説明

案内システム

【課題】施設のセキュリティや機密保持を可能としつつ必要な案内を行う案内システムを提供する。
【解決手段】案内システムの表示装置10は、施設の入場者の全てに公開が可能なフロア区画の配置情報と、施設関係者のみに開示が可能な詳細情報とを表示可能である。表示装置10は、内蔵する入場者検知センサ11が入場者を検知すると、まず、フロア区画の配置情報を表示し、次いで、リーダライタ12がICタグ13の情報を読み出すと、その情報に従って特定の区画の名称を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内システムに関し、更に詳しくは、施設の入場者に対して施設を案内する案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大きなビルディングなどの施設では、ビルディングの各階を案内する案内板が一般的に利用されている。しかし、案内板は、表示情報の変更が困難なため、表示情報の変更が容易な液晶表示装置などの表示装置を利用して案内する案内システムの採用が検討されている。特許文献1は、ユーザがタッチパネルで入力する情報をCPUに入力し、CPUがその入力情報をX−Y情報に変換し、このX−Y情報からユーザの要求する施設情報を判定し、判定した結果に基づいて、ユーザが要求する施設情報を表示装置上に表示するビル情報表示装置が記載されている。
【0003】
ところで、一般利用客が来場する商業施設では、この施設に入場する一般利用者と、施設で業務を遂行する施設関係者などの特定利用者とでは、案内システムで案内する内容を変えることが望まれている。これは、一般利用者と特定利用者とで、案内システムによって案内する情報を同じとすると、一般利用者に犯罪者等の悪意をもった利用者が万一紛れ込んでいる場合には、セキュリティや機密保持の点で問題が生じるためである。このような問題を回避するため、案内システムでは利用者毎に必要最小限の案内表示をすることが考えられる。
【特許文献1】特開平5−120290号公報
【特許文献2】特開2003−220949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
利用者毎に異なる案内表示を行う技術としては、例えば交通案内を行う交通案内システムが特許文献2に記載されている。この特許文献2に記載された交通案内システムでは、交通機関の利用客が、自身の個人情報及び行き先などの情報を記録したICカードを所持しており、ICカードリーダがそのICカードの情報を読み出す。案内システムでは、この読み出された情報に基づいて利用客が利用すべき路線名や降車駅名などを表示して、利用客に必要な案内を行っている。
【0005】
特許文献2に記載された技術を、特許文献1に記載されたビルの案内システムに利用することが考えられる。しかし、この場合には、案内システムは、ICカードを所持する特定利用者には案内が可能になるものの、ICカードを所持しない一般利用者が利用できないため、利用可能な範囲が限定されるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑み、一般利用者及び特定利用者の双方に利用が可能であり、かつ、例えば利用者毎に必要な案内情報を与えることによって、施設のセキュリティや機密保持が可能となるように、入場者への案内が可能な案内システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の案内システムは、施設の入場者に施設を案内するための案内システムであって、
入場者の全てに公開可能な施設の公開可能情報と、入場者のそれぞれに対応して開示可能な施設の特定情報とを表示可能な表示手段と、
前記表示手段の表示を視認する視認位置に存在する入場者を検知するセンサと、
入場者が保有する記録媒体から媒体情報を読み出す情報読出し手段と、
前記情報読出し手段が読み出した媒体情報に基づいて、前記入場者に開示可能な特定情報を選択する表示選択手段とを備え、
入場者毎に案内表示の内容を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の案内システムでは、表示装置を視認する位置に存在する入場者が検知されると公開可能情報を表示し、また、特定の入場者にはその公開可能情報と共に、その入場者に開示可能な特定情報を表示することにより、入場者毎に表示内容を選択できるため、施設のセキュリティや機密保持を可能にしつつ必要な案内表示が可能になる。
【0009】
本発明の案内システムの好適な態様では、前記公開可能情報は、前記施設が含む複数の区画の配置情報を含み、前記特定情報は前記区画の名称及び用途の少なくとも一方を含む区画の詳細情報である。一般の入場者には、区画の名称や用途を除いて表示することで、施設に必要なセキュリティや機密保持が容易になる。
【0010】
前記媒体情報が、前記複数の区画の内で、当該記録媒体を保持する入場者がアクセス可能な区画を指定する情報を含むとすることが出来る。この場合には、特定情報の表示が迅速になる。また、これに代えて、前記媒体情報が入場者を識別する情報を含み、前記表示選択手段は、入場者と入場者毎に公開可能な特定情報とを対応付けて記憶する記憶装置を参照して前記入場者に公開可能な特定情報を選択することも出来る。この場合には、入場者毎にきめ細かな表示制限が可能になる。
【0011】
本発明で用いる記録媒体に特に限定はないが、非接触型ICタグが使用できる。また、接触型ICカード、接触型ICカード、磁気カードなどが利用できる。
【0012】
前記表示手段は、前記公開可能情報を先に表示し、次いで、前記特定情報を表示することが好ましい。この場合には、表示手段が無表示の段階から公開可能情報を表示する段階で入場者の視線が表示手段に引きつけられ、次いで、特定情報を表示することで、入場者自身に特に関係がある特定情報に視線が引きつけられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る案内システムのブロック図である。本案内システム100は、一般の利用客が出入りする商業用施設に設置されたフロア案内装置として構成される。案内システム100は、液晶表示装置から成るフロア案内ディスプレイ10と、赤外線センサから成る入場者検知センサ11と、ICタグ13から情報を読み出すリーダライタ12と、表示制御部を構成するCPU20とを有する。フロア案内ディスプレイ10は、入場者検知センサ11及びリーダライタ12を内蔵し、施設内の各フロア毎に、例えばエレベータホールに設置される。
【0014】
フロア案内ディスプレイ10は、フロアの全体的な配置の情報であって一般利用者に公開可能な公開可能情報と、施設内の詳細情報であって、施設関係者にのみ開示可能で且つ施設関係者毎に異なる詳細情報とを表示可能である。同図の例では、フロア案内ディスプレイ10は、一般入場者に公開可能な公開情報のみを表示しており、区画40〜43についての詳細情報は、表示制御部20の機能によってその文字表示がマスクされている。
【0015】
入場者検知センサ11は、フロア案内ディスプレイ10に内蔵されており、フロア案内ディスプレイ10の前に立った入場者を赤外線で検知する。ICタグ13の情報を読み出すリーダライタ12は、同様にフロア案内ディスプレイ10に内蔵されており、施設関係者が保有する名札に内蔵されたICタグ13から、非接触でタグ情報を読み出す。本実施形態では、一般入場者はICタグを保有せず、施設関係者のみがICタグを保有する。
【0016】
入場者検知センサ11が検知したセンサ検知信号、及び、ICタグリーダライタ12が読み出したタグ情報は、表示制御部20に送信される。表示制御部20は、入場者検知センサ11が入場者を検知した時点から、入場者検知センサ11がもはや入場者を検知できなくなった時点までの期間は、フロア案内ディスプレイ10をアクティブにし、この期間は少なくともフロア区画の配置である公開情報をフロア案内ディスプレイ10上に表示して案内表示を行う。
【0017】
表示制御部20は、入場者検知センサ11が入場者を検知している期間中に、リーダライタ12が非接触ICタグ13からタグ情報を読み出すと、そのタグ情報に基づいて詳細情報の少なくとも一部のマスクを解除する。これによって、公開可能情報に加えて、必要な区画の名称又は用途である詳細情報を表示する。ICタグ13のメモリには、施設関係者毎に、入退室を許可されている区画を識別する情報が書き込まれている。
【0018】
表示制御部20は、ICタグ13から読み取った情報に基づいて、入場者である施設関係者に入退出が許可されている区画のマスクを解除する信号をを送信する。フロア案内ディスプレイ10の表示内容を記憶する記憶部には、各区画毎の名称又は用途を表示するメモリエリアに、それぞれマスクが掛けられており、ICタグ13から読み取った区画に対応するメモリエリアのマスクが解除される。これによって、当該区画の表示制限が解除される。
【0019】
本実施形態例では、施設関係者が着けている名札に、RFIDシステムなどで利用されるICタグ13が内蔵されている。ICタグ13のメモリには、本人の施設との関わりの重要度により、入退室が許可されているフロア区画又は名称などの情報が登録されている。フロア案内ディスプレイ10に組み込まれたリーダライタ12で、ICタグ13のメモリ情報を読み取ることで、当該施設関係者の出入りが許可されているフロア区画を判断し、そのフロア区画の名称のみを表示する制御が可能になる。
【0020】
フロア案内ディスプレイ10は、入場者検知センサ11が、フロア案内ディスプレイ10の前に立つ入場者を検知しなくなった時点で全ての表示を消去し、次の入場者が現れるまで、その状態で待機する。
【0021】
図2及び図3はそれぞれ、施設関係者がフロア案内ディスプレイ10の前に立った際のフロア案内ディスプレイ10の表示内容を示している。図2は、施設内の営業部門を訪問するために訪れた関連会社の社員が、部屋の位置を確認するために、フロア案内ディスプレイ10の前に立った場合の表示を示している。社員の名札には、ICタグ13が内蔵されており、ICタグ13のメモリには、入退室が可能なフロア区画として、“42”と“43”の数値情報が登録されている。
【0022】
社員がフロア案内ディスプレイ10の前に立つと、フロア案内ディスプレイ10に組み込まれた入場者検知センサ11が入場者を感知して、“案内ONの情報”を表示制御部20に送信する。これによって、表示制御部20は、公開可能なフロアの配置情報を表示する指令をフロア案内ディスプレイ10に与える。入場者検知センサ11の検知に後続して、リーダライタ12は、名札に内蔵されたICタグ13のメモリ情報を読み取り、“42”と“43”の数値情報を表示制御部20に送信する。
【0023】
表示制御部20は、“42”と“43”の数値情報を受信すると、フロア区画42及び43の表示内容を記憶するメモリエリアのマスクを解除する。これによって、図2に示すように、フロア区画42及び43の名称のマスクが解除され、フロア案内ディスプレイ10は、フロア区画42に“第一営業 執務室”を、フロア区画43に“第二営業 執務室”を文字で表示する。
【0024】
フロア案内ディスプレイ10の前から人が立ち去ると、入場者検知センサ11は“案内OFFの情報”を表示制御部20へ送信する。表示制御部20は、フロア案内ディスプレイ10の表示を全て消去する。これによって、消費電力を低減する。
【0025】
図3は、全てのフロア区画の入退室が許可されている施設関係者、例えば施設内の従業員が、フロア案内ディスプレイ10の前に立った場合の表示例である。この場合には、全ての室名を含む詳細情報が表示される。
【0026】
上記実施形態では、一般利用客には、企業の機密情報が保管されていると推測させるフロア区画の名称や用途を表示しないことで、一部の悪意を持った入場者に対して、防犯の抑止効果が図られる。また、企業の関係者であっても、例えば本社の社員と関連会社の社員とで、フロア区画の表示切り替えが自動化でき、一部の悪意を持った関係者に対しても、犯罪の抑止効果が図られる。更に、入場者検知センサ11を配置したことで、施設案内の必要がないときには表示を行わないことで、消費電力が低減できる。
【0027】
上記実施形態では、ICタグには入退室が可能なフロア区画の情報が記録される例について説明した。本発明の別の実施形態では、ICタグには、入場者のID情報のみを記録しておく。この実施形態では、表示制御部20は、入場者のID情報とその入場者が入退室可能なフロア区画とを関連付けたテーブルを、表示制御部20内の記憶装置に記憶している。表示制御部20は、リーダライタ12が読み取ったICタグ13の情報に基づいて、記憶装置内のテーブルを参照して、そのID情報を有する入場者が許可されているフロア区画を読み出し、読み出されたフロア区画の名称が記憶されたメモリエリアのマスクのみを解除する。
【0028】
本実施形態例では、外部からの入場者には施設の受付でICタグが貸与される。貸与されたICタグには、来客者が訪問するフロアの識別情報、及び、訪問する部署の識別情報が記録される。このため、来客者が訪問すべきフロアのエレベータホールに到着すると、フロア区画の配置と訪問すべき区画の名称などの情報が表示される。来客者が別のフロアのエレベータホールに到着しても、フロア区画の配置情報のみが表示される。或いは、一切の表示がなされないとすることも出来る。
【0029】
上記実施形態の案内システムでは、入場者検知センサ11及びICタグリーダライタ12を内蔵するフロア案内ディスプレイ10を備えることにより、画面上で2段階にわたる表示が可能になり、きめ細かなフロア案内が可能になる。特に、入場者検知センサ11が入場者を検知すると、まずフロア区画の配置が表示されるため、入場者は、自然にフロア案内ディスプレイ10に視線が向く。次いで、ICタグリーダライタ12が読み出す情報によって、自身が必要なフロア区画の名称などの詳細情報が表示されるので、入場者は、その詳細情報が表示された表示部分に更に視線が移り、快適な案内が可能になる。この目的に合致するように、入場者検知センサ11を感度が高い赤外線センサで構成し、また、ICタグリーダライタ12の読取りに必要な電波強度を適切な値に設定する。或いは、センサ11及びリーダライタ12による検知自体は何れを先にしてもよく、タイマーでこのような時間差を設けてもよい。更に、より表示区分を明確にするために、詳細情報の表示色を変える、点滅表示にするなども考えられる。
【0030】
なお、上記実施形態では、ICタグを用いる例を説明したが、本発明の記録媒体には、ICタグには限らず、非接触型又は接触型のICカードが利用できる。また、磁気カードでもよい。更に、本発明の案内システムの案内対象となる施設には、ビルディングのフロア区画に限らず、不特定及び特定の入場者が来場する可能性がある全ての施設が含まれ、且つ、その施設の全体又は一部が含まれる。
【0031】
以上、本発明をその好適な実施態様に基づいて説明したが、本発明の案内システムは、上記実施態様の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施態様の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。また、本発明の好適な態様として記載した各構成や実施形態で記載した各構成については、本発明の必須の構成と共に用いることが好ましいが、単独であっても有益な効果を奏する構成については、必ずしも本発明の必須の構成として説明した全ての構成と共に用いる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る案内システムの模式的ブロック図。
【図2】図1の案内システムにおけるフロア案内ディスプレイにおける表示の一例。
【図3】図1の案内システムにおけるフロア案内ディスプレイにおける表示の他の例。
【符号の説明】
【0033】
10:フロア案内ディスプレイ
11:入場者検知センサ
12:リーダライタ
13:ICタグ
20:表示制御部(CPU)
40〜43:区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設の入場者に施設を案内するための案内システムであって、
入場者の全てに公開可能な施設の公開可能情報と、入場者のそれぞれに対応して開示可能な施設の特定情報とを表示可能な表示手段と、
前記表示手段の表示を視認する視認位置に存在する入場者を検知するセンサと、
入場者が保有する記録媒体から媒体情報を読み出す情報読出し手段と、
前記情報読出し手段が読み出した媒体情報に基づいて、前記入場者に開示可能な特定情報を選択する表示選択手段とを備え、
入場者毎に案内表示の内容を選択することを特徴とする案内システム。
【請求項2】
前記公開可能情報は、前記施設が含む複数の区画の配置情報を含み、前記特定情報は前記区画の名称及び用途の少なくとも一方を含む区画の詳細情報である、請求項1に記載の案内システム。
【請求項3】
前記媒体情報は、前記複数の区画の内で、当該記録媒体を保持する入場者がアクセス可能な区画を指定する情報を含む、請求項2に記載の案内システム。
【請求項4】
前記媒体情報が入場者を識別する情報を含み、前記表示選択手段は、入場者と入場者毎に公開可能な特定情報とを対応付けて記憶する記憶装置を参照して前記入場者に公開可能な特定情報を選択する、請求項1又は2に記載の案内システム。
【請求項5】
前記記録媒体が非接触型ICタグである、請求項1〜4の何れか一に記載の案内システム。
【請求項6】
前記表示手段は、前記公開可能情報を先に表示し、次いで、前記特定情報を表示する、請求項1〜5の何れか一に記載の案内システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−200179(P2007−200179A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20319(P2006−20319)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000213301)中部日本電気ソフトウェア株式会社 (56)