説明

栽培容器における給水装置

【課題】栽培容器の土壌中に、僅かな量の水を自動的に継続して滴下するようにして給水する。
【解決手段】流量調整部7の押圧ローラ12を適宜回動して上・下方へスライドさせることにより、給水チューブ6をケース11の背面板13に押し付ける圧縮力を調整し、滴下部8の滞留部22へ滴下する水の流量を調整して、所定の流量の水が滞留部22へ流下するよう設定し、且つ前記所定流量の水が滞留部22へ流下して、該滞留部22の下方部の水導入口27より下方に滞留し、そして徐々に滞留して行く水3が、前記水導入口27より上方に水位に達したときに、該水導入口27に水3が流入して自動的に継続して土壌4中に滴下するようにして給水できるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランター、植木鉢や盆栽等の栽培容器に給水する給水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プランター、植木鉢や盆栽等の栽培容器に植えられた植栽物に給水するに際しては、じょうろ等により植栽物の上方から直接水を注ぎ給水していた。しかし、この方法では、旅行等のため長期間給水できない場合には、土が乾燥して植栽物が枯れてしまい、また、一度に多量の給水を行うと、土や養分が流出したり、根が腐ったりするという課題があった。
【0003】
前記従来の課題を解決することを目的とする先行技術につき過去の特許文献を遡及検索したところ、下記の特許文献1に示すような、給水時期や給水量の管理が不要な植木鉢の給水装置が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−196156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1記載の給水装置は、貯水タンクに蓄えられた水は滴下管内に流入し、可変絞り部を通過して受水容器へ滴下し、該受水容器に一定量の水が貯まると、前記受水容器の重心位置が移動して、支持位置の周りに回転力が作用し、その回転力により受水容器が搖動して、該受水容器に溜まった水は給水槽へ放出され、そして、前記給水槽へ放出された水は給水帯に吸収され、チューブに形成された多数の給水孔を介して土へ供給されるよう構成されているが、受水容器の重心位置が移動するときまで、水は給水槽から土へ供給されないので、水を少量ずつ継続して土へ供給することができないという課題があった。
【0006】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであって、貯水タンクから給水チューブを介して、流量調整部によって設定された所定流量の水を滴下部の滞留部に流下して滞留させ、そして徐々に滞留して行く水が、前記流量調整部の水導入口より上方に水位に達したときに、該水導入口に水が流入して僅かな量の水が自動的に継続して土壌中に滴下するようにして給水されるようにした栽培容器における給水装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、栽培容器の側方に貯水タンクが設置され、且つ該貯水タンクに貯水された水を適宜量自動的に栽培容器の土壌中に滴下するようにして給水する給水装置が、前記貯水タンクと栽培容器間に配設され、前記給水装置は、前記貯水タンクの水中に、上流側を挿入した給水チューブの下流側に、給水流量を調整する流量調整部と、該流量調整部の下流側に、土壌中に差し込んで前記流量調整部によって調整された流量の水を滴下するようにした滴下部を備えて形成され、前記給水チューブは、小径の給水路を備えた弾力性を有する透明な合成樹脂により形成され、前記流量調整部は、前記給水チューブがケースを上下方向に挿通すると共に、該ケースに手動により回動して上下方向にスライドさせて、該給水チューブへの圧縮力を調整する押圧ローラが設置され、前記押圧ローラを下方へ回動してスライドさせて、前記給水チューブをケースの背面板に押し付けて徐々に圧縮力を強めて行くことにより、該給水チューブの給水路を徐々に狭めて下方に流下する水の流量を少なくして行き、前記押圧ローラが最下端に達したときに、該給水路が閉鎖されて給水が停止され、逆に前記押圧ローラが最上端に達したとき、給水チューブへの押圧ローラへの圧縮が完全に解除されて、前記給水路は全開し、水の流量が絞り込まれることなく流下するよう形成され、前記滴下部は、滞留部の上端が前記給水チューブの下流側端部に連結固定されると共に、該滞留部の下端部には土壌中に給水する給水管を備えた底板部が密嵌固定されて形成され、且つ該底板部は、上面に前記滴下部の下部内周壁面に密嵌固定する周壁を突設した基板の中央に、前記給水管の上端の水導入口が前記基板より上方部に位置するよう突設されると共に、前記給水管の下端の給水口から、前記滞留部に滞留している水のうち、前記水導入口より上方に滞留した水のみが、該水導入口より滴下するようにして土壌中に給水できるよう構成するという手段を採用することにより、前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
上記構成より成る本発明によれば、流量調整部の押圧ローラを適宜回動して上・下方へスライドさせることにより、給水チューブをケースの背面板に押し付ける圧縮力を調整して、滴下部の滞留部へ滴下する水の流量を調整して、所定の流量の水が滞留部へ流下するよう設定し、且つ前記所定流量の水が滞留部へ流下して、該滞留部の下方部の水導入口より下方に滞留し、そして徐々に滞留して行く水が、前記水導入口より上方に水位に達したときに、該水導入口に水が流入して自動的に継続して土壌中に滴下するようにして給水され、旅行等のため長期間給水できない場合にも、土が乾燥することもないので、植栽物が枯れる虞れもなく、また、一度に多量の給水を行うことがないので、土や養分が流出したり、根が腐ったりすることがないという優れた効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明栽培容器における給水装置を栽培容器(植木鉢)に設置した状態を示す全体の概略側面図である。
【図2】本発明栽培容器における給水装置を構成する給水チューブを貯水タンクに挿入した状態を示す要部の断面図である。
【図3】本発明栽培容器における給水装置を構成する流量調整部の要部の正面図である。
【図4】本発明栽培容器における給水装置を構成する流量調整部の縦断面斜視図である。
【図5】本発明栽培容器における給水装置を構成する流量調整部の押圧ローラの作動状態を示す縦断面図である。
【図6】本発明栽培容器における給水装置を構成する流量調整部の押圧ローラの作動状態を示す縦断面図である。
【図7】本発明栽培容器における給水装置を構成する流量調整部の押圧ローラの作動状態を示す縦断面図である。
【図8】本発明栽培容器における給水装置を構成する滴下部の一部を切り欠いて示す正面図である。
【図9】本発明栽培容器における給水装置を栽培容器(植木鉢)に設置した他の実施例を示す全体の概略側面図である。
【実施例】
【0010】
本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、栽培容器1(図においては、植木鉢が図示されている)の側方に設置されたテーブル等の架台T上に貯水タンク2が設置され、且つ該貯水タンク2に貯水された水3を適宜量自動的に栽培容器1の土壌4中に滴下するようにして給水する給水装置5が、前記貯水タンク2と栽培容器1間に配設されている。
【0011】
前記給水装置5は、前記貯水タンク2の水3中に、上流側を挿入した給水チューブ6の下流側に、給水流量を調整する流量調整部7と、更に、該流量調整部7の下流側に、土壌4中に差し込んで前記流量調整部7によって調整された流量の水3を滴下するようにして、前記土壌4中に給水する滴下部8を備えて形成されている。
【0012】
前記給水チューブ6は、小径の給水路9を備えた弾力性を有する合成樹脂製、好ましくは、流下する水3が外部より視認できるように透明なポリエチレン製のものを使用することが推奨され、更に前記貯水タンク2内に挿入する給水チューブ6の下流側の基端部外周面には、図2に示すように、給水チューブ6の下流側が該貯水タンク2内の水3中に深く沈下できるように、錘10を周設することが推奨される。
【0013】
前記給水チューブ6の下流側に配設される流量調整部7は、前記給水タンク2から栽培容器1の土壌4への給水量を手動で調整できるように形成されている。すなわち、流量調整部7は、前記給水チューブ6がケース11を上下方向に挿通すると共に、該ケース11に手動により回動して上下方向にスライドさせて、該給水チューブ6への圧縮力を調整する押圧ローラ12が設置され、前記押圧ローラ12を下方へ回動してスライドさせて、前記給水チューブ6をケース11の背面板13に押し付けて徐々に圧縮力を強めて行くことにより、該給水チューブ6の給水路9を徐々に狭めて下方に流下する水3の流量を少なくして行き、前記押圧ローラ12が最下端に達したときに、該給水路9が閉鎖されて給水が停止され、逆に前記押圧ローラ12が前記ケース11の最上端に達したとき、給水チューブ6への押圧ローラ12への圧縮が完全に解除されて、前記給水路9は全開し、水3の流量が絞り込まれることなく流下するよう構成されている。
【0014】
前記流量調整部7は、特に限定する必要はないが、好ましくは図3〜図7 に示す構成とすることが推奨される。すなわち、流量調整部7は、正面側に縦長状開口部14を開口したケース11の上端に、前記給水チューブ6の上部挿通口15を備えると共に、該ケース11の下端に該給水チューブ6の下部挿通口15を備え、且つ前記ケース11の両側壁17の内側面に、前記押圧ローラ12の両側に突設した案内軸18が摺接して回動する倒凹状のガイド凹部19が垂直方向にそれぞれ対向して設けられ、且つ該ガイド凹部19は上方部が広巾部20に形成される一方、前記背面板13は、該広巾部20の近傍より下端近傍まで、上方側が巾広で下方へ行くに従い漸次小巾となる長凹溝21を備えて形成されている。
【0015】
前記構成より成る流量調整部7の上部挿通口15から下部挿通口16を経て給水チューブ6を挿通すると共に、該給水チューブ6をケース8の背面板13と押圧ローラ12で挟み込んで挟持し、前記ガイド凹部19に沿って押圧ローラ12の案内軸18が摺接して回動することにより、該押圧ローラ12と前記背面板13間に挟持された給水チューブ6に対する圧縮力を調整して、該給水路9を狭めたり、拡げたりして水3の流下量を調整する。
【0016】
なお、押圧ローラ12の給水チューブ6に対する圧縮力の調整について説明すると、図5に示すように、押圧ローラ12がケース11の縦長状開口部13の上端に位置したときは、該押圧ローラ12の案内軸18がガイド凹部19の広巾部20に位置して、前記押圧ローラ12が正面側(図5の左側)へ移動するので、給水チューブ6に対する圧縮状態が解除されるので、給水路9が解放され水3は流量が制限されることなく流下する。
【0017】
そして、図5の状態から、前記押圧ローラ12を下方へ回動させることにより、押圧ローラ12と背面板13間に挟持された給水チューブ6は、図6に示すように、上方側が巾広で下方へ行くに従い漸次小巾となる長凹溝21によって、該押圧ローラ12の圧縮力が給水チューブ6に上方から下方へ行くに従い徐々に大きくなり(図6において、給水チューブ6は半開の状態となっている)となり、最後に、図7に示すように、押圧ローラ12がケース11の縦長状開口部14の下端に位置したときは、前記背面板13の長凹溝21より外れるので、前記押圧ローラ12の給水チューブ6に対する圧縮状態が最大となり、給水路9が閉鎖され水3の流下は停止する。
【0018】
前記構成より成る流量調整部7を装置した給水チューブ6の下流側端部には、前記流量調整部7によって調整された流量の水3を、栽培容器1の土壌4中に滴下する滴下部8が連結されている。前記滴下部8は、流下した水3を滞留させる長筒状の滞留部22を備えているが、該滞留部22は水3が滞留している状態が外部より視認できるように、透明なプラスチックにより形成することが好ましい。
【0019】
そして、前記滴下部8は、滞留部22の上端が前記給水チューブ6の下流側端部に連結固定されていると共に、該滞留部22の下端部には土壌4中に給水する給水管23を備えた底板部24が密嵌固定されて形成されている。前記底板部24は、上面に前記滞留部22の下部内周壁面に密嵌固定する周壁25を突設した基板26の中央に、前記給水管23の上端の水導入口27が前記基板26より上方部に位置するよう突設されると共に、前記給水管23の下方部は土壌4中へ差し込み易いように径小に形成され、且つ該給水管23の下端の給水口28から、前記滞留部22に滞留している水3のうち、前記水導入口27より上方に滞留した水3のみが、該水導入口27より滴下するようにして土壌4中に給水できるよう構成されている。
【0020】
なお、前記土壌4中に差し込んだ場所以外にも給水したい場合、あるいは他の植木鉢にも同時に注水したい場合は、図9に示すように前記給水管23に分岐給水管29を設置すればよい。この場合、開閉弁30を分岐給水管29に設置して、該分岐給水管29を使用しないときは、開閉弁30を閉鎖すればよい。
【0021】
前記構成より成る本発明によれば、栽培容器1の側方に設置された貯水タンク2に貯水された水3中に、給水チューブ6の上流側を挿入すると共に、滴下部8の給水管23の下端部を土壌4中へ差し込み、然る後、流量調整部7の押圧ローラ12を適宜回動して上・下方へスライドさせることにより、給水チューブ6をケース11の背面板13および長凹溝21に押し付ける圧縮力を調整して、滴下部8の滞留部22へ滴下する水3の流量を調整して、所定の流量の水3が滞留部22へ流下するよう設定する。これにより、所定流量の水3が滞留部22へ流下して、該滞留部22の下方部の水導入口27より下方に滞留し、そして徐々に上方に滞留して行く水3が、前記水導入口27より上方に水位が達したときに、該水導入口27に水3が流入して土壌4中に給水されるので、僅かな量の水3が自動的に継続して土壌4中に滴下するようにして給水される。また、滞留部22を透明にしておけば、水3が滞留部22に滞留していることが確認でき、貯水タンク2への水3の補給時期の確認ができる。
【符号の説明】
【0022】
1 栽培容器
2 貯水タンク
3 水
4 土壌
5 給水装置
6 給水チューブ
7 流量調整部
8 滴下部
9 給水路
10 錘
11 ケース
12 押圧ローラ
13 背面板
14 縦長状開口部
15 上部挿通部
16 下部挿通部
17 側壁
18 案内軸
19 ガイド凹部
20 広巾部
21 長凹溝
22 滞留部
23 給水管
24 底板部
25 周壁
26 基板
27 水導入口
28 給水口
29 分岐給水管
30 開閉弁
T 架台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培容器の側方に貯水タンクが設置され、且つ該貯水タンクに貯水された水を適宜量自動的に栽培容器の土壌中に滴下するようにして給水する給水装置が、前記貯水タンクと栽培容器間に配設され、前記給水装置は、前記貯水タンクの水中に、上流側を挿入した給水チューブの下流側に、給水流量を調整する流量調整部と、該流量調整部の下流側に、土壌中に差し込んで前記流量調整部によって調整された流量の水を滴下するようにした滴下部を備えて形成され、前記給水チューブは、小径の給水路を備えた弾力性を有する透明な合成樹脂により形成され、前記流量調整部は、前記給水チューブがケースを上下方向に挿通すると共に、該ケースに手動により回動して上下方向にスライドさせて、該給水チューブへの圧縮力を調整する押圧ローラが設置され、前記押圧ローラを下方へ回動してスライドさせて、前記給水チューブをケースの背面板に押し付けて徐々に圧縮力を強めて行くことにより、該給水チューブの給水路を徐々に狭めて下方に流下する水の流量を少なくして行き、前記押圧ローラが最下端に達したときに、該給水路が閉鎖されて給水が停止され、逆に前記押圧ローラが最上端に達したとき、給水チューブへの押圧ローラへの圧縮が完全に解除されて、前記給水路は全開し、水の流量が絞り込まれることなく流下するよう形成され、前記滴下部は、滞留部の上端が前記給水チューブの下流側端部に連結固定されると共に、該滞留部の下端部には土壌中に給水する給水管を備えた底板部が密嵌固定されて形成され、且つ該底板部は、上面に前記滴下部の下部内周壁面に密嵌固定する周壁を突設した基板の中央に、前記給水管の上端の水導入口が前記基板より上方部に位置するよう突設されると共に、前記給水管の下端の給水口から、前記滞留部に滞留している水のうち、前記水導入口より上方に滞留した水のみが、該水導入口より滴下するようにして土壌中に給水できるよう構成したことを特徴とする栽培容器における給水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−74831(P2013−74831A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216365(P2011−216365)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【特許番号】特許第4989780号(P4989780)
【特許公報発行日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(507107475)