取り搬送機構100から排出された大根を受け渡す集荷コンベアである。5は集荷コンベア4に受け渡された大根を積み込むためのコンテナであり、予め収穫機1に乗せておくものである。
【0024】
本明細書において、部材の取付け位置について、「基端又は基端部」あるいは「先端又は先端部」という場合があるが、「基端又は基端部」は、取付け位置が収穫機の進行方向に対して後方部分であることをいい、一方、「先端又は先端部」は、取付け位置が収穫機の進行方向に対して前方部分であることをいう。
【0025】
大根の収穫は、運転者が運転席10に乗り、圃場の状況を見ながら収穫機1の速度、抜取り搬送機構100の速度並びに茎葉掻起し機構200の高さ調整をしながら行う。圃場から大根を抜き取るには、茎葉掻起し機構200によって横に広がっている茎葉を直立方向に掻き起し、抜取り搬送機構100によって茎葉を挟持して大根を引き抜き、引き抜いた大根を当該抜取り搬送機構100の後方に搬送し、次いで茎葉切断手段3によって茎葉部分を切断して集荷コンベア4に受け渡す。なお、搬送中に切断された茎葉は圃場に投棄される。収穫機1には、予め集荷コンベア4の付近に作業補助者が乗り込んでおり、集荷コンベア4に受け渡された大根をコンテナ5に移し替える。また、コンテナ5がいっぱいになった場合は、新しいコンテナと交換して収穫作業を継続する。
【0026】
次に、抜取り搬送機構100について詳細に説明する。抜取り搬送機構100は、可動枠体101を有しており、該可動枠体101の基端部が収穫機1に枢軸102によって回動可能に取付けられている。可動枠体101は、枢軸102を設けた基端部分が高く、先端部が低くなる傾斜方向で取付けられものであり、先端部の近傍と収穫機1との間に設けられた図示しない流体シリンダ機構等により、前方部分となる先端部を上下方向に回動させるものである。
【0027】
上記可動枠体101には、平面視でベルトが同一平面上を回動するように回転軸を並列させて設けた第1の搬送ベルト110,120が設けられている。第1の搬送ベルト110,120は、無端帯ベルトであって、大根の茎葉部分を挟持して大根を引抜くものであるから、茎葉を挟持した場合に茎葉部分を損傷しない程度の硬さを有する材質で形成されることが望ましく、実施形態では、ゴム等による軟質資材により形成されていて、駆動プーリー111,121と従動プーリー112,122に装着されている。また、第1の搬送ベルト110,120は、対となるベルトの接合部で大根の茎葉部分を挟持するものであるから、ベルト接合部分の背面側にベルトに挟持力を生じさせる圧接ローラ113,123を設けている。なお、実施形態では、駆動プーリー111,121は、互いに連動してかつ反対方向に回転できるように、図示しない油圧モータ等によって回転駆動されるようになっている。
【0028】
上記の圧接ローラ113,123は、軸部を可動枠体101とは別個の部材に取付けており、軸部取付け部材と可動枠体101との間に図示しないコイルバネ等を設けて第1の搬送ベルト110,120に対しベルトを挟持する弾性力を付与している。
【0029】
また、第1の搬送ベルト110,120の基端部の後方には、該第1の搬送ベルト110,120とは切離され別個に駆動される第2の搬送ベルト130,140が設けられるとともに、該第2の搬送ベルト130,140の上方に第3の搬送ベルト150,160が平行して設けられている。第2の搬送ベルト130,140及び第3の搬送ベルト150,160は、いずれも無端帯ベルトであって、第2の搬送ベルト130,140は、駆動プーリー131,141と従動プーリー132,142とに装着され、第3の搬送ベルト150,160は、駆動プーリー151,161と従動プーリー152,162とに装着されている。
【0030】
上記第2の搬送ベルト130,140及び第3の搬送ベルト150,160の接合部にも、ベルト接合部に挟持力を付与する圧接ローラ133,143及び圧接ルーラ153,163が設けられている。なお、これら圧接ルーラ133,143,153,163による弾性力の付与は、第1の搬送ベルト110,120の場合と同じ構造による。
【0031】
なお、第2の搬送ベルト130,140及び第3の搬送ベルト150,160は、収穫機1に設けた固定枠体103に水平方向に取付けられているから、いずれもベルトの取付け位置は固定である。なお、実施形態において、第2の搬送ベルト130,140及び第3の搬送ベルト150,160は、第1の搬送ベルト110,120と同様にゴムなどによる軟質資材で形成されている。
【0032】
上記した第2の搬送ベルト130,140は、先端部が第1の搬送ベルト110,120の基端部の直下に位置しており、基端部が上記集荷コンベア4の上方に位置するように設置されている。また、上記した第3の搬送ベルト150,160は、第2の搬送ベルト130,140の上方に設けられ、先端部が第1の搬送ベルト110,120の基端部の直下に位置して設置されており、基端部は上記集荷コンベア4を通過した位置まで延びた長さに形成されている。なお、第2の搬送ベルト130,140と第3の搬送ベルト150,160の隙間は、大根の茎葉部分を挟持するに適した高さに設定されている。さらにまた、上記第2の搬送ベルト130,140と第3の搬送ベルト150,160の間に、大根の茎葉を切断する茎葉切断手段3が設けられており、実施形態では、茎葉の通過位置に設けたナイフである。
【0033】
圃場上の大根は、後述する茎葉掻起し機構200によって横に広がった茎葉を抜取り搬送機構100が抜き取り易いように掻き起し、掻き起された状態の茎葉を第1の搬送ベルト110,120が挟持し、当該第1の搬送ベルト110,120によって圃場から抜き取るとともに後方へ向って搬送される。第1の搬送ベルト110,120によって搬送された大根は、図3に示すように、終端部分で第2搬送ベルト130,140及び第3の搬送ベルト150,160に引き継がれ、当該第2及び第3の搬送ベルト130,140,150,160による搬送中に茎葉部分が切断され、本体部分のみが集荷コンベア4上に受け渡しされる。
【0034】
次に、図5から図8を参照して茎葉掻起し機構200について詳細に説明する。茎葉掻起し機構200は、上記抜取り搬送機構100の先端部に設けられたものであって、抜取り搬送機構100の一部を構成する可動枠体101に設けた第1の掻起しベルト210,220及びその前面に設けた第2の掻起しベルト230,240とからなるものである。また、第1の掻起しベルト210,220及び第2の掻起しベルト230,240は、いずれも無端帯ベルトであって、一方の第1の掻起しベルト210,220は、収穫機1の正面視でベルトが同一平面上を回動するように回転軸を並列させて設けられており、もう一方の第2の掻起しベルト230,240は、ベルトの回転軸を第1の掻起しベルト210,220の回転軸に対して直交する方向に設けたものである。
【0035】
上記第1の掻起しベルト210,220は、可動枠体101の先端部に正面視で縦方向に設けた一対の第1の軸保持筒体211,221に摺動可能に設けた第1のベルト支持軸212,222に設けた後述のプーリーに装着されている。なお、可動枠体101と第1の軸保持筒体211,221は、可動枠体101に設けた支持軸105によって茎葉掻起し機構200の取付け角度が調整できるようになっている。この他、第1の軸保持筒体211,221に設けた連結杆106が上記支持軸105により取付けられた連結筒体107に収容されていて、抜取り搬送機構100と茎葉掻起し機構200の設定距離を調整できるようになっている。また、上記第1のベルト支持軸212,222には、上端部に駆動プーリー213,223が設けられ、下端部に従動プーリー214,224が設けられており、当該第1の掻起しベルト214,224が、上記第1のベルト支持軸212,222の各プーリーに装着されている。
【0036】
上記第1の掻起しベルト210,220及び第2の掻起しベルト230,240は、圃場に広がった大根の茎葉を掻き起こすものであるから、茎葉を損傷しない材質で形成されることが望ましく、実施形態では、ゴム等による軟質資材により形成されている。また、第1の掻起しベルト210,220及び第2の掻起しベルト230,240には、ベルトの外側に向って突出する複数の掻起し爪215,225,235,245が一定間隔で形成されている。
【0037】
上記した第1の軸保持筒体211,221は、上記可動枠体101に固定した第1の流体シリンダ機構216,226のシリンダ部216a,226aに連結固定されており、また、シリンダから突出する可動ロッド216b,226bと、従動プーリー214,224を設けた第1のベルト支持軸212,222の軸端とを連結固定している。ここで、第1の流体シリンダ機構216,226を駆動すると可動ロッド216b,226bが上下方向に移動し、これによって、第1のベルト支持軸212,222が第1の掻起しベルト210,220を伴って上下方向に移動する。
【0038】
第1の掻起しベルト210,220は、上記した第1の流体シリンダ機構216,226の操作によって、単独運転及び連動運転のどちらも選択可能であって、当該第1の流体シリンダ機構216,226を個別に操作すると、第1の掻起しベルト210,220が左右別個に移動し、これとは別に、第1の流体シリンダ機構216,226を連動して駆動すると、第1の掻起しベルト210,220が左右同時に移動する。
【0039】
上記した第2の掻起しベルト230,240は、上記第1の掻起しベルト210,220の前面に、かつ、第1の掻起しベルト210,220の回転方向に対し直交する方向に向けて設けられている。上記第1のベルト支持軸212,222に連結金具340,350を介して第2の軸保持筒体311,321が設けられ、さらに該第2の軸保持筒体311,321に摺動可能に第2のベルト支持軸312,322が設けられており、第2の掻起しベルト310,320は、該第2のベルト支持軸312,322に設けた駆動プーリー313,323と従動プーリー314,324とに装着されているものである。
【0040】
図5,6を参照して、上記連結金具250,260は、第1の掻起しベルト210,220を支持する第1のベルト支持軸212,222に設けた第1の接続部材251,261と、第2の掻起しベルト230,240と対応する第2の軸保持筒体231,241に設けた第2の接続金具252,262の間に装着され、それぞれ支軸253,254,263,264によって回動自在に取付けられている。これにより、第2の掻揚げベルト230,240は、取付け間隔及び取付け方向を任意に調整できるようになっている。
【0041】
また、第2の軸保持筒体231,241と第2のベルト支持軸232,242との間に第2の流体シリンダ機構236,246が設けられている。実施形態では、シリンダ部236a,246aが第2のベルト支持軸232,242に連結されており、可動ロッド236b,246bが第2の軸保持筒体231,241と連結されている。この場合も、第2の流体シリンダ機構236,246を駆動すると可動ロッド236b,246bが上下方向に移動し、これにより、第2のベルト支持軸232,242が第2の掻起しベルト230,240を伴って上下方向に移動するようになっている。
【0042】
ここでも第2の掻起しベルト230,240は、上記した第2の流体シリンダ機構236,246の操作によって、単独運転及び連動運転のどちらの運転も選択可能である。第2の流体シリンダ機構236,246を個別に操作した場合は、第1の掻起しベルト230,240が左右別個に移動し、第2の流体シリンダ機構236,246を連動して駆動した場合は、第2の掻起しベルト230,240が左右同時に移動する。
【0043】
また、上記した第1の掻起しベルト210,220及び第2の掻起しベルト230,240は、二対4個で構成されているが、これら各ベルトは、単独または連動して上下方向に移動可能であるから、収穫作業中に、圃場の状況に対応して各ベルトの高さ調整を行うことができるようになっている。
【0044】
なお、上記した第1の掻起しベルト210,220を回動する駆動プーリー213,223及び第2の掻起しベルト230,240を回転駆動する駆動プーリー233,243は、いずれも各プーリーが反対方向に回転できるように、例えば、図示しない油圧モータ等によって回転駆動されるようになっている。また、上記した第1の流体シリンダ機構216,226及び第2の流体シリンダ機構236,246は、いずれも実施形態は、油圧モータ等によりボールネジ軸を回転する構造の駆動装置を採用している。
【0045】
茎葉掻起し機構200は、収穫作業に先立って圃場上の大根の生育状況に会わせて第2の掻起しベルト230,240の間隔及び向きを設定しておく。また、茎葉掻起し機構200の設定高さは可動枠体101の調整により調整する。収穫作業中に収穫機が圃場の傾斜地に来た時は、作業中に第1のシリンダ機構216,226及び第2のシリンダ機構236,246を単独で又は連動操作して調整する。第2のシリンダ機構236,246を操作すると、第1の掻起しベルト210,220が第2の掻起しベルト230,240を伴って上下に移動し、第2のシリンダ機構236,246のみを操作すると第2の掻起しベルト230,240のみが上下に移動する。なお、調整作業は、左右を同時に調整できるだけでなく個別に調整することが可能である。
【0046】
本発明は、主として大根を収穫するために提案されたものであるが、何らの改良もせずに他の根菜類、例えば、人参の収穫機として適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】収穫機の全体を示す概略側面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】抜取り搬送機構の基端部を示す側面図。
【図4】第1ないし第3の搬送ベルトを示す斜視図。
【図5】茎葉掻起し機構を示す側面図。
【図6】茎葉掻起し機構を示す平面図であって、Aは第2の掻起しベルトを平行に設定した場合を示し、Bは第2の掻起しベルトを傾斜させた場合を示している。
【図7】第1の掻起しベルトを示す正面図であって、Aは左右のベルトを同じ高さに設定した場合を示し、Bはいずれか一方の高さを変更した場合を示している。
【図8】第2の掻起しベルトを示す正面図であって、Aは左右のベルトを同じ高さに設定した場合を示し、Bはいずれか一方の高さを変更した場合を示している。
【符号の説明】
【0048】
1 収穫機
2 クローラ
3 茎葉切断手段
4 集荷コンベア
5 コンテナ
10 運転席
100 抜取り搬送機構
101 可動枠体
102 枢軸
103 固定枠体
105 支持軸
106 連結杆
107 連結筒体
110,120 第1の搬送ベルト
111,121 駆動プーリー
112,122 従動プーリー
113,123 圧接ローラ
130,140 第2の搬送ベルト
131,141 駆動プーリー
132,142 従動プーリー
133,143 圧接ローラ
150,160 第3の搬送ベルト
151,161 駆動プーリー
152,162 従動プーリー
153,163 圧接ローラ
200 茎葉掻起し機構
210,220 第1の掻起しベルト
211,221 第1の軸保持筒体
212,222 第1のベルト支持軸
213,223 駆動プーリー
214,224 従動プーリー
215,225 掻起し爪
216,226 第1の流体シリンダ機構
216a,226a シリンダ部
216b,226b 可動ロッド
230,240 第2の掻起しベルト
231,241 第2の軸保持筒体
232,242 第2のベルト支持軸
233,243 駆動プーリー
234,244 従動プーリー
235,245 掻起し爪
236,246 第2のシリンダ機構
236a,246a シリンダ部
236b,246b 可動ロッド
250,260 連結金具
251,261 第1の接続金具
252,262 第2の接続金具
253,254,263,264 支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫機がクローラを有する自走車であって、進行方向の一側部に大根を圃場から抜き取る抜取り搬送機構(100)と、大根の茎葉を直立させる茎葉掻起し機構(200)を備えており、上記抜取り搬送機構が無端帯に形成された搬送ベルトを平面視でベルトが同一平面上を回動するように回転軸を並列させて一対で設けたものであり、上記茎葉掻起し機構が上記抜取り搬送機構の先端部に設けたものであり、当該茎葉掻起し機構は、いずれも無端帯に形成され複数の掻起し爪を設けた第1の掻起しベルト(210,220)と第2の掻起しベルト(230,240)を有し、上記第1の掻起しベルトが上記抜取り搬送機構の先端に正面視でベルトが正面視で同一平面上を回動するように回転軸を並列させて一対で設けられ、上記第2の掻起しベルトが上記第1の掻起しベルトの前面に当該第1の掻起しベルトの回転方向に対し直交する方向に設けられており、上記第1の掻起しベルト及び上記第2の掻起しベルトが単独で又は連動して上下方向に移動可能に設けられたことを特徴とする根菜類の収穫機。
【請求項2】
抜取り搬送機構(100)は、基端部を収穫機に回動可能に軸着した可動枠体(101)に第1の搬送ベルト(110,120)が平面視でベルトが同一平面上を回動するように回転軸を並列して一対で設け、該第1の搬送ベルトの基端部後方に当該第1の搬送ベルトとは別個に駆動される一対の第2の搬送ベルト(130,140)及び第3の搬送ベルト(150,160)を上下方向に位置させて当該収穫機に固定した固定枠体(104)に設けられており、上記第2及び第3の搬送ベルトの間に大根の茎葉を切断する茎葉切断手段(3)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の根菜類の収穫機。
【請求項3】
茎葉掻起し機構(200)は、第1の掻起しベルト(210,220)が、抜取り搬送機構の一部となる可動枠体(101)に正面視で縦方向に設けた一対の第1の軸保持筒体(211,221)に摺動可能に設けた第1のベルト支持軸(212,222)に装着されたものであり、第2の掻起しベルト(230,240)が、上記第1の掻起しベルトの前面に該第1の掻起しベルトの回転方向に対し直交する方向に設けると共に、縦方向に設けた一対の第2の軸保持筒体(231,241)に摺動可能に設けた第2のベルト支持軸(232,242)に装着したものであり、当該第1及び第2の掻起しベルトが単独又は連動して上下方向に移動可能に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の根菜類の収穫機。
【請求項4】
茎葉掻起し機構(200)は、第1の掻起しベルト(210,220)が、第1のベルト支持軸(212,222)に設けた駆動プーリー(213,223)と従動プーリー(214,224)に装着されており、第2の掻起しベルト(230,240)が、第1のベルト支持軸(232,242)に設けた駆動プーリー(233,243)及び従動プーリー(234,244)に装着されており、上記第1及び第2の軸保持筒体と上記第1及び第2のベルト支持軸との間に流体シリンダ機構を設けたものであり、当該第1及び第2の掻起しベルトが単独又は連動して上下方向に移動可能に設けられたことを特徴とする請求項3に記載の根菜類の収穫機。
【請求項5】
第1の掻起しベルト(210,220)を装着するための第1の軸保持筒体(211,221)と第2の掻起しベルト(230,240)を装着するための第2の軸保持筒体(231,241)を連結する連結金具(250,260)が、上記第1の軸保持筒体に設けた第1の接続金具(251,261)と第2の軸保持筒体に設けた第2の接続金具(252,262)との間に挿入し、両端部を支軸により回動自在に取付けたことを特徴とする請求項4に記載の根菜類の収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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