説明

根菜類収穫機

【課題】機体の前後長及び左右幅が短く、旋回や方向転換をスムーズに行うことのできる根菜類収穫機を提供する。
【解決手段】根菜類収穫機は、操縦部(B)側方で引抜き後送する引抜搬送装置(24)と、後送経路中の茎葉切断機構(46)により根菜株を切断落下させる移送切断装置(48)と、その下方で根菜株を後送して残葉を取る巻込ローラ(62)の側方に排出する残葉処理装置(D)と、その既堀側で前送する第1選別搬送装置(68)と、その搬送終端部で受けた根菜株を操縦部(B)の後側を横断して既堀側端部の収容部材載置台(96)に搬送する第2選別搬送装置(83)と、前記第1選別搬送装置(68)および第2選別搬送装置(83)に共に臨む位置に根菜株の選別作業や収容部材(87)の交換作業を行う作業者が着座する選別作業座席(91)を備えた選別作業フロア(92)と、を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場から根菜株を引き抜きつつ走行する間に、茎葉カット後の選別作業を経て根菜株の根体部を収容器材に収穫する根菜類収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の記載のように、ソイラつき引抜搬送装置、切断機つき搬送装置、残葉処理装置、選別作業スペースに臨む展開搬送装置、収容器材載置台等からなる根菜類収穫機が知られている。この根菜類収穫機は、残葉処理装置が上昇移送用の汲上搬送装置を並列して引き抜き側端から機体中央まで横断配置され、他側端の作業スペースに臨む展開搬送装置が後送方向に配置されていることによって、作業スペースに臨んで広い収容スペースが確保される。
【0003】
また、特許文献2記載の根菜類収穫機は、残葉処理装置から展開搬送装置が操縦部の後側を横断して構成することにより、操縦部からの補助的な選別作業が可能となる。
【特許文献1】特開2005−192426号公報
【特許文献2】特開2006−034249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の根菜類収穫機は、茎葉切断装置に茎葉を切断されて落下する根菜を受ける残葉処理装置が機体左右一側から左右他側に向けて配置され、残葉処理装置から根菜を引き継いで汲上搬送する汲上搬送装置が機体左右一側から左右他側に上昇傾斜姿勢で配置され、汲上搬送装置から根菜を引き継いで機体前側から機体後側に搬送する展開搬送装置が配置されるとともに、展開搬送装置の側方で且つ機体左右他側に選別作業座席が配置されていることによって、機体の前後幅及び左右幅が長くなってしまい、圃場端での旋回動作や、方向転換がスムーズに行えないという欠点がある。
【0005】
また、特許文献2の根菜類収穫機は、茎葉切断装置に茎葉を切断されて落下する根菜を受ける残葉処理装置が機体左右一側から左右他側に向けて配置されるとともに、残葉処理装置から根菜を引き継いで機体左右一側から左右他側に搬送する展開搬送装置が茎葉切断装置の前側に配置されることにより、機体が前後に長くなってしまい、圃場端での旋回動作や、方向転換がスムーズに行えないという欠点がある。
【0006】
解決しようとする問題点は、機体の前後長及び左右幅が短く、旋回や方向転換をスムーズに行うことのできる根菜類収穫機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、操縦部(B)の左右一側に圃場から根菜株の茎葉を把持して引き抜くとともに機体の後退方向に移送する引抜搬送装置(24)と、該引抜搬送装置(24)から受継いだ根菜株の茎葉を把持しつつ機体の後退方向に移送して茎葉切断機構(46)により根菜株を切断落下させる移送切断装置(48)と、該移送切断装置(48)の下方に茎葉部を切断されて落下する根菜株を受けて機体前側から後側に搬送しながら巻込ローラ(62)で残葉を取り除いて左右他側方に排出する残葉処理装置(D)と、該残葉処理装置(D)の他側に残葉処理装置(D)から根菜株を受けて機体後部から前部に移送する第1選別搬送装置(68)と、該第1選別搬送装置(68)の搬送終端部から根菜株を受けて左右一側から操縦部(B)の後側を横断して機体の左右他側端部の収容部材載置台(96)に亘って根菜株を搬送する第2選別搬送装置(83)と、前記第1選別搬送装置(68)の左右他側で且つ第2選別搬送装置(83)の後部に根菜株の選別作業や収容部材(87)の交換作業を行う作業者が着座する選別作業座席(91)を備えた選別作業フロア(92)とを設けたことを特徴とする根菜類収穫機とした。
【0008】
上記の構成により、残葉処理装置(D)の内側方に機体後側から機体前側に根菜株を搬送する第1選別搬送装置(68)を配置し、第1選別搬送装置(68)の前側に根菜株を機体左右一側から左右他側に搬送する第2選別搬送装置(83)を配置するとともに第1選別搬送装置(68)の側方で且つ収容搬送装置の後方に選別作業フロア(92)と選別作業座席(91)を設けたことによって、機体の前後幅及び左右幅がコンパクト化される。
そして、回動自在な(←出願時の請求項で回動できることを言う必要は無いと思います。選別作業者が選別作業座席(91)に座って第1選別搬送装置(68)と第2選別搬送装置(83)の両方で作業できることが言えればいいので。というわけで削除してください)選別作業座席(91)が展開搬送装置の側方で且つ収容搬送装置の後方に配置されていることによって、作業者は第1選別搬送装置(68)だけでなく第2選別搬送装置(83)で搬送中の根菜株を選別することができる。
また、根菜株の選別作業及び収容部材(87)に収容された根菜株の量の確認作業を選別作業座席(91)及び選別作業フロア(92)で行うことができる。
さらに、第2選別搬送装置(83)が操縦部(B)の後側に配置されていることにより、第2選別搬送装置(83)に搬送される根菜株の選別作業を操縦作業者が操縦部(B)から行うことができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記残葉処理装置(D)の搬送終端部の側方に第1選別搬送装置(68)の搬送始端部を配置したことを特徴とする請求項1記載の根菜類収穫機とした。
上記の構成により、残葉処理装置(B)の搬送終端部と第1選別搬送装置(6)の搬送始端部とを機体前後方向で略同一線上に配置したことによって、機体の前後長をコンパクトに構成することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、前記第1選別搬送装置(68)の搬送終端部の下方に第2選別搬送装置(83)の搬送始端部を配置したことを特徴とする請求項1または2記載の根菜類収穫機とした。
上記の構成により、第1選別搬送装置(68)の搬送終端部の下方に第2選別搬送装置(83)の搬送始端部を配置したことによって、機体の前後長をコンパクトに構成することができる。ので、機体の旋回や方向転換をスムーズに行えて作業能率が向上する。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の構成において、前記残葉処理装置(D)を前後の残葉処理回転体(50,51)に搬送無端帯(52)を巻回して構成し、第1選別搬送装置(68)を前後の移送回転体(64,65)に無端状の移送体(66)を巻回して構成し、残葉処理装置(D)の搬送終端側の残葉処理回転体(51)の軸と、第1選別搬送装置装置(68)の搬送始端側の移送回転体(64)の軸との間に、周速変換と方向転換とを行う伝動機構(74)を設けたことを特徴とする請求項1乃至3記載の根菜類収穫機とした。
【0012】
上記根菜類収穫機は、特に、残葉処理装置(D)と第1選別搬送装置(68とを伝動機構(74)で連続的に動作させることができるので、駆動系の部品数を削減することができる。
また、第1選別搬送装置(68)の周速に応じた移送時間を設定することができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明は、残葉処理装置(D)の内側方に第1選別搬送装置(68)を配置し、この第1選別搬送装置(68)の前側に根菜株を機体左右一側から左右他側に搬送する第2選別搬送装置(83)を配置するとともに、第1選別搬送装置(68)の側方で且つ第2選別搬送装置(7)の後方に選別作業フロア(92)と選別作業座席(91)を設けたことによって、機体の前後幅及び左右幅をコンパクトに構成することができるので、機体の旋回動作や方向転換をスムーズに行え、作業能率が向上する。
そして、回動自在な選別作業座席(91)が第1選別搬送装置(68)の側方で且つ第2選別搬送装置(83)の後方に配置されていることによって、選別作業者は第2選別搬送装置(83)だけでなく第1選別搬送装置(68)で搬送中の根菜株を選別することができるので、根菜株の量が多くても選別漏れが生じにくくなり、選別精度や作業能率が向上する。
【0014】
また、選別作業者は根菜株の選別作業及び収容部材(87)に収容された根菜株の量の確認作業を選別作業座席(91)及び選別作業フロア(92)から動くことなく行うことができるので、作業能率が向上すると共に作業者の労力が軽減される。
さらに、第2選別搬送装置(83)が操縦部(B)の後側に配置されていることによって、低速で直進走行するときなど、操縦作業者が機体の操縦に専念する必要がない状況では、操縦作業者は選別作業者と共に第2選別搬送装置(83)に搬送される根菜株の選別作業を行うことができるので、根菜株の量が多くても選別漏れが生じにくくなり選別精度が向上すると共に、作業能率が向上する。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の効果に加え、残葉処理装置(D)の搬送終端部と第1選別搬送装置(68)の搬送始端部とを機体前後方向で略同一線上に配置したことによって、機体の前後長をコンパクトに構成することができるので、機体の旋回動作や方向転換がスムーズに行われて作業能率が向上する。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1及び2の効果に加え、第1選別搬送装置(68)の搬送終端部の下方に第2選別搬送装置(83)の搬送始端部を配置したことによって、機体の前後長をコンパクトに構成することができるので、機体の旋回動作や方向転換がスムーズに行われて作業能率が向上する。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の効果に加え、残葉処理装置(D)と第1選別搬送装置(68)とを伝動機構(74)で連続的に動作させることができるので、駆動系の部品数を削減することができ、省資源化やコストダウンを計ることができる。
また、第1選別搬送装置(68)の周速を減速することにより、選別作業者が根菜株を選別するための時間を長くすることができるので、根菜株の量が多くても選別漏れが生じにくくなり、選別精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図10に示すように、実施例の一つとして示す根菜類収穫機の一種である人参収穫機は、機体を走行させる走行部Aと、操縦者が搭乗する操縦部Bと、機体左右一側で圃場から人参を引き抜いて機体後上側に搬送するとともに茎葉部を切断して人参の根部を収穫する収穫部Cと、該収穫部Cの後部から落下した人参を受けて残葉を処理しながら機体後側へ搬送する残葉処理部Dと、該残葉処理部Dから搬送される人参を引き継いで人参を機体後側から機体前側へ搬送し、搬送中の人参を補助作業者が選別を行う第1選別搬送部Eと、該第1選別搬送部Eから引き継いだ人参を操縦部Bの後側を横断して機体左右一側から左右他側に搬送し、搬送中の人参を操縦者と補助作業者のどちらか、あるいは両方が選別を行う第2選別搬送部Fと、補助作業者が搭乗する補助作業部Gと、第2選別搬送部Fから排出される人参を収容する収容部Hとから構成される。以下、各部の詳細を具体的に記載する。
【0019】
まず、走行部Aの構成について説明する。
図1〜図4で示すように、機体フレーム1の下方に機体前部側の左右駆動スプロケット2,2と機体後部側の左右従動輪3,3と、該左右駆動スプロケット2,2と左右従動輪3,3との間に取り付けた複数の転輪4,4・・・の周りに左右ベルト5,5を巻き掛けて左右のクローラ6L,6Rを構成する。そして、該左右クローラ6L,6Rの左右駆動スプロケット2,2を、エンジン7の動力が伝動されるミッションケース8から左右両側に延出させた左右ドライブシャフト9,9に取り付け、一定の左右間隔を設けて左右クローラ6L,6Rを該機体フレーム1に取り付ける。
【0020】
次に、操縦部Bの構成について説明する。
図1〜図4で示すように、前記機体フレーム1の右側上部に操縦部フレーム10を取り付け、該操縦部フレーム10には操縦座席11を回動自在に取り付けると共に、機体前側に操縦パネル12を取り付ける。そして、該操縦パネル12に機体の前後進及び走行速度を切り換える変速操作レバー13を取り付けると共に、機体の左右旋回操作及び収穫部Cの作業高さを操作する昇降操作レバー14を取り付ける。
操縦部Bを上記のように構成したことによって、変速操作レバー13や昇降操作レバー14のような、1本で複数の操作を行える操縦部材を設けることによって、機体の操縦が容易になるため操縦者の作業を軽減することができる。
【0021】
また、操縦座席11を操縦部フレーム10に回動自在に取り付けたことによって、作業者は作業座席11を回動させて後述する第1選別搬送コンベア68または第2選別搬送コンベア83に向かい、第1選別搬送コンベア68または第2選別搬送コンベア83で搬送中の人参の選別作業を行うことができるので、操縦者一人でも人参の収穫作業ができて省力化が図られるとともに、操縦者と補助作業者の二人で選別作業をすることができるので、収穫する人参の数が多くても選別し損なうことを防止できるので、人参の選別精度が向上する。
【0022】
次に、収穫部Cの構成について説明する。
図1〜図4で示すように、左右引抜フレーム15,15の機体前側に左右従動プーリ16,16を回転自在に装着し、機体後側に左右駆動プーリ17,17を装着し、該左右従動プーリ16,16と左右駆動プーリ17,17との間に人参を引き抜き機体後部へと搬送する左右挟持搬送ベルト18,18を巻き掛けると共に、複数のテンションローラ19・・・によって該左右挟持搬送ベルト18,18を張圧し、左右挟持搬送ベルト18,18の機体内側面を互いに圧接させて人参の引抜搬送経路Rを構成する。そして、前記機体フレーム1の上方に左右横軸21を回動支点として上下方向に回動自在な回動フレーム20を取り付け、該回動フレーム20の後端部に前記左右駆動プーリ17,17に駆動力を伝動する伝動ケース22を、回動支点Xを中心として上下回動自在に取り付ける。また、前記機体フレーム1と回動フレーム20とを昇降シリンダ23で連結し、該昇降シリンダ23を操縦部Bで操作可能に取り付けて引抜搬送装置24を構成する。
【0023】
また、該引抜搬送装置24の前方に人参の茎葉部を引き起こす縦引起し装置25と、該縦引起し装置25が引起した茎葉部を掬い上げる横引起し装置26と、該横引起し装置26の前部に設ける分草杆27と、ハンドル29を回すと上下伸縮する伸縮ロッド30の下端部に引抜搬送装置24の下り過ぎを防止する回転自在なゲージ輪31と、前記エンジン7の駆動力で回転するシャフト32の回転によって振動する振動フレーム33に取り付けた人参の左右の土を振動によって解す左右振動ソイラ34,34とを設ける。
【0024】
そして、図2、図7、図8で示すように、前記シャフト32の引抜搬送装置24を配置した側の端部に駆動プーリ35を軸着し、該駆動プーリ35よりも機体左右一側寄りの回動フレーム20上で且つ引抜搬送装置24の搬送経路の下方に上下方向の長穴を一ヶ所または複数(少なくとも二ヶ所)形成した尻尾切カバー36を取り付ける。さらに、該尻尾切カバー36に複数のスリット36a…を機体上下方向に形成し、該スリット36a…の下部は機体左右一側に屈曲させる。また、前記尻尾切カバー36の内部に前記引抜搬送装置24に搬送される人参の尻尾(ひげ根)を切断する円盤に複数の切断刃を取り付けた尻尾切回転刃37を前記回動フレーム20に対して垂直方向に上下調節自在に設け、該尻尾切回転刃37の回転軸38を尻尾切カバー36の機体内側から突出させ、該回転軸38の機体内側端部に従動プーリ39を軸着する。そして、該従動プーリ39と駆動プーリ35との間に尻尾切回転刃37を回転させる駆動力を伝動する尻尾切伝動ベルト40を無端状に巻回し、駆動プーリ35と従動プーリ39との間に該尻尾切伝動ベルト40を張圧するテンションプーリ41を回転自在に設けることによって、尻尾切装置42が構成される。
【0025】
なお、尻尾切カバー36に形成した長穴に内部からボルト39aを突出させ、この突出部にナット39bを合わせ、尻尾切装置42の上下位置を決定してからナット39bを締めることによって、尻尾切装置42の上下位置が調節されるため、人参の品種や生育状況に関わらず適切な位置で人参の尻尾を切断することができるので、人参の尻尾の切り残しが減少し、作業者が収穫作業後に人参の尻尾切りを行う労力が軽減される。
【0026】
加えて、尻尾切装置42が回動フレーム20に対して垂直方向に上下動することによって、尻尾切装置42の上下位置を調節した際の尻尾切伝動ベルト40の長さの変化を短く抑えることができるので、尻尾切伝動ベルト40が弛むことが防止され、尻尾切回転刃37の回転力が足りずに人参の尻尾が切り残されることが防止され、作業者が収穫作業後に人参の尻尾切りを行う労力が軽減される。
【0027】
また、駆動プーリ35と従動プーリ39とテンションプーリ41と尻尾切伝動ベルト40とを尻尾切伝動ケース43に内装することによって、駆動プーリ35と従動プーリ39とテンションプーリ41と尻尾切伝動ベルト40とに人参や圃場の泥土、あるいは作業者が接触することが防止できるので、駆動プーリ35と従動プーリ39とテンションプーリ41と尻尾切伝動ベルト40の耐久性が向上すると共に、作業者が誤って触れてしまい、怪我をすることが防止できる。
【0028】
加えて、尻尾切伝動ケース43に上下方向の長穴を一つまたは複数形成し、テンションプーリ41の回転軸をボルト41aで構成してその端部を長穴から突出させ、ボルト41aの突出部にナット41bを合わせ、テンションプーリ41の上下位置を決めてからナット41bを締めることによって、テンションプーリ41が尻尾切伝動ベルト40を張圧する力を容易に変更することができるので、尻尾切回転刃37の回転力が足りずに人参の尻尾が切り残されることが防止され、作業者が収穫作業後に人参の尻尾切りを行う労力が軽減される。
【0029】
さらに、前記引抜搬送装置24の後下部には、左右挟持搬送ベルト19,19によって搬送されてきた人参を引き継ぎ、人参の茎葉部の切断位置を揃える左右位置揃え装置44,44と、該左右位置揃え装置44,44から茎葉部を引き継いで挟持して機体後方まで搬送する左右茎葉搬送装置45,45と、茎葉部を切断する左右切断装置46,46と、該左右切断装置46,46によって切断された茎葉を圃場に排出する排葉シュータ47とを設けて排葉搬送装置48を構成する。
そして、前記引抜搬送装置24と尻尾切装置42と排葉搬送装置48とから、収穫部Cを構成する。
【0030】
収穫部Cを上記のように構成したことにより、機体前側に分草杆27を備える横引起し装置26と、縦引起し装置28を設けることによって、圃場に倒伏した人参の茎葉を掻き上げながら収穫作業ができ、収穫する人参の視認性が向上するので引き抜き位置が合わせやすく、作物の抜き残しが減少するため作業能率が向上する。
また、人参に左右振動ソイラ34,34等が接触して傷つくことを防止できるので、人参の商品価値が向上する。
そして、ハンドル29を回すと上下伸縮する伸縮ロッド30の下端部にゲージ輪31を設けたことによって、ゲージ輪31を圃場面に接地させるとそれ以上引抜搬送装置24が下降しなくなるので、操縦者の操縦ミスや予期せぬ地面の凹凸によって引抜搬送装置24の下端部が圃場面に接触して破損することが防止される。
【0031】
そして、機体フレーム9と左右横軸21を回動支点として上下方向に回動自在な回動フレーム20とを昇降シリンダ23で連結し、昇降シリンダ23を操縦部Bの昇降操作レバー14を操作することによって伸縮させる構成としたことによって、昇降操作レバー14の操作により収穫部C全体の上下高さを調節することができるので、収穫部Cの引抜搬送始端部の位置を上下方向に調節しするとともに圃場に植生する人参の適切な引き抜き高さに合わせて引抜搬送始端部の位置調節を行え、人参の抜き残しが防止されるので作業能率が向上する。
また、旋回時に収穫部Cを上昇させておくと、収穫部Cの下端部が圃場に接触しにくくなるため、旋回動作がスムーズに行われて作業能率が向上する。
【0032】
さらに、収穫部Cの左右切断装置46,46で人参から切断された排葉(切断された茎葉部)を圃場に排出する排葉シュータ47が、既掘り側(人参を収穫し終えた側)に茎葉を排出するように下方傾斜姿勢に設けられていることによって、排出された茎葉が未掘り側(人参を収穫していない側)の人参の上に落下し、排葉が左右挟持搬送ベルト19,19や左右従動プーリ17,17等に絡み付いて収穫部Cを停止させて収穫作業を妨げることが防止できるので、作業能率が向上すると共に、人参の上に落下した排葉が収穫する人参の視認性を妨げ、人参に左右振動ソイラ34,34等が当たって傷つくことが防止できるので、人参の商品価値が向上する。
【0033】
次に、残葉処理部Dの構成について説明する。
図1〜図4及び図6に示すように、前記左右伝動シャフト22,22の回動支点Xよりやや下方で且つ回動フレーム20よりも上方に長手方向を機体前後方向に向けた左右側壁49,49を設け、該左右側壁49,49の機体前側に前記エンジン7から駆動力を受けて回転する残葉処理駆動ローラ50を取り付け、左右側壁49,49の機体後側に残葉処理従動ローラ51を回転自在に取り付ける。そして、該残葉処理駆動ローラ50と残葉処理従動ローラ51とにゴムや軟質樹脂等で構成する残葉処理ベルト52を無端状に巻回して残葉処理コンベア53を構成する。
【0034】
また、前記残葉処理駆動ローラ50の回転軸の機体外側端部に駆動スプロケット54を軸着し、残葉処理従動ローラ51の回転軸の機体外側端部に従動スプロケット55を軸着するとともに、該駆動スプロケット54と従動スプロケット55とに第1伝動チェーン56を無端状に巻回する。さらに、前記従動スプロケット55よりも機体外側に残葉処理駆動スプロケット57を軸着し、機体外側の側壁49に残葉処理従動スプロケット58を回転自在に取り付けるとともに、該残葉処理駆動スプロケット57と残葉処理従動スプロケット58との間に第2伝動チェーン59を無端状に巻回する。そして、前記残葉処理従動スプロケット58の回転軸の機体外側端部に第1スパーギア60aを軸着し、残葉処理従動スプロケット58よりも機体前側の側壁に第2スパーギア60bを回転自在に取り付け、該第1スパーギア60aと第2スパーギア60bとを噛み合せる。また、該第2スパーギア60bの回転軸に第1ベベルギア61aを軸着し、該第1ベベルギア61aに接触して回転する第2ベベルギア61bを第1ベベルギア61aよりも上方且つ機体内側方向に斜め向きに配置し、該第2ベベルギア61bに人参の根部に残る残葉をちぎり取る残葉処理ローラ62を装着し、該残葉処理ローラ62を機体内側方向に斜め向きに配置すると共に、残葉処理ベルト52の機体内側端部から残葉処理ローラ62の機体内側端部を突出させて配置することにより、残葉処理部Dが構成される。
【0035】
残葉処理部Dを上記のように構成したことにより、残葉処理コンベア53はゴムや軟質樹脂等で構成する残葉処理ベルト52を無端状に巻回して構成しているため、収穫部Cの左右切断装置46,46で茎葉部を切断されて落下してくる人参の根部が落下の衝撃で傷付くことを防止できるので、人参の商品価値が向上する。
また、残葉処理コンベア53に設ける残葉処理ローラ62が、左右切断装置46,46で切り残された人参の残葉をちぎり取り、人参を後述する第1選別搬送コンベア68に搬送するため、人参の商品価値が向上すると共に、収穫作業後に人手で残葉を切除する作業を省略することができるので、作業能率が向上する。
【0036】
次に、第1選別搬送部Eの構成について説明する。
図1〜4及び図6で示すように、前記残葉処理コンベア53よりも機体左右他側に左右の搬送側壁63,63を設け、該搬送側壁63,63の後端側の左右間に残葉処理コンベア53よりも下方に左右第1駆動スプロケット64,64を取り付けるとともに、搬送側壁63,63の前端側の左右間に左右第1従動スプロケット65,65を回転自在に取り付ける。また、該左右第1駆動スプロケット64,64と左右第1従動スプロケット65,65とに左右伝動チェーン66,66を夫々無端状に巻回し、該左右伝動チェーン66,66の左右間に複数の搬送ローラ67・・・を所定間隔を空けて回転自在に取り付けることによって、第1選別搬送コンベア68が構成される。
なお、第1選別搬送コンベア68の搬送始端部は、平面視で残葉処理コンベア53の搬送終端部と略同一線上に配置する。
【0037】
さらに、図5で示すように、前記残葉処理部Dの残葉処理従動ローラ51の回転軸の端部一側に第1伝動スパーギア69を軸着し、前記第1伝動スパーギア69よりも前側に第1伝動スパーギア69に噛み合わせて駆動力を伝動する第2伝動スパーギア70と第1伝動スプロケット71を軸着した伝動シャフト72を取り付ける。また、前記第1選別駆動スプロケット64の回転軸の機体外側端部に第2伝動スプロケット72を軸着し、該第2伝動スプロケット72と第1伝動スプロケット71とに伝動チェーン73を無端状に巻回し、エンジン7の駆動力を残葉処理部Dから第1選別搬送部Eに伝動する伝動機構74を構成する。該伝動機構74は、泥土や夾雑物の付着防止及び操縦者や補助作業者が作業中に接触することを防止するためのカバー(図示せず)内に配置する。
【0038】
第1選別搬送部Eを上記のように構成したことにより、第1選別搬送コンベア68の搬送始端側が残葉処理コンベア63よりも下方に配置されるので、人参が残葉処理コンベア63に滞留することなく円滑に第1選別搬送コンベア68に引き継がれるので、作業能率が向上する。
また、前記第1選別搬送コンベア68を構成する左右伝動チェーン66,66の左右間に複数の搬送ローラ67・・・を所定間隔を空けて取り付けたことによって、第1選別搬送コンベア68で搬送中の人参に付着した泥土や夾雑物を下方に落下させることができるので、人参の形状や大きさ、傷や変形などが目視しやすくなり、選別精度が向上する。
そして、第1選別搬送コンベア68の搬送始端部を残葉処理コンベア53の搬送終端部と略同一線上に配置したことによって、機体の前後長さを短くすることができるので、機体がコンパクトになり、機体の旋回動作や方向転換がスムーズに行われて作業能率が向上する。
【0039】
次に、第2選別搬送部Fの構成について説明する。
図1〜図4及び図6で示すように、前記第1選別搬送コンベア68の搬送終端部(機体前側端部)の下方で且つ回動フレーム20上に機体左右方向に亘り、且つ搬送方向下手側ほど上方に向かう傾斜姿勢に前後第1搬送板75,75を配置し、該前後第1搬送板75,75の左右一側に第2駆動ローラ76を取り付ける。そして、該第2駆動ローラ76の駆動軸を回転させる駆動モータ77を機体前側の第1搬送板75に取り付け、前後第1搬送板75,75の左右他側にテンションローラ78を取り付けると共に、該テンションローラ78の前後間に回動軸79を取り付ける。
【0040】
また、前後第1搬送板75,75の左右他側端に前後第2搬送板80,80を操縦部フレーム10の後部を通過させると共に前記回動軸79に軸着して機体上下方向に回動自在に取り付け、該前後第2搬送板80,80の左右他側端に第2従動ローラ81を回転自在に取り付ける。そして、前記第2駆動ローラ76と第2従動ローラ81とテンションローラ78とに選別搬送ベルト82を無端状に巻回し、該選別搬送ベルト82に表面に側面視で凸形状の複数の搬送突起82a・・・を前後及び左右に所定間隔を空けて取り付けて、第2選別搬送コンベア83を構成する。
【0041】
さらに、前記前後第2搬送板80,80の前後間で且つ第2選別搬送コンベア83の搬送領域の下面に受板84aを設け、該受板84aと前記回動フレーム20との間に第2選別搬送コンベア83の搬送終端側を上下回動させる伸縮自在な昇降シリンダ85を取り付ける。なお、該昇降シリンダ85は油圧シリンダでも電動シリンダでもエアシリンダでもよく、また他の伸縮部材に置き換えてもよい。
【0042】
また、後側の第2搬送板80の搬送終端側で且つ後述する補助作業座席91の近傍に、前記昇降シリンダ85を伸縮させる操作スイッチ86を設け、前後第2搬送板80,80の終端部に収容容器87のうち袋型のフレキシブルコンテナ87aを吊り下げる前後吊下げハンガー88,88を上下回動自在に取り付けることによって、第2選別搬送部Fが構成される。
【0043】
第2選別搬送部Fを上記のように構成したことによって、第2選別搬送コンベア83の搬送始端部が第1選別搬送コンベア68の搬送終端部の下方に配置されるので、第2選別搬送コンベア83は第1選別搬送コンベア68から排出される人参を確実に受けることができるので、人参が搬送経路から離脱することが防止されて作業能率が向上する。
【0044】
また、搬送経路から落下した人参が衝撃で傷付くことが防止されるので、人参の商品価値が向上する。
さらに、第2選別搬送コンベア83が操縦部フレーム10の後部を通過するように配置されていることによって、操縦者は操縦座席11を機体後側に回動させると第2選別搬送コンベア83で搬送される人参の選別作業を行うことができるので、第2選別搬送コンベア83で搬送される人参の量が多くても補助作業者と共に選別することで選別精度を向上させられる。
加えて、選別作業者が収容容器87の交換作業や第2選別搬送コンベア83の搬送終端側の上下調節を行っていても選別作業を行えるので選別精度が向上する。
【0045】
なお、一人作業、二人作業のいずれの場合でも、操縦者が第2選別搬送コンベア83で選別作業を行う場合は、変速操作レバー13を操作して機体の走行速度を低速にしておくと安全性が向上する。
そして、後側の第2搬送板80の搬送終端側で且つ補助作業座席91の近傍に操作スイッチ86を設けたことによって、補助作業者は補助作業座席 に座ったまま第2選別搬送コンベア83の搬送終端側の上下高さを変更することができるので作業能率が向上するとともに、補助作業者は選別作業に専念することができるので、選別精度が向上する。
【0046】
次に、補助作業部Gの構成について説明する。
図1〜図4で示すように、前記第1選別搬送コンベア68の左右他側で且つ第2選別搬送コンベア83の後方の回動フレーム20上に補助作業ステップ92を設け、該補助作業ステップ89の後部で且つ第1選別搬送コンベア68の近傍に支柱90を設け、該支柱90の上端部に補助作業座席91を回動自在に取り付ける。そして、前記補助作業ステップ92上で且つ補助作業座席91の前側に前記昇降シリンダ85を伸縮させる操作ペダル93を取り付けることによって、補助作業部Gが構成される。
【0047】
補助作業部Gを上記のように構成したことによって、補助作業者は補助作業座席91に座ったままでも、補助作業座席91を回動させて第1選別搬送コンベア68及び第2選別搬送コンベア83に対面することができるので、第1選別搬送コンベア68でも第2選別搬送コンベア83でも人参の選別作業を行うことができ、作業条件に応じた最適な作業ができるため、作業能率が向上する。
【0048】
また、補助作業者一人で第1選別搬送コンベア68及び第2選別搬送コンベア83の両方で搬送される人参の選別作業を行うこともできるので、操縦者は機体の操縦に専念し、補助作業者は人参の選別作業に専念することにより、作業の安全性と選別精度が同時に向上する。
【0049】
そして、補助作業者は操作ペダル93によって補助作業座席91に座ったまま第2選別搬送コンベア83の搬送終端側の昇降操作を足で行うことができるので、両手で選別作業を行っていても昇降操作を行えるので、選別精度や作業能率が向上する。
【0050】
なお、補助作業ステップ92の機体左右他側や左右一側で且つ第1選別搬送コンベア68と残葉処理コンベア53の下方の空間部には、第1選別搬送コンベア68及び第2選別搬送コンベア83で補助作業者が選別した人参を回収するコンテナ87bやフレキシブルコンテナ84a、あるいは交換用の空のコンテナ87bやフレキシブルコンテナ87aを複数個載置することができるので、選別した人参をまとめておくことができるとともに、後述する載置台96に載置したコンテナ87bやフレキシブルコンテナ87aが満杯になった時、補助作業者がすぐに交換を行えるので、作業能率が向上する。
【0051】
次に、収容部Hの構成について説明する。
図1〜4、図9及び図10で示すように、前記回動フレーム20の機体左右他側の後側に前後支持プレート94,94を機体左右方向に取り付け、該前後支持プレート94,94の機体外側端部に載置部フレーム95を、左右回動軸95aを回動支点として機体左右方向に回動自在に取り付ける。そして、該載置部フレーム95の後下部に上下回動軸96aを設け、該上下回動軸96aの上部に収容容器87のうちコンテナ87bを積載する、あるいは前記前後吊下げハンガー88,88に吊り下げられるフレキシブルコンテナ87aの底部を載置支持する載置台96を上下回動自在に取り付ける。
【0052】
また、前記載置部フレーム95の後側の左右他側端部に後側支持プレート97を設け、前記上下回動軸96aの左右他側端部に回動プレート98の下端部を機体前後方向に回動自在に軸着するとともに、該回動プレート98の上部と後側支持プレート97の上部との間に伸縮自在な伸縮ロッド99を取り付ける。さらに、該伸縮ロッド99の機体後側の端部に伸縮ロッド99を伸縮させる操作ハンドル100を取り付けるとともに、前記載置台96の左右両側及び後側に収容容器87の落下を防止する落下防止板101を取り付けることによって、収容部Hが構成される。
【0053】
なお、伸縮ロッド99は一方の棒材の表面に螺子溝を刻み、他方の中空の棒材の内面に螺子溝を刻み、互いの棒体の螺子溝を合わせて操作ハンドル100で回転させて伸縮する構成としているが、電動シリンダや油圧シリンダに置き換えてもよく、その場合は操作ハンドル100をスイッチやレバーに置き換えてもよい。
【0054】
上記のように収容部Hを構成したことによって、収穫作業中は載置台96を機体左右他側に回動してコンテナ87bやフレキシブルコンテナ87aを載置させ、作業終了後は機体左右一側に載置台96を回動させて畳んでおくことができるので、機体の左右幅がコンパクトになり、機体を軽トラック等の搬送手段に載置しやすくできると共に、倉庫等の収容場所にスペースをとり過ぎることなく収容することができる。
【0055】
また、操作ハンドル100を操作して伸縮ロッド99を伸縮させ、載置台96を上下に回動させられるため、載置台96を下方に傾斜させて人参を満載したフレキシブルコンテナ87aを下方に移動させた後、機体を後進させることによってフレキシブルコンテナ87aを圃場に移動させることができるので、操縦者や補助作業者の労力が軽減されると共に作業能率が向上する。
【0056】
なお、収容部Hの載置部フレーム95を前後逆方向に取り付け、他の構成部品を上記構成例とは前後方向反対向きに設けることによって、載置台96を機体後側に下方傾斜させ、人参を満載したフレキシブルコンテナ87aを下方に移動させた後、機体を前進させることによってフレキシブルコンテナ87aを圃場に移動させることができるので、操縦者や補助作業者の労力が軽減されると共に、機体を後進させる必要がなくなるのでいっそう作業能率が向上する。
【0057】
以下、本件人参収穫機の別実施例を説明する。
(ソイラ)
次に、引抜搬送装置のソイラについて説明すると、構成例1の要部拡大正面図(a)とその側面図(b)を図11に示すように、既堀側である右側のソイラ102は、収穫するべきニンジン等の引抜対象株P1の下方に回り込むように一定の張出寸法Lで屈曲する屈曲部102aの下方に延長して屈曲部102bを形成する。このように、深さの異なる複数の屈曲部102a、102bを形成することにより、広い範囲で土が解されるので、収穫対象物の大小によることなく、容易に抜き取ることができる。
【0058】
また、構成例2の要部拡大正面図(a)とその側面図(b)を図12に示すように、上位の屈曲部102aの張出寸法L1を下位の屈曲部102bの張出寸法L2より小さくすることにより、小さい収穫対象物を傷付けにくくなる。
【0059】
また、構成例3の要部拡大正面図(a)とその側面図(b)を図13に示すように、未堀側である左側の103は、先端の屈曲部103aをくの字型に屈曲して形成することにより、隣接条(未堀側)の収穫対象物P2について事前に土を解すことができるので、大きな収穫対象物についても容易に抜き取ることができる。これは、左側だけ(1本)に設置する。
【0060】
(回転切断機)
次に、移送切断装置の茎葉切断機構について説明すると、茎葉切断機構は、構成例1の正面断面図を図14(a)に示すように、左右で1対のリング板状の回転刃104a、104bをそれぞれ対向駆動される支軸105,105に高さ位置調節可能な支持板106,106にビス止めした回転切断機によって構成される。左右の回転刃104a、104bは、小なる板厚T1と大なる板厚T2に形成し、それぞれの外周に片刃を形成し、その刃裏Bを互いに接して構成し、小なる板厚T1の回転刃104aを下側に、大なる板厚T2の回転刃104bを上側に配置することにより、切断による落下物の姿勢を傾斜させてニンジン等の尻尾部分に受ける落下衝撃を左右の板厚が同一の場合より緩和して傷が小さくなり、かつ、切断する際の抵抗も少なくて済む。
【0061】
また、構成例2の正面断面図を図14(b)に示すように、上下を逆配置に、すなわち、小なる板厚T1の回転刃104aを下側に、大なる板厚T2の回転刃104bを上側に配置することにより、下側に押し広げるように切断されることから、確実に切断することができる。
【0062】
次に、胴切りで収穫するために、構成例3の正面断面図を図15(a)に示すように、左右で1対のリング板状の回転刃107、107をラップなしに近接配置に構成することにより、ラップ構成の場合に刃こぼれによって左右の回転刃107、107が互いに引っ掛かりロックする事態を回避することができ、また、それぞれの外周に形成した片刃の表面Sを共に上方に向けて構成することにより、きれいな切断面による確実な胴切りが可能となる。
【0063】
一方、上記と逆に、構成例4の正面断面図を15(b)に示すように、左右で1対のリング板状の回転刃107、107それぞれに形成した片刃の表面Sを共に下面に配して構成することにより、両者間に隙間があっても、切断物を下方に押し下げる力が作用するので、確実に切断することができるとともに、引っ掛かりや詰まりを防止することができる。
【0064】
次に、胴切りで収穫するために、構成例5の正面断面図を図16に示すように、左右で1対のリング板状の回転刃107、107を片刃とし、それぞれの表面S、Sを互いに逆の方向に、すなわち、一方の表面Sを上面側、他方の表面Sを下面側に向け、両刃裏T、Tを同一高さ位置に構成することにより、切断による落下物の姿勢を傾斜させて下端部に受ける落下衝撃を緩和してニンジン等の尻尾部分が割れにくくなる。
【0065】
また、構成例6の正面断面図を図17に示すように、左右で1対のリング板状の回転刃108、108は、それぞれの外周に両刃を形成して構成することにより、左右の両刃によるくさび効果によって確実に切断して落下させることができる。また、高さ調節が可能な支持板106,106の落下を防ぐために、それぞれの支105,105の下部に穴を設け、割ピン109,109等によるストッパを取付ける。
【0066】
(尻尾切装置)
次に、尻尾切装置の別実施例について説明すると、引抜搬送装置の下方で根菜株の下端の細根を切断する尻尾切装置110は、構成例1の正面断面図(a)と内部透視側面図(b)を図18に示すように、水平配置の回転軸線に平行に回転カッター111を本体支持部113によって軸支し、その上方を吊り下げ姿勢で移送される根菜株の下端を案内する並列スリットを形成したガイド部114をボルトVによって本体支持部113に取付けて構成する。
【0067】
上記ガイド部114は、本体支持部113のフレームと結合せずに、本体支持部113より小さくして軽く形成し、また、ボルト穴を長穴にして取付け時に高さ調節可能に構成することにより、本体支持部113と分割して単体でガイド部114のみを取外すことができるので、内周部に付着した泥土の掃除が容易となる。
【0068】
本体支持部113には、その構成例1の側面図を図19(a)に示すように、ガイド部114の近傍の側面に円弧状の窓Aによる空間を設けることにより、コーナー部が開放されて側面部の泥の付着がなくなるので、回転カッター111や駆動モータの破損が抑えられる。窓Aの空間は回転カッター111の軌道上に形成し、また、構成例2の側面図を図19(b)に示すように、切断作用部である前側のみに部分的に形成してもよい。
【0069】
回転カッター111は、その外周部を「へ」の字状に形成することにより、泥との干渉を避けることができる。具体的には、回転カッター111の構成例1の要部拡大断面図を図20に示すように、ガイド部114とラップする部分のみを谷Uとしてガイド部114から遠ざけて下側に「へ」の字状に曲げることで、ガイド部114の内周部に付着する泥との干渉が少なくなる。
【0070】
また、回転カッター111は、その構成例2の要部拡大断面図を図21に示すように、ガイド部114とラップする部分のみを山Pとしてガイド部114に近づけるように上側に「へ」の字状に曲げることで、ガイド部114の内周部に溜まった泥を削り落とすことができる。
【0071】
さらに、回転カッター111は、外周部をジグザグ状に形成し、特に、構成例3の要部拡大断面図を図22に示すように、ガイド部114に面して谷U、隣接のスリット部に面して山Pとなるようにジグザグ状に形成することにより、ニンジン等の尻尾の切断精度を向上することができる。
【0072】
また、回転カッター111の刃形は、その拡大上面図(a)と正面図(b)を図23に示すように、進行方向Fの前面部にギザギザ溝を形成することにより、切断精度を向上することができる。このギザギザ溝は、ガイド部114と同じ位相とせず、所定深さ寸法L1の溝部の後部に一定長さL2を残すことにより、強度を確保することができ、溝形状は前側を丸く、奥を鋭利に形成することにより、切断精度を向上することができる。
【0073】
(照明装置)
次に、夜間作業用の照明装置について説明する。
照明装置は、その構成例の平面図(a)と側面図(b)を図24に示すように、補助者作業灯115を備え、小雨の夜間作業時でも雨粒がよく見えて雨粒による色の識別に影響しないように、HIDと略称されるディスチャージランプ116を使用する。HIDは、作業者がコンテナ移動時に下手を向いても眩しくないように、ニンジン搬送上手側に配置する。
【0074】
ライトの取付ステー117は、補助作業者座席91またはその近傍に取付ける。選別作業者の選別作業のための作業灯118は、作業者の頭部後方に点灯することにより、作業灯を点灯しても眩しくなく、色を見分けることができる。ライトは任意の向きに変更可能とし、補助者席91のライトは不要なときは折りたたみ収納可能に構成する。
【0075】
補助作業部にはカメラを設け、フィルタを着脱可能に構成することにより、色や形状が識別しやすくなる。フィルタは、緑または紫を強調するものを用いることにより、ニンジン肩部の霜焼けや緑化の識別が容易となる。また、カメラには、画像がより鮮明に撮影できるようにライトを搭載して構成する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】根菜類収穫機の平面図
【図2】根菜類収穫機の左側面図
【図3】根菜類収穫機の右側面図
【図4】根菜類収穫機の背面図
【図5】根菜類収穫機の伝動図
【図6】根菜類収穫機の要部側面図
【図7】尻尾切装置の側面図
【図8】尻尾切装置の平面図
【図9】載置部の平面図
【図10】載置部の側面図
【図11】ソイラの構成例1の要部拡大正面図(a)とその側面図(b)
【図12】ソイラの構成例2の要部拡大正面図(a)とその側面図(b)
【図13】ソイラの構成例3の要部拡大正面図(a)とその側面図(b)
【図14】茎葉切断機構の構成例1(a)と構成例2(b)の正面断面図
【図15】茎葉切断機構の構成例3(a)と構成例4(b)の正面断面図
【図16】茎葉切断機構の構成例5の正面断面図
【図17】茎葉切断機構の構成例6の正面断面図
【図18】テールカッタ装置の構成例1の正面断面図(a)と内部透視側面図(b)
【図19】本体支持部の構成例1(a)と構成例2(b)の側面図
【図20】回転カッターの構成例1の要部拡大断面図
【図21】回転カッターの構成例2の要部拡大断面図
【図22】回転カッターの構成例3の要部拡大断面図
【図23】回転カッターの刃形の上面図(a)と正面図(b)
【図24】照明装置の構成例の平面図(a)と側面図(b)
【符号の説明】
【0077】
24 引抜搬送コンベア(引抜搬送装置)
46 切断装置(茎葉切断機構)
48 胚葉搬送装置(移送切断装置)
50 残葉処理駆動ローラ(前残葉処理回転体)
51 残葉処理従動ローラ(後残葉処理回転体)
52 残葉処理ベルト(搬送無端帯)
53 残葉処理コンベア(残葉処理装置)
62 残葉処理ローラ(巻込ローラ)
64 後第1駆動スプロケット(後移送回転体)
65 前第1従動スプロケット(前移送回転体)
68 第1選別搬送コンベア(第1選別搬送装置)
74 伝動機構
83 第2選別搬送コンベア(第2選別搬送装置)
91 補助作業座席
92 選別作業ステップ(選別作業フロア)
96 収容部材載置台
B 操縦部
D 残葉処理部(残葉処理装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦部(B)の左右一側に圃場から根菜株の茎葉を把持して引き抜くとともに機体の後退方向に移送する引抜搬送装置(24)と、該引抜搬送装置(24)から受継いだ根菜株の茎葉を把持しつつ機体の後退方向に移送して茎葉切断機構(46)により根菜株を切断落下させる移送切断装置(48)と、該移送切断装置(48)の下方に茎葉部を切断されて落下する根菜株を受けて機体前側から後側に搬送しながら巻込ローラ(62)で残葉を取り除いて左右他側方に排出する残葉処理装置(D)と、該残葉処理装置(D)の他側に残葉処理装置(D)から根菜株を受けて機体後部から前部に移送する第1選別搬送装置(68)と、該第1選別搬送装置(68)の搬送終端部から根菜株を受けて左右一側から操縦部(B)の後側を横断して機体の左右他側端部の収容部材載置台(96)に亘って根菜株を搬送する第2選別搬送装置(83)と、前記第1選別搬送装置(68)の左右他側で且つ第2選別搬送装置(83)の後部に根菜株の選別作業や収容部材(87)の交換作業を行う作業者が着座する選別作業座席(91)を備えた選別作業フロア(92)とを設けたことを特徴とする根菜類収穫機。
【請求項2】
前記残葉処理装置(D)の搬送終端部の側方に第1選別搬送装置(68)の搬送始端部を配置したことを特徴とする請求項1記載の根菜類収穫機。
【請求項3】
前記第1選別搬送装置(68)の搬送終端部の下方に第2選別搬送装置(83)の搬送始端部を配置したことを特徴とする請求項1または2記載の根菜類収穫機。
【請求項4】
前記残葉処理装置(D)を前後の残葉処理回転体(50,51)に搬送無端帯(52)を巻回して構成し、第1選別搬送装置(68)を前後の移送回転体(64,65)に無端状の移送体(66)を巻回して構成し、残葉処理装置(D)の搬送終端側の残葉処理回転体(51)の軸と、第1選別搬送装置装置(68)の搬送始端側の移送回転体(64)の軸との間に、周速変換と方向転換とを行う伝動機構(74)を設けたことを特徴とする請求項1乃至3記載の根菜類収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−142178(P2010−142178A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324489(P2008−324489)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】